JP4398169B2 - 汚れ防止剤組成物および汚れ防止方法 - Google Patents

汚れ防止剤組成物および汚れ防止方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオレフィン類の製造工程あるいは精製工程の汚れ抑制方法に関し、さらに詳しくは、本発明はオレフィン類製造工程あるいは精製工程での汚れの発生を抑制して、該工程の運転効率を高め、長期連続運転を可能ならしめる汚れ防止剤組成物および汚れ防止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン類の製造あるいは精製工程においては、オレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、アセチレン、ブテン、ブタジエン、ペンテン、イソプレン、ペンタジエン、シクロペンタジエン、インデン類、スチレン類等が、熱、微量の酸素あるいは過酸化物、金属イオンなどの種々の要因で重合し、この重合物が装置内に付着して、汚れが発生する。これらの汚れが蓄積すると、装置内での熱の移動が阻害されるだけでなく、プロセス流体の流れも悪くなり、装置の運転効率の悪化をまねく。その結果、通常の運転が困難になり、緊急に運転を停止し、汚れや重合物を除去せざるを得なくなる等、操業上、重大な支障を来たす。
【0003】
このような汚れに対して、種々の重合抑制方法や汚れ抑制方法が提案されて来た。例えば、ジ低級アルキルヒドロキシルアミンの存在下でのイソプレン含有炭化水素の蒸留方法(例えば、特許文献1参照)、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−スピロ−2’−(4’−オキソイミダゾリジン)−5’−スピロ−1”−シクロヘキサン及びシクロヘキサン−1−スピロ−2’−(4’−オキソイミダゾリジン−1’−オキシル)−5’−スピロ−1”−シクロヘキサンに代表されるオキシラジカル(−O・)を有する環状アミノ誘導体からなるビニル重合禁止剤(例えば、特許文献2参照)、アルキルフェノール化合物とN、N’−ジサリチリデン−1、2−プロパンジアミンの反応物を用いた石油精製等のコンプレッサーの汚れ防止方法(例えば特許文献3参照)、アルキルフェノール化合物とコハク酸−ポリアミン反応物およびN、N’−ジサリチリデン−1、2−プロパンジアミンを用いた石油精製等の分解ガスコンプレッサーでの汚れ防止方法(例えば特許文献4参照)、スチレン−マレイン酸エステル共重合体及び/又はコハク酸エステルとN、N’−ジサリチリデン−1、2−プロパンジアミンを含有する汚れ防止剤(例えば特許文献5参照)、ジ−t−ブチルニトロオキシド、ピペリジニル−1−オキシル化合物、ピロリジン−1−オキシル化合物又はピロリン−1−オキシ化合物を700ppb未満添加して塔底液による着き垢(汚れ)を抑制する方法(例えば、特許文献6参照)、ニトロソフェノール系化合物を有効成分とするエチレン製造装置蒸留塔汚れ抑制剤(例えば、特許文献7参照)、ピペリジン−1−オキシル類とN、N−ジ置換ヒドロキシルアミン類を組合せて適用添加してオレフィン類製造装置あるいは精製工程の汚れを抑制する方法(例えば、特許文献8参照)等がある。しかし、いずれも十分満足する効果を得るには至っていない。
【0004】
【特許文献1】
特開昭50−112304号公報
【特許文献2】
特公昭51−15001号公報
【特許文献3】
米国特許第3442791号明細書
【特許文献4】
特開昭60−54327号公報
【特許文献5】
特開昭64−51491号公報
【特許文献6】
特公平4−26639号公報
【特許文献7】
特開平5−156233号公報
【特許文献8】
特許第3187345号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の状況に鑑み、オレフィン類の製造あるいは精製工程において、オレフィン類の重合を抑制し、汚れの発生と増加を抑制する汚れ防止剤組成物及び汚れ防止方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、オレフィン類の製造あるいは精製工程におけるオレフィン類の重合および汚れについて鋭意検討を重ねた結果、ピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ジサリシリデンジアミン化合物を特定の比率で用いることにより、オレフィン類の汚れ抑制効果が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、請求項1に係る発明は、(A)一般式(1)(式中、Xは水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基または炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表されるピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)一般式(2)(式中、Rは炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基を示す。)で表されるN、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を含有してなることを特徴とする、オレフィン類の製造工程あるいは精製工程において、製造装置類や精製装置類およびそれらの付帯装置類に汚れが付着・蓄積して、オレフィン類の製造あるいは精製工程の操業や得られる製品品質に支障を来たすことを防止する汚れ防止剤組成物である。
【0008】
【化3】
Figure 0004398169
【0009】
【化4】
Figure 0004398169
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の汚れ防止剤組成物であり、前記(A)ピペリジン−1−オキシル化合物が2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルおよび4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルから選らばれる1種以上であることを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の汚れ防止剤組成物であり、前記(B)N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物が、N、N'−ビス(サリシリデン)−1、2−プロパンジアミン、N、N'−ビス(サリシリデン)−1、3−プロパンジアミン、N、N'−ビス(サリシリデン)−1、2−フェニレンジアミンから選らばれる1種以上であることを特徴としている。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか記載の汚れ防止剤組成物であり、前記(A)ピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)N、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を100:1〜1:1(重量比)で含有することを特徴とする
請求項5に係る発明は、オレフィン類の製造工程あるいは精製工程において、(A)一般式(1)(式中、Xは水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基または炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表されるピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)一般式(2)(式中、Rは炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基を示す。)で表されるN、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を同時に当該工程流体に添加することを特徴とする汚れ防止方法である。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項5記載の汚れ防止方法であり、(A)ピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を工程流体に対して、100:1〜1:1(重量比)で添加することを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、オレフィン類の製造工程あるいは精製工程において、汚れが発生し、製造装置類や精製装置類およびそれらの付帯装置類に汚れが付着・蓄積して、オレフィン類の製造あるいは精製工程の操業や得られる製品品質に支障を来たすことを防止する汚れ防止剤組成物であり、(A)ピペリジン−1−オキシル化合物と(B)N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を含んでなることを特徴とする汚れ防止剤組成物である。さらには当該工程において、(A)ピペリジン−1−オキシル化合物と(B)N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を同時に当該工程流体に添加することを特徴とするオレフィン類の汚れ防止方法である。
【0015】
本発明が対象とするオレフィン類製造あるいは精製工程は、具体的にはエチレン製造工程、ブタジエン製造工程、イソプレン製造工程などの製造工程であり、これらの製造工程における脱メタン塔、脱エタン塔、エチレン精留塔、脱プロパン塔、プロピレン精留塔、脱ブタン塔、脱ペンタン塔、リラン塔、コンデンセートストリッパー、分解ガソリンストリッパーなどである。
【0016】
本発明で使用する(A)ピペリジン−1−オキシル化合物は、前記一般式(1)で表される4位に置換基を持つ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物であり、式中、Xは水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基または炭素数1〜3のアミド基である。炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基があり、炭素数1〜3のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基があり、炭素数1〜3のカルボン酸基としては蟻酸基、酢酸基、プロピオン酸基があり、炭素数1〜3のアミド基としては蟻酸アミド基、酢酸アミド基、プロピオン酸アミド基がある。具体的には、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−カルバモイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等が挙げられ、好ましくは2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである。これらの2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル化合物はプロセスの状況に合わせてその1種類をあるいは2種類以上を組み合わせて使用する。
【0017】
(B)N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物は、前記一般式(2)で表される化合物である。一般式(2)において、Rは炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基であり、具体的にはエチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基等がある。好ましいN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物としては、N、N'−ビス(サリシリデン)−1、2−プロパンジアミン、N、N'−ビス(サリシリデン)−1、3−プロパンジアミン、N、N'−ビス(サリシリデン)−1、2−フェニレンジアミンである。これらの1種を単独で用いてもよいし、あるいは2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0018】
本発明の汚れ防止剤組成物は、(A)ピペリジン−1−オキシル化合物と(B)N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物、さらにこれらを溶解する溶媒を含んでなるもので、ピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を重量比で100:1〜1:1、好ましくは20:1〜2:1、より好ましくは10:3〜10:1で含んでなる汚れ防止剤組成物である。ピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の配合の範囲は、汚れ防止効果をもとにして見出されたものであり、この範囲を超えると本発明の効果が得られない場合がある。
【0019】
本発明の汚れ防止剤組成物に用いられる有機溶剤としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような炭化水素系溶剤、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサンのような含酸素有機溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどが挙げられ、これらの有機溶剤の1種又は2種類以上を組合せて用いることができる。
【0020】
本発明の汚れ防止剤組成物におけるピペリジン−1−オキシル化合物およびN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の濃度は、特に限定されないが、通常、使用上の取り扱い性を考慮して、それぞれ単独で1〜50重量%、両者の合計で5〜50重量%の溶液である。
【0021】
本発明の効果を損なわない範囲で、適宜、他の公知の汚れ防止剤、重合禁止剤、重合抑制剤、連鎖移動剤、酸化抑制剤などを含むことを何ら妨げるものではない。
【0022】
本発明の汚れ防止方法は、オレフィン類の製造工程あるいは精製工程において、汚れが発生し、製造装置類や精製装置類およびそれらの付帯装置類に汚れが付着・蓄積して、オレフィン類の製造あるいは精製工程の操業や得られる製品品質に支障を来たすことを防止する汚れ防止防止方法であり、オレフィン類の製造工程あるいは精製工程に前記ピペリジン−1−オキシル化合物および前記N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を同時に当該工程流体に添加することを特徴とするオレフィン類の汚れ防止方法である。
【0023】
本発明の汚れ防止方法におけるピペリジン−1−オキシル化合物およびN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の対象とする工程流体への添加比率は、工程の条件(温度、圧力など)、オレフィン類の種類、工程流体中のオレフィン類の濃度、汚れの抑制程度などにより大きく異なり一律に定義できないが、通常、ピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の添加比率は重量比で100:1〜1:1、好ましくは20:1〜2:1、より好ましくは10:3〜10:1である。添加比率の範囲は、汚れ防止効果をもとにして見出されたものであり、この範囲を超えると本発明の効果が得られない場合がある。
【0024】
本発明の汚れ防止方法におけるピペリジン−1−オキシル化合物およびN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の対象とする工程流体への添加量は、工程の条件(温度、圧力など)、オレフィン類の種類、工程流体中のオレフィン類の濃度、汚れの抑制程度などにより大きく異なり一律に定義できないが、通常、ピペリジン−1−オキシル化合物の添加量としては、0.1〜50(mg/工程流体−1kg)、好ましくは0.5〜20(mg/工程流体−1kg)、さらに好ましくは1〜10(mg/工程流体−1kg)である。また、N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の添加量としては、工程流体に対して0.01〜5(mg/工程流体−1kg)、好ましくは0.05〜2(mg/工程流体−1kg)、さらに好ましくは0.1〜1(mg/工程流体−1kg)である。ピペリジン−1−オキシル化合物の添加量が、0.1(mg/工程流体−1kg)未満では、十分な本発明の効果を得ることができないことがあり、50(mg/工程流体−1kg)を超えても本発明の効果の向上が得られるが、ピペリジン−1−オキシル化合物の添加量の増加に見合うだけの汚れ防止効果の向上が小さく、コストパフォーマンスが小さくなる場合がある。また、N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の添加量が、0.01(mg/工程流体−1kg)未満では、十分な本発明の効果を得ることができないことがあり、10(mg/工程流体−1kg)を超えても効果の向上は得られるが、N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミ化合物の添加量の増加に見合うだけの汚れ防止効果の向上が小さく、コストパフォーマンスが小さくなる場合がある
本発明の汚れ防止剤組成物の添加及び汚れ防止方法におけるピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の工程内への添加箇所は、通常、汚れが問題となる箇所あるいはその上流部に添加する。流れている工程では、汚れ問題が発生する工程より上流に添加しておけば、後段の工程においても汚れの抑制として作用する。特にエチレン製造工程のように蒸留を繰り返す工程では、その後段に行くに従い汚れの発生に大きく寄与するジエン化合物の濃度が増大するが、同時に本発明のピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物も濃縮されて高い濃度となるので汚れ防止効果も大きくなるので都合がよい。
【0025】
本発明の汚れ防止剤組成物の添加方法は、特に限定されるものではないが、通常の薬品注入ポンプを用いて添加される。
【0026】
また、本発明の汚れ防止方法におけるピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物の添加方法は、ピペリジン−1−オキシル化合物とN、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物をそれぞれ単独に加えてもよく、個々に有機溶剤に溶解して加えても良い。好ましくは、それぞれトルエン、キシレン、エチルベンゼンのような炭化水素系溶剤、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジオキサンのような含酸素溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの1種あるいは2種類以上の溶剤に溶解して、薬品注入ポンプを用いて添加する。溶解する場合の濃度は特に限定されないが、通常、0.1〜50重量%である。
【0027】
【実績例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
(A:ピペリジン−1−オキシル化合物)
・A−1:2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TEMPO)
・A−2:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(H−TEMPO)
A−3:4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(O−TEMPO)
【0029】
(B:N、N'−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物)
B−1:N、N'−ビス(サリシリデン)−1、2−プロパンジアミン(BSPDA)
B−2:N、N'−ビス(サリシリデン)−1、3−プロパンジアミン(BSPD)
B−3:N、N'−ビス(サリシリデン)−1、2−フェニルジアミン(BSPHD)
【0030】
(C:その他)
C−1:スチレン−マレイン酸ドデシル共重合体(モル比1:1、分子量50,000)
C−2:ポリイソブテニル(分子量5,000)コハク酸とペンタエリスリトールの1:1モル比のフルエステル
C−3:p−tert−ブチルカテコール(TBC)
C−4:N、N−ジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)
C−5:N、N‘−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン(PDA)
D−1:エチレングリコールモノブチルエーテル
【0031】
(汚れ抑制試験)
ステンレス製オートクレーブ(内容量0.1L)に表1記載の汚れ抑制剤を所定量添加して、系内を窒素ガスで充填、減圧パージを3回繰り返して、系内の酸素を除いた。汚れが発生しているエチレン製造装置の脱プロパン塔塔底液20gを加え、オートクレーブを密閉した。その後、オートクレーブを100℃にて3時間加熱した後、オートクレーブを急冷し、内容物をビーカーに取り出し、9倍容量のメタノールを加え、析出したポリマーを分離させ、予めメタノール洗浄後105℃にて2時間乾燥した既知重量のメンブランフィルター(孔径が1μm)を用いて吸引ろ過し、生成したポリマーをフィルター上に分離した。フィルターをメタノールで3回洗浄後、105℃にて2時間乾燥し、その重量を測定し、その値からポリマー発生量(g)を求め、次式からポリマー発生抑制率(%)を求めた。
ポリマー発生抑制率(%)=〔(α―β)/α〕×100
α:汚れ抑制剤無添加時のポリマー発生量(g)
β:汚れ抑制剤添加時のポリマー発生量(g)
結果を表1に示した。
【0032】
【表1】
Figure 0004398169
【0033】
本発明の汚れ抑制剤を添加した汚れ抑制方法により、ピペリジン−1−オキシル化合物単独使用の場合やN、N'−ジサリシリデン−1、2−プロパンジアミン単独使用の場合よりもポリマー生成量が少なく、汚れ抑制効果が大きいことがわかる。また、従来から用いられているp−tert−ブチルカテコール、N、N−ジエチルヒドロキシルアミン、N、N‘−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミンとN、N'−ジサリシリデン−1、2−プロパンジアミンの併用と比べても本発明の方法はポリマー生成抑制効果が高くなっていることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
本発明の汚れ防止剤組成物および汚れ防止方法により、オレフィン類の製造あるいは精製工程におけるポリマー抑制効果(汚れ抑制効果)が格段、向上し、概装置の運転の安定化がもたらされる。その結果、長期連続運転が可能となり、経費節減に大きく寄与する。

Claims (6)

  1. (A)一般式(1)(式中、Xは水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基または炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表されるピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)一般式(2)(式中、Rは炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基を示す。)で表されるN、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を含有してなることを特徴とする、オレフィン類の製造工程あるいは精製工程において、製造装置類や精製装置類およびそれらの付帯装置類に汚れが付着・蓄積して、オレフィン類の製造あるいは精製工程の操業や得られる製品品質に支障を来たすことを防止する汚れ防止剤組成物。
    Figure 0004398169
    Figure 0004398169
  2. 前記(A)ピペリジン−1−オキシル化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルおよび2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソピペリジン−1−オキシルから選らばれる1種以上である請求項1記載の汚れ防止剤組成物。
  3. 前記(B)N、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物が、N、N’−ビス(サリシリデン)−1、2−プロパンジアミン、N、N’−ビス(サリシリデン)−1、3−プロパンジアミン、N、N’−ビス(サリシリデン)−1、2−フェニレンジアミンから選らばれる1種以上である請求項1記載の汚れ防止剤組成物。
  4. 前記(A)ピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)N、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を100:1〜1:1(重量比)で含有する請求項1〜3の何れか記載の汚れ防止剤組成物。
  5. オレフィン類の製造工程あるいは精製工程において、(A)一般式(1)(式中、Xは水素原子、酸素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のカルボン酸基または炭素数1〜3のアミド基を示す。)で表されるピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)一般式(2)(式中、Rは炭素数2〜6のアルキレン基、フェニレン基を示す。)で表されるN、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を同時に当該工程流体に添加することを特徴とする汚れ防止方法。
  6. (A)ピペリジン−1−オキシル化合物と、(B)N、N’−ビス(サリシリデン)ジアミン化合物を工程流体に対して、重量比で100:1〜1:1で添加する請求項5記載の汚れ防止方法。
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