JP4386808B2 - 融雪装置及び融雪方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築物の屋根上の雪を融雪するための融雪装置及び融雪方法に関する。
降雪地方において、屋根の雪降ろしは大変な作業であることは知られている。このような雪降ろしのために、従来から温水や温風を発生させる融雪装置や、発熱体あるいはヒートパイプ(熱媒体用パイプ)等を用いる融雪装置を屋根に設置し、融雪を行っている。ところで融雪を行うために、例えば屋根上面にヒートパイプを設置すると、屋根上面と積雪下部との境界部で積雪の一部のみが融雪されてそこが空洞化してしまい、融雪効果が低下してしまうといった不都合が生じていた。そこで、例えばヒートパイプの周りにコンクリート、スレートからなる熱分散層を設けることで、屋根下地に配設したヒートパイプからの発熱を屋根上面に分散させる融雪装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようにヒートパイプ周りに熱分散層を設けることで、熱が屋根上面全体に分散されるようになって、局部的な加温が回避されるから、積雪の空洞化を防止できる。
特開平5−59845号公報
上記従来の融雪装置では、コンクリートやスレート等の熱分散層を用いて屋根上面全体を加温するようにして空洞化を防止している。しかし、このように熱分散層を用いてヒートパイプからの熱を屋根上面全体に分散させると、熱効率がよくないといった課題がある。また、屋根上面全体を加温した場合では、屋根上面と積雪の境界部分の広い領域に、融けた雪による水膜が形成されてしまうことがある。そうすると、融雪していない積雪がその自重により水膜を挟んで屋根上面から塊のまま滑落する可能性がある。
そこで本発明は、積雪の空洞化を防止し、効果的な融雪を行い得るとともに、積雪の滑落を防止し得る融雪装置及び融雪方法の提供を課題とする。
本発明の融雪装置は、傾斜した屋根上面に設置される発熱体保持治具、及びこの発熱体保持治具に、屋根上面の傾斜方向と直交する幅方向に離間した屋根上面の所定位置に並べて設置される別の発熱体保持治具を備える治具群が複数組設けられ、これら治具群それぞれの発熱体保持治具の屋根上面への設置時に屋根上面から所定の高さ位置となるよう設けられた保持部に渡して保持される発熱体が設けられ、屋根軒先から離間する傾斜方向側の治具群に保持される発熱体が、屋根軒先側の治具群に保持される発熱体に比べて、屋根上面から高い位置に保持されていることを特徴としている。この構成において、治具群それぞれに、発熱体を屋根上面から所定の高さ方向に離間した所要位置に保持して発熱体周りの積雪を融雪することで、積雪の空洞化を防止し、効果的に融雪を行い得るとともに、積雪の滑落を防止することができる。
また、この構成のように、屋根軒先から離間する傾斜方向側の治具群に保持される発熱体が、屋根軒先側の治具群に保持される発熱体に比べて、屋根上面から高い位置に保持されるように発熱体の高さ位置を変えたことにより、発熱体それぞれの周りの積雪は融雪され、融け残った積雪は、その重みで屋根軒先側へ順次移動しながら屋根軒先側に配置した発熱体の発熱により順次融雪されることになる。このように、屋根頂部側の積雪ほどその上部から融雪され、また融け残って屋根軒先側へ移動した積雪も順次上部から融雪されることから、融雪時の空洞化の発生を防止して、効果的に融雪を行い得るとともに、塊状の積雪の滑落を防止することができる。さらに、最終的に屋根軒先へ移動する積雪はなくなるか、あるいはごくわずかになるから、屋根軒先への負荷荷重を小さくすることができる。
本発明の融雪装置は、好ましくは、その発熱体が、屋根上面の傾斜方向と直交する幅方向に沿う所定長さを有している。この構成によれば、屋根上面の積雪を屋根の幅方向にわたって、かつ空洞化させることなく融雪することができる。
本発明の融雪装置は、好ましくは、屋根軒先に設置される発熱体を備えている。この構成によれば、発熱体の発熱により、屋根軒先に直接積もる雪を融雪することができるとともに、前述のようにして融け残って移動してきた雪が、屋根軒先で再凍結することを防止することができる。さらに好ましくは、発熱体の上部に伝熱板を配置することで、発熱体の熱が効率よく分散されて屋根軒先での再凍結を効果的に防止することが可能となる。この伝熱板として、屋根軒先の上面を形成する既設の板材であってもよいし、その部分だけ熱伝導率の良好な金属板材等を特別に準備してもよく、この金属板材等をそのまま屋根軒先の上面として用いるようにすることも考えられる。
本発明の融雪方法は、傾斜した屋根上面の積雪を融雪する融雪方法であって、発熱体を屋根上面から所定の高さ分だけ離間する位置で屋根上面の傾斜方向に離間させて保持し、屋根軒先から離間する傾斜方向側の発熱体を屋根軒先側に保持する発熱体に比べて屋根上面から高い位置に保持することを特徴としている。このように屋根上面から所定の高さ分だけ離間する位置で積雪を融雪することによれば、積雪の空洞化を防止し、効果的に融雪を行い得るとともに、積雪の滑落を防止することができる。
また、屋根の傾斜方向にわたる積雪を、空洞化を防止しつつ、効果的に融雪を行い得るとともに、積雪の滑落を防止することができる。
さらに、発熱体それぞれの周りの積雪は融雪され、融け残った積雪は、その重みで屋根軒先側へ順次移動しながら屋根軒先側に配置した発熱体の発熱により順次融雪されることになる。このように、屋根頂部側の積雪ほどその上部から融雪され、また融け残って屋根軒先側へ移動した積雪も順次上部から融雪されることから、融雪時の空洞化の発生を防止して、効果的に融雪を行い得るとともに、塊状の積雪の滑落を防止することができる。さらに、最終的に屋根軒先へ移動する積雪はなくなるか、あるいはごくわずかになるから、屋根軒先への負荷荷重を小さくすることができる。
本発明の融雪方法に用いる発熱体は、好ましくは、屋根上面の傾斜方向と直交する幅方向に沿う所定長さに設定している。このような発熱体を用いて積雪を融雪することで、屋根上面の積雪を屋根の幅方向にわたって、かつ空洞化させることなく融雪することができる。
本発明の融雪方法は、さらに、屋根軒先に発熱体を配置することを特徴としている。この融雪方法によれば、屋根軒先に直接的に積もる雪を融雪することができ、また前述のようにして融け残って移動してきた雪が、屋根軒先で再凍結することを防止することができる。さらに好ましくは、発熱体の上部に伝熱板を配置することで、発熱体の熱を効率よく分散して屋根軒先での融雪を効果的に行うことができるとともに、再凍結を防止することができる。
ここで、屋根上面からの所定の高さとは、発熱体の熱によってその周りの積雪が融雪しても、屋根上面と積雪との間に空洞が発生しない高さであり、発熱体の形態、特に発熱量や寸法に依存される発熱範囲を考慮した高さ位置である。例えば、本願発明の発熱体として、その熱源にPTC素子を用いることが考えられ、この場合、PTC素子の抵抗値や使用量等を設定することにより電力量を調整し、融雪できる発熱範囲を制御することができるから、この発熱範囲を考慮することで、容易に屋根上面と積雪との間に空洞が発生しない高さを設定することが可能となる。また、発熱体保持治具の設置位置である屋根上面の所定位置とは、発熱体の所定長さ、すなわち屋根上面の積雪を屋根の幅方向にわたって融雪できる長さに対応する位置である。例えば発熱体は、屋根の幅方向全長に亙る一個(一本)の発熱体を用いてもよいし、それより短い発熱体を複数個幅方向に並べてもよく、発熱体保持治具はこのような発熱体を支持できる位置に配置する。
本発明の融雪装置及び融雪方法によれば、屋根上面と積雪との間の空洞化を防止することができ、積雪の滑落を効果的に防止することができる。
以下、本発明の実施形態に係る融雪装置及び融雪方法、並びに発熱体保持治具を、図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態を示す融雪装置の使用状態を示す側面図、図2は同じく正面図、図3は融雪装置の一部分解正面図、図4は取付け部の一部分解正面図、図5は保持治具本体を取付け部で瓦棒に取付けた状態の正面図、図6は同じく側面図である。
図1及び図2を参照して、この実施形態では、融雪装置1及び融雪方法を適用させる屋根は、既設の瓦棒屋根3を例示する。瓦棒屋根3は、屋根上面4に複数の瓦棒5を備える。瓦棒5は、屋根上面4の屋根傾斜方向D1に沿い、かつ屋根傾斜方向D1と直交する屋根幅方向D2に等間隔で並べて配置されている。瓦棒5それぞれは、断面H型の構成を有する。さらに詳しくは、瓦棒5は、図3〜図6に示すように、屋根上面4に立設(設置)固定された屋根幅方向D2に離間する一対のフランジ部材6,7と、フランジ部材6,7同士をその高さ方向途中で連結するウェブ部材10とから構成されている。融雪装置1は、屋根傾斜領域側に設ける第一融雪部1Aと、屋根軒先領域側に設ける第二融雪部1Bとから構成される。
融雪装置1のうち第一融雪部1Aの構成を説明する。第一融雪部1Aは、複数の発熱体保持治具2と、これら発熱体保持治具2に保持される発熱体43とを備える。図7は発熱体保持治具の単体側面図、図8は正面図、図9は展開平面図である。これらの図に示すように、発熱体保持治具2は、その保持治具本体8が屋根幅方向D2両側の側板15,16と、これら側板15,16の底部同士を連結する底板17とを有する。側板15,16それぞれは、側面視して略台形に形成されている。側板15,16の一方側(屋根頂部側)の垂直面部20に他方側の斜面21に向かう側面視矩形の保持凹部22,23,24が、垂直面部20の高さ方向に所定間隔置き(例えば10cm間隔)に複数形成されている。各保持凹部22,23,24を挟む位置に対で、後述の第一線状発熱体44,45,46の脱落を防止するための脱落防止孔25a,25bが形成されている。垂直面部20の下部に、保持治具本体8を瓦棒5に取付ける際に用いる取付け用孔26aが形成されている。この保持治具本体8は、図9に示すように金属板27の側板相当領域28を底板相当領域29に対して対向するよう(破線部17a)折曲げることで成形される。
図3〜図6に戻り、発熱体保持治具2は保持治具本体8を瓦棒5に取付けるための、取付け部としての取付け装置12を有する。ここで、取付け装置12の構成を説明する。取付け装置12は、瓦棒5に取付けられる断面コ字形の第一アングル30及び第二アングル31、瓦棒5、第一アングル30、第二アングル31、及び保持治具本体8を一体化するためのボルト32及びナット33から構成されている。第一アングル30は、底面板35と、この底面板35の幅方向両側の第一側面板36,36とを備える。第一アングル30の側面外幅B1は、瓦棒5のフランジ部材6,7間の内幅B2に等しいかわずかに小さく設定されている。
第一側面板36,36の高さ方向途中に、幅方向B1外方に向かう当接片37,37が折曲げて形成されている。底面板35から当接片37,37までの高さH1は、瓦棒5のウェブ部材10からフランジ部材6,7の上面までの高さH2にほぼ等しく設定されている。第一側面板36,36には、ボルト32が挿通する第一ボルト孔38a,38aが形成されている。第二アングル31は、天面板40と、この天面板40の幅方向両側の第二側面板41,41とを備える。第二アングル31の天面板40の側面内幅B3は、瓦棒5のフランジ部材6,7間の外幅B4に等しいかわずかに大きく設定されている。第二側面板41,41にボルト32が挿通する第二ボルト孔42a,42aが形成されている。天面板40の一方側(屋根軒先側3Aに相当する)に、保持治具本体8の挿入を許容する切欠40aが形成され、この切欠40aの幅B5は、保持治具本体8の底板17の幅にほぼ等しく設定されている。
ここで、取付け装置12及び保持治具本体8を瓦棒5に取付ける手順を説明する。なお、取付け装置12及び保持治具本体8は、複数の瓦棒5に複数装着されるが、ここではまず、ひとつの瓦棒5にひとつの取付け装置12及び保持治具本体8を取付ける手順を説明する。
図3を参照して、瓦棒5のウェブ部材10及びフランジ部材6,7で形成される装着凹部5aに、第一アングル30の第一側面板36,36を上方から嵌合するように配置する。この場合、第一アングル30の当接片37,37がフランジ部材6,7の上端面に当接して、第一アングル30が保持される。続いて、第二アングル31を上方から、瓦棒5のフランジ部材6,7にその幅方向で挟持するように嵌込む。そうすると、第一アングル30の側面外幅B1は、瓦棒5のフランジ部材6,7間の内幅B2に等しいかわずかに小さく設定されており、第二アングル31の天面板40の側面内幅B3は、瓦棒5のフランジ部材6,7間の外幅B4に等しいかわずかに大きく設定されているから、瓦棒5のフランジ部材6,7が、第一アングル30の第一側面板36,36と、第二アングル31の第二側面板41,41とで挟持されることになる。さらに、保持治具本体8を、その垂直面部20を屋根頂部側に位置するようにして、側板15,16を切欠40aに嵌込む。この状態で、ボルト32を第二アングル31の第二ボルト孔42a,42a、保持治具本体8の取付け用孔26a、第一アングル30の第一ボルト孔38a,38aに挿通し、ナット33をボルト32に螺合して締め付けると、瓦棒5のフランジ部材6,7が第一側面板36,36と第二側面板41,41とで確実に挟持され、取付け装置12及び保持治具本体8が、瓦棒5に固定される。本実施形態では、上記のようにして、保持治具本体8を瓦棒5毎に、屋根上面4の傾斜方向D1に沿って三個、かつ屋根上面4の傾斜方向D1と直交する幅方向D2に配置している。なお、上記のようにして保持治具本体8を瓦棒5に設置した際、保持治具本体8の垂直面部20は、屋根上面4に対してほぼ垂直に沿うようになっている。
第一融雪部1Aは、前記発熱体43を有する。この発熱体43は、保持治具本体8に保持される三本の第一線状発熱体44,45,46からなる。第二融雪部1Bは発熱体43を有する。この発熱体43は、瓦棒屋根3の両屋根軒先3A側それぞれに配置される二本(一対の)の第二線状発熱体47からなる。これら第一線状発熱体44,45,46と第二線状発熱体47とは、設ける場所とそれら配置の仕方、あるいは長さが異なるのみで、基本的な構成は同様である。したがってここでは発熱体43として、第一線状発熱体44,45,46の構成を、図10〜図13を参照して説明する。発熱体43の内部構造は、図10(ニ)A−A線断面図に示すように、短手方向の断面形状を長円形(略トラック状の断面形状)として、図10(イ)に示すように、線状に形成されており、端末となる部位には端末を密封するための端末封止48が設けられている。端末封止48には、合成樹脂キャップで蓋をして防水処理を施している。図10(ロ)に示すように、長手方向に複数の凹部49を有している。端部は図10(ハ)に示すように、接続部50に接続されており、接続部50には、電源コード39が接続されて電源から電気が供給される。なお、発熱体43の内部構造の断面形状の寸法一例を挙げれば、幅(長辺の長さ)が18.5mmで、厚み(短辺の長さ)が7.5mmである。
発熱体43の内部構造は、図10(ホ)に示すように、中心の位置に発熱体となるPTC(Positive Temperature Coeffcient)素子51が配置されており、PTC素子51の両側に導体(給電線)52が設けられている。この場合、導体52として錫メッキ銅線を用いている。PTC素子51と導体52との間に、導体52とPTC素子51とを接続するための接続端子53が設けられている。導体52は長手方向に延長されている。PTC素子51は、導体52間に渡すよう、長手方向にして間隔を置いて配置されている。PTC素子51として熱伝導性に優れた抵抗体、すなわちチタン酸バリウムを用いたセラミック系抵抗体や高分子組成物にカーボンブラックなどの粒子状導電剤を含有させた導電性ポリマー等が用いられる。
この実施形態でPTC素子51は、例えば上記のチタン酸バリウムを主成分とするほぼ直方体形状のセラミック半導体であり、室温からキュリー温度(抵抗急変温度)までは低抵抗であるが、キュリー温度を超えると急に抵抗値が増大する特性を有する感熱素子である。この特性により、PTC素子51は、キュリー温度を下回る温度下において電圧が印加されると、最初は低温であるために抵抗値が小さいので大電流が流れ、PTC素子51の温度が急激に上昇する。そしてPTC素子51の温度がキュリー温度を超えると抵抗値が急に増大するために電流量が減少し、その結果、PTC素子51の発熱量は減少する。そのため、PTC素子51は、所定温度以上に温度が上がることなく、一定温度で安定して熱平衡状態を保つ。すなわち、PTC素子51は、自己温度制御機能を有している。したがって、発熱量制御のための温度制御回路や過熱防止回路などを別途設ける必要がない。一例を挙げれば、PTC素子51は、例えば幅6mm,長さ8.3mm,厚み1.7mmの直方体形状に形成されている。
ここで、発熱体43の成形方法について、図11を参照して説明する。まず、図11(イ)に示すように、PTC素子51の対向する2辺にそれぞれ接続端子53の素子接続部53aを圧着して図11(ロ)に示す組品とする。次に、PTC素子51に素子接続部53aを圧着した組品を加熱する。なお、この接続端子53には半田合金がメッキされており、上記加熱によりメッキされた半田合金が溶融してPTC素子51と素子接続部53aとがしっかりと接続されることになる。次に、二本の導体52を、送って一旦停止させる機構を用いて流し、導体52が停止したタイミングで上記組品を導体52間に挿入する。このとき、各導体52は、接続端子53の導体接続部53b間に配置されるようにする。次いで、図11(ハ)(ニ)に示すように、導体52を接続端子53の導体接続部53bで挟み込み圧着する。このようにすることで、二本の導体52とPTC素子51とは接続端子53を介して確実に電気的に接続された状態となる。以上の工程により、各PTC素子51が、図11(ホ)に示すように、所定間隔(例えば、35mm程度〜100mm程度の間隔)をおいて複数個設けられた構成のはしご状の発熱構造物が得られる。続いてこの発熱構造物を、柔軟性を有する合成樹脂(絶縁性)からなる内側被覆部材55の、押出し成形により被覆する。なお、絶縁体として、例えば、最大点伸度280%を有する軟質塩化ビニル樹脂が用いられている。
さらに、内側被覆部材55の表面を複数本の金属細線を編んで形成した金属編組カバー60により被覆する。金属編組カバー60は、具体的には、直径0.12mmの錫メッキ銅線を7本束ねてなる集合線を24本用意し、この24本の集合線を格子状に編みあげることで形成した筒状の部材である。このような金属編組カバー60は、内側被覆部材55の表面に50%の被覆率(内側被覆部材55の表面積に対する金属編組カバーで被覆されている部分の面積の割合)で密着させる。なお、この金属編組カバー60は、柔軟性を有する合成樹脂(絶縁性)からなる外側被覆部材61の、押出し成形により被覆する。外側被覆部材61の厚みとして、例えば0.8mm〜1.1mmに設定している。このようにて発熱体43を製造すると、内側被覆部材55と外側被覆部材61との間に、金属編組カバー60が存在することでわずかな隙間が存在し、また発熱体43は全体として可撓性を有する。なお、図13において、符号62は端末封止48を被覆する封止部を示し、符号63は接続部50を被覆するブッシングを示し、符号64は差込プラグを示す。
ところで、前述のように、保持治具本体8を瓦棒5毎に、屋根上面4の傾斜方向D1に沿って三個、かつ屋根上面4の傾斜方向D1と直交する幅方向D2に配置している。このようにして瓦棒屋根3に取付けた複数の発熱体保持治具2を、屋根軒先3A側から第一保持治具群2A、第二保持治具群2B、第三保持治具群2Cとしたとき、第一保持治具群2Aの最下位の保持凹部22に渡して断面L字形の支持部材13が嵌込まれ、第二保持治具群2Bの中位の保持凹部23に渡して支持部材13が嵌込まれ、第三保持治具群2Cの最上位の保持凹部24に支持部材13が嵌込まれる。そして第一線状発熱体44,45,46それぞれが保持凹部22,23,24の支持部材13に沿うように配置される。さらに、第一線状発熱体44,45,46が保持凹部24(支持部材13)から脱落しないように、適当な索体、例えば針金等を脱落防止孔25a,25b間に挿通して締結しておく。つまり、三個の第一線状発熱体44,45,46は、屋根頂部側に配置している第一線状発熱体44が最も屋根上面4から高い位置に配置され、次いで第一線状発熱体45、第一線状発熱体46の順に屋根上面4から順次低い位置に配置されている。
図14は第二融雪部の伝熱板を省略した平面図、図15は一部拡大断面図、図16は全体断面図である。これらの図に示すように、第二融雪部1Bは、瓦棒屋根3の屋根軒先3Aの屋根上面4に、屋根幅方向D2に沿って付設された板状の断熱部材65と、この断熱部材65に組込まれる前記第二線状発熱体47と、断熱部材65(第二線状発熱体47)の上面を被覆する熱の良導体である金属板からなる伝熱板67とから構成される。断熱部材65の上面に蛇行した設置溝66が屋根幅方向D2に亙って形成され、第二線状発熱体47は設置溝66に組込まれている。溝66に沿ってアルミ箔66aが敷設されている。伝熱板67として、例えばアルミ製の板材が用いられる。
以上説明した融雪装置1を用いて、瓦棒屋根3の屋根上面4の積雪Sを融雪する方法を説明する。第一融雪部1Aでは、発熱体43に通電がなされると、最も屋根上面4から高い位置に配置した第一線状発熱体44周りにある上位部の積雪S1が第一線状発熱体44の発熱により融雪される。また、第一線状発熱体45周りの中位部の積雪S2が第一線状発熱体45の発熱により融雪される。同様に、第一線状発熱体46周りの下位部の積雪S3が第一線状発熱体46の発熱により融雪される。さらに、第二線状発熱体47に通電がなされることで、屋根軒先3Aの屋根上面4の積雪Sが第二線状発熱体47の発熱により融雪される。ところで、上記のようにして融雪された積雪Sのうち、融け残る積雪S5は、屋根軒先側の方が高さが低い状態、すなわち少ない量(体積)になっており、第二線状発熱体47の発熱により屋根軒先3Aの積雪S4は順次融雪されるから、第一線状発熱体46の発熱でも融け残った雪(S5)、第一線状発熱体45の発熱でも融け残った雪(S5)、および第一線状発熱体44の発熱でも融け残った雪(S5)が、その重さにより、それぞれ第一線状発熱体46(支持部材13)の下方の空間、第一線状発熱体45の下方の空間、第一線状発熱体44の下方の空間を屋根軒先側へ向かって移動する。このように融け残った雪が屋根軒先側に移動することで、屋根頂部側の融け残った雪は、屋根軒先側の発熱体45,46の発熱により融雪され、仮に融雪し切れず屋根軒先3Aに至った雪は、第二線状発熱体47の発熱により融雪され、また再凍結するのを防止されながら屋根軒先3Aから落下する。
本発明の実施形態のように、第一線状発熱体44,45,46を、屋根頂部側から屋根軒先側に向かう屋根傾斜方向に、屋根上面4から高い位置から低い位置に位置するよう配置して、第一線状発熱体44,45,46に通電して積雪Sを融雪することにより、積雪Sを屋根頂部側から屋根軒先側へ向かうほど低い位置で融雪することになるから、屋根上面4と積雪Sとの境界領域での積雪Sの空洞化を防止でき、効果的に融雪を行い得るとともに、積雪Sの滑落を防止することができる。さらに、屋根軒先3Aに設けた第二線状発熱体47に通電することで、屋根頂部側で融け残って移動してきた雪を融雪することができ、また再凍結するのを防止することができる。したがって、屋根軒先上の雪の量をなくすか、ほとんど融雪することができて、屋根軒先3Aへの負荷荷重を極めて小さくすることができる。また、屋根軒先3Aの融雪については、伝熱板67は第二線状発熱体47から発生する熱を均熱化させる機能を有しており、断熱部材65は下方に漏出する熱を遮断して所定の熱効率を確保しているから、融雪を高効率で行い得る。
ところでPTC素子51は、その抵抗値や使用量等を設定することで電力量を調整することが可能であり、したがってこれら抵抗値や使用量等を設定することで第一線状発熱体44,45,46の必要な融雪能力を予め設定しておくことができる。ここでは、例えば電力量13W/m〜62W/mに設定することで、第一線状発熱体44,45,46それぞれを中心とした融雪可能な範囲を、8.5cm〜18.5cm(発熱体周りの直径)にしている。さらに具体的には、保持凹部22,23,24の間隔を10cmに設定し、第一線状発熱体44,45,46の出力を0°C環境下において、第一線状発熱体44,45,46の長さ1m当り18W(18W/m)として、第一線状発熱体44,45,46それぞれの周囲約10cmの融雪が可能であった。そして、このように屋根頂部側に位置する発熱体ほど屋根上面4から高い位置に設け、屋根軒先3A側に位置する発熱体ほど屋根上面4から低い位置に設けて融雪することで、従来生じていた空洞化を防止しつつ、効果的に融雪を行い得るとともに、積雪Sの滑落を防止することができた。なお、第一線状発熱体44,45,46及び第二線状発熱体47に自己温度制御機能を付与することで、特に第二線状発熱体47の下に断熱部材65が敷設されていても、熱がこもって過熱するといった状態を防止でき、安全に融雪することができる。
図17に、別の実施形態の融雪装置70および融雪方法を示す。図17の融雪装置70は、第一融雪部71Aと第二融雪部71Bとから構成されている。このうち、第二融雪部71Bの構成は上記実施形態と同様であるので、図同一の符号を付してその説明を省略する。また上記実施形態の説明で用いた図3〜図16は、この実施形態に兼用するものとする。第一融雪部71Aは、上記実施形態と同様の構成の発熱体保持治具2、取付け装置12、支持部材13、および三個の線状発熱体44,45,46を有する。上記実施形態では、屋根傾斜方向D1に第一保持治具群2A、第二保持治具群2B、第三保持治具群2Cを配置したが、この実施形態の第一融雪部71Aでは、各瓦棒5上に設けて複数の発熱体保持具2は、屋根傾斜方向D1と直交する屋根幅方向D2に等間隔で一列にのみ並べた一組の保持治具群2Dとして構成としている。そして、保持治具群2Dを構成する発熱体保持治具2の保持凹部22,23,24それぞれに、支持部材13を介して支持された第一線状発熱体44,45,46を備える。このような第一融雪部71Aは、屋根軒先3Aと屋根軒先3Aより屋根頂部側の屋根傾斜領域との境界部に配置されている。
上記構成の融雪装置70において、第一線状発熱体44,45,46に通電がなされると、第一線状発熱体44,45,46周りの積雪Sが融雪され、融け残った雪は、第一線状発熱体46の下方の空間を屋根軒先側へ向かって移動し、第二線状発熱体47の発熱によって融雪されて屋根軒先3Aから落下する。さらに、屋根頂部側の積雪Sが屋根軒先側へ移動してきたとしても、第一融雪部71Aで同様に融雪され、第二融雪部71Bで効果的に融雪することができ、積雪Sの空洞化の発生防止ができるから効果的に融雪することができる。また、水膜発生防止ができるから積雪Sの塊の滑落を確実に抑制することができる。特にこの実施形態では、屋根頂部側の積雪Sが屋根軒先側へ移動してきたとしても、第一融雪部71Aの支持部材13で積雪Sの移動を阻止することができ、第一線状発熱体44,45,46で積雪Sが融雪されるから、積雪Sの塊が滑落するといった状態を効果的に回避することができる。
なお、上記各実施形態において、保持治具本体8や支持部材13を形成する材質として、第一線状発熱体44,45,46が設置可能で、その発熱等による変形が抑えられればよい。例えば、アルミニウム、ステンレスおよび鉄等の金属、あるいは塩化ビニル、アクリル等の樹脂等が考えられる。金属であれば、熱伝導により線状発熱体44,45,46の熱を放熱する効率がよいため、融雪するのに好ましい。さらに、保持治具本体8や支持部材13に塗装やメッキなどの表面処理を施すことで、耐久性が向上し意匠性も向上するので、より好ましい。さらに、本発明の融雪装置および融雪方法の対象となる屋根種類として、傾斜勾配を有するトタン等の金属板葺き屋根にも適用可能である。さらに、上記各実施形態において支持部材13は断面L字型に形成したものを用いたがこれに限定されるものではく、例えば断面円形、あるいは断面矩形に形成したものを用いることも考えられる。あるいは、2以上の部材に分割可能な構成を有するものも考えられる。何れにしても、線状発熱体を沿わせて保持できる構成であれば、特にその断面形状は限定されるものではない。
本発明の実施形態を示す融雪装置の使用状態を示す側面図。 同じく正面図。 同じく融雪装置の一部分解正面図。 同じく取付け装置の一部分解正面図。 同じく保持治具本体を取付け装置で瓦棒に取付けた状態の正面図。 同じく側面図。 同じく保持治具本体の単体側面図。 同じく正面図。 同じく展開平面図。 同じく線状発熱体の内部構成を示す説明図。 同じく線状発熱体の製造工程を示す説明図。 同じく線状発熱体の拡大断面図。 同じく線状発熱体の全体構成を示す平面図。 同じく第二融雪部の伝熱板を省略した平面図。 同じく一部拡大断面図。 同じく全体断面図。 別の実施形態を示す融雪装置の使用状態を示す側面図。
符号の説明
1…融雪装置、1A…第一融雪部、1B…第二融雪部、2…発熱体保持治具、3…瓦棒屋根、5…瓦棒、12…取付け装置、22,23,24…保持凹部、43…発熱体、44,45,46…第一線状発熱体

Claims (8)

  1. 傾斜した屋根上面に設置される発熱体保持治具、及びこの発熱体保持治具に、屋根上面の傾斜方向と直交する幅方向に離間した屋根上面の所定位置に並べて設置される別の発熱体保持治具を備える治具群が複数組設けられ、
    これら治具群それぞれの発熱体保持治具の屋根上面への設置時に屋根上面から所定の高さ位置となるよう設けられた保持部に渡して保持される発熱体が設けられ
    屋根軒先から離間する傾斜方向側の治具群に保持される発熱体が、屋根軒先側の治具群に保持される発熱体に比べて、屋根上面から高い位置に保持されていることを特徴とする融雪装置。
  2. 発熱体は、屋根上面の傾斜方向と直交する幅方向に沿う所定長さを有していることを特徴とする請求項1記載の融雪装置。
  3. 屋根軒先に設置される発熱体を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の融雪装置。
  4. 発熱体の上部に設置される伝熱板が設けられていることを特徴とする請求項3記載の融雪装置。
  5. 傾斜した屋根上面の積雪を融雪する融雪方法であって、発熱体を屋根上面から所定の高さ分だけ離間する位置で屋根上面の傾斜方向に離間させて保持し、屋根軒先から離間する傾斜方向側の発熱体を屋根軒先側に保持する発熱体に比べて屋根上面から高い位置に保持することを特徴とする融雪方法。
  6. 発熱体は、屋根上面の傾斜方向と直交する幅方向に沿う所定長さを有していることを特徴とする請求項5記載に融雪方法。
  7. 屋根軒先に発熱体を配置することを特徴とする請求項5または請求項6記載の融雪方法。
  8. 発熱体の上部に伝熱板を配置することを特徴とする請求項7記載の融雪方法。
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