JP4390227B2 - 二次電池の短絡検査方法および当該検査方法を包含する二次電池の製造方法 - Google Patents

二次電池の短絡検査方法および当該検査方法を包含する二次電池の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池の短絡検査方法および当該検査方法を包含する二次電池の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、カメラ一体型VTR装置、オーディオ機器、携帯型コンピュータ、携帯電話など様々な機器の小型化かつ軽量化が進んでおり、これら機器の電源としての電池に対する高性能化要請が高まっている。特に、機器本体の小型化に対応するため、電池の小型化と容量の同時確保、すなわち、高エネルギー密度化が要求され、特に、充電により繰り返し使用できる二次電池に対する期待は高い。斯かる状況下、リチウム二次電池は、高エネルギー密度の実現が可能であり、更に、高電圧であることから、開発が盛んに行われている。
【0003】
リチウム電池の電解質には、(1)リチウム塩と非水系溶媒から成る非水系電解液、(2)ポリマーに非水系電解液を含有させたゲル状電解質、(3)固体状電解質が知られている。
【0004】
従来実用化されているリチウム二次電池は、正負の薄い電極板と電極板同士を相互に隔離するセパレータとを渦巻き状に巻いた筒形の構造を有する。そして、電極板としては、銅箔、アルミニウム箔などの導体箔にリチウム化合物などの電極活物質を被着させたものが使用されている。この様な二次電池の組み立ては次の様に行われる。
【0005】
先ず、リールに夫々巻回されている正負の電極板と2枚のセパレータとをリールから巻き戻しつつ、巻き取り機によりセパレータ、負電極板、セパレータ、正電極板の順序で渦巻き状に積層し、正負の電極板にそれぞれ正極リード及び負極リードを電気的に接合し、円筒形の電池素子を形成する。次いで、電池素子について短絡検査を施し、合格品のみ次の工程に送って缶詰めし、電解液を注入して電池とする。
【0006】
上記の様に、リチウム二次電池の短絡検査は、電解液を注入する前の半完成品の電池素子に対し、直流導通試験、交流導通試験、高電圧絶縁試験などを行う方法であり、目的によって使い分けられている。
【0007】
ところで、電池やその製造工程の構成によっては、電解液の注入などにより、電解質を備え、すなわち、電池として機能する電池素子になった段階で短絡検査を行う必要が生じる場合もある。特に、ゲル状電解質や固体電解質を備えたリチウム二次電池では、電解質に流動性がないため、注液による電解質供給工程は困難であり、正極および負極が対向させられた段階で既に電解質が具備させられている様な工程を採用する場合が多い。
【0008】
ところが、上記の様な場合、電池として機能する電池素子になった段階で短絡検査を行うことになるが、上記の従来の短絡検査方法では対応できない。何故ならば、直流導通試験による手法では、既に電解液が注入され電池として機能する電池素子に対しては、観測された導通が短絡によるものなのか、充電過程によるものなのか区別できない。交流導通試験においても、観測された導通が短絡によるものなのか、電解質を伝導したものなのか区別できない。高電圧絶縁試験は、機能している電池に対して高電圧を印加することになり、電池を破壊する可能性すらあるため利用できない。
【0009】
勿論、電池として既に機能する電池素子になっていることから、充電すること自体により、不良品を検出しようとすることは可能である。しかしながら、初期充電は通常1日以上かけて行うのが普通であり、更に、短絡の程度によってはかなり充電が進んだ段階でようやく異常挙動が現れることがある。従って、充電途上における異常挙動から不良を判定する方法は、生産効率が極めて低い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、電極および電解質を備えて電池として機能する電池素子に対して適用でき、簡単で検査の作業能率が高く、しかも、信頼性が高い、二次電池の短絡検査方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記の検査方法を包含する二次電池の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1の要旨は、正極および負極とそれらをイオン的に結合する電解質とを備えた二次電池の電極間の短絡を検査する方法であって、初回充電前の二次電池の電極間に交流信号を印加してそのインピーダンスを測定し、複素数平面に表したインピーダンスの測定結果が、低周波側において直線的になるインピーダンス軌跡になる場合に、正常電池であると判定し、低周波側で円弧を描く傾向があり、低周波側にいくほど、正常な電池固有のインピーダンス軌跡との乖離が顕著になる場合に、電極間が短絡していると判定することを特徴とする二次電池の短絡検査方法、に存する。
上記の検査方法は、測定される交流信号の周波数が100Hz〜0.1mHzの範囲内で単一であり、測定されたインピーダンスの複素数平面上における測定点の位置が領域A1の中にあることをもってして、あるいは、境界線Lを短絡の判定基準とし、その境界線Lを超えていることによって、電池に短絡が生じてないと判定し、領域A1の中にないことをもってして、あるいは、境界線Lを超えていないことによって短絡が生じていると判定する。ただし、領域A1又は境界線Lの場所は周波数によって変化し得るため、検査周波数によって正常とされる領域または値を設定する。
また、上記の検査方法は、被測定電池に対し、交流信号の周波数の2点においてインピーダンスを測定し、それらの測定値を結んだ直線の傾きが、設定された正常電池の同一の2点におけるインピーダンスの値を結んだ直線の傾きを中心とし且つ測定誤差を許容した範囲の値の範囲にある場合は短絡が生じていないと判定し、範囲にない場合は短絡が生じていると判定する。
また、上記の検査方法は、測定される交流信号の周波数が3点以上であり、インピーダンス複素数平面上における3点以上の測定点を円弧で近似させた場合、近似不可能か、または、要求される検査精度によって基準値を設定し、近似円弧の半径が基準値以上の場合は短絡が生じていないと判定し、近似円弧の半径が基準値より小さい場合は短絡が生じていると判定する。
また、上記の検査方法は、測定される交流信号の周波数が3点以上であり、インピーダンス複素数平面上における3点以上の測定点を円弧で近似させた場合、近似不可能か、または、要求される検査精度によって基準値を設定し、近似円弧の半径が基準値以上の場合は短絡が生じていないと判定し、近似円弧の半径が基準値より小さい場合は短絡が生じていると判定する。
また、上記の何れかに記載の検査方法は、測定される交流信号の周波数の少なくとも一点が10Hz以下である。
また、上記の何れかに記載の検査方法は、前記電池がゲル状電解質または固体電解質を使用したリチウム二次電池である。
また、上記の何れかに記載の検査方法は、前記電池が正極、電解質層、負極を平板的に積層した構造を持つ。

【0012】
そして、本発明の第2の要旨は、正極および負極を形成する電極形成工程、当該工程で得られた電極間に電解質層を形成する電解質層形成工程、当該工程で得られた電池素子をケースに収納するパッケージィング工程とから主として構成される二次電池の製造方法であって、前記の電解質層形成工程以降において、初回充電前の二次電池の電極間に上記の何れかに記載の検査方法により短絡検査を行う検査工程を設けたことを特徴とする二次電池の製造方法に存する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。先ず、本発明の短絡検査方法について説明する。図1(a)は、本発明の短絡検査方法が適用される電池素子の一例の側面説明図、図1(b)は、図1(a)に示す電池素子の上面説明図、図2は、本発明の短絡検査方法で使用される短絡検査装置の一例の模式的説明図、図3は、複素数平面に表した正常電池および短絡電池のインピーダンスの測定例の説明図、図4は、複素数平面に表したインピーダンスの測定結果より短絡を判定する手法の一例の説明図、図5は、複素数平面に表したインピーダンスの測定結果より短絡を判定する手法の他の一例の説明図、図6は、複素数平面に表したインピーダンスの測定結果より短絡を判定する手法の更に他の一例の説明図である。上記の各複素数平面において、縦軸は複素数の虚部Z"、横軸は複素数の実部Z'を表す。図7(a)は、本発明の製造方法で得られた積層型二次電池の一例の一部断面側面説明図、図7(b)は、図7(a)に示す積層型二次電池の一例(ケース蓋を開放した状態)の平面説明図である。
【0014】
本発明の短絡検査方法は、図1(a)及び(b)に例示する様に、正極(1)及び負極(2)とそれらをイオン的に結合する電解質(3)とを備えた二次電池に対して適用される。図1に例示した二次電池の場合、電解質(3)は、ゲル状電解質または固体状電解質で構成されているが、本発明の短絡検査方法は、電池として機能し得る状態になされている限り、正負の電極板の間にセパレータを配置した構造体を缶詰めした後に電解液を注入して構成される二次電池にも適用し得る。
【0015】
上記の様な二次電池の具体例としては、リチウム二次電池、ニッケル・カドミウム二次電池、ニッケル・水素二次電池などが挙げられる。特に、対向する電極の面積が200cm2に満たない電池に対しては、高精度、高速な検査が可能となる。そして、リチウム二次電池における短絡は発火の危険性を伴うため、その短絡検査は安全上においても重要である。なお、図1中の符号(4)は正極(1)に接続された正極端子、符号(5)は負極(2)に接続された負極端子を表す。
【0016】
本発明において、短絡検査の対象は、上記の様に電池として機能し得る状態となった初回充電前の二次電池である。初回充電前の組立品は、電池に至る前の電池素子(半製品)であるが、本発明においては、便宜上、これらの半製品を含めて二次電池と称する。
【0017】
すなわち、本発明において、検査の対象となる二次電池は、正極および負極とそれらをイオン的に結合する電解質とを備えた電池素子がケースに収納された完成品の他、ケースに収納する前の電池素子自体などであっても構わない。従って、本発明で言う二次電池には、単一の正極および負極とそれらをイオン的に結合する電解質との組合せから成り且つ電池機能を備えている電池素子、一つの電池素子をケースに収納した二次電池、複数枚の電池素子を積層してケースに収納した二次電池などが含まれる。
【0018】
本発明の短絡検査方法は、初回充電前の二次電池の電極間に交流信号を印可してそのインピーダンスを測定することより成る。ここで、インピーダンスZとは、周波数fの交流信号を電極間に印加した場合に測定される位相成分を含んだ抵抗値であって、複素数表示した測定電圧Vと測定電流Iから、Z=V/Iで求められる値を意味する。複素数Zは、その実部Z'と虚部Z"により、Z=Z'+iZ"と表される。iは−1の平方根である。複素数平面は、x−y平面上のx軸に複素数の実部Z'、y軸に複素数の虚部Z"をとって表され、測定されたインピーダンス値Z=Z'+iZ"は、座標(x、y)=(Z'、Z")に表すことが出来る。Z'及びZ"は、電池の特性に関連した値であり、電池の状態の評価に利用することが出来る。また、複数の周波数に対して測定された(Z'、Z")の点が描く軌跡は、適当な解析を行うことにより、静電容量や抵抗値を導出することが出来る。
【0019】
すなわち、電池のインピーダンスは、使用された電極種類、電解質種類、電極面積、電極厚み、電解質層厚み、温度などに応じて固有のインピーダンス軌跡を示す。電極間が短絡していない場合、初回充電前の状態のインピーダンスの軌跡は、低周波側において直線的になり、特にZ"が発散していく挙動を示す。逆に、電極間が短絡している場合、電池の等価回路において外部抵抗を並列に接続したことになることからも分かる様に、インピーダンスの軌跡は、低周波側で円弧を描く傾向がある。正常な電池と短絡電池の軌跡の乖離は低周波側にいくほど顕著になる。
【0020】
本発明の短絡検査方法は、上記の事実に基づき完成されたものであり、複素数平面に表した正常電池および短絡電池のインピーダンスの測定結果の相違に基づき電極間での短絡の有無を判定する方法である。なお、電池の電極間のインピーダンスを測定すること自体は公知であるが、これ迄のインピーダンスの測定は、界面抵抗、電荷二重層容量、電解質層のバルク抵抗などの評価のため、あるいは、それらの経時変化からサイクル劣化の挙動を解明ために行われており、本発明の様に、電解質を有した電極間の短絡の有無を判断するためにインピーダンスの測定が行われた例はない。
【0021】
本発明の短絡検査方法においては、電極間に交流信号を印加し、電極間に流れる電流、電極間の電圧および位相差を測定し、電極間のインピーダンスを測定する装置であって、所謂LCRテスタと称される既知の測定装置や所謂インピーダンスアナライザーと称される既知の測定装置を使用することが出来る。インピーダンスアナライザーとしては、例えばソーラトロン製のモデル「SI1260/SI1267」が挙げられ、LCRテスタとしては、例えば日置電機(株)製のモデル「3502Cハイテスタ」が挙げられる。
【0022】
図2に示す短絡検査装置(30)は、インピーダンスアナライザー(20)を使用している。そして、電池の正極端子(4)と電気的に接触できるようにされた正極測定端子(8)及び(9)と、電池の負極端子(5)と電気的に接触できるようにされた負極測定端子(10)及び(11)と、正極端子(4)及び負極端子(5)を夫々押圧する端子押さえ(6)及び(7)とを備えている。上記の各測定端子(8)及び(9)と(10)及び(11)は、それぞれ、リード線(12)及び(13)と(14)及び(15)によってインピーダンスアナライザー(20)の装置側端子(16)及び(17)と装置側端子(18)及び(19)に接続されている。但し、上記の装置側端子において、(16)及び(19)は電圧測定用の装置側端子、(17)及び(18)は電流測定用の装置側端子である。
【0023】
以上の構成により、例えば、装置側端子(16)と(19)間に周波数fの交流測定信号を印加した場合、装置側端子(17)と(18)間を介して電極間で流れる電流の強さと電圧に対する位相差を測定することが出来、これによって更に電池の正負電極板間のインピーダンスを測定することが出来る。インピーダンスの測定精度を上げるため、被測定電池を含めた測定部は定温に保たれていることが好ましい。なお、上述の例では、電圧を印加して電流を測定しているが、逆に、電流を印加して電圧を測定する場合も同様である。
【0024】
本発明の短絡検査方法は、上記の様な短絡検査装置(30)を使用し、次のステップ1〜4に示す要領で行うことが出来る。
【0025】
(ステップ1)
正極端子(4)を端子押さえ(6)上に、負極端子(5)を端子押さえ(7)上に夫々位置決めし、短絡検査装置(30)に配置し、更に、端子押さえ(6)及び(7)を作動させて各端子を測定端子に接触させる。
【0026】
(ステップ2)
インピーダンスアナライザー(20)の装置側端子(16)及び(19)間に交流測定信号を印加し、必要ならば、複数の周波数において電池の正負電極間のインピーダンスを測定する。
【0027】
(ステップ3)
インピーダンスの測定結果が規定範囲外の場合は、電極間が短絡していると見なし、検査した電池素子を不良品として排除する。
【0028】
(ステップ4)
インピーダンスの測定結果が規定範囲内の場合、検査した電池素子を合格品として次工程に送り、複数枚の電池素子の積層などを行う。
【0029】
上記のインピーダンス測定による短絡の判定は具体的には次の様に行うことが出来る。
【0030】
図3に示す正常電池および短絡電池のインピーダンスの測定例は、4個の充電前の電池B1〜B4について1MHzから20mHzの範囲に亘るインピーダンスの測定を行い、得られた結果をインピーダンス複素平面にプロットして得られたものである。実際に充電を行って確認した結果、B1〜B3の電池は正常であるが、B4は短絡していることが確認された。この様にインピーダンス測定の結果をインピーダンス複素平面にプロットした場合、短絡電池は極めて特徴的な軌跡を示すため、容易に識別できる。インピーダンスの測定結果より短絡を判定する改良された手法は次の通りである。
【0031】
(図4に示す短絡判定手法)
この判定手法は、測定される交流信号の周波数が単一であり、測定されたインピーダンスの複素数平面上における測定点の位置によって短絡の有無を判定する方法である。
【0032】
すなわち、正常な電池のインピーダンスの値は軌跡M上にあり(図3参照)、周波数F1で測定した測定値は領域A1の中にある。ところが、短絡電池では、例えば測定値がZ1に表される値となる。更に、短絡の程度により、Z1aやZ1bなどに表される値となることもある。本発明においては、周波数F1で測定したインピーダンスの測定値が領域A1の中にあることをもってして電池に短絡が生じてないと判定する。更に簡便には境界線Lを短絡の判定基準とし、Z"の値がZ"1を超えていることによって判定することも出来る。この場合、単一の数値の大小のみで判定できるため、装置が簡略化される。領域A1又は境界線Lの場所は周波数によって変化し得るため、検査周波数によって正常とされる領域または値を再設定する。例えば周波数F2での測定の場合、正常電池の測定値は領域A2の中にあり、短絡電池では例えばZ2に表される値となる。更に、領域A1又は境界線Lの場所は、被測定電池の構成によっても変化し得るため、検査される電池の構成によって正常とされる値を再設定する。
【0033】
測定に使用される交流信号の周波数としては、通常100Hzから0.1mHz、好ましくは10Hzから10mHzである。周波数が高過ぎる場合は、正常、短絡の判定が困難になり、低過ぎる場合は、測定に時間がかかり検査の効率が低下する。測定に使用される交流信号の振幅電圧としては、通常100mVから1μV、好ましくは50mVから100μVである。振幅電圧が高過ぎる場合は、充電が進行するなどして検査の精度が低下すると共に、電池に余分な電圧が加わり、低過ぎる場合は、その測定精度の観点から短絡の判定精度が低下する。
【0034】
(図5に示す短絡判定手法)
この判定手法は、測定される交流信号の周波数が2点であり、インピーダンス複素数平面上における2点の傾きによって短絡の有無を判定する方法である。
【0035】
すなわち、被測定電池に対し、周波数F3とF4の2点においてインピーダンスを測定した場合、正常電池のインピーダンスの値はZ3aとZ4bで表され、これらを結んだ直線Y1の傾きはS1となる。ところが、短絡電池では、例えば測定値がZ3bとZ4bに表される値となり、これらを結んだ直線Y2の傾きはS2となる。そこで、S1を中心とし且つ測定誤差を許容した範囲の値を設定し、傾きがこの範囲にある場合は短絡が生じていないと判定することが出来る。この場合2つの測定点の相対的位置関係から判定がなされるため、精度が高く、測定時間に対して確度の高い判定が可能となる。
【0036】
(図6に示す短絡判定手法)
この判定手法は、測定される交流信号の周波数が3点以上であり、インピーダンス複素数平面上における3点以上の測定点から近似される円弧によって短絡の有無を判定する方法である。
【0037】
すなわち、被測定電池に対し、周波数F5、F6、F7、F8の4点においてインピーダンスを測定した場合、正常電池のインピーダンスの値は、Z5a、Z6a、Z7a、Z8aで表され、各点を円弧で近似させた場合、近似不可能か、または、極めて半径の大きな円弧S1となる。ところが、短絡電池では、例えば測定値がZ5b、Z6b、Z7b、Z8bに表される値となり、円弧S2で良好に近似することが出来る。円弧の半径は、短絡部の抵抗と相関した値が得られる。そこで、要求される検査精度によって基準値を設定し、近似円弧の半径が基準値以上の場合は短絡が生じていないと判定することが出来る。インピーダンスの測定点の数は最小3点から可能であり、多い方が正確な判定が可能となるが、多過ぎる場合は測定時間が長くなり効率が低下する。
【0038】
次に、本発明に係る二次電池の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、正極および負極を形成する電極形成工程、当該工程で得られた電極間に電解質層を形成する電解質層形成工程、当該工程で得られた電池素子をケースに収納するパッケージィング工程とから主として構成される。そして、前記の電解質層形成工程以降において、初回充電前の二次電池の電極間に交流信号を印加し且つそのインピーダンスを測定することによって短絡検査を行う検査工程を設けたことを特徴とする。
【0039】
本発明の製造方法の特徴は、上記の検査工程に存し、当該検査は、前述の通り、正極および負極が対向させられた段階で既に電解質が具備させられている様な製造工程を採用する二次電池に好適に適用し得る。従って、本発明の製造方法は、電解質がゲル状電解質または固体状電解質で構成されている二次電池の製造に好適に適用される。
【0040】
そして、電解質がゲル状電解質または固体状電解質で構成されている二次電池は何れも公知であるため、以下の説明においては、代表例としてゲル状電解質を使用したリチウム二次電池、例えば、正極および/または負極が集電体上に設けられたリチウムイオンの吸蔵放出可能な活物質含有層と当該層内に形成されるイオン移動相とから構成され、当該イオン移動相と上記の電解質層とがゲル状電解質で構成されて成るリチウム二次電池を使用する。なお、上記の何れか一方の電極(通常は負極)は、リチウム箔などの金属自体で構成することも出来る。
【0041】
<電極形成工程>
正極および/または負極は、例えば、集電体上に設けられたリチウムイオンの吸蔵放出可能な活物質含有層と当該層内に形成されるイオン移動相とから構成される。斯かる電極は、空隙を有する正極活物質層および/または空隙を有する負極活物質層を集電体上に形成し、活物質層表面にゲル状電解質形成用の電解液を塗布して空隙中に含浸させた後にゲル状電解質を形成する工程によって形成することが出来る。ここに、ゲル状電解質とは、主として電解液とゲル化ポリマーから成り、電解液が高分子のネットワーク中に保持され、全体としての流動性が著しく低下した物質である。斯かるゲル状電解質の場合、イオン伝導性などの特性は通常の電解液に近い特性を示すが、流動性や揮発性などは著しく抑制されて安全性が高められる。
【0042】
そして、上記の空隙を有する正極活物質層および/または空隙を有する負極活物質層は、活物質、バインダー及び溶剤を含有する電極用塗料を集電体上に塗布して乾燥することにより形成することが出来る。また、ゲル状電解質は、(1)冷却によってゲル化可能なポリマーが含有された電解液を加温状態で使用して常温までポリマーを冷却する方法、または、(2)モノマーが含有された電解液を使用してモノマーを重合させる方法により、形成することが出来る。
【0043】
集電体としては、通常、アルミ箔や銅箔などの金属箔が使用され、その厚さは適宜選択されるが、通常1〜50μm、好ましくは1〜30μmである。
【0044】
無機化合物から成る正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS2、FeS、MoS2等の遷移金属硫化物が挙げられる。有機化合物から成る正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N―フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。正極活物質の粒径は、通常1〜30μm、好ましくは1〜10μmとされる。
【0045】
負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素系活物質が挙げられる。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd,Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコン等も使用できる。負極活物質の粒径は、通常1〜50μm、好ましくは15〜30μmとされる。
【0046】
バインダーとしては、シリケートやガラスの様な無機化合物や各種の樹脂が挙げられる。バインダー用樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリー1,1−ジメチルエチレン等のアルカン系ポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の不飽和系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等の環を有するポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド等のアクリル系ポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有ポリマー、ポリアニリン等の導電性ポリマー等が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、通常10000〜3000,000、好ましくは100000〜1000000とされる。
【0047】
電極中には、必要に応じ、導電材料、補強材などの各種の機能を発現する添加剤を含有させることが出来る。導電材料としては、活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限されないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。また、電池の安定性や寿命を高めるため、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、1,6−Dioxaspiro[4,4]nonane−2,7−dione、12−クラウン−4−エーテル等が使用できる。更に、補強材として、各種の無機および有機の球状、板状、棒状、繊維状などのフィラーが使用できる。
【0048】
電極用塗料の調製において、活物質100重量部に対するバインダーの配合量は、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部とされる。使用する溶剤の一例としては、N−メチルピロリドンが挙げられる。また、電極用塗料の調製には、ボールミル、サンドミル、二軸混練機などが使用される。
【0049】
電解液は、主として、リチウム塩と溶媒から成る。リチウム塩としては、LiPF6又はLiClO4が好適である。溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の非環状カーボネート類から選ばれた1種または2種以上の混合液が好適である。電解液中のリチウム塩の濃度は、通常0.5〜2.5mol/Lとされる。
【0050】
電解液には、電池の安定性、性能、寿命を高めるため、例えば、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、1,6−Dioxaspiro[4,4]nonane−2,7−dione、12−クラウン−4−エーテル等の添加剤を加えてもよい。
【0051】
ゲル状電解質を形成するゲル化ポリマーの分子量は、通常10000〜5000000、好ましくは100000〜1000000の範囲とされる。
【0052】
ゲル状電解質の形成に使用するゲル化可能なポリマーの具体例としては、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等の環を有するポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド等のアクリル誘導体系ポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有ポリマーが挙げられる。
【0053】
ゲル状電解質の形成に使用するモノマーとしては、反応性不飽和基含有モノマーが好適に使用され、その具体例としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、N、Nジエチルアミノエチルアクリレート、N、Nジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0054】
上記のモノマーの重合方法としては、熱、紫外線、電子線などによる方法が挙げられるが、生産性の観点から紫外線による方法が好ましい。この場合、反応を効果的に進行させるため、電解液に紫外線に反応する重合開始剤を配合することも出来る。紫外線重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンジル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ビアセチル、ベンゾイルパーオキザイド等が挙げられる。一方、熱重合おいては、反応制御のため、重合開始剤を使用することが出来る。熱重合開始剤としては、1,1−ジ(ターシャルブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス−[4,4−ジ(ターシャルブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン]、1,1−ジ(ターシャルブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、ターシャリブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、ターシャリブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、ジベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0055】
ゲル状電解質中の高分子の比率は、通常0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%である。溶媒に対するポリマーの割合は、通常0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%とされる。
【0056】
<電解質層形成工程>
電解質層は、前記のゲル状電解質形成用の電解液をゲル化することにより得られる。そして、電極間における電解質層の形成は、(1)前記の(A)工程において、空隙を有する活物質層表面にゲル状電解質形成用の電解液を塗布する際、空隙中に含浸させると共にゲル状電解質層を形成するのに十分な量存在させた後にゲル化を行い、次いで、電極上に形成された電解質層を介して正極と負極とを積層する方法、または、(2)電極間に前記の(A)工程とは別個に形成したゲル状電解質シートを挟み込む方法によって行うことが出来る。特に、上記(1)の方法は、正極および負極の少なくとも一方のゲル状電解質と電解質層を構成するゲル状電解質の少なくとも一部とが連続しているという特徴を有する。正極および/または負極のゲル状電解質と連続する電解質層を構成するゲル状電解質の厚さは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μmとされる。正極と電解質層と負極とは平板的に積層されるのが好ましい。
【0057】
<パッケージィング工程>
ケースとしては、柔軟性、屈曲性、可撓性などを有する形状可変性のケースが好適に使用される。その材質としては、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、ゴム、薄い金属板などが挙げられる。ケースの具体例としては、ビニール袋の様な高分子フィルムから成る袋、高分子フィルムから成る真空包装用袋もしくは真空パック、金属箔と高分子フィルムのラミネート素材から成る真空包装用袋もしくは真空パック、プラスチックで形成された缶、または、プラスチック板で挟んで周囲を溶着、接着、はめ込み等で固定したケース等が挙げられる。
【0058】
<検査工程>
短絡有無の検査は、前述の通り、初回充電前の二次電池の電極間に交流信号を印加してそのインピーダンスを測定することによって行われる。そして、正極および負極とそれらをイオン的に結合する電解質とを備えた二次電池に対して適用され、従って、検査工程は、前記の電解質層形成工程以降、すなわち、ケースに電池素子を収納するパッケージィング工程の前または後に行われる。
【0059】
ところで、前記の各工程は次の環境下に行われる。すなわち、電極形成工程の前半工程(空隙を有する活物質層を集電体上に形成する工程)は、電解液を含んでなく、後の乾燥工程によって水分除去が行われため、水分管理の必要がなく、通常の雰囲気下で行うことが出来る。そして、その他の工程は、除湿管理された室内(ドライルーム)にて行う。
【0060】
従って、パッケージィング工程の前に検査工程を行う場合、当該検査工程はドライルームにて行われる。そして、この場合、検査工程において、短絡無しと判断された合格品と短絡有りと判断された不合格品との仕分けが行われ、合格品のみがパッケージィング工程に供給される。従って、不合格品を早期に製造工程から排除できる利点が生じ生産性が向上する。特に、正極、電解質層、負極から成る電池素子が複数枚積層された構造を有する二次電池の場合は、電池素子の検査工程を行った後に、積層およびパッケージィング工程を行って二次電池を形成するのが好ましい。
【0061】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。使用した原料は、予め次の様な前処理を施した。すなわち、粉体は240℃で24時間真空乾燥し、樹脂およびリチウム塩は110℃で4時間乾燥し、モノマーはモレキュラーシーブにて脱水処理した。また、電解液としてはリチウム電池用に予め脱水された電解液を使用した。なお、以下の諸例中、「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0062】
実施例1
<電極用塗料の調製>
以下に示す組成に従って8時間ボールミルで混練・分散処理し、正極用塗料と負極用塗料を調製した。
【0063】
【表1】
(正極用塗料組成)
LiCoO2(活物質) : 90.0部
アセチレンブラック(導電材) : 5.0部
ポリフッ化ビニリデン(バインダー): 5.0部
Nメチルピロリドン(溶剤) :100.0部
【0064】
【表2】
(負極用塗料組成)
グラファイト(活物質) : 90.0部
ポリフッ化ビニリデン(バインダー): 10.0部
Nメチルピロリドン(溶剤) :150.0部
【0065】
<電解液の調製>
電解液の調製に使用した原料は次の通りである。そして、以下に示す組成に従って110℃で溶解し、均一な電解液を調製した。
【0066】
【表3】
(電解液組成)
プロピレンカーボネート(PC)(電解液) :40.8部
エチレンカーボネート(EC)(電解液) :40.8部
LiClO4(支持電解質) :10.4部
ポリアクリロニトリル(分子量150、000) : 8.0部
【0067】
<電極形成工程および電解質層形成工程>
先ず、ドクターブレードにより、厚さ20μmのアルミ箔上に膜厚が100μmになる様に正極用塗料を塗布して乾燥し、空隙を有する正極活物質層が形成されたシートを得た。その後、カレンダー処理し、最終的な層厚を約80μmとした。上記と同様に、厚さ20μmの銅箔上に膜厚が100μmになる様に負極用塗料を塗布して乾燥し、空隙を有する負極活物質層を形成されたシートを得た。その後、カレンダー処理し、最終的な層厚を約70μmとした。ここまでの工程は、全て通常の環境下で行った。その後、塗膜の再乾燥を120℃で行った後、所定の形状に打ち抜いた。
【0068】
次いで、ドクターブレードにより、上記の各シート上に90℃に加温した電解液を塗布して含浸させた。その際、通常より大きくブレードギャップを設定することにより、空隙が充填される分量より過剰な量を塗布し、表面に電解液を存在させた。その後、0℃に冷却し、含浸させた電解液および表面に存在する電解液をゲル化し、活物質層内の空隙と電解質層に連続したゲル状電解質を形成し、正極および負極を得た。
【0069】
<検査工程>
次いで、電解質層側を内側にして正極および負極を積層し、正極、電解質層、負極から成る電池素子となし、当該電池素子の短絡の有無の検査を次の要領で行った。すなわち、図1(a)及び(b)に示す様に、正極および負極に正極端子(4)及び負極端子(5)を夫々接続し、図2に示す短絡検査装置(30)のインピーダンスアナライザー(20)にセットし、初回充電前の電極間に交流信号(周波数:1Hz、振幅電圧:10mV)を印加してインピーダンスを測定し、図4に示す短絡判定手法に従い、短絡無しの合格品と短絡有りの不合格品とに仕分けした。
【0070】
<パッケージィング工程>
次いで、上記の合格品の電池素子3個を同極同士が重なる様に積層し、各正極端子および各負極端子にそれぞれ集合正極端子および集合負極端子を取り付けた後、蓋付真空パックに封入し、積層型リチウム二次電池を作成した(図7参照)。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、電池として機能する電池素子に対して適用でき、簡単で検査の作業能率が高く、しかも、信頼性が高い、二次電池の短絡検査方法が提供される。その結果、本発明によれば、特に、(1)ゲル状電解質や固体電解質を使用した二次電池、(2)正極および負極とそれらをイオン的に結合する電解質とを備えた電池素子が積層された構造を有する二次電池に対し、検査の効率が高められ、生産性および収率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の短絡検査方法が適用される電池素子の一例の側面説明図、(b)は(a)に示す電池素子の上面説明図である。
【図2】短絡検査装置の一例の模式的説明図
【図3】インピーダンスの複素数平面に表した正常電池および短絡電池の測定例の説明図
【図4】複素数平面に表したインピーダンスの測定結果より短絡を判定する手法の一例の説明図
【図5】複素数平面に表したインピーダンスの測定結果より短絡を判定する手法の他の一例の説明図
【図6】複素数平面に表したインピーダンスの測定結果より短絡を判定する手法の更に他の一例の説明図
【図7】(a)は本発明の製造方法で得られた積層型二次電池の一例の一部断面側面説明図、(b)は(a)に示す積層型二次電池の一例(ケース蓋を開放した状態)の平面説明図である。
【符号の説明】
1:正極
2:負極
3:電解質層
4:正極端子
5:負極端子
6、7:端子押さえ
8、9、10、11:測定端子
12、13、14、15:リード線
16、17、18、19:装置側端子
20:インピーダンスアナライザー
30:短絡検査装置
40:集合正極端子
50:集合負極端子
60:ケース
61:ケース蓋

Claims (8)

  1. 正極および負極とそれらをイオン的に結合する電解質とを備えた二次電池の電極間の短絡を検査する方法であって、初回充電前の二次電池の電極間に交流信号を印加してそのインピーダンスを測定し、複素数平面に表したインピーダンスの測定結果が、低周波側において直線的になるインピーダンス軌跡になる場合に、正常電池であると判定し、低周波側で円弧を描く傾向があり、低周波側にいくほど、正常な電池固有のインピーダンス軌跡との乖離が顕著になる場合に、電極間が短絡していると判定することを特徴とする二次電池の短絡検査方法。
  2. 測定される交流信号の周波数が100Hz〜0.1mHzの範囲内で単一であり、測定されたインピーダンスの複素数平面上における測定点の位置が領域A1の中にあることをもってして、あるいは、境界線Lを短絡の判定基準とし、その境界線Lを超えていることによって、電池に短絡が生じてないと判定し、領域A1の中にないことをもってして、あるいは、境界線Lを超えていないことによって短絡が生じていると判定する請求項1に記載の検査方法。
    ただし、領域A1又は境界線Lの場所は周波数によって変化し得るため、検査周波数によって正常とされる領域または値を設定する。
  3. 被測定電池に対し、交流信号の周波数の2点においてインピーダンスを測定し、それらの測定値を結んだ直線の傾きが、設定された正常電池の同一の2点におけるインピーダンスの値を結んだ直線の傾きを中心とし且つ測定誤差を許容した範囲の値の範囲にある場合は短絡が生じていないと判定し、範囲にない場合は短絡が生じていると判定する請求項1に記載の検査方法。
  4. 測定される交流信号の周波数が3点以上であり、インピーダンス複素数平面上における3点以上の測定点を円弧で近似させた場合、近似不可能か、または、要求される検査精度によって基準値を設定し、近似円弧の半径が基準値以上の場合は短絡が生じていないと判定し、近似円弧の半径が基準値より小さい場合は短絡が生じていると判定する請求項1に記載の検査方法。
  5. 測定される交流信号の周波数の少なくとも一点が10Hz以下である請求項1〜4の何れかに記載の検査方法。
  6. 前記電池がゲル状電解質または固体電解質を使用したリチウム二次電池である請求項1〜5の何れかに記載の検査方法。
  7. 前記電池が正極、電解質層、負極を平板的に積層した構造を持つ請求項1〜6の何れかに記載の検査方法。
  8. 正極および負極を形成する電極形成工程、当該工程で得られた電極間に電解質層を形成する電解質層形成工程、当該工程で得られた電池素子をケースに収納するパッケージィング工程とから主として構成される二次電池の製造方法であって、前記の電解質層形成工程以降において、初回充電前の二次電池の電極間に請求項1〜7の何れかに記載の検査方法により短絡検査を行う検査工程を設けたことを特徴とする二次電池の製造方法。
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