しかしながら、上記従来技術では、記録層101、記録層である光吸収層107、及び光ディスク基板100の変形を伴うため、記録層除去領域103、変形領域105及び変質領域109が広がり易く、微細パターンを安定して形成できないという問題がある。
例えば、図26に示すように、記録層101を蒸発させて除去する場合、除去された記録層101の近傍の記録層101も溶融状態となっており、該溶融状態の記録層101が不均一に固化することにより、変形領域105のエッジ部分が不明瞭となり、微細パターンの形成が阻害される。また、図27に示すように、記録層101を光ディスク基板100から剥離する場合、記録層101と光ディスク基板100との密着状態の変動や記録層101自体の強度変動により、変形領域105のエッジ部分が不明瞭となり、微細パターンの形成が阻害される。さらに、図28に示すように、記録層である光吸収層107と樹脂からなる光ディスク基板100とを溶解混合する場合、温度が十分に上昇した集光ビーム102中心付近においては、十分な混合溶解が発生するが、その周辺領域においては、混合溶解が不十分となる。その結果、変質領域109のエッジ部分が不明瞭となり、微細パターンの形成が阻害される。
トラックピッチが2400nmでありかつ幅200nmのトラックを形成する場合において、上記記録層101を蒸発させて除去する方法で原盤を形成した場合の形成パターンの断面形状のAFM像では、図29に示すように、エッジ部分が傾斜し不明瞭であり、かつ表面付近でパターンが広がっていることが分かる。そのため、この方法では微細パターンの形成が困難となる。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成し得る微細パターンの形成方法及び光メモリ素子用原盤の製造方法、並びに光メモリ素子用原盤、光メモリ素子用スタンパ及び光メモリ素子を提供することにある。
本発明の微細パターンの形成方法は、上記課題を解決するために、記録層の気体化温度が、該記録層の裏面に設けられた第1保護層の融点及び該記録層の表面に設けられた第2保護層の融点よりも低い構成の多層構造に対して、該第1保護層、記録層又は第2保護層のいずれか1層に光ビームを集光照射することにより、該記録層に空洞領域を形成することを特徴としている。なお、第1保護層、記録層又は第2保護層のいずれか1層に光ビームを集光照射するとは、光ビームを第1保護層、記録層又は第2保護層のいずれか1層に集中的に照射することをいう。したがって、例えば、第1保護層に集光照射したときには、光ビームは記録層及び第2保護層にも照射されている。
上記の発明によれば、記録層の気体化温度が、記録層の両面に設けられた第1保護層の融点及び第2保護層の融点よりも低いため、光ビームが集光照射され、記録層が気体化温度以上の温度に温度上昇した場合においても、第1保護層の温度及び第2保護層の温度が融点に達していない。したがって、第1保護層と第2保護層とが大きく変形することなく、記録層が気体化し、該記録層に空洞領域が形成される。このとき、記録層が気体化した領域の周辺には、記録層が溶融した溶融領域が形成されるが、第1保護層及び第2保護層の変形が抑制されていることにより、該溶融領域は、記録層が気体化した空洞領域における圧力を受け、非溶融領域に対して圧縮されることになる。
この結果、第1保護層と第2保護層との間の限られた空間の中で、記録層の気体化に伴う空洞領域が形成されるため、該空洞領域の拡大が、周囲に存在する溶融領域及び非溶融領域の記録層により抑制され、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記第1保護層としての、ガラス、金属又はSiウエハーからなる基板上に、前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層としての光吸収層とを順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成することを特徴としている。
上記構成は、第1保護層としてガラス又は金属又はSiウエハーからなる基板を、記録層として樹脂層を、第2保護層として光吸収層を用いた構成である。ここで、ガラス基板としては、合成石英ガラスやソーダライムガラス等の基板を用い、金属基板としては、アルミ基板やステンレス基板を用いることが可能である。また、基板として半導体素子形成用のSiウエハーを用いることが可能である。次に、樹脂層としては、フォトレジスト等の樹脂層や紫外線硬化樹脂層を用いることが可能であり、光吸収層としては、使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層の気体化温度以上まで温度上昇することが必要であり、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。
したがって、空洞領域が形成される樹脂層が、高い融点を有する基板と光吸収層との間に挟まれて、該空洞領域が形成される空間が限定されることにより、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
ここで、本明細書における記録層の気体化温度とは、記録層が温度上昇により気体化する温度のこと意味している。例えば、記録層として樹脂層を用いた場合、樹脂を構成する分子がばらばらになり、気体化する温度のことを意味している。特に、記録層が樹脂等の有機物の場合、気体化する温度が熱分解温度又は酸化分解温度と呼ばれることがある。また、多くの樹脂材料の場合、段階的に熱分解温度又は酸化分解温度が起こる場合があり、本明細書においては、そのうちの最も低い温度を示して気体化温度と呼ぶ。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記第1保護層としての、金属又はSiウエハーからなる基板上に、前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層としての透明保護層とを順次形成し、金属又はSiウエハーからなる上記基板上に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成することを特徴としている。
上記構成は、第1保護層として金属又はSiウエハーからなる基板を、記録層として樹脂層を、第2保護層として透明保護層を用いた構成である。この構成においては、光吸収層が存在しないため、基板表面に光ビームを集光照射して、基板表面で集光照射された光ビームを吸収して、樹脂層を気体化温度以上の温度まで温度上昇させるものである。金属基板としては、アルミ基板やステンレス基板を用いることが可能であるが、この場合、基板表面での光反射率が大きくなり、十分な温度上昇を得るために、集光照射する光ビームの強度を大きくすることが必要となる。したがって、相対的に光反射率の小さい例えばタンタル(Ta)シートからなる基板を用いることが望ましい。さらに、シリコン(Si)ウエハーを用いれば、効果的に光反射率を小さくすることが可能となり、空洞領域形成に使用する光ビーム強度を低減することができる。次に、樹脂層としては、フォトレジスト層や紫外線硬化樹脂層を用いることが可能である。次に、透明保護層としては、窒化アルミニウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体を用いることが可能である。
したがって、空洞領域が形成される樹脂層が、高い融点を有する基板と透明保護層との間に挟まれて、該空洞領域が形成される空間が限定されることにより、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、基板上に、前記第1保護層としての下地層と前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層としての光吸収層とを順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成することを特徴としている。
上記構成は、基板上に、第1保護層として下地層を、記録層として樹脂層を、第2保護層として光吸収層を用いた構成である。ここで、記録層である樹脂層としては、フォトレジスト等の樹脂層や紫外硬化樹脂層を用いることが可能である。また、記録層である樹脂層の気体化温度が、第1保護層である下地層の融点よりも低いことが必要であり、下地層としてバナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層や、窒化アルミ二ウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体層を用いることが可能である。また、記録層である樹脂層の気体化温度が、第2保護層である光吸収層の融点よりも低いことと、光吸収層が空洞領域形成に使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層の気体化温度以上まで温度上昇することとが必要であり、光吸収層として、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。
したがって、空洞領域が形成される樹脂層が、高い融点を有する下地層と光吸収層との間に挟まれて、該空洞領域が形成される空間が限定されることにより、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
この場合、樹脂層の空洞領域が形成される空間が、下地層と光吸収層とにより限定されるため、基板として樹脂基板等の安価な基板を採用することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、基板上に、前記第1保護層としての光吸収層と前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層としての透明保護層とを順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成することを特徴としている。
上記構成は、基板上に、第1保護層として光吸収層を、記録層として樹脂層を、第2保護層として透明保護層を用いた構成である。ここで、記録層である樹脂層としては、フォトレジスト等の樹脂層や紫外硬化樹脂層を用いることが可能である。また、記録層である樹脂層の気体化温度が、第1保護層である光吸収層の融点よりも低いことと、使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層の気体化温度以上まで温度上昇することとが必要であり、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。また、記録層である樹脂層の気体化温度が、透明誘電体層の融点よりも低いことが必要であり、窒化アルミ二ウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体層を用いることが可能である。
したがって、空洞領域が形成される樹脂層が、高い融点を有する光吸収層と透明保護層の間に挟まれて、該空洞領域が形成される空間が限定されることにより、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
この場合、樹脂層の空洞領域が形成される空間が、光吸収層と透明保護層とにより限定されるため、基板として樹脂基板等の安価な基板を採用することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記第1保護層としての基板上に、前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層と光吸収層とを順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成することを特徴としている。
この場合、多層構造における総光吸収量が向上し、樹脂層の気体化を促すため、光ビームに対する感度が向上し、より小さな光ビームのパワーで微細パターンを形成することができる。また、第1保護層及び第2保護層として光の吸収率が低い材料を使用した場合においても、樹脂層に微細なパターンを形成することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、基板上に、前記第1保護層と前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層と光吸収層とを順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成することを特徴としている。
この場合、基板が樹脂層に隣接していないため、融点の低いポリカーボネイト等のSi基板等よりも安価な基板を使用することができる。また、多層構造における総光吸収量が向上し、樹脂層の気体化を促すため、光ビームに対する感度が向上し、より小さな光ビームのパワーで微細パターンを形成することができる。また、第1保護層及び第2保護層として光の吸収率が低い材料を使用した場合においても、樹脂層に微細なパターンを形成することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記第1保護層と前記基板との間に、該基板の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する中間層を備えていることを特徴としている。
この場合、基板側への熱の拡散を防ぐ効果があり、光ビームに対する感度が向上し、より小さな光ビームのパワーで微細パターンを形成することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記第1保護層又は第2保護層の少なくとも一方が、無機物であることを特徴としている。
この場合、無機物は、有機物に比較して機械的強度が強いため、温度変化時における第1保護層又は第2保護層の耐久性を向上させることができ、より良好な形状の微細パターンを形成することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記光吸収層が、無機物であることを特徴としている。
この場合、上記同様に、無機物は、有機物に比較して機械的強度が強いため、温度変化時における第1保護層又は第2保護層の耐久性を向上させることができ、より良好な形状の微細パターンを形成することができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記光吸収層が、Si若しくはGeの単体、又はこれらを主成分とした、化合物若しくは混合物からなることを特徴としている。
この場合、Si若しくはGeは、金属等に比較して熱伝導率が小さいため、光レーザの照射時における熱の拡散量が小さく、光レーザに対する感度を向上させることができる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記記録層としての樹脂層が、気体化温度とガラス転移点との温度差が180℃以内の樹脂であることを特徴としている。
この場合、より円形に近い、良好な形状の微細パターンが得られる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記記録層としての樹脂層が、PHS系樹脂または該樹脂の重量比率が50%以上の混合物であることを特徴としている。
この場合、より円形に近い、良好な形状の微細パターンが得られる。
また、本発明の微細パターンの形成方法は、上記記載の微細パターンの形成方法において、前記微細パターン形成後に、上記記録層としての樹脂層のガラス転移点以上、気体化温度未満の範囲内でのアニール工程を含むことを特徴としている。
この場合、形成された微細パターンのエッジ部分のわずかな隆起が低減され、また、ラフネスが改善される。この結果、光ディスク用原盤に用いる場合、信号再生時のノイズを減少させることができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、ガラス、金属又はSiウエハーからなる基板上に、記録層としての樹脂層と、光吸収層とを、該樹脂層の気体化温度が、該基板の融点及び光吸収層の融点よりも低くなる構成にて順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成した後、上記光吸収層を除去して、空洞領域を有する該樹脂層を露出させることを特徴としている。
この場合、前にも説明したように、樹脂層としては、フォトレジスト等の樹脂層や紫外線硬化樹脂層を用いることが可能であり、光吸収層としては、使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層の気体化温度以上まで温度上昇することが必要であり、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。
したがって、上記記録層に空洞領域を形成した後、スパッタリングやドライエッチング等により光吸収層を均一に除去して、記録層を露出させることにより、表面に微細なパターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、金属又はSiウエハーからなる基板上に、記録層としての樹脂層と、透明保護層とを、該樹脂層の気体化温度が、該基板の融点及び透明保護層の融点よりも低くなる構成にて順次形成し、上記基板上に、表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、該記録層に空洞領域を形成した後、上記透明保護層を除去して、空洞領域を有する該樹脂層を露出させることを特徴としている。
この場合、前にも説明したように、樹脂層としては、フォトレジスト層や紫外線硬化樹脂層を用いることが可能であり、透明保護層としては、窒化アルミニウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体を用いることが可能である。
したがって、記録層に空洞領域を形成した後、スパッタリングやドライエッチング等により透明保護層を均一に除去して、記録層を露出させることにより、表面に微細なパターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、基板上に、下地層と、記録層としての樹脂層と、光吸収層とを、該樹脂層の気体化温度が、該下地層の融点及び該光吸収層の融点よりも低くなる構成にて順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、該樹脂層を気体化させることにより、該記録層に空洞領域を形成した後、該光吸収層を除去して、空洞領域を有する該樹脂層を露出させることを特徴としている。
この場合、前にも説明したように、樹脂層としては、フォトレジスト層や紫外線硬化樹脂層を用いることが可能であり、光吸収層としては、使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層の気体化温度以上まで温度上昇することが必要であり、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。
したがって、記録層に空洞領域を形成した後、スパッタリングやドライエッチング等により光吸収層を均一に除去して、記録層を露出させることにより、表面に微細なパターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記課題を解決するために、基板上に、光吸収層と、記録層としての樹脂層と、透明保護層とを、該樹脂層の気体化温度が、該光吸収層の融点及び該透明保護層の融点よりも低くなる構成にて順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層を気体化させることにより、該記録層に空洞領域を形成した後、上記透明保護層を除去して、空洞領域を有する該樹脂層を露出させることを特徴としている。
この場合、前にも説明したように、樹脂層としては、フォトレジスト層や紫外線硬化樹脂層を用いることが可能であり、透明保護層としては、窒化アルミニウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体を用いることが可能である。
したがって、記録層に空洞領域を形成した後、スパッタリングやドライエッチング等により透明保護層を均一に除去して、記録層を露出させることにより、表面に微細なパターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記記載の光メモリ素子用原盤の製造方法において、前記第1保護層としての基板上に、前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層と光吸収層とを順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成した後、上記光吸収層及び上記第2保護層を除去して、空洞領域を有する該樹脂層を露出させることを特徴としている。
この場合、多層構造における総光吸収量が向上し、樹脂層の気体化を促すため、光ビームに対する感度が向上し、より小さな光ビームのパワーで微細パターンを形成することができる。また、第1保護層及び第2保護層として光の吸収率が低い材料を使用した場合においても、表面に微細なパターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記記載の光メモリ素子用原盤の製造方法において、基板上に、前記第1保護層と前記記録層としての樹脂層と前記第2保護層と光吸収層とを順次形成し、上記光吸収層に表面側から光ビームを集光照射し、上記樹脂層の一部を気体化させることにより、上記記録層に空洞領域を形成した後、上記光吸収層及び上記第2保護層を除去して、空洞領域を有する該樹脂層を露出させることを特徴としている。
この場合、基板が樹脂層に隣接していないため、融点の低いポリカーボネイト等のSi基板等よりも安価な基板を使用することができる。また、多層構造における総光吸収量が向上し、樹脂層の気体化を促すため、光ビームに対する感度が向上し、より小さな光ビームのパワーで微細パターンを形成することができる。また、第1保護層及び第2保護層として光の吸収率が低い材料を使用した場合においても、表面に微細なパターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記記載の光メモリ素子用原盤の製造方法において、第1保護層と上記基板との間に、基板の熱伝導率より小さい熱伝導率を有する中間層を備えているか、或いは、上記第1保護層、第2保護層又は光吸収層の少なくとも一方が無機物であるか、或いは、上記光吸収層がシリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)の単体、又はこれらを主成分とした、化合物または混合物であるか、或いは、上記記録層としての樹脂層が、気体化温度とガラス転移点との温度差が180℃以内の樹脂であることを特徴としている。
この場合、微細パターン表面に微細パターンを有した光メモリ素子を製造する際に、前にも述べたように、カッティング感度が向上するか、或いは、より安定して微細パターンを形成できるか、或いは、より良好な微細パターンを形成できるかの少なくとも1つの効果を得ることができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記記載の光メモリ素子用原盤の製造方法において、前記第2保護層が酸又はアルカリのうちの少なくとも一方の溶液に対して溶解性を有し、前記記録層としての樹脂層は該溶液に対して不溶性を有し、光ビームの照射により上記樹脂層を気体化させることにより、該記録層に空洞領域を形成した後、上記第2保護層を上記溶液によって除去して、空洞領域を有する該樹脂層を露出させることを特徴としている。
この場合、第1保護層が酸又はアルカリの少なくとも一方の溶液に対して溶解性であり、樹脂層は該溶液に対して不溶性であるため、樹脂層に影響を与えることなく、選択的に第2保護層のみを除去することができる。さらに、上記のとおり、光ビーム照射中も第1保護層及び第2保護層は固体状態を保っているため、第2保護層を樹脂層から剥離する場合、第2保護層と樹脂層との密着状態の変化や樹脂層自体の強度変化により、変形領域のエッジ部分が不明瞭となったり、微細パターンの形状を変形させたりすることがなく、樹脂層に形成された空洞領域からなる微細パターンを露出することが可能となる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記記載の光メモリ素子用原盤の製造方法により露出された樹脂層をマスクとして、エッチングにより基板若しくは基板上の下地層又は光吸収層に微細パターンを転写するエッチング工程を有することを特徴としている。
この場合、樹脂層に形成された光ビーム径よりも小さな微細パターンがエッチングにて基板若しくは基板上の下地層又は光吸収層に転写されるので、樹脂層に形成された微細パターンよりも安定性の高い微細パターンを得ることができる。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、前記エッチング工程では、基板若しくは基板上の下地層又は光吸収層の上に樹脂層が残存するようにエッチングを行うと共に、残存する該樹脂層を除去する剥離工程をさらに有することを特徴としている。
この場合、樹脂層を残してエッチングを終えることによりエッチングにて基板若しくは基板上の下地層又は光吸収層の表面が損傷されず、基板若しくは基板上の下地層又は光吸収層の表面が有する平坦性を維持することができ、より平坦性の高い微細パターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができる。また、エッチング深さが凹部の深さとなるので、微細パターンの深さを任意に設定できるといった利点もある。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、前記エッチング工程が、異方性のあるドライエッチングであることを特徴としている。
この場合、樹脂層から基板若しくは基板上の下地層又は光吸収層へと微細パターンを転写する際に、微細パターンのサイズをそのまま良好に保持することができる。
また、上記光メモリ素子用原盤の製造方法に基づいて製造された光メモリ素子用原盤のパターン形成面に導電膜を形成し、該導電膜上にNi金属層を電鋳した後、該Ni電鋳層を該原盤より剥離することにより光メモリ素子用スタンパが形成され、該光メモリ素子用スタンパを成形装置に装填し、ポリカーボネイト等の樹脂を用いて射出成形を行うことにより、樹脂製の光メモリ素子が形成される。
本発明の微細パターンの形成方法は、以上のように、記録層の気体化温度が、該記録層の裏面に設けられた第1保護層の融点及び該記録層の表面に設けられた第2保護層の融点よりも低い構成の多層構造に対して、該第1保護層、記録層又は第2保護層のいずれか1層に光ビームを集光照射することにより、該記録層に空洞領域を形成する方法である。
それゆえ、記録層の気体化温度が、該記録層の両面に設けられた第1保護層の融点及び第2保護層の融点よりも低いため、光ビームが集光照射され、記録層が気体化温度以上の温度に温度上昇した場合においても、第1保護層と第2保護層の温度が融点に達しておらず、第1保護層及び第2保護層とが大きく変形することなく、記録層が気体化し、該記録層に空洞領域が形成される。このとき、記録層が気体化した領域の周辺には、記録層が溶融した溶融領域が形成されるが、第1保護層及び第2保護層の変形が抑制されていることにより、該溶融領域は、記録層が気体化した空洞領域における圧力を受け、非溶融領域に対して圧縮されることになる。
以上のように、第1保護層と第2保護層との間の限られた空間の中で、記録層の気体化に伴う空洞領域が形成されるため、該空洞領域の拡大が、周囲に存在する溶融領域及び非溶融領域の記録層により抑制され、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができるという効果を奏する。
また、本発明の光メモリ素子用原盤の製造方法は、上記微細パターンの形成方法により形成された微細パターンを、上記第2保護層を均一に除去する方法である。
それゆえ、第2保護層が均一に除去されることにより、樹脂層に形成された空洞領域からなる微細パターンが露出し、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを有する光メモリ素子用原盤を製造することができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図1ないし図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態の微細パターンの形成方法は、光メモリ素子用原盤としての光ディスク用原盤を製造するときの微細パターンを形成する場合について説明しているが、必ずしもこれに限らず、他の用途にも使用が可能である。
本実施の形態の微細パターンの形成方法では、図1に示すように、第1保護層としての基板1上に、記録層としての樹脂層2と、第2保護層としての光吸収層3とが積層された構成を有する積層体に対して、光吸収層3側から光吸収層3に光ビーム4を集光照射する。そして、光吸収層3の温度を樹脂層2の気体化温度以上に上昇させて樹脂層2の温度を気体化温度まで温度上昇させることによって、樹脂層2の一部が気体化され、樹脂層2に空洞領域5が形成される。この空洞領域5が本発明の微細パターンとなる。
ここで、本実施の形態の微細パターンの形成方法では、樹脂層2の気体化温度が、樹脂層2の両面に位置する基板1の融点及び光吸収層3の融点よりも低いことが望ましい。このようにすることによって、光ビーム4が集光照射され、樹脂層2が気体化温度以上の温度に温度上昇した場合においても、基板1の温度及び光吸収層3の温度が融点に達しておらず、基板1と光吸収層3とが大きく変形することなく、樹脂層2の一部が気体化し、樹脂層2に空洞領域5が形成される。このとき、樹脂層2が気体化した空洞領域5の周辺には、樹脂層2が溶融した溶融領域6が形成される。ここで、樹脂層2においては、光吸収層3に接した部分の温度がより高くなり、光吸収層3側において樹脂層2の気体化が始まるため、溶融領域6は空洞領域5の側面と基板1側とに存在することになる。また、この溶融領域6は、集光ビーム通過後、温度が下がることにより、樹脂層2の一部となる。
本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、基板1及び光吸収層3の変形が抑制されていることにより、溶融領域6は、樹脂層2の気体化した空洞領域5における圧力を受けることによって、非溶融領域に対して圧縮されることになる。したがって、基板1と光吸収層3との間の限られた空間の中で、樹脂層2の気体化に伴う空洞領域5が形成されるため、該空洞領域5の拡大が、周囲に存在する溶融領域6及び非溶融領域の樹脂層2により抑制される。この結果、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークとなる空洞領域5のエッジ部分が明瞭で、かつ、より微細なパターンを形成することができる。
すなわち、本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、記録層としての樹脂層2の気体化温度が、該樹脂層2の両面に設けられた第1保護層としての基板1の融点及び第2保護層としての光吸収層3の融点よりも低い構成の多層構造に対して、光吸収層3側から基板1、樹脂層2及び光吸収層3のうちの光吸収層3に光ビーム4を集光照射することにより、樹脂層2に、記録マークのエッジ部分が明瞭で、かつ、より微細なパターンを形成することができる。
次に、本実施の形態の微細パターンの形成方法において、光吸収層3に光ビームを集光照射させる、光ディスク用原盤の微細パターン形成装置10について、図2に基づいて説明する。
本実施の形態の微細パターン形成装置10では、同図に示すように、レーザ光源7から出射したレーザ光8は、ミラー9aにより反射された後、光変調器11により光強度が変調される。次に、再度、ミラー9bに反射された後、光ビームエキスパンダ12によりビーム径が拡大され、光ヘッド15へと入射する。光ヘッド15に入射したレーザ光13は、立ち下げミラー14により反射され、集光レンズ16により上記樹脂層2及び光吸収層3が設けられた基板1上に集光照射される。
一方、ディスク状の基板1は、スピンドル17上に固定され、スピンドル17と共に回転駆動される。同時に、光ヘッド15をディスク状の基板1の半径方向に移動させることにより、ディスク状の基板1には、光ディスク用の案内溝又はピットからなる微細パターンがスパイラル状に形成される。
次に、図3に示すように、上記案内溝又はピットを構成する空洞領域5からなる微細パターンを形成した後、光吸収層3を除去することにより、空洞領域5が露出することになる。樹脂層2に形成された空洞領域5に伴う凹状パターンを光ディスク用原盤の凹状パターンとして使用することにより、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭で、かつ、より微細なパターンを有する光ディスク用原盤を製造することが可能となる。
また、上記光ディスク用原盤の製造方法に基づいて製造された光ディスク用原盤のパターン形成面に導電膜を形成し、この導電膜上にNi金属層を電鋳(電気めっき)した後、該Ni電鋳層を該光ディスク用原盤から剥離することにより光メモリ素子用スタンパが形成され、該光メモリ素子用スタンパを成形装置に装填し、ポリカーボネイト等の樹脂を用いて射出成形を行うことにより、樹脂製の光メモリ素子が形成される。
次に、上記基板1、樹脂層2及び光吸収層3として使用可能な材料について説明する。
まず、記録層である樹脂層2としては、フォトレジスト等の樹脂や紫外線硬化樹脂を用いることが可能である。このように有機材料をその構成要素とする材料においては、その気体化温度を、基板1及び光吸収層3の材料として使用する金属材料や誘電体材料の各融点よりも低くすることが可能である。
次に、第1保護層である基板1としては、合成石英ガラスやソーダライムガラス等のガラス基板、アルミシートやステンレスシート等の金属基板、又は半導体素子形成用のSiウエハー等を用いることが可能である。これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成する際の基板1の変形を抑制することができる。
次に、第2保護層である光吸収層3としては、使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層2の気体化温度以上まで温度上昇することが必要であり、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。また、これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成するときの光吸収層3の変形を抑制することができる。
しかしながら、基板1、樹脂層2及び光吸収層3は、上記材料に限られるものではない。すなわち、記録層としての樹脂層2の気体化温度が、第1保護層としての基板1の融点及び第2保護層としての光吸収層3の融点よりも低い構成であれば、樹脂層2に空洞領域5を形成するときに、基板1及び光吸収層3の変形が抑制され、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭で、かつ、より微細なパターンを有する光ディスク用原盤を製造することを可能にすることができる。
次に、光ディスク用原盤を製造するときの、光吸収層3の除去方法としては、スパッタリングやドライエッチング等を使用することが可能である。例えば、アルゴン(Ar)ガスによるスパッタリングを用いた場合、光吸収層3の材料の如何に関わらず、光吸収層3が均一に除去される。すなわち、光吸収層3がなくなり、樹脂層2が露出するまでスパッタリングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。また、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、及びシリコン(Si)等の材料であれば、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングが可能であり、樹脂層2が露出するまでドライエッチングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。
本実施の形態では、樹脂層2が露出した状態で光ディスク用原盤にしているが、露出された樹脂層2をマスクとして、エッチングにより第1保護層である基板1に微細パターンを転写したものを光ディスク用原盤として扱うこともできる。
ここでのエッチングは、パターンの大きさを保持すべく深さ方向にのみ行いたいため、異方性のあるドライエッチングが好ましい。光ディスク用原盤としてのパターンの深さは、このエッチング工程における条件によって決まるため、所望の深さに対応する条件でエッチングを行う。
また、第2保護層である光吸収層3の除去方法としてドライエッチングを使用する場合は、光吸収層3の除去工程と上記エッチング工程とを連続して行うことができるため、基板1への微細パターンの転写をより容易に行うことが可能である。
、樹脂層2のみを選択的に除去できる方法であれば 図4(a)〜(e)に、エッチングにより微細パターンを基板1に転写した光ディスク用原盤の作製工程を示す。図4(a)は、パターン形成前の基板1上に樹脂層2及び光吸収層3がこの順に積層された製造途中の光ディスク用原盤の一部の断面構造図を示し、同図(b)は、光吸収層3に光ビームを集光照射し、樹脂層2に空洞領域が形成された製造途中の光ディスク用原盤の一部の断面構造図を示し、同図(c)は、光吸収層3を除去することにより、空洞領域5が露出することにより基板1上に凹状パターンが形成された製造途中の光ディスク用原盤の一部の断面構造図を示し、同図(d)は、エッチング工程を経て、基板1に凹状パターンが転写された製造途中の光ディスク用原盤の一部の断面構造図を示し、同図(e)は、残存した樹脂層2を剥離し、基板1に凹状パターンが形成された光ディスク用原盤の一部の断面構造図を示す。
エッチング工程では、図4(d)に示したとおり樹脂層2を残存させ、樹脂層2の剥離工程を引き続き行い、基板1上に残存した樹脂層2を剥離する。樹脂層2の剥離方法については特に限定はない。例えば、基板1は不溶で、樹脂層2は溶解するNaOH等のアルカリ溶液やアセトン等の有機溶剤に浸して剥離することができる。このようにして、図4(e)に示したとおり基板1上に微細パターンが形成された光ディスク用原盤を得ることができる。
このように、樹脂層の剥離工程を別途設けることにより、基板1が元来有している高い平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高い微細パターンの形成が可能となる。これは、エッチング工程で樹脂層2を剥離したものは、エッチングにて基板1の表面が損傷を受けてしまい、元来有する平坦性が損なわれてしまうためである。
なお、ここでは、エッチング工程において樹脂層2を残存させ、樹脂層2の剥離工程を引き続き行うこととしているが、このエッチング工程にて樹脂層2を完全に無くしてしまい、樹脂層2を完全に除去した状態のものを、光ディスク用原盤として扱うことができる。また、図4(d)に示した樹脂層2が残存している状態のものを、光ディスク用原盤として扱うこともできる。何れのものも、基板1に微細パターンが存在するため、温度や湿度のような環境変化に対して安定性の高い微細パターンの形成が可能となる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図5及び図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施の形態についても、光メモリ素子用原盤としての光ディスク用原盤を製造するときの微細パターンを形成する方法について説明する。
本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、図5に示すように、第1保護層としての基板18上に、記録層としての樹脂層2と、第2保護層としての透明保護層19とが積層された構成を有する積層体に対して、透明保護層19側からこの透明保護層19と樹脂層2とを透過して、基板18に光ビーム4が集光照射される。これにより、基板18の表面温度を樹脂層2の気体化温度以上に上昇させ、樹脂層2の温度を気体化温度まで温度上昇させることによって、樹脂層2の一部を気体化して空洞領域5が形成される。この空洞領域5が本発明の微細パターンとなる。
ここで、本実施の形態の微細パターンの形成方法では、樹脂層2の気体化温度が、樹脂層2の両面に位置する基板18の融点及び透明保護層19の融点よりも低いことが望ましい。このようにすることによって、光ビーム4が集光照射され、樹脂層2が気体化温度以上の温度に温度上昇した場合においても、基板18の温度と透明保護層19の温度とが融点に達しておらず、基板18と透明保護層19とが大きく変形することなく樹脂層2の一部が気体化し、この樹脂層2に空洞領域5が形成される。このとき、樹脂層2が気体化した空洞領域5の周辺には、樹脂層2が溶融した溶融領域6が形成される。ここで、樹脂層2においては、基板18に接した部分の温度がより高くなり、基板18側において樹脂層2の気体化が始まるため、溶融領域6は空洞領域5の側面と透明保護層19側に存在することになる。また、この溶融領域6は、集光ビーム通過後、温度が下がることにより、樹脂層2の一部となる。
上記微細パターンの形成方法においては、基板18及び透明保護層19の変形が抑制されていることにより、溶融領域6は、樹脂層2が気体化した空洞領域5における圧力を受け、非溶融領域に対して圧縮されることになる。したがって、基板18と透明保護層19との間の限られた空間の中で、樹脂層2の気体化に伴う空洞領域5が形成されるため、空洞領域5の拡大が、周囲に存在する溶融領域6及び非溶融領域の樹脂層2により抑制され、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
すなわち、本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、記録層としての樹脂層2の両面に設けられた第1保護層としての基板18の融点と第2保護層としての透明保護層19の融点との両方が樹脂層2の気体化温度よりも低い構成の多層構造に対して、透明保護層19側から第1保護層としての基板18、記録層としての樹脂層2及び第2保護層としての透明保護層19のうち基板18若しくは樹脂層2に光ビーム4を集光照射することにより、記録層としての樹脂層2に、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
次に、上記基板18、樹脂層2及び透明保護層19として使用可能な材料について説明する。
まず、記録層である樹脂層2としては、フォトレジスト等の樹脂や紫外線硬化樹脂を用いることが可能である。このように有機材料をその構成要素とする材料においては、その気体化温度を、基板18や透明保護層19の材料として使用する金属材料や誘電体材料の融点より低くすることが可能である。また、この樹脂層2は、使用する光ビームを基板18に集光し、基板18の表面を温度上昇させるため、使用する光ビームが透過可能であることが望ましい。
次に、第1保護層である基板18としては、使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層2の気体化温度以上まで温度上昇することが必要であり、アルミシートやステンレスシート等の金属基板、又は半導体素子形成用のSiウエハー等を用いることが可能である。これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成するときの基板18の変形を抑制することができる。
次に、第2保護層である透明保護層19としては、使用する光ビームが透過する材料であることが望ましく、窒化アルミニウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体を用いることが可能である。また、これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成するときの透明保護層19の変形を抑制することができる。
しかしながら、基板18及び樹脂層2及び透明保護層19は、上記材料に限られるものではない。すなわち、記録層としての樹脂層2の気体化温度が、第1保護層としての基板18の融点及び第2保護層としての透明保護層19の融点よりも低い構成であれば、記録層としての樹脂層2に空洞領域5を形成するときに、第1保護層としての基板18及び第2保護層としての透明保護層19の変形が抑制され、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭で、かつ、より微細なパターンを有する光ディスク用原盤を製造することを可能にすることができる。
次に、光ディスク用原盤を製造するときの、透明保護層19の除去方法としては、スパッタリングやドライエッチング等を使用することが可能である。例えば、アルゴン(Ar)によるスパッタリングを用いた場合、透明保護層19の材料の如何に関わらず、透明保護層19を均一に除去することができる。本実施の形態においては、図5に示すように、溶融領域6の一部が透明保護層19の裏面に付着しているため、図6に示すように、透明保護層19とこの透明保護層19の裏面に付着した溶融領域6とがなくなるまで、透明保護層19及び樹脂層2のスパッタリングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。また、窒化シリコン、酸化シリコン等の材料であれば、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングが可能である。このときには、同様に、透明保護層19と透明保護層19の裏面に付着した溶融領域6とがなくなるまで、透明保護層19及び樹脂層2のドライエッチングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。
本実施の形態では、樹脂層2が露出した状態で光ディスク用原盤にしているが、実施の形態1と同様に、露出された樹脂層2をマスクとして、エッチングにより第1保護層である基板18に微細パターンを転写したものを光ディスク用原盤として扱うこともできる。
この場合、樹脂層2に形成された光ビーム径よりも小さな微細パターンがエッチングにて基板18に転写されるので、樹脂層2に形成された微細パターンよりも安定性の高い微細パターンを得ることができる。また、エッチング深さが凹部の深さとなるので、微細パターンの深さを任意に設定できるといった利点もある。
また、第2保護層である透明保護層19の除去方法としてドライエッチングを使用する場合は、透明保護層19の除去工程と上記エッチングを連続して行うことができるため、基板18への微細パターンの転写がより容易に行うことが可能である。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について図7及び図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1及び実施の形態2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1及び実施の形態2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施の形態についても、光メモリ素子用原盤としての光ディスク用原盤を製造するときの微細パターンを形成する方法について説明する。
本実施の形態の微細パターンの形成方法では、図7に示すように、基板1の上に、第1保護層としての下地層20と、記録層としての樹脂層2と、第2保護層としての光吸収層21とが積層された構成を有する積層体に対して、光吸収層21に光ビーム4が集光照射される。これにより、光吸収層21の温度を樹脂層2の気体化温度以上に上昇させ、樹脂層2の温度を気体化温度まで温度上昇させることによって、樹脂層2の一部を気体化して空洞領域5が形成される。この空洞領域5が、本発明の微細パターンとなる。
ここで、本実施の形態の微細パターンの形成方法では、樹脂層2の気体化温度が、樹脂層2の両面に位置する下地層20の融点と光吸収層21の融点よりも低いことが望ましい。このようにすることによって、光ビーム4が集光照射され、樹脂層2が気体化温度以上の温度に温度上昇した場合においても、下地層20の温度及び光吸収層21の温度が融点に達しておらず、基板1と下地層20と光吸収層21とが大きく変形することなく、樹脂層2の一部が気体化し、樹脂層2に空洞領域5が形成される。このとき、樹脂層2が気体化した空洞領域5の周辺には、樹脂層2が溶融した溶融領域6が形成される。ここで、樹脂層2においては、光吸収層21に接した部分の温度がより高くなり、光吸収層21側において樹脂層2の気体化が始まるため、溶融領域6は空洞領域5の側面と下地層20側とに存在することになる。また、この溶融領域6は、集光ビーム通過後、温度が下がることにより、樹脂層2の一部となる。
本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、下地層20及び光吸収層21の変形が抑制されていることにより、溶融領域6は、樹脂層2が気体化した空洞領域5における圧力を受け、非溶融領域に対して圧縮されることになる。従って、下地層20と光吸収層21との間の限られた空間の中で、樹脂層2の気体化に伴う空洞領域5が形成されるため、空洞領域5の拡大が、周囲に存在する溶融領域6及び非溶融領域の樹脂層2により抑制される。この結果、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークとなる空洞領域5のエッジ部分が明瞭で、かつ、より微細なパターンを形成することができる。
すなわち、本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、記録層としての樹脂層2の気体化温度が、該樹脂層2の両面に設けられた第1保護層としての下地層20の融点及び第2保護層としての光吸収層21の融点よりも低い構成の多層構造に対して、第2保護層としての光吸収層21に光ビームを集光照射することにより、記録層としての樹脂層2に、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
次に、図8に示すように、上記空洞領域5からなる微細パターンを形成した後、光吸収層21を除去することにより、空洞領域5が露出することになる。樹脂層2に形成された空洞領域5に伴う凹状パターンを光ディスク用原盤の凹状パターンとして使用することにより、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを有する光ディスク用原盤を製造することが可能となる。
次に、上記基板1、下地層20、樹脂層2及び光吸収層21として使用可能な材料について説明する。
まず、基板1としては、基板としての形状を維持することができればあらゆる材料を使用することが可能である。本実施の形態においては、樹脂層2における空洞領域5の形成範囲を限定する役割を、第1保護層としての下地層20と第2保護層としての光吸収層21とが果たす。したがって、基板1として、ガラス基板やSiウエハーだけでなく、安価なプラスチック基板を採用することも可能である。
次に、記録層である樹脂層2としては、フォトレジスト等の樹脂や紫外線硬化樹脂を用いることが可能である。このように有機材料をその構成要素とする材料においては、その気体化温度を、基板1、下地層20及び光吸収層21の材料として使用する金属材料や誘電体材料の融点より低くすることが可能である。
次に、第1保護層である下地層20としては、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層や、窒化アルミ二ウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体層を用いることが可能である。これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成するときの下地層20の変形を抑制することができる。
次に、第2保護層である光吸収層21としては、使用する光ビームをある程度吸収して記録層である樹脂層2の気体化温度以上まで温度上昇することが必要であり、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。また、これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成するときの光吸収層21の変形を抑制することができる。
しかしながら、下地層20、樹脂層2及び光吸収層21は、上記材料に限られるものではない。すなわち、記録層としての樹脂層2の気体化温度が、第1保護層としての下地層20の融点及び第2保護層としての光吸収層21の融点よりも低い構成であれば、記録層としての樹脂層2に空洞領域5を形成するときに、第1保護層としての下地層20及び第2保護層としての光吸収層21の変形が抑制され、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを有する光ディスク用原盤を製造することを可能にすることができる。
次に、光ディスク用原盤を製造するときの、光吸収層21の除去方法としては、スパッタリングやドライエッチング等を使用することが可能である。例えば、アルゴン(Ar)ガスによるスパッタリングを用いた場合、光吸収層21の材料如何に関わらず、光吸収層21が均一に除去される。すなわち、光吸収層21がなくなり、樹脂層2が露出するまでスパッタリングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。また、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、及びシリコン(Si)等の材料であれば、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングが可能であり、樹脂層2が露出するまでドライエッチングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。
本実施の形態では、樹脂層2が露出した状態で光ディスク用原盤にしているが、実施の形態1と同様に、露出された樹脂層2をマスクとして、エッチングにより第1保護層である下地層20に微細パターンを転写したものを光ディスク用原盤として扱うこともできる。
ここでのエッチングは、パターンの大きさを保持すべく深さ方向にのみ行いたいため、異方性のあるドライエッチングが好ましい。光ディスク用原盤としてのパターンの深さは、このエッチング工程における条件によって決まるため、所望の深さに対応する条件でエッチングを行う。
また、第2保護層である光吸収層21の除去方法としてドライエッチングを使用する場合は、光吸収層21の除去工程と上記エッチング工程とを連続して行うことができるため、下地層20への微細パターンの転写がより容易に行うことが可能である。
エッチング工程では、樹脂層2を残存させ、樹脂層2の剥離工程を引き続き行い、下地層20上に残存した樹脂層2を剥離する。樹脂層2の剥離方法については、樹脂層2のみを選択的に除去できる方法であれば特に限定はない。例えば、下地層20は不溶で、樹脂層2は溶解するNaOH等のアルカリ溶液やアセトン等の有機溶剤に浸して剥離することができる。このようにして、下地層20上に微細パターンが形成された光ディスク用原盤を得ることができる。
このように、樹脂層の剥離工程を別途設けることにより、下地層20が有している平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高い微細パターンの形成が可能となる。
なお、ここでは、エッチング工程において樹脂層2を残存させ、樹脂層2の剥離工程を引き続き行うこととしているが、このエッチング工程にて樹脂層2を完全に無くしてしまい、樹脂層2を完全に除去した状態のものを、光ディスク用原盤として扱うことができる。また、樹脂層2が残存している状態のものを、光ディスク用原盤として扱うこともできる。何れのものも、下地層20に微細パターンが存在するため、安定性の高い微細パターンの形成が可能となる。
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について図9及び図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1〜実施の形態3と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1〜実施の形態3の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施の形態についても、光メモリ素子用原盤としての光ディスク用原盤を製造するときの微細パターンを形成する方法について説明する。
本実施の形態の微細パターンの形成方法では、図9に示すように、基板1の上に、第1保護層としての光吸収層22と、記録層としての樹脂層2と、第2保護層としての透明保護層23とが積層された構成を有する積層体に対して、透明保護層23と樹脂層2とを透過して、光吸収層22に光ビーム4が集光照射される。これにより、光吸収層22の温度を樹脂層2の気体化温度以上に上昇させ、樹脂層2の温度を気体化温度まで温度上昇させることによって、樹脂層2の一部が気体化されて空洞領域5が形成される。この空洞領域5が本発明の微細パターンとなる。
ここで、本実施の形態の微細パターンの形成方法では、樹脂層2の気体化温度が、樹脂層2の両面に位置する光吸収層22の融点及び透明保護層23の融点よりも低いことが望ましい。このようにすることによって、光ビームが集光照射され、樹脂層2が気体化温度以上の温度に温度上昇した場合においても、光吸収層22の温度及び透明保護層23の温度が融点に達しておらず、光吸収層22及び透明保護層23が大きく変形することなく、樹脂層2の一部が気体化して、該樹脂層2に空洞領域5が形成される。このとき、樹脂層2が気体化した空洞領域5の周辺には、樹脂層2が溶融した溶融領域6が形成される。ここで、樹脂層2においては、光吸収層22に接した部分の温度がより高くなり、光吸収層22側において樹脂層2の気体化が始まるため、溶融領域6は空洞領域5の側面と透明保護層23側に存在することになる。また、この溶融領域6は、集光ビーム通過後、温度が下がることにより、樹脂層2の一部となる。
本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、光吸収層22及び透明保護層23の変形が抑制されていることにより、溶融領域6は、樹脂層2が気体化した空洞領域5における圧力を受け、非溶融領域に対して圧縮されることになる。したがって、光吸収層22と透明保護層23との間の限られた空間の中で、樹脂層2の気体化に伴う空洞領域5が形成される。この結果、空洞領域5の拡大が、周囲に存在する溶融領域6及び非溶融領域の樹脂層2により抑制され、従来の方法によるパターンと比較して、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
すなわち、本実施の形態の微細パターンの形成方法においては、記録層としての樹脂層2の気体化温度が、樹脂層2の両面に設けられた第1保護層としての光吸収層22の融点及び第2保護層の融点よりも低い構成の多層構造に対して、第1保護層としての光吸収層22に光ビーム4を集光照射することにより、記録層としての樹脂層2に、記録マークのエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを形成することができる。
次に、上記基板1、光吸収層22、樹脂層2及び透明保護層23として使用可能な材料について説明する。
まず、上記基板1としては、基板としての形状を維持することができればあらゆる材料を使用することが可能である。本実施の形態においては、記録層としての樹脂層2における空洞領域5の形成範囲を限定する役割を、第1保護層としての光吸収層22と第2保護層としての透明保護層23とが果たす。したがって、基板1として、ガラス基板やSiウエハーだけでなく、安価なプラスチック基板を採用することも可能である。
次に、記録層である樹脂層2としては、フォトレジスト等の樹脂や紫外線硬化樹脂を用いることが可能である。このように、有機材料をその構成要素とする材料においては、その気体化温度を、光吸収層22や透明保護層23の材料として使用する金属材料や誘電体材料の融点より低くすることが可能である。
次に、第1保護層である光吸収層22としては、使用する光ビームをある程度吸収して記録層としての樹脂層2の気体化温度以上まで温度上昇することが必要であり、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)等の金属層や、シリコン(Si)若しくはゲルマニウム(Ge)からなる半導体層を用いることが可能である。また、これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成するときの光吸収層22の変形を抑制することができる。
次に、第2保護層である透明保護層23としては、使用する光ビームが透過する材料であることが望ましく、窒化アルミニウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化亜鉛等の透明誘電体を用いることが可能である。また、これらの材料の融点は、有機材料からなる樹脂層2の気体化温度よりも高く、空洞領域5を形成するときの透明保護層23の変形を抑制することができる。
しかしながら、光吸収層22、樹脂層2及び透明保護層23は、上記材料に限られるものではない。すなわち、記録層としての樹脂層2の気体化温度が、第1保護層としての光吸収層22の融点及び第2保護層としての透明保護層23の融点よりも低い構成であれば、記録層としての樹脂層2に空洞領域5を形成するときに、第1保護層としての光吸収層22及び第2保護層としての透明保護層23の変形が抑制され、記録マークである空洞領域5のエッジ部分が明瞭であり、かつより微細なパターンを有する光ディスク用原盤を製造することを可能にすることができる。
次に、光ディスク用原盤を製造するときの透明保護層23の除去方法としては、スパッタリングやドライエッチング等を使用することが可能である。例えば、アルゴン(Ar)ガスによるスパッタリングを用いた場合、透明保護層23の材料如何に関わらず、透明保護層23を均一に除去することができる。本実施の形態においては、図9に示すように、溶融領域6の一部が透明保護層23の裏面に付着しているため、図10に示すように、透明保護層23と、透明保護層23の裏面に付着した溶融領域6とがなくなるまで、透明保護層23及び樹脂層2のスパッタリングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。また、窒化シリコン、酸化シリコン等の材料であれば、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングが可能である。この場合には、同様に、透明保護層23と透明保護層23の裏面に付着した溶融領域6とがなくなるまで、透明保護層23及び樹脂層2のドライエッチングを行うことにより、光ディスク用原盤を製造することができる。
本実施の形態では、樹脂層2が露出した状態で光ディスク用原盤にしているが、実施の形態1と同様に、露出された樹脂層2をマスクとして、エッチングにより第1保護層である光吸収層22に微細パターンを転写したものを光ディスク用原盤として扱うこともできる。
ここでのエッチングは、パターンの大きさを保持すべく深さ方向にのみ行いたいため、異方性のあるドライエッチングが好ましい。光ディスク用原盤としてのパターンの深さは、このエッチング工程における条件によって決まるため、所望の深さに対応する条件でエッチングを行う。
また、第2保護層である透明保護層23の除去方法としてドライエッチングを使用する場合は、透明保護層23の除去工程と上記エッチング工程を連続して行うことができるため、透明保護層23への微細パターンの転写がより容易に行うことが可能である。
エッチング工程では、樹脂層2を残存させ、樹脂層2の剥離工程を引き続き行い、光吸収層22上に残存した樹脂層2を剥離する。樹脂層2の剥離方法については、樹脂層2のみを選択的に除去できる方法であれば特に限定はない。例えば、光吸収層22は不溶で、樹脂層2は溶解するNaOH等のアルカリ溶液やアセトン等の有機溶剤に浸して剥離することができる。このようにして、光吸収層22上に微細パターンで形成された光ディスク用原盤を得ることができる。
このように、樹脂層の剥離工程を別途設けることにより、光吸収層22が有している平坦性をそのまま維持することができ、より平坦性の高い微細パターンの形成が可能となる。
なお、ここでは、エッチング工程において樹脂層2を残存させ、樹脂層2の剥離工程を引き続き行うこととしているが、このエッチング工程にて樹脂層2を完全に無くしてしまい、樹脂層2を完全に除去した状態のものを、光ディスク用原盤として扱うことができる。また、樹脂層2が残存している状態のものを、光ディスク用原盤として扱うこともできる。何れのものも、光吸収層22に微細パターンが存在するため、安定性の高い微細パターンの形成が可能となる。
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について図11及び図12に基づいて説明すれば、以下の通りである。また、本実施の形態についても、光メモリ素子用原盤としての光ディスク用原盤を製造するときの微細パターンを形成する方法について説明する。
図11に示すように、第1保護層としての基板1、樹脂層2、第2保護層24及び光吸収層25をこの順に積層した多層構造に対して、光ビーム4を光吸収層25に照射することによってもパターンを形成することができる。
この微細パターン形成方法では、主に、光ビーム4が光吸収層25によって吸収され熱が発生する。発生した熱は第2保護層24を介して伝導し、樹脂層2の高温部で気体化が起き、空洞領域5が形成される。その後、光吸収層25及び第2保護層24をドライエッチングにより除去することができ、図12に示すように、微細パターンが形成された樹脂層2を露出させることができる。
このように、第1保護層としての基板1及び第2保護層24以外に、新たに光吸収層25を備えることによって、光ビーム照射時の光の吸収量が増加するため、感度が向上する。したがって、より小さな光ビーム4のパワーで微細パターンを形成することができる。
また、第2保護層とは別に、光吸収層を設けたことにより、例えば、第1保護層及び第2保護層として、光の吸収率が低い材料を使用した場合においても、樹脂層2に微細なパターンを形成することができる。
光吸収層25としては、例えば、シリコン(Si)又はゲルマニウム(Ge)等の半導体材料やGeSbTeやAgInSbTe等の相変化材料及びTeFeCo等の磁性材料のような無機物を用いることができる。このような無機物は、有機物に比較して、機械的強度が強いため、温度変化時における光吸収層自体の耐久性を向上させることができ、より良好な形状の微細パターンを形成することができる。特にSiやGeは、金属に比較して、熱伝導度が小さいため、光レーザの照射時における熱の拡散量が小さく、光レーザに対する感度を向上させることができる。
また、基板上に第1保護層、樹脂層、第2保護層及び光吸収層をこの順に積層し、光ビームを光吸収層に照射することによってもパターンを形成することができる。この場合には、基板が樹脂層に隣接していないため、融点の低いポリカーボネイト等のSi基板等よりも安価な基板を使用することができる。
〔実施の形態6〕
本発明のさらに他の実施の形態について図13及び図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。また、本実施の形態についても、光メモリ素子用原盤としての光ディスク用原盤を製造するときの微細パターンを形成する方法について説明する。
図13に示すように、基板1、中間層27、第1保護層26、樹脂層2、第2保護層24及び光吸収層25をこの順に積層しており、上記中間層27が上記基板1よりも熱伝導率が小さい多層構造に対して、光ビーム4を光吸収層25に照射することによって、上記樹脂層2に空洞領域5を形成することができる。その後、光吸収層25及び第2保護層24をドライエッチングにより除去することができ、図14に示すように、微細パターンが形成された樹脂層2を露出させることができる。
この微細パターン形成方法では、中間層27が基板1よりも熱伝導率が小さいために、光ビーム4の照射によって発生した熱が基板方向へ拡散し難くなり、光ビーム4に対する空洞領域5を形成する感度が向上する。このため、より小さい光ビーム4のパワーで微細パターンを形成することが可能である。
〔実施の形態7〕
本発明のさらに他の実施の形態について図15及び図16に基づいて説明すれば、以下の通りである。また、本実施の形態についても、光メモリ素子用原盤としての光ディスク用原盤を製造するときの微細パターンを形成する方法について説明する。
本実施の形態では、図15に示すように、酸又はアルカリ溶液によるウェットエッチングによって除去可能な、第2保護層28を使用する。
すなわち、本実施の形態では、第1保護層としての基板1、樹脂層2、第2保護層28及び光吸収層25をこの順に積層しており、上記樹脂層2が不溶である酸又はアルカリ溶液に対して、上記第2保護層28が溶解性を有する多層構造おいて、光ビーム4を光吸収層25に照射することにより、上記樹脂層2に空洞領域5を形成することができる。
上記構成による微細パターンの形成方法によれば、基板1及び第2保護層28はいずれも光ビーム照射時に固体の状態を保っており、樹脂層2との混合物が形成されることはない。さらに、上記第2保護層28が酸又はアルカリの少なくとも一方の溶液に対して溶解性であり、樹脂層2は該溶液に対して不溶性であるため、樹脂層2に影響を与えることなく、選択的に第2保護層28を除去することができる。
図16は、第2保護層28をウェットエッチングにより除去した後の光メモリ素子用原盤の断面図であり、このように、第2保護層28と共に光吸収層25を除去することが可能である。
例えば、ドライエッチングや逆スパッタ法では、樹脂層2の面に対して垂直にエッチングが進み、樹脂層2もエッチングされることから、樹脂層2と第2保護層28との界面でエッチングをストップさせる必要がある。これに対し、上記で述べたウェットエッチングによれば、樹脂層2は第2保護層28の溶剤に対して溶解性を示さないため、エッチング時間の多少の長短によらず、空洞領域5が形成された樹脂層2を露出することが可能である。
また、ウェットエッチングにより樹脂層2を露出させる場合、第2保護層28及び光吸収層25を除去することが可能であることから、ドライエッチングのレートが著しく小さい材料であっても光吸収層25として用いることができ、多様な材料を光吸収層25として使用することが可能である。
さらに、光ビーム照射中も第1保護層としての基板1及び第2保護層28は固体状態を保っているため、第2保護層28を樹脂層2から除去する場合、第2保護層28と樹脂層2との密着状態の変化や樹脂層2自体の強度変化により、変形領域のエッジ部分が不明瞭となったり、微細パターンの形状を変形させたりすることがなく、樹脂層2に形成された空洞領域5からなる微細パターンを露出することが可能となる。
次に、上記樹脂層2や上記第2保護層28として使用可能な材料について説明する。
まず、上記樹脂層2としては、フォトレジスト等の樹脂や光硬化樹脂を用いることが可能である。このように有機材料をその構成要素とする材料においては、その気体化温度を、第1保護層としての基板1や第2保護層28の材料として使用する金属材料や誘電体材料やガラス、又はセラミック材料の溶融温度より低くすることが可能である。
上記第2保護層28としては、該第2保護層28の溶融温度が樹脂層2の気体化温度よりも高く、樹脂層2が溶解性を示さない酸又はアルカリ溶液に対して溶解性を示す材料を用いることが可能である。
少なくともある種の酸に対して溶解性を示す第2保護層28としては、例えば、Ag、Al、Bi、Co、Cr、Cu、Ni、Pd、Sn、V、WSi2 、Bi2 O3 、CuO、Dy2 O3 、Fe3 O4 、Ga2 O3 、Gd2 O3 、GeO2 、MgO、Mn2 O3 、Nd2 O3 、NiO、Sm2 O3 、V2 O5 、Y2 O3 、ZnOのような金属又は金属酸化物等の無機物をスパッタや蒸着等の方法により成膜して使用できるが、これらに限られるものではない。このような無機物は、有機物に比較して、機械的強度が強いため、温度変化時における第2保護層28自体の耐久性を向上させることができ、より良好な形状の微細パターンを形成することができる。
上記の材料を第2保護層28として用いる場合、樹脂層2として、例えば、通常の露光プロセスで使用されるフォトレジストのような、酸に対して不溶性を有した樹脂を使用することができる。また、上記以外にも、オレフィン系樹脂やアクリル樹脂等の樹脂のうち、第2保護層28の剥離に使用する溶液に対して溶解性を示さない樹脂を使用することができる。
また、少なくともある種のアルカリに対して溶解性を示す第2保護層28としては、例えば、Ca、Mo、Sn、CuO、Er2 O3 、GeO2 、Ca2 O3 、Nb2 O5 、V2 O5 、WO3 のような金属または金属酸化物等の無機物をスパッタや蒸着等の方法により成膜して使用できるが、これらに限られるものではない。このような無機物は、有機物に比較して、機械的強度が強いため、温度変化時における第2保護層自体の耐久性を向上させることができ、より良好な形状の微細パターンを形成することができる。
上記の材料を第2保護層28として用いる場合、樹脂層2として、例えば、紫外線硬化樹脂のような、アルカリに対して不溶性を有した樹脂を使用すればよい。なお、通常の露光プロセスで使用されるフォトレジストは、成膜直後はアルカリに対して不溶性であるが、露光後はアルカリに対して溶解性を有するようになる。このため、アルカリ溶液で第2保護層28を剥離する場合、上記フォトレジストを使用することは望ましくない。
しかしながら、本発明による微細パターンの形成方法では、熱によって樹脂を気体化させているため、光ビーム4の波長は限定されない。従って、照射する光ビーム4の波長では感光しないフォトレジストであれば、アルカリ溶液で第2保護層28を剥離する場合も、従来のフォトレジストを使用することが可能である。
〔実施例1〕
本実施例では、前記実施の形態1の微細パターンの形成方法について行った第1の検証実験について説明する。
まず、基板1としてのディスク状ガラス基板の上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(富士フィルムアーチ社製FH−EX3L1、気体化温度300℃付近)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚40nmの樹脂層2を形成した。次に、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚40nmのタンタル(Ta)膜を形成し、光吸収層3とした。なお、ガラス基板及びタンタル(Ta)の融点は、それぞれ、約1000℃及び約3000℃であり、記録層である上記フォトレジストの気体化温度よりも十分に高く、フォトレジストが気体化する際も、保護層は固体状態を保っている。
上記基板1を、図2に示す装置のスピンドル17に固定し、波長257nmのパルス状レーザ光を上記基板1上の光吸収層3に、開口数0.9の対物レンズを用いて集光照射し、光吸収層3の温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記ディスク状ガラス基板をドライエッチング装置に配置し、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、タンタル(Ta)膜からなる光吸収層3を除去して、凹状の微細パターンである空洞領域5が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した。測定の結果、形成されたパターンのAFM像により、図17に示すように、直径80nm深さ30nmの円柱状の複数の凹部(ピット列)が、トラックピッチ160nm及びピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。なお、同図においては、図の横方向がトラック方向つまりピット列の形成方向に相当する。ここで、トラックピッチとは、ディスク状ガラス基板上の樹脂層2にスパイラル状に形成されたピット列における隣接ピット列とのピッチを意味しており、ピットピッチとは、ピット列内の隣接ピット間のピッチを意味している。
また、図18に示すように、形成されたパターンのトラック方向の断面形状のAFM像により、本実施の形態の形成方法による微細パターンは、従来の方法によるパターンと比較して、エッジ部分が急峻となり明瞭であり、より微細なパターンが形成できることが確認された。
次に、上記凹状微細パターンを有する樹脂層2の表面に、膜厚30nmのニッケル(Ni)膜をスパッタリング法により形成し、該ニッケル(Ni)膜を電極として、0.3mm厚のニッケル(Ni)層の電鋳(電気メッキ)を行い、該ニッケル(Ni)層をニッケル(Ni)膜と共に、樹脂層2から剥離することにより、光ディスク用のスタンパを形成した。該スタンパの表面には、樹脂層2の凹状微細パターンが反転転写された凸状微細パターンの形成が確認された。
次に、上記スタンパを射出成形機に取り付け、ポリカーボネイト樹脂を射出成形することにより、スタンパ表面の凸状微細パターンが再度反転転写された凹状微細パターンをその表面に有する光ディスク状基板を形成することができた。
また、上記フォトレジストからなる樹脂層2の代わりに、層厚120nmの紫外線硬化樹脂からなる樹脂層2を用いて、同様にして、レーザ光を集光照射した。その結果、直径80nm深さ60nmの円柱状の複数の凹部つまりピット列が形成されていることを確認した。樹脂層2として紫外線硬化樹脂を用いた場合においても、同様にして、スタンパ及び光ディスク基板を形成することが可能であった。
〔実施例2〕
本実施例では、前記実施の形態1の微細パターンの形成方法について行った第2の検証実験について説明する。
まず、基板1としてのディスク状ガラス基板(融点約1000℃)の上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(住友化学製PFI−94A6、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚60nmの樹脂層2を形成した。次に、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚40nmのタンタル(Ta)膜(融点約3000℃)を形成し、光吸収層3とした。
上記基板1を、図2に示す装置のスピンドル17に固定し、波長257nmのパルス状レーザ光を上記基板1上の光吸収層3に、開口数0.9の対物レンズを用いて集光照射し、光吸収層3の温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記ディスク状ガラス基板からなる基板1をドライエッチング装置に配置し、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、タンタル(Ta)膜からなる光吸収層3を除去して、凹状の微細パターンである空洞領域5が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
次に、ドライエッチング装置に配置した状態で、引き続き、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、樹脂層2に形成された凹状の微細パターンを基板1に転写した。続いて、基板1上に残存した樹脂層2を、NaOHのアルカリ溶液に浸して剥離した。このようにして、基板1上に微細パターンが形成された光ディスク用原盤を得ることができた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した。測定の結果、形成されたパターンのAFM像により、直径80nm深さ40nmの円柱状の複数の凹部(ピット列)が、トラックピッチ160nm及びピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、図19に示すように、形成されたパターンのトラック方向の断面形状のAFM像により、本実施の形態の形成方法による微細パターンは、従来の方法によるパターンと比較して、エッジ部分が急峻となり明瞭であり、より微細なパターンが形成できることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記凹状微細パターンが形成された基板1を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
〔実施例3〕
本実施例では、前記実施の形態2の微細パターンの形成方法について行った第1の検証実験について説明する。
まず、ディスク状シリコン(Si)ウエハーからなる基板18の上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(富士フィルムアーチ社製FH−EX3L1、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚60nmの樹脂層2を形成した。次に、シリコン(Si)ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた反応性スパッタリングにより層厚40nmの酸化シリコン膜を形成し、透明保護層19とした。なお、シリコン(Si)及び酸化シリコンの融点は、それぞれ、約1400℃及び約700℃であり、記録層である上記フォトレジストの気体化温度よりも十分に高い。
次に、実施例1と同様にして、光ビーム4を上記シリコン(Si)ウエハーからなる基板18の表面に集光照射し、該基板18の表面温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記シリコン(Si)ウエハーからなる基板18をスパッタリング装置に配置し、アルゴン(Ar)ガスを用いたスパッタリングを行うことにより、酸化シリコン膜からなる透明保護層19を除去し、引き続き、透明保護層19の裏面に存在していた溶融領域6の樹脂層2を併せて除去することにより、凹状の微細パターンである空洞領域5が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、直径75nm深さ35nmの円柱状の複数の凹部であるピット列が、トラックピッチ160nm、ピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記微細パターンを有する上記シリコン(Si)ウエハーからなる基板18を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
〔実施例4〕
本実施例では、前記実施の形態2の微細パターンの形成方法について行った第2の検証実験について説明する。
まず、ディスク状シリコン(Si)ウエハー(融点約1400℃)からなる基板18の上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(富士フィルムアーチ社製FH−EX3L1、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚80nmの樹脂層2を形成した。次に、シリコン(Si)ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた反応性スパッタリングにより層厚40nmの酸化シリコン膜(融点約700℃)を形成し、透明保護層19とした。
次に、実施例1と同様にして、光ビーム4を上記シリコン(Si)ウエハーからなる基板18の表面に集光照射し、該基板18の表面温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記シリコン(Si)ウエハーからなる基板18をドライエッチング装置に配置し、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、酸化シリコン膜からなる透明保護層23を除去し、引き続き、透明保護層19の裏面に存在していた溶融領域6の樹脂層2を併せて除去することにより、凹状の微細パターンである空洞領域5が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
次に、ドライエッチング装置に配置した状態で、引き続き、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、樹脂層2に形成された凹状の微細パターンを基板18に転写した。続いて、基板18上に残存した樹脂層2を、NaOHのアルカリ溶液に浸して剥離した。このようにして、基板18上に微細パターンが形成された光ディスク用原盤を得ることができた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、直径75nm深さ40nmの円柱状の複数の凹部であるピット列が、トラックピッチ160nm、ピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記微細パターンが形成されたシリコン(Si)ウエハーからなる基板18を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
〔実施例5〕
本実施例では、前記実施の形態3の微細パターンの形成方法について行った第1の検証実験について説明する。
まず、ディスク状ガラス基板からなる基板1の上に、下地層20として、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚30nmのタンタル(Ta)膜(融点約3000℃)を形成した。次に、上記下地層20上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(住友化学製PFI−94A6、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚40nmの樹脂層2を形成した。次に、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚40nmのタンタル(Ta)膜(融点約3000℃)を形成し、光吸収層21とした。
次に、実施例1と同様にして、光ビーム4を上記光吸収層21に集光照射し、該光吸収層21の表面温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記ディスク状ガラス基板からなる基板1をスパッタリング装置に配置し、アルゴン(Ar)ガスを用いたスパッタリングを行うことにより、タンタル(Ta)膜からなる光吸収層21を除去して、凹状の微細パターン(空洞領域5)が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、直径70nm深さ35nmの円柱状の複数の凹部であるピット列が、トラックピッチ160nm、ピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記微細パターンを有する上記ディスク状ガラス基板からなる基板1を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
〔実施例6〕
本実施例では、前記実施の形態3の微細パターンの形成方法について行った第2の検証実験について説明する。
まず、ディスク状ガラス基板からなる基板1の上に、下地層20として、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚50nmのタンタル(Ta)膜(融点約3000℃)を形成した。次に、上記下地層20上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(住友化学製PFI−94A6、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚60nmの樹脂層2を形成した。次に、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚40nmのタンタル(Ta)膜(融点約3000℃)を形成し、光吸収層21とした。
次に、実施例1と同様にして、光ビーム4を上記光吸収層21に集光照射し、該光吸収層21の表面温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記ディスク状ガラス基板からなる基板1をドライエッチング装置に配置し、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、タンタル(Ta)膜からなる光吸収層21を除去して、凹状の微細パターン(空洞領域5)が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
次に、ドライエッチング装置に配置した状態で、引き続き、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、樹脂層2に形成された凹状の微細パターンを下地層20に転写した。続いて、下地層20上に残存した樹脂層2を、NaOHのアルカリ溶液に浸して剥離した。このようにして、下地層20上に微細パターンが形成された光ディスク用原盤を得ることができた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、直径70nm深さ40nmの円柱状の複数の凹部であるピット列が、トラックピッチ160nm、ピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記微細パターンが下地層20に形成されたディスク状ガラス基板からなる基板1を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
〔実施例7〕
本実施例では、前記実施の形態4の微細パターンの形成方法について行った第1の検証実験について説明する。
まず、ディスク状ガラス基板からなる基板1の上に、光吸収層22として、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚40nmのタンタル(Ta)膜(融点約3000℃)を形成した。次に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(富士フィルムアーチ社製FH−EX3L1、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚60nmの樹脂層2を形成した。次に、シリコン(Si)ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた反応性スパッタリングにより層厚40nmの酸化シリコン膜(融点約700℃)を形成し、透明保護層23とした。
次に、実施例1と同様にして、光ビーム4を上記光吸収層22に集光照射し、該光吸収層22の温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記ガラス基板からなる基板1をスパッタリング装置に配置し、アルゴン(Ar)ガスを用いたスパッタリングを行うことにより、酸化シリコン膜からなる透明保護層23を除去し、引き続き、上記透明保護層23の裏面に存在していた溶融領域6の樹脂層2を併せて除去することにより、凹状の微細パターンである空洞領域5が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、直径75nm深さ35nmの円柱状の複数の凹部(ピット列)が、トラックピッチ160nm、ピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記微細パターンを有する上記ディスク状ガラス基板からなる基板1を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
〔実施例8〕
本実施例では、前記実施の形態4の微細パターンの形成方法について行った第2の検証実験について説明する。
まず、ディスク状ガラス基板からなる基板1の上に、光吸収層22として、タンタル(Ta)ターゲットを用いたスパッタリングにより層厚60nmのタンタル(Ta)膜(融点約3000℃)を形成した。次に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(富士フィルムアーチ社製FH−EX3L1、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、120℃の温度でハードベークを行い、層厚60nmの樹脂層2を形成した。次に、シリコン(Si)ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた反応性スパッタリングにより層厚40nmの酸化シリコン膜(融点約700℃)を形成し、透明保護層23とした。
次に、実施例1と同様にして、光ビーム4を上記光吸収層22に集光照射し、該光吸収層22の温度を樹脂層2の気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
次に、上記ディスク状ガラス基板からなる基板1をドライエッチング装置に配置し、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、酸化シリコン膜からなる透明保護層23を除去し、引き続き、上記透明保護層23の裏面に存在していた溶融領域6の樹脂層2を併せて除去することにより、凹状の微細パターンである空洞領域5が表面に形成された樹脂層2を露出させた。
次に、ドライエッチング装置に配置した状態で、引き続き、四フッ化炭素(CF4 )ガスを用いたドライエッチングを行うことにより、樹脂層2に形成された凹状の微細パターンを光吸収層22に転写した。続いて、光吸収層22上に残存した樹脂層2を、NaOHのアルカリ溶液に浸して剥離した。このようにして、光吸収層22上に微細パターンが形成された光ディスク用原盤を得ることができた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、直径75nm深さ40nmの円柱状の複数の凹部(ピット列)が、トラックピッチ160nm、ピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記微細パターンが光吸収層22に形成されたディスク状ガラス基板からなる基板1を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
〔実施例9〕
本実施例では、前記実施の形態5の微細パターンの形成方法について行った検証実験について説明する。
第1保護層としてのディスク状ガラス基板1(融点約1000℃)の上に、記録層としての樹脂層2を、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(富士アーチ社製FH−EX3L1、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、100℃の温度でハードベークを行い、層厚40nmの樹脂層2を形成した。次に、第2保護層24として、酸化シリコンターゲットを用いたスパッタリングにより層厚40nmの酸化シリコン膜(融点約700℃)を形成し、光吸収層25として、Taターゲットを用いたスパッタリングにより膜厚15nmのTa膜を形成した。続いて、光ビームを光吸収層に照射して微細パターンを形成した後、ドライエッチングにより、光吸収層25及び第2保護層24を除去し樹脂層を露出させた。
このように、第1保護層及び第2保護層として光ビームが透明な材料を用いても、微細パターンを形成することができる。また、光吸収層が無機物であることにより、有機物に比較して、機械的強度が強いため、温度変化時における光吸収層自体の耐久性を向上させることができ、より良好な形状の微細パターンを形成することができる。特にSiやGeは、金属に比較して、熱伝導度が小さいため、光レーザの照射時における熱の拡散量が小さく、光レーザに対する感度を向上させることができる。
〔実施例10〕
本実施例では、前記実施の形態6の微細パターンの形成方法について行った検証実験について説明する。
光ビームの照射から原盤製造までの工程については、上記本発明の第1の実施形態に準じて行えばよく、例えば、ディスク状Si基板1の上に、中間層27として膜厚50nmのZnS・SiO2 、第1保護層26として膜厚20nmのTa(融点約3000℃)、樹脂層2として膜厚40nmのノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(住友化学製PFI−94A6、気体化温度約300℃)、第2保護層24として層厚40nmのMgO(融点約2800℃)、光吸収層25として膜厚20nmのGeを、この順に積層した多層構造体を用いることができる。この多層構造において、光ビームを光吸収層に照射して微細パターンを形成した後、ドライエッチングにより、光吸収層及び第2保護層を除去し樹脂層を露出させた。
このように、中間層27が基板1よりも熱伝導率が小さいために、光ビーム4の照射によって発生した熱が基板方向へ拡散し難くなり、光ビーム4に対する空洞領域5を形成する感度が向上する。このため、より小さい光ビーム4のパワーでパターンを形成することが可能である。また、第1保護層や樹脂層及び第2保護層としては、実施の形態1で述べたような材料を用いることが可能である。
〔実施例11〕
本実施例では、前記実施の形態7の微細パターンの形成方法について行った検証実験について説明する。
第1保護層としてのディスク状石英基板1(融点約1000℃)上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(住友化学製PFI−94A6、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、100℃の温度でハードベークを行い、層厚60nmの樹脂層2を形成した。次に、酸化亜鉛ターゲットを用いて、Arガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた反応性スパッタリングにより層厚32nmの酸化亜鉛層を形成して第2保護層28とし、SiターゲットとArガスを用いたスパッタリングにより層厚15nmのSi層を形成して光吸収層25とした。なお、酸化亜鉛は昇華性を有しており、融点はなく約1300℃で昇華し始めるが、この温度は記録層としての上記フォトレジストの気体化温度よりも十分に高い。
次に、光ビーム4を光吸収層25に照射し、樹脂層2を気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。続いて、純水で希釈した希硝酸水溶液で第2保護層28を溶解させ光吸収層25とともに除去し、複数の空洞領域5による微細パターンが表面に形成された樹脂層2を露出させた。
上記凹状微細パターンをAFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果、直径75nm深さ35nmの円柱状の複数の凹部(ピット列)が、トラックピッチ160nm、ピットピッチ160nmで形成されていることが確認された。
また、実施例1と同様に、上記微細パターンを有する上記ディスク状ガラス基板からなる基板1を光ディスク用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク原盤を形成することができた。
〔実施例12〕
本実施例においては、気体化温度とガラス転移点との温度差が180℃以内の樹脂を用いることによって、より良好な形状のピットパターンを形成することが可能な、実施方法のうちの一例を示す。
例えば、〔実施例11〕における記録層としての樹脂層2に、PHS系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(東京応化製TDUR−P015)を用いた、以下のような工程によって、より良好な形状の微細パターンが形成される。
図15及び図16を用いて説明する。第1保護層としてのディスク状石英基板1(融点約1000℃)上に、ノボラック系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(東京応化製TDUR−P015、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、100℃の温度でハードベークを行い、層厚60nmの樹脂層2を形成した。次に、酸化亜鉛ターゲットを用いた、Arガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた反応性スパッタリングにより層厚32nmの酸化亜鉛層(昇華点約2800℃)を形成して第2保護層28とし、SiターゲットとArガスを用いたスパッタリングとにより層厚15nmのSi層を形成して光吸収層25とした。次に、光ビームを光吸収層25に照射し、樹脂層2の温度を気体化温度以上とすることにより、樹脂層2に空洞領域5を形成した。
続いて、純水で希釈した希硝酸水溶液で第2保護層28を溶解させ光吸収層25と共に除去し、複数の空洞領域5による微細パターンが表面に形成された樹脂層2を露出させた。
上記工程によって得られた微細パターンを、AFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果を図20に示す。図17に示したような、樹脂層にノボラック系樹脂ベースのレジストを利用した場合と比較して、より良好な形状のピットが得られており、直径75nm深さ25nmの円柱状の複数の凹部が、トラックピッチ160nmで形成されている。
したがって、本発明の微細パターン形成法によれば、光ビーム波長257nm・NA0.9の光学系で、75nmのパターンを形成することができる。これは、同様の光学系を用いた従来の露光及び現像プロセスによって得られる最小サイズの1/2程度のサイズであり、本発明によって、より微細かつ良好な形状のパターンが得られることがわかる。また、同様にして、図21に示すようなランダムパターンを形成することができた。
上記のように、用いる樹脂材料によって得られるパターン形状が異なるのは、以下に述べる、本発明における微細パターン形成方法特有のメカニズムに基づいている。なお、一般的な樹脂材料は、温度上昇過程において、ガラス転移点に達すると軟化し始め、流動性が急激に高まることが知られている。このため、以下、ガラス転移点と溶融温度とを、同義の文言として用いる。
図22は、本技術における温度分布と樹脂の状態変化を示す概念図である。横軸が、ビームスポットにおけるビーム中心からの面内方向の距離、縦軸が温度を示しており、曲線30はビームスポット内の樹脂の温度分布を示している。また、直線31及び直線32はそれぞれ、樹脂の気体化温度及び溶融温度を示しており、領域34及び領域35はそれぞれ、樹脂の気体化領域及び溶融領域を示している。この図22から、レーザの照射時にほぼ同様の温度分布が得られる場合、樹脂の気体化温度と溶融温度との温度差33が大きくなるにしたがい、溶融領域35が大きくなる。溶融領域は、樹脂が気体化する際の圧力を受けるため、わずかであるが微細パターンが広げられる方向に力を受ける。この結果、温度差33が小さい方が、形成されたピットはレジスト層の面内方向に広がりにくく、同じ気体化温度を有した樹脂同士を比較した場合、溶融温度が高い方が微細パターンは広がりにくく、パターンの形状が歪みにくくなる。
図23の表は、ノボラック系樹脂ベースのフォトレジスト(富士アーチ社製FH−EX3L1、成膜及びベーク後のノボラック系樹脂の重量比率約67〜97%)、PMMA系樹脂及びPHS系樹脂ベースのフォトレジスト(東京応化製TDUR−P015、成膜及びベーク後のPHS系樹脂の重量比率約50〜83%)の気体化温度とガラス転移点の測定結果を示している。上記の3種に対する気体化温度とガラス転移点との温度差はそれぞれ、約210℃、約180℃及び約125℃である。我々は、上記の樹脂を用いた検討を行った結果、気体化温度とガラス転移点との温度差が180℃以内の樹脂である、PMMA系樹脂及びPHS系樹脂をベース樹脂として用いたフォトレジストを利用することによって、ピット形状がより良いパターンを得ることができることを見出した。
ここで、上述した微細パターンの形成に関するメカニズムを考慮すれば、より良好な形状の微細パターンを形成するために用いることが可能な樹脂は上記の樹脂材料に限られるものではなく、気体化温度とガラス転移点との温度差が180℃以内の樹脂であればよい。
加えて、気体化温度とガラス転移点との温度差が小さくなるにしたがい、微細パターンの形状が良好となる傾向にあり、特に、樹脂層としてPHS系樹脂を用いた場合、さらにピット形状が良い微細パターンを得ることができた。
また、第2保護層除去後の多層構造を光メモリ素子用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
本実施例においても、第1保護層及び第2保護層としては、実施の形態7で述べたような材料を用いることが可能である。
〔実施例13〕
さらに、我々は、微細パターン形成後において、記録層としての樹脂層のガラス転移点以上、気体化温度未満の範囲内でのアニールを行うことにより、より良い形状の微細パターンが得られることを確認した。
例えば、以下のような工程によって、より良好な形状の微細パターンが形成される。
ディスク状石英基板上に、光吸収層であり、かつ、第1保護層としての層厚7.5nmのSi層(融点約1400℃)を、SiターゲットとArガスを用いたRFスパッタリングとにより形成した。続いて、該Si層上に、PHS系樹脂ベースのポジタイプのフォトレジスト(東京応化製TDUR−P015、気体化温度約300℃)をスピンコート法により塗布した後、100℃の温度でハードベークを行い、層厚40nmの樹脂層を形成した。次に、酸化亜鉛ターゲットを用いた、Arガスと酸素ガスとの混合ガスを用いた反応性スパッタリングにより層厚25nmの酸化亜鉛層(昇華点約2800℃)を形成して第2保護層とし、次に、光ビームを光吸収層に照射し、樹脂層の温度を気体化温度以上とすることにより、樹脂層に空洞領域を形成した。
続いて、純水で希釈した希硝酸水溶液で第2保護層を溶解させて除去し、複数の空洞領域による微細パターンが表面に形成された樹脂層を露出させた。
上記工程によって得られた微細パターンを、AFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果を図24に示す。
続いて、オーブンを使用し、上記微細パターンを備えた多層構造を上記フォトレジストのガラス転移点である、175℃で15分のアニールを行った。得られた微細パターンを、AFM(原子間力顕微鏡)により測定した結果を図25に示す。AFM像においては、低い部分が黒色、高い部分が白色にとしてグラディエーションが付けられているが、図24と比較すると、図25の方が微細パターンのエッジ部分のわずかな隆起が低減されていることがわかる。また、ピットエッジにおける面内方向のわずかなラフネスが低減され、より円形に近い形状となっていることがわかる。なお、アニールは、パターン形状の崩れ等が発生しないために、ガラス転移点付近の温度で行うことが望ましい。
ここで、オーブンによるアニールは、より良好な形状の微細パターンが得るための手法の一例であり、例えば、UV照射等により、パターンエッジ付近のみを局所的に昇温させるような手法により、同様の効果を得ることが可能である。
また、アニール後の多層構造を光メモリ素子用の原盤として、光ディスク用スタンパ及び光ディスク基板を形成することができた。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。