以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は本実施の形態が適用されるプリントシステムの構成例を示す図である。このプリントシステムは、例えば複数のクライアント1(例えば1a、1b)、プリンタ2、およびネットワーク3を備える。本実施の形態では、各クライアント1a、1bがネットワーク3を介してプリンタ2に接続される。ここで、クライアント1は、例えばマイクロソフト社製のWindows(登録商標)上で動作するコンピュータ装置にて構成することができる。このため、クライアント1では、Windows(登録商標)上で動作するアプリケーションにおいて、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色を用いて描画処理を行っている。また、プリンタ2は、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、および黒(K)の各色色材(例えばトナー)にてフルカラー画像を形成可能なカラープリンタで構成される。
このプリントシステムでは、クライアント1が印刷指示を出力すると、この印刷指示がネットワーク3を介してプリンタ2に送信される。そして、プリンタ2が受け取った印刷指示に応じた画像を用紙上に印刷(画像形成)する。
本実施の形態において、クライアント1は、文書画像のみの印刷を指示する第1のモード、あるいは、文書画像にコード画像を重畳して印刷する第2のモードにて印刷指示を出力することができる。ここで、文書画像は、Windows(登録商標)上で動作するアプリケーションによって作成される電子文書(ドキュメントデータ等)に基づくものであり、例えばイメージやテキスト等を含んでいる。一方、コード画像は、例えば文書画像1ページ毎(あるいは1ファイル毎)に付与される固有の識別情報と、例えば印刷対象となる用紙上での位置を示す位置情報とを含んでいる。なお、コード画像の詳細については後述する。クライアント1は、第1のモードでは文書画像に対応する文書画像データを印刷指示として出力し、第2のモードでは文書画像に対応する文書画像データおよびコード画像に対応するコード画像データをまとめて印刷指示として出力する。
第1のモードの印刷指示を受け取った場合、プリンタ2は、文書画像データに基づきYMCK各色の色材を用いて用紙上に文書画像の印刷を行う。一方、第2のモードの印刷指示を受け取った場合、プリンタ2は、文書画像データに基づきK色を除くYMC各色の色材を用いて用紙上に文書画像の印刷を行い、コード画像データに基づきK色の色材を用いて同一用紙上にコード画像の印刷を行う。
次に、プリンタ2によって用紙に形成されるコード画像について説明する。
図2は、コード画像を構成する画像等の一例を示した図である。
まず、コード画像を構成する単位パターンについて説明する。
図2(a)は、単位パターンの一例を示したものである。
単位パターンとは、情報埋め込みの最小単位である。図2(a)では、黒塗りの領域と斜線の領域をドット配置可能な領域とし、その間にある白色の領域をドット配置不可能な領域としている。そして、ドット配置可能な領域のうち、黒塗りの領域にドットが配置され、斜線の領域にはドットが配置されていないことを示している。即ち、図は、ドットを配置可能な9箇所の中から選択した2箇所にドットを配置することで単位パターンを構成した例を示したものである。ここで、9箇所の中から2箇所を選択する組み合わせは36(=9C2)通りなので、単位パターンは、36種類存在する。このうち、4種類の単位パターンは、同期パターンとして使用される。同期パターンとは、画像の回転を検出したり、識別符号及び位置符号の相対的な位置を特定したりするためのパターンである。特に、画像の回転を検出する必要があることから、4種類の同期パターンとしては、そのうちの1つの同期パターンを90度回転するとそのうちの別の同期パターンになるようなものが選ばれる。また、この4種類の同期パターンを除く32種類の単位パターンは、識別符号及び位置符号を表現する情報パターンとして使用され、5ビットの情報が表現される。
ところで、図2(a)に示したドットは、あくまで情報表現のためのドットであり、画像を構成する最小の点を意味するドットとは必ずしも一致しない。本実施の形態において、情報表現のためのドット(図2(a)の最小の四角)は、600dpiにおける2ドット×2ドットの大きさを有している。600dpiにおける1ドットの大きさは0.0423mmなので、情報表現のためのドット(図2(a)の最小の四角)の一辺は、84.6μm(=0.0423mm×2)である。情報表現のためのドットは、大きくなればなるほど目に付きやすくなるため、できるだけ小さいほうが好ましい。ところが、あまり小さくすると、プリンタで印刷できなくなってしまう。そこで、情報表現のためのドットの大きさとして、50μmより大きく100μmより小さい上記の値を採用している。但し、上記の値84.6μmは、あくまで計算上の数値であり、実際に印刷されたトナー像では100μm程度になる。尚、本明細書で「ドット」というときは、特に明示しない限り、画像を構成する最小の点を意味するドットではなく、情報表現のためのドットを指すものとする。
次に、このような単位パターンから構成される符号ブロックについて説明する。
図2(b)に、符号ブロックのレイアウトの一例を示す。尚、ここでは、画像ではなく、パターン画像によって置き換えられる直前の符号配列で示している。即ち、図2(b)の最小の四角(以下、「単位ブロック」という)に、図2(a)のような単位パターン(36通りの単位パターンのいずれか)が配置され、その画像が媒体に形成されることになる。
図2(b)のレイアウトでは、符号ブロックの左上の1つの単位ブロックに、同期符号が配置されている。また、同期符号が配置された単位ブロックの右側の4つの単位ブロックにX位置符号が配置され、同期符号が配置された単位ブロックの下側の4つの単位ブロックにY位置符号が配置されている。更に、これらの位置符号が配置された単位ブロックに囲まれた16(=4×4)個の単位ブロックに識別符号が配置されている。
ここで、識別情報の符号化について述べる。
識別情報を符号化する場合、識別情報を構成するビット列は、RS符号化を行うために複数のブロックに分割される。符号化には、いくつかの方法があるが、本実施の形態では、RS符号化が適している。RS符号は多値の符号法であり、この場合、単位ブロックで表現される値がRS符号の多値に対応するからである。例えば、1つの単位ブロックで5ビットの情報を表現する場合、60ビットの識別情報は、ブロック長が5ビットの12個のブロックに分割される。そして、2ブロックの誤りを訂正可能なRS符号を採用したとすると、符号長は16ブロックとなり、図2(b)の符号ブロックにおける識別符号が配置される単位ブロックに収まることになる。尚、符号化方式はRS符号に限定するものでなく、その他の符号化方式、例えば、BCH符号等を使用してもよい。
次に、位置情報の符号化について述べる。
位置情報の符号化には、擬似乱数系列の一種であるM系列符号が使用される。ここで、M系列とは、ある長さのシフトレジスタとフィードバックによって生成される符号系列のうち、その周期が最長になる系列をいう。Kをシフトレジスタの段数とすると、M系列の系列長は2K−1となる。このM系列から取り出した任意の連続したKビットは、同じM系列中の他の位置に現れない性質を持つ。そこで、この性質を利用して位置情報を符号化する。
ところで、本実施の形態では、符号化すべき位置情報の長さから、必要なM系列の次数を求め、M系列を生成している。しかしながら、符号化する位置情報の長さが予め分かっている場合は、M系列を毎回生成する必要はない。即ち、固定のM系列を予め生成しておき、それをメモリ等に格納しておけばよい。
例えば、系列長8191のM系列(K=13)を使用したとする。この場合、位置符号も5ビット単位で埋め込むため、系列長8191のM系列から5ビットずつ取り出してブロック化する。
なお、本実施の形態では、プリンタ2が、このように生成した単位パターンを画像化したコード画像を、印刷対象となる用紙のほぼ全面に形成する。また、プリンタ2は、文書画像も、印刷対象となる用紙のほぼ全面に形成する。したがって、第2のモードでは、用紙に文書画像及びコード画像がほぼ全面にわたって重ね合わされた状態で形成されることになる。
図3はプリンタ2の全体構成を示した図であり、ここでは回転式(ロータリ)現像器を用いたデジタルカラープリンタを示している。図3に示すプリンタ2は、本体10に、静電潜像を形成してトナー像を担持させる感光体ドラム11、感光体ドラム11に電荷を与えて帯電させる帯電器12、プリントデータ作成部60(詳細は後述)からの画像信号に基づいて、帯電された感光体ドラム11を選択的に露光する露光器13、露光器13によって感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する四色現像器14を備えている。
この四色現像器14は、回転式(ロータリ)現像器であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4色のトナー像を形成するために、各々の色のトナーを含んだ4つの現像器50(以下の説明では、各々をイエロー現像器50Y、マゼンタ現像器50M、シアン現像器50C、黒現像器50Kと呼ぶ)が備えられ、感光体ドラム11を現像する現像ロール51が四色現像器14の周上に設けられている。四色現像器14は、現像器中心14aを中心として、90度ずつ回動することで所望の現像器50が備える現像ロール51を感光体ドラム11に対峙させている。より具体的には、1つのプリント出力に対して、イエロー現像器50Y、マゼンタ現像器50M、シアン現像器50C、黒現像器50Kを、この順に感光体ドラム11に対峙させ、フルカラーの出力を可能としている。なお、本実施の形態において、黒現像器50Kに内蔵される黒のトナーは、着色成分として850nm近傍の波長領域に吸収を有するカーボンを含んでいる。
また、感光体ドラム11上における四色現像器14の下流側には、現像器50によって現像されて感光体ドラム11上に形成されたトナー像を一旦保持する中間転写ベルト15、中間転写ベルト15上に重畳されて形成されたトナー像を用紙に転写する二次転写ロール16、用紙上に形成されたトナー像を加熱および押圧して定着する定着器17を備えている。また、感光体ドラム11の周りには、中間転写ベルト15への一次転写の後に感光体ドラム11上に残ったトナー(残留トナー)を掻き取るクリーニングブレード18、このクリーニングブレード18より掻き取られたトナーを回収してトナーを溜めるトナー回収ボトル19を備えている。中間転写ベルト15は、1つのプリント画像を形成する際に4回転する。二次転写ロール16は、最初の3回転の間、即ち、Y色、M色、C色のトナー像を保持する際には中間転写ベルト15から離間しており、最後のK色のトナー像が重畳されるにあたって、中間転写ベルト15に接触するように構成されている。
中間転写ベルト15は、感光体ドラム11に対して所定範囲だけ巻きつくように、ラップ状に接触(当接)している。本実施の形態では、中間転写ベルト15自身に駆動源を設けず、ラップによる接触を利用して感光体ドラム11の回転に従動するように構成されており、接触部分の回転方向が同じとなるように、反時計方向に回動している。
この中間転写ベルト15の内側には、感光体ドラム11における回動の上流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップインロール21、感光体ドラム11に形成されたトナー像を中間転写ベルト15上に転写させる一次転写ロール22、ラップ位置の下流側にて中間転写ベルト15のラップ位置を特定するラップアウトロール23を備えている。一次転写ロール22には、一次転写を助けるために所定の一次転写バイアスが付与されている。
更に、中間転写ベルト15の内側には、二次転写ロール16による二次転写を助けるバックアップロール24が設けられている。二次転写部を構成するこれらバックアップロール24と二次転写ロール16との間には、所定の電位差が必要であり、例えば一方の二次転写ロール16を高圧に接続した場合には、対向する他方のバックアップロール24はGNDに接続されている。
中間転写ベルト15上における二次転写部の下流側には、二次転写の後に中間転写ベルト15上のトナーを取り除く中間転写体クリーナ30が設けられている。この中間転写体クリーナ30は、二次転写の後に残ったトナーを掻き取るスクレーパ25、スクレーパ25によるクリーニングにて残ったトナーを更に掻き取るためのブラシロール26、スクレーパ25およびブラシロール26により掻き取られたトナーを回収する第2トナー回収ボトル29を備えている。中間転写ベルト15の内側には、このスクレーパ25によるクリーニング作業を助けるクリーニングバックアップロール27、ブラシロール26によるクリーニング作業を助けるクリーニングバックアップロール28を備えている。
スクレーパ25は、例えばステンレス等の厚さ0.1mm程度の薄板からなり、所定の電界がかけられている。また、ブラシロール26は、導電性の処理がなされたナイロン、アクリル等のブラシであり、駆動源からの動力を受けて回転駆動し、掻き落としたトナーは、第2トナー回収ボトル29に設けられた窓から第2トナー回収ボトル29内に収容される。スクレーパ25およびブラシロール26は、二次転写ロール16が中間転写ベルト15に接触して二次転写を行なった後の中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取る。そのために、画像形成の最初では、重畳途中のトナー像が掻き取られることのないように中間転写ベルト15から離間しており、所定のタイミングで、これらが一体となって中間転写ベルト15に接触するように構成されている。
用紙搬送系としては、用紙やOHPシートなどの各種記録媒体を収容する給紙カセット31、この給紙カセット31から用紙を繰り出して給紙するフィードロール32、給紙される用紙を1枚ずつ捌くリタードロール33、給紙カセット31からフィードロール32等を介して搬送された用紙に対して転写のためのタイミングを取り、位置合わせを行なうためのレジロール34、定着器17内に設けられ、用紙上に形成されたトナー像を熱するヒートロール35、ヒートロール35に対向して設けられ加熱に際して用紙を押圧するプレッシャロール36、定着された後に用紙を機外に排出する排出ロール37、装置上部に設けられ、排出ロール37により排出された用紙を集積(スタック)する排出トレイ38を備えている。
また、図3に示すように、このプリンタ2では、縦方向の用紙搬送パスとして、用紙搬送路70が設けられている。この用紙搬送路70は、装置内に設けられる搬送ガイド71と、箱体であるトナー回収ボトル19の外壁とによって構成されている。即ち、本実施の形態では、レジロール34と二次転写部との間に設けられ、略鉛直方向の下方から上方に向けて用紙を搬送する用紙搬送路70を、その一面をトナー回収ボトル19の外壁によって形成し、他の一面を搬送ガイド71によって構成している。
さらに、プリンタ2は、プリンタ2を構成する各部材の動きを制御する制御部40、中間転写ベルト15に隣接して設けられ中間転写ベルト15上に形成されたトナーのパッチを検出する反射型フォトセンサである位置センサ41を備えている。この位置センサ41は、中間転写ベルト15の長手方向に形成されたパッチを読み取ることで、中間転写ベルト15の回転方向における位置を検出することが可能である。より具体的には、位置センサ41によってパッチが検出されたところから所定のタイミングで露光することで、Y、M、C、K各色の位置合わせを可能としている。また、この位置センサ41の出力に基づいて、中間転写ベルト15上に形成されたトナーの濃度検知を行い、この検知結果から制御部40による濃度制御を実行することも可能である。
さらにまた、プリンタ2は、ネットワーク3を介してクライアント1から入力される印刷指示(第1のモードまたは第2のモード)に基づき、YMCK各色の画像信号を作成して露光器13に出力するプリントデータ作成部60を備えている。なお、プリントデータ作成部60の詳細については後述する。
次に、図3に示すプリンタ2を用いた画像形成プロセスについて説明する。プリンタ2では、ネットワーク3を介して接続されたクライアント1から印刷指示を受けると、制御部40からの指示に基づき、画像形成プロセスが開始される。フルカラーの出力の場合、プリントデータ作成部60では、クライアント1から受け取った印刷指示に基づき、YMCK各色の画像信号を作成し、Y、M、C、Kの順に順次露光器13に出力する。
フルカラーのプリント出力の場合、四色現像器14は、まず、イエロー現像器50Yを感光体ドラム11に対峙させるように回動する。最初に、イエローのトナー像を形成する際、時計方向に回動する感光体ドラム11は、帯電器12にて帯電された後、露光器13からの例えばレーザ光によって、イエローに対応する画像情報に基づく露光が行なわれ、静電潜像が形成される。このとき、露光器13はプリントデータ作成部60にて作成されたイエローの画像信号に基づいて露光のオン・オフを切り換えている。その後、現像ロール51によって現像が実行された後、ラップ状の接触範囲にて中間転写ベルト15上にイエローのトナー像が転写される。このとき、二次転写ロール16、スクレーパ25およびブラシロール26は中間転写ベルト15からはリトラクト(離間)しており、これらによって中間転写ベルト15上のトナー像が掻き取られることはない。
一次転写を終えた感光体ドラム11の表面は、クリーニングブレード18によって残ったトナーが掻き取られ、次のトナー像形成のために帯電器12との対向部へ移動する。なお、クリーニングブレード18によって掻き取られた残留トナーは、トナー回収ボトル19に溜められる。また、現像のタイミングに間に合うように四色現像器14が回動し、マゼンタ現像器50Mが感光体ドラム11に対峙する。露光器13によってマゼンタの画像信号に基づく露光が行なわれた潜像からマゼンタのトナー像が形成されて、中間転写ベルト15上に重畳される。同様にして、シアン、黒のトナー像が、順次、中間転写ベルト15上に重畳されて一次転写が終了する。
二次転写ロール16は、露光器13によるシアンのトナー像に対する一次転写が終了し、シアンまでが重畳されたトナー像が二次転写部(二次転写ロール16によって二次転写が行なわれる場所)を通過した後のインターイメージ領域において、黒の静電潜像を形成するための露光(黒の露光)を開始する前に、中間転写ベルト15に対してアドバンス(押し出し)する。これにより、二次転写ロール16が中間転写ベルト15に当接(コンタクト)した状態で、二次転写に備える。また、スクレーパ25およびブラシロール26は、黒の露光が終了した後、クリーナ部(スクレーパ25およびブラシロール26によるクリーナが行なわれる場所)がインターイメージであるときに、中間転写ベルト15に対してアドバンスする。このインターイメージは、中間転写ベルト15や感光体ドラム11上においてトナー像が形成されていない(トナー像の形成が予定されていない)領域部分、露光による書き込みが予定されていない部分と言うことができる。
一方、給紙カセット31からは、制御部40による制御に基づいて所定のタイミングでフィードロール32が駆動され、順次、用紙が取り出されるとともに、リタードロール33により1枚ずつに捌かれ、レジロール34へ到達する。レジロール34は、二次転写部における二次転写のタイミングに合わせて回転し、所定のタイミングで用紙を二次転写部へ送り出すように機能している。給紙カセット31に収容された用紙は、搬送装置によって略鉛直方向に搬送され、二次転写ロール16およびバックアップロール24からなる二次転写部に搬送され、トナー像が転写される。
二次転写部にてトナー画像が転写された用紙は、定着器17に搬送される。定着器17にて、用紙上のトナー像は、ヒートロール35により加熱され、プレッシャロール36により用紙に押圧されて、定着される。その後、排出ロール37を経て装置外に出力され、プリンタ2の上部に設けられた排出トレイ38に収容される。以上のようにして、一枚のカラープリントを出力する際の画像形成プロセスが終了する。
では次に、クライアント1における印刷指示(画像データ)の生成、および、プリンタ2のプリントデータ作成部60における画像データの処理について、より具体的に説明する。図4は、これらクライアント1およびプリンタ2の画像処理系を説明するためのブロック図を示している。
まず、クライアント1における画像処理系について説明する。クライアント1は、プリンタドライバ部110、ラスタライズ部120、前処理部130、およびTag設定部140を備える。また、クライアント1は、Tag変更部150、ID取得部160、コード生成部170、および圧縮部180をさらに備える。
これらのうち、文書画像生成手段の一つとしてのプリンタドライバ部110は、クライアント1で動作するアプリケーションにて印刷要求がなされたドキュメントデータ等を、プリンタドライバソフトウェアによってジョブデータへと変換する。なお、ジョブデータは、赤(R)、緑(G)、および青(B)の各色画像情報を含むベクトルデータ(以下の説明ではRGBベクトルデータと呼ぶ)であり、例えばPDL(Page Description Language:ページ記述言語)にて記述することができる。なお、ジョブデータには、必要に応じてROP処理(詳細は後述する)に関する描画命令が含まれる。また、プリンタドライバ部110は、ベクトルデータを作成する際に使用する描画オブジェクト(イメージオブジェクトまたはテキストオブジェクト)の情報(オブジェクト情報)をTag設定部140に出力する。さらに、プリンタドライバ部110は、ドキュメントデータ等の印刷要求がなされた際に、第1のモードすなわち文書画像のみの印刷を行うのか、あるいは、第2のモードすなわち文書画像にコード画像を重畳した印刷を行うのかについての要求も受け付ける。そして、第2のモードによる印刷要求を受けた場合に、プリンタドライバ部110は、コード画像の生成に必要な管理IDの取得要求をID取得部160に出力する。
ラスタライズ部120は、プリンタドライバ部110から入力されるRGBベクトルデータを解釈して、RGB各色のビットマップデータを生成する。なお、以下の説明では、ラスタライズ部120から出力されるRGB各色のビットマップデータをRGBラスタデータと呼ぶ。
前処理部130は、ラスタライズ部120から入力されるRGBラスタデータに対し各種画像処理を実行する。本実施の形態では、前処理部130がソフトウェアによる画像処理を行う一方で、プリンタ2は後述するようにハードウェアによる画像処理を行っており、プリンタ2では比較的簡易な画像処理を実行する機能しか有していない。このため、本実施の形態では、クライアント1に設けられた前処理部130において、プリンタ2側では処理しきれない各種画像処理を実行している。この前処理部130は、ROP処理部131、色変換部132、およびTag付与部133を備える。
ROP処理部131は、ラスタライズ部120から入力されるRGBラスタデータに基づき、必要に応じてROP(Raster Operation)処理を施す。より具体的に説明すると、ROP処理部131は、ROP処理の描画命令があったRGBラスタデータにはROP処理を実行してから出力する。逆に、ROP処理部131は、ROP処理の描画命令がないRGBラスタデータにはROP処理を実行せずにそのまま出力する。
ROP処理は、例えばクライアント1のOS(Operating System)として動作するWindows(登録商標)に搭載されるGDI(Graphic Device Interface)や、ヒューレットパッカード社のプリンタ制御言語PCL(Printer Control Language)などで採用される描画命令の一種である。ROP処理は、単に描画指示された描画要素をソースとして対象領域(ディスティネーションという)に上書きするだけでなく、ソースに論理演算を加えた結果をディスティネーションに書き込んだり、または対象領域のその時点での画素値をディスティネーションとして、ソースとディスティネーションとの論理演算を行った結果をディスティネーションに書き戻したり、さらに複数のソースを用いた複雑な論理演算を行うことを可能としている。例えばGDIでは、ROP処理として、ROP2、ROP3、およびROP4の3つのモードを使用することができる。
色変換部132は、ROP処理部131から入力されるRGBラスタデータに、画素毎に色変換処理を施す。色変換部132は、3次元DLUT(Direct Look Up Table)を用いて、RGBラスタデータを色味が異なるRGBラスタデータ(以下の説明ではR’G’B’ラスタデータと呼ぶ)に変換する。なお、本実施の形態では、後述するようにプリンタ2(具体的には後述する反転部221)において実行される色変換処理が所謂線形変換であることから、色変換部132が、この線形変換による誤差を吸収するための事前の色補正として色変換処理を行っている。
Tag付与部133は、色変換部132から入力されるR’G’B’ラスタデータに、画素毎に制御データの一つとしてのTag(タグ)(第1の制御データに対応)を付与する。このとき、Tag付与部133は、対象となる画素がイメージオブジェクト(例えば写真など)を構成している場合にはTag=1を、テキストオブジェクト(例えば文字など)を構成している場合にはTag=0を、それぞれ付与する。その結果、Tag付与部133からは、画素毎にTagが付与されたR’G’B’ラスタデータ(以下の説明ではTag付きR’G’B’ラスタデータと呼ぶ)が出力される。つまり、Tag付与部133では、オブジェクト判別を行うためのTagを付与している。なお、R’G’B’ラスタデータの各画素に付与されるTagは、第1の作成手段として機能するTag設定部140にて設定される。Tag設定部140では、例えばプリンタドライバ部110から入力されるオブジェクト情報に基づいて、各画素に付与するTagの値を設定する。
なお、本実施の形態におけるTagすなわち制御データとは、所定の文書画像データに基づく画像形成を行う際に、その文書画像データに対応して実行される各種処理で用いられるデータである。ただし、本実施の形態では、Tagによる処理の対象がその文書画像データそのものである場合と、その文書画像データに対応するコード画像データである場合とがある。
付加手段の一つとしてのTag変更部150は、前処理部130(Tag設定部140)から入力されるTag付きR’G’B’ラスタデータに対し、必要に応じて画素毎にTag(制御データ)の上書き(付け替え)を実行する。より具体的に説明すると、Tag変更部150は、文書画像データを印刷指示として出力する第1のモードではTagの上書きを行わず、入力されてくるTag付きR’G’B’ラスタデータをそのまま出力する。一方、Tag変更部150は、文書画像及びコード画像をまとめて印刷指示として出力する第2のモードではTagの上書きを行い、Tagの内容が変更されたTag付きR’G’B’ラスタデータを出力する。ここで、本実施の形態では、後述するように、Tag変更部150によって上書きされたTagが、コード画像データとして機能するようになっている。
第2のモードにて印刷指示を出力する場合、すなわち、プリンタドライバ部110から管理IDの取得要求を受けた場合、ID取得部160は、文書画像データのページ毎に固有の識別情報すなわち管理ID(Identification)を取得する。なお、ID取得部160は、本実施の形態のようにクライアント1内に設けられる場合がある他、クライアント1の外部、具体的には、ネットワーク3に接続されるID管理用のサーバとして設けられる場合がある。このような場合、クライアント1は、ネットワーク3を介してこのID管理サーバに管理IDの取得を要求し、ネットワーク3を介してID管理サーバから送られてくる管理IDを取得することになる。
また、第2のモードにて印刷指示を出力する場合、コード画像生成手段または第2の作成手段の一つとしてのコード生成部170は、ID取得部160から受け取った管理IDに基づいて識別コードを作成し、且つ、印刷対象となる用紙のサイズに基づいて用紙上での位置を示す位置コードを作成する。次いで、コード生成部170は、これら識別コードと位置コードとを合成し、コード画像データを生成する。なお、コード画像データは画素毎に設定され、コード画像の形成対象となる画素には「1」が、コード画像の形成対象とはならない画素には「0」が、それぞれ割り当てられる。
そして、第2のモードにて印刷指示を出力する場合、Tag変更部150は、Tag付与部133から入力されてくるTag付きR’G’B’ラスタデータに対し、第2の作成手段として機能するコード生成部170で生成されたコード画像データを参照し、画素毎に、コード画像データが1に設定されている画素に対してはTag=1を、コード画像データが0に設定されている画素に対してはTag=0を、それぞれ上書きする。つまり、Tag変更部150では、画素毎にコード画像データの有無に対応するTag(第2の制御データ)を付与している。また、第2のモードにおいてTagの上書きを行う場合、Tag変更部150は、Tag付きR’G’B’ラスタデータに第2のモードであることを示すモード情報を付加して出力する。
圧縮部180は、Tag変更部150から入力されるTag付きR’G’B’ラスタデータに圧縮処理を施し、圧縮データ(以下の説明ではTR’G’B’圧縮データと呼ぶ)として出力する。このとき、圧縮部180では、圧縮前のデータと圧縮・伸張の処理を経たデータとが完全に等しくなる可逆圧縮方式のアルゴリズムにて、Tag付きR’G’B’ラスタデータを圧縮してTR’G’B’圧縮データを生成する。
なお、プリンタドライバ部110、ラスタライズ部120、前処理部130、Tag設定部140、Tag変更部150、ID取得部160、コード生成部170、および圧縮部180を構成する各部の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。すなわち、クライアント1に設けられた図示しないCPU(Central Processing Unit)が、これら各部の機能を実現するプログラムを、例えばハードディスク等の記憶装置からメインメモリに読み込んで、これらの各機能を実現する。
次に、プリンタ2におけるプリントデータ作成部60の構成について説明する。プリントデータ作成部60は、伸張部210および画像処理部220を備える。そして、画像処理部220には、露光器13が接続される。
受信手段としても機能する伸張部210は、ネットワーク3を介してクライアント1から入力される作像データとしてのTR’G’B’圧縮データに伸張処理を施す。このとき、伸張部210では、圧縮部180と同方式のアルゴリズムにて、TR’G’B’圧縮データを伸張して元のTag付きR’G’B’ラスタデータを生成する。
画像信号作成手段、画像処理手段、コード画像作成手段、第1の画像信号作成手段、第2の画像信号作成手段として機能する画像処理部220は、伸張部210から入力されるTag付きR’G’B’ラスタデータに各種画像処理を施す。また、画像処理部220は、Tag付きR’G’B’ラスタデータに各種画像処理を施すことによって得られたYMCK各色の画像信号を、露光器13に出力する。画像処理部220は、反転部221、セレクタ部222、第1墨生成部223、第1階調補正部224、第2墨生成部225、第2階調補正部226、および合成部227を備える。なお、この例では、画像処理部220が、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア装置によって実現されているものとする。
これらのうち、反転部221は、伸張部210から入力されてくるTag付きR’G’B’ラスタデータを構成するR’G’B’ラスタデータ(RGB各色のビットマップデータ)を補色関係を利用して反転させて、YMC各色のビットマップデータを生成する。なお、以下の説明では、R’G’B’ラスタデータを反転して得られたYMC各色のビットマップデータをYMCラスタデータと呼ぶ。また、このようにして得られたYMCラスタデータには、元となるTag付きR’G’B’ラスタデータに画素毎に付与されていたTagがそのまま対応付けられている。さらにYMCラスタデータには、Tag付きR’G’B’ラスタデータに付加されていたモード情報もそのまま付加される。なお、以下の説明では、画素毎にTagが付与されたYMCラスタデータをTag付きYMCラスタデータと呼ぶ。
セレクタ部222は、反転部221から入力されてくるTag付きYMCラスタデータのTagを画素毎に参照する。またセレクタ部222は、Tagが立っている(Tag=1)画素のYMCラスタデータ(以下の説明では第1のYMCラスタデータと呼ぶ)を第1墨生成部223に、Tagが立っていない(Tag=0)画素のYMCラスタデータ(第2のYMCラスタデータと呼ぶ)を第2墨生成部225に、それぞれ振り分けて出力する。
第1墨生成部223は、セレクタ部222から入力されてくる第1のYMCラスタデータを、墨すなわちKを含むYMCKラスタデータ(以下の説明では第1のYMCKラスタデータと呼ぶ)に変換する。なお、第1墨生成部223では、第1のモードで印刷指示がなされたときと第2のモードで印刷指示がなされたときとでその処理内容が異なるのであるが、その詳細については後述する。
第1階調補正部224は、第1墨生成部223から入力されてくる第1のYMCKラスタデータに、色毎に階調補正を施す。
一方、第2墨生成部225は、反転部221から入力されてくる第2のYMCラスタデータを、第1墨生成部223と同様に墨すなわちKを含むYMCKラスタデータ(以下の説明では第2のYMCKラスタデータと呼ぶ)に変換する。また、第2墨生成部225では、第1墨生成部223と同様、第1のモードで印刷指示がなされたときと第2のモードで印刷指示がなされたときとでその処理内容が異なるのであるが、その詳細については後述する。
第2階調補正部226は、第2墨生成部225から入力されてくる第2のYMCKラスタデータに、色毎に階調補正を施す。なお、第2階調補正部226における階調補正条件は、第1階調補正部224の階調補正条件と異ならせることができる。
合成部227は、第1階調補正部224から入力される第1のYMCKラスタデータと第2階調補正部226から入力される第2のYMCKラスタデータとを画素順に並べて合成し、YMCKラスタデータを生成する。また、合成部227は、得られたYMCKデータを色毎に並べ替え、Y、M、C、Kの順に露光器13に出力する。
図5(a)は、プリントデータ作成部60に設けられる第1墨生成部223の構成例を示す図である。第1墨生成部223は、第1パラメータ記憶部2231、第1パラメータ設定部2232、第1UCR(Under Color Removal)処理部2233、データ変更部2234を備える。
第1パラメータ記憶部2231は、第1墨生成部223における墨生成処理で使用される2つの第1パラメータ(パラメータAおよびパラメータB)を保持している。なお、パラメータAは第1のモードにおける第1UCR処理部2233およびデータ変更部2234の設定値を含んでいる。また、パラメータBは第2のモードにおける第1UCR処理部2233およびデータ変更部2234の設定値を含んでいる。これらパラメータAおよびパラメータBの詳細については後述する。
第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231からパラメータAあるいはパラメータBを読み出す。そして、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータにおける各設定値を第1UCR処理部2233およびデータ変更部2234に設定する。
第1UCR処理部2233は、セレクタ部222から入力されてくる第1のYMCラスタデータ(Tag=1が付与されているデータ)に、画素毎に下地除去処理を施す。具体的に説明すると、第1UCR処理部2233は、入力される第1のYMCラスタデータのうち、YMCが重ね合わされて灰(グレー)になる成分のうちの所定割合を墨(黒)に置き換えることで下地の除去を行う。このとき、第1UCR処理部2233は、第1パラメータ設定部2232にて設定される設定値としてのUCRレート(YMCの重ね合わせ成分を黒に置き換える割合)に基づいて第1のYMCラスタデータに対し墨生成処理を行う。
データ変更部2234は、第1UCR処理部2233から出力される第1のYMCKラスタデータを構成するKデータを、必要に応じて所定の濃度値に置き換える(変更する)処理を施す。より具体的に説明すると、データ変更部2234は、第1のモードではKデータの変更を行わず、そのまま出力を行う。一方、データ変更部2234は、第2のモードではKデータを所定の濃度値に変更して出力を行う。なお、Kデータの最大値は、例えば8ビットの多値データの場合に255となる。そして、データ変更部2234は、第1パラメータ設定部2232にて設定される設定値(データ変更の有無)に基づいてKデータの変更あるいは不変更を行う。
図5(b)は、プリントデータ作成部60に設けられる第2墨生成部225の構成例を示す図である。第2墨生成部225は、第2パラメータ記憶部2251、第2パラメータ設定部2252、第2UCR処理部2253を備える。なお、第2墨生成部225は、第1墨生成部223とは異なり、データ変更部2234に対応する機能ブロックを有していない。
第2パラメータ記憶部2251は、第2墨生成部225における墨生成処理で使用される2つの第2パラメータ(パラメータCおよびパラメータD)を保持している。なお、パラメータCは第1のモードにおける第2UCR処理部2253の設定値を含んでいる。また、パラメータDは第2のモードにおける第2UCR処理部2253の設定値を含んでいる。これらパラメータCおよびパラメータDの詳細については後述する。
第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251からパラメータCあるいはパラメータDを読み出す。そして、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータにおける設定値を第2UCR処理部2253に設定する。
第2UCR処理部2253は、セレクタ部222から入力されてくる第2のYMCラスタデータ(Tag=0が付与されているデータ)に、画素毎に下地除去処理を施す。この下地除去処理は、第1UCR処理部2233で行われる処理と同じである。このとき、第2UCR処理部2253は、第2パラメータ設定部2252にて設定される設定値としてのUCRレートに基づいて第2のYMCラスタデータに対し墨生成処理を行う。
図6(a)は、第1墨生成部223の第1パラメータ記憶部2231に保持される第1パラメータ(パラメータAおよびパラメータB)を例示している。第1パラメータは第1UCR処理部2233で使用されるUCRレートの設定情報およびデータ変更部2234におけるデータ変更の有無の設定情報を含んでいる。第1パラメータのうち、パラメータAは、文書画像を出力する第1のモードにおいてTag=1が設定される画素、すなわち、イメージオブジェクトを構成する画素に対する設定情報である。また、パラメータBは、文書画像及びコード画像を出力する第2のモードにおいてTag=1が設定される画素、すなわち、コード画像を構成する画素に対する設定情報である。そして、この例では、パラメータAが、「UCRレート30%」且つ「データ変更なし」に設定される。また、パラメータBが、「UCRレート0%」且つ「データ変更あり」に設定される。
一方、図6(b)は、第2墨生成部225の第2パラメータ記憶部2251に保持される第2パラメータ(パラメータCおよびパラメータD)を例示している。第2パラメータは第2UCR処理部2253で使用されるUCRレートの設定情報を含んでいる。第2パラメータのうち、パラメータCは、文書画像を出力する第1のモードにおいてTag=0が設定される画素、すなわち、テキストオブジェクトを構成する画素に対する設定情報である。また、パラメータDは、文書画像及びコード画像を出力する第2のモードにおいてTag=0が設定される画素、すなわち、コード画像を構成しない画素に対する設定情報である。そして、この例では、パラメータCが、「UCRレート100%」に設定される。また、パラメータDが、「UCRレート0%」に設定される。
では、印刷処理における具体的な処理手順について説明する。
図7は、クライアント1にて実行される処理の流れを示すフローチャートである。
クライアント1を操作するユーザによって例えばドキュメントデータの印刷要求がなされると、プリンタドライバ部110は、ドキュメントデータに基づいてジョブデータすなわちRGBベクトルデータを生成する(ステップ101)。なお、このとき、プリンタドライバ部110は、オブジェクト情報をTag設定部140に出力し、また、第2のモードによる印刷要求がなされた場合には、管理IDの取得要求をID取得部160に出力する。次に、ラスタライズ部120は、このRGBベクトルデータをラスタライズし、RGBラスタデータを作成する(ステップ102)。なお、作成されたRGBラスタデータは、画素毎にROP処理部131に出力されていく。
そして、ROP処理部131では、入力されてくるRGBラスタデータに対し、画素毎にその画素に対してROP処理の指示があるか否かを判断する(ステップ103)。ここで、ROP処理の指示があると判断した場合、ROP処理部131は、その画素のRGBラスタデータに対し指示の内容に応じたROP処理を施す(ステップ104)。一方、ROP処理の指示がないと判断した場合、ROP処理部131は、その画素のRGBラスタデータに対しROP処理を施すことなくそのまま出力する。すなわち、次のステップ105へと進む。そして、色変換部132は、ROP処理部131から画素毎に入力されてくるRGBラスタデータに対し、RGB−RGB色変換を施し(ステップ105)、その結果得られたR’G’B’ラスタデータを出力する。
次に、Tag設定部140は、プリンタドライバ部110から入力されるオブジェクト情報に基づき、Tag付与部133に入力されてくるR’G’B’ラスタデータに対し、画素毎にその画素がイメージオブジェクトを構成するものであるか否かを判断する(ステップ106)。ここで、その画素がイメージオブジェクトを構成するものであると判断した場合、Tag付与部133は、その画素のR’G’B’ラスタデータに対しTagとして1を付与し(ステップ107)、得られたTag付きR’G’B’ラスタデータを出力する。一方、その画素がイメージオブジェクトを構成するものではないと判断した場合(その画素がテキストオブジェクトを構成するものと判断した場合)、Tag付与部133は、その画素のR’G’B’ラスタデータに対しTagとして0を付与し(ステップ108)、得られたTag付きR’G’B’ラスタデータを出力する。
次いで、Tag変更部150は、コード生成部170にてコード生成がなされているか否か(第2のモードであるか否か)を判断する(ステップ109)。ここで、コード生成がなされていると判断した場合、Tag変更部150は、入力されてくるTag付きR’G’B’ラスタデータに対し、コード生成部170にて生成されたコード画像データを参照しつつ、画素毎にその画素がコードを打つ(形成する)対象となっているか否かを判断する(ステップ110)。ここで、その画素がコードを打つ対象となっている場合、Tag変更部150は、その画素のTag付きR’G’B’ラスタデータのTagを1に上書きし(ステップ111)、更新されたTag付きR’G’B’ラスタデータを出力する。一方、その画素がコードを打つ対象となっていない場合、Tag変更部150は、その画素のTag付きR’G’B’ラスタデータのTagを0に上書きし(ステップ112)、更新されたTag付きR’G’B’ラスタデータを出力する。一方、ステップ109においてコード生成がなされていない(第2のモードではない)と判断した場合、Tag変更部150は、入力されてくるTag付きR’G’B’ラスタデータをそのままスルーさせ、次のステップ113に移行する。
そして、ステップ102で作成されたRGBラスタデータを構成する全画素に対する処理が完了しているか否かを判断し(ステップ113)、全画素に対する処理が完了していないと判断した場合は、ステップ103に戻って次の画素に対する処理を続行する。一方、全画素に対する処理が完了していると判断した場合は、圧縮部180が、全画素のTag付きR’G’B’ラスタデータに圧縮処理を施し(ステップ114)、得られたTR’G’B’圧縮データをネットワーク3を介してプリンタ2に向けて送信し(ステップ115)、一連の処理を終了する。
つまり、文書画像にコード画像を重畳して印刷する第2のモードでは、プリンタドライバ部110(文書画像生成手段)が、文書画像(電子文書)に基づく文書画像データを生成する一方で、コード生成部170(コード画像生成手段)がコード画像データのコード画像データを生成する。そして、Tag変更部150(付加手段)が、コード生成部170によって生成されたコード画像データを、文書画像データにTag(制御データ)として付加し、プリンタ2に向けて出力を行っている。
図8は、プリンタ2のプリントデータ作成部60にて実行される処理の流れを示すフローチャートである。
ネットワーク3を介してクライアント1からTR’G’B’圧縮データを受信すると(ステップ201)、伸張部210は、このTR’G’B’圧縮データに伸張処理を施し(ステップ202)、元のTag付きR’G’B’ラスタデータを得る。次いで、反転部221は、伸張部210から入力されてくるTag付きR’G’B’ラスタデータに反転処理を施し(ステップ203)、Tag付きYMCラスタデータを得る。なお、得られたTag付きYMCラスタデータは、画素毎にセレクタ部222に出力されていく。
そして、セレクタ部222では、入力されてくるTag付きYMCラスタデータに対し、画素毎にその画素に付与されているTagが1であるか否かを判断する(ステップ204)。
ここで、付与されているTagが1であると判断した場合、セレクタ部222は、その画素のYMCラスタデータ(第1のYMCラスタデータ)を第1墨生成部223に出力する。そして、第1墨生成部223は、入力される第1のYMCラスタデータに墨生成処理を施し(ステップ205)、得られた第1のYMCKデータを出力する。なお、第1墨生成部223における具体的な処理については後述する。また、第1階調補正部224は、この第1のYMCKラスタデータに第1の階調補正処理を施し(ステップ206)、合成部227に出力する。
一方、ステップ204において、付与されているTagが1ではない(付与されているTagが0である)と判断した場合、セレクタ部222は、その画素のYMCラスタデータ(第2のYMCラスタデータ)を第2墨生成部225に出力する。そして、第2墨生成部225は、入力される第2のYMCラスタデータに墨生成処理を施し(ステップ207)、得られた第2のYMCKデータを出力する。なお、第2墨生成部225における具体的な処理については後述する。また、第2階調補正部226は、この第2のYMCKラスタデータに第2の階調補正処理を施し(ステップ208)、合成部227に出力する。
そして、合成部227は、第1階調補正部224から入力されてくる第1のYMCKラスタデータおよび第2階調補正部226から入力されてくる第2のYMCKラスタデータを、画素順に合成する(ステップ209)。その後、ステップ203で作成されたTag付きYMCラスタデータを構成する全画素に対する処理が完了しているか否かを判断し(ステップ210)、全画素に対する処理が完了していないと判断した場合は、ステップ204に戻って次の画素に対する処理を続行する。一方、全画素に対する処理が完了していると判断した場合、合成部227は、これら第1のYMCKラスタデータおよび第2のYMCKラスタデータを合成して得られたYMCKの画像信号を、Y、M、C、Kの順に露光器13に向けて出力し(ステップ211)、一連の処理を終了する。
ここで、図9(a)は、上記ステップ205において第1墨生成部223で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
第1墨生成部223では、まず、第1パラメータ設定部2232が、第1のモードであるか否かを判断する(ステップ301)。なお、モードの判断は、第1のYMCラスタデータに付加されるモード情報に基づいて行われる。ここで、第1のモードであると判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から第1のモードに対応するパラメータAを読み出す(ステップ302)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータAに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを30%に設定し、データ変更部2234に対してデータの変更をなしに設定する(ステップ303)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート30%にてUCR処理を施し(ステップ304)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。次いで、データ変更部2234は、得られた第1のYMCKラスタデータのうちのKデータに対し、変更処理を行うことなくそのまま出力する(ステップ305)。
一方、ステップ301において第1のモードでないと判断した場合(第2のモードであった場合)、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から第2のモードに対応するパラメータBを読み出す(ステップ306)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータBに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを0%に設定し、データ変更部2234に対してデータの変更をありに設定する(ステップ307)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%にてUCR処理を施し(ステップ308)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。なお、この場合、UCRレートが0%なので、出力される第1のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。次いで、データ変更部2234は、得られた第1のYMCKデータのうちのKデータに対し、その値を所定の濃度値(例えば8ビットの多値データ(最大値255)の場合において50%濃度となる128)に変更する処理を行って出力する(ステップ309)。この場合、データ変更部2234に入力されるKデータの値は0であるが、データ変更部2234から出力されるKデータの値は必ず所定の濃度値になる。したがって、第2のモードの場合、合成部227に出力される第1のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は必ず所定の濃度値のままとなる。
また、図9(b)は、上記ステップ207において第2墨生成部225で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
第2墨生成部225では、まず、第2パラメータ設定部2252が、第1のモードであるか否かを判断する(ステップ401)。ここで、第1のモードであると判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から第1のモードに対応するパラメータCを読み出す(ステップ402)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータCに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを100%に設定する(ステップ403)。そして、第2UCR処理部2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート100%でUCR処理を施し(ステップ404)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。
一方、ステップ401において第1のモードではないと判断した場合(第2のモードであった場合)、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から第2のモードに対応するパラメータDを読み出す(ステップ405)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータDに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを0%に設定する(ステップ406)。そして、第2UCR処理2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%でUCR処理を施し(ステップ407)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。この場合、UCRレートが0%なので、出力される第2のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。また、第1墨生成部223とは異なり、データ変更部2234に対応するものは設けられていないため、第2のモードの場合、合成部227に出力される第2のYMCKラスタデータのKデータの値は0のままとなる。
図10は、本実施の形態に係るプリントシステムにおける、各モード(第1のモード、第2のモード)と、各モードで形成される画像(文書画像、コード画像)を構成するトナーの色と、各モードにおけるTagの使用目的との関係を示す図表である。
例えば文書画像のみを印刷する第1のモードでは、第1の画像データすなわち文書画像データに基づき、文書画像がY、M、C、Kの全色のトナーを用いて形成される。なお、第1のモードでは、文書画像における黒が当然のことながらKのトナーによって形成される。また、各画素に付与されるTagはオブジェクト判別(Tag=1ならイメージオブジェクト、Tag=0ならテキストオブジェクト)に使用される。このため、第1のモードでは、Tagの値に基づいてオブジェクト毎に異なる墨生成処理を施すことができる。なお、第1のモードでは、第1UCR処理部2233および第2UCR処理部2253において所定のUCRレート(0%ではない)で墨生成を行っている。このとき、第1UCR処理部2233および第2UCR処理部2253におけるUCRレートを異ならせる(この例ではイメージオブジェクトに対するUCRレートをテキストオブジェクトに対するUCRレートよりも低くする)ことで、対応するオブジェクトに適した墨生成を行うことができる。すなわち、イメージに対しては例えば画質を重視した画像処理を、テキストに対しては例えば見やすさを重視した画像処理を、それぞれ施すことが可能になる。
一方、例えば文書画像にコード画像を重畳して印刷する第2のモードでは、第2の画像データすなわち文書画像データおよびコード画像データに基づき、文書画像がY、M、Cのトナーを用いて形成され、コード画像がKのトナーを用いて形成される。なお、第2のモードでは、文書画像における黒がY、M、Cのトナーの重ね合わせによって形成される。すなわち、第2のモードでは、文書画像の形成にKのトナーを使用しておらず、そのKのトナーによってコード画像を形成している。また、各画素に付与されるTagはコード画像形成の有無の判別(Tag=1ならコードを形成する、Tag=0ならコードを形成しない)に使用される。このため、第2のモードでは、Tagの値に基づいてコード画像を得ることができる。なお、第2のモードでは、第1UCR処理部2233および第2UCR処理部2253において墨生成を行う際のUCRレートをそれぞれ0%に設定し、第1のYMCラスタデータおよび第2のYMCラスタデータすなわち文書画像データからKデータが生成されるのを防止している。そして、第1墨生成部223に設けられたデータ変更部2234では、このようにして作成された第1のYMCKラスタデータのKデータを所定の濃度値に置き換えることで、コード画像データを重畳させている。
図11は、文書画像にコード画像を重畳して印刷する第2のモードにおけるコード画像の形成例を説明するための図である。ここで、図11(a)はKのトナーにより形成されるコード画像を示しており、図11(b)は図11(a)に示すコード画像の元となるTagを示している。なお、図11(a)に示すコード画像は、図2(a)に示したものと同じである。
上述したように、本実施の形態では、第2のモードの場合に、オブジェクト情報に関するTagが付与されたTag付きR’G’B’ラスタデータに対し、コード画像データに基づいて作成されたTagを上書きしている。このとき、コード画像の形成対象となる図11(a)に示す黒塗りの領域に対応する画素では、図11(b)に示すようにTagが1に設定される。一方、コード画像の形成対象となっていない斜線の領域および塗りつぶしのない領域に対応する画素では、図11(b)に示すようにTagが0に設定される。そして、本実施の形態では、上述したように図11(a)の最小の四角が2ドット×2ドットの画素で構成されているため、Tagが1に設定される領域も、それぞれ2ドット×2ドットとなる。
本実施の形態では、このようにしてコード画像の形成を行っている。このため、付加手段として機能するTag変更部150では、文書画像データすなわちR’G’B’ラスタデータを構成する各画素に、制御データとしてコード画像の有無に対応するTag(タグ)を付加している。
このように、本実施の形態に係るプリントシステムにおいて、第1のモードでは、通常通り、YMCKのトナーを用いて文書画像を形成する。
一方、このプリントシステムにおいて、第2のモードでは、YMCのトナーにて文書画像を形成し、Kのトナーを用いてコード画像を形成する。
すなわち、ラスタライズされた画像データの各画素に付与するTagの意味づけを変えるだけで、文書画像のみを形成する画像形成機能(第1のモード)および文書画像及びコード画像を重畳して形成する画像形成機能(第2のモード)の両者を、1台のプリンタ2で実現するため、プリンタ2の汎用性が向上する。
ところで、上記第2のモードによって作成した書類(文書画像にコード画像を重畳させた用紙)に対し、例えば電子ペンと呼ばれる筆記用具による追記動作が想定されている。なお、ここでいう電子ペンは、例えば近赤外領域に感度を有するデジタルカメラ等の光学的読み取り機構を内蔵したペンである。この電子ペンを用いて用紙に形成されたコード画像のパターンの読み取りを行うことで、この用紙上でのペン先の位置や移動軌跡を特定することが可能になる。そして、このペン先の位置や移動軌跡の情報を処理することにより、用紙上に書かれた手書きの文字やイメージを電子情報として利用することができるようになる。
本実施の形態では、第2のモードにおいて、文書画像がYMCのトナーで形成され、コード画像がKのトナーで形成される。ここで、YMCの各色トナーは、Kのトナーに比べ、近赤外領域における光吸収特性が低い。このため、YMCトナーを重ね合わせて形成される黒のトナー像においても、近赤外領域における光吸収特性はKのトナーと比べて低い。一方、Kのトナーは、カーボンブラックが含まれているために近赤外領域における光吸収特性がYMCの各色トナーに比べて高い。
したがって、電子ペンは、Kのトナーによって形成されるコード画像のみを読み取る。このとき、YMCのトナーによる文書画像とKのトナーによるコード画像とが重なっていても、電子ペンはコード画像のみを読み取る。
また、本実施の形態では、文書画像の元となるRGBラスタデータからKのトナーで画像を形成するデータが作成されないので、文書画像によってコード画像が壊されるという事態も生じ得ない。
さらに、上記第2のモードによって作成した書類を、近赤外領域に感度を有するスキャナ等によって読み取り、読み取られたコード画像に含まれる識別情報に基づいて例えば複写動作の可否を判断する、といったことが想定されている。
本実施の形態では、用紙の全面にKのトナーによるコード画像が形成される。しかも、上述したようにコード画像が文書画像によって壊されることもない。したがって、用紙上のどこをスキャナで読み取ったとしても、読み取り結果から識別情報が取得される。
なお、本実施の形態では、コード画像すなわちKのトナーにて画像形成を行う画素に対し、文書画像すなわちYMCのトナーによる画像形成を行っているが、Kのトナーによりコード画像を形成する画素に対しては必ずしもYMCのトナーによる文書画像の形成を行わなくてもよい。これは、コード画像の形成部位では、Kのトナーにより他のYMCのトナーがマスクされてしまうためである。ただし、Kのトナーによるコード画像の形成部位にYMCのトナーによる文書画像を全く形成しない場合には、この部位においてトナーの飛び散り等が生じるおそれがあることから、ある程度はYMCのトナーを用いた画像の形成を行うことが好ましい。
<実施の形態2>
本実施の形態は、実施の形態1とほぼ同様であるが、図3に括弧書きで示すように、プリンタ2に、Kのトナーを内蔵するK現像器50Kに代えて不可視トナー(IRのトナーという)を内蔵する不可視現像器50IRを備えた四色現像器14を装着するようにしたものである。したがって、本実施の形態では、図2に示すプリンタ2を用いて例えばフルカラーを出力する場合に、プリントデータ作成部60からY、M、C、Kの順に画像信号が出力され、Y、M、C、IRの順にトナー像の形成が行われる。つまり、本実施の形態では、Kの画像信号に基づいてIRのトナー像が形成されることになる。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
不可視現像器50IRに収容されるIRのトナーは、バインダ中に、例えば、可視光領域における最大吸光率が例えば7%以下であり、近赤外領域における吸光率が例えば30%以上の赤外線吸収剤を含んで構成される。このような赤外線吸収剤としては、例えば、シリカガラス中に銅およびリンを含有させたCu−P含有ガラスのフリット、酸化イッテルビウム(Yb2O3)、バナジルナフタロシアニン等のナフタロシアニン、あるいはクロコニウム等が挙げられる。ここで、図12は、これら赤外線吸収剤のうち、ナフタロシアニンおよびクロコニウムの光反射特性を示している。なお、図12において、横軸は光の波長(nm)であり縦軸は反射率(%)である。同図から明らかなように、これらの材料は、可視光領域に対して近赤外領域での反射率が低いこと、換言すれば、近赤外領域での光吸収が大きいことがわかる。なお、ここでいう「可視」および「不可視」は、目視により認識できるかどうかとは関係しない。この例では、用紙に印刷(形成)された画像が、可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性の有無により認識できるかどうかで、「可視」と「不可視」とを区別している。
図13(a)は、第1墨生成部223の第1パラメータ記憶部2231に保持される第1パラメータ(パラメータAおよびパラメータB)を例示している。本実施の形態では、Kトナーを使用できないために、パラメータAにおけるUCRレートが0%に設定される点が実施の形態1とは異なる。なお、パラメータBにおけるUCRレートは、実施の形態1と同様0%のままである。また、パラメータAにおいて「データ変更なし」に設定される点、および、パラメータBにおいて「データ変更あり」に設定される点も実施の形態1と同じである。
一方、図13(b)は、第2墨生成部225の第2パラメータ記憶部2251に保持される第2パラメータ(パラメータCおよびパラメータD)を例示している。本実施の形態では、パラメータCにおけるUCRレートが、上記パラメータAと同じ理由により0%に設定される。なお、パラメータDにおけるUCRレートは、実施の形態1と同様0%のままである。
次に、印刷処理における具体的な処理手順について説明する。ただし、本実施の形態における基本的な処理手順は実施の形態1と同じであり、第1墨生成部223および第2墨生成部225における処理の内容が一部異なっているだけである。このため、図8のステップ205に示す第1墨生成部223における処理、および、図8のステップ207に示す第2墨生成部225における処理について説明を行う。
図14(a)は、上記ステップ205において第1墨生成部223で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
第1墨生成部223では、まず、第1パラメータ設定部2232が、第1のモードであるか否かを判断する(ステップ501)。なお、モードの判断は、第1のYMCラスタデータに付加されるモード情報に基づいて行われる。ここで、第1のモードであると判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から第1のモードに対応するパラメータAを読み出す(ステップ502)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータAに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを0%に設定し、データ変更部2234に対してデータの変更をなしに設定する(ステップ503)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%にてUCR処理を施し(ステップ504)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。なお、この場合、UCRレートが0%なので、出力される第1のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。次いで、データ変更部2234は、得られた第1のYMCKラスタデータのうちのKデータに対し、変更処理を行うことなくそのまま出力する(ステップ505)。
一方、ステップ501において第1のモードでないと判断した場合(第2のモードであった場合)、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から第2のモードに対応するパラメータBを読み出す(ステップ506)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータBに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを0%に設定し、データ変更部2234に対してデータの変更をありに設定する(ステップ507)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%てにUCR処理を施し(ステップ508)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。なお、この場合、UCRレートが0%なので、出力される第1のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。次いで、データ変更部2234は、得られた第1のYMCKデータのうちのKデータに対し、その値を所定の濃度に変更する処理を行って出力する(ステップ509)。この場合、データ変更部2234に入力されるKデータの値は0であるが、データ変更部2234から出力されるKデータの値は必ず所定の濃度値になる。したがって、第2のモードの場合、合成部227に出力される第1のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は必ず所定の濃度値のままとなる。
また、図14(b)は、上記ステップ207において第2墨生成部225で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
第2墨生成部225では、まず、第2パラメータ設定部2252が、第1のモードであるか否かを判断する(ステップ601)。ここで、第1のモードであると判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から第1のモードに対応するパラメータCを読み出す(ステップ602)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータCに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを0%に設定する(ステップ603)。そして、第2UCR処理部2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%でUCR処理を施し(ステップ604)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。なお、この場合、UCRレートが0%なので、出力される第2のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。
一方、ステップ601において第1のモードではないと判断した場合(第2のモードであった場合)、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から第2のモードに対応するパラメータDを読み出す(ステップ605)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータDに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを0%に設定する(ステップ606)。そして、第2UCR処理部2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%でUCR処理を施し(ステップ607)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。この場合、UCRレートが0%なので、出力される第2のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。また、第1墨生成部223とは異なり、データ変更部2234に対応するものは設けられていないため、第2のモードの場合、合成部227に出力される第2のYMCKラスタデータのKデータの値は0のままとなる。
図15は、本実施の形態に係るプリントシステムにおける、各モード(第1のモード、第2のモード)と、各モードで形成される画像(文書画像、コード画像)を構成するトナーの色と、各モードにおけるTagの使用目的との関係を示す図表である。
例えば文書画像のみを印刷する第1のモードでは、文書画像がY、M、Cのトナーを用いて形成される。なお、本実施の形態では、実施の形態1とは異なり、文書画像における黒もY、M、Cのトナーの重ね合わせによって形成される。また、各画素に付与されるTagはオブジェクト判別に使用される。ただし、本実施の形態では、UCR処理によってYMCをKに置き換えることができないため、UCR処理を利用した画質調整を行うことはできない。ただし、例えば第1階調補正部224による階調補正特性をイメージオブジェクトの場合とテキストオブジェクトの場合とで異ならせることにより、画質調整を図ることが可能である。
一方、例えば文書画像にコード画像を重畳して印刷する第2のモードでは、文書画像がY、M、Cのトナーを用いて形成され、コード画像がIRのトナーを用いて形成される。なお、文書画像における黒は、第1のモードと同様にY、M、Cのトナーの重ね合わせによって形成される。また、実施の形態1と同様、各画素に付与されるTagはコード画像形成の有無の判別に使用される。このため、第2のモードでは、Tagの値に基づいてコード画像を得ることができる。そして、第1墨生成部223に設けられたデータ変更部2234では、このようにして作成された第1のYMCKラスタデータのKデータを所定の濃度値に置き換えることで、コード画像データを重畳させている。
このように、本実施の形態に係るプリントシステムにおいて、第1のモードでは、YMCトナーを用いて文書画像を形成する。
一方、このプリントシステムにおいて、第2のモードでは、YMCトナーにて文書画像を形成し、IRトナーを用いてコード画像を形成する。
すなわち、ラスタライズされた画像データの各画素に付与するTagの意味づけを変えるだけで、文書画像のみを形成する画像形成機能(第1のモード)および文書画像及びコード画像を重畳して形成する画像形成機能(第2のモード)の両者を、1台のプリンタ2で実現することになる。しかも、本実施の形態では、第1パラメータ記憶部2231に保持されるパラメータAおよび第2パラメータ記憶部2251に保持されるパラメータCのUCRレートを書き換えるだけで、プリンタ2にYMCKの各色現像器を搭載した四色現像器14を装着した場合、および、プリンタ2にYMCIRの各色現像器を搭載した四色現像器14を装着した場合の両者に対応することになり、プリンタ2の汎用性がさらに向上する。
また、本実施の形態では、YMCの各色トナーは、IRのトナーに比べ、近赤外領域における光吸収特性が低い。このため、YMCトナーを重ね合わせて形成される黒のトナー像においても、近赤外領域における光吸収特性はIRのトナー像よりも低い。一方、IRのトナーは、図12にも示したように近赤外領域における光吸収特性がYMCのトナーよりも高い。
このため、本実施の形態における第2のモードで出力した用紙に対し電子ペンを用いて追記動作を行ったり、あるいは、スキャナを用いた画像読み取りを行ったりした場合にも、コード画像を的確に読み取ることが可能になる。
なお、本実施の形態では、可視領域においてはほぼ透明なIRトナーを用いてコード画像の形成を行っている。したがって、IRのトナーによるコード画像の形成部位では、背景色が透けて見える。このため、実施の形態1とは異なり、IRのトナーによりコード画像を形成する画素に対してはYMCのトナーによる文書画像の形成を行うことが必要になる。
<実施の形態3>
本実施の形態は、実施の形態1とほぼ同様であるが、図16に示すように、プリンタ2に、YMCKの四色の現像器50を搭載した四色現像器14(図3参照)に代えて、YMCKIRを含む五色の現像器90(具体的にはイエロー現像器90Y、マゼンタ現像器90M、シアン現像器90C、黒現像器90K、不可視現像器90IR)を備えた五色現像器80を装着可能としたものである。つまり、本実施の形態では、ユーザのニーズに応じて、プリンタ2に、図3に示す四色現像器14を搭載した構成、または、図16に示す五色現像器80を搭載した構成のいずれかを選択可能としている。また、例えば初期状態(例えば購入時)において四色現像器14を搭載していたプリンタ2に、後で五色現像器80を搭載することもできる。もちろん、その逆も可能である。その場合には、プリンタ2に四色現像器14が装着されているか五色現像器80が装着されているかに応じて、制御部40が自動的に画像形成動作における各種制御(例えばロータリ現像器の回転角度など)を変更する。また、本実施の形態では、プリンタ2に四色現像器14が装着されているか五色現像器80が装着されているかに応じて、プリントデータ作成部60が自動的に出力する画像信号の内容を変更している。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施の形態において、五色現像器80を構成するイエロー現像器90Y、マゼンタ現像器90M、シアン現像器90Cは、四色現像器14を構成するイエロー現像器50Y、マゼンタ現像器50M、シアン現像器50Cそれぞれに収容されるYトナー、Mトナー、Cトナーと同じものを内蔵している。また、五色現像器80を構成する不可視現像器90IRは、実施の形態2で説明した不可視現像器50IRに収容されるIRトナーと同じものを内蔵している。他方、本実施の形態において、五色現像器80を構成する黒現像器90Kは、四色現像器14を構成する黒現像器50Kに収容されるKトナーと同じものを内蔵していない。より具体的に説明すると、実施の形態1でも説明したように、四色現像器14を構成する黒現像器50Kで用いられるKトナーは、近赤外領域に吸収を有するカーボンブラックを含んでいた。これに対し、五色現像器80を構成する黒現像器90Kでは、カーボンブラックを含まず、近赤外領域における光吸収特性がIRトナーに比べて低い染料あるいは顔料にて着色されたKトナー(以下の説明ではノンカーボントナー:NKトナーと呼ぶ)を内蔵している。
本実施の形態において、四色現像器14を装着するプリンタ2では、実施の形態1と同様に、第1のモードおよび第2のモードでフルカラーを出力する場合、プリントデータ作成部60からYMCKの順で画像信号が出力される。そして、感光体ドラム11上には、YMCKの順にトナー像の形成が行われ、各色のトナー像が順次中間転写ベルト15に一次転写された後、用紙に二次転写される。つまり、この場合は、1ページ分の画像形成を行うのに中間転写ベルト15が四回転する。
また、五色現像器80を装着するプリンタ2では、第1のモードでフルカラーを出力する場合、プリントデータ作成部60からYMCKの順で画像信号が出力される。そして、感光体ドラム11上には、YMCKの順にトナー像の形成が行われ、各色のトナー像が順次中間転写ベルト15に一次転写された後、用紙に二次転写される。つまり、この場合は、IRの画像形成が行われないので、1ページ分の画像形成を行うのに中間転写ベルト15が四回転する。
一方、五色現像器80を装着するプリンタ2において、第2のモードでフルカラーを出力する場合は、プリントデータ作成部60からYMCKIRの順で画像信号が出力される。そして、感光体ドラム11上には、YMCKIRの順にトナー像の形成が行われ、各色のトナー像が順次中間転写ベルト15に一次転写された後、用紙に二次転写される。つまり、この場合は、IRの画像形成が行われるので、1ページ分の画像形成を行うのに中間転写ベルト15が五回転する。
図17は、本実施の形態におけるクライアント1およびプリンタ2の画像処理系を説明するためのブロック図を示している。なお、クライアント1の画像処理系の構成は実施の形態1と同一であり、プリンタ2におけるプリントデータ作成部60の構成も実施の形態1とほぼ同様である。
ただし、本実施の形態では、第1墨生成部223が、入力される第1のYMCラスタデータを第1のYMCKラスタデータに変換する際、必要に応じてIRのデータ(以下の説明では第1のIRラスタデータと呼ぶ)を生成している。具体的に説明すると、第1墨生成部223では、プリンタ2に四色現像器14が装着されている場合には第1のIRラスタデータの生成を行わない一方で、プリンタ2に五色現像器80が装着されている場合には第1のIRラスタデータの生成を行う。なお、第1のIRラスタデータを含む第1のYMCKラスタデータのことを、第1のYMCKIRラスタデータと呼ぶ。また、第1階調補正部224は、第1墨生成部223から入力される第1のYMCKラスタデータあるいは第1のYMCKIRラスタデータに、色毎に階調補正を施している。
他方、本実施の形態では、第2墨生成部225が、入力される第2のYMCラスタデータを第2のYMCKラスタデータに変換する際、必要に応じてIRのデータ(以下の説明では第2のIRラスタデータと呼ぶ)を生成している。具体的に説明すると、第2墨生成部225では、プリンタ2に四色現像器14が装着されている場合には第2のIRラスタデータの生成を行わない一方で、プリンタ2に五色現像器80が装着されている場合には第2のIRラスタデータの生成を行う。なお、第2のIRラスタデータを含む第2のYMCKラスタデータのことを、第2のYMCKIRラスタデータと呼ぶ。また、第2階調補正部226は、第2墨生成部225から入力される第2のYMCKラスタデータあるいは第2のYMCKIRラスタデータに、色毎に階調補正を施している。
そして、合成部227は、第1のモードにおいて、第1階調補正部224から入力される第1のYMCKラスタデータと第2階調補正部226から入力される第2のYMCKラスタデータとを画素順に並べて合成し、YMCKラスタデータを生成する。このとき、合成部227は、得られたYMCKデータを色毎に並べ替え、Y、M、C、Kの順に露光器13に出力する。
また、合成部227は、第2のモードにおいて、第1階調補正部224から入力される第1のYMCKIRラスタデータと第2階調補正部226から入力される第2のYMCKIRラスタデータとを画素順に並べて合成し、YMCKIRラスタデータを生成する。このとき、合成部227は、得られたYMCKIRデータを色毎に並べ替え、Y、M、C、K、IRの順に露光器13に出力する。
図18(a)は、プリントデータ作成部60に設けられる第1墨生成部223の構成例を示す図である。第1墨生成部223は、第1パラメータ記憶部2231、第1パラメータ設定部2232、第1UCR処理部2233、第1データ設定部2235を備える。
第1パラメータ記憶部2231は、第1墨生成部223における墨生成処理およびIRラスタデータの生成処理に使用される第1パラメータ(パラメータS、パラメータT、パラメータU、パラメータV)を保持している。なお、パラメータSは第1のモード且つ四色現像(YMCK)時における第1UCR処理部2233および第1データ設定部2235の設定値を含んでいる。また、パラメータTは第1のモード且つ五色現像(YMCKIR)時における第1UCR処理部2233および第1データ設定部2235の設定値を含んでいる。さらに、パラメータUは第2のモード且つ四色現像時における第1UCR処理部2233および第1データ設定部2235の設定値を含んでいる。さらにまた、パラメータVは第2のモード且つ五色現像時における第1UCR処理部2233および第1データ設定部2235の設定値を含んでいる。これらパラメータS、パラメータT、パラメータU、およびパラメータVの詳細については後述する。
第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231からいずれかのパラメータを読み出す。また、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータにおける各設定値を第1UCR処理部2233および第1データ設定部2235に設定する。
第1UCR処理部2233は、セレクタ部222から入力されてくる第1のYMCラスタデータ(Tag=1が付与されているデータ)に、画素毎に下地除去処理を施す。このとき、第1UCR処理部2233は、第1パラメータ設定部2232にて設定されるUCRレートに基づいて第1のYMCラスタデータに対し墨生成処理を行う。
第1データ設定部2235は、第1UCR処理部2233から出力される第1のYMCKラスタデータを構成するKデータを、必要に応じて所定の濃度値に置き換える(変更する)処理を施す。また、第1データ設定部2235は、必要に応じてIRデータを生成する。そして、第1データ設定部2235は、第1パラメータ設定部2232にて設定される設定値に応じてKデータの変更の有無およびIRデータの生成の有無を決定する。
図18(b)は、プリントデータ作成部60に設けられる第2墨生成部225の構成例を示す図である。第2墨生成部225は、第2パラメータ記憶部2251、第2パラメータ設定部2252、第2UCR処理部2253、第2データ設定部2255を備える。
第2パラメータ記憶部2251は、第2墨生成部225における墨生成処理およびIRラスタデータの生成処理に使用される第2パラメータ(パラメータW、パラメータX、パラメータY、パラメータZ)を保持している。なお、パラメータWは第1のモード且つ四色現像時における第2UCR処理部2253および第2データ設定部2255の設定値を含んでいる。また、パラメータXは第1のモード且つ五色現像時における第2UCR処理部2253および第2データ設定部2255の設定値を含んでいる。さらに、パラメータYは第2のモード且つ四色現像時における第2UCR処理部2253および第2データ設定部2255の設定値を含んでいる。さらにまた、パラメータZは第2のモード且つ五色現像時における第2UCR処理部2253および第2データ設定部2255の設定値を含んでいる。これらパラメータW、パラメータX、パラメータY、およびパラメータZの詳細については後述する。
第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251からいずれかのパラメータを読み出す。また、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータにおける各設定値を第2UCR処理部2253および第2データ設定部2255に設定する。
第2UCR処理部2253は、セレクタ部222から入力されてくる第2のYMCラスタデータ(Tag=0が付与されているデータ)に、画素毎に下地除去処理を施す。このとき、第2UCR処理部2253は、第2パラメータ設定部2252にて設定されるUCRレートに基づいて第2のYMCラスタデータに対し墨生成処理を行う。
第2データ設定部2255は、必要に応じてIRデータを生成する。そして、第2データ設定部2255は、第2パラメータ設定部2252にて設定される設定値に応じてIRデータの生成の有無を決定する。
図19(a)は、第1墨生成部223の第1パラメータ記憶部2231に保持される第1パラメータ(パラメータS、パラメータT、パラメータU、パラメータV)を例示している。第1パラメータは、第1UCR処理部2233で使用されるUCRレートの設定情報および第1データ設定部2235で使用されるKデータ変更の有無およびIRデータ出力の有無の設定情報を含んでいる。第1パラメータのうち、パラメータSは、四色現像器14を搭載したプリンタ2を用いて文書画像を出力する第1のモードにおいてTag=1が設定される画素、すなわち、イメージオブジェクトを構成する画素に対する設定情報である。また、パラメータTは、五色現像器80を搭載したプリンタ2を用いて文書画像を出力する第1のモードにおいてTag=1が設定される画素、すなわち、イメージオブジェクトを構成する画素に対する設定情報である。さらに、パラメータUは、四色現像器14を搭載したプリンタ2を用いて文書画像及びコード画像を出力する第2のモードにおいてTag=1が設定される画素、すなわち、コード画像を構成する画素に対する設定情報である。さらにまた、パラメータVは、五色現像器80を搭載したプリンタ2を用いて文書画像及びコード画像を出力する第2のモードにおいてTag=1が設定される画素、すなわち、コード画像を構成する画素に対する設定情報である。そして、この例では、パラメータSが、「UCRレート30%」、「Kデータ変更なし」、「IRデータ不要(出力する必要なし)」に設定される。また、パラメータTが、「UCRレート30%」、「Kデータ変更なし」、「IRデータなし(0を出力)」に設定される。さらに、パラメータUは、「UCRレート0%」、「Kデータ変更あり」、「IRデータ不要」に設定される。さらにまた、パラメータVが、「UCRレート50%」、「Kデータ変更なし」、「IRデータあり(所定の濃度値で出力)」に設定される。
一方、図19(b)は、第2墨生成部225の第2パラメータ記憶部2251に保持される第2パラメータ(パラメータW、パラメータX、パラメータY、パラメータZ)を例示している。第2パラメータは第2UCR処理部2253で使用されるUCRレートの設定情報および第2データ設定部2255で使用されるIRデータ出力の有無の設定情報を含んでいる。第2パラメータのうち、パラメータWは、四色現像器14を搭載したプリンタ2を用いて文書画像を出力する第1のモードにおいてTag=0が設定される画素、すなわち、テキストオブジェクトを構成する画素に対する設定情報である。また、パラメータXは、五色現像器80を搭載したプリンタ2を用いて文書画像を出力する第1のモードにおいてTag=0が設定される画素、すなわち、テキストオブジェクトを構成する画素に対する設定情報である。さらに、パラメータYは、四色現像器14を搭載したプリンタ2を用いて文書画像及びコード画像を出力する第2のモードにおいてTag=0が設定される画素、すなわち、コード画像を構成しない画素に対する設定情報である。さらにまた、パラメータZは、五色現像器80を搭載したプリンタ2を用いて文書画像及びコード画像を出力する第2のモードにおいてTag=0が設定される画素、すなわち、コード画像を構成しない画素に対する設定情報である。そして、この例では、パラメータWが、「UCRレート100%」、「IRデータ不要」に設定される。また、パラメータXが、「UCRレート100%」、「IRデータなし」に設定される。さらに、パラメータYは、「UCRレート0%」、「IRデータ不要」に設定される。さらにまた、パラメータZが、「UCRレート50%」、「IRデータなし」に設定される。
では、印刷処理における具体的な手順について説明する。なお、クライアント1における処理の手順は実施の形態1と同じであり、図7に示すフローチャートにしたがって処理がなされる。また、プリンタ2における処理の手順も基本的には実施の形態1と同様であり、図8に示すフローチャートにしたがって処理がなされる。ただし、ステップ205における第1墨生成処理およびステップ207における第2墨生成処理の具体的な手順が一部異なるため、以下に詳細に説明する。また、本実施の形態では、プリンタ2に四色現像器14が装着されている場合(第1のモード、第2のモード)およびプリンタ2に五色現像器80が装着されている場合において第1のモードで画像形成動作を行う際には、図8のステップ211において、図示の通りYMCKの順に画像信号を出力する。一方、プリンタ2に五色現像器80が装着されている場合において第2のモードで画像形成動作を行う際には、図8のステップ211において、YMCKIRの順に画像信号を出力することになる。
ここで、図20は、上記ステップ205において第1墨生成部223で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
第1墨生成部223では、まず、第1パラメータ設定部2232が、第1のモードであるか否かを判断する(ステップ701)。ここで、第1のモードであると判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、次に、プリンタ2に四色現像器14が装着されているか否かを判断する(ステップ702)。なお、プリンタ2の制御部40は、四色現像器14あるいは五色現像器80のどちらが装着されているかを判別する機能を有しており、その判別情報を第1パラメータ設定部2232に出力している。
ここで、四色現像器14が装着されていると判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から対応するパラメータSを読み出す(ステップ703)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータSに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを30%に設定し、第1データ設定部2235に対してKデータの変更をなしに、IRデータの出力を不要に設定する(ステップ704)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート30%にてUCR処理を施し(ステップ705)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。次いで、第1データ設定部2235は、得られた第1のYMCKラスタデータのうちのKデータに対する変更処理を行わず、IRデータの生成も行わずに出力する(ステップ706)。したがって、この場合は、第1UCR処理部2233から出力される第1のYMCKラスタデータがそのまま出力されることになる。
一方、ステップ702において四色現像器14が装着されていない(五色現像器80が装着されている)と判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から対応するパラメータTを読み出す(ステップ707)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータTに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを30%に設定し、第1データ設定部2235に対してKデータの変更をなしに、IRデータの出力をなし(濃度値0)に設定する(ステップ708)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート30%にてUCR処理を施し(ステップ709)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。次いで、第1データ設定部2235は、得られた第1のYMCKラスタデータのうちのKデータに対する変更処理を行わず、濃度値0で生成したIRデータを付加して出力する(ステップ710)。したがって、この場合は、第1UCR処理部2233から出力される第1のYMCKラスタデータに第1データ設定部2235から出力されるIRデータ(濃度値0)を加えた第1のYMCKIRラスタデータが出力されることになる。
また、ステップ701において、第1のモードではない(第2のモードである)と判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、次に、プリンタ2に四色現像器14が装着されているか否かを判断する(ステップ711)。
ここで、四色現像器14が装着されていると判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から対応するパラメータUを読み出す(ステップ712)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータUに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを0%に設定し、第1データ設定部2235に対してKデータの変更をありに、IRデータの出力を不要に設定する(ステップ713)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%にてUCR処理を施し(ステップ714)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。なお、この場合、UCRレートが0%なので、出力される第1のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。次いで、第1データ設定部2235は、得られた第1のYMCKデータのうちのKデータに対し、その値を所定の濃度値に変更する処理を行う一方で、IRデータの生成を行わずに出力する(ステップ715)。したがって、この場合は、Kデータが所定の濃度値に変更された第1のYMCKラスタデータが出力されることになる。
一方、ステップ711において四色現像器14が装着されていない(五色現像器80が装着されている)と判断した場合、第1パラメータ設定部2232は、第1パラメータ記憶部2231から対応するパラメータVを読み出す(ステップ716)。次いで、第1パラメータ設定部2232は、読み出したパラメータVに基づき、第1UCR処理部2233に対してUCRレートを50%に設定し、第1データ設定部2235に対してKデータの変更をなしに、IRデータの出力をあり(濃度値128)に設定する(ステップ717)。そして、第1UCR処理部2233は、入力されてくる第1のYMCラスタデータに対し、UCRレート50%にてUCR処理を施し(ステップ718)、得られた第1のYMCKラスタデータを出力する。次いで、第1データ設定部2235は、得られた第1のYMCKラスタデータのうちのKデータに対する変更処理を行わず、濃度値128(所定値)で生成したIRデータを付加して出力する(ステップ719)。したがって、この場合は、第1UCR処理部2233から出力される第1のYMCKラスタデータに第1データ設定部2235から出力されるIRデータ(濃度値128)を加えた第1のYMCKIRラスタデータが出力されることになる。
また、図21は、上記ステップ207において第2墨生成部225で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
第2墨生成部225では、第2パラメータ設定部2252が、第1のモードであるか否かを判断する(ステップ801)。ここで、第1のモードであると判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、次に、プリンタ2に四色現像器14が装着されているか否かを判断する(ステップ802)。
ここで、四色現像器14が装着されていると判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から対応するパラメータWを読み出す(ステップ803)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータWに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを100%に設定し、第2データ設定部2255に対してIRデータの出力を不要に設定する(ステップ804)。そして、第2UCR処理部2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート100%にてUCR処理を施し(ステップ805)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。次いで、第2データ設定部2255は、得られた第2のYMCKラスタデータに対しIRデータの生成を行わずに出力する(ステップ806)。したがって、この場合は、第2UCR処理部2253から出力される第2のYMCKラスタデータがそのまま出力されることになる。
一方、ステップ802において四色現像器14が装着されていない(五色現像器80が装着されている)と判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から対応するパラメータXを読み出す(ステップ807)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータXに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを100%に設定し、第2データ設定部2255に対してIRデータの出力をなし(濃度値0)に設定する(ステップ808)。そして、第2UCR処理部2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート100%にてUCR処理を施し(ステップ809)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。次いで、第2データ設定部2255は、得られた第2のYMCKラスタデータに、濃度値0で生成したIRデータを付加して出力する(ステップ810)。したがって、この場合は、第2UCR処理部2253から出力される第2のYMCKラスタデータに第2データ設定部2255から出力されるIRデータ(濃度値0)を加えた第2のYMCKIRラスタデータが出力されることになる。
また、ステップ801において、第1のモードではない(第2のモードである)と判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、次に、プリンタ2に四色現像器14が装着されているか否かを判断する(ステップ811)。
ここで、四色現像器14が装着されていると判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から対応するパラメータYを読み出す(ステップ812)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータYに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを0%に設定し、第2データ設定部2255に対してIRデータの出力を不要に設定する(ステップ813)。そして、第2UCR処理部2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート0%にてUCR処理を施し(ステップ814)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。なお、この場合、UCRレートが0%なので、出力される第2のYMCKラスタデータにおけるKデータの値は0となる。次いで、第2データ設定部2255は、得られた第2のYMCKデータのうちのKデータに対し、IRデータの生成を行わずに出力する(ステップ815)。したがって、この場合は、第2UCR処理部2253から出力される第2のYMCKラスタデータがそのまま出力されることになる。
一方、ステップ811において四色現像器14が装着されていない(五色現像器80が装着されている)と判断した場合、第2パラメータ設定部2252は、第2パラメータ記憶部2251から対応するパラメータZを読み出す(ステップ816)。次いで、第2パラメータ設定部2252は、読み出したパラメータZに基づき、第2UCR処理部2253に対してUCRレートを50%に設定し、第2データ設定部2255に対してIRデータの出力をなし(濃度値0)に設定する(ステップ817)。そして、第2UCR処理部2253は、入力されてくる第2のYMCラスタデータに対し、UCRレート50%にてUCR処理を施し(ステップ818)、得られた第2のYMCKラスタデータを出力する。次いで、第2データ設定部2255は、得られた第2のYMCKラスタデータに、濃度値0で生成したIRデータを付加して出力する(ステップ819)。したがって、この場合は、第2UCR処理部2253から出力される第2のYMCKラスタデータに第2データ設定部2255から出力されるIRデータ(濃度値0)を加えた第2のYMCKIRラスタデータが出力されることになる。
図22は、本実施の形態に係るプリントシステムにおける、プリンタに装着されるロータリ現像器(四色、五色)と、各モード(第1のモード、第2のモード)と、各モードで形成される画像(文書画像、コード画像)を構成するトナーの色と、各モードにおけるTagの使用目的との関係を示す図表である。
例えば、プリンタ2に四色現像器14が装着された場合には次のようになる。第1のモードでは、文書画像がY、M、C、Kの全色のトナーを用いて形成される。また、第2のモードでは、文書画像がY、M、Cのトナーを用いて形成され、コード画像がKのトナーを用いて形成される。
一方、プリンタ2に五色現像器80が装着された場合には次のようになる。第1のモードでは、文書画像がY、M、C、NKのトナーを用いて形成される。また、第2のモードでは、文書画像がY、M、C、NKのトナーを用いて形成され、コード画像がIRのトナーを用いて形成される。
そして、第1のモードでは各画素に付与されるTagがオブジェクト判別に使用され、第2のモードでは各画素に付与されるTagがコード画像形成の有無の判別に使用される。
このように、本実施の形態では、プリンタ2に四色現像器14が装着された場合と五色現像器80が装着された場合とで、プリントデータ作成部60における処理を若干変更することで、いずれの場合にも第1のモードおよび第2のモードによる画像形成が行われる。
なお、五色現像器80を装着したプリンタ2を用いて第2のモードで画像形成を行った場合は、NKのトナーとIRのトナーとが重畳され得る。ただし、上述したようにNKのトナーは近赤外領域における光吸収がIRのトナーに比べて低いため、IRのトナーによって形成されたコード画像を電子ペンやスキャナで読み取る際に、NKのトナーが光学的な妨げとなることはない。
<実施の形態4>
本実施の形態におけるプリントシステムの基本構成は実施の形態1で説明したものとほぼ同様であるが、クライアント1およびプリンタ2のプリントデータ作成部60における画像処理系の構成が異なっている。より具体的に説明すると、本実施の形態では、クライアント1から文書画像データおよびコード画像データをベクトルデータとして送信している。そして、プリンタ2のプリントデータ作成部60では、受け取ったベクトルデータをラスタライズした後、露光器13に出力している。また、本実施の形態では、クライアント1においてROP処理が指定されたか否かに基づいて、文書画像データに施す処理を異ならせている。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
図23は、これらクライアント1およびプリンタ2(プリントデータ作成部60)の画像処理系を説明するためのブロック図を示している。
まず、クライアント1における画像処理系について説明する。クライアント1は、プリンタドライバ部310、振り分け部320、第1処理部330、第2処理部340、ID取得部350、コード生成部360、および出力部370を備える。
文書画像生成手段として機能するプリンタドライバ部310は、実施の形態1におけるプリンタドライバ部110と同様、クライアント1で動作するアプリケーションにて印刷要求がなされたドキュメントデータ等を、プリンタドライバソフトウェアによってジョブデータへと変換する。なお、ジョブデータは、赤(R)、緑(G)、および青(B)の各色画像情報を含むベクトルデータ(RGBベクトルデータ)であり、例えばPDL(Page Description Language:ページ記述言語)にて記述することができる。なお、ジョブデータには、必要に応じてROP処理に関する描画命令(以下の説明ではROP描画命令と呼ぶ)が含まれる。また、プリンタドライバ部310は、コード画像の生成に必要な管理IDの取得要求をID取得部350に出力する。
振り分け部320は、プリンタドライバ部310から入力されるRGBベクトルデータに基づき、1ページ毎に、ベクトルデータ中にROP描画命令が含まれているか否かを判断する。そして、振り分け部320は、ROP描画命令を含むページのRGBベクトルデータ(以下の説明では第1のRGBベクトルデータと呼ぶ)を第1処理部330に出力する。また、振り分け部320は、ROP描画命令を含まないページのRGBベクトルデータ(以下の説明では第2のRGBベクトルデータと呼ぶ)を第2処理部340に出力する。
第1の画像処理手段として機能する第1処理部330は、振り分け部320から入力されてくる第1のRGBベクトルデータに必要に応じてROP処理を施し、また、色変換処理(RGB−YMC)を施す。そして、第1処理部330は、ページ単位で得られたYMCベクトルデータ(以下の説明では第1のYMCベクトルデータと呼ぶ)を出力する。なお、第1処理部330の詳細については後述する。
第2の画像処理手段として機能する第2処理部340は、振り分け部320から入力されてくる第2のRGBベクトルデータに色変換処理(RGB−YMC)を施す。そして、第2処理部340は、ページ単位で得られたYMCベクトルデータ(以下の説明では第2のYMCベクトルデータと呼ぶ)を出力する。なお、第2処理部340の詳細については後述する。
ID取得部350は、実施の形態1におけるID取得部160と同様、文書画像データのページ毎に固有の識別情報すなわち管理ID(Identification)を取得する。
コード画像生成手段として機能するコード生成部360は、ID取得部350から受け取った管理IDに基づいて識別コードを作成し、且つ、印刷対象となる用紙のサイズに基づいて用紙上での位置を示す位置コードを作成する。次いで、コード生成部360は、これら識別コードと位置コードとを合成し、ビットマップ状のコード画像データを生成した後、このコード画像データをPDLで記述したCOベクトルデータとして出力する。
合成手段として機能する出力部370は、第1処理部330から入力される第1のYMCベクトルデータおよび第2処理部340から入力される第2のYMCベクトルデータをページ順に揃える。また、出力部370は、全ページを構成する第1のYMCベクトルデータおよび第2のベクトルデータ(これらをまとめてYMCベクトルデータと呼ぶ)が揃った後、このYMCベクトルデータに、コード生成部360から入力されるCOベクトルデータを対応付け、ネットワーク3を介してプリンタ2に向けて出力する。
なお、プリンタドライバ部310、振り分け部320、第1処理部330、第2処理部340、ID取得部350、コード生成部360、出力部370を構成する各部の機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することにより実現される。すなわち、クライアント1に設けられた図示しないCPU(Central Processing Unit)が、これら各部の機能を実現するプログラムを、例えばハードディスク等の記憶装置からメインメモリに読み込んで、これらの各機能を実現する。
次に、プリンタ2におけるプリントデータ作成部60の構成について説明する。プリントデータ作成部60は、ラスタライズ部410および文書・コード合成部420を備える。そして、文書・コード合成部420には、露光器13が接続される。
ラスタライズ部410は、ネットワーク3を介してクライアント1から入力されるYMCベクトルデータを解釈して、YMC各色のビットマップデータを生成する。なお、以下の説明では、ラスタライズ部410から出力されるYMC各色のビットマップデータをYMCラスタデータと呼ぶ。また、ラスタライズ部410はYMCベクトルデータに付随して入力されるCOベクトルデータを解釈して、コード用のビットマップデータを作成する。なお、以下の説明では、ラスタライズ部410から出力されるコード用のビットマップデータをCOラスタデータと呼ぶ。
文書・コード合成部420は、ラスタライズ部410から入力されるYMCラスタデータとCOラスタデータとを合成する。ここで、本実施の形態では、黒のラスタデータの格納領域にCOラスタデータを格納する。そして、文書・コード合成部420は、得られたYMCK(CO)ラスタデータを色毎に並べ替え、Y、M、C、K(CO)の順に露光器13に出力する。
図24(a)は、クライアント1に設けられる第1処理部330の構成例を示す図である。第1処理部330は、描画処理部331、ROP判定部332、ROP処理部333、 上書き処理部334、第1色変換部335、PDL処理部336を備える。
描画処理部331は、振り分け部320から入力される第1のRGBベクトルデータに基づいて描画データを作成する。すなわち、描画処理部331は、第1のRGBベクトルデータを解釈して、第1のRGBベクトルデータに対応するRGB各色のラスタデータ(以下の説明では第1のRGBラスタデータと呼ぶ)を作成する。なお、このとき、描画処理部331は、オブジェクト単位で描画処理を実行する。
ROP判定部332は、第1のRGBラスタデータを構成する画素毎にその画素に対してROP描画命令がなされているか否かを判定する。そして、ROP判定部332は、ROP描画命令がなされた画素の第1のRGBラスタデータ(以下の説明では第2のRGBラスタデータと呼ぶ)をROP処理部333に出力する。また、ROP判定部332は、ROP描画命令がなされていない第1のRGBラスタデータ(以下の説明では第3のRGBラスタデータと呼ぶ)を上書き処理部334に出力する。
ROP処理部333は、ROP判定部332から入力されてくる第2のRGBラスタデータにROP描画命令に応じたROP処理を施す。また、ROP処理部333は、ROP処理を施して得られたRGBラスタデータ(以下の説明では第4のRGBラスタデータと呼ぶ)を出力する。
上書き処理部334は、ROP判定部332から入力されてくる第3のRGBラスタデータに上書き処理を施す。また、上書き処理部334は、上書き処理を施して得られたRGBラスタデータ(以下の説明では第5のRGBラスタデータと呼ぶ)を出力する。
第1色変換部335は、ROP処理部333から入力される第4のRGBラスタデータおよび上書き処理部334から入力される第5のRGBラスタデータに、3次元DLUTを用いて、RGB色空間からYMC色空間への色変換処理を施す。また、第1色変換部335は、色変換処理を施して得られたYMCラスタデータを出力する。
PDL処理部336は、第1色変換部335から入力されるYMCラスタデータをPDLで記述する処理を施し、得られた第1のYMCベクトルデータを出力する。
図24(b)は、クライアント1に設けられる第2処理部340の構成例を示す図である。第2処理部340は、第2色変換部341を備える。
第2色変換部341は、振り分け部320から入力される第2のRGBベクトルデータにおける各コマンドを参照し、色に関するコマンドの付け替えを行うことで、第2のYMCベクトルデータを生成する。より具体的に説明すると、第2色変換部341では、RGB各色に対する描画コマンドをYMC各色の描画コマンドに書き換え、また、各画素におけるRGB各色の濃度値をYMC各色に対応する濃度値に書き換える。また、第2色変換部341は、色変換処理を施して得られた第2のYMCベクトルデータを出力する。
では、印刷処理における具体的な処理手順について説明する。
図25は、クライアント1にて実行される処理の流れを示すフローチャートである。
クライアント1を操作するユーザによって例えばドキュメントデータの印刷要求がなされると、プリンタドライバ部310は、ドキュメントデータに基づいてジョブデータすなわちRGBベクトルデータを生成する(ステップ901)。なお、このとき、プリンタドライバ部310は、必要に応じてRGBベクトルデータにROP描画命令を加味する。また、プリンタドライバ部310は、管理IDの取得要求をID取得部350に出力する。
次に、振り分け部320は、入力されてくるRGBベクトルデータに対し、1ページ毎にROP描画命令の有無を検査する(ステップ902)。そして、振り分け部320は、1ページ毎にROP描画命令があるか否かを判断する(ステップ903)。
ステップ903でROP描画命令があると判断された第1のRGBベクトルデータは、第1処理部330の描画処理部331にてラスタライズされ(ステップ904)、第1のRGBラスタデータが生成される。次に、ROP判定部332は、第1のRGBラスタデータに対し、画素毎にその画素に対してROP描画命令がなされているか否かを判断する(ステップ905)。ここで、ROP描画命令がなされていると判断された画素のRGBラスタデータ(第2のRGBラスタデータ)は、ROP処理部333にてコマンドに応じたROP処理がなされ(ステップ906)、第4のRGBラスタデータとして出力される。一方、ステップ905において、ROP描画処理命令がなされていないと判断された画素のRGBラスタデータ(第3のRGBラスタデータ)は、上書き処理部334にて上書き処理がなされ(ステップ907)、第5のRGBラスタデータとして出力される。そして、第1のRGBベクトルデータについて1ページ分の処理が完了したか否かが判断され(ステップ908)、完了していない場合にはステップ905に戻り、次の画素の第1のRGBラスタデータに対する処理が続行される。また、1ページ分の処理が完了している場合には、これら第4のRGBラスタデータおよび第5のRGBラスタデータを含むRGBラスタデータに対し、第1色変換部335が色変換処理を施し(ステップ909)、得られたYMCラスタデータを出力する。その後、PDL処理部336が、入力されるYMCラスタデータをPDLにて記述する処理を施し、第1のYMCベクトルデータを生成して(ステップ910)、次のステップ913に進む。
一方、ステップ903でROP描画処理がないと判断された第2のRGBベクトルデータは、第2処理部340の第2色変換部341でオブジェクト毎に色変換処理が施される(ステップ911)。そして、第2のRGBベクトルデータについて1ページ分の処理が完了したか否かが判断され(ステップ912)、全オブジェクトに対する処理が完了していない場合はステップ911に戻って処理が続行される。また、1ページ分の処理が完了している場合は、次のステップ913に進む。
出力部370では、第1処理部330から第1のYMCベクトルデータが、第2の処理部340から第2のYMCベクトルデータが入力されるのに合わせ、コード生成部360よりCOベクトルデータを取得する(ステップ913)。そして、出力部370は、これら第1のYMCベクトルデータ及び第2のYMCベクトルデータを合成して得られたYMCベクトルデータに、ステップ913で取得されたCOベクトルデータを対応付けて送信し(ステップ914)、一連の処理を完了する。
図26は、プリンタ2のプリントデータ作成部60で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
ネットワーク3を介してクライアント1からYMCベクトルデータおよびこれに付随するCOベクトルデータを受信すると(ステップ1001)、ラスタライズ部410は、まず、YMCベクトルデータをラスタライズし(ステップ1002)、YMCラスタデータを出力する。次に、ラスタライズ部410は、COベクトルデータをラスタライズし(ステップ1003)、YMCラスタデータを出力する。
次いで、文書・コード画像合成部420は、ステップ1001で得られたYMCラスタデータとステップ1002で得られたCOラスタデータとを合成する(ステップ1004)。このとき、COラスタデータは、Kのデータ面に合成される。そして、文書・コード画像合成部420は、得られたYMCK(CO)ラスタデータをY、M、C、K(CO)の順に露光器13に出力し(ステップ1005)、一連の処理を完了する。
本実施の形態では、ROP描画命令の有無に応じて、色変換処理を実行するための手順を変えることにより、ROP描画処理を行って得られる画像データの色味を所望とする色味とすることが可能になる。
1…クライアント、2…プリンタ、3…ネットワーク、11…感光体ドラム、14…四色現像器、40…制御部、60…プリントデータ作成部、80…五色現像器、110…プリンタドライバ部、120…ラスタライズ部、130…前処理部、140…Tag設定部、150…Tag変更部、160…ID取得部、170…コード生成部、180…圧縮部、210…伸張部、220…画像処理部