JP4386529B2 - 化学気相成長用原料及びこれを用いた金属酸化物薄膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学気相成長(以下、CVDと記載することもある)用原料及び化学気相成長(CVD)法による金属酸化物薄膜に関し、詳しくは、CVD用原料に有用な金属化合物からなる化学気相成長用原料及びこれを用いた金属酸化物薄膜とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
組成、構造が制御された金属酸化物薄膜は、半導体、電子部品、光学材料等に応用が期待されており、その中でも酸化ニオブ、酸化タンタル、M’Bi2 M”2 O9 (M’は、ストロンチウム及び/バリウムを表し、M”は、ニオブ及び/又はタンタルを表す)で表される(ニオブ)タンタル酸(バリウム)ストロンチウムビスマス等のニオブ及び/又はタンタルを含有する金属酸化物薄膜は、特異な電気特性を有し、機能性セラミックス材料として使用されている。
【0003】
また、これら金属酸化薄膜の製造方法としては、スパッタリング法、イオンプレーティング法、塗布熱分解法等が挙げられるが、組成制御性、段差被覆性に優れること、半導体製造プロセスとの整合性等からCVD法が最適な薄膜製造プロセスとして検討されている。
【0004】
複合金属酸化膜を製造する多成分CVD法においては、各成分独立で気化、輸送し、成膜時に各成分の気相を混合する方法と多成分混合のCVD用原料を気化、輸送する方法があり、原料に使用される金属供給源化合物には、混合時に化合物同士の反応等で原料が変質することがないように、混合時の安定性が要求される。
【0005】
上記ニオブ及び/又はタンタルを含有する金属酸化物薄膜を、CVD法により製造するCVD用原料としては、特開平7−58835号公報にペンタアルコキシドが、特開平8−46259号公報にアシル酢酸エステルとアルコールとの化合物が、また、WO9608587号公報にβ−ジケトンとアルコールとの化合物が報告されている。しかし、これらは、化学的に不安定であり、単独で使用する酸化ニオブ、酸化タンタルの製造では有用であるが、複合金属酸化物の製造には、安定した組成、成膜速度が得られない問題がある。
【0006】
上記問題に対し、特開平8−277197号公報にタンタルとストロンチウムの複合金属アルコキシドの使用やChem.Vep.Deposition 1999.5.No.1や第60回応用物理学会学術講演会予稿集(3a−A−10)に熱安定性の改善されたアルコキシド化合物が提案されているが、未だ満足のできるものではない。
【0007】
従って、本発明の目的は、ニオブ又はタンタルについて、それぞれの酸化物のみならず、複合金属酸化物の製造にも適する安定性を有するCVD用原料、該原料を用いた金属酸化物薄膜及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定の構造を有するニオブ又はタンタルの化合物からなるCVD用原料が上記課題を解決しうることを知見し本発明に到達した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、下記一般式(I)で表される金属化合物からなるCVD用原料、該原料を用いた金属酸化物薄膜及びその製造方法に関する。
【化2】
(式中、R1 はハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、R2 はハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜5のアルキル基を表し、R3 は炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基を表し、nは1又は3を表し、mはn+2mが5である整数を表し、Mは、ニオブ原子又はタンタル原子を表す)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明に係る上記一般式(I)で表される金属化合物において、R1 で表されるハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、パーフルオロヘキシル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、1−メトキシ−1,1−ジメチルメチル、2−メトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−エトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエチル、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエチル等が挙げられ、R2 で表されるハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、トリフルオロメチル等が挙げられる。
【0012】
また、R3 で表される炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基とは、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられ、特に金属元素との六員環を形成するジオール及びそのアルキル基置換体から与えられる基が金属化合物の安定性が大きいので好ましい。
【0013】
上記一般式(I)で表される金属化合物は、nが1であるものが、化学的な安定性について得に優れているので好ましく、下記の化合物No.1〜14に示すものがより好ましい。
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
本発明に係る上記の金属化合物において、その製造方法は、特に制限を受けることはなく、周知一般の方法を用いることができる。例えば、五塩化物(五塩化ニオブ又は五塩化タンタル)と、配位子化合物である該当するβ−ジケトン及びグリコールとをナトリウム、アンモニア等の塩基の存在下で反応させて製造してもよく、ペンタエトキシド、ペンタブトキシド等の低級アルコキシドと、該当するグリコール及びβ−ジケトンとの配位子化合物との交換反応により製造してもよい。交換反応による製造としては、例えば、低級アルコキシドとβ−ジケトンとの交換反応を行い、その後で残ったアルコキシ基とグリコールとの交換反応を行う逐次反応による方法、低級アルコキシドとβ−ジケトン及びグリコールとの交換反応を一括で行う方法が挙げられるが、副生成物が少なく収率がよいので前者の逐次反応が好ましい。
【0017】
本発明の化学気相成長(CVD)用原料とは、上記の金属化合物からなるものであり、その形態は、使用されるCVD法により適宜選択されるものである。例えば、MOCVD法の場合は、上記の金属化合物そのものがCVD用原料となり、溶液CVDの場合は、上記の金属化合物を有機溶剤に溶かした金属化合物溶液がCVD用原料となる。また、複合金属酸化物を製造する多成分系のCVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、マルチボトル法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、ワンボトル法と記載することもある)があり、ワンボトル法の場合、本発明に係る金属化合物と他の成分の金属供給源化合物との混合物或いは混合溶液がCVD用原料である。
【0018】
本発明に係る金属化合物は、下記の実施例に示す通り化学的安定性に優れるので、特にワンボトル法の原料に有用である。
【0019】
上記の溶液CVD法の原料に使用する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール(IPA)、n−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類が挙げられ、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等によって適宜選択されるが、特にテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類が錯体の安定化効果もあり好ましく用いられる。
【0020】
また、上記の複合金属酸化物を製造する多成分系CVD法の場合、使用されるニオブ及びタンタル以外の金属元素を供給する金属供給源化合物については、特に制限されることなく周知一般の化合物を使用することができる。例えば、(ニオブ)タンタル酸(バリウム)ストロンチウムビスマス薄膜を製造する場合に使用される金属供給源化合物としては、バリウム、ストロンチウム原料として、ビスアセチルアセトネート、ビスヘキサン−2,4−ジオネート、ビス−5−メチルヘキサン−2,4−ジオネート、ビスヘプタン−2,4−ジオネート、ビス−2−メチルヘプタン−3,5−ジオネート、ビス−5−メチルヘプタン−2,4−ジオネート、ビス−6−メチルヘプタン−2,4−ジオネート、ビス−2,2−ジメチルヘプタン−3,5−ジオネート、ビス−2,2,6−トリメチルヘプタン−3,5−ジオネート、ビス−2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート、ビス−オクタン−2,4−ジオネート、ビス−2,2,6−トリメチルオクタン−3,5−ジオネート、ビス−2,6−ジメチルオクタン−3,5−ジオネート、ビス−2−メチル−6−エチルデカン−3,5−ジオネート、ビス−2,2−ジメチル−6−エチルデカン−3,5−ジオネート等のアルキル置換β−ジケトネート類、ビス−1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオネート、ビス−1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオネート、ビス−1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオネート、ビス−1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオネート等のフッ素置換アルキルβ−ジケトネート類、ビス−1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオネート、ビス−2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオネート、ビス−2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオネート等のエーテル置換β−ジケトネート類が挙げられ、ビスマス原料としては、トリフェニルビスマス、トリ−o−トリルビスマス、トリシクロペンタジエニルビスマス等のトリアリールビスマス、トリ第三ブトキシド、トリ第三ペントキシド、トリ−1−メトキシ−2−プロポキシド、トリ−1−メトキシ−2−メチル−2−プロポキシド、トリ−1−エトキシ−2−メチル−2−ブトキシド、トリ−1−イソプロポキシ−2−メチル−2−プロポキシド、トリ−1−エトキシ−2−メチル−2−プロポキシド等のアルコキシド、トリス−2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオネート等のβ−ジケトネートが挙げられる。
【0021】
また、CVD法では、CVD用原料に安定性を付与するため求核性試薬が用いられることがある。本発明の場合、特に安定性に優れるので必ずしも必要ではないが、下記のような安定化剤を使用してもよい。該安定化剤としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N, N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はβ−ジケトン類が挙げられる。
【0022】
これら安定剤の使用量は、金属化合物1モルに対して0.1〜10モルの範囲で使用され、好ましくは1〜4モルで使用される。
【0023】
本発明の金属酸化物薄膜とは、上記説明のCVD用原料を用いてCVD法によって製造された膜中にニオブ及び/又はタンタルを含有する酸化物薄膜又は複合金属酸化物薄膜のことであり、その用途や種類等により特に制限されることはない。用途としては、例えば、圧電素子、焦電素子、高・強誘電体メモリデバイス等の電子デバイスが挙げられ、種類としては、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸ストロンチウム、タンタル酸バリウム、M’Bi2 M”2 O9 (M’は、ストロンチウム及び/又はバリウムを表し、M”は、ニオブ及び/又はタンタルを表す)で表される(ニオブ)タンタル酸(バリウム)ストロンチウムビスマス等が挙げられる。
【0024】
本発明の金属酸化物薄膜の製造方法とは、上記のニオブ及び/又はタンタル化合物からなるCVD用原料を用いることが特徴であり、その際の原料の気化方法、供給方法、輸送方法や成膜方法等の製造条件については、特に制限を受けず公知の方法を用いることができる。
【0025】
例えば、気化、供給方法としては、上記に記載のMOCVD、溶液CVD、マルチボトル法、ワンボトル法等が挙げられ、成膜法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVD等の方法を挙げることができる。
【0026】
上記の熱CVDの場合は、先ず、気化された原料と酸素等の酸化性ガスを基板上に導入し、次いで、原料を基板上で酸化分解させて薄膜を基板上に成長させるのであるが、気化させる工程では原料の分解を防止するために13330Pa以下、特に8000Pa以下の減圧下で、分解温度以下で気化させることが好ましい。また、基板は予め原料の分解温度以上、好ましくは350℃以上、より好ましくは450℃以上に加熱しておくことが好ましい。また、得られた薄膜には必要に応じてアニール処理を行ってもよい。
【0027】
【実施例】
以下、製造例、評価例及び実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の製造例、評価例及び実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0028】
〔製造例1〕
(化合物No.1の製造)
アルゴン置換した500ml反応用フラスコにニオブペンタエトキシド13.05g、乾燥ベンゼン150ml、6−メチル−3,5−オクタンジオン6.33gを仕込み、80℃で3時間撹拌し、さらに100℃で生成したエタノールを溶媒のベンゼンとの共沸により留去した。留出物にエタノールが無くなったのをガスクロマトグラフィで確認した後、溶媒を留去して得た残渣について、0.3torr、塔頂温度100〜102℃で蒸留精製して中間体である6−メチルオクタン−3,5−ジオナトニオブテトラエトキシドを14.2g(収率81.0%)得た。
【0029】
アルゴン置換した500ml反応用フラスコに上記の中間体14.0g、乾燥ベンゼン150ml、2,4−ペンタンジオール7.17gを仕込み、80℃で撹拌し、生成したエタノールを溶媒のベンゼンとの共沸により留去した。留出物にエタノールが無くなったことをガスクロマトグラフィで確認した後、溶媒を留去して得た残渣について、0.3torr、塔頂温度120〜121℃で蒸留精製して微黄色液体を11.0g(収率77.6%)得た。
【0030】
13C−NMRを測定した結果、得られた液体は、目的物である化合物No.1であることを確認した。結果を以下に示す。
(化学シフト(ppm);基種)
(12.9;CH3 )(15.2;CH3 )(16.7;CH3 )
(19.3;CH3 )(25.7;CH2 )(37.7;CH2 )
(43.1;CH)(59.4;CH2 )(66.8;CH)
(95.6;CH)(191.4;C)(193.4;C)
【0031】
〔製造例2〕
(化合物No.12の製造)
アルゴン置換した500ml反応用フラスコにタンタルペンタエトキシド16.7g、乾燥ベンゼン150ml、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン7.55gを仕込み、80℃で3時間撹拌し、さらに100℃で生成したエタノールを溶媒のベンゼンとの共沸により留去した。留出物にエタノールが無くなったことをガスクロマトグラフィで確認した後、溶媒を留去して得た残渣について、0.2torr、塔頂温度104〜105℃で蒸留精製して中間体である2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナトタンタルテトラエトキシドを17.7g(収率79.1%)得た。
【0032】
アルゴン置換した500ml反応用フラスコに上記の中間体17.3g、乾燥ベンゼン150ml、2−メチル−2,4−ペンタンジオール7.56gを仕込み、80℃で撹拌し、生成したエタノールを溶媒のベンゼンとの共沸により留去した。留出物にエタノールが無くなったのをガスクロマトグラフィで確認した後、溶媒を留去して得た残渣について、0.3torr、塔頂温度123〜124℃で蒸留精製して無色液体を15.5g(収率81.2%)得た。
【0033】
13C−NMRを測定した結果、得られた液体は、目的物である化合物No.12であることを確認した。結果を以下に示す。
(化学シフト(ppm);基種)
(19.6;CH3 )(19.8;CH3 )(28.3;CH3 )
(40.8;C)(65.2:CH2 )(65.5;CH)(68.7;C)(92.8;CH)(199.8;C)
【0034】
〔評価例〕
(混合安定性の評価)
上記の製造例で得られた化合物及び同様の手順により得た化合物について、他の金属供給源化合物との混合時の安定性を評価した。評価法は、下記の手順、配合により混合した試料組成物及び比較組成物について、乾燥アルゴン流量100ml/分、30℃〜600℃(5℃/分)での示差熱分析(A)と1333Pa、30℃〜400℃(20℃/分)での示差熱分析(B)により行った。結果を表1及び表2に示す。
【0035】
(混合手順)
グローブボックス内で、同質量の試料化合物及び比較化合物と他の金属供給源化合物を水分量0.5ppm以下の乾燥ヘキサンに溶解させた後、減圧下でヘキサンを除去して試料組成物及び比較組成物を得た。
【0036】
(配合)
試料組成物1:化合物No.1、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ストロンチウム
試料組成物2:化合物No.3、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)バリウム
試料組成物3:化合物No.3、トリフェニルビスマス
試料組成物4:化合物No.12、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ストロンチウム
試料組成物5:化合物No.14、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)バリウム
試料組成物6:化合物No.12、トリフェニルビスマス
比較組成物1:比較化合物1*、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ストロンチウム
比較組成物2:比較化合物1、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)バリウム
比較化合物3:比較化合物1、トリフェニルビスマス
比較組成物4:比較化合物2*、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ストロンチウム
比較組成物5:比較化合物2、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)バリウム
比較化合物6:比較化合物2、トリフェニルビスマス
【0037】
【化5】
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
上記表1及び2において、評価法(A)の質量減少からは、化学的安定性が評価できる。これが2段階のものは、各成分が反応することなくそれぞれ独立に揮発していること、即ち化学的安定性が大きいことを示し、3段階のものは、反応によって新たな成分が生成していること、即ち化学的安定性が小さいことを示す。500℃残渣からは、熱的な安定性が評価できる。この残渣は、組成物が揮発せずに熱分解したものであり、これが大きいほど熱安定性に劣る。
【0041】
また、評価法(B)からは、CVD法における原料供給性が評価できる。300℃残渣が小さいものほど供給性に優れるを示す。以上の結果から、本発明に係る金属化合物は、CVD原料に適した性能を与えることが確認できた。
【0042】
〔実施例1〕
タンタル酸ストロンチウムビスマス薄膜の製造(マルチボトル法)
図1に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件、原料を用いてタンタル酸ストロンチウムビスマス(以下、SBTと記載する)の薄膜を製造した。製造した薄膜については、X線回折を用いてタンタル酸ストロンチウムビスマスのピーク有無を確認した。薄膜の組成については、5%フッ酸水溶液に浸して得た剥離液をICP元素分析装置で測定して得た。
【0043】
(原料)
化合物No.12、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ストロンチウム、トリフェニルビスマス
(条件)
原料容器温度:Taソース;160℃、Srソース;210℃、Biソース;180℃
キャリアガス流量:Taソース;150sccm、Srソース;150sccm、Biソース;150sccm
酸素ガス流量:470sccm
反応圧力:666Pa
反応時間:15分
基板温度:600℃
(結果)
X線回折:SBTピーク有。組成比(モル):Sr/Bi/Ta=1.00/2.06/2.13
【0044】
〔実施例2〕
タンタル酸ストロンチウムビスマス薄膜の製造(ワンボトル法)
図2に示すCVD装置を用いて、シリコンウエハ上に以下の条件、原料を用いてSBTの薄膜を製造した。製造した薄膜については、X線回折を用いてタンタル酸ストロンチウムビスマスのピーク有無を確認した。薄膜の組成については、5%フッ酸水溶液に浸して得た剥離液をICP元素分析装置で測定して得た。
【0045】
(原料)
化合物No.12、トリス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)ストロンチウム、トリフェニルビスマスのテトラヒドロフラン溶液(混合モル比2:1:2、合計濃度12質量%溶液)
(条件)
気化室温度:200℃
原料流量:0.15ml/分
酸素ガス流量:400sccm
反応圧力:1333Pa
反応時間:15分
基板温度:600℃
(結果)
X線回折:SBTピーク有。組成比(モル):Sr/Bi/Ta=1.00/2.10/1.94
【0046】
【発明の効果】
本発明のCVD用原料は、ニオブ又はタンタルについて、それぞれの酸化物のみならず、複合金属酸化物の製造にも適しており、化学的安定性、原料供給性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の金属酸化物薄膜の製造に用いられるCVD装置の一例を示す概要図である。
【図2】図2は、本発明の金属酸化物薄膜の製造に用いられるCVD装置の他の例を示す概要図である。
Claims (4)
- 上記一般式(I)において、R3が金属元素Mとの六員環を形成するアルキレン基である請求項1記載の化学気相成長用原料。
- 上記一般式(I)において、nが1である請求項1又は2記載の化学気相成長用原料。
- 請求項1〜3の何れかに記載の原料を用いて化学気相成長により製造することを特徴とする金属酸化物薄膜の製造方法。
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