JP4384025B2 - 遺伝子検査 - Google Patents

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Description

発明の詳細な説明
本発明は、試料を遺伝子検査し、不適当な瘢痕形成または線維症によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態の発症への遺伝的素因に関連する多型または突然変異の存在を決定する方法に関する。
瘢痕は、先の傷害や創傷(たとえば、切開、摘出または外傷性傷害など)に起因する異常な形態学的構造である。瘢痕は、主として1型および3型コラーゲンならびにフィブロネクチンを基質とする結合組織からなる。瘢痕は、異常な組織形成におけるコラーゲン線維からなる場合もあり(皮膚の正常な瘢痕にみられる)、あるいは結合組織の異常な蓄積である場合もある(中枢神経系の瘢痕または皮膚の病的な瘢痕形成にみられる)。
瘢痕形成は、ほとんどの成体動物およびヒトの組織における治癒過程の通常の結果である。皮膚において、瘢痕は、皮膚の表面下に押さえられているか、あるいは表面より盛り上がっている。肥厚性瘢痕は、特定の状態または特定の個体において生じ得る、より重篤な瘢痕形成の形態である。肥厚性瘢痕は、皮膚の正常な表面より盛り上がっており、異常なパターンに配置された過剰のコラーゲンを含む。ケロイドは、皮膚の表面より盛り上がるばかりでなく、もとの傷害の境界を越えて広がる病的瘢痕形成の1つの形態である。ケロイドには、主としてコラーゲン性組織の渦巻きに異常な様式で組織化された過剰の結合組織が存在する。
不適当で、特に病的な瘢痕(たとえば、肥厚性瘢痕およびケロイドなど)を形成するのは、遺伝的素因であると考えられる。たとえば、アフリカ系カリブ人およびモンゴロイド人種は、特にケロイド瘢痕を発症する傾向がある。更に、肥厚性瘢痕およびケロイドを発症する素因は家系特有である可能性がある。
瘢痕形成が問題となる医学的状況は多い。このような状況の例は、過剰の瘢痕形成が組織の機能にとって有害な皮膚の瘢痕であり、特に、瘢痕拘縮が起こる場合である(たとえば、関節の柔軟性を損なう皮膚の火傷および創傷など)。美容上の考慮が重要である場合に皮膚の瘢痕形成を減少させることも非常に望ましい。皮膚において、肥厚性またはケロイド瘢痕は(特に、アフリカ系カリブ人およびモンゴロイド人種において)、機能的および美容上の減損を引き起こしうるものであり、それらの発生を防止する必要がある。2箇所のドナー部位における皮膚移植および人工皮膚の適用に起因する瘢痕形成も問題を含むものであり、出来るだけ少なく、または防止する必要がある。このような状況における瘢痕形成の重要性を考えると、当然のことながら、被験者が不適当な瘢痕形成を発症しやすいか否かを調べるために被験者を検査することが可能である必要がある。
皮膚の瘢痕と同様に、内部の瘢痕形成または線維症は、非常に有害であり、その具体例として、以下のものが挙げられる:
(i)中枢神経系における、グリア性瘢痕形成は、ニューロン再接続を妨げる(たとえば、神経外科手術または脳の貫通性傷害後など)。
(ii)眼球内の瘢痕形成は、有害である。角膜では、瘢痕形成の結果として、異常な乳白度になり、視力に問題が生じるか、あるいは失明に至る可能性もある。網膜では、瘢痕形成は、ゆがみまたは網膜剥離を引き起こし、次いで失明に至る。緑内障における眼圧低下のための手術(たとえば、緑内障濾過手術)における創傷治癒後の瘢痕形成の結果として、水性体液を排出することができなくなり、緑内障が再発することにより、手術が失敗に終わることとなる。
(iii)心臓における瘢痕形成(たとえば、手術または心筋梗塞後など)は、異常な心臓機能を引き起こし得る。
(iv)腹部および骨盤などに関わる手術は、内臓間の癒着に至ることがしばしばある。たとえば、胃腸と体壁の要素間の癒着は、腸ループにねじれを形成し、虚血、壊疽を引き起こし、次いで、緊急処置が必要になる(処置しないと死に至る場合もある)。同様に、胃腸に対する外傷または切開は、瘢痕形成および瘢痕拘縮に至ることがあり、それによって、再度生命を脅かす胃腸の内腔の閉塞を引き起こす狭窄の生じる可能性もある。
(v)卵管の領域での骨盤における瘢痕形成は、不妊の原因となりうる。
(vi)筋肉への傷害後の瘢痕形成の結果として、異常な拘縮が生じ、それによって筋肉機能が損なわれ得る。
(vii)腱および靭帯の傷害後の瘢痕形成または線維症の結果として、機能の重篤な喪失に至る。
上述した事項に関連するのは、過剰の線維組織の発症によって組織の病的混乱状態および機能不全が引き起こされる、線維性障害として知られる多くの医学的状態があるという事実である。線維性障害は、組織内の異常な様式での線維性組織(主としてコラーゲン)の蓄積を特徴とする。このような線維性組織の蓄積は、種々の疾患過程に起因する。これらの疾患は、必ずしも、手術、外傷性傷害または創傷によって引き起こされなくてもよい。線維性障害は、通常、慢性である。線維性障害の例として、肝硬変、肝線維症、糸球体腎炎、肺線維症、嚢胞性繊維症、強皮症、心筋線維症、心筋梗塞後の線維症、脳卒中または神経変性疾患(たとえば、アルツハイマー病など)後の中枢神経系線維症、増殖性硝子体網膜症(PVR)および関節炎が挙げられる。
瘢痕形成の場合、多くの線維性障害の発症またはその重症度において遺伝的影響があると考えられる。ある場合には、遺伝的影響は障害の発症についての直接的原因であり、他の線維性障害では、その障害の一次的原因に対して二次的である線維性障害の発症に影響を及ぼす遺伝的因子がある(たとえば、嚢胞性繊維症など)。
線維症が関連し、遺伝によって影響を及ぼされると考えられる障害の一例は、デュピュイトラン病(Dupuytren's disease:DD)である。
DDは、指の進行性および永続性拘縮を引き起こす結節性手掌線維腫症である。DDは、外科的切除後に再発率の高い不可逆的で進行性の障害である。それは、しばしば家族性であり、北欧系の個人によく見られる。60歳以上のケルト民族の男性の25%以上において、DDの徴候が見られ、カフカス人における結合組織の最も一般的な遺伝性の障害の1つであると考えられる。
該状態の原因となる単一の遺伝子を同定した文献はこれまでに発表されていない。さらに、DDが複数の遺伝子の主働による状態であるか、単純な単一遺伝子のメンデル型遺伝病であるかは不明である。したがって、影響を受けやすい遺伝子座の同定は、この普及している疾患の遺伝的構成要素を解明する理想的なアプローチを提供し、DDに対する処置および管理方策の次なる開発においても価値があるであろう。
上述の内容から当然のことながら、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態を発症することに対する罹患性について個人を評価すること、およびまたこのような状態を患っている個人について予後を評価することが可能であることが必要である。これに近づき得る1つの手段は、特定の医学的状態に関連する遺伝子における多型または突然変異の同定である。いったん同定されると、このような多型は、状態の発症に対する管理、処置または罹患性の確証を必要とする医師に有用な情報を提供することができる。情報を用いることができる1つの手段は、遺伝子検査の開発においてである。
遺伝子検査は、ある状態への罹患性を生じさせるかまたは増大させる突然変異(または多型)、もしくは該状態を引き起こす遺伝子に関連することからその状態への素因を潜在的に示す突然変異(または多型)を、患者のDNAが含むかどうかを決定するための、患者の核酸の解析検査として定義するこができる。
ある状態への素因の早期検出は、医学的介入にとって最高の機会を与える。危険度の早期遺伝的同定は、臨床的症状が現れる前の早期介入を通して、患者の予後を改善し得る。
遺伝子検査は、同じ治療論によって同様の症状をもつ患者の治療を行って成功の程度が相異する場合に、患者をその症状についての発症的基盤よりもむしろ遺伝子的基盤により区別することができ、これにより相異なる治療方法の潜在的必要性が生じる。
本発明の1つの目的は、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態への危険性または素因を示すための遺伝子スクリーニング方法を提供することである。
本発明の第一の局面により、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態への素因を診断または検出するためのin vitro方法であって、対象の被験者に由来するミトコンドリアゲノムを調べて該状態の発症に関連する遺伝子多型または突然変異の存在を検出することを含む方法が提供される。
本発明の第一の局面の方法は、研究者が、ミトコンドリアゲノムにおいて遺伝子多型または突然変異を発現する被験者を同定し、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態を有する、または該状態が発症する危険性の高い、被験者を決定することを可能にする。これにより、該状態の発現の可能性を予防するため、または減少させるため適当な措置をとることが可能となり、あるいはその適当な処置が可能となる。該方法はまた、既に特定の状態を患っていると診断されている被験者の予後を確証するのに有用である。
「多型」は、ヌクレオチド塩基配列が個体間で変化し得る遺伝子またはその調節エレメントの領域を意味する。相異なる遺伝子型を与える多型を有する集団のサブセットと共に、遺伝子の通常の形態または野生型に相当する優勢な遺伝子型が存在することが多い。特定の多型は、特定の人種的背景に属する個体、または特定の地理的領域出身の個体によく見られる。多型は、遺伝子の機能に影響を及ぼさない場合がある;遺伝子の機能に差異を与える場合がある;不活性な遺伝産物を産生する場合がある;または遺伝産物の産生を調節する場合があある。
「突然変異」は、ヌクレオチド塩基配列が通常の遺伝型(即ち、野生型)と異なる、遺伝子またはその調節エレメントの領域を意味する。突然変異は、塩基置換、付加または欠失であってよい。突然変異は、遺伝子の機能に影響を及ぼさない場合がある;遺伝子の機能に差異を与える場合がある;不活性な遺伝産物を産生する場合がある;または遺伝産物の産生を調節する場合がある。
「調節エレメント」は、遺伝子の転写の調節に関与するDNAを意味する。たとえば、転写因子結合配列、TATAボックス、および特にPLおよびPH1プロモーターである。PLおよびPH1プロモーターは、置換(displacement、D)−ループを含み全てのミトコンドリア遺伝子の転写に影響する制御領域に存在する、主要なプロモーターである。
「ミトコンドリアゲノム」は、検査を受ける被験者の細胞のミトコンドリア内部に見られる遺伝物質を意味する。この遺伝物質は、全ての遺伝子、特にコード配列およびその調節エレメントを含む。
ミトコンドリアゲノムは、各ミトコンドリア内に区分された16,558塩基対(核ゲノムの大きさの10−5倍未満)の二本鎖環状DNAである。ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、典型的には、各細胞に10−10の同一コピーが存在する。しかしながら、精子においては10コピー存在し、卵母細胞においては10コピー存在する。
ミトコンドリアは、真核細胞の細胞質の重要かつ不可欠な要素として認識されている。ミトコンドリアは、酸化的リン酸化(OXPHOS)の過程を介するアデノシン三リン酸(ATP)の形でのエネルギーの生成に関与する。ミトコンドリアはまた、プログラム細胞死、またはアポトーシスの調節に関与する。ミトコンドリア内膜は、数多くのアポトーシス促進因子、例えばcyt c、Smac、DIABLO、AIFおよびカスパーゼ、を含む。ミトコンドリア透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore)が開口するとその膜が膨張し、これらのアポトーシス因子が細胞質に放出される。
核ゲノムと比較すると、mtDNAは、非コード配列が置換ループ(D−ループ)として知られるほんの1kbだけで非常にコンパクトである。D−ループは三重らせんを形成しており、ミトコンドリア複製の開始点である。イントロンがなく、mtDNAは核DNAのように保護的ヒストンによって覆われていない。ミトコンドリアゲノムは、ミトコンドリア内膜につながれて呼吸鎖に近接している。
MtDNAは、13のタンパク質コード遺伝子より構成される。ヒトmtDNAの完全配列は、ケンブリッジ・リファレンス・シークエンス(Cambridge Reference Sequence)(CRS)(Anderson et al., Nature 1981 Apr 9; 290(5806): 457-65)として、当業者に知られている。mtDNAは最近再び配列決定され、CRSはさらに改訂された (Andrews et al., Nat Genet 1999 Oct; 23(2): 147)。
mtDNAの配列は、典型的には、血縁関係のないヒトにおいて50ヌクレオチド(0.3%)異なり得る。通常ほとんどのヒトで全細胞に、1つのmtDNA配列変異体が存在する。これはホモプラスミー(homoplasmy)と呼ばれる。
しかしながら、ヒトmtDNAにおける突然変異率は、核DNAの10−20倍である。この突然変異率は、少なくとも一部はプルーフリーディングmtDNAポリメラーゼ酵素の不足に起因すると考えられる。更に、呼吸鎖は、mtDNAにおいて突然変異を引き起こすと考えられている酸素フリーラジカルの有力な供給源である。
mtDNAの配列のバリエーションは、in situで(体細胞性に)受け継がれるか、あるいは創出される場合もある。
ミトコンドリア障害は、先天性の代謝異常の最も一般的な群に入り、推定発生率は出生10,000人に1人である。ミトコンドリアの状態は、ATPの産生をもたらす経路であるミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)系における疾患に関する。ミトコンドリアおよび核ゲノムの両方にコードされる85のタンパク質がその複雑なOXPHOS系に関与するので、OXPHOS系の遺伝子突然変異では様々な臨床的表現型が見られる。
メンデルの遺伝学とミトコンドリアの遺伝学の間には4つの基本的相違が存在し、それには母方の家系による継承、ポリプラスミー、ヘテロプラスミーおよび閾値効果(threshold effect)が含まれる。特定の病理的mtDNA突然変異の表現系および臨床的発現は、ミトコンドリアゲノム内の突然変異の位置だけでなく、細胞内の野生型ミトコンドリアに対する変異体の割合の影響も受ける。これは、時に、突原変異荷重(mutational load)、細胞内のmtDNAについてのヘテロプラスミーの程度、と呼ばれる。
閾値効果は、ミトコンドリア機能障害が起こるために存在する必要がある変異DNAの臨界数を意味する。ある生化学的発現で見られる閾値は、mtDNA欠失である突然変異を60%およびtRNAに見られる突然変異を95%保有しうるであろう。特定の組織におけるエネルギー要求性は、組織機能障害の程度に影響しうるであろう。
MtDNA突然変異は、点突然変異(置換)およびリアレンジメント(欠失および複製)を含むが、イントロンがないためスプライス部位の突然変異は含まない。点突然変異は一般的に母性遺伝と考えられているが、リアレンジメントはしばしば散発的に起こる。
雌のみがミトコンドリアに基づく形質(遺伝性ミトコンドリア突然変異)を伝達する。形質は、世代から世代へ直接伝達される。このことは優性遺伝を示唆するが、古典的メンデル遺伝学とは異なる。雄および雌の両方が影響を受ける。雌は、その全ての子孫にその形質を伝達し、それは核における遺伝子の伝達と一致しない。それ故、正常な条件下では哺乳類mtDNAはもっぱら母系に従い遺伝するというのが大多数の見解である。精子ミトコンドリアは受精においてその受精卵に寄与するにも関わらず、種内交配において精子mtDNAは選択的に除去される。それ故、ある雌の全ての子供はmtDNAについてクローン性である。このクローン性母系伝達および突然変異率の上昇が、集団において新規なmtDNA突然変異が蓄積する原因である。
ホモプラスミーは、通常個々の細胞に同一のmtDNAが存在することを意味する。それに対し、ヘテロプラスミーは相異なるゲノム配列(野生型および変異mtDNA)を含有するミトコンドリアが同じ細胞内に共存することである。ヘテロプラスミーは、良性のヘテロプラスミー多型も存在するものの、mtDNAにおける有害な突然変異の存在を示唆し得る場合がある。細胞分裂中、mtDNAはそれ自身で複製するが、核遺伝子とは異なり、その新規ミトコンドリア分子は娘細胞に受動的に分離する。ミトコンドリア突然変異は、1つの分子におけるランダムな変化である。やがて、偶発分離(chance segregation)は、細胞における変異体の増殖をもたらす。細胞分裂におけるmtDNAの受動的分離のため、個々のミトコンドリア突然変異についてのヘテロプラスミーのレベルは、様々な組織において相違する。ヒトにおいて、ミトコンドリア性ヘテロプラスミーは疾患と関連する。幾つかの病的状態、例えば神経筋障害、の重症度は、骨格筋(分裂後組織)における変異mtDNAの数の多さと一致する。それ故、無症候から重症までの一連の臨床学的表現型は、家系内のヘテロプラスミーの様々なレベルと関連する。
ある組織および臓器においては、選択が働き、変異DNAのレベルが減少または増加する場合がある。このモデルにおいて、ネガティブ選択は時間とともに変異体のレベルを減少させるであろうが、一方、変異mtDNAのレベルが生存中に特定の組織において増加することがある。幾つかの組織において、高レベルの突然変異荷重が、疾患の進行に関連している。突然変異荷重が増加した異常なミトコンドリアは、(おそらく補完的作用の一部として)呼吸鎖異常に応答して選択的に増殖しうる。このポジティブ選択は、筋肉のような分裂後組織内で変異mtDNAのレベルを増加させ得る。
ミトコンドリア疾患の特別な特徴は、単一の臓器から多組織の疾患まで、臨床症状において見られる不均一性である。50を超える病的なmtDNA塩基置換突然変異が知られている。この塩基置換は、13のタンパク質コード遺伝子に影響するミスセンス突然変異およびrRNAおよびtRNAに影響しミトコンドリアのタンパク質合成に広範な影響を与えるミスセンス突然変異の両者に分類される。さらに多くのmtDNAリアレンジメント(欠失および挿入)が様々な変性疾患において見られている。
最も頻繁に報告されているミトコンドリア突然変異は、MELAS(myopathy, enchephalopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes)に存在するA3243G、MERFF(myoclonus epileplsy, ragged red fibres)におけるA8344G、NARP(neuropathy, ataxia, neuritis pigmentosa)におけるT8993G/C、レーバー遺伝性視神経症(LHON)およびリー症候群(Leigh syndrome)である。核ゲノムにおける突然変異もまた、OXPHOS系を不活化することにより、またはmtDNAを不安定化することにより、ミトコンドリア機能に影響し得る。例えば、フリードライヒ失調症(Friedreich's ataxia)である。
遺伝性障害をもたらすミトコンドリア突然変異が、一般的な、遅発性の、不均一な疾患、例えば感覚神経障害および糖尿病並びに他の加齢に伴う疾患の大部分の基礎として、関与している可能性があることを示唆する証拠が増えてきている。表1に、様々なmtDNA突然変異が関連している可能性のある、十分に特徴決定された臨床的障害をあげる。
Figure 0004384025
本発明者らは、不適当な線維症または瘢痕によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態(例えばDD)の発症が、ミトコンドリアゲノムにおける突然変異または多型に関連している可能性があるという仮説を立てた。本仮説は、一部のDD患者が母性遺伝疾患を発症するという認識に基づいていた。ミトコンドリア性疾患は母性遺伝なので、本発明者らは、DD被験者および対照被験者由来のmtDNAを比較することにより、自身の仮説を試験することにした。
本発明者らは、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態に関連する可能性のある多型および突然変異について、ミトコンドリアゲノムをスクリーニングする実験を行った。このような関連を確証して、本発明者らは、被験者由来のDNAを分析して、該状態の診断の確立を助けることができる、または被験者がこのような状態を発症する素因をもっているかどうかを確かめることができることを確証した。
該状態は、上述したような皮膚の病的瘢痕形成(たとえば、肥厚性瘢痕形成またはケロイド)の形態または内部の瘢痕もしくは線維症である。あるいは、該状態は、また上述したように、線維性疾患または障害であり得る。
本発明方法は、以下にあげる皮膚の線維性障害の診断または検出を助けるために用いることが出来る:強皮症;全身性硬化症;クレスト症候;皮膚斑点を伴う結節硬化症;家族性皮膚コラーゲン腫;皮膚の代謝および免疫疾患(晩発性皮膚ポルフィリン症、慢性移植片対宿主病);好酸球筋膜炎;円板状エリテマトーデス、皮膚筋炎;混合結合組織疾患;薬物誘発性皮膚線維症−ブレオマイシン、PVC、シリケート;ペイロニー病;口腔粘膜下線維症;食事および環境暴露によって誘発される線維症。
本方法はまた、他の臓器の線維性障害の検出または診断に有用である。このような障害として、以下のものが挙げられる:
肺/心臓線維症;肝線維症/硬変;腎線維症;胃腸管線維症;薬物誘発線維症(たとえば、臓器移植後など);中枢および末梢神経系線維症;血管系(静脈および動脈)線維症;男性および女性尿生殖器線維症;婦人科系(卵管線維症、子宮線維症)。
本発明の第一の局面の方法は、デュピュイトラン病(DD)の素因を診断または検出するのに特に適する。
筋線維芽細胞から単離したmtDNAについて研究をおこなった(詳細については実施例において説明)。筋線維芽細胞は、多くの研究においてDDにおける組織収縮に重要な細胞であることが示されており、また多数のミトコンドリアを含むことが報告されている。
本発明者らは、熱変性高速液体クロマトグラフィー(DHPLC)をトランスジェノミックウェーブ核酸断片解析システム(Transgenomic Wave Nucleic Acid Fragment Analysis System、WAVE System)とともに使用し、ミトコンドリアゲノムにおける多型または突然変異を調べた。これら装置は、未知の突然変異を検出するのに、効率が高く、経費効率がよく、そして自動化された技術に用いることができる(Jones et al., Human Mutation 2001; 17(3): 233-234.)。本技術は、市販のジビニルベンゼンビースマトリックス(DNASep, Transgenomic Inc, Ne, USA)およびイオン対逆層HPLCを利用して、突然変異を含む試料に存在するヘテロ二本鎖DNA種(PCR増幅の結果形成する)を検出する。ヘテロおよびホモ二本鎖は、一部熱変性条件を適用することにより(例えば温度上昇により)、区別して溶出することができる。DNAが溶解し始める点でホモおよびヘテロ二本鎖種のヘリックス含量の差が最大となり、各々の種のマトリックスへの結合の程度が変化する。このようにホモおよびヘテロ二本鎖を区別して溶出すると、クロマトグラムパターンが変化し、突然変異の存在を同定することができる。重要なことは、DHPLCは、他の技術と異なり野生型集団における非常の低いレベルの変異体を検出することができることである。この能力により、DHPLCはミトコンドリアゲノムを調べるのに適している。
実施例1に示すように、本発明者らは、mtDNAにおけるある種の多型または突然変異が、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態の発症と有意に一致することを発見した。本発明に従い検出することができる好ましい多型または突然変異の例は、ミトコンドリアゲノムの以下の位置に見られる:
(a)ミトコンドリアゲノムの16srRNA領域における突然変異
本発明者らは、ミトコンドリアゲノムの16srRNA領域における突然変異が、本発明の方法に従う状態と一致することを発見した。
突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、16srRNA遺伝子の342bp断片(即ち、該ゲノムの3192−3533の位置)内に含まれ得る:
TTAGTATTATACCCACACCCACCCAAGAACAGGGTTTGTTAAGATGGCAGAGCCCGGTAATCGCATAAAACTTAAAACTTTACAGTCAGAGGTTCAATTCCTCTTCTTAACAACATACCCATGGCCAACCTCCTACTCCTCATTGTACCCATTCTAATCGCAATGGCATTCCTAATGCTTACCGAACGAAAAATTCTAGGCTATATACAACTACGCAAAGGCCCCAACGTTGTAGGCCCCTACGGGCTACTACAACCCTTCGCTGACGCCATAAAACTCTTCACCAAAGAGCCCCTAAAACCCGCCACATCTACCATCACCCTCTACATCACCGCCCCGACC(配列番号:1)。
あるいは、突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、16srRNA遺伝子の442bp断片(即ち該ゲノムの2415−2856の位置)内に含まれ得る:
ctcactgtcaacccaacacaggCATGCTCATAAGGAAAGGTTAAAAAAAGTAAAAGGAACTCGGCAAATCTTACCCCGCCTGTTTACCAAAAACATCACCTCTAGCATCACCAGTATTAGAGGCACCGCCTGCCCAGTGACACATGTTTAACGGCCGCGGTACCCTAACCGTGCAAAGGTAGCATAATCACTTGTTCCTTAAATAGGGACCTGTATGAATGGCTCCACGAGGGTTCAGCTGTCTCTTACTTTTAACCAGTGAAATTGACCTGCCCGTGAAGAGGCGGGCATAACACAGCAAGACGAGAAGACCCTATGGAGCTTTAATTTATTAATGCAAACAGTACCTAACAAACCCACAGGTCCTAAACTACCAAACCTGCATTAAAAATTTCGGTTGGGGCGACCTCGGAGCAGAACCCAACCTCCGAGCAGTACATGC(配列番号:2)
最も好ましい突然変異は、ミトコンドリアゲノムの2839の位置に見られる。この突然変異は、グアノシンヌクレオチド(G)の後へのチミジンヌクレオチド(T)の挿入である。実施例1は、DD患者由来の試料の16/18がGT遺伝子型を有し、一方対照(CW)は全て野生型(G)遺伝子型を有していたことを示す。
(b)呼吸鎖複合体Iのポリペプチドにおける突然変異
NADH−キノン酸化還元酵素(複合体I)は、ミトコンドリアにおける呼吸鎖の3つのエネルギー伝達酵素複合体の1つである。それは、呼吸鎖を移動し最終的に酸素を還元する電子の大部分が入るポイントである。複合体Iは、現在知られる最も複雑な膜結合酵素の1つと推測され、少なくとも43の異なるポリペプチドにより構成される。これらのうち、7つはmtDNA(ND1、2、3、4、4L、5および6)によりコードされている。
突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、ND1遺伝子の179bp断片(即ち、該ゲノムの3429−3607の位置)内に含まれ得る:
ccctacgggctactacaacccTTCGCTGACGCCATAAAACTCTTCACCAAAGAGCCCCTAAAACCCGCCACATCTACCATCACCCTCTACATCACCGCCCCGACCTTAGCTCTCACCATCGCTCTTCTACTATGAACCCCCCTCCCCATACCCAACCCCCTGGTCAACCTCAACCTAGG(配列番号:3)。
あるいは、突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、ND1遺伝子の242bp断片(即ち該ゲノムの3608−3849の位置)内に含まれ得る:
CCTCCTATTTATTCTAGCCACCTCTAGCCTAGCCGTTTACTCAATCCTCTGATCAGGGTGAGCATCAAACTCAAACTACGCCCTGATCGGCGCACTGCGAGCAGTAGCCCAAACAATCTCATATGAAGTCACCCTAGCCATCATTCTACTATCAACATTACTAATAAGTGGCTCCTTTAACCTCTCCACCCTTATCACAACACAAGAACACCTCTGATTACTCCTGCCATCATGACCCTTGG(配列番号:4)。
あるいは、突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、ND1遺伝子の470bp断片(即ち該ゲノムの3959−4428の位置)内に含まれ得る:
CCCCTTCGCCCTATTCTTCATAGCCGAATACACAAACATTATTATAATAAACACCCTCACCACTACAATCTTCCTAGGAACAACATATGACGCACTCTCCCCTGAACTCTACACAACATATTTTGTCACCAAGACCCTACTTCTAACCTCCCTGTTCTTATGAATTCGAACAGCATACCCCCGATTCCGCTACGACCAACTCATACACCTCCTATGAAAAAACTTCCTACCACTCACCCTAGCATTACTTATATGATATGTCTCCATACCCATTACAATCTCCAGCATTCCCCCTCAAACCTAAGAAATATGTCTGATAAAAGAGTTACTTTGATAGAGTAAATAATAGGAGCTTAAACCCCCTTATTTCTAGGACTATGAGAATCGAACCCATCCCTGAGAATCCAAAATTCTCCGTGCCACCTATCACACCCCATCCTAAAGTAAggtcagctaaataagctatcggg(配列番号:5)。
ND2領域に、対照では45%にしか存在しない顕著なDHPLCパターンが、患者の94%に見られた。このことは、突然変異が本発明の状態に関連して存在することを示唆した。
DD被験者において、ND2領域に2つの更なる新規な突然変異(A4916GおよびG5045Aの位置)が発見されたが、それらは本発明による検査で検出することができる。
突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、ND2遺伝子の396bp断片(即ち、該ゲノムの4846−5241の位置)内に含まれ得る:
CGGCCTGCTTCTTCTCACATGACAAAAACTAGCCCCCATCTCAATCATATACCAAATCTCTCCCTCACTAAACGTAAGCCTTCTCCTCACTCTCTCAATCTTATCCATCATAGCAGGCAGTTGAGGTGGATTAAACCAAACCCAGCTACGCAAAATCTTAGCATACTCCTCAATTACCCACATAGGATGAATAATAGCAGTTCTACCGTACAACCCTAACATAACCATTCTTAATTTAACTATTTATATTATCCTAACTACTACCGCATTCCTACTACTCAACTTAAACTCCAGCACCACGACCCTACTACTATCTCGCACCTGAAACAAGCTAACATGACTAACACCCTTAATTCCATCCACCCTCCTCTCCCTAGGAGGCCTGCCCCCGCTAAC(配列番号:6)
あるいは、突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、ND2遺伝子の531bp断片(即ち該ゲノムの4180−4710の位置)内に含まれ得る:
acttcctaccactcaccctagcATTACTTATATGATATGTCTCCATACCCATTACAATCTCCAGCATTCCCCCTCAAACCTAAGAAATATGTCTGATAAAAGAGTTACTTTGATAGAGTAAATAATAGGAGCTTAAACCCCCTTATTTCTAGGACTATGAGAATCGAACCCATCCCTGAGAATCCAAAATTCTCCGTGCCACCTATCACACCCCATCCTAAAGTAAGGTCAGCTAAATAAGCTATCGGGCCCATACCCCGAAAATGTTGGTTATACCCTTCCCGTACTAATTAATCCCCTGGCCCAACCCGTCATCTACTCTACCATCTTTGCAGGCACACTCATCACAGCGCTAAGCTCGCACTGATTTTTTACCTGAGTAGGCCTAGAAATAAACATGCTAGCTTTTATTCCAGTTCTAACCAAAAAAATAAACCCTCGTTCCACAGAAGCTGCCATCAAGTATTTCCTCACGCAAGCAACCGCATCCATAATCCTTCTAATAGCTATCCTCTTCAACAATATACTCTC(配列番号:7)。
(c)呼吸鎖複合体III(シトクロムb)のポリペプチドにおける突然変異
DD患者において、少なくとも2人の被験者間で非常によく似たDHPLCパターンを示す複数の新規な突然変異が発見された。これらの配列変化は、どの対照にも存在しなかった。配列決定により発見された変化の大部分は、ヘテロプラスミーが新たに存在することを明らかにし、それには以下のものが含まれた:G15274C/G;A15282C/A;G15319C/G;T15332C/T;G15336G/C;T15339T/C;T15362C/Tおよび15434insC。これら全ての変化は、シトクロムb領域におけるものであった。
(d)呼吸鎖複合体IV(シトクロムcオキシダーゼ)のポリペプチドにおける突然変異
DD患者由来の試料において、際だったDHPLCパターン変化が、そのゲノムの6688および6849の中(COI領域)に見られた。DD被験者は全て単一ピークのDHPLCパターンを示したが、一方対照試料では同様のパターンを示すのは27%に過ぎなかった。
本突然変異は、以下のヌクレオチド配列を有する、COI遺伝子の162bp断片(即ち、該ゲノムの6688−6849の位置)内に含まれ得る:
CGGAAAAAAAGAACCATTTGGATACATAGGTATGGTCTGAGCTATGATATCAATTGGCTTCCTAGGGTTTATCGTGTGAGCACACCATATATTTACAGTAGGAATAGACGTAGACACACGAGCATATTTCACCTCCGCTACCATAATCATCGCTATCCCCA(配列番号:8)。
更なる研究により、他の繊維性障害(例えば、強皮症または腎線維症)を有する被験者および重度の/病的な瘢痕(例えば、ケロイド)を発症する傾向のある被験者もまた、これらの突然変異の頻度が高いことが確証された。それ故、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる様々な状態の素因を診断または検出するため、その多型または突然変異を本発明の方法に従い検討することができる。
本発明の方法に従い多型または突然変異を検出するには、様々な技術を用いることができる。
好ましい技術の1つはDHPLCである。本技術は実施例1に詳説する。本発明の方法に従い使用するため、Van Den Bosch ら(Nucleic Acids Res 2000 Oct 15; 28(20): E89)のDHPLC技術を用いるか、あるいはそれを適応させることができる。
別の好ましい技術には制限酵素消化(制限酵素 Digestion、RED)が含まれ、これは、多型または突然変異が、(制限酵素部位の導入または欠失により)制限酵素処理後に相異なる大きさのDNA断片を生じさせることがあるという事実に基づいている。これらの断片はゲル上で可視化することができ、その多型は、被験者由来のDNA試料の断片の数および大きさ(即ち、ゲル上を移動した距離)に基づいて同定することができる。
mtDNAは、多型または突然変異の検出に先立って単離し、そして増幅することが好ましい。この増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によることが好ましい。例えば本発明の好ましい方法はPCR−制限断片長多型法(PCR−RFLP)として知られており、RED(制限酵素消化)およびその後の解析に先立って、その多型または突然変異を含むDNAをPCR増幅することを含む。一部の多型は、野生型または変異体アリルのいずれの制限酵素部位も消失あるいは導入しない。この場合、増幅産物に制限酵素部位を導入する特別に設計されたPCRプライマーによって、制限酵素部位を導入することができる。導入された酵素部位により、多型アリルと野生型との間をサイズ解析により区別することが可能となる。たとえば、増幅産物の制限産物をゲル電気泳動(アガロースまたはポリアクリルアミドゲルなど)によって解析する場合、導入された制限酵素部位をもつアリルは、ゲル上に特別なバンドを生じるであろう。
本発明により多型を検出するのに用いることができる他の技術には、以下のものが含まれる:
(1)対象の多型領域の直接配列決定(たとえば、Cy5TM Thermo Sequence dye terminator kit(Amersham Pharmacia Biotech)などの市販のキットを用いる);
(2)配列特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション(Sequence Specific Oligonucleotide Hybridization:SSO)(多型領域を含む増幅DNA分子のドットまたはスロットブロッティング;各多型変異体に特異的であるように設計される標識プローブとのハイブリダイゼーション;および該標識の検出を含む);
(3)ヘテロ二本鎖および一本鎖コンホーメーション多型(Heteroduplex and single-stranded conformation polymorphism:SSCP)解析(多型領域を含む変性増幅DNA分子の電気泳動バンドパターンの解析を含む);
(4)配列特異的プライミング(Sequence Specific Priming:SSP)[増幅不応性突然変異システム(Amplification Refractory Mutation System:ARMS)ともいう];
(5)突然変異走査[たとえば、PASSPORTTM 突然変異走査キット(Amersham Pharmacia Biotech)などを用いる];
(6)ミスマッチの化学的切断解析;
(7)非同位体RNase切断アッセイ(Ambion Ltd.);
(8)酵素ミスマッチ切断アッセイ;および
(9)単一ヌクレオチド伸長アッセイ。
PCR増幅が必要な場合、PCRプライマーは、該当の多型または突然変異周辺の領域を増幅するのに適するように設計する必要がある。
PCRプライマーセット6(例えば、以下の実施例1および配列番号:9および配列番号:10を参照)が、16srRNA遺伝子において突然変異を検出するために好ましいプライマーである。実施例1に記載されるように、これらプライマーによる増幅に続けて、(より小さいDNA断片を生じさせるため)Dde1制限酵素消化してもよい。
プライマーセット6 フォワードプライマー:5’ ctc act gtc aac cca aca cag g 3’ (配列番号:9)
プライマーセット6 リバースプライマー: 5’ tgt gtt gtg ata agg gtg gag ag 3’ (配列番号:10)
2839における突然変異を特異的に増幅するのに適したプライマーを、以下に配列番号:11および配列番号:12として挙げる。
フォワードプライマー:5’ tgc att aaa aat ttc ggt tgg 3’ (配列番号:11)
(長さ 21bp;GC数 7;AT数 14;%GC 33%;Tm=48.81)
リバースプライマー:5’ tgt cct gat cca aca tcg ag 3’ (配列番号:12)
(長さ 20bp;GC数 10;AT数 10;%GC 50%;Tm 54.22)
配列番号:11および配列番号:12のプライマーは、2839突然変異を含むミトコンドリアゲノムの領域を増幅するのに用いることができる。増幅されたmtDNAをその後配列決定し、その遺伝子型を同定することができる(即ち、直接配列決定技術)。
mtDNAは、血液または組織試料(例えば、毛髪、口腔頬側スワブ、爪または皮膚)あるいは他の適したソースから、常套的方法を用いて単離することができる。好ましくはDNAは、全血または顆粒球、手掌筋膜、足底筋膜もしくは陰茎筋膜から単離する。筋線維芽細胞もまた、本発明の方法による検査のための好ましいmtDNAソースである。
本方法は、ヒト被験者由来のmtDNAを検討するのに用いることが好ましい。しかしながら、獣医学的対象の被験動物由来のDNAもまた、本発明の方法により検査することができることは理解されるであろう
本発明の方法に基づく予測または診断は、問題とする特定の状態と特異的多型または突然変異との間に形成させる関連性に依存する。このような関連性は、本発明者が、さらなる実験を行い、統計的解析を行うことによって確証された。関連性解析に基くデータを蓄えることによって、臨床医が、本発明方法に従いDNAを配列決定することによって同定された遺伝子型の重要性を解釈するのが可能になる。次いで、臨床医は、患者が特定の疾患または障害を発症している、または保有している可能性に関して判断を下すことができる。このような知識は、不適当な瘢痕形成または線維症に関連する特定の状態の臨床管理において重要である。当然のことながら、特定の遺伝子型と状態との関連性に関するデータは、キットの一部としてデータシートを組み込むことによって、本発明方法の利用者(技術者または臨床医)に提供される(後記参照)。
新生児または小児が、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態の発症の素因を受け継いでいるかどうかを検査することが必要である場合、遺伝子検査は、胎児期、周産期または出生後のいずれかに行うことができる。これは、該状態の発症の家族暦がある場合、特に有用である。
本検査は、手術前に被験者を検査するのに特に有用である。このような検査の結果は、手術を受けようとする被験者について治癒合併症(たとえば、肥厚性瘢痕形成、ケロイドまたは内部線維症/瘢痕形成)が起こり得るかどうかを明らかにするのに有用である。
本検査は、不適当な瘢痕形成または線維症によって特徴付けられる状態を処置するために治療処方計画を確立する前にも有用である。本発明の検査の結果は、臨床医が用いて、使用する医薬およびその用量の選択に役立てることができる。
本発明方法は、不適当な瘢痕形成または線維症によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態の発症の家族暦をもつ被験者を検査するのに用いるのが最も好ましい。
本発明の第1の局面の方法を行う技術者にとって必要な種々の要素は、キットに組み込むことができる。したがって、本発明の第2の局面に従い、以下を含むキットが提供される:
(A)不適当な瘢痕形成または線維症によって特徴付けられる状態に関連するミトコンドリアゲノムにおける遺伝子多型を増幅するためのPCRプライマー;および
(B)各多型のための既知の遺伝子型の対照DNA試料。
キットが、対象の多型または突然変異を含むことがわかっている試料DNAの標的配列に特異的なプライマーを含むことが好ましい。たとえば、G2838G/T突然変異の遺伝子型を特定するためのキットに適するPCRプライマーは、配列番号9および配列番号10のプライマー、または配列番号11および配列番号12のプライマーである。
キットは、さらに以下のものを含むことができる:
(C)mtDNA試料の断片を作成するための適当な制限酵素;
(D)特定の多型と疾患との間の関連の概要をまとめるデータカード;
(E)PCR増幅、PCR産物の制限酵素消化およびDNA断片のアガロースゲル電気泳動のためのプロトコール;
(F)適切な緩衝液。
キットで提供される緩衝液は、液体であってよく、測定済みのアリコートとして提供されるのが好ましい。あるいは、緩衝液は希釈用の濃縮形態(または粉末形態)であってよい。
キットは、さらに適当な反応容器、遠沈管などを含むことができる。
本発明の第3の局面により、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態を処置するための医薬を製造に用いる、ミトコンドリアゲノム遺伝子産物の調節物質の使用が提供される。
本発明の第4の局面により、不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態を処置する方法であって、そのような処置を必要とする被験者に治療上有効量のミトコンドリアゲノム遺伝子産物の調節物質を投与することを含む方法、が提供される。
本発明者らは、本発明の第3および第4の局面による調節物質は、本発明の第1の局面に関して説明した各状態を処置するために使用することができることを発見した。該調節物質は、デュピュイトラン病(DD)を処置するために使用することが好ましい。
本発明の調節物質として使用することができる化合物には、幾つかのクラスがある。これら化合物は、以下のものを含む:
(i) ミトコンドリア遺伝子産物のインヒビター(阻害物質)またはアクチベーター(活性化物質)(例えば、アロステリックな、または競合的インヒビター);
(ii) ミトコンドリア遺伝子産物の合成を調節する化合物;
(iii) ミトコンドリア遺伝子産物の放出を調節する化合物;
(iv) ミトコンドリア遺伝子産物の不活化または代謝の速度を調節する化合物;
(v) ミトコンドリア遺伝子産物の発現および/または転写を調節する化合物(例えば、リボザイムまたはアンチセンスDNA分子);および
(vi) ミトコンドリア遺伝子産物に対する抗体またはイントラボディ(intrabody)。
調節される遺伝子産物は、呼吸鎖複合体I;呼吸鎖複合体III(シトクロムb);呼吸鎖複合体IV(シトクロムCオキシダーゼ)であることが好ましい。最も好ましくは、調節される遺伝子産物は、16srRNAである。
好ましいアンチセンス分子、抗体およびイントラボディは、配列番号:1−12のいずれかに対するものであってよい。
調節物質は、既存の状態を処置するために使用することができるが、予防的処置が医学的に必要と考えられる場合にも使用することができる。例えば、肥厚性瘢痕形成またはケロイドの発症を防ぐために、待機手術の前に治療を開始することが必要と考えられる場合である。
本発明の第3および第4の局面の調節物質は、特にそれらの使用方法に依存して、数多くの相異なる形態をとることができる。つまり、例えば、組成物は、粉末、錠剤、カプセル、液体、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、エアロゾル、スプレー、ミセル、経皮パッチ、リポソームの形態、または人または動物に投与することができる他の適した形態であってよい。本発明の組成物のビークルは、それを投与される被験者が十分に耐えられるものであり、また該化合物を被験者に送達することができるものでなければならないことは、理解されるであろう。
本発明の調節物質は、様々な方法で使用することができる。例えば、全身性投与が必要な場合、調節物質は、例えば錠剤、カプセルまたは液体の形態で経口により摂取することができる組成物に含めることができる。あるいは、調節物質は、血流へ注射することにより投与することができる。注射は、静脈内(ボーラスまたは輸液)または皮下(ボーラスまたは輸液)であってよい。調節物質はまた、吸入(例えば鼻腔内)により投与してもよい。
調節物質は、該状態の患部組織、または患部となりうる組織に、局所投与されることが好ましい。
調節物質はまた、持続放出または遅延放出装置に組み込むことができる。 このような装置は、例えば、皮膚に、また皮下に挿入することができ、調節物質を数週間または数ヶ月かけて放出し得る。このような装置は、慢性症状の患者に特に有用である。本装置は、通常頻回投与を必要とするであろう調節物質を用いる場合に、特に好都合であろう。
必要な調節物質の量は、投与様式、用いた化合物の物理化学的性質、および調節物質が単独療法として用いられるか、あるいは併用療法において用いられるか、に依存する、生物活性および生物学的利用能により決定されることは、理解されるであろう。投与頻度もまた、前述の因子、および特に処置をうける被験者内での調節物質の半減期の影響をうける。
組成物の具体的製剤および正確な治療計画(例えば調節物質の1日投与量および投与頻度)を確立するには、既知の手段、例えば製薬業界で常套的に用いられるもの(例えば、in vivo実験、臨床試験など)を用いることができる。
タンパク質またはペプチド調節物質の好ましい使用方法は、該調節物質を遺伝子治療によって患部組織に送達するものである。それ故、本発明の第5の局面により、直接的または間接的にミトコンドリアゲノム遺伝子産物を調節するタンパク質をコードするDNA分子を含む遺伝子治療技術に用いる送達系であって、該DNA分子は転写されて該タンパク質を発現させる能力があり、およびそれにより不適当な線維症または瘢痕形成によって少なくとも部分的に特徴付けられる状態を処置する能力がある、送達系、が提供される。
本発明の第5の局面による送達系は、ミトコンドリアゲノム遺伝子産物を直接的、または間接的に調節するタンパク質のレベルを、大抵の常套的治療計画で可能な期間よりも長期間にわたり維持するのに非常に適する。本送達系は、そのDNA分子により形質転換されている細胞による持続的タンパク質発現を誘導するために用いることができる。それ故、たとえin vivoにおいてそのタンパク質の半減期が物質としては非常に短くても、処置した組織から治療上有効量のタンパク質を持続的に発現させることができる。
さらに、本発明の送達系は、常套的製薬ビークル、例えば錠剤、カプセルまたは液体に必要とされるビークル、を使用する必要なく、DNA分子(およびその結果、活性ある治療物質であるそのタンパク質)を提供するために使用することができる。
本発明の送達系は、(本送達系が患者に投与される場合に)そのDNA分子が発現する能力を有し、ミトコンドリア遺伝子産物活性を調節する活性を直接的または間接的に有するタンパク質を産生するものである。「直接的」とは、遺伝子発現産物自体が所望の活性を有することを意味する。「間接的」とは、遺伝子発現産物が(例えば酵素として)少なくとも1つの更なる反応を経て、または仲介して、該状態を処置するのに有効な調節物質を提供することを意味する。
DNA分子は、適したベクター内に含まれ、組換えベクターを形成することができる。該ベクターは、例えばプラスミド、コスミドまたはファージであってよい。そのような組換えベクターは、本発明の送達系において、そのDNA分子により細胞を形質転換するのに非常に有用である。
組換えベクターはまた、他の機能的要素を含んでも良い。例えば、組換えベクターは、細胞において該ベクターが自己複製するように設計することができる。この場合、DNA複製を誘導する要素が組換えベクターに必要とされ得る。あるいは、組換えベクターは、該ベクターおよび組換えDNA分子が細胞のゲノムと一体化するように設計することができる。この場合、標的を絞った一体化(例えば相同的組換えによる)に有利に働くDNA配列が望ましい。組換えベクターはまた、クローニング工程において選択的マーカーとして使用することができる遺伝子をコードするDNAを有しても良い。
組換えベクターはまた、必要とされる遺伝子の発現を制御するプロモーターまたはレギュレーターをさらに含むことができる。
DNA分子は、処置をうけている被験者の細胞のDNAに組み込まれるものであってもよい(しかし必ずしもそうでなくてよい)。未分化な細胞を安定的に形質転換し、遺伝子組換え娘細胞を産生することができる(この場合、例えば特異的転写因子または遺伝子アクチベーターにより、被験者における発現を調節することが必要である)。あるいは、本送達系は、処置を受けている被験者の分化した細胞の、不安定な、または一過性の形質転換に有利に働くように設計することができる。この場合、その形質転換細胞が死ぬか、またはそのタンパク質を発現しなくなる時に(理想的にはその状態が処置されたか、または予防された時に)そのDNA分子の発現が止まるであろうことから、発現の調節はそれほど重要でないであろう。
本送達系は、DNA分子をベクターに組み込まずに被験者に提供することができる。例えば、DNA分子をリポソームまたはウィルス粒子内に組み込むことができる。あるいは、「裸の」DNA分子を、適した方法、例えば直接的エンドサイトーシス的取り込み、により、被験者の細胞に挿入することができる。
DNA分子は、トランスフェクション、感染、微量注入、細胞融合、原形質融合、または弾道砲撃(ballistic bombardment)により、処置をうける被験者の細胞に移行させることができる。例えば、移行は、コート化金粒子による弾道トランスフェクション、DNA分子含有リポソーム、ウィルスベクター(例えば、アデノウィルス)、および、DNA分子を脳に直接局所的に適用することにより、または注射することにより、直接的にDNAを取り込ませる手段(例えば、エンドサイトーシス)によるものであってよい。
ミトコンドリアに起因する状態を標的として設計された方法は、本発明の第3、第4、または第5の局面により規定される処置を実施するために用いることが好ましい。例えば、ペプチド核酸(PNA)を使用して、アンチゲノム的アプローチを採用することができる。内生細胞置換治療および同素形(allotropic)遺伝子治療もまた、mtDNA疾患を処置するために用いることができる。このような治療は、最近 Turnbull & Lightowlers (Nat Genet 2002 April 30(4): 345-346)に総説されており、そこに開示される(および引用により本明細書に含まれる)治療技術は、本発明による好ましい処置方法に用いることができることは、理解されるであろう。
実施例1:mtDNAにおけるデュピュイトラン病に関連する突然変異の同定
デュピュイトラン病(DD)患者の群および対照群から試料を採取して、多型とその状態との間の一致を検討した。
1.1 方法
発明者らは、Van Den Bosch らのDHPLC技術 (Nucleic Acids Res 2000 Oct 15; 28(20): E89) を改変し、DDに関連する可能性のある突然変異についてミトコンドリアゲノムを走査した。
1.1.1 Van Den Bosch らのDHPLC技術に対する改変
発明者らは、Van Den Bosch らのDHPLC技術(前述)を改変し、大きな試料集団のミトコンドリアゲノム突然変異走査を手ごろな費用でより迅速に達成できるようにした。行った変更を表2に概説する。
Figure 0004384025
Van Den Bosch らの技術を改変した工程の略図を、図1に示す。図1は、特別に設計された18のプライマーのセットを使用する、オプティマーゼDNAポリメラーゼによるミトコンドリアゲノム全体のPCR増幅を示す。その増幅セットのうち4つの断片は通常のDHPLCで使用するが、残りの14は制限酵素消化して様々な断片を形成し、それらをその後全部で29の相異なるパラメーター(勾配および温度)を用いてマルチプレックスDHPLCにかけることができる。陽性試料はクロマトグラムパターンの変化により示され、存在する突然変異は配列決定によって確認する。
1.1.1(a) プライマー設計の重要性
Van Den Bosch らのDHPLC技術に施した改良は全て、以下の基準に留意して設計したプライマー設計に由来する:
1.DHPLC(非マルチプレックス)のためのミトコンドリアゲノムの超可変領域の個々の断片。
2.個々の主要コーデイング遺伝子の考慮。
3.突然変異を引き起こす既知の疾患の考慮。
プライマー位置およびこれらの基準を、図2に示す。超可変領域の走査に関して、元の技術のように1つの大きな断片で後に制限酵素消化するかわりに、3つの重複するPCR増幅を用いた。この領域の、コードしないが超可変な性質は、数多くの陽性DHPLCパターンをもたらし、それらは本方策を用いて配列決定することにより確認された。
ゲノム全体の増幅には元の技術において用いられるよりも多数のPCRが必要であったが、購入しなければならない制限酵素が少なく(10に対して5)、そしてより重要なことに、用いなければならないDHPLC走査条件が少ないことから、我々はこれは価値があったと考える。走査条件の65から29への減少は、実時間および費用を節約する要素であり、本計画で行うように、ある研究設定において多数の試料を走査する必要がある場合に際だつものである。
1.1.1(b) PCR酵素選択の重要性
ミトコンドリア集団のヘテロプラスミックな性質のため、突然変異検出技術は、大部分が野生型である集団において小さな突然変異の集団を発見するのに十分な感受性を有さなければならない。このことを考慮すると、この適用に重要な基準は、PCR増幅よる試料調製の忠実度が高いことである。全てのTaqDNAポリメラーゼ酵素は、それらの起源および使用方法に依存する固有の誤取り込みのレベルを有する。PCR増幅中のそれぞれの誤取り込みは、ランダムな低レベルのヘテロ二本鎖と同等であり、DHPLC技術により可視化することができる。それ故、これらの誤取り込みを可能な限り低いレベルに維持し、それにより成功の見込みを最大とすることが望ましい。我々は、非常に高レベルの忠実度を有することが示されている、新規なプルーフリーディングポリメラーゼ(オプティマーゼDNAポリメラーゼ(Optimase DNA polymerase)、Transgenomic Inc)に置き換えた。図3は、エクスパンドDNAポリメラーゼ(Expand DNA polymerase、Roche)と比較して、オプティマーゼポリメラーゼを用いてプライマーセット2について得られた野生型パターンを示す。オプティマーゼDNAポリメラーゼを使用して一部変性条件下に得られたシャープなピークパターンは、この酵素の忠実度の上昇を示す。
1.1.2 実験手順
1.1.2(a) 試料収集
患者:母系遺伝を伴うデュピュイトラン病(DD)患者(n=20)が本研究に参加した。年齢は37から90歳の範囲であり、平均年齢は56.9歳であった。患者は全て、血縁関係のない英国イングランド北西地域出身のカフカス人であった。デュピュイトラン病患者はほとんど、北西地域にあるSouth Manchester University Hospital Trust and Wrightington Hospital の手術記録臨床コードにより同定された。完全な病歴は、各患者についてプロフォーマ(proforma)を用いて得た。各個人の両手両足を調べた。全ての患者が、掌および/または指に特徴的なデュピュイトラン小塊を有し、中手指節関節(MCPJ)または近位指間接(PIPJ)のいずれかの拘縮を伴っており、手術前にDDの確定診断を受けた。
対照:対照個人(n=20)は全て、イングランド北西の同じ地域から選ばれた、年齢、性別および民族的に一致した健常カフカス人男性及び女性であった。完全な病歴は同じく、プロフォーマ(proforma)を用いて得た。各個人の瘢痕および両手を調べ、何らかの皮膚の繊維性障害の存在を除外した。いずれの対照もDDの証拠を有さず、DDの家族歴も報告されなかった。
地域および病院の倫理委員会が本研究を許可した。全ての個人から書面による同意を得た。
1.1.2(b) DNA抽出
標準的静脈切開技術を用いて、被験者から血液試料を収集した。全ての被験者から静脈血15mLを回収した。市販のDNA抽出キット(Qiagen, UK)を用いて、末梢血細胞よりDNAを抽出した。DNA濃度を測定し、滅菌 Qiagen バッファーを用いて、100ng/μl(バッファー)に希釈した。
1.1.2(c) プライマー設計
ミトコンドリアゲノム全体を増幅するため、18のプライマーのセットを設計した。それらが増幅するミトコンドリア断片の詳細は、表3に示し、プライマー配列は表4に示す。
Figure 0004384025
Figure 0004384025
4つのプライマーセットは単純DHPLCによりすぐに解析可能な断片を形成し、一方残りの14のプライマーは、続いて制限酵素消化した後にマルチプレックスDHPLCに用いる、800−2000bpの断片サイズの産物を増幅した。各断片セットにつき、フォワードおよびリバースプライマーを、各プライマー5μMの濃度で組み合わせた。
突然変異の確認に用いた配列決定プライマーは、プライマー3プログラム(http://www.genome.wi.mit.edu/cgi-bin/プライマー/プライマー3_www.cgipr)を用いて設計した前述の元の増幅プライマーセットから、あるいは文献(Levin et al 1999)から得た。
1.1.2(d) PCR手順
鋳型としてゲノムDNA約100ng、各dNTP200μM(Cruachem Ltd)、フォワードおよびリバースプライマー各30pmol、オプティマーゼDNAポリメラーゼ2.5ユニットおよび1.5mM MgSO含有10xオプティマーゼ反応バッファー(Transgenomic Ltd)を含有する100μlの容量にて、PCR反応を行った。 MJ research Tetrad Thermal cycler を用いて、表5に概説するサイクル条件にて増幅を行った。少量(5μl)のPCR産物を、エチジウムブロマイドで染色して紫外線光の下で可視化した2%アガロースゲルにおいて検査した。
Figure 0004384025
1.1.2(e) 制限酵素消化
表3に示すように、様々なPCR断片を消化するため、制限酵素(Alu1、Dde1、HaeIII、Mbo1およびMsp1−New England Biolabs)を使用した。88.5μlのPCR産物を、適当な制限酵素バッファー10μlおよび制限酵素1.5μlと混合した。試料を37℃で2時間インキュベートし、ごく一部(10μl)を、エチジウムブロマイドで染色した2%アガロースゲルにおいて検査した。異常な制限パターンを含む試料が同定された。制限酵素消化パターンの変化によって創出されたこの断片サイズの変化は、予測したDHPLC解析温度を修正させ得るものであった。ミトコンドリアゲノムは比較的一定した組成を有すること、および制限酵素認識部位変異体はわずかしか同定されなかったことから、我々は解析温度を表3に示すものに変更しなかった。
1.1.2(f) ヘテロ二本鎖形成
DHPLC解析に先だって、全ての試料を、MJ Tetrad サーマルサイクリング装置を用いるヘテロ二本鎖形成ステップ(95Cで5分間加熱し、その後1分につき1.5℃の速度で25℃に到達するまで冷却することから構成される)にかけた。
1.1.2(g) DHPLC解析
WAVE Nucleic Acid Fragment Analysis System および DNASep Cartridge 技術(Transgenomic Inc, NE, USA)を使用して、表3に示す予測した温度(WAVEMAKERTM ソフトウェア−Transgenomic Inc, NE, USA)を用いて試料解析を行った。勾配移動相はバッファーA(0.1Mトリエチル酢酸アンモニウム、pH7.0)およびバッファーB(0.1Mトリエチル酢酸アンモニウム、pH7.0および25%アセトニトリル)より構成された。これらの溶出剤を混合し、バッファーBを12分間かけて45から67%の間で変化させる直線勾配を形成した。この適用に推奨されるカートリッジ洗浄方法を採用した;直線勾配の最後に75%アセトニトリルを用いて0.5分洗浄。通常1解析につき10−15μlの試料を注射した。
1.1.2(h) 配列決定(シークエンシング)
配列決定による突然変異の確認のためのPCRを、適当なプライマーセットを用いて前述のように実行した。エタノール沈殿の前に試料に ExoSapIT を処置した。Applied Biosystems 3100 Sequencer を用いて、製造元のプロトコールに従い、サイクルシークエンシングを行った。
1.2 結果
1.2.1 超可変領域
3つのプライマーセット(MT1−3)は、ミトコンドリアゲノムの超可変領域(D−ループ)の大部分を増幅した。この領域は非コード領域であり、ミトコンドリアゲノムの15887から648bpに及ぶ。それは特徴的に非常に多型性である。
1.2.1(a) プライマー1
本プライマーセットは、15974−16409bpの領域を増幅し、436bpの断片を形成した。罹患および対照の試料の全体にわたり、複数かつ非特異的なDHPLCパターンバリエーションが検出された。これらのバリエーションは、多数のランダムな突然変異を表す。単一の優勢なパターンは、いずれの試料にも存在しなかった。このことは、明らかな疾患誘発突然変異が存在しないことを示した。これらの知見は、配列決定の結果と酷似していた(表6に要約)。DD11、CW1、CW4(WT)を代表的試料として配列決定した。
1.2.1(b) プライマー2
本プライマーセットは、16341−102bpの領域を増幅し、331bpの断片を形成した。
本領域の超可変的性質に照らして、多少驚くべきことに、DHPLC解析によって患者および対照の集団の間で明らかな変化は生じなかった。いずれの試料も配列決定しなかった。
1.2.1(c) プライマー3
プライマーセット3は、29−480bpの領域を増幅し、452bpの断片を形成した。この452bpの断片からの結果は、プライマーセット1により得られたものと同様であった。DHPLCの結果は高度のパターン変動性を示し、本領域の高度な多型性が確認された。いずれの試料にも単一の優性なパターンは存在しないことから、このことは、明らかな疾患誘発突然変異が存在しないことを示した。配列決定のデータは表6にまとめる。
1.2.2 コード領域
1.2.2(a) プライマー4
本プライマーセットは、368−1713bpの領域(648−1601bpにおいて12srRNAをコード)をカバーして1346bpの産物を形成し、その産物をMbo1により消化すると211、276、372および487bpの断片が形成された。プライマー設計は、ミトコンドリア領域を確実に完全にカバーするためある程度の重複を必要とし、従ってプライマー4のはじまりは、D−ループ領域の末端部分の300bpをカバーする。
既知の突然変異DEAFは、本領域の1555の位置に存在する。解析した試料に制限酵素認識部位変異体は観察されなかったが、図4および5に示すように(矢印を参照)、DHPLC変異体が同定された。5つの試料を配列決定した;断片3におけるDD1、DD7およびDD12のDHPLC変異体および断片2に潜在的挿入を有するCW5。これら両方の領域の対照としてCW3を配列決定した。これら試料において同定された突然変異は、表6にまとめる。
1.2.2(b) プライマー5
本プライマーセットは、1650−2841bpの領域をカバーして1192bpの産物を形成し、その産物をHaeIIIにより消化すると273、394および525bpの断片が形成された。制限酵素認識部位変異体は観察されなかった。図6に示すように、DHPLC変異体が同定された。その溶解温度のため、変異体を含有する正確な断片を同定することが難しかったことから、断片2および3を配列決定した。DHPLCパターン変化の代表としてDD1、6およびCW3の3つの試料を、本領域の参考パターンとしてDD7を、配列決定した(図6)。配列決定した、試料DD1における1690の位置の突然変異は、CW19と同様のDHPLCパターンを有したことから、CW19はこの未知の突然変異を含むようである(表6および図7)。試料CW3における1811bpの位置の既知の突然変異(A>G)は、他の6つの試料とそのDHPLCパターンを共有する(CW4、10および12;DD6、12、20)。
1.2.2(c) プライマー6
本プライマーセットは、2415−3811bpの領域をカバーして1397bpの産物を形成し、その産物をDde1により消化すると125、210、278、342および442bpの断片が形成された。図9に示すように、DHPLC解析により、断片5において対照集団(CW)と罹患集団(DD)との間に大きな変化が示された。本断片に、主要なピークと肩を示す対照試料と比較して、DD試料にはよりはっきりとした2ピークパターンが存在した。DD3並びにDD11および対照としてCW3並びにCW5の4つの試料を、配列決定のための代表として配列決定した。
20人の患者の内、2つのPCRが失敗した。全ての対照における参考パターンと比較して、18のDD試料のうち16が変異体DHPLCパターンを有した(2839の位置のG>GT)。対照はいずれも変異体パターンを有さなかった。このことは、GT変異体とDDの発生率との間の、顕著な一致を表す。即ち、本発明の好ましい方法は、ミトコンドリアゲノムの2839の位置の突然変異を検出する。
別の突然変異が、対照試料の1つであるCW3においてT2706Cの位置に同定された。これは、配列決定したいずれの患者および対照試料にも存在しなかった。
1.2.2 (d) プライマー7
本プライマーセットは、3429−4428の領域をカバーして1000bpの産物を形成し、その産物をHaeIIIで消化すると109、179、242および470bpの断片が形成された。その試料に制限酵素認識部位変異体は存在しなかった。図10に示すように、DHPLC解析により、興味深い可能性のある変化が、20の罹患試料のうち7つに示された。その変化は、断片2、3または4のどこかに位置するようである。全ての陽性試料(DD1、2、5、11、14、17、18)を、対照試料としてのCW1、9および15と共に、配列解析にかけた(突然変異について表6参照)。
DD1、2、11、14、17、18は全て、参考パターンと異なるDHPLCパターンを示した(図10)。DD1および14は同じパターンであるが、DD11はこのグループの全てのパターンと異なる。
1.2.2(e) プライマー8
本プライマーセットは、4180−5488bpの領域をカバーして1309bpの産物を形成し、その産物をMspIにより消化すると135、247、396および531bpの断片が形成された。本領域には、既知の既報の疾患突然変異は存在しない。解析した試料には、制限酵素認識部位変異体は存在しなかった。DHPLC解析により、対照の47%に対して、患者の94%に、2ピークパターンを有する興味深い可能性のある変化が示された(図11)。3つの陽性試料(DD10、17および18)を、参考試料としてのCW2と共に、配列解析にかけた(表6参照)。
3つのDD試料のうち2つが4180−4526の領域内に変化を有したことから、発明者らは、本領域がDDのような状態に関係するであろう突然変異を有している可能性があると考える。
1.2.2(f) プライマー9
本プライマーセットは、5347−6382bpの領域をカバーして1036bpの産物形成し、その産物をHaeIIIで消化すると122、190、233および491bpの断片が形成された。本領域には、既知の疾患突然変異は存在しない。DD12、CW3およびCW10の3つの試料が、5836−5839bpの間でHaeIII切断部位を破壊する、同じ制限酵素認識部位突然変異を示した(既知)。本制限酵素認識部位突然変異およびDHPLC変異体の例(断片4に存在)は、図12に見ることが出来る。
1.2.2(g) プライマー10
本プライマーセットは、6318−7707の領域をカバーして1390bpの産物を形成し、その産物をMspIにより消化すると117、162、253、354および504bpの断片が形成された。断片2において、DD試料は100%が1ピークパターンを有するが、対照では27%のみが1ピークパターンを有する。そのDHPLCパターン変化を図13に示す。DD患者3人(DD1、12および20)および対照4人(CW1、3、5および7)の、7つの試料を配列決定した。しかしながら、配列決定により、プライマー10の断片2の配列には変化がないことが明らかとなった。
1.2.2(h) プライマー11
本プライマーセットは、7644−8784の領域をカバーして1141bp産物を形成し、その産物をHaeIIIにより消化すると141、181、212、243および364bpの断片が形成された。HaeIII部位を破壊する2つの既知の相異なる制限酵素認識部位突然変異が、我々の試料に見られた。
試料DD10およびCW14は、制限酵素認識部位が8250bpで破壊されている(G>A)。試料DD12に、7980の位置における別の制限酵素認識部位突然変異(A>G)が見られた。試料DD17およびCW10に、8269−8277の位置の9bpの欠失(caccccctc)が存在する。2つの制限酵素認識部位変異体および9bpの欠失は、配列決定により確認した。
1.2.2(i) プライマー12
本プライマーセットは、8643−9458bpの領域をカバーして816bpの産物を形成し、その産物をDdeIにより消化すると187、239および390bpの断片が形成された。解析した試料に制限酵素認識部位変異体は存在しなかった。
我々は、1人の患者および2人の対照において8696の位置に存在する未知の突然変異(G>A)を同定した。別の点突然変異も、1人の対照においてのみ、9264の位置に見られた(C>T)。他の同様のDHPLCパターン変化は、我々の試料には存在しなかった。
1.2.2(j) プライマー13
本プライマーセットは、9397−11387bpの領域をカバーして2001bpの産物を形成し、その産物をAlu1により消化すると248、312、366、487および588bpの断片が形成された。既知の疾患突然変異は存在しない。9643−9647bpのAlu1部位を破壊する2つの制限酵素認識部位変異体(既知)、DD17およびCW3、が同定された。
1.2.2(k) プライマー14
本プライマーセットは、11322−12582bpの領域をカバーして1531bpの産物を形成し、その産物をHaeIIIおよびMspIにより消化すると178、366、435および552bpの断片が形成された。LHON疾患(レーバー遺伝性視神経症)についての既知の突然変異(G11778A)が存在する。本領域に制限酵素認識部位変異体は存在しない。
1.2.2(l) プライマー15
本プライマーセットは、12753−13264bpの領域をカバーして512bpの産物を形成する。これは、59℃で制限酵素消化なしに解析される単純DHPLC断片であった。罹患および対照の集団の間で、DHPLCパターンに明らかな変化は存在しなかった。
1.2.2(m) プライマー16
本プライマーセットは、13172−14610bpの領域をカバーして1439bpの産物を形成し、その産物をAluIおよびDde1により消化すると129、177、289、382および462bpの断片が形成された。LHON疾患(レーバー遺伝性視神経症)についての2つの既知の疾患突然変異(A14495GおよびT14484C)が存在した。3つの制限酵素認識部位変異体が本領域に存在する。はじめの2つは、既知の突然変異である;第1のものはCW4に見られ、14014−14017のAlu1部位を破壊し、第2は14303−14306のAlu1部位に存在する。Dde1部位(14433−14437)を破壊する第3の制限酵素認識部位変異体は未知であり、試料CW6に見られ、それは試料CW19における異常なDHPLCパターンと共に図14に示される。
1.2.2(n) プライマー17
本プライマーセットは、14427−15590の領域をカバーして1164bpの産物を形成し、その産物をMboIにより消化すると191、235、297および441bpの断片が形成された。Mbo1部位(14868−14871)を破壊する制限酵素認識部位変異体が3つ、DD12、CW13およびCW20に同定された。DD8において同定された突然変異を表6に示す。
1.2.2(o) プライマー18
本プライマーセットは、15424−16451の領域をカバーして1028bpの産物を形成し、その産物をAluIにより消化すると218、353および457bpの断片が形成された。既知の突然変異は存在しないが、断片2(15424−15776)にAlu1部位を創出してこれを165および188bpの産物に分割する制限酵素認識部位変異体(AGCT)が3つ、DD17、CW9およびCW11に同定された。
DD17の配列決定により、15606(A>G)および15451(G>T)の位置に突然変異が同定された。
表6に、実施例1においてミトコンドリアゲノム全体にわたり同定された突然変異をまとめる。
Figure 0004384025
Figure 0004384025
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1.3 考察
1.3.1 突然変異
1.3.1(a) D−ループまたは超可変領域(プライマー1−4)
超可変部位がヒトmtDNAの非コード領域に存在することは、過去に十分に立証されている。超可変部位は、生殖細胞および体細胞突然変異が優先的にこの部位で起こることから、突然変異ホットスポットを表すと考えられている。本領域は、肺、膀胱および頭頚部癌における突然変異ホットスポットであることが発見された。本領域における突然変異は、mtDNAの複製および発現のための調節部位としてのD−ループの機能に関係する可能性がある。これら超可変部位をそのような突然変異ホットスポットとするそれら独自の特徴は、未だ知られていない。
プライマー1から3は、D−ループ領域の大部分をカバーし、末端300bpはプライマー4によりカバーされる。プライマーセット1および3についてのDHPLC解析全体にわたり数多くのシフトおよびパターン変化がランダムに存在することが観察された。このことは配列決定データに反映されており、そこでは対照および患者試料の両方に多くの変化が見られた。全体として、これらプライマーセットにおいては、疾患特異的突然変異は見られなかった。
プライマー1において、我々は、DD患者に10の未知の突然変異、5つの点突然変異および5つのヘテロプラスミックな突然変異を、および対照に2つの未知の点突然変異を発見した。我々はまた、患者に2つおよび対照に1つの、既知の点突然変異を発見した。
プライマー2においては、ミトコンドリア多型リファレンスデータベース(http://infinity.gen.emory.edu/mitomap.html)において本領域に20以上の突然変異が報告されているものの、明らかなDHPLCパターン変化は存在しなかったので、いずれの試料も配列決定しなかった。DHPLCパターンを比較、例えばプライマー1と2との間で比較すると、プライマー2解析において変動性が顕著に減少していることが示され、また、特に、大きなパターン変化またはシフトは同定されなかった。さらに、これら既報の変化は、我々の試料集団には実際には存在しない可能性がある。
プライマー3において、対照に2つの未知の点突然変異が同定された。我々は、プライマー4において、2つの既知の、および1つの未知の突然変異を同定し、それらの位置はそれらがD−ループ領域に属することを示した。患者20人のうち2人だけがこのDHPLCパターンを示し、対照ではいずれにも存在しなかった。これは、配列決定により確認された。結論として、D−ループ多型とDDの間には、強い相互関係は存在しない。
1.3.1(b) リボソームRNA−rRNA12s、16s(プライマー4−6)
プライマー4は、12srRNAを完全にカバーする。プライマー5は16srRNAの大部分をカバーし、16srRNAのはじめおよび終わりはプライマー4および6にそれぞれカバーされる。我々は、12srRNA領域には突然変異を発見しなかった。この領域は超可変領域のように突然変異ホットスポットではなく、突然変異の発生率がより低いという事実から見て、このことは驚くべき知見ではない。しかしながら、12srRNA領域には、以下を含む疾患突然変異が報告されている;SNHL(1095C)、DM(1310T,1438T)およびDEAF(1555G)。
既知の突然変異が16sRNAの1811bpの位置に同定され、それは3人の患者および4人の対照に存在した。さらに、1人の患者において、ある対照におけるものと同様のDHPLCパターン示す(同じ配列のようである)未知の突然変異が、1690の位置に同定された。これら両方の突然変異(1690および1811bp)の患者および対照間の分布は、DDに対して何ら意義を示さないようである。
2839bpの位置において、ミトコンドリアの16srRNA領域におけるGからG/T塩基対への変化である未知のヘテロプラスミックな突然変異が同定された。そのDHPLCパターン変化は、約90%の患者において非常に明らかであり、いずれの対照にも存在しなかった。前述のように、本突然変異は、DDと顕著な関連を示した。つまり、本突然変異は、本発明方法により検査することができる最も好ましい突然変異を表す。
新規な突然変異が1人の対照においても同定され、それは配列決定した他の試料のいずれにも存在しなかった。本DHPLCパターンの普及率およびその著しい患者および対照間の区別化は、潜在的に疾患関連性を示しうる。16srRNAにおけるヘテロプラスミックな突然変異は、ミトコンドリアのタンパク質合成を変化させると推測される。
他の既知の突然変異が、16srRNA領域において報告されている。これらは、以下のものを含む:レット症候群(2835T)、MELAS(3093G)およびADPD(3196A)。
1.3.1(c) tRNA
我々は、5837bpにおけるHaeIII制限酵素認識部位が破壊された結果相異なる断片分布となる3つの試料(DD1人および対照2人)を発見した。切断配列はGGCCであった。この突然変異の位置は、ND2とCOIとの間のtRNAコード領域内に含まれる。マイトマップ(mitomap)データベース(http://www.gen.emory.edu/cgi-bin/MITOMAP/bin/tbl9gen.pl)においてミトコンドリアDNA塩基置換疾患をrRNAおよびtRNA突然変異について検索すると、5837の位置の突然変異はこれまでに報告されていないことがわかった。この突然変異は、我々の試料においては比較的頻度が低く、我々の患者および対照の両方に存在するので、これはDDとは関連がないようである。
1人の患者および1人の対照において、未知の9bpの欠失がtRNA(K)の位置にあたる8260−8277の位置に発見された。興味深いことに、8271−8281の位置における9bpの欠失が以前に報告されている(http://www.gen.emory.edu/cgi-bin/MITOMAP/bin/tbl10gen.pl);しかしながら、この既報の欠失は、我々の発見したものと重複するものの、全く同じ位置ではない。掌蹠角皮症(PPK)に関連する既報の突然変異(A7445G)が、この領域内に存在する。PPKは、掌および足底に影響し、不均一な遺伝的皮膚疾患と推測される。
1.3.1(d) OXPHOSポリペプチドサブユニット
複合体I:(プライマー7、8、13、14、15、16)
NADHデヒドロゲナーゼ(ユビキノン)鎖1−6 (ND1、2、3、4、4L、5および6)
我々は、94%の患者において、対照では45%にしか存在しない、目立ったDHPLCパターンをND2領域に発見した。我々はまた、2人の患者において、同じくND2領域に存在する2つの新規な突然変異をA4916GおよびG5045Aの位置に発見した。
NADH−キノン酸化還元酵素(複合体I)は、ミトコンドリアにおける呼吸鎖の3つのエネルギー伝達酵素複合体の1つである。それは、呼吸鎖を移動し最終的に酸素を還元する電子の大部分が入るポイントである。複合体Iは、現在知られる最も複雑な膜結合酵素の1つと推測され、少なくとも43の異なるポリペプチドにより構成される。これらのうち、7つがmtDNAによりコードされる。
14015の位置におけるAluI制限酵素認識部位変異体が、1人の対照に発見された。これは、ND5領域における既知の突然変異である。別の点突然変異であるA13220Cもまた、1つの対照試料においてND5に発見された。ND5領域における我々の突然変異はいずれも罹患集団には存在しなかったので、疾患と関連しないと思われる。
我々は、ND6領域に、対照試料にしか存在しない3つの相異なる突然変異を同定した。14303の位置における既知のAluI制限酵素認識部位変異体、および別の対照試料における14433の位置の新規なDdeI制限酵素認識部位変異体を発見した。1つの対照試料において、A14586Gの位置に、一塩基対突然変異を同定した。我々の罹患試料には突然変異は存在しなかったので、ND6領域はDDと関連しないようである。
多くのヒトミトコンドリア疾患が、酵素複合体Iのレベルでの構造的および機能的異常に関与する。MERRF(myoclonic epilepsy and ragged red fibers)、MELAS(mitochondrial encephalomyopathy, lactic acidosis and stroke-like episodes)、慢性外眼筋麻痺プラス(Chronic External Ophthalmoplegia Plus、CEOP)、Kearns-Sayre 症候群(KSS)を含む様々な神経筋疾患;およびレーバー遺伝性視神経症(LHON)の症状は、複合体Iの異常に関連するようである。そのような患者のほとんどで同定された異常は、mtDNAにおける点突然変異である。
複合体II: コハク酸デヒドロゲナーゼ複合体
本複合体は、核DNAによりコードされるので、mtDNA全体のスクリーニングの一部としては走査されない。
複合体III:Cytb(プライマー P17、18)
シトクロムb−c1複合体 ユビキノール−シトクロムcレダクターゼ シトクロムb−ミトコンドリア
我々は、2人の患者において、非常によく似たDHPLCパターンを示す複数の新規な突然変異を同定した。これらの配列変化は、我々の対照のいずれにも存在しなかった。配列決定によって発見された変化の大部分は、ヘテロプラスミーが新たに存在することを明らかにし、それには、G15274C/G;A15282C/A;G15319C/G;T15332C/T;G15336G/C;T15339T/C;T15362C/Tおよび15434insCが含まれた。これら変化は全て、Cytb領域におけるものであった。既知の制限酵素認識部位変異体もまた、1人の患者および2人の対照においてMboI 14869の位置に同定された。我々の患者において同定された複数の未知のヘテロプラスミックな突然変異は存在の頻度は低いものの、我々の対照には存在しないので、本疾患と何らかの関連を有する可能性がある。制限酵素認識部位変異体は対照集団においてより多く存在することから、その存在は疾患特異的ではない。
複合体IV:シトクロムcオキシダーゼ鎖I−III(COI、II、III)(プライマー9、10、11、12、13)
我々は、我々の試料において、COI領域の6688および6849に目立ったDHPLCパターン変化を発見した。全ての患者が野生型シングルピークパターンを有するのに対して、対照試料では27%のみが同様のパターンを有した。配列決定によってこの領域内に明らかな塩基対置換が見られなかったのは驚くべきことである。1つには、本突然変異が配列決定によって同定するにはレベルが低すぎることが考えられる。
配列決定によって、COII領域に位置する2つの制限酵素認識部位突然変異が確認された。8250の位置における制限酵素認識部位突然変異は、1人の患者および1人の対照にのみ存在する。1人の患者において、単一の制限酵素認識部位突然変異が7980の位置に発見された。本領域における当該突然変異の頻度および分布は、疾患に関連するというには十分でない。
複合体V:ATPアーゼ合成酵素タンパク質6&8(プライマー P11、12)
1人の患者および2人の対照において、G8696Aの位置にDHPLCパターン変化が同定され、それは配列決定によって確認された。これは、ミトコンドリアゲノムのATPアーゼ6の領域に位置した。既知の疾患突然変異であるNARP(Neurogenic weakness, ataxia and retinitis pigmentosa)(T8993G)が、本領域に存在する。我々は、我々の発見した突然変異は患者間の普及率が低いことから、DDに関連しないと推測する。
様々な状態が、ミトコンドリア遺伝子における突然変異と関連している。これら遺伝子の幾つかは、核DNA(nDNA)またはmtDNAのいずれかに存在する。ミトコンドリア障害における遺伝パターンもまた、母系、メンデル、およびその2つの組み合わせと多岐にわたり得る。我々は、我々の患者および対照に関して、突然変異の存在について母系遺伝家系においてmtDNAのみを調べた。患者の90%以上に存在し対照には存在しない16srRNA領域における新規多型の同定は、重要な発見である。この突然変異が病的であり、ミトコンドリアタンパク質合成を妨害することにより酸化的リン酸化異常を引き起こす可能性があることが考えられる。
1.3.2 技術
マルチプレックスDHPLC技術(Van den Bosch ら、2000)を用いてミトコンドリアゲノムにおいて突然変異を同定する元の技術は、診断的見地から突然変異検出の問題を扱った;何らかの診断的突然変異を見逃す可能性は無視できる程度であろう方法で、少数の試料を走査する。これはどのような突然変異検出計画にとっても理想的な結果であるが、全ての突然変異を発見するというこの理想は、複数の試料について大きなゲノム領域を走査する場合必ずしも現実的ではない。しかしながら、DHPLCは、検出手段の自動化のため試料サイズについて、または非位置依存的様式にて突然変異を発見するその能力のため精度について、妥協する必要がほとんど無いので、このような走査計画を行うには最良の方法である。盲検解析の論文は繰り返し、DHPLCを用いる突然変異の発見には95−100%の効率があるとしている。ヘテロプラスミックな突然変異の存在を検出することに関して重要なことに、突然変異を示唆するヘテロ二本鎖の存在が少量でも検出できる能力についても、報告されている。
突然変異のDHPLC検出は、解析するヒトゲノムDNAを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に依存する。全ての酵素のように、TaqDNAポリメラーゼは、約8.0x10−6から2x10−4の固有の誤り率を有する。Taqポリメラーゼによるこれらの誤取り込みは、修正されずに残り、その後続く増幅ラウンドで複製される。これに対し、プルーフリーディングポリメラーゼ酵素(PfuおよびPwo)は、約1.3x10−6の低い誤り率を有する。増幅の際に導入された各誤りは、ランダムな低レベルの突然変異と同等であると考えることができる。通常の突然変異検出システムでは、これらの誤りは、PCR増幅の更なるラウンドで複製されるものの、本来のヘテロ接合体突然変異よりも非常に低いレベルであろう。このため、PCR酵素の忠実度は、テンプレートレベルが低くPCRサイクル条件が過剰である極端な場合を除き、通常の突然変異検出では重要な問題ではないかもしれない。しかしながら、野生型と変異体アリルの割合が等しくないDNA集団において突然変異を検出する場合(例えば、腫瘍試料またはミトコンドリア検出)、酵素の忠実度は、より重要な役割を果たすであろう。極端な場合、突然変異のレベルとPCR酵素による誤取り込みの誤りが同程度であり得る。
Taq酵素による誤取り込みは、DHPLCクロマトグラムによって、その断片の解析温度において主要なピークに対する特徴的な肩として可視化される。DHPLCは、突然変異を参考パターンに対する変化とみなす−突然変異陽性の見なしは、常に定まったピークパターンではない。これら後者2つの事実をあわせると、主要な参考ピークの前の誤取り込みのピークによって隠れてしまう可能性がある非常に小さな変化がパターンに起こる場合があることを意味し得る。このため、特にミトコンドリアゲノムを走査するにあたり、我々は、市販の他のプルーフリーディングおよびTaq基盤ポリメラーゼと比較して誤取り込みレベルが最低であることが示されている、新規なプルーフリーディングポリメラーゼ(OptimaseTM DNA polymerase, Transgenomic Inc, NE, USA)を使用することを選択した。図Y5は、多くの市販の酵素を使用して形成されたヘテロ二本鎖の割合を計算することによって、この比較を示す。
PCR増幅の基質として、40人の患者および年齢、性別の一致した対照の試料からゲノムDNAを単離した。血液試料の取得は、組織解剖と比べて比較的非侵襲的であり、その上適当な量の材料を得ることができる。しかしながら、ミトコンドリア症候群に関して重要なことに、ミトコンドリア関連疾患に関して組織特異的発現が存在する場合があることである。それ故、血液においては最高の突然変異レベルが発見できない可能性がある。しかしながら、好ましいこととして、病的なmtDNA突然変異はヘテロプラスミックなようであり、このため、ヘテロ接合体状態が存在することを確かめるため、ひいては突然変異を検出するため、試料を参考(野生型)試料と混合する必要があるとは思われなかった。更に、ミトコンドリアゲノム内の突然変異率が比較的高いことからして当然、真の野生型を発見するのは、必要ではあるが不可能であろう。
我々は、オプティマーゼポリメラーゼを用いて、全部で18の重複する断片によりミトコンドリアゲノムを増幅することを選択した。これら断片のうち4つは「通常の」DHPLCにかけるように設計されており、大きさは331から550bpに及ぶ。特に、これら断片の内3つは超可変領域に及ぶ;これらを個々のPCR反応に分割すると、本方法によるDHPLC認識および確認が容易になるであろう。該ゲノムのコード領域の残りをカバーする残りの14のPCR反応は、5つの制限酵素の組み合わせによる制限酵素消化を受け、ある温度範囲で解析されるマルチプレックスDHPLC断片の組み合わせを形成する。ミトコンドリアゲノムは、比較的一定のGC組成を有し、このことは、このようなDHPLC走査に必要な温度範囲を通常他のゲノムについて必要とされるであろうものよりも小さくする。また、突然変異を位置付ける際のDHPLCの正確さは、主にある温度範囲にわたり突然変異を発見するその能力に起因しうるとも言える。元の技術において注目すべきは、1℃間隔で走査を繰り返すことを選択する点である。我々は、この走査のレベルは慎重過ぎ、患者の診断に関する確実性が重要な診断方法については許容され得ると考える。プライマーセットの再設計と併せて非常に大きい温度枠でなければ少なくとも2−3℃にわたり突然変異を検出できる能力により、ミトコンドリアゲノムの全ての断片を走査するための温度の選択を、相異なる65の解析から29の条件まで狭めることが可能となる。
DHPLCを突然変異検出について利用する場合に考慮すべき重要な基準は、突然変異をパターンにおける個別の変化とみなせる確信があることである。突然変異の発見の最高の効率は、このパターン変化の見なしがその最も単純なレベルで行われる場合に達成される。重要なことに、ピークの形の小さな変化でさえも、突然変異の存在に相当する場合がある。得られたパターンは、塩基変化、局所および全体の断片配列の状況に依存することが示されているので、パターン変化を特定のDNA塩基または位置の変化と定めるのは、走査との関係で厳密に可能とは言えない。このことは、前述の理由により、ミトコンドリア集団において突然変異の位置を定めるのに関してより一層重要であると論じられる可能性がある。さらなる困難は、通常配列決定により通常起こる突然変異の確認である。配列決定は、各塩基位置を見て、その位置において優勢な塩基を、読まれた正しい配列と見なすであろう。それが1つの位置において2つの塩基を「見た」場合、その塩基をNと見なす;その後エレクトロフェレトグラム(electropheretogram)をチェックすれば、その位置のヘテロ接合体的性質が決定されるであろう。残念なことに、ある位置の塩基の規模が等しくない場合、それはNと表されない場合がある。配列決定は、30%未満のヘテロ接合性を認識するのが難しいことが示されている。それ故、我々は本研究に関して、非常に低いレベルまで突然変異を検出できる可能性があるものの、配列決定による確認が困難であるという状況にある。これは、ある程度までは、配列読み取りを個々にチェックして、ヘテロプラスミーを検出することにより回避されている;この証拠が、プライマー6におけるヘテロプラスミックな突然変異の同定である。極端な場合では、他の文献は、変異体の可能性のあるDNAをクローニングし、そして多数の個々のクローンを配列決定して可能性ある変異体を確認することが必要であることを示した。それに代わる方法は、正しく配列の見なしが得られるレベルを期待して、変異体DNAのヘテロ二本鎖部分を収集し、それにより配列決定集団を変異体アリルについて濃縮するものであろう。
1.3.3 G2839G/T変異体の妥当性
新規突然変異の有害な役割を支持するについて、4つの主要な基準が存在すると考えられる。第1に、突然変異は、中立の多型であってはならない;第2に、塩基変化は、進化において保存され、かつ機能的に重要な領域に、影響を及ぼさなければならない;第3に、有害な突然変異は、通常ヘテロプラスミックでなければならず、第4に、相異なる家族メンバーにおけるヘテロプラスミーの程度は、症状の重症度と一致しなければならない。
第1の基準に関して、我々は既存のミトコンドリアデータベースを調べたが、G2389G/T突然変異の位置を見つけることはできなかった。それ故我々は、それが新規な多型を表すと考える。DDとの関連は明らかだが、我々はこの特定の多型の機能的重要性について確信がもてない。その機能的および進化的重要性を決定すべく、いまだバイオインフォマティック検索を行っている最中である。この特定の多型はヘテロプラスミックであり、我々の対照集団には存在しない。我々の家系内のヘテロプラスミーの程度は測定されていないが、我々の家系の幾つかの罹患メンバーの臨床試験により、DDにおける様々な表現型発現が示されている。
呼吸鎖の機能障害をもたらすミトコンドリア突然変異は病的である。しかしながら、mtDNAおよび罹患障害における遺伝子型および表現型の関係は理解が難しい。結果としてエネルギー危機をもたらす代謝経路における異常が、なぜそのような一連の症状を伴い、また様々な組織および臓器に存在し得るのかは不明である。同じmtDNA突然変異が非常に異なる表現型を生じる場合があり、相異なる突然変異が同様の表現型を生じる場合がある。これは、変異体mtDNAに対する野生型の様々な比率、他のミトコンドリアおよび核遺伝子の調節作用、および関与する組織および特定の突然変異についての生化学的発現の相異なる閾値に起因するのかもしれない。
mtDNAにおける塩基変化の蓄積は、短い時間スケールの間に起こり、同じ広範な人種背景の集団、例えばカフカス人、に多型を生じる。相異なるヒト集団を区別するmtDNA多型および個人におけるヘテロプラスミック多型が存在する。しかしながら、ほとんどの個人はホモプラスミックであり、これは卵母細胞の発達における厳しいボトルネックに起因すると考えられる。
実質的な突然変異を有するmtDNAはより迅速に複製するため、正常なmtDNAを上回る選択優位性を有すると考えられている。このことは、筋肉のような特別な組織に、肝臓のような突然変異の比率が低い他の組織と比較して、変異mtDNAが高い比率で存在するという知見を説明し得る。筋肉において、変異mtDNAの割合は、年齢とともに増加すると考えられる。生後筋肉繊維の総数が目に見えて変化しないならば、mtDNA複製は細胞分裂と切り離され、変異mtDNAを有する異常細胞についての陽性選択が存在することになる。発症の年齢のバリエーションは、出生時に存在するmtDNAの割合および出生後は正常mtDNAに対する変異mtDNAの蓄積率に起因すると考えられる。
数多くの興味深い研究により、ミトコンドリア疾患の将来的処置についての証拠が得られた。PNAは、変異体mtDNAに選択的に結合してmtDNA複製を阻害することが示されている、配列特異的ペプチド核酸である。これらの物質は、その細胞において変異体mtDNAの割合を亜閾値(sub-threshold)レベルまで減少させ、その結果ミトコンドリアの生化学的異常の修正をもたらし得る。
1.4 結論
母系伝達遺伝パターンを有する20人のデュピュイトラン病患者および20人の対応するカフカス人対照におけるミトコンドリアゲノム全体の走査に、強化マルチプレックス熱変性高速液体クロマトグラフィー(Denaturing High Performance Liquid Chromatography、DHPLC)技術を用いた。
我々は、この方法を用いて、数多くの既知の突然変異を確認し、より重要なことに、幾つかの未知の突然変異を同定した。これら新規の突然変異の一部は、DD患者のみにおいて、D−ループ領域および複合体I、IIIおよびVに存在した。
より興味深いことに、16srRNA領域におけるGからG/Tへの塩基対変化である、2839bpの位置における未知のヘテロプラスミックな突然変異は、約90%のDD患者において非常に明らかであり、対照ではいずれにも存在しなかった。この突然変異は、組織特異的様式にて、ミトコンドリアタンパク質合成に影響する可能性がある。
我々のDHPLC技術は、ミトコンドリア突然変異を予測する強力かつ正確な方法であり、我々は、既知の、および幾つかの新規な疾患関連突然変異を同定することができた。患者に対して将来的な予後的および診断的助言を与えるため、およびこの状態を処置するための新規治療法を開発するため、デュピュイトラン病の詳細な遺伝子基盤を理解することが重要である。これは、DHPLCを用いてDDおよびミトコンドリア突然変異を研究した最初の報告である。
実施例2
不適当な瘢痕形成または線維症によって特徴付けられる状態と2839mtDNA多型により与えられる遺伝子型との間の一致を確証するため、実施例1の方法論を繰り返して本発明の第一の局面の方法に従い被験者を走査し、被験者の遺伝子型を確立した。
その後、本遺伝子検査の結果を臨床医が用いて、その突然変異を有する個人に医学的助言を与えることができるであろう。例えば、該変異体アリルを有することがわかった無症候の個人に、不適当な瘢痕形成および線維症によって特徴付けられる状態を発症する危険性が高いことを助言することができるであろう。適すれば、そのような個人に、ライフスタイルを変え、かつ/または予防的処置を受けるよう助言することができるであろう。既に不適当な瘢痕形成および線維症によって特徴付けられる状態を患っている2839突然変異を有する個人には、該状態をより重度の形態で発症する危険性が潜在的にあるので、彼らの薬物療法および習慣を調節するよう助言することができる。
例示のみを目的に、添付の図面を参照して本発明をさらに説明する。
図1は、実施例1で用いた、改変した Van Den Bosch ら(Nucleic Acids Res 2000 Oct 15; 28(20): E89)、前述)のDHPLC技術の略図である。 図2は、実施例1において増幅のため使用したプライマーセットの位置を示すミトコンドリアゲノムの略図である。 図3は、プライマーセット2によるミトコンドリアゲノム由来の331bpの産物の増幅を示し、実施例1で用いたオプティマーゼポリメラーゼの、エクスパンドDNAポリメラーゼ(Roche)と比較して増強された忠実度を示しており、ここでグラフ内のトレースは、上から下へ、エクスパンド2、エクスパンド2、Pho12およびPho12を表す。 図4は、プライマーセット4を用いて断片3に同定されたDHPLC変異体を示すグラフであり、DD1における野生型パターンと比較したDD7およびDD12におけるものであり、ここでグラフ内のトレースは、上から下へ、それぞれDD7、DD12およびDD1における変異体を表す。 図5は、実施例1において、プライマーセット4を用いて断片3に同定されたDHPLC変異体を示すグラフであり、ここで、グラフ内のトレースは、上から下へ、CW19および比較したCW13を示す。 図6は、実施例1において、プライマーセット5を用いて同定したDHPLC変異体を示すグラフであり、ここで、グラフ内のトレースは、上から下へ、それぞれDD7、DD1およびCW3を示す。 図7は、実施例1において、プライマーセット5を用いて同定した1690bpにおける突然変異を示すグラフであり、ここで、グラフ内のトレースは、上から下へ、それぞれDD1、CW19およびDD7を示す。 図8は、実施例1において、プライマーセット5を用いて同定した1811bpにおける突然変異についてのDHPLCを示すグラフであり、ここで、グラフ内のトレースは、上から下へ、DD6、DD12、DD20、CW3、CW4、CW10、CW12およびDD7を示す。 図9は、実施例1のプライマーセット6を用いて同定された断片5における強化二重ピークパターンとして明らかな突然変異について、罹患試料対対照試料を示すグラフであり、ここで、グラフ内のトレースは、上から下へ、それぞれDD5およびCW3を示す。 図10は、実施例1において、プライマーセット7を用いて同定されたDHPLC変異体を示すグラフであり、ここで、グラフ内のトレースは、上から下へ、それぞれDD1、DD2、DD11、DD14、DD17、DD18およびDD5である。 図11は、実施例1において、プライマーセット8を用いて同定されたDHPLC変異体を示すグラフである。 図12は、実施例1において、DD12、CW3およびCW10に、プライマーセット9を用いて断片4に同定されたDHPLC変異体を示すグラフである。 図13は、実施例1において、プライマーセット10を用いて同定された、全てのDD試料に見られるのに対して対照(CW)では83%のみが有する1ピークパターンを示すグラフであり、ここで、グラフ内のトレースは、上から下へ、それぞれCW5およびDD1である。 図14は、実施例1において、CW4およびCW6に、プライマーセット16を用いて同定されたDHPLC制限酵素認識部位変異体を示すグラフである。

Claims (11)

  1. デュピュイトラン病の素因を検出するためのin vitro方法であって、対象の被験者に由来するミトコンドリアゲノムの16srRNA遺伝子の2839の位置の周辺の領域を調べて該疾患の発症に関連する遺伝子多型または突然変異の存在を検出することを含む方法。
  2. ミトコンドリアゲノムの2839の位置におけるグアノシンヌクレオチド(G)の後ろへのチミジンヌクレオチド(T)の挿入(G2839G/T)を調べる、請求項記載の方法。
  3. 被験者から採取した血液または組織試料からミトコンドリアDNAを単離し、そして調べて、該疾患の発症に関連する遺伝子多型または突然変異の存在を検出する、請求項1または2に記載の方法。
  4. ミトコンドリアDNAを調べて遺伝子多型または突然変異の存在を検出する前にミトコンドリアDNAを増幅する、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いてミトコンドリアDNAを増幅する、請求項に記載の方法。
  6. 配列番号9および10のPCRプライマー対 を利用してミトコンドリアDNAを増幅する、請求項に記載の方法。
  7. ミトコンドリアゲノムを制限酵素消化およびサイズ解析によって調べる、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  8. 以下のものを含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法に使用するためのキット:
    A)デュピュイトラン病に関連するミトコンドリア16srRNA遺伝子の2839の位置の周辺の領域における遺伝子多型または突然変異を増幅するためのPCRプライマー、および、
    B)各多型または突然変異のための既知の遺伝子型の対照DNA試料。
  9. PCRプライマーが請求項に規定されるものである、請求項記載のキット。
  10. DNA断片を形成するための適当な制限酵素をさらに含む、請求項8または9に記載のキット。
  11. 特定の多型とデュピュイトラン病との間の関連の概要をまとめるデータカードおよび/またはPCR増幅、PCR産物の制限酵素消化およびDNA断片のアガロースゲル電気泳動のためのプロトコールをさらに含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載のキット。
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