JP4391284B2 - 多層基板の製造方法 - Google Patents
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1つは、アルミナを主成分とするグリーンシート上に、モリブデンやタングステンなどの高融点金属ペーストで回路パターンを形成し、還元雰囲気中、1500℃程度で焼成する、高温同時焼成セラミック多層基板(以後、HTCCと略記)と呼称される基板である。
まず、実施の形態1の多層基板の製造方法の概略について説明する。
実施の形態1の製造方法では、粒子の粗い第1のグリーンシートと、第1のグリーンシートより粒子が細かく、焼成によりアルミナ基板を得るための第2のグリーンシートとを準備し、両者を交互に積層して、静水圧プレスで一体化し、それを焼成して焼成体を形成する。そして当該焼成体の状態でハンドリングして、第3のグリーンシートを複数枚積層し一体化したグリーン体に接合した後に、第1および第2のグリーンシートの積層体の焼成体のうち、不要な部分を剥離除去することで、LTCCと割れや欠けを有さない薄いアルミナ基板との接合多層基板を得る。
以下、図1〜図7を用いて本発明に係る実施の形態1の多層基板の製造方法について説明する。
まず、アルミナ系のグリーンシート、LTCC用グリーンシートの準備工程について説明する。
純度99%以上で平均粒径2μm程度のアルミナ粉末を母材とし、これにポリビニルブチラール樹脂やアクリル系樹脂などの有機バインダーと、可塑剤および分散剤を添加して、例えばトルエンとエタノールの混合有機溶媒中で混合分散して調整したスラリーを得る。次に当該スラリーからドクターブレード法により、厚み約100μmのアルミナ系のグリーンシート1(第1のグリーンシート)を作製する。
純度99%以上で平均粒径0.3μm程度の低ソーダ易焼結性アルミナ粉末に、SiO2とB2O3とRO(ただしRはアルカリ土類金属元素)を2〜3%添加したものを母材とし、他はグリーンシート1と同じ有機バインダー、可塑剤、分散剤および混合有機溶媒を用いてスラリーに調整し、厚み約200μmのアルミナ系のグリーンシート2(第2のグリーンシート)を作製する。なお、上記配合により、グリーンシート2に含まれる易焼結性アルミナ粉末の比率は96%以上となり、誘電率や誘電正接を低減したアルミナ基板を作製できる。
ガラスの組成をSiO2−ZrO2−Al2O3−B2O3−R†O(ただしR†=Ba,Ca,Mg)系材料とし、平均粒径2μm程度のガラス粉末と平均粒径2μm程度のアルミナ粉末を等重量で混合したスラリーをグリーンシート1と同じ手法で調製し、アルミナ系グリーンシートと同様に厚み約100μmのLTCC用グリーンシート4を作製する。ここで、R†=Ba,Ca,Mgとは、Ba、Ca,Mgのうち少なくとも1つを使用することを意味する。なお、各グリーンシートは50mm×50mmの大きさに切り揃えた。
まず、図1(a)に示すように、2枚のグリーンシート1および3枚のグリーンシート2を、1層ごと交互に平坦な金属プレート7(第2のプレート)上に積層する。その後、グリーンシートの積層体を金属プレート7ごと市販のラミネートバッグ(図示せず)に入れて真空パックする。
グリーン体AG1は、周辺部でシートの積層ずれを生じている部分を切り落とした後、焼成して図1(c)に示すアルミナ焼成体AG10(第1の焼成体)を得た。なお、焼成体AG10は、グリーンシート1に対応するアルミナ焼成層B1とグリーンシート2に対応するアルミナ焼成層B2とで構成される。
図1(d)に示すように、6枚(この枚数に限定されるものではない)のLTCC用グリーンシート4(第3のグリーンシート)を準備し、それぞれのシートについて、同時焼成用に調整した銀ペーストを用いてスクリーン印刷の方法でビアホールを充填すると共に所定の回路パターンを形成し、平坦な金属プレート7上に積層する。その後、グリーンシートの積層体を金属プレート7ごと市販のラミネートバッグ(図示せず)に入れて真空パックする。
次に、図1(f)に示す工程において、金属プレート7上に積層された状態にあるLTCC用グリーン体LG1の上に、アルミナ焼成体AG10を積層する。その後、金属プレート7ごと市販のラミネートバッグ(図示せず)に入れて真空パックする。
次に、図1(g)に示す工程において、成形体を金属プレート7から外して低温焼成を行う。ここでの焼成は、温度500℃程度で数時間保持する脱バインダー過程と、それに引き続き温度を900℃まで上げて1時間保持して、LTCC用グリーン体LG1の低温同時焼成過程およびアルミナとガラスを介した接合の形成過程を経て、室温まで炉内で冷却する温度パターンを採用した。なお、この工程によって得られる低温焼成体LBは、LTCC用グリーン体の焼成体であるLTCC部LP(第2の焼成体)と、アルミナ部APとで構成され、アルミナ部APはアルミナ焼成層B1とアルミナ焼成層B2とで構成される。
次に、図1(h)に示す工程において、アルミナ部APのアルミナ焼成層B1以上の層を不要層DUとして機械的に剥離する。
次に、図1(i)に示す工程において、接合体BBの剥離面を超音波洗浄して表面やビアホール内に付着するアルミナ粉末を除去する。
次に、図1(j)に示す工程において、接合体BBのアルミナ焼成層B2に対して、スクリーン印刷法により銀ペーストでビアホールを充填し、表面に厚み約15μmの回路パターンを形成する。
得られた複数の接合多層基板は、ビアホール内に形成されたビア配線の接続状態を、テスターおよびインピーダンスメーターで調べたが、導通不良や絶縁不良は検知されなかった。
以上説明した実施の形態1の多層基板の製造方法を用いることで、誘電正接が小さく伝送損失がHTCCに比べて更に小さい接合多層基板を得ることができる。また、接合多層基板の最上面にある薄いアルミナ焼成層B2(アルミナ基板)にはHTCCの製造プロセスでは使用できない高伝導な銀を使用できるので、ミリ波回路やマイクロ波回路を、アルミナ基板に集積する構成を採用することで、従来のLTCCやHTCC以上の性能を示す多層基板や半導体パッケージを比較的容易に得ることができる。
以上説明した実施の形態1の多層基板の製造方法では、図1(a)を用いて説明したように、2枚のグリーンシート1と3枚のグリーンシート2を交互に積層したグリーン体AG1を焼成した焼成体AG10をハンドリングして、LTCC用グリーン体LG1の上に積層する例を示したが、1枚のグリーンシート1と2枚のグリーンシート2を交互に積層したグリーン体を焼成した焼成体をLTCC用グリーン体LG1の上に積層するようにしても良い。
以上説明した実施の形態1の多層基板の製造方法では、図1(f)を用いて説明したように、金属プレート7上に積層された状態にあるLTCC用グリーン体LG1の上に、アルミナ焼成体AG10を積層する例を示したが、ここは図9に示すような構成としても良い。
実施の形態1においては、最上面が薄いアルミナ基板で構成された接合多層基板を製造する方法を説明したが、実施の形態2においては、上記アルミナ基板の代わりに、ガラス−アルミナ系焼結体基板を形成した構成について説明する。
実施の形態2に係る製造方法は、基本的には、図1を用いて説明した実施の形態1の製造方法と同じであるので重複する説明は簡略化し、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
グリーンシート3を形成するためのガラス材料の原料配合比は、重量%で、x・SiO2−y・B2O3−z・Al2O3−α・CaO−β・MgO−γ・R2O(R=Na,K)−δ・TiO2と表される。ここで、R=Na,Kとは、NaおよびKのうち少なくとも1つを使用することを意味する。
次に、図11(a)に示すように、2枚のグリーンシート1と3枚のグリーンシート3を、1層ごと交互に平坦なセラミックプレート17(第1のプレート)上に積層する。その後、グリーンシートの積層体をセラミックプレート17ごと市販のラミネートバッグ(図示せず)に入れて真空パックする。
グリーン体AGG1は、周辺部でシートの積層ずれを生じている部分を切り落とした後、位置決めピン18を取り外し、セラミックプレート17に搭載した状態で焼成し、図11(c)に示すガラス−アルミナ焼成体AGG10(第1の焼成体)を得た。
図11(d)〜図11(e)に示すLTCC用グリーンシートの積層工程は、図1(d)〜図1(e)に示す工程と基本的には同じであるが、最上層のLTCC用グリーンシート4に形成する回路パターンには、図5に示すような円形ランド部10は設けていない。
次に、図11(f)に示す工程において、金属プレート7上に積層された状態にあるLTCC用グリーン体LG1の上に、セラミックプレート17上で焼成された状態にあるガラス−アルミナ焼成体AGG10を積層する。
次に、図11(g)に示す工程において、成形体を金属プレート7から外して低温焼成を行う。ここでの焼成は、温度500℃程度で数時間保持する脱バインダー過程と、それに引き続き温度を900℃まで上げて1時間保持して、LTCC用グリーン体LG1の低温同時焼成過程およびアルミナとガラスを介した接合の形成過程を経て、室温まで炉内で冷却する温度パターンを採用した。なお、この工程によって得られる低温焼成体LBXは、LTCC部LPと、アルミナ部APとで構成され、アルミナ部APはアルミナ焼成層B1とガラス−アルミナ焼成層B3(ガラス−アルミナ基板)とで構成される。また、この段階ではセラミックプレート17も一体化している。
次に、図11(h)に示す工程において、アルミナ部APのアルミナ焼成層B1以上のセラミックプレート17を含む部分を不要層DUとして機械的に剥離する。アルミナ焼成層B1は、粒度が粗く、ガラス−アルミナ焼成層B3との焼結が未焼結(もしくは焼結不十分)であるので、両者の間に薄刃のナイフ等を差し入れることで容易に剥離できる。すなわち、この剥離工程のためにグリーンシート1と3とを交互に積層したのである。
次に、図11(i)に示す工程において、接合体BBXの剥離面を超音波洗浄して表面やビアホール内に付着するアルミナ粉末を除去する。
次に、図11(j)に示す工程において、接合体BBXのガラス−アルミナ焼成層B3に対して、スクリーン印刷法により銀ペーストでビアホールを充填し、表面に厚み約15μmの回路パターンを形成し、銀ペーストを焼き付けることで接合多層基板200を得た。
得られた接合多層基板200は、ビアホール内に形成されたビア配線の接続状態を、テスターおよびインピーダンスメーターで調べたが、導通不良や絶縁不良は検知されなかった。
図8に示すように、特性C3は、HTCCの特性C2にほぼ一致し、優れた特性を示している。これは、用いたガラスの誘電率と誘電正接が小さいことを反映している。なお、誘電率は7程度であった。
円形ランド部10が不要であることは以下の利点を有している。すなわち、ビア配線を低周波帯域で使用するのであれば、円形ランド部10等を用いることに問題はないが、高周波帯域で使用する場合、ランドおよびビア配線の配置の仕方で、そこに生ずる寄生容量が異なる値となって、基板に構成する回路の回路定数がばらつく可能性がある。
Claims (7)
- (a)第1のグリーンシートを複数枚と、前記第1のグリーンシートより多い枚数の第2のグリーンシートとを準備する工程と、
(b)前記第1および第2のグリーンシートを交互に積層し、一体化して第1のグリーン体を形成する工程と、
(c)前記第1および第2のグリーンシートよりも低温で焼成可能な第3のグリーンシートを複数枚積層し、一体化して第2のグリーン体を形成する工程と、
(d)前記第1のグリーン体を焼成して第1の焼成体を形成する工程と、
(e)前記第2のグリーン体の少なくとも1方の主面上に前記第1の焼成体を積層し、その状態で、前記第3のグリーンシートを焼成する温度で焼成し、前記第2のグリーン体に相当する部分が第2の焼成体になるとともに、前記第2の焼成体が前記第1の焼成体に接合した低温焼成体を形成する工程と、
(f)前記第2の焼成体の主面に前記第2のグリーンシートに対応する焼成層が残るように、当該焼成層より上層の前記第1の焼成体の不要部分を剥離除去する工程と、
(g)前記焼成層の表面に印刷法により回路パターンを形成する工程と、を備える多層基板の製造方法。 - 前記工程(a)は、
(a−1)前記第1のグリーンシートの母材として、粒子が比較的粗いアルミナ粉末を選択し、前記第2のグリーンシートの母材として、前記第1のグリーンシートと比較して母材の粒子が細かいアルミナ粉末を選択する工程を含み、
前記工程(d)は、
(d−1)前記第1のグリーンシートが未焼結となるように焼成条件を設定する工程を含み、
前記工程(f)は、
前記第2のグリーン体において、前記焼成層の上の未焼結の前記第1のグリーンシートの部分から上層を剥離する工程を含む、請求項1記載の多層基板の製造方法。 - 前記工程(a)は、
前記第2のグリーンシートに、前記回路パターンに応じて予めビアホールを形成する工程を含み、
前記工程(g)は、
前記回路パターンを銀ペーストで形成するとともに、前記焼成層の前記ビアホールに、前記銀ペーストを充填する工程を含む、請求項1記載の多層基板の製造方法。 - 前記工程(e)は、
前記第2のグリーン体の両方の主面上に前記第1の焼成体を積層する工程を含む、請求項1記載の多層基板の製造方法。 - 前記工程(a)は、
前記第1のグリーンシートの母材として、平均粒径2μmのアルミナ粉末を選択し、
前記第2のグリーンシートの母材として、平均粒径2μmのガラス粉末と、平均粒径2μmのアルミナ粉末とを等重量で混合したものを選択し、
前記ガラス粉末として、原料配合比が重量%で、
x・SiO2−y・B2O3−z・Al2O3−α・CaO−β・MgO−γ・R2O(R=Na,K)−δ・TiO2として表され、
比率を表す前記x、y、z、α、β、γおよびδの値は、
52≦x≦56、15≦y≦20、10≦z≦15、0≦α≦10、0≦β≦5、0≦γ≦1、0.5≦δ≦5で表されるものを選択する工程を含む、請求項1記載の多層基板の製造方法。 - 前記工程(a)は、
前記第1および第2のグリーンシートに、それぞれの主面を貫通する複数の第1のガイド穴を設ける工程を含み、
前記工程(b)は、
(b−1)前記第1および第2のグリーンシートを積層した場合に、前記複数の第1のガイド穴に対応する位置に、その主面に垂直に突出する抜き差し可能な複数の第1の位置決めピンを有する第1のプレートを準備する工程と、
(b−2)前記第1のプレートの前記複数の第1の位置決めピンが、前記第1および第2のグリーンシートのそれぞれの前記複数の第1のガイド穴に挿入されるように、前記第1および第2のグリーンシートを積層して前記第1のグリーン体を形成する工程とを含み、
前記工程(c)は、
(c−1) 前記第3のグリーンシートを貫通する複数の第2のガイド穴を設ける工程と、
(c−2) 前記第3のグリーンシートを積層した場合に、前記複数の第2のガイド穴に対応する位置に、その主面に垂直に突出する複数の第2の位置決めピンを有する第2のプレートを準備する工程と、
(c−3) 前記第2のプレートの前記複数の第2の位置決めピンが、前記第3のグリーンシートの前記複数の第2のガイド穴に挿入されるように、前記第3のグリーンシートを積層する工程とを含み、
前記工程(d)は、
(d−1)前記複数の第1の位置決めピンを抜き取り、前記第1のプレートに前記第1のグリーン体を搭載した状態で前記第1のグリーン体を焼成する工程を含み、
前記工程(e)は、
前記第2のプレートに搭載された前記第2のグリーン体の1方の主面に前記第1の焼成体が対面するように、前記第1の焼成体および前記第1のプレートを積層し、前記第2のプレートの前記複数の第2の位置決めピンを、前記第1のプレートの前記複数の第1の位置決めピンを抜き取った後のピン挿入穴に挿入することで位置合わせを行う工程を含み、 前記工程(f)は、
前記第1のプレートを含むように前記第1の焼成体の前記不要部分を剥離除去する工程を含む、請求項5記載の多層基板の製造方法。 - 前記工程(b−1)は、
前記第1のプレートとしてセラミックプレートを選択する工程を含む、請求項6記載の多層基板の製造方法。
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