JP4393886B2 - 原子吸光光度計 - Google Patents

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Description

本発明は、試料を加熱原子化し、試料中の金属濃度を定量する原子吸光光度計に係わり、特に、定量に最適な標準添加検量線を自動で作成するオートサンプラを有する原子吸光光度計に関する。
原子吸光光度計は、原子化部に注入された試料を2000〜3000℃程度に加熱し、生成した原子蒸気の光吸収を測定することによって金属を定量する装置である。
原子吸光光度計において、光源ランプからの光が、原子化部を通過して検出器に入射される。そして、この検出器において、原子化部で生成された原子蒸気による光吸収が、吸光度に換算され出力される。
吸光度は、試料に含まれる金属濃度に依存するため、濃度既知の標準液を用いて濃度と吸光度の関係、すなわち検量線を求め、これより未知試料中の金属濃度を求めることができる。
ここで、原子化部において試料を加熱する方法には、化学炎を用いるフレーム方式と、電気加熱炉を用いる電気加熱方式とがある。
また、未知試料中の元素濃度の定量法には大きく分けて二種類の方法があり、一方は検量線法で、他方は標準添加法である。
検量線法では、まず、単純な金属の溶液を用いて、濃度を段階的に増加させた検量線用標準液を作成し、それぞれの吸光度を測定して検量線を作成する。元素によって差はあるが、一般的に低い吸光度では検量線は直線的であり、比較的高い吸光度では湾曲する傾向がある。次に、未知試料の吸光度を測定し、これを検量線に内挿して濃度を求める。
この検量線法では、標準液に含まれる金属と未知試料に含まれる金属とが、同濃度であれば等しい吸光度を示すことを前提にしている。
しかし、未知試料において、含まれる共存物によっては標準液と同等の吸光度を示さない場合がある。このような場合には標準液の検量線への内挿から濃度を算出すると誤差が大きくなるので、標準添加法が用いられる。
この標準添加法では、未知試料を一定量のいくつかの試料に分け、それらに検量線用標準液を段階的にそれぞれ加えたものを測定する。横軸に添加した標準液濃度、縦軸に吸光度をプロットすると、比較的低い吸光度範囲では濃度0において上方向(プラス方向)に浮き上がった直線の検量線が得られる。
これを吸光度0(あるいはブランク試料の吸光度)まで外挿することによって、未知試料中の金属濃度を算出することができる。この標準添加法によれば、共存物による影響をほぼ補正することができる。
ここで、誤差の少ないデータを得るには、検量線の直線性が良いことが必要であり、また標準液を未知試料に段階的に加えたそれぞれの試料の吸光度が適度な間隔を持ち、さらに、未知試料のみの吸光度と、標準液を加えた試料の吸光度が極端に離れすぎないという条件が必要である。
具体例をあげると、図6に示すグラフのように、まず検量線が直線的である吸光度範囲(あるいは濃度範囲)内に入っており、各試料の吸光度は通常数点であり、ほぼ等間隔でその検量線上にプロットされ、未知試料のみの吸光度も、検量線のプロットの間隔にほぼ等しいことが望ましい。
図6に示すグラフとは異なり、図7に示すグラフのように、検量線が直線的でない場合、図8に示すように検量線のプロットの間隔がほぼ一定でない場合、図9に示すように標準液の吸光度の間隔に比べて未知試料の吸光度が極端に低い場合、あるいは高い場合(図10)の検量線は、好ましくない検量線であり、誤差の大きい結果が得られる。
図6に示すような適切な検量線を得るためには、事前に未知試料の希釈倍率を変えて測定する、又は標準液のみの吸光度を測定する等して、試行錯誤して長時間をかけることが必要である。
しかし、実際には、こういった試行錯誤による条件の検討は、上述したように試行錯誤の上、長時間が必要であるため、十分に行わずに標準添加法の測定を行い、誤差の大きい結果を得ているという例が多く見られる。
ここで、電気加熱炉へ注入する試料量は、数マイクロリットルから百マイクロリットル程度と少なく、人手による注入が難しいため、オートサンプラを用いる場合が多い。
また、フレーム方式の原子化部を用いる場合でも、試料数が多いなどの場合にオートサンプラが用いられる。
原子吸光光度計用に開発されたオートサンプラには、単純に試料を注入するのみでなく、検量線法において、未知試料の吸光度が検量線の上限を超えた場合に、自動希釈して再測定する機能が考えられている(特許文献1)。
また、検量線の直線性を相関係数などから判断し、直線性の悪い場合には検量線を再測定する、あるいは一部の標準液を削除して再測定する等の機能も考えられている(特許文献2)。
特開平5−312720号公報 特開平6−102175号公報
しかし、従来技術においては、検量線法における未知試料の自動希釈機能あるいは検量線法における検量線の自動作成機能であり、上述したように、標準添加法において、検量線の直線性が良いこと、標準液を未知試料に段階的に加えたそれぞれの試料の吸光度の間隔が近似すること、未知試料のみの吸光度と標準液を加えた試料の吸光度が極端に離れすぎないことという条件に適合するような検量線を、試行錯誤等による長時間の条件検討を要することなく作成することはできなかった。
また、測定値の精度を上げるには、一般に各測定の吸光度は高い方が良いと考えられる。このことは標準添加法の場合において、検量線の直線関係が成り立つ範囲を最大限に利用する、すなわち作成された検量線の最大濃度(あるいは最大吸光度)の測定点が、直線性が成り立つ範囲の最大濃度(あるいは最大吸光度)に相当することを意味する。
従来の技術では、あらかじめ入力設定された濃度に標準液を希釈して検量線を自動希釈するオートサンプラは考えられているが、直線範囲の入力値をもとに、直線範囲内の最大濃度(あるいは最大吸光度)までの検量線を作成する機能は発明されていなかった。
このため、従来の検量線自動作成機能では、標準添加法に最適な検量線を、長時間を要することなく、作成することは困難であった。
本発明の目的は、原子吸光光度計における標準添加法において、直線性が良いこと、標準液を未知試料に段階的に加えたそれぞれの試料の吸光度の間隔が近似すること、未知試料のみの吸光度と標準液を加えた試料の吸光度が極端に離れすぎないことという条件に適合するような検量線を、測定時間の短縮化を図りながら作成可能な原子吸光光度計を実現することである。
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
(1)本発明の原子吸光光度計は、試料を加熱原子化して原子蒸気を生成する原子化部と、この原子化部に試料を注入するオートサンプラと、上記原子化部で生成された原子蒸気の吸光度を検出する検出器と、上記原子化部、オートサンプラ及び検出器の動作を制御する演算制御部とを備える。
そして、この原子吸光光度計において、上記演算制御部は、予め入力された検量線の吸光度範囲と、予め入力された標準液の濃度及び未知試料の測定により得られた吸光度から、検量線の吸光度範囲を、作成する標準液の数で分割した複数の吸光度区画を作成し、未知試料の吸光度が前記分割された一区画分の吸光度相当になるように希釈して注入し、上記標準液の吸光度が上記分割された一区画分の吸光度相当分から、上記複数の区画総数より一区画分少ない区画分の吸光度相当分になるように段階的に希釈して、標準液を順次原子化部に注入し、吸光度を測定して検量線を演算する。
(2)本発明の原子吸光光度計において、上記演算制御部は、試料の吸光度を測定し、この測定した試料の吸光度と、予め定めた吸光度範囲と、予め定めた標準液濃度とに基づいて、上記吸光度範囲を、作成する標準液の数で分割した所定の複数の吸光度区画を作成し、上記測定した試料の吸光度が、上記分割した吸光度区画の最小値となるように試料希釈率を演算する第1演算工程を実行し、上記標準液の吸光度が、上記分割した複数の吸光度区画の分割点のそれぞれとなるように標準液希釈率をそれぞれ演算する第2演算工程を実行し、演算した上記試料希釈率に希釈した試料と、演算したそれぞれの上記標準希釈率に希釈した複数の希釈標準液とを、それぞれ混合して、その混合液の吸光度を測定する混合液吸光度測定工程を実行し、測定した上記複数の混合液の吸光度と標準液濃度とから検量線を演算し、演算した検量線の直線性が所定の直線性を満足するか否かを判断する判断工程を実行し、上記演算した検量線が所定の直線性を満足しない場合は、上記吸光度区画の検量線の最大濃度点を取り消し、その次の最大濃度が検量線の最大濃度点になるようにし、上記吸光度範囲を上記所定の複数の吸光度区画に分割し、上記第1演算工程、第2演算工程、混合液吸光度測定工程及び判断工程を実行し、所定の直線性を満足する検量線を演算する。
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)において、上記オートサンプラは試料を自動注入する複数のポンプを備える。
(4)また、好ましくは、上記(1)、(2)又は(3)において、上記吸光度範囲を、3から6の整数で均等に分割する。
(5)また、好ましくは、上記(1)、(2)又は(3)において、演算した検量線の相関係数を求め、この相関係数が予め定めた相関係数より大か否かを判断することにより演算した検量線の直線性を判断する。
(6)また、好ましくは、上記(1)、(2)又は(3)において、演算した検量線の相関係数を求め、この相関係数が予め定めた相関係数より大か否かを判断し、相関係数が予め定めた相関係数よりも小さい場合は、測定の試料および標準液の希釈倍率に一定の係数を掛けて再測定する。
(7)また、好ましくは、上記(6)において、上記一定の係数は、分割された区画総数よりも一区画分少ない区画数と、分割された区画総数との比である。
(8)また、好ましくは、上記(6)において、上記一定の係数は検量線の最大測定濃度点の濃度と、二番目に大きい測定濃度点の濃度の比である。
具体的には、あらかじめ入力された検量線の直線範囲と標準液の実測吸光度をもとに、図6に示す例のような、直線範囲内で適切な吸光度の間隔になるよう標準液を段階的に希釈し、さらに未知試料の実測吸光度より前記検量線の直線範囲内で適切な吸光度になるよう未知試料を希釈する。
さらに、希釈未知試料に前記希釈標準液を段階的に加えて測定し、適切な標準添加法の検量線を作成する。
本発明によれば、原子吸光光度計における標準添加法において、直線性が良いこと、標準液を未知試料に段階的に加えたそれぞれの試料の吸光度の間隔が近似すること、未知試料のみの吸光度と標準液を加えた試料の吸光度が極端に離れすぎないことという条件に適合するような検量線を、測定時間の短縮化を図りながら作成可能な原子吸光光度計を実現することができる。
したがって、従来見られたような不適切な検量線による誤差の大きいデータが得られることを解消でき、信頼性の高いデータを得ることができる。
図1は、本発明が適用される電気加熱原子吸光光度計の概略構成図である。
図1において、光源1からの光は原子化部2を通過し、分光器3を経て検出器4に入射される。
試料は、オートサンプラ5によって原子化部2に導入され、原子化される。この際、原子化された試料は光源1からの光を吸収するため、この光吸収が検出器4にて検出され吸光度に換算される。
これら光源1、原子化部2、分光器3、検出器4、オートサンプラ5の動作は、全て制御用コンピュータ(演算制御部)6によって制御される。なお、オートサンプラ5は、試料を自動注入する複数のピストン式ポンプを備える。
上記構成の原子吸光光度計において、標準添加法による検量線が、制御コンピュータ6による動作制御、演算処理により作成される。
つまり、本発明の一実施形態における原子吸光度計では、検量線の直線範囲を最大限に利用するために、まず、検量線の直線範囲を複数の吸光度区画に分割する。この分割の方法は特に限定されるものではないが、3〜6の整数の区画均等分割が望ましい。
次に、光源1、原子化部2、分光器3、検出器4、オートサンプラ5を動作させて、未知試料の吸光度測定を行う。そして、その吸光度が、予め分割された1区画分の吸光度になるように未知試料の希釈倍率を決定して、その倍率に未知試料を希釈して、吸光度を測定する。
その後、決定された希釈倍率で希釈された未知試料の複数液と、希釈倍率が互いに異なる、複数分の標準液とを混合して測定する。この場合、混合液は複数作成されるが、それらの吸光度が上記分割された各区画の吸光度になるように標準液を希釈しておく。
このようにすれば、測定して得られる吸光度は、理論上は上記分割された各区画の吸光度の値となる。すなわち、先に分割した直線範囲と同等の検量線が得られることになる。
この場合の試料の希釈と混合は、電気加熱方式の原子吸光光度計では、電気加熱炉内に順次試料を注入することによって達成することができる。
また、電気加熱方式およびフレーム方式のいずれにおいても、試料を希釈するための容器を用いることによって、事前に希釈混合した後に原子化部へ注入することができる。
さらに、電気加熱方式およびフレーム方式のいずれにおいても、複数のピストン式ポンプ又はぜん動ポンプを用いて細管等の流路内で溶液を混合する方法を用いれば、流路内で標準液および未知試料の希釈および混合を実施することができる。
本発明の一実施形態における、標準添加検量線作成の概念を図2に示す。
図2の右側に示すように未知試料および標準液の当初の吸光度は、適切な検量線を作成するには高すぎるものである。
本発明は、これらの標準液及び未知試料を適切な吸光度になるように希釈し、図2の左側に示すような理想的な検量線(直線性が良い、吸光度が適度な間隔を持つ、未知試料のみの吸光度と標準液を加えた試料の吸光度とが極端に離れすぎていない)を作成するものである。
ところで、未知試料に混合された標準液は、標準液単独の場合と同じ吸光度を示すとは限らない。未知試料に含まれる共存物質によって増感あるいは減感が生じ、当初予想した直線範囲を上回る、あるいは下回る検量線が得られることがある。
得られた検量線が、直線範囲内であれば大きな誤差にはならないが、直線範囲を上回った場合には、定量値の誤差が大きくなる。
このような場合、本発明では、検量線の最大濃度点を取り消し、その次の最大濃度が検量線の最大点になるように再測定を行うものである。
なお。本発明における希釈とは、電気加熱方式の原子吸光光度計においては原子化部への試料注入量を減らし、希釈溶液を注入しない場合も含むものとする。
本発明の一実施形態における検量線作成のフローを図3に示す。なお、予め、測定者は、未知試料、検量線用標準液、ブランク溶液、希釈液、その他の必要な溶液をセットしておく。
図3のステップ100において、測定者は、検量線の直線範囲の上限吸光度(Abs)、検量線用標準液の濃度(c)、作成する標準液の数(n)、および必要な検量線の相関係数(r)を制御用コンピュータ6に入力する。
なお、ステップ100において、その他の原子吸光測定に必要な一般的なパラメータはコンピュータ6に入力されているものとする。
次に、ステップ101において、未知試料を原子化部2に導入し、吸光度を測定する(この吸光度をAu1とする)。さらに、検量線用標準液の吸光度を測定する(この吸光度をAs1とする)。
続いて、検量線の直線範囲をn分割した点に測定点が来るべく未知試料および標準液を希釈して標準添加測定を行う。
すなわち、ステップ102において、目標とする検量線の最低の測定点すなわち吸光度がAbs/nになるように未知試料を希釈し、ブランク溶液(濃度ゼロの標準液に相当)を添加して吸光度を測定する(このとき得られた吸光度をAu2とする)。
以後、未知試料はこの希釈倍率で測定される。
次に、ステップ103において、標準液の吸光度がAbs/nになるように検量線用標準液を希釈し、ステップ102で決定された希釈倍率で希釈された未知試料と混合して測定する(このとき得られた吸光度をAs2とする)。
続いて、ステップ104において、標準液の吸光度が、直線範囲のn区画に分割した2区画分、すなわち2×Abs/nになるように希釈し、ステップ102で決定された希釈倍率で希釈された未知試料と混合して測定する(このとき得られた吸光度をAs3とする)。
このようにして、検量線用標準液を、その吸光度が、3×Abs/n、・・・となるように順次希釈して、希釈未知試料と混合し、測定を繰り返す。
そして、ステップ105において、検量線用標準液は(n−1)×Abs/nまで希釈されて、未知試料に添加され吸光度が測定される。
それぞれ希釈された標準液の濃度は、元の標準液濃度(c)と希釈倍率とから計算できるので、横軸に添加した標準液の濃度、縦軸に吸光度をプロットすると図6に示すような検量線が得られる。
なお、図6に示した検量線において最も左側の点は、別途に測定したブランク溶液の吸光度を検量線に当てはめたものである。
そして、ステップ106において、コンピュータ6は得られた検量線の相関係数を計算し、その値が予め入力された相関係数値rよりも大きければ測定フローは終了とし、定量結果を表示する。
一方、ステップ106において、検量線の相関係数がrよりも小さい場合は、ステップ107に進み、検量線の直線範囲の吸光度上限を当初のAbsからAbs×(n−1)/nに置き換えて、ステップ102に進み、ステップ102〜105による再測定を行う。そして、ステップ106において、相関係数がrより大きくなるまで、この操作を繰り返す。この際、標準液の数nは変更しない。
なお、本実施形態では検量線の直線範囲をn区画に均等に分割しているが、区画の分割は必ずしも均等である必要はない。
本発明の一実施形態において、尿中のヒ素を測定した際の測定結果を、図4、図5に示す。なお、図4に示す結果は、1回目の測定データであり、図5に示すデータは、再測定したデータである。
また、測定条件は、電気加熱炉への注入試料量を、尿試料20μL、標準液20μLとした。そして、図4に示すように、まず、検量線の直線範囲の吸光度Absを0.2、検量線用標準液の濃度cを30μg/L、標準液の数nを4、検量線の相関係数rを0.996としてコンピュータ6に入力した。
次に、尿試料を測定して得られた吸光度Au1は0.08であり、検量線用標準液を測定して得られた吸光度As1は0.25であった。
次に、希釈尿試料の吸光度Au2がAbs/n、すなわち、0.2/4=0.05になるように希釈した。当初の尿試料の吸光度が0.08なので、0.05/0.08=5/8に希釈することになる。
そのため、本発明の一実施形態においては、当初の尿試料注入量20μLを20×5/8=12.5μLとして注入し、ブランク溶液20μLを混合して測定し、吸光度Au2として0.05を得た。
次に、標準液の吸光度が0.05になるように希釈するため、0.05/0.25=1/5に希釈を行う。これは当初の標準液注入量20μLを20×1/5=4μLとし、希釈液16μLを加えることによって行われる。この結果添加される標準液濃度は30×1/5=6μg/Lとなる。
このように、標準液を希釈して尿試料12.5μLとともに測定した吸光度As2は0.12となった。
ここで、標準液の吸光度寄与分が、0.12−0.05=0.07となったのは、検量線用標準液の吸光度が0.25であり、検量線の直線範囲を越えていることと、尿試料の共存成分による増感効果が原因に挙げられる。
次の測定は、尿試料12.5μL、標準液8μL、希釈液12μLで行われ、得られた吸光度As3(標準液添加12μg/L)は0.19であった。同様にして得られた吸光度As4(標準液添加18μg/L)は0.24となった。
以上により得られた、Au2、As2、As3、As4の吸光度から作成された検量線の相関係数は0.994となり、当初設定したr=0.996より小さくなった。この原因としては検量線の最大吸光度が0.24であり、直線範囲を越えていることが挙げられる。
そのため、図3に示したステップ106からステップ107に進み、検量線の直線範囲を0.2×(4−1)/4=0.15と置き換え、再測定が行われた。その結果を図5に示す。
まず、尿試料の吸光度Au2が0.15/4=0.0375になるように希釈する。これは当初の注入量20μLを20×0.0375/0.08=9.4μLにすることによって達成されるので、これにブランク溶液20μLを混合して測定し、図5に示すように、吸光度Au2として0.037を得た。
次に、標準液の吸光度が0.0375になるように希釈するため、標準液の注入量を20×0.0375/0.25=3μLと、希釈液17μLを混合、さらに尿試料9.4μLを添加して吸光度を測定した。その結果、吸光度As2は0.075となった。これにより、添加される標準液濃度は4.5μg/Lになる。
以下、同様にして測定が行われAs3(標準液添加9μg/L)は0.118、As4(標準液添加13.5μg/L)は0.152となった。
以上より得られた検量線の相関係数は0.998となり、当初設定したr=0.996を越えた。
そして、ブランク溶液を測定し、吸光度0.000であったので、得られた検量線から、尿中のヒ素濃度は4.3μg/Lと算出された。
以上のように、本発明の一実施形態によれば、原子吸光度計は、コンピュータ6の演算制御指令により、検量線の直線範囲を複数の、ほぼ同間隔の吸光度区画に分割し、未知試料の吸光度が、予め分割された第1区画分値の吸光度になるように未知試料の希釈倍率を決定して、その倍率に未知試料を希釈して、吸光度を測定する。その後、コンピュータ6の演算制御指令により、希釈された未知試料と、吸光度が上記分割された各区画の吸光度になるように希釈した標準液とを混合して測定する。
これにより、標準液を未知試料に段階的に加えたそれぞれの試料の吸光度の間隔が近似すること、未知試料のみの吸光度と標準液を加えた試料の吸光度が極端に離れすぎないことという条件に適合する検量線を得ることができる。
また、コンピュータ6は、検量線の直線範囲の上限吸光度を予め定めておき、吸光度を測定して得られた結果の検量線の直線性を判断して、適切な直線性が得られない場合は、予め定めた、検量線の直線範囲の上限吸光度を、減少して新たな上限吸光度として再測定を行う。そして、適切な直線性が得られるまで、上限吸光度を変更していく。
したがって、直線性が良い検量線を得ることができる。
つまり、原子吸光光度計における標準添加法において、直線性が良いこと、標準液を未知試料に段階的に加えたそれぞれの試料の吸光度の間隔が近似すること、未知試料のみの吸光度と標準液を加えた試料の吸光度が極端に離れすぎないことという条件に適合するような検量線を、測定時間の短縮化を図りながら作成可能な原子吸光光度計を実現することができる。
なお、本発明は、標準添加法が必要な試料の分析に適するものであり、環境試料、生体試料、工業材料、食品、その他多様な試料の分析に適用が可能である。
本発明が適用される原子吸光光度計の概略構成図である。 本発明による標準添加検量線作成の概念図である。 本発明の一実施形態である原子吸光光度計の、測定フローチャートである。 本発明の一実施形態による尿中ヒ素の測定結果(1回目)データを示す図である。 本発明の一実施形態による尿中ヒ素の再測定結果データを示す図である。 本発明により作成される、標準添加法の望ましい検量線の例を示す図である。 標準添加法の好ましくない検量線の一例(検量線が直線的でない)を示す図である。 標準添加法の好ましくない検量線の他の例(プロットの間隔がほぼ一定でない)を示す図である。 標準添加法の好ましくない検量線の、さらに他の例(標準液の吸光度の間隔に比べて未知試料の吸光度が極端に低い)を示す図である。 標準添加法の好ましくない検量線の、さらに他の例(標準液の吸光度の間隔に比べて未知試料の吸光度が極端に高い)を示す図である。
符号の説明
1 光源
2 原子化部
3 分光器
4 検出器
5 オートサンプラ
6 制御コンピュータ

Claims (8)

  1. 試料を加熱原子化して原子蒸気を生成する原子化部と、この原子化部に試料を注入するオートサンプラと、上記原子化部で生成された原子蒸気の吸光度を検出する検出器と、上記原子化部、オートサンプラ及び検出器の動作を制御する演算制御部とを備える原子吸光光度計において、
    上記演算制御部は、
    予め入力された検量線の吸光度範囲と、予め入力された標準液の濃度及び未知試料の測定により得られた吸光度から、検量線の吸光度範囲を、作成する標準液の数で分割した複数の吸光度区画を作成し、未知試料の吸光度が前記分割された一区画分の吸光度相当になるように希釈して注入し、上記標準液の吸光度が上記分割された一区画分の吸光度相当分から、上記複数の区画総数より一区画分少ない区画分の吸光度相当分になるように段階的に希釈して、標準液を順次原子化部に注入し、吸光度を測定して検量線を演算することを特徴とする原子吸光光度計。
  2. 試料を加熱原子化して原子蒸気を生成する原子化部と、この原子化部に試料を注入するオートサンプラと、上記原子化部で生成された原子蒸気の吸光度を検出する検出器と、上記原子化部、オートサンプラ及び検出器の動作を制御する演算制御部とを備える原子吸光光度計において、
    上記演算制御部は、
    試料の吸光度を測定し、この測定した試料の吸光度と、予め定めた吸光度範囲と、予め定めた標準液濃度とに基づいて、上記吸光度範囲を、作成する標準液の数で分割した所定の複数の吸光度区画を作成し、
    上記測定した試料の吸光度が、上記分割した吸光度区画の最小値となるように試料希釈率を演算する第1演算工程を実行し、
    上記標準液の吸光度が、上記分割した複数の吸光度区画の分割点のそれぞれとなるように標準液希釈率をそれぞれ演算する第2演算工程を実行し、
    演算した上記試料希釈率に希釈した試料と、演算したそれぞれの上記標準希釈率に希釈した複数の希釈標準液とを、それぞれ混合して、その混合液の吸光度を測定する混合液吸光度測定工程を実行し、
    測定した上記複数の混合液の吸光度と標準液濃度とから検量線を演算し、演算した検量線の直線性が所定の直線性を満足するか否かを判断する判断工程を実行し、
    上記演算した検量線が所定の直線性を満足しない場合は、上記吸光度区画の検量線の最大濃度点を取り消し、その次の最大濃度が検量線の最大濃度点になるようにし、上記吸光度範囲を上記所定の複数の吸光度区画に分割し、上記第1演算工程、第2演算工程、混合液吸光度測定工程及び判断工程を実行し、
    所定の直線性を満足する検量線を演算することを特徴とする原子吸光光度計。
  3. 請求項1又は2記載の原子吸光光度計において、上記オートサンプラは試料を自動注入する複数のポンプを備えることを特徴とする原子吸光光度計。
  4. 請求項1、2又は3のうちのいずれか一項記載の原子吸光光度計において、上記吸光度範囲を、3から6の整数で均等に分割することを特徴とする原子吸光光度計。
  5. 請求項1、2又は3のうちのいずれか一項記載の原子吸光光度計において、演算した検量線の相関係数を求め、この相関係数が予め定めた相関係数より大か否かを判断することにより演算した検量線の直線性を判断することを特徴とする原子吸光光度計。
  6. 請求項1、2又は3のうちのいずれか一項記載の原子吸光光度計において、演算した検量線の相関係数を求め、この相関係数が予め定めた相関係数より大か否かを判断し、相関係数が予め定めた相関係数よりも小さい場合は、測定の試料および標準液の希釈倍率に一定の係数を掛けて再測定することを特徴とする原子吸光光度計。
  7. 請求項6記載の原子吸光光度計において、上記一定の係数は、分割された区画総数よりも一区画分少ない区画数と、分割された区画総数との比であることを特徴とする原子吸光光度計。
  8. 請求項6記載の原子吸光光度計において、上記一定の係数は検量線の最大測定濃度点の濃度と、二番目に大きい測定濃度点の濃度の比であることを特徴とする原子吸光光度計。
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