JP4394209B2 - 活性炭の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、分子中に塩素原子を含有する樹脂を炭化・賦活する活性炭の製造方法に関する。また、本発明は、電気二重層キャパシタの分極性電極を形成した場合に、静電容量が大きく、内部抵抗が小さい電気二重層キャパシタを与えることができる活性炭に関する。さらに、本発明は、該活性炭を用いて形成した活性炭電極、及び該活性炭電極を分極性電極として備えた静電容量が大きく、時定数が小さな電気二重層キャパシタに関する。
【0002】
【従来の技術】
活性炭は、細孔を有する多孔質炭素体であって、大きな比表面積と吸着能を持つことから、微量成分の吸着や分離などの用途に使用されている。近年、活性炭は、電池材料としても注目されており、例えば、空気電池の電極材料、電気二重層キャパシタ(即ち、電気二重層コンデンサ)の分極性電極材料としての用途展開が図られている。特に電気二重層キャパシタは、大静電容量かつ長寿命で、急速充電が可能、充放電が容易、二次電池に比べてサイクル特性に優れている、二次電池の中で最も信頼性の高いNi−Cd電池に比べて安価であるといった特徴を有するため、新たなエネルギーデバイスとして、多くの分野で機能的な応用が期待されるようになっている。また、電気二重層キャパシタは、電子機器のバックアップ電源などの小電力用分野から、電気自動車やハイブリッドカーの補助電源などの大電力用分野への応用も検討されている。それに伴って、分極性電極に対しても、更なる大静電容量化などの高性能化が求められている。
【0003】
電気二重層キャパシタは、分極性電極と電解質との界面に生じる電気二重層に蓄積される静電容量を利用するキャパシタである。分極性電極には、比表面積や嵩密度が大きく、電気化学的に不活性であって、電気抵抗が低いことが要求されている。活性炭は、これらの要求を満たすことが可能な電極材料であり、既に活性炭を用いて形成された分極性電極を備えた電気二重層キャパシタが開発されている。従来、電気二重層キャパシタの分極性電極材料として、ヤシ殻、フェノール樹脂、石油ピッチ、コークスなどの炭素質原料を炭化・賦活して得られた活性炭を用いることが提案されている。しかし、これらの活性炭から形成された分極性電極を備えた電気二重層キャパシタは、一般に、静電容量が十分ではない。
【0004】
最近、炭素質原料としてポリ塩化ビニリデン系樹脂を用いて得られた活性炭を電気二重層キャパシタの分極性電極材料とすることが提案されている(特開平7−249551号公報、特開平8−236406号公報、特開平9−213589号公報)。ポリ塩化ビニリデン系樹脂を炭化・賦活してなる活性炭を用いて分極性電極を形成すると、静電容量が比較的大きい電気二重層キャパシタを得ることができる。しかしながら、これらの活性炭を用いた場合であっても、静電容量が未だ十分ではなかったり、静電容量が大きくても内部抵抗が大きかったりするため、年々高まる高性能化の要求に対して十分に応えることができていない。
【0005】
電気二重層キャパシタの内部抵抗は、活性炭と集電板との接触抵抗、活性炭間の接触抵抗、活性炭の抵抗、並びに電解液の抵抗などにより構成される。内部抵抗が大きいと、放電時の電圧降下が大きくなり、有効活用できる静電容量が低くなる。また、電気二重層キャパシタの静電容量をF、内部抵抗をΩとしたとき、これらの積F・Ωで表される時定数は、電気二重層キャパシタの応答性を表す。電気二重層キャパシタは、時定数が小さい程、急速充放電をすることができる。したがって、電気二重層キャパシタの分極性電極用活性炭として、静電容量が大きく、同時に内部抵抗が小さく、時定数が小さな電気二重層キャパシタを与えることができる活性炭が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、電気二重層キャパシタの分極性電極用活性炭として好適な活性炭とその製造方法を提供することにある。より具体的に、本発明の目的は、電気二重層キャパシタの分極性電極を形成した場合に、静電容量が大きく、内部抵抗が小さく、時定数が小さな電気二重層キャパシタを与えることができる活性炭及びその製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、そのような活性炭から形成された活性炭電極、並びに該活性炭電極を分極性電極として備えた電気二重層キャパシタを提供することにある。
【0007】
本発明者らは、前記従来技術を克服するために鋭意研究した結果、ポリ塩化ビニリデン系樹脂などの分子中に塩素原子を含有する樹脂を、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物の存在下に加熱処理すると、諸特性に優れた活性炭の得られることを見いだした。この活性炭を用いて電気二重層キャパシタの分極性電極を形成した場合、静電容量が大きく、内部抵抗が小さく、時定数が小さな電気二重層キャパシタを得ることができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) を、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理する活性炭の製造方法が提供される。また、本発明によれば、分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) を、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理して得られた活性炭が提供される。
【0009】
さらに、本発明によれば、分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) を、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理して得られた活性炭を用いて形成された活性炭電極が提供される。さらにまた、本発明によれば、分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) を、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理して得られた活性炭を用いて形成された活性炭電極を、分極性電極として備えた電気二重層キャパシタが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、活性炭81重量部、導電性アセチレンブラック9重量部、及びポリテトラフルオロエチレン粉末10重量部を含む混合物から形成された20mmφのシート状電極を分極性電極とし、かつ、(C254 NBF4 /プロピレンカーボネート(1mol/L)溶液を電解液とする電気二重層キャパシタを構成した場合、活性炭の重量当りの静電容量が30F/g以上となり、かつ、静電容量と内部抵抗との積で表される時定数が35秒以下となる活性炭が提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明において、活性炭の原料として使用する分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) としては、分子中に結合した塩素原子を有するポリマーであれば特に限定されないが、好ましい具体例としては、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などを挙げることができ、これらの中でも、ポリ塩化ビニリデン系樹脂が静電容量の大きい活性炭電極を与える活性炭が得られやすいことから特に好ましい。
【0012】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC系樹脂)としては、例えば、塩化ビニリデンのホモポリマー、塩化ビニリデンとこれと共重合可能なモノマーとのコポリマー、及びこれらのホモポリマーまたはコポリマーを含有する樹脂組成物を挙げることができる。塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、特に限定されないが、代表的なものとして、例えば、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ジビニルベンゼンなどのビニル系モノマー;イタコン酸やそのエステル(例:モノブチルイタコネート)などの不飽和二塩基酸とそのモノエステルまたはジエステル;などを挙げることができる。これら共重合可能なモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。コポリマー中の塩化ビニリデンの共重合割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
【0013】
ポリ塩化ビニリデン系樹脂としては、塩化ビニリデンホモポリマー、及び塩化ビニリデンの共重合割合が50重量%以上の塩化ビニリデンコポリマーが好ましい。工業的に実用化されているポリ塩化ビニリデン系樹脂は、一般に、安定剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、滑剤などの多種類の添加剤を含有しているのが普通であり、本発明で使用するポリ塩化ビニリデン系樹脂には、このような添加剤を含有した樹脂組成物も包含される。また、ポリ塩化ビニル樹脂やポリアクリロニトリル樹脂などの他の樹脂を少量成分として含有する樹脂組成物であってもよい。
【0014】
本発明のポリ塩化ビニリデン系樹脂は、懸濁重合、乳化重合等の重合法により得ることができる。ポリ塩化ビニリデン系樹脂の形態は、特に限定されないが、粉末や顆粒などであることが、炭化・賦活を円滑に行う上で望ましい。ポリ塩化ビニリデン系樹脂は、重合により粉末状ポリマーとして得ることができる。ポリ塩化ビニリデン系樹脂成形品やフレーク屑などを粉砕して、粉末を調製してもよい。粉砕する場合には、ポリ塩化ビニリデン系樹脂成形品やフレーク屑などを粉砕して、通常18メッシュ以下、好ましくは100メッシュ以下、より好ましくは140メッシュ以下の大きさに粉砕しておくことが、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) との反応性の観点から好ましい。
【0015】
本発明の活性炭は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂などの分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) を炭化・賦活することによって得ることができる。従来より、活性炭の製造方法として、塩化亜鉛を用いた薬品賦活法が知られている。しかしながら、本発明者らの研究結果によれば、塩素原子を含有する樹脂(A) を塩化亜鉛を用いて炭化・賦活した場合、時定数を十分に小さくすることが困難であることが判明した。本発明では、分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) を、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理することにより、炭化・賦活を行う。これにより得られた活性炭を電極材料として用いることにより、電気二重層キャパシタの静電容量を高度に維持し、かつ、時定数を小さくすることができる。
【0016】
該亜鉛化合物(B) としては、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物であれば特に限定されないが、具体例としては、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛等のカルボン酸亜鉛化合物;炭酸亜鉛;亜鉛アセチルアセトナート;これらの2種以上の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、及びこれらの2種以上の混合物が特に好ましい。分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) が、特異的な作用を奏する詳細な理由は明らかではないが、分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) とともに加熱されたときに、該樹脂(A) から発生する塩化水素により、ZnCl2 に変化して賦活作用を発現するとともに、CO、CO2 などのガスを発生し、これらによる賦活作用をも発現し、電気二重層キャパシタの分極性電極用活性炭として好適な細孔構造を生成するものと考えられる。
【0017】
分子中に塩素原子を含有する樹脂(A) を、分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理する具体的な条件は、目的に応じて種々に変化させることができる。本発明の活性炭の製造方法の一例としては、前記樹脂(A) と亜鉛化合物(B) との混合物を、非酸化性雰囲気下で加熱して、該樹脂(A) を炭化かつ賦活する方法を挙げることができる。この方法によれば、容易に高性能の活性炭を得ることができるので、生産性の点でも好ましい。加熱温度は、目的に応じて選択することができるが、通常300〜1500℃であり、生産性や収率を考慮すると、400〜1200℃がより好ましい。多くの場合、750℃以下の温度に加熱することにより、良好な結果を得ることができる。加熱時間は、加熱温度にもよるが、通常10分間から30時間、好ましくは15分間から25時間程度である。
【0018】
亜鉛化合物(B) は、粉末状で使用してもよいが、前記樹脂(A) との混和性(濡れ)をよくするために、水などの溶媒との混合物として使用することもできる。前記樹脂(A) と亜鉛化合物(B) との使用割合は、重量比で、通常1:0.001〜1:10、好ましくは1:0.005〜1:5、より好ましくは1:0.01〜1:2である。多くの場合、前記樹脂(A) 100重量部に対して、亜鉛化合物(B) を100重量部未満、通常10〜95重量部の小割合で使用した場合であっても良好な結果を得ることができる。この点でも、前記亜鉛化合物(B) は、従来の塩化亜鉛よりも賦活剤としての作用効果に優れている。また、亜鉛化合物(B) は、必要に応じて、塩化亜鉛、リン酸などの他の賦活剤と併用することもでき、中でも塩化亜鉛との併用が特に好ましい。亜鉛化合物(B) と他の賦活剤とを併用する場合、両者の使用割合は、重量比で、好ましくは1:0.01〜1:100程度である。特に、酢酸亜鉛と塩化亜鉛との併用系は、良好な結果をもたらすことができる。
【0019】
非酸化性雰囲気としては、例えば、窒素ガス、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガスなどの不活性ガス雰囲気を挙げることができる。すなわち、これらの不活性ガス気流中で加熱処理を行う。
炭化・賦活は、前記樹脂(A) と亜鉛化合物(B) との混合物を、窒素ガスなどの非酸化性雰囲気下で、所定の温度に昇温することにより行う。活性炭の製造方式としては、固定床方式、移動床方式、流動床方式、トンネルキルン方式、ロータリーキルン方式などがある。この炭化・賦活工程の後、必要に応じて、二次賦活や三次賦活などの付加的な賦活処理を行ってもよい。より具体的には、以下の通りである。
【0020】
(1)炭化・賦活処理を、前記樹脂(A) と亜鉛化合物(B) との混合物を、窒素ガスなどの非酸化性雰囲気下で、300〜1500℃の温度に加熱処理することにより行う。炭化・賦活処理の後、水などの溶媒で洗浄後、乾燥する。乾燥後、必要に応じて、活性炭の性能を損なわない範囲で、高温での熱処理を行うことも可能である。
【0021】
(2)活性炭の性能をさらに高めるために、二次賦活処理を行うことができる。二次賦活処理は、例えば、上記で得られた活性炭を賦活ガス(例えば、水蒸気、二酸化炭素、空気、燃焼排ガス)を用いて、通常500〜1500℃の温度でガス賦活することにより行うことができる。この二次賦活処理により、通常5〜30重量%の減量賦活がなされる。二次賦活処理として、薬品(例えば、リン酸、KOH)を用いた薬品賦活を行ってもよい。二次賦活処理に加えて、同様の方法により、三次以上の賦活処理も行うことができる。
【0022】
本発明の活性炭は、微量成分の吸着及び分離などの用途に広く使用することができるが、それらの一般的な用途以外に、電極材料として好適に使用することができる。本発明の活性炭電極は、本発明の活性炭を用いて形成される。活性炭電極を製造するには、一般に、活性炭とバインダー、必要に応じて導電性アセチレンブラックなどの導電材とを混練し、所定の電極形状に成形すればよい。この場合、必要に応じて有機溶剤、水などの溶剤(分散媒体)を加えて、スラリーまたはペーストにしてから成形することができる。
【0023】
バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルピロリドン、ポリイミド、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。導電材としては、例えば、導電性カーボンブラック、黒鉛、金属繊維、酸化チタン、酸化ルテニウムなどがある。溶剤としては、水、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、フタル酸ジメチル、エタノール、メタノール、ブタノールなどが挙げられる。分散性の改善のために、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を添加してもよい。
【0024】
代表的な分極性電極の作製方法としては、(1)活性炭、導電材、バインダーなどを含む混合物に溶剤を添加して混合スラリーとしたものを、集電体に塗布するか、あるいは混合スラリー中に集電板を浸漬し、乾燥して作製する方法(例えば、特開平10−64765号公報)、(2)活性炭、導電材、溶剤に不溶のバインダーなどを含む混合物に溶剤を添加して混練し、得られたペースト状混合物をロールを用いて圧延してシート状に成形し、次いで、乾燥して得たシートを集電板表面に導電性接着剤等を介して接合した後、プレスし、熱処理乾燥して作製する方法などを挙げることができる。
【0025】
本発明の電気二重層キャパシタは、本発明の活性炭電極を分極性電極として備えた電気二重層キャパシタであり、図1に示す構造のものを例示することができる。すなわち、図1は、単セルの電気二重層キャパシタの一例の断面図である。この電気二重層キャパシタは、2つの分極性電極1,1によりセパレーター2を挟み、それをさらに集電板(集電極)3,3で挟んだ構造のものを、電解液を入れたケース4,4内に、パッキング5を介して封入したものである。
【0026】
電解液の溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ブチレンカーボネート、スルホラン、メチルスルホラン、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの非水系溶媒が用いられる。電解質としては、例えば、(C254 NBF4 、(C25 )(CH3 )NBF4 、(C25 )(CH3 )PBF4 などが挙げられる。希硫酸などの水溶液系電解液を用いることもできる。なかでも、(C254 NBF4 のプロピレンカーボネート溶液に代表される有機電解液が好ましい。
【0027】
正極、負極用の集電板としては、アルミニウム、ステンレス、ニッケルなどを用いることができる。集電板の形状は、箔状、シート状、板状、エキスパンドメタル状、金属発泡体などがある。セパレーターとしては、ガラス繊維マット、マニラ麻やクラフトからなるセルロース紙、親水化多孔質PTFEフィルム、ポリプロピレン不織布などが挙げられる。ケースの材質としては、アルミニウム、ステンレス、鉄とその合金、合成樹脂(例、PTFE)などが挙げられる。分極性電極は、電気二重層キャパシタの形状等に応じて、セパレーターを介して積層または巻回することができる。
【0028】
本発明の活性炭を用いて形成された活性炭電極は、特に電気二重層キャパシタの分極性電極として好適であり、従来の活性炭を用いた場合に比べて、静電容量と時定数の点でさらに性能を一段と高めた電気二重層キャパシタを得ることができる。より具体的に、本発明の活性炭を用いて形成された活性炭電極は、特に電気二重層キャパシタの分極性電極として好適であり、次のような優れた性能を発揮することができる。
(1)電極の静電容量が高いために、電気二重層キャパシタの小型化を図ることができる。
(2)内部抵抗が小さく、時定数が小さいために、急速充放電特性の優れた電気二重層キャパシタを得ることができる。
【0029】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
[実施例1]
攪拌機付の10L重合反応槽に、脱イオン水4100g、及びメチルセルロース1.5%溶液243gを投入し、槽内を25℃にコントロールした。次に、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート5.6g、及び塩化ビニリデンモノマー3500gを投入し、分散攪拌後、48℃まで昇温して重合を開始した。8時間経過後、重合反応槽内の温度を35℃以下に下げて攪拌を停止し、反応系を大気に解放した。槽内より生成したスラリーを取り出し、遠心式脱水機にかけて水を分離し、得られたポリマーを60℃の棚段乾燥機に15時間入れて乾燥した。
得られたポリ塩化ビニリデンポリマー100重量部に対して酢酸亜鉛34重量部をミキサーで均一に混合してから、窒素気流中で、100℃/時間の昇温速度で650℃まで昇温し、650℃の温度で3時間保持することにより、炭化と賦活を行った。得られた炭化物を水洗した後、130℃で乾燥して活性炭を得た。次に、得られた活性炭の一部をとり、150メッシュ以下の粒径になるまで乳鉢で良く粉砕した。
このようにして得られた各活性炭を用いて、以下の手順に従って分極性電極を作製し、次いで、分極性電極を組み込んだ電気二重層キャパシタを作製した。そして、得られた各電気二重層キャパシタの充・放電特性を調べた。
【0031】
▲1▼活性炭の乾燥
活性炭を減圧乾燥機中150℃で1時間乾燥させた後、サンプル瓶に入れ、シールテープを巻いて密封し、シリカゲル入りデシケータに入れて常温まで冷却した(その間、約15分間)。
▲2▼活性炭の混練
導電性アセチレンブラック9重量部を乳鉢ですりつぶした。乾燥した活性炭を速やかに81重量部計量し、乳鉢に入れて導電性アセチレンブラックと良く混練した。次に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末10重量部を乳鉢に入れて良く粉砕した後、乳棒で混練し、全体をガム状にまとめた。このガム状物を薬包紙に包み、1時間大気中に放置し、電極用試料を調製した。
【0032】
▲3▼電極の作製
上記ガム状の電極用試料を剃刀の刃で刻み、円形の金型に入れ、500MPaの圧力下で5分間加圧成形して電極(20mmφ)を作製した。電極の厚みを厚み計で測定し、体積を算出した。
▲4▼電気二重層キャパシタの作製
SUS−316製の2枚の集電板のそれぞれに、導電性カーボンブラックとカルボキシメチルセルロースと水の混合物からなる導電性ペーストを塗り、半乾きの状態で電極を貼り付けた。ガラス繊維製フィルター(ADVANTEC社製:GA−200)をセパレーターとして、これを2つの電極で挟み、PTFE製のセルに組み込んだ。その後、減圧乾燥機中で150℃で3時間乾燥し、露点−90℃以下のグローブボックス内で放冷した。次いで、電解液を添加してセルを組み上げた。電解液としては、(C254 NBF4 /プロピレンカーボネート(1mol/L)溶液を用いた。
【0033】
▲5▼充・放電試験:
試験は、(株)東洋システムの充・放電試験機(TOSCATTM−3100U)を用いて行った。充電は、まず電圧が2.3Vに達するまでは5mAの定電流で行い、電圧が2.3Vに達したら2.3Vの定電圧充電に切り替え、全充電時間が2.5時間になるようにして行った。次に、5mAの定電流で放電を行い、電圧1V付近の電圧V1 (ボルト)に達するまでの時間T1 (秒)、電圧0.5V付近の電圧V0.5 (ボルト)に達するまでの時間T0.5 (秒)を求める。これらの関係を図2に示す。電気二重層キャパシタの静電容量(F)を次式により求めた。
静電容量=I×(T0.5 −T1 )/(V1 −V0.5
ここで、Iは、アンペアを単位とする放電電流である。また、充電電圧と放電開始後1秒後の電圧差ΔVをIRdropとし、これを放電電流で除した値を内部抵抗(Ω)とした。上記で求めた電気二重層キャパシタの静電容量(F)を、電極中の活性炭重量(正極及び負極の合計)で除した値を、活性炭重量当たりの容量(F/g)とした。時定数は、静電容量(F)と内部抵抗(Ω)との積として求めた(単位は秒である)。結果を表1に示す。
【0034】
[実施例2〜5、及び比較例1〜3]
賦活剤を酢酸亜鉛から表1に示す各化合物に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作を行った。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
Figure 0004394209
【0036】
(脚注)
(1)賦活剤の重量部は、ポリ塩化ビニリデン系樹脂100重量部に対する割合である。
【0037】
表1の結果から明らかなように、本発明の活性炭を用いると、活性炭81重量部、導電性アセチレンブラック9重量部、及びポリテトラフルオロエチレン粉末10重量部を含む混合物から形成された20mmφのシート状電極を分極性電極とし、かつ、(C254 NBF4 /プロピレンカーボネート(1mol/L)溶液を電解液とする電気二重層キャパシタを構成した場合、活性炭の重量当りの静電容量が30F/g以上となり、かつ、静電容量と内部抵抗との積で表される時定数が35秒以下となる(実施例1〜5)。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、電気二重層キャパシタの分極性電極を形成した場合に、静電容量が大きく、内部抵抗が小さい電気二重層キャパシタを与えることができる活性炭、及びその製造方法が提供される。また、本発明によれば、該活性炭を用いて形成した活性炭電極、及び該活性炭電極を分極性電極として備えた静電容量が大きく、時定数が小さな電気二重層キャパシタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気二重層キャパシタの一例を示す断面図である。
【図2】電気二重層キャパシタを充電後、定電流放電を行った場合の電圧曲線、並びに電極電圧の変化とその変化に要する時間との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1:分極性電極
2:セパレーター
3:集電板
4:ケース
5:パッキング

Claims (6)

  1. ポリ塩化ビニリデン系樹脂(A) を、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、及び亜鉛アセチルアセトナートからなる群より選ばれる少なくとも一種である分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理する活性炭の製造方法。
  2. 酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、及び亜鉛アセチルアセトナートからなる群より選ばれる少なくとも一種である分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) に加えて、塩化亜鉛をも存在させて加熱処理する請求項1記載の製造方法。
  3. ポリ塩化ビニリデン系樹脂(A) を、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、及び亜鉛アセチルアセトナートからなる群より選ばれる少なくとも一種である分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理して得られた活性炭。
  4. ポリ塩化ビニリデン系樹脂(A) を、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、及び亜鉛アセチルアセトナートからなる群より選ばれる少なくとも一種である分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理して得られた活性炭を用いて形成された活性炭電極。
  5. ポリ塩化ビニリデン系樹脂(A) を、酢酸亜鉛、炭酸亜鉛、及び亜鉛アセチルアセトナートからなる群より選ばれる少なくとも一種である分子中に亜鉛原子と炭素原子と酸素原子とを含有する亜鉛化合物(B) の存在下に加熱処理して得られた活性炭を用いて形成された活性炭電極を、分極性電極として備えた電気二重層キャパシタ。
  6. 活性炭81重量部、導電性アセチレンブラック9重量部、及びポリテトラフルオロエチレン粉末10重量部を含む混合物から形成された20mmφのシート状電極を分極性電極とし、かつ、(CNBF/プロピレンカーボネート(1mol/L)溶液を電解液とする電気二重層キャパシタを構成した場合、活性炭の重量当りの静電容量が30F/g以上となり、かつ、静電容量と内部抵抗との積で表される時定数が35秒以下となる請求項3記載の活性炭。
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