JP4384296B2 - 測距装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、測距装置、より詳しくは、被写体像を複数のレンズにより結像して測距を行う測距装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の銀塩カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ等には、被写体までの距離を検出して、その検出結果に基づき撮影レンズを被写体に自動的に合焦させるオートフォーカス装置が搭載されている。
【0003】
このようなオートフォーカス装置に用いられている測距装置の内、三角測距方式によるもの、特に位相差方式によるものは、予め設定した基線長に基づいて被写体までの距離を測定し、または被写体のデフォーカス量を測定するものとなっている。
【0004】
図7,図8は、従来技術における測距装置の概要を示す図である。
【0005】
図7は、被写体からの光線を一対のレンズ81L,81Rにより受光素子4L,4R上に各結像させ、この被写体像を該受光素子4L,4Rにより光電変換して出力される信号から左右の像の位相差を求めて、その位相差に基づき被写体距離を算出するものである。
【0006】
このとき、上記一対のレンズ81L,81Rの間隔である基線長をB、該一対のレンズ81L,81Rの焦点距離をf、上記左右の像の位相差をxとすると、被写体距離Lは次の数式1により表される。
【0007】
【数1】
L=(B・f)/x
【0008】
次に、図8は、合焦状態にあるときの様子を示す図である。
【0009】
撮影光学系95の異なる瞳からの光線は、図示のコンデンサレンズ93と、一対の孔が穿設されたセパレータ絞り92および一対のレンズでなるセパレータレンズ91を介して、受光素子4L,4R上に結像されるようになっている。
【0010】
そして、この図8に示すような合焦状態にあるときには、撮影光学系95を通過した光線は、フィルム面と光学的に等価な位置である一次結像面94上に合焦するようになっている。
【0011】
この合焦時における左側の受光素子4L上の像と右側の受光素子4R上の像との位相差y0 を基準とすると、図示したような一次結像面94に対して、いわゆる前ピンとなる場合には位相差は上記y0 よりも大きくなり、後ピンとなる場合には位相差は上記y0 よりも小さくなる。
【0012】
こうして、合焦時の位相差をy0 、現状の位相差をy、撮影光学系95等の光学的性質に起因するその他の定数をa,b,cとすると、現状のデフォーカス量DFは次の数式2により表される。
【0013】
【数2】
DF=a・{b−(y−y0 )}−c
【0014】
上記図7,図8に示したような三角測距方式は、基線長に基づいて測距を行うものであるために、測距精度を良くするには基線長を正確に決めて、これが周囲環境の変化等の影響によって変動しないようにしておく必要がある。
【0015】
このような基線長の変動をもたらす可能性のある要因としては、周囲環境の温度や湿度が例として挙げられ、何らの対策を施さないと、こうした温度や湿度の影響を受けて測距精度が低下することが考えられる。
【0016】
このような点を改善するための一つのアプローチとして、例えば特開昭60−235110号公報、特開昭63−172216号公報などには、測温素子を用いて測距装置の温度を計測し、計測された温度に基づいて測距結果を補正する技術が記載されていて、これにより測距精度の向上を図るようにしたものとなっている。
【0017】
また他のアプローチとしては、例えば特開平4−306607号公報、特開平5−303032号公報、特開平9−318867号公報などに、分離した2つのレンズの固定方法を工夫することにより、それぞれのレンズ自体の伸長/収縮と、レンズを受ける部材の伸長/収縮とをうまく組み合わせて相殺させ、基線長をほぼ一定に維持しようとする技術が記載されている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、測距結果を温度に基づき補正するタイプの従来技術では、レンズやレンズの固定部材そのものの温度を計測することが困難である点で、必ずしも十分な補正精度を確保することができるとはいえず、また、測温素子を必要とする分だけコスト的にも高価となってしまう。さらに、この技術では、湿度による補正を行うことはできなかった。
【0019】
一方、基線長の変化をキャンセルするタイプの従来技術では、レンズを2つに分離したために基線長自体を正確に揃えるのが困難となり、測距装置毎の個体差が大きくなってしまう。さらに、要求される組立精度が高くなるために、組立コストが高くなるか、または、測距装置の測距精度が劣化することになる。そしてこの技術では、温度の影響をキャンセルすることと、湿度の影響をキャンセルすることとを両立させるのは困難である。
【0020】
従って上述したような従来の測距装置では、周囲環境の変化による測距精度の劣化対策が十分とはいえず、測距精度が低いにも関わらず、部品コストや組立コストが高くなってしまっていた。さらに、周囲環境の中でも湿度については、温度よりも対策が一層不十分であるという課題があった。
【0021】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、温度や湿度等の周囲環境の変動によることなく高い測距精度を維持することができる簡単で安価な測距装置を提供することを目的としている。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、第1の発明による測距装置は、所定の焦点距離を有し所定の基線長をもって配置された一対のレンズと、上記一対のレンズの結像面に配置され、それぞれのレンズを通った光線を受光して像信号を生成する受光素子と、上記レンズと上記受光素子との間の光路中に挿入され、一対のアパーチャーが設けられた板部材と、を有し、上記一対のアパーチャーを通過した光線が形成する像に対する上記受光素子の像信号より相関演算を行い、該像信号の位相差を検出し、この位相差と上記焦点距離と上記基線長に基づき被写体距離を測定する測距装置であって、上記板部材は更に一対のスリットが上記基線長と同じ間隔で設けられ、この一対のスリットを通過した光線が形成する像の距離を上記受光素子の像信号より求め、この像の距離に基づき上記基線長を補正するものである。
【0023】
また、第2の発明による測距装置は、所定の焦点距離を有し所定の基線長をもって配置された一対のレンズと、上記一対のレンズの結像面に配置され、それぞれのレンズを通った光線を受光して像信号を生成する受光素子と、上記レンズと上記受光素子との間の光路中に挿入され、一対のアパーチャーが設けられた板部材と、を有し、上記一対のアパーチャーを通過した光線が形成する像に対する上記受光素子の像信号より相関演算を行い、該像信号の位相差を検出し、この位相差と上記焦点距離と上記基線長に基づき被写体距離を測定する測距装置であって、上記板部材は更に一対のスリットが上記基線長に対して所定の比の間隔で設けられ、この一対のスリットを通過した光線が形成する像の距離を上記受光素子の像信号より求め、この像の距離とこの比に基づき上記基線長を補正するものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1から図5は本発明の第1の実施形態を示したものであり、図1は測距装置の構成を示す分解斜視図、図2は測距装置の構成を示す一部断面を含む側面図である。
【0030】
この測距装置は、図1,図2に示すように、被写体からの光線を集光するための左側レンズ1Lおよび右側レンズ1Rを一体に成型して構成されているレンズ1と、上記左側レンズ1Lおよび右側レンズ1Rを各通過する光線の範囲を規制するための矩形孔でなる左側アパーチャー5Lおよび右側アパーチャ5Rが設けられている遮光部材たる板部材2と、この板部材2を通過した光線を受光して測距信号を出力する相関演算手段たるAFIC3と、を有して左右対称となるように構成されている。
【0031】
上記板部材2は、上記左側アパーチャー5Lおよび右側アパーチャ5Rの各両側にスリットが形成されていて、より詳しくは、左側アパーチャー5Lの左側にスリット6LLが、該左側アパーチャー5Lの右側にスリット6LRが、右側アパーチャー5Rの左側にスリット6RLが、該右側アパーチャー5Rの右側にスリット6RRが、それぞれ形成されている。これらのスリット6LL,6LR,6RL,6RRは、後述する受光素子4L,4Rのセンサ並び方向と直交する方向に細長のスリットとなっている。
【0032】
なお、ここでは各アパーチャ5L,5Rについてそれぞれ2つずつのスリットを形成したが、後で他の例を説明するように、これに限るものではない。
【0033】
上記AFIC3は、上記左側レンズ1Lおよび右側レンズ1Rにより集光され上記左側アパーチャー5Lおよび右側アパーチャ5Rを各通過する光線をそれぞれ受光して光電変換するラインセンサ等でなる受光素子4(左側受光素子4Lおよび右側受光素子4R)と、これらの受光素子4L,4Rを周辺回路と共にその上面側に配置している下側パッケージ3aと、上記受光素子4L,4R等を上から透明な素材により覆うようにして形成されている上側パッケージ3bと、上記受光素子4L,4Rの出力信号を該パッケージ内の周辺回路で処理した後に測距信号として出力する端子3cとを有して構成されている。
【0034】
そして、この板部材2は上記AFIC3の上側パッケージ3bの上面に近接して配置されていて、該板部材2の下面にはAFIC3との間隔を規定するためのスペーサ9が突設されている。
【0035】
また、この測距装置の基線長Bは、左側レンズ1Lの光軸と右側レンズ1Rの光軸とのなす間隔となっている。
【0036】
そして、上記スリット6LLとスリット6RLとの間隔は、この基線長Bと一致するように構成され、同様に、スリット6LRとスリット6RRとの間隔も基線長Bに一致するように構成されている。
【0037】
次に、図3は、上記図2に示したような構成において、異なる温度で受光素子4L,4Rから得られる各出力信号(像信号)の例を示す線図である。
【0038】
図3(A)は温度がT[℃]のときの受光素子4Lの像信号、図3(B)は温度がT[℃]のときの受光素子4Rの像信号、図3(C)は温度がT+ΔT[℃]のときの受光素子4Lの像信号、図3(D)は温度がT+ΔT[℃]のときの受光素子4Rの像信号である。
【0039】
なお、この図3においては、受光素子4R,4Lから出力される像信号が、暗い部分はレベルが低く、明るい部分はレベルが高くなるような例について図示しているが、これは単なる一例を示したものであり、像信号を量子化する方法によっては、被写体の明暗とセンサデータのレベルの高低とが逆転する場合ももちろんあり得る。
【0040】
図中の符号7LC,7LC’で示す部分は、アパーチャー5Lを通過した光線による像信号、符号7RC,7RC’で示す部分は、アパーチャー5Rを通過した光線による像信号をそれぞれ示している。
【0041】
これらのアパーチャ5L,5Rによる像信号は、被写体に応じて各種のものが得られ、像信号7LCと7RCまたは像信号7LC’と7RC’の位相差は、被写体距離に関連している。
【0042】
さらに図中の符号7LL,7LL’で示す部分は、スリット6LLを通過した光線による像信号、符号7LR,7LR’で示す部分は、スリット6LRを通過した光線による像信号、符号7RL,7RL’で示す部分は、スリット6RLを通過した光線による像信号、符号7RR,7RR’で示す部分は、スリット6RRを通過した光線による像信号をそれぞれ示している。
【0043】
上記スリット6LL,6LR,6RL,6RRは、スリット幅を十分に細く形成することにより、これらを通過した光線の像信号が、被写体のコントラストの影響を受けることなく略一定の形状となるように構成されている。従って、像信号の形状の変化としては、その山の高さが被写体の輝度に応じて変化する程度である。こうして、スリット間隔を正確に計ることが可能となっている。
【0044】
続いて、温度が+ΔT[℃]上昇するという周囲環境の変化が生じて、基線長Bに伸長が生じた場合の像信号の変化について説明する。
【0045】
温度変化が生じると、レンズ1、板部材2、AFIC3などを構成する物質に伸長/収縮が生じ、それぞれの位置関係が変化する。この例で説明する場合のように温度が上昇した場合には、物質に伸長が生じることが多いために、ここでは基線長Bが例えば伸長したものとする。
【0046】
この基線長Bに伸長が生じたときには、図3(A)に示す点Pa は、図3(C)に示すような点Pa'に移動し、矢印Vb に示す方向と長さだけ位置が変化する。このとき板部材2のアパーチャー5Lの位置も変化しているために、図3(A)と図3(C)とを比較すると、被写体像信号のエッジ位置も移動している。
【0047】
同様に、図3(B)に示す点Pb は、図3(D)に示すような点Pb'に移動し、矢印Ve に示す方向と長さだけ位置が変化する。そして、アパーチャー5Rの位置変化により、被写体像信号のエッジ位置も移動している。
【0048】
また、スリット6LL,6LR,6RL,6RRを通過した光線の像信号は、スリット位置の変化に伴って、図示のように移動する。
【0049】
すなわち、図3(A)に示すスリット6LLによる像信号7LLは、矢印Va に示す方向と長さだけ位置が変化して、図3(C)に示すような像信号7LL’となり、図3(A)に示すスリット6LRによる像信号7LRは、矢印Vc に示す方向と長さだけ位置が変化して、図3(C)に示すような像信号7LR’となる。
【0050】
同様に、図3(B)に示すスリット6RLによる像信号7RLは、矢印Vd に示す方向と長さだけ位置が変化して、図3(D)に示すような像信号7RL’となり、図3(B)に示すスリット6RRによる像信号7RRは、矢印Vf に示す方向と長さだけ位置が変化して、図3(D)に示すような像信号7RR’となる。
【0051】
上記像信号の変化量は、上述したように測距装置が左右対称となるように構成されていることから、左右対称の移動量となっていて、ベクトル的な加算を行うと、Va +Vf =0,Vb +Ve =0,Vc +Vd =0となる関係にある。
【0052】
さらに、図示しない左右対称の中心線からの距離が遠くなるほど、その移動量が大きくなるようになっていて、ベクトルの長さを比較すると、|Va |>|Vb |>|Vc |などとなっている。
【0053】
上述したような+ΔTの温度変化による物質の伸長/収縮量Δlは、物質の熱線膨張係数をα、物質の長さをlとすると、一般的に、次の数式3に示すように表される。
【0054】
【数3】
Δl=α・ΔT・l
【0055】
本実施形態においては、レンズ1と板部材2とを同一の材質により形成したものとしてその熱線膨張係数をα1 とすると、温度T[℃]のときの像信号7LCと像信号7RCの位相差と、温度T+ΔT[℃]のときの像信号7LC’と像信号7RC’の位相差との変化量は、|Vb −Ve |に相当し、これは上記数式3を用いれば、次の数式4に示すように表される。
【0056】
【数4】
ΔB=α1 ・ΔT・B
【0057】
また、温度T[℃]のときのスリット6LL,6RLの像信号7LL,7RLの位相差と、温度T+ΔT[℃]のときの像信号7LL’,7RL’の位相差との変化量は、|Va −Vd |に相当するとともに、温度T[℃]のときの像信号7LR,7RRの位相差と、温度T+ΔT[℃]のときの像信号7LR’,7RR’の位相差との変化量は、|Vc −Vf |に相当し、これらは何れも等しい値であって、次の数式5に示すようになる。
【0058】
【数5】
ΔB=α1 ・ΔT・B
【0059】
上記数式4と数式5は同一であるために、基線長Bと同一の間隔で配置されたスリットによる像同士の距離の変化量を検出することができれば、基線長Bの変化量を検出することも可能であることがわかる。
【0060】
以上の説明は、スリット間隔を基線長Bに等しくなるように構成した場合のものであるが、等しくない場合でも、以下のようにして同様に基線長Bの変化量を検出することができる。
【0061】
図示はしないが、スリット間隔をSとし、基線長Bとスリット間隔Sの長さの比をB/S=εとする。これは例えば、図2に示したスリット6LR,6RL、図3に示した像信号7LR,7RLおよび7LR’,7RL’によって、基線長Bの変化量ΔBを検出する場合に該当する。
【0062】
このときの基線長Bの変化量ΔBは、次の数式6に示すようになる。
【0063】
【数6】
ΔB=ε・(α1 ・ΔT・S)
【0064】
さらに、レンズ1と板部材2の材質も異なるような、より一般的な場合には、板部材2の熱線膨張係数をα2 、レンズ1と板部材2の熱線膨張係数の比をα0 とすると、基線長Bの変化量ΔBは、次の数式7に示すようになる。
【0065】
【数7】
ΔB=α0 ・ε・(α2 ・ΔT・S)
【0066】
このように、何れの場合でも、スリット間隔の変化量を検出すれば、基線長の変化量を知ることが可能であり、この基線長の変化量に基づいて測距結果を補正することにより、測距精度の劣化を防ぐことも可能となる。
【0067】
また、上述では温度に関する基線長の変化を検出する例について説明したが、湿度に関する基線長の変化を検出して、測距結果を補正する場合についても、原理的に同様に行うことが可能である。
【0068】
湿度も含めて補正する場合は、少なくともレンズ1を形成する材質と板部材2を形成する材質とを同一のものとすれば、複雑な計算が不要となるために、望ましい手段である。
【0069】
このように、基線長とスリット間隔の比例計算を行うのみで、温度や湿度による基線長の変化量を求めることができる。
【0070】
次に、上述のような基本的な構成を具体的に適用した測距装置の例について、図面を参照して説明する。
【0071】
まず、図4は、上記図2に示した構成をほぼそのまま採用してユニット化した測距装置の例を示す断面図である。
【0072】
左側レンズ1Lにより集光される光線の光路と、右側レンズ1Rにより集光される光線の光路とは、互いに干渉し合うことのないように筐体によって分離される必要がある。そこで、この構成例においては、上述したような板部材2を、レンズ1を保持する筐体と一体に構成して、遮光部材たる筐体2Aとしている。
【0073】
すなわち、この筐体2Aは、例えば略直方体形状をなす箱状部材でなり、その中央部に隔壁12を形成して、内部を上記左側レンズ1Lの光線が通過する左室11Lと上記右側レンズ1Rの光線が通過する右室11Rとに分離している。
【0074】
左室11Lの底面には、上記アパーチャー5Lおよびスリット6LL,6LRが穿設され、同様に右室11Rの底面には、上記アパーチャー5Rおよびスリット6RL,6RRが穿設されている。
【0075】
また、筐体2Aの上面側にはレンズ1を設置するための凹部15が形成されていて、この凹部15に突設されたスペーサ16を介して上記レンズ1が取り付けられている。
【0076】
そして、凹部15の上記左側レンズ1Lと右側レンズ1Rに各対応する部分には、光線を上記左室11Lと右室11Rにそれぞれ導くためのものであって、不要な光線を除去する絞りも兼ねた光透過孔14L,14Rがそれぞれ穿設されている。
【0077】
また、上記左室11Lと右室11Rの内壁面には、光線の内面反射等を防止するための構造部13が形成されている。
【0078】
この図4に示す例は、スリット6LLとスリット6RLのなす間隔、またはスリット6RLとスリット6RRのなす間隔が、基線長Bに一致するように構成された例である。
【0079】
次に、図5は、折り返し光学系を用いて基線長を大きくとることにより、測距精度を高めるようにした高精度測距装置の例を示す断面図である。
【0080】
この図5に示す測距装置の場合には、左側レンズ21Lと右側レンズ21Rは別体として構成されている。
【0081】
そして、遮光部材たる筐体2Bには、レンズ設置用の凹部27L,27Rが、基線長Bを大きくとるように離して形成され、そこに上記左側レンズ21Lと右側レンズ21Rが各設置されている。
【0082】
上記凹部27L,27Rの各底面には、上記左側レンズ21Lと右側レンズ21Rから各入射される光線を内部空間22に導くとともに不要な光線を除去するための光透過孔26L,26Rがそれぞれ穿設されている。
【0083】
また、筐体2Bの左右の傾斜面には窓孔25L,25Rを介してミラー24L,24Rが各固定されており、上記左側レンズ21Lと右側レンズ21Rから各入射された光線を中央側に向けて反射するようになっている。
【0084】
この中央側に反射された光線の光路上には例えばプリズムでなる反射部材23が配設されていて、左右からの光線を各反射面によりAFIC3へ向けて反射するようになっている。
【0085】
すなわち、この反射部材23により反射された光線は、該筐体2Bの底面に穿設されたアパーチャ5L,5Rを各介して受光素子4L,4Rに入射するようになっている。
【0086】
また、上記アパーチャ5Lの左側にはスリット6LLが、上記アパーチャ5Rの右側にはスリット6RRが穿設されており、この図5に示す例においては、スリット6LRとスリット6RLは省略されている。
【0087】
こうしてこの図5に示す例は、基線長Bを折り返し光学系で大きくしているために、該基線長Bが、スリット6LLとスリット6RRのなす間隔Sよりも大きくなるように構成された例となっている。
【0088】
なお、図示はしないが、上記図8に示したようなTTL型の測距装置に上述したような構成を適用することも勿論可能であり、上記セパレータレンズ91と受光素子4L,4Rの間に、上述したようなアパーチャーとスリットを有する板部材を配設すれば良い。
【0089】
また、上述したように、受光素子4によりスリット間隔を測定することが肝要であるために、スリットの幅を十分に細くすることが望ましい。スリットの幅を十分に細くすれば、被写体のコントラストの影響を取り除くことが可能となって、より正確な測定を行うことが可能となる。
【0090】
このような第1の実施形態によれば、部品コストや組立コストの増加を招くことなく、温度や湿度等の周囲環境が変化しても高い測距精度を維持することができる簡単な構成の測距装置となる。
【0091】
図6は本発明の第2の実施形態を示したものであり、測距装置の構成を示す分解斜視図である。この第2の実施形態において、上述の第1の実施形態と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
【0092】
本実施形態は、被写体が暗い場合や、あるいはスリット幅を十分に細くすることができない場合でも、正確な測定を行うことができるようにした例を示すものである。
【0093】
例えば、被写体が暗い場合については、通常は補助光を点灯させて被写体を照明することにより対処するようになっているが、例えば被写体までの距離が遠い場合などには、補助光の点灯を行っても、スリット像を検出するのが不可能になるほどの低いレベルの受光素子出力となる場合がある。本実施形態はこうした場合にも対応することができるように構成したものである。
【0094】
すなわち、この測距装置は、図6に示すように、左側レンズ1Lおよび右側レンズ1Rを一体に成型して構成されているレンズ1と、上記左側レンズ1Lおよび右側レンズ1Rを各通過する光線の範囲を規制するためのやや細長の矩形孔でなる左側アパーチャー5L’および右側アパーチャ5R’が設けられている遮光部材たる板部材2と、この板部材2を通過した光線を受光して測距信号を出力する相関演算手段たるAFIC3と、を有して構成されている。
【0095】
上記板部材2は、上記左側アパーチャー5L’および右側アパーチャ5R’の例えば図6における左側にスリットが形成されていて、より詳しくは、左側アパーチャー5L’の左側にスリット6LLが、右側アパーチャー5R’の左側にスリット6RLが、それぞれ形成されている。
【0096】
これらのスリット6LL,6RLには、光を拡散させて被写体のコントラストの影響等を取り除くためのライトガイド手段たる拡散板31L,31Rがそれぞれ嵌入されている。
【0097】
上記AFIC3は、上述したように、受光素子4を上側パッケージ3bと下側パッケージ3aとで挟み込んでなり、この受光素子4は、例えば発光LED等でなる光源32L,32Rが、同一チップ上にさらに形成されたものとなっていて、モノリシック構造となっている。
【0098】
より詳しくは、左側受光素子4Lの左寄りに近接する位置であって、上記板部材2のスリット6LLに対応する位置に光源32Lが設けられ、右側受光素子4Rの左寄りに近接する位置であって、上記板部材2のスリット6RLに対応する位置に光源32Rが設けられている。
【0099】
続いて、このように構成された測距装置の作用について説明する。
【0100】
まず、被写体が十分に明るい場合には、レンズ1を介して入射する光束に基づいてスリット間隔の変化量の計測を行う。このときには、該光束が、スリット6LLに嵌合された拡散板31Lを介して拡散された後に左側受光素子4Lに像を結ぶとともに、スリット6RLに嵌合された拡散板31Rを介して拡散されてから右側受光素子4Rに像を結ぶ。こうして、拡散板31L,31Rを介することにより、被写体によることなく、つまり被写体のコントラスト等の影響を受けることなく、スリット間隔の変化量を正確に計測して、基線長の変化量を正確に知ることができる。
【0101】
次に、被写体の輝度が低く、レンズ1を介して入射する光束に基づいてスリット間隔の変化量の計測を行うのが困難である場合には、入射光を光電変換して得られた電荷の積分値等に基づきその旨を検出して、図示しないAF制御回路やシステムコントローラの指令により、上記光源32L,32Rが発光される。
【0102】
一方の光源32Lにより発光された光は、上記拡散板31Lに入射してその拡散面等で散乱された後に、一部が上記左側受光素子4Lに入射する。同様に、他方の光源32Rにより発光された光も上記拡散板31Rに入射して、散乱された後に上記右側受光素子4Rに入射する。
【0103】
こうして、光源32L,32Rにより発光された光が、ライトガイド手段として機能する上記拡散板31L,31Rを介して、受光素子4L,4Rに伝達されることにより、被写体の輝度に関わらずスリット間隔の変化量を正確に計測することが可能となる。
【0104】
なお、上述では、拡散板をスリットの内部に嵌入するようにしたが、これに限るものではなく、該スリットを通過する光を拡散することができるようなスリットの近傍位置に設置するようにしても構わない。
【0105】
このような第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態とほぼ同様の効果を奏するとともに、光源の光をライトガイド手段である拡散板を介してスリットに導いて、必ずスリット像を得ることができるように工夫したために、被写体のコントラストや輝度に依存することなく、常に正確な測距を行うことが可能となる。
【0106】
また、光源を受光素子と同一チップとして構成したために、測距装置が大型化することはない。
【0107】
なお、上述したような各実施形態において、被写体像信号とスリット像信号の信号レベルを比較すると、例えばレンズ1を介して入射する光束を用いる場合には、スリット像信号の光量の方が少なく信号レベルが低くなるのが一般的である。一方で、上述したような光源を用いてスリット像を得る場合には、この逆にスリット像から得られる信号レベルの方が高くなることもあり得る。こうした点を考慮して、被写体像を受光して像信号を生成する受光素子領域の積分と、スリット像を受光して像信号を生成する受光素子領域の積分とは、独立して行うようにすることが望ましい。
【0108】
また、温度や湿度による測距誤差を補正するためのデータ(スリット間隔に関するスリット像信号の位相差)の測定は、タイムラグを短縮するために、レリーズ動作中以外の部分で行われると考えられる。この場合には、所定の時間間隔毎に常時実行するようにして、レリーズ動作の際に、それらの内の最新データを用いるようにしたり、あるいは複数の最新データを平均して用いるようにすると良い。また、カメラのパワースイッチがオンされたときにのみ、この測距誤差補正データの測定を行うようにしても構わない。
【0109】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。
【0110】
[付記]
以上詳述したような本発明の上記実施形態によれば、以下のごとき構成を得ることができる。
【0111】
(1) 被写体像を結像する一対のレンズと、
上記一対のレンズの結像面に配置され、それぞれのレンズを通った光線を受光して像信号を生成する受光素子と、
を有する測距装置であって、
一対のアパーチャーと少なくとも一対のスリットとが設けられた板部材を具備し、
上記板部材を上記一対のレンズと上記受光素子との間の光路中に挿入することを特徴とする測距装置。
【0112】
(2) 上記一対のスリット間の距離は、上記一対のアパーチャー間の距離と同一であることを特徴とする付記(1)に記載の測距装置。
【0113】
(3) 上記一対のスリット間の距離は、基線長と同一であることを特徴とする付記(1)または付記(2)に記載の測距装置。
【0114】
(4) 上記一対の像信号の相関演算を行い、一対の像信号の位相差を出力する相関演算手段をさらに具備し、
上記アパーチャーを通った光線による像信号が入力されたときの上記相関演算手段の出力を、上記スリットを通った光線による像信号が入力されたときの上記相関演算手段の出力で補正することを特徴とする付記(1)、付記(2)、または付記(3)に記載の測距装置。
【0115】
(5) 上記レンズと板部材は、同一の材質により形成されていることを特徴とする付記(1)に記載の測距装置。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、温度や湿度等の周囲環境の変動によることなく高い測距精度を維持することができる簡単で安価な測距装置となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態の測距装置の構成を示す分解斜視図。
【図2】上記第1の実施形態の測距装置の構成を示す一部断面を含む側面図。
【図3】上記第1の実施形態において、異なる温度で左右の受光素子から得られる像信号の例を示す線図。
【図4】上記第1の実施形態において、上記図2に示した構成をほぼそのまま採用して
ユニット化した測距装置の例を示す断面図。
【図5】上記第1の実施形態において、折り返し光学系を用いて基線長を大きくとるこ
とにより、測距精度を高めるようにした高精度測距装置の例を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態の測距装置の構成を示す分解斜視図。
【図7】従来技術における測距装置の一例の概要を示す図。
【図8】従来技術における測距装置の他の例の概要を示す図。
【符号の説明】
1…レンズ
1L,21L…左側レンズ
1R,21R…右側レンズ
2…板部材(遮光部材)
2A,2B…筐体(遮光部材、板部材)
3…AFIC(相関演算手段)
4,4R,4L…受光素子
5R,5L,5R’,5L’…アパーチャ
6LL,6LR,6RL,6RR…スリット
31R,31L…拡散板(ライトガイド手段)
32R,32L…光源
Claims (2)
- 所定の焦点距離を有し所定の基線長をもって配置された一対のレンズと、
上記一対のレンズの結像面に配置され、それぞれのレンズを通った光線を受光して像信号を生成する受光素子と、
上記レンズと上記受光素子との間の光路中に挿入され、一対のアパーチャーが設けられた板部材と、
を有し、上記一対のアパーチャーを通過した光線が形成する像に対する上記受光素子の像信号より相関演算を行い、該像信号の位相差を検出し、この位相差と上記焦点距離と上記基線長に基づき被写体距離を測定する測距装置であって、
上記板部材は更に一対のスリットが上記基線長と同じ間隔で設けられ、この一対のスリットを通過した光線が形成する像の距離を上記受光素子の像信号より求め、この像の距離に基づき上記基線長を補正することを特徴とする測距装置。 - 所定の焦点距離を有し所定の基線長をもって配置された一対のレンズと、
上記一対のレンズの結像面に配置され、それぞれのレンズを通った光線を受光して像信号を生成する受光素子と、
上記レンズと上記受光素子との間の光路中に挿入され、一対のアパーチャーが設けられた板部材と、
を有し、上記一対のアパーチャーを通過した光線が形成する像に対する上記受光素子の像信号より相関演算を行い、該像信号の位相差を検出し、この位相差と上記焦点距離と上記基線長に基づき被写体距離を測定する測距装置であって、
上記板部材は更に一対のスリットが上記基線長に対して所定の比の間隔で設けられ、この一対のスリットを通過した光線が形成する像の距離を上記受光素子の像信号より求め、この像の距離とこの比に基づき上記基線長を補正することを特徴とする測距装置。
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