前述した色合わせ調整では、基準画像、補正画像、及びそれらが形成される転写媒体表面からの反射光を光学センサで検出しているが、画像が形成されている部分と画像が形成されていない状態の転写媒体表面とからの反射光の強さの差が小さいために、濃度の検出値の極大又は極小を誤って検出する場合があり、誤った検出結果に基づいて色合わせ調整を行い、逆に画質を低下させたり、色合わせ調整の実施中にエラーが発生し、色合わせ調整が正常に実行できなくなるという問題点が生じていた。
そこで、本願出願人は、転写媒体表面で反射される反射光のうち正反射光と乱反射光とをそれぞれ光学センサにて検出し、検出された正反射光の強度から乱反射光の強度を差し引くことにより、色合わせ調整用の画像の検出精度を高める手法を提案している(例えば、特許文献3参照)。
図8は従来の検出手法を説明する説明図である。色合わせ調整を実行する場合には、図8(a)に示すように、転写媒体310に対して複数の調整用画像(パッチ画像)を転写すると共に、照射部301、乱反射光検出部302、及び正反射光検出部303を備える光学センサ300にて転写媒体310からの乱反射光及び正反射光を所定のサンプリングレートで検出する。乱反射光検出部302及び正反射光検出部303の検出部位(転写媒体310上の点P)が同一である場合、乱反射光検出部302にて強い乱反射光を検出したとき正反射光検出部303では弱い正反射光が検出され、逆に、正反射光検出部303にて強い正反射光を検出したとき乱反射光検出部302では弱い乱反射光が検出される。したがって、正反射光の強度から乱反射光の強度を差し引くことにより、検出値の振幅を増大させることができ、調整用画像の検出精度を高めることができるとしている。
しかしながら、特許文献3に記載されている手法では、所定のサンプリングレートで検出した正反射光の強度と乱反射光の強度との差分を算出しなければならず、計算量が膨大になり、CPUに負担がかかるという問題点を有している。
また、図8(b)に示したように、何らかの理由により転写媒体310に対して光学センサ300が傾いた状態で設置されている場合、正反射光検出部303による検出部位(転写媒体310上の点P1)と乱反射光検出部302による検出部位(転写媒体310上の点P2)とが異なることとなり、両検出部の出力に位相差が生じる。したがって、この状態で正反射光の強度と乱反射光の強度との差分を算出した場合、検出部位の違いに起因した位相差の影響を受け、検出精度が低下するという問題点を有していた。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、正反射光を検出したときの出力と乱反射光により補正した補正出力との位相差を算出し、算出した位相差を補正した第1検出手段の出力に基づいて色成分画像の転写位置を調整する構成とすることにより、計算量を増大させることなく、色成分画像の転写位置を精度良く調整することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明に係る画像形成装置は、複数の色成分画像の夫々を所定の方向に搬送される転写媒体に順次的に重ねて転写することにより画像形成を行う画像形成装置において、色成分画像を転写した転写媒体に対して光を照射する手段と、該手段にて光を照射した際に前記転写媒体又は色成分画像にて反射される光のうち正反射光及び乱反射光を夫々検出する第1及び第2検出手段と、前記色成分画像の転写位置の調整に先立ち、前記第1及び第2検出手段の差分出力を算出する手段と、前記第1検出手段により検出される前記色成分画像の検出時刻と前記差分出力により検出される前記色成分画像の検出時刻との差分を補正時間として算出する手段と、算出した補正時間を記憶する記憶手段とを備え、色成分画像の転写位置の調整を行う場合、前記第1検出手段が色成分画像を検出する時刻を前記記憶手段に記憶してある補正時間で補正することにより前記転写位置を調整するようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、前記第1及び第2検出手段と転写媒体との配置関係に起因した位相差(検出時刻の時間差)が補正され、色成分画像の転写位置が高精度に調整される。また、位相差を記憶しておき、以降の色合わせ調整ではこの位相差に基づいて検出出力の補正が可能となるため、計算量が大幅に減少する。
本発明にあっては、正反射光及び乱反射光の強度の時間変化を計測するようにしてあり、正反射光及び補正出力の強度の時間変化に基づいて位相差を算出する。したがって、各強度について閾値を設定しておき、各強度が閾値以上となる検出時間の中央値を求め、2つの中央値の差分をとることで位相差が求まる。また、各強度の極大値又は極小値を検出し、極大値又は極小値の時間のずれから位相差が求まる。
本発明にあっては、正反射光及び乱反射光が生じる転写媒体上の部位が異なることに起因した位相差が補正されるため、第1及び第2検出手段が転写媒体に対して理想的な状態で設置されていない場合であっても、高精度な色合わせ調整が可能となる。
本発明に係る画像形成装置は、前記色成分画像を転写媒体に転写する転写手段の有無を検出する手段と、該手段の検出結果に基づいて前記転写手段が装着されたか否かを判断する手段と、前記転写手段が装着されたと判断した場合、前記記憶手段に記憶させるべき補正時間を再度算出する手段とを備え、該手段により算出した補正時間を前記記憶手段に記憶させるようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、第1及び第2検出手段と転写媒体との配置関係が変化する虞がある場合にのみ、位相差が算出される。
本発明に係る画像形成装置は、前記第1及び第2検出手段の有無を検出する手段と、該手段の検出手段に基づいて前記第1及び第2検出手段が装着されたか否かを判断する手段と、前記第1及び第2検出手段が装着されたと判断した場合、前記記憶手段に記憶させるべき補正時間を再度算出する手段とを備え、該手段により算出した補正時間を前記記憶手段に記憶させるようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、第1及び第2検出手段と転写媒体との配置関係が変化する虞がある場合にのみ、位相差が算出される。
本発明に係る画像形成装置は、前記転写媒体に転写する色成分画像は有彩色の色成分画像を含み、該色成分画像について前記補正時間を算出するようにしてあることを特徴とする。
本発明にあっては、有彩色の色成分画像を用いて位相差の算出を行うため、乱反射が生じない無彩色の色成分画像については位相差の算出処理を省略することができる。
本発明に係る画像形成装置は、前記転写媒体に転写する色成分画像は複数の有彩色の色成分画像を含み、該色成分画像の夫々について前記補正時間を算出するようにしてあり、算出した補正時間の平均値を算出する手段を備えることを特徴とする。
本発明にあっては、複数の有彩色の色成分画像の夫々を用いて位相差を算出し、算出した位相差の平均値を算出するようにしている。第1及び第2検出手段の波長毎の感度特性による乱反射光の出力値の大小や不測の事態による算出される位相差が各色成分毎に変動する場合があるため、本発明ではそれらの変動の影響が低減される。
本発明による場合は、正反射光を検出したときの第1検出手段の出力と乱反射光により補正した補正出力との位相差を算出し、算出した位相差により第1検出手段の出力を補正し、補正した出力に基づいて色成分画像の転写位置を調整するようにしている。したがって、前記第1及び第2検出手段と転写媒体との配置関係に起因した位相差を補正することができ、色成分画像の転写位置を高精度に調整することが可能となる。また、位相差を記憶しておき、以降の色合わせ調整ではこの位相差に基づいて検出出力の補正を実行することができ、計算量を大幅に減らすことができる。
本発明による場合は、正反射光及び乱反射光の強度の時間変化を計測するようにしてあり、正反射光及び補正出力の強度の時間変化に基づいて位相差を算出する。したがって、各強度について閾値を設定しておき、各強度が閾値以上となる検出時間の中央値を求め、2つの中央値の差分をとることで位相差を求めることができる。また、各強度の極大値又は極小値を検出し、極大値又は極小値の時間のずれから位相差を求めることができる。いずれの場合も、色合わせ調整を行う度に検出出力の差分をとる必要がなくなり、大幅に計算量を減らすことができる。
本発明による場合は、正反射光及び乱反射光が生じる転写媒体上の部位が異なることに起因した位相差が補正されるため、第1及び第2検出手段が転写媒体に対して理想的な状態で設置されていない場合であっても、高精度な色合わせ調整が可能となる。
本発明にあっては、第1及び第2検出手段と転写媒体との配置関係が変化する虞がある場合にのみ位相差を算出する。したがって、検出手段を交換した場合、又は転写手段を交換した場合に位相差の算出処理を行って記憶しておき、以降の色合わせ調整には記憶されている位相差で補正することにより、高精度な色合わせ調整が可能となる。
本発明にあっては、有彩色の色成分画像を用いて位相差の算出を行うため、乱反射が生じない無彩色の色成分画像については位相差の算出処理を省略することができる。
本発明にあっては、複数の有彩色の色成分画像の夫々を用いて位相差を算出し、算出した位相差の平均値を算出するようにしている。第1及び第2検出手段の波長毎の感度特性による乱反射光の出力値の大小や不測の事態による算出される位相差が各色成分毎に変動する場合があるため、本発明ではそれらの変動の影響を低減することができる。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は本発明に係る画像形成装置の全体構成を示す断面図である。本発明に係る画像形成装置は、具体的にはデジタルカラープリンタ、デジタルカラー複写機、又はそれらの複合機である。画像形成装置は、画像形成ステーション100及び転写ユニット7を備えている。
画像形成装置の画像形成ステーション100は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各色を用いて多色画像を形成するために、各色に応じた4種類の潜像を形成する露光器1a,1b,1c,1d、各色の潜像を現像する現像器2a,2b,2c,2d、感光体ドラム3a,3b,3c,3d、クリーナ4a,4b,4c,4d、帯電器5a,5b,5c,5dを備えている。なお、各符号に付したa、b、c、dの記号は、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各色に対応するように記載している。以下では、特定の色に対応する部材を指定して説明する場合を除いて、各色に対して設けられている部材をまとめて、露光ユニット1、現像ユニット2、感光体ドラムユニット3、クリーナユニット4、帯電ユニット5と記載する。
露光ユニット1は、EL(Electro Luminescence)、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子をアレイ状に並べた書込みヘッド又はレーザ照射部、及び反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)である。図1に示した画像形成装置ではLSUを用いている。露光ユニット1は、入力される画像データに応じて露光することにより、感光体ドラムユニット3に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像ユニット2は、感光体ドラムユニット3に形成された静電潜像を各色のトナーによって顕像化する。感光体ドラムユニット3は、画像形成装置の中心部に配置され、そのドラム表面に入力画像に応じた静電潜像及びトナー像を形成する。クリーナユニット4は、感光体ドラムユニット3に残留したトナーを除去し、回収する。帯電ユニット5は、各感光体ドラム3a〜3dの表面を所定の電位に均一に帯電させる。帯電ユニット5は、ドラム表面に接触するローラ型やブラシ型の他に、ドラム表面に接触しないチャージャー型等が用いられる。図1に示した画像形成装置ではチャージャー型帯電器を用いている。
感光体ドラムユニット3の下方には転写ユニット7が配置される。転写ユニット7は、転写ベルト70、転写ベルト駆動ローラ71、転写ベルトテンションローラ73、転写ベルト従動ローラ72,74、転写ローラ6a,6b,6c,6d、及び転写ベルトクリーニングユニット9を備える。
転写ベルト駆動ローラ71、転写ベルトテンションローラ73、転写ローラ6a〜6d、転写ベルト従動ローラ72,74等は、転写ベルト70を張架し、転写ベルト70を図1に示した白抜矢符の方向に回転駆動させるものである。転写ローラ6a〜6dは、転写ユニット7のハウジングに回転可能に支持されており、直径8〜10mmの金属軸をベースとし、その表面は、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)、発泡ウレタン等の導電性の弾性材によって覆われている。転写ローラ6a〜6dは、この導電性の弾性材により、記録用紙に対して、トナーの帯電極性とは逆極性の高電圧を均一に印加することができ、感光体ドラムユニット3に形成されたトナー像を転写ベルト70又は転写ベルト70上に吸着されて搬送される記録用紙に転写する。転写ベルト70は、厚さ100μm程度のポリカーボネイト、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン重合体、エチレンテトラルフルオロエチレン重合体等で形成され、各感光体ドラム3a〜3dの表面に接触するように設けられている。この転写ベルト70上又は転写ベルト70上に吸着されて搬送される記録用紙上に、感光体ドラムユニット3にて形成された各色のトナー像を順次転写することにより多色トナー像を形成する。転写ベルト70は、厚さが100μm程度で、フィルムを用いて無端状に形成されている。転写ベルトクリーニングユニット9は、転写ベルト70に直接転写させたトナー像、感光体ドラムユニット3との接触によって付着したトナーを除去し、回収する。
画像形成装置は、前述した画像形成ステーション100及び転写ユニット7に記録用紙を供給するための給紙トレイ10、記録用紙上に転写された多色トナー像を定着させる定着ユニット12、記録済みの記録用紙を載置する排紙トレイ15,33等を備えている。
給紙トレイ10は、記録用紙を蓄積するトレイである。排紙トレイ15,33は、画像が記録された記録用紙を載置するトレイである。排紙トレイ15は、画像形成装置の上部に設けられ、印刷済みの記録用紙をフェイスダウンで載置する。排紙トレイ33は、画像形成装置の側部に設けられ、印刷済みの記録用紙をフェイスアップで載置する。定着ユニット12は、ヒートローラ31、加圧ローラ32を有している。ヒートローラ31は、温度検出器(不図示)の温度検出値に基づいて、ヒータランプ等の加熱手段をオン・オフすることにより所定の温度となるように制御される。ヒートローラ31及び加圧ローラ32は、トナー像が転写された記録用紙を挟んで回転させ、ヒートローラ31の熱により記録用紙にトナー像を熱圧着させる。
以上の構成を有する画像形成装置の動作について説明する。画像形成装置に画像データが入力された場合、入力された画像データに応じて露光ユニット1が露光し、感光体ドラムユニット3に静電潜像を形成する。この静電潜像は、現像ユニット2によって現像され、各色成分のトナー像が生成される。一方、給紙トレイ10に蓄積された記録用紙は、ピックアップローラ16によって、一枚ずつに分離され、用紙搬送路11に搬送され、レジストローラ14にて一旦保持される。レジストローラ14は、図示しないレジスト前検知スイッチの検知信号に基づいて、感光体ドラム3a〜3d上のトナー像の先端を、記録用紙の画像形成領域の先端に合わせるようなタイミングに制御し、記録用紙を感光体ドラム3a〜3dの回転にあわせて転写ベルト70へ搬送する。記録用紙は、転写ベルト70上に吸着されて搬送される。
感光体ドラムユニット3から記録用紙へのトナー像の転写は、転写ベルト70を介して感光体ドラムユニット3に対向して設けられている転写ローラ6a〜6dによって行われる。転写ローラ6a〜6dには、トナーとは逆極性を有する高電圧が印加されており、これによって、記録用紙にトナー像が転写される。転写ベルト70は、転写ベルト駆動ローラ71、転写ベルトテンションローラ73、転写ベルト従動ローラ72,74、転写ローラ6によって回転駆動しているので、転写ベルト70上に吸着されて搬送される記録用紙には各色成分のトナー像が順次重ねて転写され、多色トナー像が形成される。
その後、記録用紙は定着ユニット12に搬送され、熱圧着により記録用紙上にトナー像が定着される。搬送切換えガイド34は搬送路の切換えを行い、トナー像を定着させた記録用紙を排紙トレイ33又は用紙搬送路35へ搬送する。用紙搬送路35へ搬送された記録用紙は、搬送ローラ36,38により用紙搬送路37に沿って搬送され、排紙ローラ39により排紙トレイ15へ排出される。
また、記録用紙への転写が終了した場合、感光体ドラムユニット3の残留トナーは、クリーナユニット4によって除去され、回収される。また、転写ベルトクリーニングユニット9は、転写ベルト70に付着したトナーの除去および回収を行って、一連の画像形成動作を終了する。
なお、本実施の形態では、転写ベルト70上に記録用紙を担持し、感光体ドラムユニット3に形成されたトナー像を記録用紙上で重ね合わせる直接転写方式を採用しているが、転写ベルト70上に各感光体ドラムユニット3に形成されたトナー像を重ねて転写し、その後記録用紙に一括して再度転写して多色画像を形成する中間転写方式の画像形成装置にも適用可能であり同様な効果が得られることは言うまでもない。
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置は、各露光器1a〜1dを駆動するタイミング、すなわち、感光体ドラム3a〜3dのそれぞれに静電潜像を書き込むタイミングを制御することにより、転写ベルト70上に各色成分のトナー像を重ね合わせた多色トナー像を形成するようにしている。したがって、静電潜像を書き込むタイミングが適切でない場合、各色成分のトナー像の転写位置にずれが生じることとなり、色ずれの原因となる。
そこで、本実施の形態では、各色成分のトナー像の転写位置を検出するレジストレーション検出センサ21を設置し、このレジストレーション検出センサ21の検出結果に基づいて各感光体ドラム3a,3b,3c,3dに静電潜像を書き込むタイミングを調整するようにしている。
図2はレジストレーション検出センサ21の構成を説明する模式図である。レジストレーション検出センサ21は、転写ベルト70上に転写された色合わせ調整用の画像(以下、パッチ画像という)を検出するため、転写ベルト70が画像形成ステーション100を通過し終えた位置であって、かつ、転写ベルトクリーニングユニット9に至る前の位置に設けられている。レジストレーション検出センサ21は、直方体状のハウジング210を備えており、このハウジング210の内部に発光部21a、乱反射光を検出する検出部21b、正反射光を検出する検出部21cが配置されている。発光部21aは、例えば、LED(Light Emitting Diode)であり、検出部21b,21cは、例えば、PD(Photo Diode)である。本実施の形態では、発光部21aと検出部21b,21cとが転写ベルト70の移動方向に沿って配置されている。発光部21aから転写ベルト70に光を照射した場合、転写ベルト70又は転写ベルト70上のパッチ画像によって生じた乱反射光及び正反射光はそれぞれ検出部21b,21cによって同時的に検出される。
なお、レジストレーション検出センサ21のハウジング210は、画像形成装置内部に固定された台座200に着脱可能に取り付けられている。そのため、経時変化によりセンサ出力が低下した場合、又はセンサに故障が生じた場合、ハウジング210ごと交換できるように構成されている。台座200にはマイクロスイッチ205が設置されており(図4参照)、レジストレーション検出センサ21の装着の有無を検出できるようにしている。
図3はレジストレーション検出センサ21の出力例を示すグラフである。図3(a)に示したグラフは、画像形成ステーション100にて長方形のパッチ画像を複数生成し、順次的に転写ベルト70に転写した場合の検出部21b,21cの出力を示している。グラフの横軸は、検出開始からの経過時間、縦軸は、検出部21b,21cの出力(例えば、電圧値)を表している。すなわち、図3に示したグラフからは、転写ベルト70に転写したパッチ画像が所定の検出地点を通過したタイミングの情報を取得することができる。
正反射光を検出する場合、転写ベルト70の表面、黒(K)トナーの画像、有彩色(C,M,Y)トナーの画像のそれぞれにより、正反射光の強さ(光量)が異なる。黒トナーの画像と有彩色トナーの画像とは反射光の強さに大きな差があり、黒トナーの画像の方が弱い。一方、画像が形成されていない状態の転写ベルトの表面からの正反射光の強さは、有彩色トナーの画像とほぼ等しく、黒トナーの画像よりも強い。これらの性質を利用することにより、転写ベルト70に転写したパッチ画像が所定の検出地点を通過したタイミングの情報を取得することができる。
また、乱反射光(拡散反射光)を検出する場合は、有彩色トナーの画像と転写ベルト70表面との強度の差を得ることができると共に、乱反射光の特性は、正反射光の特性とは逆の特性になる。例えば、正反射光の検出値が極大の場合、乱反射光の検出値は極小となる。従来では、各パッチ画像の検出精度を高めるために、検出部21cの検出出力に含まれる乱反射光成分の影響を取り除くことを行っていた。すなわち、正反射光を検出する検出部21cの検出出力をV1、乱反射光を検出する検出部21bの検出出力をV2とした場合、検出出力V1から検出出力V2を差し引いた補正出力V3(図3(b)参照)に基づいて各パッチ画像の転写位置を検出するようにしていた。
しかしながら、レジストレーション検出センサ21が転写ベルト70に対して理想的な状態で設置されていない場合、検出部21cにて検出される正反射光の検出地点と検出部21bにて検出される乱反射光の検出地点との間に差が生じる虞がある。このとき、図3(a)に示したように、正反射光の検出出力V1が極大(又は極小)を示す時間と、乱反射光の検出出力V2が極小(又は極大)を示す時間との間に差(位相差)が生じる。本実施の形態では、この時間差(位相差)に基づく誤差を軽減するために、検出出力V1と補正出力V3との位相差を補正時間ΔTとして事前に求めておき、以降、パッチ画像を用いた色ずれ調整を行う際に検出部21cの出力を補正時間ΔTで補正する。
具体的には、検出出力V1に対する閾値TH1を設定しておき、まず、検出出力V1が閾値TH1と一致する時間Ta及びTbを求め、時間Ta,Tbの中央値T1を算出する。算出した中央値T1は、パッチ画像の転写位置を示す指標となる。例えば、図3(a)に示したように、算出した中央値T1にて検出出力V1が極大値近傍をとる場合、算出した中央値T1は隣り合う2つのパッチ画像の中央が検出部21cの検出地点を通過するタイミングに相当する。逆に、算出した中央値T1にて検出出力V1が極小値近傍をとる場合、中央値T1はパッチ画像が検出部21cの検出地点を通過するタイミングに相当する。
同様に、検出出力V1から検出出力V2を差し引いて得られる補正出力V3に対して閾値TH3を設定しておき、補正出力V3と閾値TH3とが一致する時間Tc及びTdを求める。そして、時間Tc及びTdの中央値T3を算出する。このとき、正反射光の検出出力V1と補正出力V3との間の位相差は、T1−T3(=ΔT)により求めることができ、この値を検出出力V1に対する補正時間ΔTとして記憶する。
以下、レジストレーション検出センサ21の出力を用いて露光タイミングを調整する際の画像形成装置の動作について説明する。図4は画像形成装置の制御系の構成を説明するブロック図である。画像形成ステーション100の制御を行う制御部50にはCPU51が搭載されており、このCPU51にはROM52、RAM53、時計部54、A/D変換器55,56,57が接続されている。CPU51は、ROM52に予め格納された制御プログラムをRAM53上にロードして実行することにより、前述したような各種ハードウェアを制御し、本発明に係る画像形成装置として動作させる。ROM52には、このような制御プログラムの他、パッチ画像を生成するための画像データ、前述した検出出力V1,補正出力V3に対する閾値TH1,TH3等が予め記憶されている。
A/D変換器55にはレジストレーション検出センサ21が接続されており、レジストレーション検出センサ21の検出部21b,21cの出力を所定のサンプリングレート(例えば、2msec)で取得する。A/D変換器56にはマイクロスイッチ205が接続されており、レジストレーション検出センサ21が台座200に取り付けられているか否かを示す信号を取得する。マイクロスイッチ205は、例えば、レジストレーション検出センサ21が台座200に装着されている場合にオフ信号を出力し、装着されていない場合にオン信号を出力する。A/D変換器57には転写ユニット検出スイッチ7aが接続されており、転写ユニット7が設置されているか否かを示す信号を取得する。転写ユニット検出スイッチ7aは、例えば、転写ユニット7に当接するように設けられた押圧式のスイッチであり、転写ユニット7が装置内部の所定箇所に設置されている場合にオフ信号を出力し、取り外されている場合にはオン信号を出力する。
図5は検出部21cの出力に対する補正値を算出する際の制御部50による処理手順を説明するフローチャートである。制御部50のCPU51は、まず、一の色成分を設定する(ステップS11)。ここで、黒色のパッチ画像による乱反射はほとんど観測されないため、有彩色(C,M,Y)の何れかを設定する。
CPU51は、画像形成ステーション100を制御し、設定した色成分によるパッチ画像を転写ベルト70上に形成する(ステップS12)。具体的には、パッチ画像に係る画像データをROM52から読み出し、読み出した画像データに基づいて露光器1b(又は、露光器1c,1d)を制御し、感光体ドラム3b(又は、感光体ドラム3c,3d)上に静電潜像を生成する。そして、現像器2b(又は現像器2c,2d)によりトナーを供給することによって静電潜像を現像し、設定された色成分のパッチ画像を生成する。生成されたパッチ画像は、転写ローラ6b(又は転写ローラ6c,6d)の作用を受け、順次的に転写ベルト70上に転写される。
検出部21cの出力に対する補正値の算出を行う場合、レジストレーション検出センサ21は、所定のサンプリングレートにて転写ベルト70又は転写ベルト70上のパッチ画像からの反射光を検出する。すなわち、制御部50は、A/D変換器55を通じて正反射光の検出出力V1、及び乱反射光の検出出力V2を取得する(ステップS13)。次いで、CPU51は、検出出力V1に対する閾値TH1を用いてパッチ画像の通過タイミングT1を算出する(ステップS14)。例えば、通過タイミングT1は、検出出力V1と閾値TH1との差(V1−TH1)がプラスからマイナスへと転じる時間と、その次にマイナスからプラスへと転じる時間との中央値として算出することができる。
なお、ステップS14で算出する値は必ずしもパッチ画像の通過タイミングである必要はなく、図3(a)に示すように、隣り合う2つのパッチ画像の中央位置が検出部21cの検出地点を通過するタイミングであってもよい。
次いで、CPU51は、検出出力V1と検出出力V2との差を算出することにより、補正出力V3を算出し(ステップS15)、補正出力V3に対する閾値TH3を用いてパッチ画像の通過タイミングT3を算出する(ステップS16)。すなわち、通過タイミングT3は、補正出力V3と閾値TH3との差(V3−TH3)がプラスからマイナスへと転じる時間と、その次にマイナスからプラスへと転じる時間との中央値として算出することができる。なお、ステップS14において、パッチ画像の通過タイミングではなく、2つのパッチ画像の中央位置の通過タイミングを検出するようにしている場合には、補正出力V3と閾値TH3との差(V3−TH3)がマイナスからプラスへと転じる時間と、その次にプラスからマイナスへと転じる時間との中央値として算出することができる。
次いで、CPU51は、ステップS14で算出したパッチ画像の通過タイミングT1とステップS16で算出したパッチ画像の通過タイミングT3との差(T1−T3)を算出することにより補正時間ΔTを算出する(ステップS17)。算出した補正時間ΔTはRAM53に記憶される。
次いで、CPU51は、他の色成分について補正の必要があるか否かを判断する(ステップS18)。補正時間ΔTの算出が完了していない黒色(K)以外の色成分が存在する場合、他の色成分について補正の必要があると判断し(S18:YES)、CPU51は、補正が完了していない他の色成分を設定し(ステップS19)、処理をステップS12へ戻す。
他の色成分について補正の必要がないと判断した場合(S18:NO)、CPU51は、黒色(K)を除く各色成分について算出した補正時間ΔTの平均値ΔTaveを算出する(ステップS20)。そして、CPU51は算出した平均値ΔTaveをRAM53に記憶させる(ステップS21)。記憶させた平均値ΔTaveは後述する色合わせ調整時に検出部21cに対する補正値として利用される。
本実施の形態では、黒色を除く各色成分(C,M,Y)について補正時間ΔTを算出し、それらの平均値ΔTaveを求める構成としたが、検出出力V1と補正出力V3との位相差はレジストレーション検出センサ21の取り付け時の傾きに起因するため、例えば、シアンの色成分について補正時間ΔTを算出しておき、その補正時間ΔTをマゼンタ及びイエロの色ずれ調整の際に用いる構成としてもよい。また、位相差については経時変化がほとんど見られないため、画像形成装置の製造時又は出荷時等の時点において前述した処理を行い、得られた補正値(ΔTave)を事前に記憶させておけばよい。
次に、前述した手法により算出した補正値を用いて色ずれ調整を行う場合の動作について説明する。図6は色ずれ調整時に制御部50が実行する処理の手順を示すフローチャートである。制御部50のCPU51は、画像形成ステーション100を制御することによりパッチ画像を形成する(ステップS31)。次いで、CPU51は、A/D変換器55を通じて入力されるレジストレーション検出センサ21からの出力に基づいてパッチ画像の通過タイミングTを検出する(ステップS32)。パッチ画像の通過タイミングTは、前述と同様にして検出することができる。すなわち、検出部21cの検出出力に対して閾値を設定しておき(以下、検出部21cの検出出力をV、閾値をTHとする)、検出出力Vと閾値THとの差(V−TH)がプラスからマイナスへと転じる時間、及び検出出力Vと閾値THとの差(V−TH)がマイナスからプラスへ転じる時間の中央値としてパッチ画像の通過タイミングTを検出することができる。
次いで、検出値、すなわち通過タイミングTを前述したフローチャートにより算出される平均値ΔTaveにより補正し、補正後の通過タイミングを得る。補正後の通過タイミングはT−ΔTaveにより求められる(ステップS33)。次に補正後の通過タイミングと基準通過タイミングとの差を算出する(ステップS34)。ここで、基準通過タイミングは、例えば、感光体ドラム3a〜3dに静電潜像を生成してから、転写ベルト70上に転写されたトナー像がレジストレーション検出センサ21による検出地点を通過するまでの時間の理論値又は設定値を意味している。この基準通過タイミングは、例えば、予めROM52に記憶されている。
そして、CPU51は、ステップS34の算出結果を用いて画像形成位置の補正を行う(ステップS35)。具体的には、各露光器1a〜1dの露光タイミングをΔTaveだけ調整することによって画像形成位置の補正を行う。
実施の形態2.
実施の形態1では、画像形成装置の製造時又は出荷時等の時点においてレジストレーション検出センサ21の傾きに起因した位相差を算出する構成としたが、例えば、転写ユニット7が交換された場合、又はレジストレーション検出センサ21が交換された場合、再度位相差を算出する構成としてもよい。
図7は検出部21cの出力に対する補正値を算出する際の制御部50による処理手順を説明するフローチャートである。制御部50のCPU51は、まず、A/D変換器57を通じて入力される信号を監視することにより、転写ユニット7の交換が検出されたか否かを判断する(ステップS41)。A/D変換器57には転写ユニット検出スイッチ7aが接続されており、転写ユニット7が装置内部の所定箇所に設置されている場合にはオフ信号が入力され、取り外されている場合にはオン信号が入力される。したがって、A/D変換器57を通じてオン信号からオフ信号の変化をCPU51が検出した場合、転写ユニット7の交換を検出したと判断し(S41:YES)、図5に示したフローチャートに従って再度の補正を実行する(ステップS43)。
また、転写ユニット7の交換が検出されていないと判断した場合(S41:NO)、CPU51は、A/D変換器56を通じて入力される信号を監視することにより、レジストレーション検出センサ21の交換を検出したか否かを判断する(ステップS42)。A/D変換器56にはマイクロスイッチ205が接続されており、レジストレーション検出センサが21が台座200に取り付けられている場合にはオフ信号、取り外されている場合にはオン信号が入力される。したがって、A/D変換器56を通じてオン信号からオフ信号の変化をCPU51が検出した場合、レジストレーション検出センサ21の交換を検出したと判断し(S42:YES)、図5に示したフローチャートに従って再度の補正を実行する(S43)。また、レジストレーション検出センサ21の交換を検出していないと判断した場合(S42:NO)、本フローチャートによる処理を終了する。
このように本実施の形態では、転写ユニット7に対するレジストレーション検出センサ21の傾きが変化するような場合にのみ、正反射出力と補正出力との位相の違いを再度算出し直すことができる。