JP4211444B2 - 排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から排気規制の強化に合わせて、排気ガスの排出に影響を及ぼす機能部品(排気ガス浄化触媒等)の診断を行ない、これを改善させることで排気ガスの悪化を未然に防いでいる。
【0003】
排気ガスの低減において、排気ガス浄化触媒は重要な役割を持ち、排気ガス成分中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)の低減に寄与している。
【0004】
内燃機関において、リーンバーンエンジンやディーゼルエンジンでは、排気ガスの空燃比がリーンのときに排出されるNOxを処理するため、エンジンから排出される排気ガスの空燃比がリーンのとき、排気ガス成分中のNOxをトラップし、トラップしたNOxを排気ガスの空燃比がリッチのときに脱離し、浄化する機能を有したNOxトラップ触媒を排気ガス通路内に具備した排気ガス浄化装置が開発されている。このような排気ガス浄化装置において、NOxトラップ触媒の浄化機能は、特許文献1に開示されているように、触媒の有する酸素ストレージ機能を用いて診断されている。この診断は、触媒が活性状態にあるときに行われる。
【0005】
近年、大気汚染の深刻化、地球温暖化に対応するため、排気規制はさらに強化される傾向にあり、触媒が活性状態のときの排気ガス浄化もさることながら、機関の冷間時における排気ガス浄化も重要視されてきており、冷間時の触媒浄化機能の診断も必要となってくる。
【0006】
ここで、機関の冷間時における触媒の浄化機能の診断としては、特許文献2に開示されているように、触媒のCO酸化性能を用いたものが知られている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−352307号公報
【特許文献2】
特開2001−336415号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、かかる触媒の浄化機能の診断において、触媒には一般にPt,Pd,Rhのような貴金属が担持されており、機関の冷間時には触媒貴金属上にCOが吸着被毒し、見かけ上、COの転化性能が発現されているように見えるため、真のCO転化性能を判断することができない。加えて、COの吸着による見かけ上のCO転化性能によって他の排気ガス成分であるHC、NOxに対する転化性能を判定することは、実際のHC、NOx転化性能とギャップを生じることになるので、見かけ上、該触媒は劣化していないと判定されても、HC、NOxに対する浄化機能は劣化しているため、HC、NOxが大気中に放出してしまう恐れがある。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑み、排気ガス浄化触媒の浄化機能を適切に診断することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そのため本発明では、機関冷間時に、前記触媒の前後の酸素濃度が同じになってからその触媒後の酸素濃度が変化し始めるまでに要する時間に基づいて、前記触媒の浄化機能を診断する。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、機関の冷間時において触媒が活性化すると、排気ガス浄化触媒に流入する排気ガス中の酸素は、触媒貴金属上で生じるHCやCOの酸化反応によって消費され、触媒活性の開始と同時に、触媒入口の酸素濃度に対する触媒出口の酸素濃度が低下するので、この変化に基づいて触媒の低温作動機能を診断することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置の構成図である。
【0013】
ディーゼル機関1には、各気筒に対して燃料噴射弁2が各々配置され、これらはコモンレール式燃料噴射装置に取り付けられている。
ディーゼル機関1の排気ガス通路3には、排気ガス浄化触媒4が配置されており、この前後(上流及び下流)には空燃比(酸素濃度)を検出するため、入口空燃比センサ5及び出口空燃比センサ6がそれぞれ配置されている。そして、排気ガス浄化触媒4の内部温度を検出するために、触媒4の内部に温度センサ8を設けている。機関1には、冷却水の温度を検出するための水温センサ9が配置されている。さらに、入口空燃比センサ5及び出口空燃比センサ6の内部には、これらのセンサ5,6を昇温させるためのヒーター10a、10bがそれぞれ配置されている。
【0014】
排気ガス浄化触媒4は、三元触媒、酸化触媒、NOxトラップ触媒、選択還元型リーンNOx触媒、HCトラップ触媒のうち少なくとも1つ以上、またはそれらを組み合わせて構成される。これらの触媒は、Pt、Pd、Rhのうち少なくとも1つ以上を含んでいる。そして、いずれの触媒においても、その活性は、例えばHC、COのような還元ガスと酸素との酸化反応(燃焼反応)によって開始される。
【0015】
入口空燃比センサ5は、ディーゼル機関1から排気ガス浄化触媒4に流入する排気ガス中の空燃比に応じた信号を出力する。一方、出口空燃比センサ6は、触媒4を通過した排気ガス中の空燃比に応じた信号を出力する。これらの空燃比センサ5,6の信号は、エンジン制御装置11に送られる。
【0016】
触媒温度センサ8は、触媒4の内部温度に応じた信号を出力する。この温度センサ8の信号は、エンジン制御装置11に送られる。
水温センサ9は、機関1の冷却水温度に応じた信号を出力する。この水温センサ9の信号は、エンジン制御装置11に送られる。
【0017】
エンジン制御装置11は、前述のセンサ5,6,8,9からの出力信号に基づいて、触媒4の入口空燃比(Vin)、出口空燃比(Vout)、内部温度(Temp)、及び冷却水温度(Tw)をそれぞれ検出する。そして、機関1の運転状態を制御するため、燃料噴射弁2の燃料噴射時期及び燃料噴射量等を制御する。さらに、機関1の始動開始後、ヒーター10a、10bをONにして空燃比センサ5,6を昇温させる。
【0018】
次に、エンジン制御装置11が行う低温作動機能診断処理について、図2及び図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお図2に示す通り、この処理は、ディーゼル機関1のキースイッチがONとなり、通電が開始した後に行われる。図4は、機関1の始動開始後の経過時間(秒)に対する、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Vout、触媒4の内部温度Temp、排気ガス濃度をそれぞれ示した図である。図5〜図9は、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutに応じた排気ガス転化性能(排気ガス浄化率)を示した図である。
【0019】
ステップ1(図では「S1」と示す。以下同様)では、空燃比センサ5,6のヒーター10a,10bをONにする。これは、ヒーター10a,10bをONにすることにより、排気ガス浄化触媒4が活性開始する前に空燃比センサ5,6の素子自体の温度を早期に上昇させて活性化させ、触媒4の低温時における空燃比の測定精度を良くするためである。
【0020】
ステップ2では、水温センサ9の出力信号に基づいて検出されたディーゼル機関1の冷却水温度Twが所定温度Tw0未満(Tw<Tw0)であるか否かを判別する。これにより、ディーゼル機関1がコールド(冷機)状態であるか否かを判定する。冷却水温度Twが所定温度Tw0未満(Tw<Tw0)である場合には、ステップ3へ進む。一方、冷却水温度Twが所定温度Tw0以上(Tw≧Tw0)である場合には、ステップ5へ進み、機関1が高温状態にあると判定し、処理を終了する。これは、機関1が高温状態(Tw≧Tw0)の時には、触媒4が十分に活性した状態にあり、排気ガスの浄化が行われるためである。
【0021】
ステップ3では、機関1がコールド状態であると判定してステップ4へ進む。
ステップ4では、図3に示す低温作動機能診断を行う。
図3のステップ6では、低温診断フラグをONにする。
【0022】
ステップ7では、入口空燃比センサ5の出力値Vinと、出口空燃比センサ6の出力値Voutとが同じ値(Vin=Vout)であるか否かを判別する。ここで、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutが同じ値(Vin=Vout)である場合には、排気ガス浄化触媒4がコールド状態にあり、浄化機能が不十分である状態(非活性状態)にあると判定し、ステップ8へ進む。一方、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutが同じ値でない(Vin≠Vout)場合には、ステップ18へ進み、触媒4の劣化度合が劣化上限性能範囲内、すなわち触媒4が排気ガスを浄化可能な状態(活性状態)にあると診断し、低温作動機能診断を終了する。
【0023】
ステップ8では、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutが同じ状態になってから出力値Voutが変化するまでの経過時間Δtsをカウントする(図5参照)。
【0024】
ステップ9では、出口空燃比センサ6の出力値Voutに変化があったか否かを判別する。出力値Voutが変化した場合には、ステップ10へ進む。一方、出力値Voutが一定である場合には、ステップ8へ戻り、処理を繰り返す。
【0025】
ステップ10では、温度センサ8の出力信号に基づいて、排気ガス浄化触媒4の内部温度Tempを算出する。
ステップ11では、出口空燃比センサ6の出力値Voutが変化し始めてから出力値Voutが一定となるまでの経過時間Δtcをカウントする(図6参照)。
【0026】
ステップ12では、ステップ11での経過時間Δtcにおける入口空燃比センサ5の出力値Vinと、出口空燃比センサ6の出力値Voutとの差(Vin−Vout)の累積値(積分値)Sを算出する(図7参照)。
【0027】
ステップ13では、出口空燃比センサ6の出力値Voutが一定になったか否かを判別する。出力値Voutが一定である場合には、ステップ14へ進む。一方、一定でない場合には、ステップ11へ戻り、前述の処理を繰り返す。
【0028】
ステップ14では、排気ガス浄化触媒4の下流の空燃比センサ6の出力値Voutが変化しているときの変化速度、すなわち出口空燃比センサ6の出力値Voutが変化し始めてから一定になるまでの経過時間Δtcにおける出力値Voutの傾きθを算出する(図8参照)。
【0029】
ステップ15では、入口空燃比センサ5の出力値Vinと出口空燃比センサ6の出力値Voutとの差(Vin−Vout)ΔVを算出し、ステップ16へ進む。
【0030】
ステップ16では、経過時間Δts、Δtc、触媒4の内部温度Temp、累積値S、傾きθ、及び空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutの差ΔVに基づいて、排気ガス浄化触媒4が劣化上限を超えているか否かを判別する。劣化上限を超えている場合には、ステップ17へ進む。
【0031】
ここで、ステップ16における触媒4の劣化上限の判断は、各パラメータ(経過時間Δts、Δtc、内部温度Temp、累積値S、傾きθ、及び出力値Vin、Voutの差ΔV)について行われる。
【0032】
すなわち、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutが同じくなってから出力値Voutが変化するまでの経過時間Δtsが所定時間以上である場合に、触媒4が劣化上限を超えたと診断する。
【0033】
または、出口空燃比センサ6の出力値Voutが変化し始めてから出力値Voutが一定となるまでの経過時間Δtcが所定時間(Δtsに基づいて劣化上限を判断するための所定時間とは異なる)以上である場合に、触媒4が劣化上限を超えたと診断する。これは、触媒4の劣化の程度が低い場合には、触媒4が早期に活性するためであり、この性質を用いて触媒4の劣化状態を診断するためである。
【0034】
また、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutが同じくなってから出力値Voutが変化する際の触媒4の内部温度Tempが所定温度以上である場合に、触媒4が劣化上限を超えたと診断する。これは、触媒4の劣化の程度が低い場合には、触媒4が低温で活性を開始するためであり、この性質を用いて触媒4の劣化状態を診断するためである。
【0035】
また、経過時間Δtcにおける入口空燃比センサ5の出力値Vinと、出口空燃比センサ6の出力値Voutとの差(Vin−Vout)の累積値Sが所定値以上である場合に、触媒4が劣化上限を超えたと診断する。これは、触媒4の劣化の程度が低い場合には、触媒4が早期に活性し、その活性状態が安定するまでの時間(空燃比センサ6の出力値Voutが一定になるまでの時間)が短いためであり、この性質を用いて触媒4の劣化状態を診断するためである。
【0036】
また、出口空燃比センサ6の出力値Voutが変化し始めてから一定になるまでの経過時間ΔTcにおける出力値Voutの傾きθが所定値未満である場合に、触媒4が劣化上限を超えたと判別する。これは、触媒4の劣化の程度が低い場合には、触媒4が早期に活性し、その活性状態が安定するまでの時間が短く、その変化が著しいためであり、この性質を用いて触媒4の劣化状態を診断するためである。
【0037】
また、触媒4が活性開始し、出口空燃比センサ6の出力値Voutが安定した際の、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutの差(Vin−Vout)ΔVが所定値未満である場合には、触媒4が劣化上限を超えたと判別する。これは、触媒4の劣化の程度が低い場合には、触媒4において燃焼反応が促進され、触媒4の下流の排気ガス中の酸素濃度が著しく低下するためであり、この性質を用いて触媒4の劣化状態を診断するためである。
【0038】
なお、前述の経過時間Δts、Δtcにより触媒4の劣化状態を診断するための所定時間や、その他のパラメータ(Temp、S、θ、ΔV)に対する所定値は、実験などによって予め設定しておくことが好ましい。そして、排気ガス浄化触媒4の劣化上限の診断は、複数のパラメータ(Δts、Δtc、Temp、S、θ、ΔV)による診断のうち1つのみを行っても良く、また複数のパラメータによる診断を組み合わせることによって行っても良い。
【0039】
一方、ステップ16で、劣化上限を超えていない場合には、ステップ18へ進み、劣化上限の範囲内であると診断して処理を終了する。
ステップ17では、排気ガス浄化触媒4の劣化状態を回復させるため、ディーゼル機関1の空燃比リーンでの運転を禁止し、ストイキ(理論空燃比)での運転をする。なお、運転者に対して警告を表示しても良い。
【0040】
次に、前述の各パラメータ(Δts、Δtc、Temp、S、θ、ΔV)と、排気ガス転化性能との関係について、図4〜図9を用いて説明する。
図4は、機関1の冷間始動時において、始動開始からの経過時間(秒)に対する空燃比センサ5,6の出力値Vin、Vout、排気ガス浄化触媒4の内部温度Temp(℃)、及び排気ガス濃度の変化を示す図である。図4(イ)の実線は入口空燃比センサ5の出力値Vin、破線は出口空燃比センサ5の出力値Voutをそれぞれ示している。図4(ロ)の実線は触媒4の内部温度Tempを示し、破線は現在の触媒4の劣化度合に応じた活性温度を示している。
【0041】
ディーゼル機関1は、始動直後から空燃比がリーンで運転するため、排気ガス浄化触媒4に流入する排気ガス中には酸素が多く存在する。このため、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutは高くなっている(図4(イ)参照)。触媒4が非活性状態であるとき、HC、COのような還元ガスの酸化反応による酸素の消費がないため、触媒4の下流の出口空燃比センサ6の出力値Voutは入口空燃比センサ5の出力値Vinと同じ出力値(Vin=Vout)となる(図4(イ)参照)。この状態では、触媒4の内部温度Tempは低く、排気ガスの浄化も不十分である(図4(ロ)、(ハ)参照)。
【0042】
そして、触媒4の内部温度が活性温度に達した際(図4(ロ)参照)、触媒4の内部で、酸素が、HC、COのような還元ガスとの酸化反応によって消費されるため、出口空燃比センサ6の出力値が低下する(図4(イ)参照)。触媒4が活性すると排気ガスの浄化が行われるため、排気ガス濃度が低下する(図4(ハ)参照)。
【0043】
その後、触媒4の内部温度は上昇し(図4(ロ)参照)、排気ガスが安定して浄化されるため、出口空燃比センサ6の出力値Voutが一定となる(図4(イ)参照)。
【0044】
図5(イ)〜図9(イ)は、図4(イ)に各パラメータ(Δts、Δtc、Temp、S、θ、ΔV)を示した図である。図5(ロ)〜図9(ロ)は、触媒4の内部温度Tempと排気ガス転化性能(排気ガス浄化率)とを示しており、実線αは触媒4がフレッシュ(新品)状態、実線βは触媒4の劣化回復が必要である状態(劣化上限)をそれぞれ示している。
【0045】
図5(イ)では、触媒4の着火開始温度、すなわち触媒4の活性開始温度を評価するため、空燃比センサ5,6の出力値Vin、Voutが同じくなってから出力値Voutが変化するまでの経過時間Δtsを検出する。これにより図5(ロ)に示す実線βの活性開始温度(矢印で示している)より右側に活性開始温度があれば、触媒4が劣化上限を超えているとの診断ができる。
【0046】
図6(イ)では、触媒4の着火性、すなわち触媒4の内部温度Tempの上昇速度を評価するため、触媒4が活性開始してから内部温度が十分に上昇するまでの経過時間Δtcを検出する。これにより図6(ロ)に示す実線βの活性開始から内部温度が十分に上昇するまでの温度範囲(矢印で示している幅)より大きければ、触媒4が劣化上限を超えているとの診断ができる。
【0047】
図7(イ)では、触媒4が活性するのに必要な熱エネルギーを評価するため、触媒4が活性開始してから出口空燃比センサ6の出力値Voutが一定になるまでの累積値Sを算出する。これにより図7(ロ)に示す実線βの活性開始から内部温度が十分に上昇するまでの累積値(斜線で示している範囲)より大きければ、触媒4が劣化上限を超えているとの診断ができる。
【0048】
図8(イ)では、触媒4の着火開始から活性完了への速度を評価するため、触媒4が活性開始してから内部温度Tempが十分に上昇するまでの出口空燃比センサ6の出力値Voutの傾きθを算出する。これにより図8(ロ)に示す実線βの傾きより小さければ、触媒4が劣化上限を超えているとの診断ができる。
【0049】
図9(イ)では、触媒4が消費する酸素量の多少を検出することで触媒4の酸化活性度合を評価するため、触媒4が活性開始してから出口空燃比センサ6の出力値Voutが一定になった後に、入口空燃比センサ5の出力値Vinとの差(Vin−Vout)ΔVを算出する。これにより図9(ロ)に示す実線βより実線が右下に現れた場合に、触媒4が劣化上限を超えているとの診断ができる。
【0050】
本実施形態によれば、機関1の冷間時における排気ガス浄化触媒4の前後での酸素濃度の変化に基づいて、触媒4の浄化機能を診断する(ステップ15,16)。このため、機関1の冷間時において触媒4が活性化すると、排気ガス浄化触媒4に流入する排気ガス中の酸素は、触媒貴金属上で生じるHCやCOの酸化反応によって消費され、触媒4の活性開始と同時に、触媒4の入口の酸素濃度に対する触媒4の出口の酸素濃度が低下するので、触媒4の低温作動機能を診断することができる。
【0051】
また本実施形態によれば、機関1の冷間時における排気ガス浄化触媒4の前後での酸素濃度の変化によって生ずる空燃比Vin、Voutの差ΔVにより触媒4の浄化機能を診断する(ステップ15,16)。このため、排気ガス浄化触媒4の低温作動機能によって生じる酸素濃度の差によって、触媒4の入口の空燃比Vinに対して出口の空燃比Voutが低下するので、これらの空燃比の変化を読み取ることにより触媒4の低温作動機能を診断することができる。
【0052】
また本実施形態によれば、空燃比は、排気ガス浄化触媒4の前後に配置された空燃比センサ5,6により検出される。このため、空燃比センサ5,6を用いて読み取ることにより触媒4の低温作動機能を診断することができる。
【0053】
また本実施形態によれば、機関1の冷間時における排気ガス浄化触媒4の前段の空燃比センサ5の出力値Vinに対して、触媒4の後段の空燃比センサ6の出力値Voutが変化し、それらの出力値Vin、Voutの差ΔVにより触媒4の浄化機能を診断する(ステップ15,16)。このため、触媒4が消費する酸素量の多少を検出することで触媒4の酸化活性を評価することができる。よってその差分ΔVがある所定値よりも小さくなると、触媒4が劣化して、所望とする低温作動機能が得られないと診断することができる。
【0054】
また本実施形態によれば、機関1の冷間始動後に、排気ガス浄化触媒4の前段の空燃比センサ5の出力値Vinに対して、触媒4の後段の空燃比センサ6の出力値Voutが変化し始めるまでに要する時間Δtsにより触媒4の浄化機能を診断する(ステップ8,16)。このため、触媒4の着火開始温度を評価することができる。よって出口空燃比センサ6の出力値Voutが変化するまでに要する時間Δtsが定められた時間よりも長いときには、触媒4の劣化により触媒4の着火温度(触媒4の内部温度Temp)が上昇して、所望とする低温作動機能が得られないと診断することができる。
【0055】
また本実施形態によれば、機関1の冷間時における排気ガス浄化触媒4の前段の空燃比センサ5の出力値Vinに対して、触媒4の後段の空燃比センサ6の出力値Voutが変化し、それらの出力値Vin、Voutの差ΔVが一定になるまでに要する時間Δtcにより触媒4の浄化機能を診断する(ステップ11,16)。このため、触媒4の着火性を評価することができる。よって、入口空燃比センサ5の出力値Vinに対して、出口空燃比センサ6の出力値Voutが変化し、それらの出力値Vin、Voutの差ΔVが一定になるまでに要する時間Δtcが定められた時間よりも長いときには、触媒4の劣化により触媒4の着火性が悪化して、所望とする低温作動機能が得られないと診断することができる。
【0056】
また本実施形態によれば、機関1の冷間時における排気ガス浄化触媒4の前段の空燃比センサ5の出力値Vinに対して、触媒4の後段の空燃比センサ6の出力値Voutが変化しているときの変化速度(傾きθ)により触媒4の浄化機能を診断する(ステップ14,16)。このため、触媒4の着火開始から活性完了までの速度を評価することができる。よって、変化速度が定められた速度よりも低い(傾きθが所定値未満)ときには、触媒4の劣化により所望とする活性速度が得られないと診断することができる。
【0057】
また本実施形態によれば、機関1の冷間時における排気ガス浄化触媒4の前段の空燃比センサ5の出力値Vinに対して、触媒4の後段の空燃比センサ6の出力値Voutが変化するときのそれらの出力値Vin、Voutの差ΔVの累積値Sにより触媒4の浄化機能を診断する(ステップ12,16)。このため、触媒4が活性するのに必要な熱エネルギーを評価することができる。よって熱エネルギーが定められた値以上に必要なときには、触媒4はその劣化により所望のエネルギーだけでは活性できないと診断することができる。
【0058】
また本実施形態によれば、排気ガス浄化触媒4の前後の空燃比センサ5,6に、機関1の冷間時に、触媒4よりも早期に活性化させる機能(ヒーター10a、10b)を設ける。このため、空燃比センサ5,6のセンサ素子(Ptなどの貴金属)の温度を早期に上昇させ、排気ガス浄化触媒4の活性開始までにセンサ5,6自体が活性化し、触媒4の低温作動機能を精度よく診断することができる。
【0059】
また本実施形態によれば、更に前記排気ガス浄化触媒4の温度(内部温度)Tempを検出する手段(温度センサ8)を設け、触媒4の前後で空燃比が変化したときの触媒4の温度Tempにより触媒4の浄化機能を診断する(ステップ10,16)。このため、空燃比センサ5,6だけでなく温度センサ8に基づく触媒4の浄化機能の診断が可能となる。
【0060】
また本実施形態によれば、排気ガス浄化触媒4は、三元触媒、酸化触媒、NOxトラップ触媒、選択還元型リーンNOx触媒、HCトラップ触媒のうち少なくとも1つ以上、またはそれらの組み合わせである。このため、いずれの触媒においても触媒の活性は、例えばHC、COのような還元ガスの酸化反応(燃焼反応)による酸素の消費によって開始され、この開始時期等に基づいて触媒4の浄化機能の診断が可能となる。
【0061】
また本実施形態によれば、排気ガス浄化触媒4は、Pt、Pd、Rhのうち少なくとも1つ以上を含む触媒である。このため、空燃比がリーンのときに酸素を蓄えられ、空燃比がリッチのときにHC、COなどを還元させることができる。
【0062】
また本実施形態によれば、排気ガス浄化触媒4は、NOxトラップ触媒であり、その浄化機能が低下したと診断した際に、空燃比リーンを禁止し、理論空燃比(ストイキ)にする(ステップ16,17)。このため、触媒4が劣化上限を超えていた場合に、触媒4の劣化を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置の構成図
【図2】低温作動機能診断処理のフローチャート
【図3】低温作動機能診断処理のフローチャート
【図4】機関の始動時間に対する、空燃比センサの出力値、触媒の内部温度、排気ガス濃度をそれぞれ示す図
【図5】出口空燃比センサの出力値の変化し始めるまでの時間に基づく排気ガス転化性能を示す図
【図6】出口空燃比センサの出力値の変化している時間に基づく排気ガス転化性能を示す図
【図7】出口空燃比センサの出力値の差の累積分に基づく排気ガス転化性能を示す図
【図8】出口空燃比センサの出力値の変化の傾きに基づく排気ガス転化性能を示す図
【図9】出口空燃比センサの出力値の差に基づく排気ガス転化性能を示す図
【符号の説明】
1 ディーゼル機関
2 燃料噴射弁
3 排気ガス通路
4 排気ガス浄化触媒
5 入口空燃比センサ
6 出口空燃比センサ
8 温度センサ
9 水温センサ
10a、10b ヒーター
11 エンジン制御装置
Claims (11)
- 機関の排気ガス通路に配置され流入する排気ガスを浄化する機能を有する排気ガス浄化触媒を備える内燃機関において、
機関冷間時に、前記触媒の前後の酸素濃度が同じになってからその触媒後の酸素濃度が変化し始めるまでに要する時間に基づいて、前記触媒の浄化機能を診断する
ことを特徴とする排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 前記酸素濃度は、前記触媒前後に配置された空燃比センサにより検出される
ことを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 機関の冷間時における前記触媒前段の空燃比センサの出力値に対して、前記触媒後段の空燃比センサの出力値が変化し、それらの出力値の差により前記触媒の浄化機能を診断する
ことを特徴とする請求項2に記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 機関の冷間時における前記触媒前段の空燃比センサの出力値に対して、前記触媒後段の空燃比センサの出力値が変化し、それらの出力値の差が一定になるまでに要する時間により前記触媒の浄化機能を診断する
ことを特徴とする請求項2に記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 機関の冷間時における前記触媒前段の空燃比センサの出力値に対して、前記触媒後段の空燃比センサの出力値が変化しているときの変化速度により前記触媒の浄化機能を診断する
ことを特徴とする請求項2に記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 機関の冷間時における前記触媒前段の空燃比センサの出力値に対して、前記触媒後段の空燃比センサの出力値が変化するときのそれらの出力値の差の累積値により前記触媒の浄化機能を診断する
ことを特徴とする請求項2に記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 前記触媒の前後の空燃比センサに、機関の冷間時に、前記触媒よりも早期に活性化させる機能を設ける
ことを特徴とする請求項2から6までのいずれか1つに記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 更に前記排気ガス浄化触媒の温度を検出する手段を設け、
前記触媒の前後の空燃比が同じになってから前記触媒後での空燃比が変化したときの前記触媒の温度により前記触媒の浄化機能を診断する
ことを特徴とする請求項2から7までのいずれか1つに記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 前記触媒は、三元触媒、酸化触媒、NOxトラップ触媒、選択還元型リーンNOx触媒、HCトラップ触媒のうち少なくとも1つ以上、またはそれらの組み合わせである
ことを特徴とする請求項1から8までのいずれか1つに記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機
能診断装置。 - 前記触媒は、Pt、Pd、Rhのうち少なくとも1つ以上を含む触媒である
ことを特徴とする請求項1から9までのいずれか1つに記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。 - 前記触媒は、NOxトラップ触媒であり、その浄化機能が低下したと診断した際に、空燃比リーンを禁止し、理論空燃比にする
ことを特徴とする請求項1から10までのいずれか1つに記載の排気ガス浄化触媒の低温作動機能診断装置。
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