JP4395701B2 - キャリッジ移動装置、記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被記録媒体と対向するように設けられてインクを前記被記録媒体に向かって吐出する記録ヘッドと、該記録ヘッドを備えるキャリッジと、主走査方向に伸びて前記キャリッジの主走査方向の往復移動を案内するキャリッジガイド軸とを備えたキャリッジ移動装置に関する。さらに、本発明は、前記キャリッジ移動装置を備えたインクジェット式記録装置などの液体噴射装置に関するものである。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンタ、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録媒体に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体を前記被噴射媒体に付着される装置を含む意味で用いる。
【0003】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0004】
【従来の技術】
インクジェット式記録装置(以下、記録装置という)において、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッド(以下、記録ヘッドという)は、略箱形状のキャリッジに備えられ、被記録媒体と対向するように設けられている。前記キャリッジは、主走査方向に伸びるキャリッジガイド軸の挿通する軸受け部を備えて、前記キャリッジガイド軸に沿って往復移動可能に設けられている。
【0005】
キャリッジの上流側には、被記録媒体を搬送する搬送用ローラが設けられ、また、キャリッジの対向面側には、被記録媒体の裏面を支持し、被記録媒体と記録ヘッドとの距離を規定するプラテンが設けられている。
【0006】
被記録媒体は、プラテンに支持され記録ヘッドと対向した状態で、キャリッジの上流側から下流側へ、搬送用ローラによって搬送される。このとき、記録ヘッドが、キャリッジとともに主走査方向に往復移動し、被記録媒体に向かってインクを吐出することで、記録が実行される。
【0007】
記録実行時に、記録ヘッドから吐出されるインクは、微細なインク滴で記録媒体に付着した後、ドットを形成し、該ドットの集合が文字や画像等となる。近年の記録品質の更なる向上のため、インク滴の極小化が進められ、前記ドットの1つ1つは、肉眼では、ほとんど確認できないほど小さくなっている。
【0008】
インク滴の極小化に伴い、記録ヘッドから吐出されるインクの中には、被記録媒体に届かず、霧状に浮遊するインクミストとなるものがある。インクミストは、単に記録装置内の汚れの原因となるだけでなく、例えば、キャリッジガイド軸に付着すると、前記軸受け部とキャリッジガイド軸外面との間(以下、摺動部という)にインクが侵入し、キャリッジ移動時の摺動負荷の増加を招く原因ともなる。
【0009】
前記摺動負荷の増加を抑制するため、例えば、特許文献1に記載のキャリッジの軸受けは、潤滑油を収容可能に形成した油溝に潤滑油を蓄えて、軸受けとキャリッジガイド軸との摺動面(前記摺動部)の油膜切れを防止している。また、例えば、特許文献2に記載のシリアル記録装置は、キャリッジガイド軸の挿通するキャリッジの軸孔の入口にカバーを設けて紙粉が軸孔に塗られたグリースに付着することを防止し、前記カバーにキャリッジガイド軸と接触する清掃部材を設けてキャリッジガイド軸上の紙粉を除去している。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−254481号公報
【特許文献2】
特開平10−226124号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の軸受けやシリアル記録装置等では、キャリッジガイド軸に付着したインクミストが、グリースとともに前記摺動部へと侵入するため、該摺動部の摺動負荷の増加を抑制するのは困難であった。
【0012】
そこで、本発明の課題は、キャリッジに設けた軸受け部と該軸受け部に挿通するキャリッジガイド軸の外面との間、すなわち摺動部に、インクが侵入することを防止し、前記摺動部の摺動負荷の増加を抑えたキャリッジ移動装置を提供すること、また、該キャリッジ移動装置を備えた、記録装置及び液体噴射装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願発明の第1の態様に係るキャリッジ移動装置は、被記録媒体と対向して主走査方向に往復移動可能に設けられたキャリッジと、前記主走査方向に伸びて、前記キャリッジを前記主走査方向に案内するキャリッジガイド軸と、前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジガイド軸が挿通する軸受け部と、前記キャリッジに設けられ、インク吐出孔から前記被記録媒体に向けてインクを吐出する記録ヘッドと、を備えて成るキャリッジ移動装置であって、前記軸受け部における前記キャリッジ移動方向の先端となる部位にグリース遮断部材が設けられ、該グリース遮断部材は、当該グリース遮断部材を前方として前記キャリッジが移動する際に、前記グリース遮断部材とキャリッジガイド軸外面との接触部にグリースを留めて移動するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明によれば、キャリッジの移動の際、軸受け部の移動方向側に設けられたグリース遮断部材が、該グリース遮断部材とキャリッジガイド軸外面との接触部にグリースを留めるため、該接触部はグリースによって封止される。そのため、インクがキャリッジガイド軸に付着していても、接触部を封止するグリースによって、摺動部(キャリッジガイド軸と軸受け部との間)へのインクの侵入が防止される。したがって、摺動部に、インクが侵入することで生じる摺動負荷の増加を抑制することができる。
【0015】
本願発明の第2の態様に係るキャリッジ移動装置は、第1の態様において、前記グリースが、前記インクを撥ねる性質を有するグリースであることを特徴とするものである。
本発明によれば、グリース遮断部材とキャリッジガイド軸外面との接触部を封止するグリースが、インクを撥ねる性質を有するため、前記接触部においてインクは前記グリースによって撥ね除けられる。したがって、摺動部へのインクの侵入を、より確実に防止することが可能である。
【0016】
本願発明の第3の態様に係るキャリッジ移動装置は、第1の態様または第2の態様において、インクを吸収可能なインク吸収部材が、前記接触部に留め置かれているグリースと前記軸受け部との間に設けられていることを特徴とするものである。
本発明によれば、グリース遮断部材とキャリッジガイド軸外面との接触部を封止するグリースに切れ間等が生じ、万一、インクがグリースを通過しても、前記インクをインク吸収体が吸収するため、摺動部へのインクの侵入を防止することができる。
【0017】
本願発明の第4の態様に係るキャリッジ移動装置は、第3の態様において、前記グリース遮断部材は前記インク吸収部材を兼用して成ることを特徴とするものである。
本発明によれば、装置全体として部品点数の低減が可能である。
【0018】
本願発明の第5の態様に係るキャリッジ移動装置は、第1から4の態様のいずれか一態様において、フェルト材をリング状に形成したフェルトリングが、前記軸受け部における前記キャリッジ移動方向の先端となる部位に備えられていることを特徴とするキャリッジ移動装置。
【0019】
本発明によれば、簡素な構造でありながら、第1から4の態様と同様の効果の得られるキャリッジ移動装置を構成できる。すなわち、フェルト材は、グリースを吸収し難いため、グリース遮断部材とすることが可能であり、また、インクを吸収しやすいフェルト材を用いれば、インク吸収部材とすることも可能である。さらに、インクを吸収可能で、且つグリースを吸収し難いフェルト材を用いれば、インク吸収部材を兼用するグリース遮断部材とすることもでき、第1から4の態様と同様の効果の得られるキャリッジ移動装置を構成することができる。
【0020】
本願発明の第6の態様に係る記録装置は、被記録媒体に記録を実行する記録実行手段を備えて成る記録装置であって、第1から5の態様のいずれか一態様に記載のキャリッジ移動装置を備えていることを特徴とするものである。
本発明によれば、第1から5の態様と同様の効果が得られるキャリッジ移動装置を備えた記録装置を得られる。前記摺動部の摺動負荷の増加を抑制できるため、キャリッジの往復移動に使用する駆動源に余分な負荷が加わらなくなり、比較的低出力の駆動源が使用可能となり、制御も比較的容易になる。
【0021】
本願発明の第7の態様に係る記録装置は、第6の態様において、前記記録ヘッドと対向するように設けられ、前記被記録媒体の裏面を支持することにより、前記被記録媒体の記録面と前記記録ヘッドとの距離を規定し、且つ前記被記録媒体の端部から打ち捨てられた前記インクを受ける凹部が形成されたプラテンを備え、前記凹部には、インクを吸収するインク吸収体が配設されていることを特徴とするものである。
【0022】
本発明によれば、被記録媒体の端部から該被記録媒体の領域外にインクを打ち捨てることによって、被記録媒体に余白無く記録を実行する所謂縁無し印刷が可能である。したがって、所謂縁無し印刷においても、第1から5の態様と同様の効果が得られる。
【0023】
所謂縁無し印刷において、被記録媒体の領域外にインクを打ち捨てるとき、記録ヘッドから被記録媒体までの距離に比べ、記録ヘッドからプラテンまでの距離の方が長いため、インクミストの発生量が比較的多くなる。そのため、所謂縁無し印刷を行うとキャリッジガイド軸に付着するインクミストの量も多くなり、第1から5の態様と同様の効果は顕著に現れる。
【0024】
本願発明の第8の態様に係る液体噴射装置は、被噴射媒体に液体噴射を実行する液体噴射実行手段を備え、該液体噴射実行手段が、前記被噴射媒体と対向して主走査方向に往復移動可能に設けられたキャリッジと、前記主走査方向に伸びて、前記キャリッジを前記主走査方向に案内するキャリッジガイド軸と、前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジガイド軸が挿通する軸受け部と、前記キャリッジに設けられ、液体噴射孔から前記被噴射媒体に向けて液体を噴射する液体噴射ヘッドと、を備えて成る液体噴射装置であって、前記軸受け部における前記キャリッジ移動方向の先端となる部位にグリース遮断部材が設けられ、該グリース遮断部材は、当該グリース遮断部材を前方として前記キャリッジが移動する際に、前記グリース遮断部材とキャリッジガイド軸外面との接触部にグリースを留めて移動するように構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明に係る液体噴射装置の一実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本願発明に係る「液体噴射装置」の一例であるインクジェット式記録装置(以下、記録装置という)の大略構成について説明する。図1は、本願発明に係る記録装置本体の外観斜視図であり、図2は、本願発明に係る記録装置による記録用紙の搬送を示す記録装置側面からの模式図である。
【0026】
図1に示すように、記録装置100は、主走査方向に伸びるセンタフレーム1と、該センタフレーム1の両端から直角に折れ曲がって記録装置100の前方に伸びるサイドフレーム2、3と、を備え、被噴射媒体及び被記録媒体の一例である記録用紙P(図2参照)を、センタフレーム1の後方(上流)から、前方(下流)搬送し、排出するように構成されている。
【0027】
サイドフレーム2とサイドフレーム3の間には、記録用紙Pに、液体の一例であるインクを吐出(噴射)し、記録を実行する液体噴射実行手段の一例である記録実行手段60が備えられ、該記録実行手段60は本願発明に係るキャリッジ移動装置60aを備えている。
【0028】
また、サイドフレーム2、3は、センタフレーム1と平行に伸びるキャリッジガイド軸51を支持し、該キャリッジガイド軸51は、略箱形状のキャリッジ61を備え、前記キャリッジ移動装置60aを構成している。キャリッジ61は、軸受け部64を備え、該軸受け部64には、キャリッジ61の往復移動を案内するキャリッジガイド軸51が挿通されている。
【0029】
また、図2に示すように、キャリッジ61の下方には、液体噴射孔の一例であるインク吐出孔(図示せず)から記録用紙Pに向けてインクLを吐出する液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド62(以下、記録ヘッドという)が設けられている。
【0030】
キャリッジ61の上流側には、記録用紙Pを一定ピッチで搬送する被噴射媒体搬送手段の一例である搬送用ローラ対53が設けられ、キャリッジ61の下流側には、記録用紙Pを排出する被噴射媒体排出手段の一例である排出用ローラ対56が設けられている。さらに、搬送用ローラ対53の上流には、記録用紙Pを積畳する被噴射媒体積畳部の一例である給送トレイ58と、該給送トレイ58から搬送用ローラ対53に記録用紙Pを供給する被噴射媒体給送手段の一例である給送用ローラ57と、が設けられ、排出用ローラ対56の下流には、記録用紙Pを受ける被噴射媒体受け部の一例である排出トレイ(図示せず)が設けられている。
【0031】
また、主走査方向に伸びる略直方体のプラテン52が、記録ヘッド62と対向するように設けられ、記録用紙Pを裏面から支持することにより、記録用紙Pの記録面と記録ヘッド62との距離を規定するように設けられている。
【0032】
そして、図2に示すように、記録用紙Pは、センタフレーム1背面に設けられた給送トレイ58から、給送用ローラ57によって搬送用ローラ対53に供給され、プラテン52に支持されて記録ヘッド62と対向した状態で、上流側から下流側に向かって、すなわち副走査方向に搬送される。このとき、記録ヘッド62が、キャリッジ61ととものに主走査方向の往復移動し、記録用紙Pに向かってインクLを吐出することで、記録が実行される。記録用紙Pは、そのまま下流側へと送られ、排出用ローラ対56によって、排出トレイ(図示せず)に排出される。
【0033】
尚、本実施例に示す記録装置100は、記録用紙Pの端部から該記録用紙Pの領域外にインクLを打ち捨てることによって、記録用紙Pに余白無く記録を実行する所謂縁無し印刷を可能とするため、前記プラテン52には、記録用紙Pの端部から打ち捨てられたインクLを受ける凹部52aが形成され、該凹部52aには、インクLを吸収するインク吸収体52bが配設されている。
【0034】
以上が、記録装置100についての大略構成であり、以下、本願発明に係る記録装置100のキャリッジ移動装置60aの構成について説明し、次に、キャリッジ移動装置60aを構成するグリースG及びフェルトリング66について説明した後、本願発明の効果の一例として、記録実行時のキャリッジ61の移動回数(以下、pass数という)の増加に伴う、摺動部65(キャリッジガイド軸外面51aと軸受け部64との間)に生じる摺動負荷(以下、キャリッジ摺動負荷という)の変化の測定結果を示す。
【0035】
図3は、本願発明に係る記録装置に備えられたキャリッジの外観斜視図であり、図4は、本願発明に係る記録装置に備えられたキャリッジの側面図であり、図5は、本願発明に係る記録装置に備えられたキャリッジの軸受け部の主走査方向に沿う断面図である。
尚、説明を容易にするため、図3及び図4については、記録用紙P、排出用ローラ対56及び排出側フレーム55を図示していない。
【0036】
既述したように記録装置100は記録実行手段60を備え、該記録実行手段60はキャリッジ移動装置60aを備えている。該キャリッジ移動装置60aは、記録用紙Pと対向して主走査方向に往復移動可能に設けられたキャリッジ61と、主走査方向に伸びて、キャリッジ61を主走査方向に案内するキャリッジガイド軸51と、キャリッジ61に設けられ、キャリッジガイド軸51が挿通する軸受け部64と、キャリッジ61に設けられ、記録用紙Pに向けてインクLを吐出する記録ヘッド62と、を備えている。
【0037】
また、記録装置100は、液体噴射装置の一例であり、前記記録装置100を、液体噴射装置としてその構成を換言すれば、被噴射媒体に液体噴射を実行する液体噴射実行手段を備え、該液体噴射実行手段が、前記被噴射媒体と対向して主走査方向に往復移動可能に設けられたキャリッジ61と、前記主走査方向に伸びて、前記キャリッジ61を前記主走査方向に案内するキャリッジガイド軸51と、前記キャリッジ61に設けられ、前記キャリッジガイド軸51が挿通する軸受け部64と、前記キャリッジ61に設けられ、液体噴射孔から前記被噴射媒体に向けて液体を噴射する液体噴射ヘッドと、を備えている、と言える。
【0038】
図3及び図4に示すように、キャリッジ61は、略箱形状の背面にキャリッジガイド軸51の挿通する軸受け部64と、無端ベルト81の固定部61bと、を備えている。前記無端ベルト81は、キャリッジガイド軸51の上方に位置し、該キャリッジガイド軸51に沿って主走査方向に張られ、センタフレーム1の背面に設けられたキャリッジモータ(図示せず)の回動軸(図示せず)に取り付けられたプーリ(図示せず)とセンタフレーム1に回動自在に設けられたプーリ(図示せず)に巻き付けられている。キャリッジ61は、固定部61bで無端ベルト81に固定されているため、キャリッジモータ(図示せず)の回動によって、キャリッジガイド軸51に沿って往復移動可能となっている。
【0039】
図3乃至図5に示すように、軸受け部64の両端、すなわちキャリッジ移動方向の先端となる部位64a(以下、先端部位という)には、グリース遮断部材66aの一例であるフェルトリング66が備えられている。先端部位64aに備えられたフェルトリング66は、フェルト材をリング状に形成したもので、フェルトリング66の内径は、キャリッジガイド軸51の外径と略同径に設定されている。
【0040】
また、先端部位64aには、ホルダ64bが取り付けられ、該ホルダ64bは、フェルトリング66と軸受け部64とが隣接するようにフェルトリング66を保持している。軸受け部64は、フェルトリング66に挟まれ、さらにその外側には、図5に示すように、グリースGが、フェルトリング66とキャリッジガイド軸外面51aとの接触部67を封止するように塗り付けられ、堆積している。
【0041】
尚、説明を容易にするため、図3及び図4についてはグリースGを図示せず、また、図1及び図2については、ホルダ64b、フェルトリング66、グリースGを図示していない。
【0042】
キャリッジ61が移動すると軸受け部64におけるキャリッジ移動方向の後端側に堆積しているグリースGは、キャリッジ61の移動とともにキャリッジガイド軸51に徐々に付着し減少するが、既述したように、フェルトリング66は、その内径がキャリッジガイド軸51の外径と略同径に設定されており、また、フェルト材自体がグリースGを吸収しにくいため、キャリッジ61が移動の向きを変えて逆方向に移動すると、軸受け部64の前方に位置するグリースGは、フェルトリング66に掻き取られて再び図5のように堆積する。
【0043】
すなわち、本実施例に係る記録装置100に備えられたキャリッジ移動装置60aは、キャリッジ61に設けられた軸受け部64における先端部位64aにフェルトリング66が設けられ、該フェルトリング66は、当該フェルトリング66を前方としてキャリッジ61が移動する際に、前記フェルトリング66とキャリッジガイド軸外面51aとの接触部67にグリースGを留めて移動するように構成されている。
以上が、本願発明に係る記録装置100のキャリッジ移動装置60aの構成についての説明である。
【0044】
本願発明に係る記録装置100のキャリッジ移動装置60aは上述のように構成されているため、先端部位64aに設けられたフェルトリング66が、キャリッジ61の往復移動とともに、堆積したグリースGを押し、同時に、該グリースGが、キャリッジガイド軸51に付着したインクミストを押して、該インクミストをキャリッジガイド軸51の両端部分に押し退ける。また、このとき、グリースGが、フェルトリング66とキャリッジガイド軸外面51aとの接触部67に留まるため、摺動部65へのインクLの侵入を防止することができる。
【0045】
次に、キャリッジ移動装置60aを構成するグリースG及びフェルトリング66について説明する。
従来、フェルトリング(フェルト材)は、比較的粘性が低くフェルト材に浸透しやすいオイル等の潤滑剤を蓄えて摺動する部分に給油するために利用され、比較的粘性が高くフェルト材に浸透しにくい潤滑剤であるグリースとともに利用されることはなかった。
【0046】
本実施例において、グリースGは、フェルトリング66とキャリッジガイド軸外面51aとの接触部67を封止し、インクLが前記摺動部65に侵入することを防止するためのものであり、また、グリース遮断部材66aの一例であるフェルトリング66は、グリースGを吸収し難く、キャリッジガイド軸51からグリースGを掻き取り、該グリースGを接触部67に留めるものである。
すなわち、グリースG及びフェルトリング66は、従来のように摺動部65の潤滑性を高めることを主目的とするものではない。
【0047】
グリースGの主たる目的は、前記接触部67に留まること、及びキャリッジガイド軸51に付着したインクLをキャリッジ61の移動とともに押し退けること、にある。つまり、グリースGは、従来の潤滑剤としての機能よりも、封止剤としての機能が求められ、むしろ、接触部67に留まり封止剤としての機能を果たせるものであれば、一般に「グリース」と呼ばれるものでなくでも良い。
【0048】
また、グリースGは、インクLを押し退けるものであるため、インクLと混ざり難いものが好ましく、インクLを撥ねる性質を有するグリースGであればより好ましい。
既述したように、グリースGがフェルトリング66に浸透し難いため(フェルトリング66がグリースGを吸収し難いため)、フェルトリング66は、キャリッジガイド軸51から、グリースGを掻き取り堆積させることができる。
【0049】
すなわち、軸受け部64における先端部位64aには、少なくともグリースGを接触部67に留めることのできるグリース遮断部材66aを備えていれば良く、該グリース遮断部材66aの材料は、フェルト材に限られない(例えば、樹脂材料、ゴム材料、フェルト材以外の繊維材料等でも良い)。
【0050】
また、グリースGとグリース遮断部材66aの組み合わせによってもグリースG及びグリース遮断部材66aに適する材料は異なるが、少なくともグリースGがグリース遮断部材66aとキャリッジガイド軸外面51との接触部67を封止可能な組み合わせであれば良い。
【0051】
尚、フェルトリング66が、キャリッジガイド軸51からグリースGを掻き取るため、グリースGによる摺動部65の潤滑性の向上は困難であるが、フェルトリング66よりも軸受け部64側の部分に、グリースGとは別個に潤滑剤を予め塗ることで、従来と同等の摺動部65の潤滑性を確保することが可能である。
【0052】
フェルトリング66は、グリースGを吸収し難いが、その一方で、インクLを吸収し易い。そのため、前記接触部67を封止するグリースGに切れ間が生じ、万一、インクLがグリースGを通過してグリースGよりも軸受け部64側に到達しても、前記インクLはフェルトリング66に吸収されて、インクLの前記摺動部65への侵入を防止することができる。
【0053】
すなわち、フェルトリング66は、グリースGを接触部67に留めるグリース遮断部材66aとインクLを吸収するインク吸収部材66bとを兼用している。本実施例のように、フェルトリング66を用い、グリース遮断部材66aとインク吸収部材66bとを兼用すれば、装置全体として部品点数の低減を図ることができる。ただし、必ずしも、グリース遮断部材66aとインク吸収部材66bとを兼用する必要はない。
【0054】
例えば、先端部位64aに、少なくともグリースGを接触部67に留めることのできるグリース遮断部材66aを備えて、該グリース遮断部材66aとは別個に、インクLを吸収するインク吸収部材66b(フェルト材に限らず、例えば、スポンジ材料、フェルト材以外の繊維材料等でも良い)を設けても良い。
【0055】
具体的には、該インク吸収部材66bを、接触部67に留め置かれているグリースGと軸受け部64との間に設ければ、グリースGを通過して該グリースGよりも軸受け部64側に到達したインクLを吸収することができる。
【0056】
以上が、キャリッジ移動装置60aを構成するグリースG及びフェルトリング66についての説明であり、以下、本願発明の効果の一例として、pass数(記録実行時のキャリッジ61の移動回数)の増加に伴う、キャリッジ摺動負荷(前記摺動部65に生じる摺動負荷)の変化の測定結果を示す。
【0057】
図6は、3台の記録装置について、pass数の増加に伴うキャリッジ摺動負荷の変化を比較したものである。比較に用いた記録装置の1台目は、図3乃至図5に示すように、フェルトリング66を先端部位64a(軸受け部64におけるキャリッジ61移動方向の先端となる部位)に設け、フェルトリング66とキャリッジガイド軸外面51aとの接触部67を封止するようにグリースGが塗られた記録装置(以下、実施例の記録装置という)である。比較に用いた記録装置の2台目は、実施例の記録装置からグリースGを削除しフェルトリング66のみを設けた記録装置(以下、フェルトリングのみの記録装置という)である。比較に用いた記録装置の3台目は、実施例の記録装置からフェルトリング66を削除しグリースGのみを設けた記録装置(以下、グリースのみの記録装置という)である。
【0058】
図6中、丸印は実施例の記録装置についての、三角印はフェルトリングのみの記録装置についての、四角印はグリースのみの記録装置についての、pass数の増加に伴うキャリッジ摺動負荷の変化の測定結果を示している。
実施例の記録装置についてのpass数の増加に伴うキャリッジ摺動負荷の増加は、フェルトリングのみの記録装置及びグリースのみの記録装置についてのpass数の増加に伴うキャリッジ摺動負荷の増加と比べ、緩やかである。
【0059】
実施例の記録装置は、前記接触部67を通過してグリースGやインクLが、前記摺動部65に侵入し難いため、該摺動部65の状態は、比較的長く初期状態に近い状態を保つことができ、キャリッジ摺動負荷の増加を抑制できている。
具体的には、実施例の記録装置のキャリッジ摺動負荷は、フェルトリングのみの記録装置のキャリッジ摺動負荷の63%程度であり、また、実施例の記録装置のキャリッジ摺動負荷は、グリースのみの記録装置のキャリッジ摺動負荷の22%程度である。
【0060】
フェルトリングのみの記録装置のように、キャリッジ61の先端部位64aにフェルトリング66を設けることで、キャリッジ摺動負荷の増加をかなり抑制できるが、実施例の記録装置のように、キャリッジ61の先端部位64aにフェルトリング66を備え、且つフェルトリング66とキャリッジガイド軸外面51aとの接触部67を封止するようにグリースGを設けることで、より一層高い効果が得られ、キャリッジ摺動負荷が、グリースGのみの記録装置に比べて、4分の1以下に抑制することができる。
【0061】
したがって、キャリッジ61の往復移動に使用する駆動源であるキャリッジモータ(図示せず)に余分な負荷が加わらず、比較的低出力のモータを使用可能であり、該モータの制御も比較的容易になる。
【0062】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明に係る記録装置本体の外観斜視図。
【図2】 本願発明に係る記録装置による記録用紙の搬送を示す模式図。
【図3】 本願発明に係る記録装置に備えられたキャリッジの外観斜視図。
【図4】 本願発明に係る記録装置に備えられたキャリッジの側面図。
【図5】 本願発明に係る記録装置に備えられた軸受け部の断面図。
【図6】 pass数の増加に伴うキャリッジ摺動負荷の変化を示す図。
【符号の説明】
51 キャリッジガイド軸、 51a キャリッジガイド軸外面、 64 軸受け部、 64a 軸受け部におけるキャリッジ移動方向の先端となる先端部位、 64b ホルダ、 65 摺動部、 66 フェルトリング、 66a グリース遮断部材、 66b インク吸収部材、 67 グリース遮断部材とキャリッジガイド軸外面との接触部、 G グリース

Claims (2)

  1. 被記録媒体と対向して主走査方向に往復移動可能に設けられたキャリッジと、
    前記主走査方向に伸びて、前記キャリッジを前記主走査方向に案内するキャリッジガイド軸と、
    前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジガイド軸が挿通する軸受け部と、
    前記キャリッジに設けられ、インク吐出孔から前記被記録媒体に向けてインクを吐出する記録ヘッドと、
    前記軸受け部における前記キャリッジ移動方向の両側となる部位に設けられたグリース遮断部材と、を備え、
    前記キャリッジが移動する際、
    進行方向前側の前記グリース遮断部材は、前記キャリッジガイド軸の外面のグリースを吸収せずに掻き取り、前記グリース遮断部材と前記キャリッジガイド軸の外面との接触部にグリースを堆積し留めて移動し、
    該進行方向前側のグリース遮断部材に押されて移動する堆積したグリースが、前記キャリッジガイド軸に付着したインクを押して該キャリッジガイド軸の端部に押し退け構成であって、
    記グリース遮断部材は、フェルト材でリング状に形成されていることを特徴とするキャリッジ移動装置。
  2. 被記録媒体に記録を実行する記録実行手段を備えて成る記録装置であって、請求項1に記載のキャリッジ移動装置を備えていることを特徴とする記録装置。
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