JP4393641B2 - イオントフォレーシス用粘着ゲル組成物及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、経皮又は経粘膜に適用し電気的駆動力を利用して体内へ塩基性薬物を送達するイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオントフォレーシス(Iontophoresis)は電気的駆動力を用いた経皮及び経粘膜の吸収促進システムで、その原理は主に通電により陽極及び陰極間に生じた電界中を正にチャージした分子が陽極から出て陰極へ、負にチャージした分子が陰極から出て陽極へ移動する力に基づいて薬物分子の皮膚バリヤー透過を促進するものである〔ジャーナル・オブ・コントロールド・リリース(Journal of Controlled Release)18巻、1992年、213〜220頁;アドバンスト・ドラッグ・デリバリー・レビュー(Advanced Drug Delivery Review)9巻、1992年、119頁;ファルマシュウティカル・リサーチ(Pharmaceutical Research)3巻、1986年、318〜326頁参照〕。
【0003】
従来、経皮治療システム(TTS)に用いられる粘着性組成物としては、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、シリコーン系などの親油性基剤を含有するものが多く知られている。また、親水性粘着剤としては、ポリアクリル酸ナトリウムやカルボキシルビニルポリマーなどの親水性基剤を含有するパップ剤が知られている。さらに、粘着力を上げるためにメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を多官能エポキシ化合物で架橋した粘着組成物が特開昭56−154421号公報又は特開昭59−204117号公報に開示されている。塩基性薬物を含有する外用貼付剤としては、水溶性高分子、水及び保水剤を必須成分とする基剤にリドカイン又はその塩を含有する粘着ゲルが特開平4−305523号公報に開示されている。
【0004】
一方、イオントフォレーシスによる薬物の投与に用いられる基剤としては、水溶性の基剤であることが必須であり、特開昭58−10050号公報あるいは特開昭63−92360号公報に開示されているように、従来、カラヤガム系の基剤やポリビニルアルコール系の基剤などが知られている。これらの基剤はゲルの粘着力が低く使用上のコンプライアンスの問題がある。また、金属で架橋させた水溶性ポリマーを基剤とした粘着組成物は通電時にゲルの凝集力が低下して粘着力が落ちるため、それを改善するものとして、無水マレイン酸共重合体又はマレイン酸共重合体、多官能エポキシ化合物及び多価アルコールを含有する粘着組成物が特開昭63−92683号公報に、アクリル酸とアクリルアミドの共重合体からなる基剤が特開平5−97662号公報に開示されている。しかしこれらの基剤組成ではイオントフォレーシスにおいて必要な電解質の添加により、ゲルの凝集力の低下による物理化学的性質及び経時安定性の変化や粘着力の低下などの新たな問題が生まれる。特に、塩基性薬物や塩などの配合においてその傾向は強くなる。
【0005】
また、イオントフォレーシス用の基剤としてインピーダンスが小さくかつ塩析や分極を改善した粘着ゲル組成が特開平9−286891号公報に開示されている。このイオントフォレーシス用の基剤組成では、例えば塩化ナトリウムのような塩の配合においても適度な粘着性と低い電気抵抗性を維持できるが、酸性薬物や塩基性薬物などのゲルのpH変化を引き起こす成分の添加においてはその物理化学的性質、粘着力及び経時安定性は十分とはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の親油性粘着組成物については有機溶剤を必要とし、製造時に多くの熱量を必要とし、また、エマルジョン型のアクリル系粘着剤に見られるように界面活性剤を必要とするという問題があった。また、このような親油性の粘着組成物は皮膚刺激性が比較的大きく、製造時における作業環境にも問題があった。さらに、このような親油性粘着剤を用いたパップ剤については未だ十分な粘着力が得られていない。
【0007】
また、特開昭56−154421号公報や特開昭59−204117号公報に開示されている従来の親水性粘着組成物には、展膏時の粘度が低いために厚みのコントロールが困難であるという問題があった。さらに、これらの基剤では塩などの電解質の添加によりゲルの物理化学的性質が大きく変化する。また、特開平4−305523号公報では塩基性薬物としてリドカインを含有する金属架橋型の粘着組成物が開示されている。しかし、金属で架橋させた水溶性ポリマーを基剤とした粘着組成物は、イオントフォレーシスにおいては通電時にゲルの凝集力が低下して粘着力が落ちることに加えて、特に、陽極からのイオントフォレーシスでは皮膚への金属イオンの移行による安全性に問題がある。
【0008】
一方、上記特開昭58−10050号公報や特開昭63−92360号公報に開示されているイオントフォレーシス用の従来のカラヤガム系の基剤やポリビニルアルコール系の基剤は、電解質によるゲル化への影響も少なく、通電を行う上での導電性は確保できる。しかし、これらの基剤は粘着力が低く使用上のコンプライアンスが悪く、さらに経時安定性に劣るという問題があった。
【0009】
また、特開昭63−92683号公報に開示されている従来の親水性粘着組成物には、展膏時の粘度が低いため展膏を可能とするようにベースポリマーの量を増やし、かかるベースポリマーを溶解させるためにアルカリで中和しなければならないという問題があった。そのため、これら従来の親水性粘着組成物においては薬物の拡散抵抗の増加又は輸率の低下が引き起こされ、実質的に薬物の透過性が減少してしまうという問題があった。
【0010】
さらに、特開平5−97662号公報に開示されているアクリル酸とアクリルアミドの共重合体からなる基剤及び特開平9−286891号公報に開示されているメトキシ無水マレイン酸共重合体又はメトキシマレイン酸共重合体及びN−ビニルアセトアミド架橋体からなる粘着組成では、中性の電解質又は成分を添加した場合には粘着力などの特性は損なわれないが、塩基性薬物などの様にゲルのpH上昇を引き起こす成分を添加する薬物の溶解性が減少することで吸収性が低下する。また、ゲルのpH変化を抑制するために塩酸などの酸性のpH調節剤を添加すると、ゲルの成形性や粘着力も低下するという問題があった。
【0011】
従って本発明の目的は、上述のような問題点を解決し、塩基性薬物を体内へ効率的に送達可能とするイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物及びその装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねて本発明に至ったものであり、本発明に係るイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物は、塩基性薬物と、酸性高分子と、多官能エポキシ化合物と、水と、多価アルコール及び/又はゼラチンとを含有してなるものである。ここで、塩基性薬物と酸性高分子の重量比は10:1〜1:10とするのが好ましい。
また酸性高分子は、ポリアクリル酸、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、メトキシエチレンマレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレンマレイン酸共重合体、カルボキシビニルポリマー及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなる。
【0013】
また、塩基性薬物はフリー体が好ましい。塩基性薬物としては局所麻酔剤が挙げられ、好ましくは局所麻酔剤と血管収縮剤の併用が挙げられる。ここで、局所麻酔剤としてはリドカイン、血管収縮剤としてはエピネフリンが用いられる。この場合、リドカインとエピネフリンとの重量比は1000:1〜2:1とするのが好ましい。また、リドカインの配合量は1重量%〜20重量%、エピネフリンの配合量は0.001重量%〜0.5重量%とするのが好ましい。さらに、抗酸化剤を含有するのが望ましい。抗酸化剤は、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸オキシキノリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなる。ここで、抗酸化剤の配合量は0.001重量%〜1.0重量%とするのが好ましい。
また、本発明に係るイオントフォレーシス装置は、ドナー電極と、リファレンス電極と、ドナー電極及びリファレンス電極にそれぞれ電気的に接合される電源装置とからなり、電源装置から出力される電流が直流、パルス直流及びパルス脱分極直流のうちの少なくとも一つであって、電流量が0.5〜2.0mA・min/cm2となるように構成される。
【0014】
このように構成することにより、塩基性薬物を効率的に送達するためのマトリックス型のイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物及びその装置を得ることができる。この粘着ゲル組成物及びその装置では、ゲル組成物による薬物輸率の低下を引き起こすことがなく、ゲルの成形性や粘着性に優れ、かつ皮膚刺激性が低く、さらに展膏又は充填によって容易かつ安価に製造可能であるという利点を有する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る塩基性薬物を含有するイオントフォレーシス用粘着組成物及びその装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る粘着ゲル組成物は、酸性高分子、多官能エポキシ化合物、水、多価アルコール及び/又はゼラチン、及び塩基性薬物を含み、酸性高分子と塩基性薬物の重量比を調整することにより、薬物輸率を低下することがなく、成形性や粘着性に優れたイオントフォレーシス組成物を与える。
例えば、粘着ゲル組成物における酸性高分子は水溶性高分子が好ましく、例えはポリアクリル酸、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、メトキシエチレンマレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレンマレイン酸共重合体、カルボキシビニルポリマー及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせをベースポリマーとすることで、皮膚あるいは粘膜との粘着性を持たせることが可能であり、また架橋剤として多官能エポキシ化合物を使用することで、組成物の凝集力の低下を押さえることが可能となる。さらに、塩基性薬物のフリー体を加えてベースポリマーのカルボキシル基を中和させることにより、pH調節剤などの添加を必要とせずに凝集力の低下を抑え、pHを上昇させ皮膚刺激性の低減を可能にし、かつイオントフォレーシス通電時の薬物と水素イオンの競合が減少し薬物の透過性が高まる。さらには、多価アルコールの添加により粘着組成物の凝集力、保水力、薬物溶解性の上昇が可能となり、ゼラチンの添加によりゲルの成形性が向上し製造時の展膏性や裁断なども容易になる。
【0016】
このように本発明に係る塩基性薬物と酸性高分子の組み合わせにより、基剤のpHを弱酸〜中性に調整でき、適度なゲルの成形性や粘着性が得られる。一方、塩基性薬物と塩基性高分子又は中性高分子などの組み合わせからなる基剤組成物では、ゲルのpHが塩基性側に大きく変化し、薬物の溶解性や薬物溶解性に加えてイオンの解離が低下することで吸収性も減少する。さらに塩酸などの酸性のpH調整剤を加えると、ゲルの形成能及び粘着性が低下する。また、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの中性高分子をベースポリマーとする基剤組成では、粘着力が不足して使用上のコンプライアンスが劣るという問題点がある。
【0017】
本発明における塩基性薬物と酸性高分子の重量比は、基剤のpHを弱酸〜中性に調整できる組み合わせであれば特に限定されないが、ゲルの成形性や粘着性及び薬物の拡散性や放出性などに影響のない10:1〜1:10が望ましい。さらに望ましくは5:1〜1:5であり、より望ましくは3:1〜1:3である。この範囲において、ゲルは弱酸性〜中性のpH3〜7に調整される。このようなpHや粘着力に調整することで、皮膚への刺激性も低く、適度な粘着性が得られるために使用性や実用性、さらに製造時の粘性の面でも適している。
【0018】
本発明に係る酸性高分子は、無溶剤で製造可能な親水性の粘着性基剤で、かつ皮膚に対する刺激性が低く適度な粘着力を示す物質であれば特に制限されないが、例えば、含有する酸性高分子としてはポリアクリル酸、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、メトキシエチレンマレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレンマレイン酸共重合体、カルボキシビニルポリマー又はカルボキシメチルセルロースなどが含まれる。これらの酸性高分子をベースポリマーとすることで、競合イオンによる輸率の減少すなわち薬物透過性の低下を抑制できる。本発明における酸性高分子の配合量は、1〜20重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。上記配合量が1重量%未満ではゲル成形性を有さない傾向にあり粘着性も低く、20重量%を超えると凝集力が強く展膏や充填などの製造面において好ましくない傾向にある。
【0019】
さらに、粘着性の付与以外の目的、例えば粘着増強剤や結合剤などとして含有する添加高分子としては、寒天、デンプン、マンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ジェランガム、タマリンドガム、カードラン、ペクチン、ファーセレラン、グアーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、タラガム、カラヤガム、アラビアゴム、セルロース及びその誘導体類等のポリサッカライド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、などが挙げられ、これらは単独又は2種類以上の組み合わせで用いられる。
【0020】
本発明において使用される多官能エポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。本発明にかかる多官能エポキシ化合物の配合量は基剤全体に対して0.01〜2重量%が好ましい。上記配合量が0.01重量%未満ではゲル成形性を有さない傾向にあり、2重量%を超えると粘着性がなくなる傾向にある。
【0021】
本発明において使用される多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、D−ソルビトールやD−マンニトール等の糖アルコール類、などが挙げられ、中でもポリエチレングリコール、グリセリンが好ましい。これらは単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。本発明にかかる多価アルコールの配合量は10〜60重量%であることが好ましい。上記配合量が10重量%未満では十分な凝集力が得られない傾向にあり、60重量%を超えると粘着性がなくなる傾向にある。
【0022】
本発明において使用される水は皮膚角質層の膨潤、薬物の透過性を向上及び導電性を得るためにも必要であり、含有する水分量は10〜80重量%が好ましく、より好ましくは20〜50重量%の範囲であることが望ましい。
【0023】
本発明に係る粘着組成物に含有されるゼラチンは酸処理又はアルカリ処理した何れでもよく、ゼラチンの配合量は0.1〜15重量%であることが好ましい。上記配合量が0.1重量%未満では十分な凝集力が得られない傾向にあり、15重量%を超えると適度な粘着性が得られなくなる傾向にある。また、必要ならばゲルの成形性、粘着性及び薬物の吸収性に影響がない範囲で、電解質、pH調節剤、安定化剤、増粘剤、湿潤剤、界面活性剤、溶解補助剤、吸収促進剤等を添加してもよい。例えば、電解質として塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、等が挙げられる。本発明にかかる電解質の配合量は特に制限されるものではない。
【0024】
本発明において使用される塩基性薬物には、薬理活性を有する化合物であれば薬物の種類は特に制限されず、例えば、抗生物質、抗真菌剤、強心剤、不整脈治療剤、血管拡張剤、利尿剤、降圧剤、抗高脂血症剤、循環器用剤、抗血小板薬、止血剤、抗凝血剤、抗腫瘍剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、鎮咳去たん剤、鎮静剤、筋弛緩剤、抗てんかん剤、抗うつ剤、抗潰瘍剤、抗アレルギー剤、糖尿病治療剤、抗結核剤、ホルモン剤、麻薬拮抗剤、骨吸収抑制剤、血管新生阻害剤、局所麻酔剤などが用いられる。
【0025】
その例として、ゲルの成形性や粘着性に影響がないものであれば塩基性薬物のフリー体及び塩の何れでもよいが、フリー体が好ましい。
抗生物質としては、例えば、ゲンタンマイシン、リピドマイシン、シソマイシン、テトラサイクリン、アンピシリン、セフォチアム、セファゾリン、チエナマシン、スルファゼシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、リファンピシンなどが用いられる。
抗真菌剤としては、例えばアンフォテリシンB、イトラコナゾールや、フルコナゾール、2−[(1R、2R)−2−(2、4−ジフルオロフェニル−2−ヒドロキシ−1−メチル−3−(1H−1、2、4−トリアゾール−1−イル)プロピル]−4−[4−2、2、3、3−テトラフルオロプロポキシ]フェニル]−3(2H、4H)−1、2、4−トリアゾロンなどが用いられる。
強心剤としては、ドパミン、ドブタミン、ユビデカレノンなどが用いられる。不整脈治療剤としては、例えばプロカインアミド、リドカイン、フェニトイン、プロプラノール、メトプロロール、ベラパミル、ジルチアゼム、オキシプレノールなどが用いられる。血管拡張剤としては、例えばニカルジピン、ベラパミル、パパベリン、トラゾリンなどが用いられる。利尿剤としては、例えばアセタゾラミド、メタゾラミド、クロロチアジド、フロセミド、トリアムテレン、アミロリド、アミノメトロジンなどが用いられる。降圧剤としては、例えばヒドララジン、ブドララジン、プラゾシン、ドキサゾシン、カルテオロール、クロニジン、エナラプリル、カプトプリル、デラプリル、マニジピン、ピナシジル、ミノキシジルなどが用いられる。循環器溶剤としては、例えば、エチレフリン、ジヒドロエルゴタミンなどが用いられる。抗血小板薬としては、例えば、チクロピジンなどが用いられる。止血剤としては、エピネフリンなどが用いられる。
抗腫瘍剤としては、例えば6−メルカプトプリン、シタラビン、ブレオマイシン、アクチノマシンD、マイトマシンC、アドリアマイシン、プロカルバジン、ドキソルビシンなどが用いられる。
【0026】
解熱剤、鎮痛剤または消炎剤としては、例えば、チアラミド、エモルファゾン、ブプレノルフィン、エプタゾシン、ペンタゾシン、ブトルファノール、トラマゾール、メペリジン、モルヒネ、ハイドロモルヒネ、フェンタニルなどが用いられる。筋弛緩剤としては、例えば、エペリゾン、チザニジン、クロルフェネシン、トルペリゾンなどが用いられる。抗うつ剤としては、例えば、アミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、デシプラミン、マプロチリンなどが用いられる。
鎮咳去たん剤としては、例えばアンプロキソール、ブロムヘキシン、エフェドリン、サルブタモール、ツロブテロール、フォルモテロール、アゼラスチン、ケトチフェン、コデイン、ピコペリダミンなどが用いられる。
鎮静剤としては、例えばクロルプロマジン、フルフェナジン、アトロピンなどが用いられる。筋弛緩剤としては、例えばダントロレン、エペリゾン、チザニジン、トルペリゾン、プリジノール、ツボクラリンなどが用いられる。抗てんかん剤としては、例えばフェニトイン、エトサクシミドなどが用いられる。抗うつ剤としては、例えばイミプラミン、フェネルジンなどが用いられる。
【0027】
抗潰瘍剤としては、例えばシメチジン、ファモチジンなどが用いられる。抗アレルギー剤としては、例えばジフェニルヒドラミン、クロルフェニラミン、シプロヘプタジン、ケトチフェン、エピナスチン、トリペレナミン、クレミゾールなどが用いられる。
糖尿病治療剤としては、例えばトルブタミド、クロルプロパミド、グリベンクロミド、アセトヘキサミド、ミダグリゾール、グリミジン、グリピザイド、メトフォルミンなどが用いられる。
抗結核剤としては、例えばストレプトマイシン、カナマイシン、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナミドなどが用いられる。
麻薬拮抗剤としては、例えばプロタミン、ナロキソン、レバロルファン、ナロルフィンなどが用いられる。骨吸収抑制剤としては、例えばラロキシフェン、アレンドロネートなどが用いられる。
【0028】
局所麻酔剤としては、例えばリドカイン、テトラカイン、プロカイン、ベンゾカイン、エチドカイン、プリロカイン、ジブカイン、ブピバカイン、プロパラカイン、フェナカイン、コカイン、オキシブプロカイン、プロピトカイン、アミノ安息香酸エチル、オルソカイン、オキセサゼイン、メピバカイン又はクロロプロカインなどが用いられる。
【0029】
本発明において使用される塩基性薬物としては、上記局所麻酔剤が挙げられ、さらに好ましい塩基性薬物としては局所麻酔剤と血管収縮剤の併用が挙げられる。代表的な局所麻酔剤としてはリドカインがあり、表面・浸潤・伝達麻酔作用による帯状疱疹神経痛及び帯状疱疹後神経痛に対する神経ブロック療法、静脈留置針穿刺時の除痛などに用いられている。本発明における酸性高分子と塩基性薬物からなるイオントフォレーシス組成において、リドカインの局所麻酔効果は血管収縮剤のエピネフリンと併用することで作用時間の短縮、効果の増強及び作用の持続がはかられる。これは本発明の基剤組成において、基剤中に共存する競合イオン種が少なく、有効に薬物が吸収されたことに起因する。
【0030】
本発明に係る局所麻酔用イオントフォレーシス組成物におけるポリアクリル酸、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、メトキシエチレンマレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレンマレイン酸共重合体、カルボキシビニルポリマー及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなる酸性高分子とリドカインとエピネフリンからなる塩基性薬物の重量比は、基剤のpHを弱酸〜中性に調整できる組み合わせであれば特に限定されないが、ゲルの成形性や粘着性及び薬物の拡散性や放出性などに影響がない10:1〜1:10が望ましい。さらに望ましくは5:1〜1:5であり、より望ましくは3:1〜1:3である。さらに、塩基性薬物のリドカインとエピネフリンの重量比は特に限定はないが、好ましくは1000:1〜2:1である。この範囲において調製されるゲルは弱酸性〜中性のpH3〜7に調整される。このようなpHや粘着力に調整することで、皮膚への刺激性も低く、適度な粘着性が得られるために使用性や実用性、さらに製造時の粘性の面でも適している。
【0031】
さらに、本発明にかかるリドカインの配合量は1〜20重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。また、エピネフリンの配合量は0.001重量%〜0.5重量%であり、より好ましくは0.01重量%〜0.5重量%である。上記リドカインの配合量が1重量%未満では十分な吸収性が得られず、配合量が20重量%を超えると凝集力が強く展膏などの製造面において好ましくない傾向にある。また、上記エピネフリンの配合量が0.001重量%未満ではリドカインの効果を増強しない傾向にあり、配合量が0.5重量%を超えると薬効の閾値になる。
【0032】
さらに、本発明にかかる抗酸化剤はエピネフリンの酸化防止を目的に添加され、その種類は特に限定されないが、好ましくは水溶性の抗酸化剤であり、競合イオン種のすくない物質がよい。例えば、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸、クエン酸、エデト酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸オキシキノリンなどが挙げられ、それらの群から選ばれた1種又は2種以上の組み合わせが用いられる。特に、亜硫酸水素ナトリウム又は硫酸オキシキノリンは微量で抗酸化作用を発揮するために、粘着ゲルの物理化学的性質を損なうことなく添加できる点で有用である。亜硫酸水素ナトリウム又は硫酸オキシキノリンの配合量は、0.001重量%〜1.0重量%が好ましく、より好ましくは0.001重量%〜0.5重量%であり、特に0.001〜0.3重量%が好ましい。
【0033】
後述するイオントフォレーシス装置を構成するリファレンス電極の組成物は、前述のような薬物を含むドナー電極の粘着ゲル組成物と同様に、酸性高分子、多官能エポキシ化合物又は金属化合物のうち1種又は2種、水、多価アルコール及び/又はゼラチンからなる基剤成分に、さらに導電性を改善するために電解質を加える。本発明中におけるリファレンス電極に使用する架橋剤は特に限定はされないが、多官能エポキシ化合物又は金属化合物のうち少なくとも1種が選択され、そのような金属化合物には水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。電解質として、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムの塩化物、リン酸塩又は硫酸塩、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、等が挙げられる。さらに、電解質としてはpH調節剤も含まれる。そのような、pH調節剤としてはトリエタノールアミンやジエタノールアミンなどのアミン類、水酸化ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムやカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの酸性高分子の塩類、塩基性高分子などがある。このようなリファレンス電極の物理化学的性質としてはドナー電極と類似した粘性、成形性や粘着性などを有することが望ましい。すなわち、リファレンス電極のゲルは弱酸性〜中性のpH3〜7に調整され、粘着力も同程度であることが好ましい。このようにドナー電極と同程度の粘着性を示すことで、皮膚への刺激性も低く、適度な粘着性が得られる。さらに、ドナー電極、リファレンス電極及びそれらに接続した電源装置を皮膚に貼付した際の接着性において、貼付時の違和感もなくバランスのとれた製剤が得られる。また、ドナー電極及びリファレンス電極の基剤組成が類似することから、展膏や充填性などの製造面においても有効である。
【0034】
本発明に係るイオントフォレーシス装置は、ドナー電極及びリファレンス電極の数には限定されないが、少なくとも1対のドナー電極及びリファレンス電極と、これらのドナー電極及びリファレンス電極に電気的に接合された1個の電源装置とを備えて構成される。ドナー電極及びリファレンス電極には、各々の粘着ゲルがそれぞれ積層される。本発明において使用される電極は、通常イオントフォレーシスにおいて使用できる導電性の電極材料からなるものであれば特に限定されない。このような導電材料としては、例えば、銀、塩化銀、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、カーボン、白金、チタン、ステンレス等が挙げられる。中でも、銀又は銀・塩化銀は抵抗値等の電気特性もよく、ぺースト材料を用いて製造すれば安価で製造性も高い。
【0035】
本装置は、皮膚に対して適用可能な種々のアプリケーターを用いて、イオントフォレーシスにより、薬物を経皮的に投与するうえで有用である。図1は、本発明に係る粘着ゲル組成物を備えたアプリケーターの一例の断面を示す模式図である。図1に示すように、アプリケーターの基本部分は、バッキング(ポリエチレンテレフタレート製)1と、その上に積層された電極(銀ペースト)2と、電極2上に配置された粘着ゲル3と、粘着ゲル3を覆うライナー(ポリエチレンテレフタレート製)4とからなる。また電極2は、電極装置と直接又はコネクター等で接続可能なように電極印刷部が誘導されている。このようにして構成された装置は、使用直前にライナー4を除去し、粘着ゲル3の面が直接皮膚に接するように貼付して用いられる。
【0036】
この装置を補強する方法、すなわち、バッキングの組成、ドナー電極とリファレンス電極の構造、同一支持体上にある一体型又は2種以上の支持体上にある分離型構成等は特に限定されるものではない。さらに、ドナー電極及びリファレンス電極を構成する数も限定されず、各々少なくとも1つ以上あればよい。また、かかる装置の形態は、いずれの形態であってもよく、例えば、長方形、丸形、楕円形、正方形、ハート形、ヒシ形等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、大きさ、色も実用性を伴うものであれば特に限定されない。
図2は、本発明に係る粘着ゲル組成物を備えたイオントフォレーシス装置の一例を示す模式図である。図2に示すように、本装置は、バッキング5と、その上に積層されたドナー電極6及びリファレンス電極7と、ドナー電極6上に配置されたドナー電極側組成物8と、リファレンス電極7上に配置されたリファレンス電極側組成物9と、両組成物7及び8を覆うライナー10と、電源装置11とを備えて構成される。電源装置11の一方の極にはドナー電極6が接続され、他方の極にはリファレンス電極7が接続される。本装置の使用時には、ライナー10を除去し、ドナー電極側組成物6及びリファレンス電極側組成物7の面が直接皮膚に接するように貼付される。
【0037】
本発明に係るイオントフォレーシス装置は、例えば局所麻酔に使用する場合、直流、パルス直流及びパルス脱分極直流の少なくとも一つを用いて、本装置の電極間に直流電圧を印加し通電することにより行うことができる。電源としては、連続直流電圧、パルス直流電圧を印加し得るものがよい。パルス直流電圧の周波数は、好ましくは0.1から200kHz、より好ましくは1から100kHz、特に好ましくは5から80kHzの範囲より適宜選択される。パルス直流電圧のオン/オフ(on/off)の比は、1/100から20/1、好ましくは1/50から15/1、より好ましくは1/30から10/1の範囲より適宜選択される。
【0038】
この場合、通電時間は特に限定はされないが、60分以下、より好ましくは30分以下、さらに好ましくは15分以下とするのがよい。電流量としては総電流量が0.25〜5.00mA・min/cm2、より好ましくは0.5〜2.0mA・min/cm2とするのがよい。ここで、電流量とは薬物の透過に使用される電流と時間の積を意味し、パルス直流又はパルス脱分極直流を印加する際には電流は透過電流を示すものとする.
【0039】
【実施例】
以下、実験例に基づいて実施例、比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載で「%」は、特に断らない限り「重量%」を意味するものとする。
実験例ではゲルの物性を成形性、体感及び粘着性により表1の各基準に従って評価した。ゲル表面のpHは、表面pH測定用電極(堀場製作所、6261−10C電極)を用いて測定した。成形性の指標として弾性値(サン科学製、レオメーターCR−200D)及び体感値(しみだし)を、粘着性の指標としてプローブタック値(理学工業製、プローブタックテスター)を用いた。
【0040】
【表1】
【0041】
さらに、局所麻酔剤を含有する製剤の薬理効果についても評価した。実験開始前にモルモットの背部をバリカン、電気カミソリで除毛し、微温湯を浸したガーゼで皮膚表面をよく拭き取った。背部正中線を中心に右あるいは左側部を刺激用針で刺激し、皮膚の収縮反応が確実に現れる部位を粘着ゲルの貼付部位とし、他の除毛部位に対照電極を貼付した。薬物含有粘着ゲル(ドナー電極、6cm2)を陽極側に、塩化ナトリウムを含む電極(リファレンス電極、6cm2)を陰極側にそれぞれ接続し、通電を開始した。通電は直流電流0.1mA/cm2、15分間とした。通電終了後、ドナー電極貼付部位を刺激用針で6回刺激し、皮膚の収縮反応の変化を経時的に観察した。なお、局所麻酔効果の判定基準は通電直後の麻酔効果については表2に示す−〜++で行い、麻酔効果の持続性はその効果が30分以上持続するものを○、15分以上30分未満持続するものを△、ほとんど効果の見られないものを×として評価した。
【0042】
【表2】
【0043】
<実験例1>
本発明における塩基性薬物と酸性高分子又は中性高分子の組み合わせ組成例について表3に示す。塩基性薬物としてリドカイン又は塩酸リドカイン、酸性高分子としてポリアクリル酸、中性高分子としてポリビニルアルコールを用いて実施例1及び2、比較例1及び2の粘着組成物を調製した。
【0044】
【表3】
【0045】
(実施例1)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
水 43.9重量部
リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して本発明の粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0046】
(実施例2)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
水 43.9重量部
塩酸リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して本発明の粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0047】
(比較例1)
ポリビニルアルコール 12重量部
水 80重量部
リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を加熱しながら均一になるまで撹拌溶解し、その溶液を剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、−80℃で凍結架橋させて本発明の比較粘着組成物を得た。完成した粘着組成物は、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0048】
(比較例2)
ポリビニルアルコール 12重量部
水 80重量部
塩酸リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を加熱しながら均一になるまで撹拌溶解し、その溶液を剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、−80℃で凍結架橋させて本発明の比較粘着組成物を得た。完成した粘着組成物は、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0049】
表4に実施例1及び2と比較例1及び2の粘着組成物のpH、成形性、体感及び粘着性を評価した。その結果、実施例1及び2における塩基性薬物と酸性高分子の組み合わせにおいて、ゲルの成形性及び粘着性について優れた物性を得た。また、ゲルのpHも5以下となり塩基性薬物は解離状態で存在することから、イオントフォレーシスにおいて有利なイオン型で存在することが示唆された。一方、比較例1及び2はゲルのpHが高く薬物溶解性の低下及びイオン型での存在率が低下する可能性が示唆され、さらにゲルの粘着性は著しく小さかった。
【0050】
【表4】
【0051】
<実験例2>
本発明における塩基性薬物と酸性高分子の組み合わせ組成例において中和剤を使用した組成物例について表5に示す。塩基性薬物として塩酸リドカインを用い、中和剤として水酸化ナトリウムを添加した比較例3〜5の粘着組成物を調製した。
【0052】
【表5】
【0053】
(比較例3)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
水 42.9重量部
水酸化ナトリウム 1.0重量部
塩酸リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して本発明の粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0054】
(比較例4)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
水 41.9重量部
水酸化ナトリウム 2.0重量部
塩酸リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して本発明の粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0055】
(比較例5)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
水 39.9重量部
水酸化ナトリウム 4.0重量部
塩酸リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して本発明の粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0056】
表6に示すように、実施例1のような酸性高分子であるポリアクリル酸と塩基性薬物であるリドカインの組み合わせでは、成形性、粘着性とも優れた物性を示すが、実施例2に示す組成物では、pHが低く、成形性の面でやや劣る。そこで、pH調整剤として水酸化ナトリウムを添加して比較例3〜5の粘着性組成物を得た。その結果、ゲルのpHが高くなるとゲルの成形性や体感は改善されたが、粘着性は低下する傾向が観察された。
さらに、実施例1及び2、比較例3〜5の粘着性組成物を用いて、モルモットでピンプリッキング法による局所麻酔効果を評価した。その結果、表6に示すように実施例1の粘着性組成物と比較し、比較例4、5では薬効の低下が認められた。これは、ゲルの成形性を向上させるために添加したpH調節剤の水酸化ナトリウムのナトリウムイオンと薬物の競合がおこったために局所麻酔効果が低下したものと考えられる。
【0057】
【表6】
【0058】
<実験例3>
本発明の粘着ゲル組成物における架橋剤の比較及び多価アルコール添加の影響について評価した。表7に示すように、塩基性薬物としてリドカイン及びエピネフリンを、架橋剤として多官能エポキシ化合物又は金属化合物を用い、実施例3及び比較例6の粘着組成物を調製した。さらに、ゼラチンを添加した実施例4の粘着組成物を調製した。
【0059】
【表7】
【0060】
(実施例3)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
水 45.6重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して本発明の粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0061】
(実施例4)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 5重量部
水 40.5重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0062】
(比較例6)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
水酸化アルムニウム 1重量部
ゼラチン 5重量部
水 39.6重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0063】
また、表8に示すように実施例3及び4の粘着組成物では、ゲルの成形性、体感及び粘着性ともに優れていた。一方、比較例6ではゲルの成形性が低く、しみだしが観察され体感も悪かった。さらに、比較例6ではエピネフリンがアルミニウムと反応し、保存時にゲルの着色が観察された。一方、薬理効果は実施例3及び4では高い局所麻酔効果が認められたが、比較例6では低下する傾向が認められた。ここで、ゼラチンを添加した実施例4の組成物は展膏や裁断などの製造時の取り扱いが容易になる利点が挙げられる。
【0064】
【表8】
【0065】
<実験例4>
本発明の粘着ゲル組成物における成形性、粘着性及び薬理効果に及ぼす局所麻酔剤と酸性高分子の重量比の影響について評価した。表9に示すように、塩基性薬物としてリドカインは2〜12%、及びエピネフリン0.1%、酸性高分子としてポリアクリル酸は2〜8%の範囲において、実施例5〜10及び比較例7、8の粘着組成物を調製した。
【0066】
【表9】
【0067】
(実施例5)
ポリアクリル酸 4重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 47.5重量部
リドカイン 4重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0068】
(実施例6)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 45.5重量部
リドカイン 4重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0069】
(実施例7)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 43.5重量部
リドカイン 4重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0070】
(実施例8)
ポリアクリル酸 4重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 47.5重量部
リドカイン 4重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0071】
(実施例9)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 41.5重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0072】
(実施例10)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 39.5重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0073】
(比較例7)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 45.5重量部
リドカイン 2重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0074】
(比較例8)
ポリアクリル酸 2重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4.0重量部
水 45.5重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0075】
表10に示すように実施例5〜10の粘着組成物においては、成形性、粘着性及び薬理効果の何れも優れていた。
【0076】
一方、比較例7の組成においては高分子の量が少なく、成形性が不完全な粘着組成物であった。比較例8における酸性高分子と塩基性薬物の重量比では、十分な中和ができず、成形性も十分ではなかった。特に、比較例8では塩基性薬物の溶解も不十分であり、ゲル中で結晶が観察された。このような粘着組成物の粘着性は著しく低かった。
【0077】
【表10】
【0078】
<実験例5>
本発明の粘着ゲル組成物における成形性、粘着性及び薬理効果に及ぼすリドカインとエピネフリンの重量比の影響について評価した。表11に示すように、リドカインは0〜10%及びエピネフリン0〜0.5%、の範囲において、実施例11〜30及び比較例10〜19の粘着組成物を調製した。組成物中の酸性高分子の添加量は塩基性薬物の添加量に合わせて調整した。
【0079】
【表11】
【0080】
(実施例11〜15)
ポリアクリル酸 4重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 50.1〜50.59重量部
リドカイン 1重量部
エピネフリン 0.010〜0.500重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0081】
(実施例16〜20)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 45.1〜45.59重量部
リドカイン 4重量部
エピネフリン 0.010〜0.500重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0082】
(実施例21〜25)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 41.1〜41.59重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.010〜0.500重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0083】
(実施例26〜30)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 37.1〜37.59重量部
リドカイン 10重量部
エピネフリン 0.010〜0.500重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0084】
(比較例10〜15)
ポリアクリル酸 4重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 51.1〜51.6重量部
エピネフリン 0〜0.500重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0085】
(比較例16)
ポリアクリル酸 4重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 50.9重量部
リドカイン 1重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0086】
(比較例17)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 45.9重量部
リドカイン 4重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0087】
(比較例18)
ポリアクリル酸 6重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 41.9重量部
リドカイン 8重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0088】
(比較例19)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 37.9重量部
リドカイン 10重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0089】
実施例11〜30と比較例10〜19の粘着組成物を用いて、表12に示すような比較試験を行った。リドカインが0%(比較例10〜15)及び1%(比較例16及び実施例11〜15)は成形性及び粘着力が、ポリアクリル酸の中和が十分に行なえないため、成形性が劣るゲルとなった。一方、リドカインを4%以上添加した組成物の場合はポリアクリル酸の配合量を調整することで成形性及び粘着性とも優れたゲルが得られた。
局所麻酔効果はリドカインを添加していない比較例11〜15では認められず、エピネフリンを添加していない比較例16〜19では初期の効果は認められたがその効果は持続せず短時間で消失した。一方、エピネフリン0.01%以上の添加濃度で顕著な持続効果が得られた。すなわち、リドカインとエピネフリンの比で見ると、1000:1〜2:1の範囲で持続した薬効が確認された。
【0090】
【表12】
【0091】
<実験例6>
本発明の粘着ゲル組成物における薬理効果に及ぼす電流量の影響について評価した。リドカイン8%及びエピネフリン0.1%、電流0.1mA/cm2において、表13に示すように、貼付時間5〜30分の範囲で、通電群として実施例31〜34、非通電群として比較例20〜23を比較した。
【0092】
【表13】
【0093】
(実施例31〜34、比較例20〜23)
ポリアクリル酸 8重量部
グリセリン 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 39.5重量部
リドカイン 8重量部
エピネフリン 0.1重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃でエピネフリン、抗酸化剤及び架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
実験開始前にモルモットの背部をバリカン、電気カミソリで除毛し、微温湯を浸したガーゼで皮膚表面をよく拭き取った。背部正中線を中心に右あるいは左側部を刺激用針で刺激し、皮膚の収縮反応が確実に現れる部位を粘着ゲルの貼付部位とし、他の除毛部位に対照電極を貼付した。薬物含有粘着ゲル(ドナー電極、6cm2)を陽極側に、塩化ナトリウムを含む電極(リファレンス電極、6cm2)を陰極側にそれぞれ接続し、通電を開始した。非通電群は同様の貼付操作のみを行い、通電は行わなかった。通電は直流電流0.1mA/cm2とし、貼付時間5〜30分で行った。
【0094】
表14から明らかなように比較例20〜23に示す非通電においては、何れも局所麻酔作用は観察されなかった。一方、通電を行った場合は貼付時間5分以上で局所麻酔効果が観察され、約0.5〜1.5mA・min/cm2ではほぼ安定した局所麻酔効果の持続性が得られた。一方、1.5mA・min/cm2以上ではその効果は一定であった。
【0095】
【表14】
【0096】
<実験例7>
本発明の粘着ゲル組成物において、血管収縮剤(エピネフリン)の安定性に及ぼす抗酸化剤(亜硫酸水素ナトリウム)の添加濃度の影響について検討した。
【0097】
(実施例35)
ポリアクリル酸 6重量部
ポリエチレングリコール400 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 46.54重量部
リドカイン 3重量部
エピネフリン 0.05重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.3重量部
硫酸オキシキノリン 0.01重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0098】
(実施例36)
ポリアクリル酸 6重量部
ポリエチレングリコール400 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 46.24重量部
リドカイン 3重量部
エピネフリン 0.05重量部
亜硫酸水素ナトリウム 0.6重量部
硫酸オキシキノリン 0.01重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0099】
(比較例24)
ポリアクリル酸 6重量部
ポリエチレングリコール400 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 46.85重量部
リドカイン 3重量部
エピネフリン 0.05重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0100】
(比較例25)
ポリアクリル酸 6重量部
ポリエチレングリコール400 40重量部
エチレングリコールジグリシジルエーテル 0.1重量部
ゼラチン 4重量部
水 45.34重量部
リドカイン 3重量部
エピネフリン 0.05重量部
亜硫酸水素ナトリウム 1.5重量部
硫酸オキシキノリン 0.01重量部
この処方における諸成分を50℃に加熱しながら均一になるまで混合撹拌し、最後に40℃で架橋剤を添加して比較粘着組成物を得た。剥離処理PETライナー上に1mm厚で展膏し、適当な形状に裁断して試験に用いた。
【0101】
実施例35、36と比較例24、25の粘着ゲルを用いて、リドカイン及びエピネフリンの安定性について検討した。各粘着ゲルを50℃に4週間保存した後、粘着ゲル中のリドカイン及びエピネフリンの含量を測定した。その結果、表15に示すように各実施例及び比較例においてリドカインは約100%回収でき、粘着ゲル中において安定であった。一方、エピネフリンは実施例35で約96%、実施例36で約84%、比較例24で約67%、比較例25で約72%であり、添加する亜硫酸水素ナトリウム濃度に応じて安定化効果が変化し、特に高濃度添加ではエピネフリンの安定性低下が観察された。
【0102】
【表15】
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る粘着ゲル組成物は、皮膚又は粘膜に適用される粘着組成物であって、酸性高分子と、多官能エポキシ化合物と、水と、多価アルコール及び/又はゼラチンと、塩基性薬物とを含有するものであり、従来の基剤の欠点であった薬物輸率の低下を引き起こすことがなく、成形性や粘着性に優れたイオントフォレーシス組成物を与える。本発明によれば、製造性、取り扱い性、皮膚刺激性、経時安定性、薬理効果、電気的特性及び経済性の面において高水準を確保したイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物及びその装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るイオントフォレーシス装置におけるアプリケーターの一例の断面を示す模式図である。
【図2】本発明に係るイオントフォレーシス装置の一例の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
1、5 バッキング
2 電極
3 粘着ゲル
4、10 ライナー
6 ドナー電極
7 リファレンス電極
8 ドナー電極側組成物
9 リファレンス電極側組成物
11 電源装置
Claims (6)
- 塩基性薬物と、酸性高分子と、多官能エポキシ化合物と、水と、多価アルコール及び/又はゼラチンとを含有し、塩基性薬物がリドカインおよびエピネフリンを含み、リドカインの配合量が1重量%〜10重量%、エピネフリンの配合量が0.01重量%〜0.50重量%であることを特徴とするイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物。
- 酸性高分子が、ポリアクリル酸、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、メトキシエチレンマレイン酸共重合体、イソブチレン無水マレイン酸共重合体、イソブチレンマレイン酸共重合体、カルボキシビニルポリマー及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載のイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物。
- 抗酸化剤をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2記載のイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物。
- 抗酸化剤がピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸オキシキノリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3記載のイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物。
- 抗酸化剤の配合量が0.001重量%〜1.0重量%であることを特徴とする請求項3又は4記載のイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物。
- ドナー電極と、リファレンス電極と、ドナー電極上に配置された請求項1〜5のいずれかに記載のイオントフォレーシス用粘着ゲル組成物であるドナー電極側組成物と、リファレンス電極上に配置されたリファレンス電極側組成物と、ドナー電極及びリファレンス電極にそれぞれ電気的に接続された電源装置とを備えたことを特徴とするイオントフォレーシス装置。
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