従来技術としての前者(特許文献1)は、三元触媒にのみ適用可能な技術であって、NOx吸蔵還元型触媒には適用することができないのである。その理由は、両触媒の劣化機構が異なるからである。三元触媒の熱劣化は、貴金属の凝縮が主たる原因であるが、NOx吸蔵還元型触媒では、貴金属の凝縮に加えて、カリウムの固溶と飛散がより大きな原因である。三元触媒には通常カリウムが含まれないので、NOx吸蔵還元型触媒には全く適用できないのである。また、硫黄被毒は、三元触媒にも起こり得るが、NOx吸蔵還元型触媒では、より大きな劣化を引き起こすのである。その根拠は、NOx吸蔵材がNOxよりもSOxを吸蔵または吸着し易いためである。三元触媒では、NOx吸蔵材を含まないので、このような問題は、起こり得ない。
以上のように、前者は三元触媒の劣化判定に十分に適用することが難しいばかりか、NOx吸蔵還元型触媒自体に対して熱劣化の判定ないし熱劣化後の性能予測または推定を行うことができなかった。その理由は、NOx吸蔵還元型触媒自体の車載が比較的最近で、車両数も少なく、技術自体が新しいためと考えられる。
また、従来技術としての後者(特許文献2)は、三元触媒にのみ適用可能な技術であって、NOx吸蔵還元型触媒に適用することができない。その理由は、両触媒の劣化機構が異なるからである。三元触媒の熱劣化は、貴金属の凝縮が主たる原因であるが、NOx吸蔵還元型触媒では、貴金属の凝縮に加えて、カリウムの固溶と飛散がより大きな原因である。三元触媒には通常カリウムは含まれないので、NOx吸蔵還元型触媒には全く適用できない。また、硫黄被毒は、三元触媒にも起こり得るが、NOx吸蔵還元型触媒では、より大きな劣化を引き起こす。その理由は、NOx吸蔵材がNOxよりもSOxを吸蔵または吸着し易いためである。三元触媒では、NOx吸蔵材を含まないので、このような課題は起こりえない。
このように、後者は、三元触媒の劣化度合推定式が使えないばかりか、NOx吸蔵還元型触媒自体に対して熱劣化後の性能予測または推定を行う関連技術ではなかった。
本発明は、以上の課題を解決するために案出されたものである。すなわち、本発明の目的は、使用時の履歴から、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を推定し、熱劣化の度合を判断し得る。また、車両を予め定められた目標走行距離または目標走行時間走行させたときのNOx吸蔵還元または吸着型触媒の熱劣化状態と同等の熱劣化状態を有するNOx吸蔵還元または吸着型触媒をより短い耐久試験時間で作り出すことができる。よって、排気浄化装置の劣化予測と判定及び耐久性の評価を行う排気浄化装置の総合評価装置を提供することにある。
請求項1に係る発明1の排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を評価する排気浄化装置の総合評価装置であって、触媒入ガスの空燃比を検出する空燃比検出手段と、前記算出した空燃比を、予め定めた複数の空燃比状態に分類する空燃比状態判定手段と、触媒床温を検出する触媒床温検出手段と、予め複数に区切られた温度領域内に触媒床温が入っている時間を、前記複数の空燃比状態ごとに、積算する積算手段と、 前記積算手段により積算された時間を、前記温度範囲及び前記空燃比状態と対応付けて記録する記録手段と、前記記録手段に記録された空燃比状態、温度範囲、時間とに基づいて、空燃比状態毎に触媒の性能、及び再生処理後の触媒の性能を評価する触媒性能評価手段と、前記評価した触媒性能の内、もっとも性能の低い値を触媒の性能として選択する触媒性能選択手段とを有することを特徴とする。
請求項2に係る排気浄化装置の総合評価装置は、発明1において、空燃比状態判定手段は、リーン雰囲気、ストイキまたはリッチ雰囲気の少なくとも2つの状態に分類することを特徴とする。
課題を解決するためのその他の手段として、その他の発明2Aは、請求項1に記載の排気浄化装置の総合評価装置が、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の触媒床温、空燃比、及びこれらの条件での使用時間を記録または予測した使用時履歴を基に、使用後または使用中における触媒性能であるNOx吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を算出する下記の関数式(1)(2)(3)に基づいている。そして、その他の発明の排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化装置使用中の触媒の使用時履歴を測定して記録する装置と、触媒の使用時履歴記録装置から読み出した使用時履歴に基づき、下記の関数式(1)(2)(3)から触媒性能を算出する装置と、排気浄化装置のこれから想定される履歴をこれまでの履歴に加算して当該履歴を記録する装置と、加算履歴記録装置から読み出した履歴に基づき、下記の関数式(1)(2)(3)から触媒性能を算出する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の劣化を判断する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の将来における劣化有無を判断する装置と、排気浄化装置使用時中にNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を測定して記録する装置と、触媒使用時履歴を記録する装置から読み出した使用時履歴と触媒性能算出装置から読み出したNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能とから、下記の関数式(1)(2)(3)を導き出す装置とからなる。よって、本発明2Aの排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化装置の劣化予測および判定を行うことができる。
リーン耐久:C,Rとも=TagとTevの関数……………………式(1)
ストイキまたはリッチ耐久:C,Rとも=DagとTagとTevの関数………………………………………………………………………………式(2)
再生処理:C/C0,R/R0とも(C0とR0はそれぞれ再生前のCとR)=DagとTagとTevの関数…………………………………………式(3)
ただし、式中Cは耐久後または再生処理後の吸蔵または吸着の容量、Rは耐久後または再生処理後の所定の長さのリッチスパイク期間中に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量、Dagは使用時温度Tagにさらされた時間(hr)、Tagは使用時の触媒床温またはそれを代表する温度、Tevは性能評価時の触媒床温またはそれを代表する温度である。再生処理とは、硫黄被毒を取り除き、触媒性能を回復させようとする処理のことである。
その他の発明2Bは、請求項1に記載の排気浄化装置の総合評価装置が、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の触媒床温、空燃比、及びこれらの条件での使用時間を記録または予想した使用時履歴を基に、使用後または使用中における触媒性能であるNOx吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を算出する下記の式(1)(2)(3)(4)に基づいている。そして、本発明2Bの排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化装置使用中の触媒の使用時履歴を測定して記録する装置と、触媒の使用時履歴記録装置から読み出した使用時履歴に基づき、下記の式(1)(2)(3)(4)から触媒性能を算出する装置と、排気浄化装置のこれから想定される履歴をこれまでの履歴に加算して当該履歴を記録する装置と、加算履歴記録装置から読み出した履歴に基づき、下記の式(1)(2)(3)(4)から触媒性能を算出する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の劣化を判断する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の将来における劣化有無を判断する装置と、排気浄化装置使用時中にNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を測定して記録する装置と、触媒使用時履歴を記録する装置から読み出した使用時履歴と触媒性能算出装置から読み出したNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能とから、下記の式(1)(2)(3)(4)を導き出す装置とからなる。よって、本発明2Bの排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化装置の劣化予測および判定を行うことができる。
リーン耐久:C,Rとも=c1+c2Tag+c3Tev+c4/Tev+c5Tag+c6TagTev+c7Tag/Tev…………………………………式(1)
ストイキまたはリッチ耐久:C,Rとも=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5Tev+c6/Tag+c7Tag2+c8Tev2+c9DagTev+c10Dag/Tev+c11TagTev+c12Tag/Tev……………式(2)
または=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5/Tev+c6/Tag+c7DagTag+c8DagTev+c9Dag/Tev+c10TagTev+c11Tag/Tev…………………………………………………………式(3)
リーン耐久後再生:C/C0,R/R0とも(C0とR0はそれぞれ再生前のCとR)=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5/Tev+c6Tag+c7DagTag+c8Dag/Tag+c9TagTev+c10/(TevTag)……………………………………………………………………………式(4)
ただし、式中Cは耐久後または再生処理後の吸蔵または吸着の容量、Rは耐久後または再生処理後の所定の長さのリッチスパイク期間中に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量、Dagは使用時温度Tagにさらされた時間(hr)、Tagは使用時の触媒床温またはそれを代表する温度、Tevは性能評価時の触媒床温またはそれを代表する温度である。
また、各式における係数c1、c2、…c10、c11の値は、各式及びCとRの間で異なる。なお、再生処理とは、硫黄被毒を取り除き、触媒性能を回復させようとする処理のことである。
また、その他の発明3は、請求項1に記載の排気浄化装置の総合評価装置が、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の触媒床温、空燃比、及びこれらの条件での使用時間を記録または予測した使用時履歴を基に、使用後または使用中における触媒性能であるNOx吸蔵または吸着容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を算出する前記の各関数式または式(1)(2)(3)(4)と同様に、DagとTag及びTevの関数として触媒性能である吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を推定する式またはニューラルネットワークに基づいている。そして、本発明3の排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化装置使用中の触媒の使用時履歴を測定して記録するための装置と、触媒の使用時履歴記録装置から読み出した使用時履歴に基づき、前記の各関数式または式(1)(2)(3)(4)と同様に、DagとTag及びTevの関数として触媒性能である吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を推定する式またはニューラルネットワークから吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時のNOx放出量を算出する装置と、将来、排気浄化装置がたどると想定される履歴を既にたどった履歴に加算し、その加算済みの履歴を記録する装置と、加算履歴記録装置から読み出した履歴に基づき、前記の各関数式または式(1)(2)(3)(4)と同様に、DagとTag及びTevの関数として触媒性能である吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を推定する式またはニューラルネットワークから吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時のNOx放出量を算出する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の劣化を判断する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の将来における劣化有無を判断する装置と、排気浄化装置使用中にNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を測定して記録する装置と、触媒使用時履歴を記録する装置から読み出した使用時履歴と触媒性能算出装置から読み出したNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能とから、上記推定式のパラメータあるいはニューラルネットワークを導き出す装置とからなる。よって、本発明3の排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化装置の劣化予測および判定を行うことができる。
さらに、その他の発明4は、請求項1に記載の排気浄化装置の総合評価装置が、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の触媒床温、空燃比、及びこれらの条件での使用時間を記録または予測した使用時履歴を基に、使用後または使用中における触媒性能(NOx吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時のNOx放出量)を算出する前記の各関数式または式(1)(2)(3)(4)と同様に、DagとTag及びTevの関数として触媒性能であるNOx浄化率を推定する式またはニューラルネットワークに基づいている。そして、本発明4の排気浄化装置の総合評価装置は、使用時履歴データと触媒性能データと、排気浄化装置使用中の触媒の使用時履歴を測定して記録する装置と、触媒の使用時履歴記録装置から読み出した使用時履歴に基づき、前記の各関数式または式(1)(2)(3)(4)と同様に、DagとTag及びTevの関数として触媒性能であるNOx浄化率を推定する式またはニューラルネットワークからNOx浄化率を算出する装置と、将来、排気浄化装置がたどると想定される履歴を既にたどった履歴に加算し、その加算済みの履歴を記録する装置と、加算履歴記録装置から読み出した履歴に基づき、前記の各関数式または式(1)(2)(3)(4)と同様に、DagとTag及びTevの関数として触媒性能であるNOx浄化率を推定する式またはニューラルネットワークからNOx浄化率を算出する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の劣化を判断する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の将来における劣化有無を判断する装置と、排気浄化装置使用中にNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を測定し、それを記録する装置と、触媒使用時履歴を記録する装置から読み出した使用時履歴と触媒性能算出装置から読み出したNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能とから、発明2Bに記載の式と同様の式または発明2Aと同様の関数または発明3と同様の推定式またはニューラルネットワークを導き出す装置とからなる。よって、本発明4の排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化装置の劣化予測および判定を行うことができる。
上記構成からなる発明1ないし発明4の排気浄化装置の総合評価装置は、使用時の履歴から、NOx吸蔵還元型触媒の性能を推定し、熱劣化の度合を判断することができ、OBDとして利用可能である。さらに、想定される将来の履歴を与えれば、将来の該触媒の性能を推定し、熱劣化の度合を判断することができ、触媒の熱劣化を防止する制御目標の算出に利用できる。NOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能と使用時履歴との間の関係式またはニューラルネットワークを車両または内燃機関の運転中(排気浄化装置使用中)に求めることも可能であるし、車両搭載またはECUへの実装以前に、求めることも可能である。また、関係式またはニューラルネットワークを車両または内燃機関の運転中(排気浄化装置使用中)に求めることによって、触媒やエンジン等の個体差が予測または推定の誤差を生まないことを保証することができる。
(作用・効果が生じる理由)
上記構成からなる発明1ないし4が対象とする排気浄化装置、すなわち、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能は、主として熱劣化と硫黄被毒によって低下する。ここで、熱劣化とはNOx吸蔵還元または吸着型触媒が排気ガスの高温にさらされることによって、NOx吸蔵還元または吸着型触媒に含まれるK(カリウム)が固溶または触媒外へ飛散することによって、NOx吸蔵還元または吸着現象に寄与するカリウムの量が減ることや、NOx吸蔵還元または吸着現象に関わる貴金属(Ptなど)が凝縮することなどによって、触媒性能が低下することをいうのである。一方、硫黄被毒とは、内燃機関の燃料中に含まれる硫黄成分によって、NOx吸蔵還元または吸着型触媒が被毒することをいうのである。
そして、熱劣化が、NOx吸蔵還元または吸着型触媒がさらされた条件(触媒床温と触媒入ガスの空燃比)とその時間によって定まるので、上記構成からなる発明1ないし発明4の排気浄化装置の総合評価装置において、使用条件およびその時間とNOx吸蔵還元または吸着型触性能との間の関係を予め数式化またはニューラルネットワーク化したことにより、熱劣化によるNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を推定または予測し、性能劣化の度合を精度良く的確に判定することができる。また、硫黄被毒に関しては、適当な硫黄被毒回復処理(再生処理)を内燃機関運転中に施すことにより、NOx吸蔵還元または吸着型触媒中の硫黄分を排除することができる。ただし、通常、再生処理はNOx吸蔵還元または吸着型触媒を高温かつ空燃比を濃くすることによって行われるので、熱劣化を引き起こす場合がある。しかし、再生処理前後のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能比と使用条件及びその時間との関係は、前記のように数式化またはニューラルネットワーク化すことにより、再生処理による性能劣化度合を的確に推定または予測することができる。
通常触媒は、車両または内燃機関の運転中に様々な条件にさらされるが、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の熱劣化は、全使用期間中に触媒がさらされた温度毎(例えば25℃おきの温度)かつ空燃比毎(例えば、リッチまたはストイキかリーン)の使用時間を積算し、各温度と空燃比の組合せに対するその積算された使用時間後の触媒性能を上記の数式またはニューラルネットワークによって求め、それらの触媒性能値の中で最も低い値を選べば、その値が様々な使用条件にさらされた後の触媒の性能値にほぼ一致することを本発明者等は見出した。また、リーン雰囲気においては、該触媒がある累積時間以上さらされた温度が高いほど触媒性能値の劣化が大きいことと、リッチまたはストイキ雰囲気においては、該触媒がさらされた温度が高いほど、かつその累積時間が長いほど触媒性能値の劣化が大きいことを本発明者等は見出した。従って、上記構成からなる発明1ないし発明4の排気浄化装置の総合評価装置は、前述と同様のプロセスで、使用後または使用期間中の触媒性能を的確に推定または予測することができる。
発明1および発明2Bの実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、図1に示すように構成され排気浄化装置の劣化予測及び判定を行うことができる。すなわち、発明の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の使用時履歴(触媒床温、触媒入ガスの空燃比、及びそれらの条件にさらされる時間)を基に、使用後または使用期間中の触媒性能であるところのNOx吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を算出可能な下記式(1)(2)(3)(4)に基づいている。ここで、触媒使用時履歴データに関する構成要素としての触媒床温は、排気浄化装置に設けた触媒床温検出手段1により検出可能に構成されている。また、触媒入ガスの空燃比は、内燃機関に設けた触媒入ガスの空燃比検出手段2により、具体的にはA/Fセンサーまたは燃料噴射量及び吸入空気量から算出可能に構成されている。さらに、空燃比のリーンまたはリッチまたはストイキの判定手段3は、酸素センサーまたはA/Fセンサーの出力信号により判定可能に構成されている。
タイマー及び時間の積算手段4は空燃比リーンについて触媒床温を、例えば25℃間隔に分割し、各温度領域に触媒がさらされた時間を積算するように構成され、空燃比リッチについても同様に構成されている。ここで空燃比リーンとリッチに二分せずに、触媒床温のように、より細かく空燃比を分割して、触媒性能を評価する式を作成して利用することができる。また、触媒性能評価手段5は、排気浄化装置使用中、具体的には車両または内燃機関運転中に式(1)(2)(3)(4)を決定する場合のみ実施するように構成されている。かかる場合以外には、式(1)(2)(3)(4)は、車載またはECUに実装以前に、別途求めるように構成されている。発明の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、車両または内燃機関運転中の触媒使用時の履歴を記録(記憶)するための装置6(触媒床温と触媒入りガスの空燃比、及びこれらの条件にさらされる時間を測定すると共に、これを記録する装置)を有する。さらに、触媒使用時履歴記録(記憶)装置6から読み出した使用時履歴に基づき、数式(1)(2)(3)(4)から触媒性能を算出する装置を備えている。
また、将来、排気浄化装置が辿ると想定される履歴を既に辿った履歴に加算し、その加算済みの履歴を記録する装置を有する。具体的には、触媒入りガスの空燃比が、リーンまたはリッチにおいて各触媒床温にさらされた時間の積算値に将来予測を行う場合は、想定される履歴を加えて、各触媒床温の使用時間を積算するのである。履歴記録装置6から読み出した履歴に基づき、下記式から将来の触媒性能を算出(評価)する装置7を有する。この触媒性能算出装置7では、使用履歴に従い、式(1)(2)(3)に基づき、使用中の各触媒床温に対してその積算時間後の触媒性能を評価し、その中から最も性能の低い値を選択し、使用後の触媒性能値とする。かかる触媒性能値は、性能評価時の触媒床温によって異なるため、各触媒床温(使用時の触媒床温とは別のものである)について、使用後の触媒性能値を評価する。発明の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、触媒性能算出装置7によって算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の劣化を判断すると同時に、触媒性能算出装置7によって算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、将来の触媒の劣化有無を判断する装置8とを有する。劣化有無判断装置(熱劣化度合判定装置)8は、未使用触媒性能との比較を行い、ある基準以上の触媒性能低下が起きている場合は、熱劣化大と判定するのである。実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、車両または内燃機関運転中にNOx吸蔵還元型触媒の性能を測定し、それを記録する装置と、触媒使用時履歴を記録するための装置から読み出した使用時履歴と触媒性能算出装置から読み出したNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能とから、下記式の係数を導き出す装置とからなり、排気浄化装置を劣化予測および判定するように構成されている。
リーン耐久:C,Rとも=c1+c2Tag+c3Tev+c4/Tev+c5Tag+c6TagTev+c7Tag/Tev……………………………式(1)
ストイキまたはリッチ耐久:C,Rとも=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5Tev+c6/Tag+c7Tag2+c8Tev2+c9DagTev+c10Dag/Tev+c11TagTev+c12Tag/Tev……………式(2)
または=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5/Tev+c6/Tag+c7DagTag+c8DagTev+c9Dag/Tev+c10TagTev+c11Tag/Tev…………………………………………………………式(3)
リーン耐久後再生:C/C0,R/R0とも(C0とR0はそれぞれ再生のCとR)=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5/Tev+c6Tag+c7DagTag+c8Dag/Tag+c9TagTev+c10/(TevTag)………………………………………………………………………………式(4)
ただし、式中Cは耐久後または再生処理後の吸蔵または吸着の容量である。Rは耐久後または再生処理後の2秒のリッチスパイク期間中に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量である。また、Dagは使用時温度Tagにさらされた時間(hr)、Tagは使用時の触媒床温(K)またはそれを代表する温度(K)、Tevは性能評価時の触媒床温(K)またはそれを代表する温度である。
また、各式における係数c1、c2、…c10、c11の値は、各式及びCとRの間で異なる。さらに、Tag<5時間の場合は、Tag=5時間とする。
なお、再生処理とは、硫黄被毒を取り除き、触媒性能を回復させようとする処理のことである。
次に、発明3の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、図2に示すように排気浄化装置を劣化予測および判定するように構成されている。すなわち、発明3の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の使用時履歴(触媒床温、触媒入りガスの空燃比、及びそれらの条件にさらされる時間)を基に、使用後または使用期間中の触媒性能であるところのNOx吸蔵または吸着容量とリッチスパイク還元または吸着量を算出可能なニューラルネットワークに基づいている。
そして、発明3の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、前記ニューラルネットワー クを導き出すための使用時履歴データと触媒性能データと、車両または内燃機関運転中の触媒使用時の履歴を記録するための装置11(触媒床温と触媒入りガスの空燃比、及びそれらの条件にさらされる時間を測定すると共に、記録する装置)と、触媒使用時履歴記録装置11から読み出した使用時履歴に基づき、上記のニューラルネットワークから触媒性能を算出(評価)する装置12と、将来、排気浄化装置が辿ると想定される履歴を既に辿った履歴に加算し、その加算済みの履歴を記録する装置と、履歴記録装置から読み出した履歴に基づき、下記式から将来の触媒性能を算出する装置と、触媒性能算出装置12によって算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の劣化を判断すると同時に、触媒性能算出装置12によって算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、将来の触媒の劣化有無を判断する装置13と、車両または内燃機関運転中にNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を測定し、それを記録する装置と、触媒使用時履歴を記録するための装置から読み出した使用時履歴と触媒性能算出装置から読み出したNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能とから、上記のニューラルネットワークを導き出す装置 とからなる。
次に、発明4の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、図2に示すように排気浄化装置を劣化予測および判定するように構成されている。すなわち、発明4の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の使用時履歴(触媒床温、触媒入りガスの空燃比、及びそれらの条件にさらされる時間)を基に、使用後または使用期間中の触媒性能であるところのNOx浄化率を算出可能なニューラルネットワークに基づいている。
この発明4の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、前記ニューラルネットワークを導き出すための使用時履歴データと触媒性能データと、車両または内燃機関運転中の触媒使用時の履歴を記録するための装置11(触媒床温と触媒入ガスの空燃比、及びそれらの条件にさらされる時間を測定すると共に、記録する装置)と、触媒使用時履歴記録装置11から読み出した使用時履歴に基づき、上記のニューラルネットワークから触媒性能を算出(評価)する装置12と、将来、排気浄化装置が辿ると想定される履歴を既に辿った履歴に加算し、その加算済みの履歴を記録する装置と、履歴記録装置から読み出した履歴に基づき、下記式から将来の触媒性能を算出する装置と、触媒性能算出装置12によって算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、触媒の劣化を判断すると同時に、触媒性能算出装置12によって算出された触媒性能から、ある定められた閾値に基づき、将来の触媒の劣化有無を判断する装置13と、車両または内燃機関運転中にNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を測定し、それを記録する装置6と、触媒使用時履歴を記録するための装置6から読み出した使用時履歴と触媒性能算出装置7から読み出したNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能とから、上記のニューラルネットワークを導き出す装置とからなる。
上記構成からなる発明1ないし発明4の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、使用時の履歴から、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を推定し、熱劣化の度合を判断することができ、OBDとして利用可能である。さらに、想定される将来の履歴を与えれば、将来の該触媒の性能を推定し、熱劣化の度合を判断することができ、触媒の熱劣化を防止する制御目標の算出に利用できる。NOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能と使用時履歴との間の関係式またはニューラルネットワークを車両または内燃機関の運転中(排気浄化装置の使用中)に求めることも可能であるし、車両搭載またはECUへの実装以前に、求めることも可能である。関係式あるいはニューラルネットワークを車両または内燃機関の運転中(排気浄化装置の使用中)に求めることによって、触媒やエンジン等の個体差が予測または推定の誤差を生まないことを保証することができる。
(作用・効果が生じる理由)
上記構成からなる発明1ないし発明4の実施の形態における排気浄化装置、すなわち、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能は、主として熱劣化と硫黄被毒によって低下する。ここで、熱劣化とはNOx吸蔵還元または吸着型触媒が排気ガスの高温にさらされることによって、NOx吸蔵還元または吸着型触媒に含まれるK(カリウム)が固溶または触媒外へ飛散することによって、NOx吸蔵還元または吸着現象に寄与するカリウムの量が減ることや、NOx吸蔵還元または吸着現象に関わる貴金属(Ptなど)が凝縮することなどによって、触媒性能が低下することをいうのである。一方、硫黄被毒とは、内燃機関の燃料中に含まれる硫黄成分によって、NOx吸蔵還元型触媒が被毒することをいうのである。
そして、熱劣化が、NOx吸蔵還元または吸着型触媒がさらされた条件(触媒床温と触媒入ガスの空燃比)とその時間によって定まるので、上記構成からなる発明1および発明2Bの実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置において、使用条件およびその時間とNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能との間の関係を予め数式化または上記構成からなる発明3及び発明4が対象とする排気浄化装置のように、ニューラルネットワーク化しておけば、熱劣化によるNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能を推定または予測し、性能劣化の度合を精度良く的確に判定することができる。また、硫黄被毒に関しては、適当な硫黄被毒回復処理(再生処理)を内燃機関運転中に施せば、NOx吸蔵還元または吸着型触媒中の硫黄分を排除することができる。ただし、通常、再生処理はNOx吸蔵還元または吸着型触媒を高温かつ空燃比を濃くすることによって行われるので、熱劣化を引き起こす場合がある。しかし、再生処理前後のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能比と使用条件及びその時間との関係は数式化またはニューラルネットワーク化できるので、再生処理による性能劣化度合を的確に推定または予測することができる。
通常触媒は、車両または内燃機関の運転中に様々な条件にさらされるがNOx吸蔵還元または吸着型触媒の熱劣化は、全使用期間中に触媒がさらされた温度毎(例えば25℃おきの温度)かつ空燃比毎(例えば、リッチまたはストイキかリーン)の使用時間を積算し、各温度と空燃比の組合せに対するその積算された使用時間後の触媒性能を上記の数式または上記構成からなる発明3及び発明4が対象とする排気浄化装置のように、ニューラルネットワークによって求め、それらの触媒性能値の中で最も低い値を選べば、その値が様々な使用条件にさらされた後の触媒の性能値にほぼ一致することを本発明者等は見出した。また、リーン雰囲気においては、該触媒がある累積時間以上さらされた温度が高いほど触媒性能値の劣化が大きいことと、リッチまたはストイキ雰囲気においては、該触媒がさらされた温度が高いほど、かつその累積時間が長いほど触媒性能値の劣化が大きいことを本発明者等は見出した。したがって、これと同様のプロセスで、使用後または使用期間中の触媒性能を上記構成からなる発明1ないし発明4の排気浄化装置の総合評価装置において、推定または予測することができるのである。
次に、参考となる発明5、発明6の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、図3に示すように排気浄化装置の耐久性を明らかにするように構成されている。すなわち、発明5、発明6の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の触媒床温、空燃比及びそれらの条件にさらされる時間を記録した耐久履歴に基づいて、耐久または再生処理後の触媒性能であるところのNOx吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を算出する下記式(1)(2)(3)(4)と、車両または内燃機関運転中の触媒耐久履歴を測定し記録するための装置31と、再生処理前に触媒耐久履歴記録装置31が記録するところの耐久履歴を経た触媒の性能及び再生処理後の触媒の性能を評価する装置32と、触媒耐久履歴記録装置31から読み出した耐久履歴及び、再生処理前後の触媒性能を評価する装置32により評価された触媒性能に基づき、下記式(1)(2)(3)(4)の係数を導き出す装置35と、触媒耐久履歴記録装置31から読み出した耐久履歴から、触媒がさらされた触媒床温及び空燃比の範囲を割り出し、それらを適宜分割し、分割された各触媒床温及び空燃比に触媒がさらされた時間を積算する装置と、積算装置により積算された耐久時間とそれに対応する触媒床温及び空燃比とから、下記式(1)(2)(3)(4)に基づき触媒性能を算出する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能値を比較して、耐久時の触媒床温及び空燃比とそれに対応する積算された耐久時間の組合せの中から最も低い触媒性能値を与える組合せを探知する装置33と、触媒床温の特定の範囲内の各触媒床温に対して触媒性能算出装置と耐久時間組合せ探知装置を動作させる駆動装置と、触媒床温の特定の範囲内の各触媒床温に対して、駆動装置を動作させることによって探し出された最も低い触媒性能値を与える耐久時の触媒床温及び空燃比とそれに対応する積算された耐久時間の組合せを全て実施する実施装置と、実施装置においては、触媒床温及び空燃比の組合せ実施の順番を任意とし、各組合せの連続実施を不要とし、触媒床温及び空燃比の組合せに対応する耐久時間の積算値が耐久時間組合せ探知装置によって探知された積算耐久時間との一致を確認する確認装置と、触媒耐久履歴記録装置によって記録された耐久後に硫黄被毒回復処理(再生処理)を実施した場合は、実施装置ないし確認装置の動作実施後に再生処理を行う手段34と、からなり排気浄化装置の耐久性を明らかにするように構成されている。
リーン耐久:C,Rとも=c1+c2Tag+c3Tev+c4/Tev+c5Tag+c6TagTev+c7Tag/Tev…………………………………式(1)
ストイキまたはリッチ耐久:C,Rとも=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5Tev+c6/Tag+c7Tag2+c8Tev2+c9DagTev+c10Dag/Tev+c11TagTev+c12Tag/Tev………………式(2)
または=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5/Tev+c6/Tag+c7DagTag+c8DagTev+c9Dag/Tev+c10TagTev+c11Tag/Tev…………………………………………………………式(3)
リーン耐久後再生:C/C0,R/R0とも(C0とR0はそれぞれ再生のCとR)=c1+c2Dag+c3Tag+c4Tev+c5/Tev+c6Tag+c7DagTag+c8Dag/Tag+c9TagTev+c10/(TevTag)…………………………式(4)
ただし、式中Cは耐久後または再生処理後の吸蔵または吸着の容量、Rは耐久後または再生処理後の2秒のリッチスパイク期間中に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量、Dagは使用時温度Tagにさらされた時間(hr)、Tagは使用時の触媒床温(K)またはそれを代表する温度(K)、Tevは性能評価時の触媒床温(K)またはそれを代表する温度(K)である。
また、各式における係数c1、c2、…c10、c11の値は、各式及びCとRの間で異なる。さらに、Tag<5時間の場合は、Tag=5時間とする。
なお、再生処理とは、硫黄被毒を取り除き、触媒性能を回復させようとする処理のことである。
上記の装置を用いて、NOx吸蔵還元または吸着型触媒を排気浄化装置として車載した車両を図4のような走行モードで8万km走行させた場合(のべ.1.6ヶ月)と同等の触媒性能がより短時間(のべ42時間)の耐久試験パターンで得られた。その概要を次に示す。
図4のような走行モードでNOx吸蔵還元または吸着型触媒を排気浄化装置として搭載した車両を8万km走行させた場合、エンジン筒内の空燃比の累積時間を図5に、この空燃比を2分したときそれぞれの空燃比における触媒の温度(耐久温度)の累積時間をそれぞれ図6と図7に示す。図6と図7では、耐久温度の範囲が25℃毎に分割され、8万km走行におけるそれぞれの累積時間が棒グラフで表示されている。これらの各棒に対応する耐久温度と耐久時間と所定の評価時温度を式(1)(2)(3)に代入すると、各棒に対応する耐久走行のみを行った後の各評価時温度における触媒性能が得られる。ただし、図7のリーン走行時には式(1)を用い、図6のストイキまたはリッチ走行時には式(2)と式(3)から得られる触媒性能値の平均値を計算した。
そして、8万km走行後の触媒性能評価の前には硫黄被毒の影響を排除するために、リーン耐久後の再生処理と同様の再生処理を施したので、式(4)を用いて再生率を計算し、その値を式(1)(2)(3)から求めた値に乗じて、再生処理の影響を考慮した。その結果、各評価時温度において、最も低い触媒性能を与える耐久条件(耐久温度と耐久時間の組合せ)は、図6の黒い棒または図7の黒い棒のいずれかであったので、それら二つの耐久条件を新品の触媒に実施し、その耐久後の性能を先の8万km走行後の触媒性能と比較したところ、ほぼ一致することが確認できた(図8)。すなわち、8万km走行という耐久試験(のべ1.6ヶ月)の代替として、図6の黒い棒と図7の黒い棒という二つの耐久条件のみを適用すること(のべ42時間)によって、同等の触媒性能が得られた。
次に、参考となる発明7の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、図9に示すように排気浄化装置の耐久性を明らかにするように構成されている。すなわち、発明7の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の触媒床温、空燃比及びそれらの条件にさらされる時間による耐久履歴に基づいて、耐久/再生処理後の触媒性能であるところのNOx吸蔵または吸着の容量とリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量を算出するニューラルネットワークと、車両または内燃機関運転中の触媒耐久履歴を測定し記録するための装置41と、再生処理前に触媒耐久履歴記録装置41が記録するところの耐久履歴を経た触媒の性能及び再生処理後の触媒の性能を評価する装置42と、触媒耐久履歴記録装置41から読み出した耐久履歴及び、再生処理前後の触媒性能評価装置により評価された触媒性能に基づき、ニューラルネットワークを導き出す装置と、触媒耐久履歴記録装置41から読み出した耐久履歴から、触媒がさらされた触媒床温及び空燃比の範囲を割り出し、それらを適宜分割し、分割された各触媒床温及び空燃比に触媒がさらされた時間を積算する装置と、積算装置により積算された耐久時間とそれに対応する触媒床温及び空燃比とから、上記ニューラルネットワークに基づき触媒性能を算出する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能値を比較して、耐久時の触媒床温及び空燃比とそれに対応する積算された耐久時間の組合せの中から最も低い触媒性能値を与える組合せを探知する装置43と、触媒床温の特定の範囲内の各触媒床温に対して触媒性能算出装置と耐久時間組合せ探知装置43を動作させる駆動装置と、触媒床温の特定の範囲内の各触媒床温に対して、駆動装置を動作させることによって探し出された最も低い触媒性能値を与える触媒床温及び空燃比とそれに対応する積算された耐久時間の組合せを全て実施する実施装置と、実施装置においては、触媒床温及び空燃比の組合せ実施の順番を任意とし、各組合せの連続実施を不要とし、触媒床温及び空燃比の組合せに対応する耐久時間の積算値が耐久時間組合せ探知装置43によって探知された積算耐久時間との一致を確認する確認装置と、触媒耐久履歴記録装置41によって記録された耐久後に硫黄被毒回復処理(再生処理)を実施した場合は、実施装置ないし確認装置の動作実施後に再生処理を行う手段44と、からなり排気浄化装置の耐久性を明らかにするように構成されている。
次に、参考となる発明8の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、図9に示すように排気浄化装置の耐久性を明らかにするように構成されている。すなわち、発明8の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置は、排気浄化用のNOx吸蔵還元または吸着型触媒の触媒床温、空燃比及びそれらの条件にさらされる時間による耐久履歴に基づいて、耐久/再生処理後の触媒性能であるところのNOx浄化率を算出するニューラルネットワークと、車両または内燃機関運転中の触媒耐久履歴を測定し記録するための装置41と、再生処理前に触媒耐久履歴記録装置41が記録するところの耐久履歴を経た触媒の性能及び再生処理後の触媒の性能を評価する装置42と、触媒耐久履歴記録装置41から読み出した耐久履歴及び、再生処理前後触媒性能評価装置により評価された触媒性能に基づき、ニューラルネットワークを導き出す装置と、触媒耐久履歴記録装置41から読み出した耐久履歴から、触媒がさらされた触媒床温及び空燃比の範囲を割り出し、それらを適宜分割し、分割された各触媒床温及び空燃比に触媒がさらされた時間を積算する装置と、積算装置により積算された耐久時間とそれに対応する触媒床温及び空燃比とから、上記ニューラルネットワークに基づき触媒性能を算出する装置と、触媒性能算出装置により算出された触媒性能値を比較して、耐久時の触媒床温及び空燃比とそれに対応する積算された耐久時間の組合せの中から最も低い触媒性能値を与える組合せを探知する装置43と、触媒床温の特定の範囲内の各触媒床温に対して触媒性能算出装置と耐久時間組合せ探知装置43を動作させる駆動装置と、触媒床温の特定の範囲内の各触媒床温に対して、駆動装置を動作させることによって探し出された最も低い触媒性能値を与える触媒床温及び空燃比とそれに対応する積算された耐久時間の組合せを全て実施する実施装置と、実施装置においては、触媒床温及び空燃比の組合せ実施の順番を任意とし、各組合せの連続実施を不要とし、触媒床温及び空燃比の組合せに対応する耐久時間の積算値が耐久時間組合せ探知装置43によって探知された積算耐久時間との一致を確認する確認装置と、触媒耐久履歴記録装置41によって記録された耐久後に硫黄被毒回復処理(再生処理)を実施した場合は、実施装置ないし確認装置の動作実施後に再生処理を行う手段44と、からなる。
上記構成からなる参考となる発明5ないし発明8の実施の形態が対象とする排気浄化装置、すなわち、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の性能は、主として熱劣化と硫黄被毒によって低下する。ここで、熱劣化とはNOx吸蔵還元または吸着型触媒が排気ガスの高温にさらされることによって、NOx吸蔵還元または吸着型触媒に含まれるK(カリウム)が固溶または触媒外へ飛散することによって、NOx吸蔵還元または吸着現象に寄与するカリウムの量が減ることや、NOx吸蔵還元または吸着現象に関わる貴金属(Ptなど)が凝縮することなどによって、触媒性能が低下することをいう。一方、硫黄被毒とは、内燃機関の燃料中に含まれる硫黄成分によって、NOx吸蔵還元または吸着型触媒が被毒することをいう。
熱劣化は、NOx吸蔵還元または吸着型触媒がさらされた耐久条件(触媒床温と内燃機関の空燃比)と耐久時間によって定まる。
通常触媒は、排気浄化装置の使用中、具体的には車両または内燃機関の運転中に様々な耐久条件にさらされるが、NOx吸蔵還元または吸着型触媒の熱劣化は、全耐久期間中に触媒がさらされた温度毎(例えば25℃おきの温度)かつ空燃比毎(例えば、リッチかリーン)の耐久時間を積算し、各温度と空燃比に対するその積算された耐久時間後の触媒性能を上記の数式またはニューラルネットワークによって求め、それらの触媒性能値の中で最も低い値を選べば、その値が様々な耐久条件にさらされた後の触媒の性能値にほぼ一致することを本発明者等は見出した。また、リーン雰囲気においては、該触媒がある累積時間以上さらされた温度が高いほど触媒性能値の劣化が大きいことと、リッチまたはストイキ雰囲気においては、該触媒がさらされた温度が高いほど、かつその累積時間が長いほど触媒性能値の劣化が大きいことを本発明者等は見出した。これらの結果は、耐久履歴の中で、最も熱劣化度合の大きな耐久条件によって、耐久後の触媒性能が決まることを意味している。したがって、耐久履歴の中で耐久条件が種々変化する場合には、上記構成からなる参考となる発明5ないし発明8の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置を用いて、その履歴の中で最も熱劣化度合の大きな耐久条件(触媒床温と空燃比及びその積算時間)のみを実施すれば、耐久履歴全体と同等の熱劣化を実現することができるので、耐久時間の短縮が可能である。
硫黄被毒に関しては、適当な硫黄被毒回復処理(再生処理)を内燃機関運転中に施せば、NOx吸蔵還元型触媒中の硫黄分を排除することができる。この再生処理によって熱劣化する場合があるが、耐久後再生処理を行う場合と、上記構成からなる参考となる発明5ないし発明8の実施の形態における排気浄化装置の総合評価装置を用いた上記の短縮耐久後、同様の再生処理を行う場合の触媒劣化度合はほぼ同等であることを本発明者等は見出したのである。
発明4または参考となる発明8の実施例として、ニューラルネットワークを用いない形態を説明する。ニューラルネットワークを用いない場合には、下記の数式(5)と上記(1)(2)(3)(4)を用いた。
ただし、ηはある温度におけるNOx浄化率、Ciは式(1)(2)(3)(4)から求められる吸蔵または吸着容量、Rjは式(1)(2)(3)(4)から求められるリッチスパイク時に吸蔵材または吸着材より放出されるNOx放出量(リッチスパイク還元量)、NCは浄化率の決定において必要な各評価時温度における吸蔵または吸着容量の総数、NRは浄化率の決定において必要な各評価時温度におけるリッチスパイク還元量(リッチスパイク時のNOx放出量)の総数、C0、Ci、Cjは浄化率を定める触媒温度や触媒入ガス組成及び入ガス流量などエンジンの運転条件などによって異なる定数である(式(1)(2)(3)(4)の定数とも異なる)。