JP4383315B2 - 積層体 - Google Patents

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本発明は、耐酸化性、基板との密着性が要求される表面被覆構造を有する積層体に関する。特に耐酸化性に優れた皮膜を形成し、低コストで耐久性に優れた積層体に係るものであり、たとえば、高清浄溶融炉壁材料,各種高温成型用金型,溶湯ノズル,ガラスレンズ成型用金型など、化学的に不活性な表面を有し,かつ高温環境においても不活性な表面状態が維持されることが要求される分野に好適に使用されるものである。
各種光学機器に使用されるガラスレンズは、半溶融あるいは溶融状態のガラスを金型成型することで製造される。ガラス材質によって処理温度は異なるが最大700℃と高温であり、金型材の酸化や腐食が発生することで成型後レンズの面性状の低下を招く。また、この様な高温環境下において、溶融したガラスと接触することから、潤滑性あるいは耐摩耗性も要求される。これに対し窒素雰囲気での処理を採用することで上記酸化や腐食は大幅に低減されるが、ガラス材料自体が酸化物であることから、金型の酸化を完全に抑止することはできない。また、成型後の離型性も重要な開発要素であり、耐食性、耐酸化性、離形成に優れた材料である白金(Pt)が金型母材上に被覆されたものがある。
しかし、この白金を被覆させたものは、プロセス中の熱サイクルの過程で、被膜の応力緩和により表面性状が悪化する問題がある。こうした応力緩和による変形や表面性状の劣化を抑止するためにPt-Ir合金材料が提案され、一部採用されている。ところが、これらPt系材料はいずれにしても極めて高コストであり、実用上の不利を免れない。
こうしたPt系材料に代えてコスト低減に有効な材料としてダイヤモンド状炭素膜を被覆したものがあるが、耐酸化性については十分な性能が得られておらず、より耐酸化性に優れるとともに、低コストである材料の出現が望まれている。
一方、化学的安定性が高く、耐熱性、耐摩耗性に優れた材料として、窒化ホウ素も良く知られている。しかし,窒化ホウ素をバルク材として適用した場合,難加工であることに伴う高コストがアプリケーションを限定している.また、窒化ホウ素は、その成膜状態により、特に潤滑性が安定しない。更に、窒化ホウ素は、前記の通り、耐熱性などには優れるものの、基板に対する密着性に改善の余地があり、これまでにも基板との間に中間層を形成する方法などが提案されてきている(例えば、特許文献1または2など)。
従って、この様な窒化ホウ素膜を用いた積層体によっても、前記ガラスレンズ用金型として十分な特性を発揮することはできない状況であった。
特開平10-18025号 特開平10-204618号
本発明は上記の様な状況のもと、耐酸化性、耐久性、耐摩耗性、潤滑性に優れ、しかも低コストで製造可能な積層体、特にガラスレンズ用金型に適した積層体を提供することをその課題とするものである。
本発明はこのような課題達成のために完成されたものであって、その要旨とする特徴は以下の通りである。
(1)基材上に皮膜中のBとNの組成比が原子比で0.8≦B/N≦2の範囲にあるB及びNを含有する硬質皮膜が形成された積層体であって、前記基材の直上にTaまたはWからなる下地層が形成され、該下地層の上部に、Si、Ce、Y、SiOx、CeOx、YOx、SiOxNy、CeOxNyあるいはYOxNyのいずれか一種以上、若しくはAlおよび/またはSiを含有する窒化物、炭化物あるいは炭窒化物からなる中間層が形成され、さらに中間層の上部に前記硬質皮膜からなる表面層が形成されていることを特徴とする潤滑性、耐摩耗性に優れた積層体。
(2)上記(1)に記載の積層体であって、前記硬質皮膜が、さらにその原子濃度が1at%以上、25at%以下のCを含有するものである積層体。
(3)上記(1)または(2)に記載の積層体あって、前記硬質皮膜と、C原子濃度が1at%以上、25at%以下である炭化ホウ素皮膜とを積層してなる積層体。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体であって、前記中間層と前記表面層間に元素濃度が連続的あるいは段階的に変化する傾斜層が設けられている積層体。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の積層体であって、前記基材が超硬材である積層体。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層体であって、前記積層体がガラスレンズ成型用金型に適用されるものである積層体。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の積層体であって、前記硬質皮膜が六方晶系のBN構造を基本とする積層体。
本発明によればガラスレンズ用金型などの耐酸化性、耐久性、耐摩耗性、潤滑性などに優れ、しかも低コストで製造可能な積層体を提供することができ、この種技術分野において極めて優れた効果を奏するものである。
本発明者らは、前記課題を達成すべく鋭意実験、検討を重ねたところ、前述の窒化ホウ素膜中のBとNの比率を最適にすることで高い潤滑性が安定して得られること、更に炭素を含有させて、炭窒化ホウ素として金型などの積層体表面を被覆することで耐酸化性、耐久性、耐摩耗性などがさらに改善、向上できることを見出した。
潤滑性は、BとNの比によって大きく影響される。B/N比が2を超えると潤滑性発現に必要なB−N結合が相対的に少なくなり、潤滑性を発揮しない。より好ましくは1.2以下である。下限に関しては、BN化合物は通常量論組成であるB/N=1を下回ることはあまり無いが、わずかな窒素の固溶によりNリッチになることもあることから、下限を0.8とした。より好ましくは0.9以上である。
また皮膜中に含まれるB−Nの結合はその形態がsp2結合が大半を占めることが望ましい。B−N結合はsp2、sp3結合を取り、その同定は赤外線吸収測定により可能である。sp2の吸収ピークは約780cm-1および1380cm-1にsp3は約1100cm―1に現れ、sp2結合とsp3結合の比は1380cm−1付近のピークと1100cm−1付近のピーク強度から次式により求まる。
sp2(%)=Isp2(1380cm-1)/[Isp2(1380cm-1)+Isp3(1100cm-1)]×100
本発明の皮膜にあってはこのsp2比率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは80%以上である。
この様な本発明のBおよびNを含有する皮膜に更にCを添加することにより皮膜の高硬度化をはかることが出来る。これは皮膜中で添加したCが高硬度のB−C結合を生成するためと考えられる。しかし、過度にCを添加すると結合しないCが析出し、高温環境下においてグラファイト化し、皮膜を劣化させることからC量は25at%(原子%)を上限とする。より好ましくは15at%以下である。また下限に関しては1at%未満では添加の効果が発揮されない。より好ましくは3at%以上である。
なお、Nを含まないBC系皮膜はビッカース硬度が30GPa以上と極めて高硬度であるが、B−N結合を含有しないために潤滑性に乏しい。よって上記BNあるいはBCN膜と積層することにより、高硬度でかつ、潤滑性を有する皮膜となる。積層の周期(BNあるいはBCN膜の単層の厚み)は1〜40nmの範囲が好ましい。1nm以下では通常のBCN混合体と同等の効果に止まり、40nm以上では潤滑効果が失われる。より好ましくは2〜10nmの間である。
ところで、上記した窒化ホウ素および炭窒化ホウ素は極めて耐酸化性に優れた材料であるが、ナノインデンテーション硬さが高く、脆性破壊しやすいことに加え、膜としたときの膜内圧縮応力も高いことから、基材との密着性が得られにくいといったアプリケーション化が容易でない面も有する。この密着性の改善についてはTa、Wなどの下地層を介することが有効であることが知られている。
しかし、WやTa中間層を有する炭化ホウ素膜や炭窒化ホウ素膜は、高温酸化雰囲気においては、これらの膜を透過した酸素起因で下地層および基材が酸化され、結果、窒化ホウ素膜、炭窒化ホウ素膜が剥離する問題がある。したがって、何らかの手段により窒化ホウ素、炭窒化ホウ素膜中を拡散した酸素が下地あるいは基材にまで到達して酸化することを抑止する必要がある。
そこで、本発明者らは、それ自身耐酸化性に優れている窒化ホウ素膜や炭窒化ホウ素膜におけるこのような弱点を解消するために、さらに研究を続けたところ、これら膜と下地あるいは基材との間にさらに中間層として特定の物質からなる酸素バリア層を設けることで、酸化雰囲気における前記耐酸化性膜も剥離現象を著しく低減できることを確認し、本発明を完成するに至った。
本発明の積層体の構成についてその望ましい実施形態を示した図1を参照しながらより詳しく説明する。
図1において、1は超硬材(WCなど)からなるガラス用金型などの積層体基材であり、2はその上部に積層された積層皮膜を表している。この積層皮膜2はTaあるいはWからなる基材1側の下地層Aと、窒化ホウ素あるいは炭窒化ホウ素からなる最表面側に位置した表面層Cと、これら下地層Aと表面層Cの間に位置した中間層Bの三層からなっている。
そしてこの中間層Bは、Si、Ce、Y、あるいはこれら金属の酸化物であるSiOx、CeOx、YOx、あるいはこれら金属の酸窒化物であるSiOxNy、CeOxNy、YOxNyから選択される一種以上の物質からなる。
これらの物質からなる中間層Bは酸素バリア層として機能し、高温酸化雰囲気下にあっても、窒化ホウ素あるいは炭窒化ホウ素からなる表面層C中を拡散した酸素が下地層Aあるいは積層体基材1に到達することを阻止し、表面層Cの密着性を確保し、その剥離を有効に防止することができる。したがって、この酸素バリア層として中間層Bを表面層Cの下側に設けることで、窒化ホウ素あるいは炭窒化ホウ素からなる表面層Cの長期に亘る優れた耐酸化性を遺憾なく発揮させ、その耐久性を著しく向上させることが出来る。しかも
、これらの物質を中間層Bとして用いる本発明の積層体は白金系材料などを用いる場合に比較して価格がかなり低いため、全体の製造コストをかなり下げることができ、実用上有利である。
酸素バリア層としてSi、Ce、Yの酸化物、酸窒化物からなる膜は勿論、Si、Ce、Yの金属単層膜も優れた酸素バリア効果を有する。これは、高温酸化雰囲気に暴露されることで、炭窒化ホウ素膜などの表面層Cを透過した酸素が、Si、Ce又はYの金属表面を酸化し、自己バリアを形成することで、さらに酸化が進行することを抑止するためである。
また、中間層Bを構成するこれらの物質は、いずれか一種でも、さらにこれらの2種以上を混合した形態のものでも良いものである。
中間層Bとしては、上記した物質の代わりにSiおよび/またはAlを含有する窒化物、炭化物あるいは炭窒化物層を採用しても密着性が改善される。上記の通り、BNあるいはBCN系皮膜で高温下で密着性が劣化するのはBN、BCN層を酸素が通過して下地が酸化されるからであるが、上記のSiおよび/またはAlを含有する窒化物、炭化物あるいは炭窒化物層は耐酸化性にも優れていることから下地の酸化を抑制出来、結果として密着性が改善される。Siおよび/またはAlを含有する窒化物、炭化物あるいは炭窒化物層を中間層として使用する場合には、基材側の金属下地層を省いたとしても、ある程度の密着性改善ができる。
中間層中に含まれるSiの量は1at%以上であることが望ましく、より好ましくは3at%以上である。耐酸化性改善の効果は30at%程度で飽和することから、30at%以下とすることが好ましい。Al量は30at%以上が好ましく、改善の効果は80at%程度で飽和する。Si、Al以外の元素は4、5、6A族元素より1種以上選択するのが好ましい。例としてはTiSiN、TiAlNあるいはCrSiNなどが挙げられる。
この中間層Bの厚みは、酸素バリアとしての機能を効果的に発揮させる意味でその下限は10nmとすることが好ましく、また十分な密着性を得るためにはその上限を50nmとすることが好ましい。
表面層Cの耐酸化性を一層向上させるために、同層中に、Pt、Ir、Au、Pdから選ばれる1種以上を合計で20原子%以下程度含有させることも可能である。
下地層Aとしては基材1や前記中間層Bに対する密着性の良いTaまたはWが推奨されるが、ある程度の密着性が確保されるならば他の金属でもかまわない。
なお、これら下地層A、中間層B及び表面層Cを積層皮膜2として基材1の表面に順次形成させる手段は、特に制限はなく、スパッタリングやイオンプレーティングなどの物理蒸着法(PVD)、熱CVDやプラズマCVDなどの化学蒸着法(CVD)に代表される公知の成膜手法を用いれば良い。
上述の実施形態においては積層体の基材1上に形成された積層皮膜は三層(下から順に下地層A、中間層B及び表面層C)であるが、本発明の課題達成の範囲内において、これらの各層の上下に別の層を加えてさらに多層としたものでも良い。また、この三層は必ずしも独立した三つの皮膜として存在する必要はなく、積層皮膜2の全体構成として本発明に規定する各層の組成が実質的に維持されていれば足り、したがって単一の膜の場合も本発明に含まれる。さらに、これら各層の境界において隣り合う層の組成が互いに一部混合した所謂傾斜組成層となっていても勿論かまわないものである。また層中の元素が下層から上層にかけて連続的に変化する様な傾斜層であっても構わないものである。
(実施例)
[実施例1]
各皮膜の形成は高周波UBMスパッタおよびDC−UBMスパッタ源を有するスパッタ装置を用いて行った。BN系皮膜の形成はBターゲットをAr−N2雰囲気にて高周波スパッタリングにより形成し、BCN膜はBターゲットをAr−N2−CH4雰囲気にて高周波スパッタリングあるいはB4CターゲットをAr−N2雰囲気中でDCスパッタリングにより形成した。全圧力は0.6Paで、成膜時の基板温度は約400℃とした。鏡面研磨した超硬合金基板にTa/Si中間層を介して表1に示すBNあるいはBCN膜を形成した。
形成した供試体の組成はEPMAにより測定した。また機械的特性としてビッカース硬度(荷重10gf)を計測した。さらに高温での安定性を調査するために窒素雰囲気中、700℃で30分加熱を行い、熱処理後の硬度を測定した。また高温におけるガラスとの反応性を調査するために、800℃、窒素ガス雰囲気中において光学ガラスとの接触角を調査した。実施例1の結果を表1に示す。
Figure 0004383315
[実施例2]
3源のUBM−DCスパッタ源を有するスパッタ装置を用いて、表2に示す金属層/Alおよび、またはSiを含有する窒化物、炭化物あるいは炭窒化物層/あるいは傾斜層/BN、BCN膜を有する積層体を形成した。
形成した皮膜の密着性をロックウエル圧子の打ち込み試験により調査した。圧子打ち込み部分の皮膜の剥離状況を図2に示すような6段階(HF1:最も密着性が良い〜HF6:密着性が悪い)で評価した。試験にはロックウエルC圧子を用い、荷重150kgで打ち込みを実施した。
なお、図2において円形の黒色部は圧子打ち込み跡であり、その周囲に放射状に伸びた髭の部分は打ち込みにより皮膜に生じた皴を示し、また同様に周囲の灰色部は打ち込みにより皮膜が素地から剥がれて浮き上がった領域を示すものである。実施例2の結果を表2に示す。
Figure 0004383315
[実施例3]
B4CターゲットをUBM−DCスパッタにてAr−Nに雰囲気中にて形成し基板へ印可するバイアスを変化させることで、皮膜中のB−N結合のSp2比率を変化させたサンプルを作製した。それらのサンプルに関して実施例1と同様の評価を行った結果を表3に示す。また、sp2比率の評価に関しては本部中に記載された赤外線吸収のピーク強度より算出する方法で行った。
Figure 0004383315
[実施例4]
基材にはWCからなる超硬基材を用いた。成膜はすべてスパッタ法を用いた。超硬基材との密着性を確保する目的で最下層(下地層)にはすべてTa層を50nm成膜した。中間層としてSi、Ce、Yをそのまま採用するときは、これらの単元ターゲットをアルゴン雰囲気でスパッタし、酸化物の場合はSi、Ce、Yの単元ターゲットをアルゴン-酸素10%混合雰囲気でスパッタし、酸窒化物の場合は、これらの単元ターゲットをアルゴン-酸素10%-窒素10%混合雰囲気でスパッタすることで成膜を行った。
表面層としての炭窒化ホウ素層の成膜は炭化ホウ素(B4C)からなるターゲットを使用し、アルゴン-窒素20%混合雰囲気でスパッタすることで行った。
皮膜の密着性についてはスクラッチ試験による耐剥離荷重で評価した。耐酸化性、耐久性については乾燥大気中700℃×30分の熱処理後の膜表面状態および、赤外吸収スペクトルによる炭窒化ホウ素被膜の熱処理前後の構造変化で評価した。
表4に、熱処理前の対剥離荷重と、熱処理後の膜構造変化について各種膜構造につき示した。なお、表中において炭窒化ホウ素はBCNと略記しているが、BCN層はいずれも、B:47at%、C:8at%、N:45at%を含有しているものであった。
Figure 0004383315
熱処理により剥離および構造変化が認められた系は条件1のみであり、SiOx、CeOx、YOxなどの酸化物系、Si、Ce、Yなどの単元系、SiOxNy、CeOxNy、YOxNyなどの酸窒化物のいずれにおいても熱処理による膜構造劣化は認められない。
密着性に関しては、条件1で38Nの耐剥離荷重が得られている、一方SiOx、CeOx、YOxを中間層とする系では、10N程度となっており、密着性が低下している。剥離箇所はいずれも炭窒化ホウ素との界面であることが剥離部の組成分析から明らかとなった。これら密着性が低い系でも、耐酸化性、耐久性には優れていることから、レンズ用金型に適用する場合もより高温でレンズ材を十分軟化させた領域で使用することが可能で、レンズ用金型として十分な性能を有する。
しかし密着性の向上は潜在的な要求としてあり密着性の低下は好ましいものではない。
酸窒化物系を採用した条件10〜12では大幅に密着性が向上している。
さらに単元系中間層である条件5、6、8、9についても密着性は十分なものが得られている。しかし、5と6を比較して、Si層が50nm以上では若干の密着性の低下があることといずれも耐酸化性としては十分な性能を有していることから、Si中間層については50nm以下でよいことがわかる。密着性の改善については、傾斜組成層の導入が有効であることが知られており、条件7に示すようにSi中間層と炭窒化ホウ素表面層との間を組成傾斜することで、密着性が改善することも確かめられた。
図3には条件5のTa50nm/Si20nm/炭窒化ホウ素500nm構造膜における赤外吸収の熱処理前後の変化を示している。780cm-1 と1380cm-1付近に吸収ピークが認められることから、六方晶系のBN構造を基本とした構造であることがわかる。熱処理により780cm-1の吸収が顕著になっていることから六方晶系BN構造が成長する傾向が認められ、結晶構造が熱処理により破壊される傾向にはない。1380cm-1の吸収が高エネルギー側にシフトしているのは応力緩和によるものである。条件2以降の他の条件についてもいずれも同様の赤外吸収スペクトル変化を示す。すなわち、改善材と
しての全系において、中間構造で耐酸化性能を向上できることがわかった。
本発明にかかる積層体の構成の説明する模式断面図である。 本発明の実施例においてロックウエル圧子の打ち込み試験行った際の圧子打ち込み部分の皮膜の剥離状況を示す平面図である。 本発明の実施例(条件5)のTa50nm/Si20nm/炭窒化ホウ素500nm構造膜における赤外吸収の熱処理前後の変化を示グラフである。
符号の説明
1:積層体基材 2:積層皮膜
A:下地層 B:中間層 C:表面層

Claims (7)

  1. 基材上に皮膜中のBとNの組成比が原子比で0.8≦B/N≦2の範囲にあるB及びNを含有する硬質皮膜が形成された積層体であって、前記基材の直上にTaまたはWからなる下地層が形成され、該下地層の上部に、Si、Ce、Y、SiOx、CeOx、YOx、SiOxNy、CeOxNyあるいはYOxNyのいずれか一種以上、若しくはAlおよび/またはSiを含有する窒化物、炭化物あるいは炭窒化物からなる中間層が形成され、さらに中間層の上部に前記硬質皮膜からなる表面層が形成されていることを特徴とする潤滑性、耐摩耗性に優れた積層体。
  2. 請求項1に記載の積層体であって、前記硬質皮膜が、さらにその原子濃度が1at%以上、25at%以下であるCを含有するものである積層体。
  3. 請求項1または2に記載の積層体であって、前記硬質皮膜と、C原子濃度が1at%以上、25at%以下である炭化ホウ素皮膜とを積層してなる積層体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の積層体であって、前記中間層と前記表面層間に元素濃度が連続的あるいは段階的に変化する傾斜層が設けられている積層体。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の積層体であって、前記基材が超硬材である積層体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の積層体であって、前記積層体がガラスレンズ成型用金型に適用されるものである積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の積層体であって、前記硬質皮膜が六方晶系のBN構造を基本とする積層体。
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