JP4383003B2 - センタバルブ型車両用液圧マスタシリンダ - Google Patents

センタバルブ型車両用液圧マスタシリンダ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や自動二・三輪車を始めとする各種走行車両のブレーキやクラッチを液圧で作動するセンタバルブ型の液圧マスタシリンダに係り、詳しくはピストンの先端側に、センタバルブ頭部の弁体を覆うバルブガイドを取り付ける構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等に用いられるセンタバルブ型の車両用液圧マスタシリンダは、シリンダ孔に内挿されるピストンの先端側に有底筒状のバルブガイドを被着し、該バルブガイドの内部を、前記ピストンに装着されるセンタバルブ頭部の弁体や弁ばね収容する弁室としており、その一例として、特開平11−180288号公報に示されるものがある。
この液圧マスタシリンダは、ピストンの先端側外周面と、バルブガイドの後端側内周面とにそれぞれ係合溝を周設し、いずれか一方の係合溝に係止リングを嵌めて、バルブガイドをピストン先端から外挿することにより、係止リングを他方の係合溝に嵌合してバルブガイドを装着している。バルブガイドの開口側端部には、ピストンの後部側に延びる環状のカップシールガイドが形成されており、このカップシールガイドをピストンの先端側に装着したカップシールの内リップと外リップとの間の開口部内に突出させて、カップシールがピストンと共にシリンダ孔を摺動した際の外リップのめくれを防止するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のバルブガイドは、高液圧にも堪えるように肉厚の剛性材を削り出して形成されることから撓み力が殆どなく、係止リングをピストンとバルブガイド側の係合溝に嵌合する際に、高荷重の押し込み力を必要とする。このため、係止リングにピストンとバルブガイドの双方から高負荷がかかって係止リングを圧壊したり、ピストンやバルブガイドに損傷を与える虞がある。
【0004】
また、バルブガイドに形成されるカップシールガイドは、バルブガイドが前述のごとく削り出しで形成されることから、このカップシールガイドを含むバルブガイド全体を精度よく製作するために、多くの工数と費用を要するものとなっていた。
【0005】
そこで本発明は、バルブガイドの組み付け性を向上し、またカップシールのめくれを簡単な構造で容易に防止することができるセンタバルブ型車両用液圧マスタシリンダを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明では、シリンダボディに穿設された有底のシリンダ孔にピストンを内挿して、該ピストンのシリンダ孔底部側に液圧室を画成し、該液圧室側に位置するピストンの先端側に軸方向の縦連通孔を穿設し、該縦連通孔にセンタバルブのバルブステムを挿通して、該センタバルブ頭部の弁体を、前記ピストンの先端側に被着した有底筒状のバルブガイドの内部の弁室に突出配置し、前記ピストンの前部側外周にカップシールを嵌着したセンタバルブ型車両用液圧マスタシリンダにおいて、前記ピストンの先端側外周面と前記バルブガイドの筒部との間に環状の連結部材を介装し、該連結部材は、前記ピストンの先端軸部の外周面と前記バルブガイドの大径筒部との間に配設される筒状部と、前記先端軸部の先端面と前記大径筒部の底壁との間に配設されるリング状の底板とを備え、前記筒状部には、先端を液圧室側に向けて内側へ傾斜する内爪と、先端をシリンダ孔の開口部側へ向けて外側へ傾斜する外爪とを交互に形成し、前記ピストンの先端側外周面に形成した係合溝に前記内爪を係着するとともに、前記バルブガイドの筒部内周面に形成した係合溝に前記外爪を係着して、前記ピストンの先端側外周面の係合溝と前記内爪の先端との間及び前記バルブガイドの筒部内周面の係合溝と前記外爪との間にそれぞれ空隙を残し、前記ピストンとバルブガイドとを連結部材にて連結し、前記液圧室内に配設したリターンスプリングにて前記バルブガイドと前記連結部材の底板と前記ピストンとを押圧せしめたことを特徴としている。
【0007】
連結部材には、カップシールのめくれを防止するカップシールガイドを一体に設けることもできる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて説明する。
センタバルブ型の液圧マスタシリンダ1は、有底のシリンダ孔3を有するシリンダボディ2と、該シリンダボディ2の上部で作動液を貯留するリザーバとを一体形成したリザーバ一体型で、シリンダ孔3には、液圧発生用のピストン4がシリンダ軸方向へ移動可能に内挿されており、ピストン4とシリンダ孔3の底壁の間に液圧室5が画成されている。
【0009】
ピストン4の先端側とシリンダ孔3の底壁との間にはリターンスプリング6が縮設されており、非作動時のピストン4は、リターンスプリング6の弾発力によってシリンダ孔3の開口部方向へ付勢され、後側の第2摺動部4dがシリンダ孔3の開口部に嵌着したピストンストッパ7に当接して後退限を規制される。第2摺動部4dの後端面中央には係合孔4eがあり、該係合孔4eに差し込まれたプッシュロッド8の頭部8aがピストンストッパ7にて抜け止めされている。
【0010】
上記ピストン4は、シリンダ孔3よりも小径な先端軸部4a及び中間軸部4bと、これら軸部4a,4bの間に形成されるフランジ状の第1摺動部4cと、中間軸部4bの後側に続く前述の第2摺動部4dとを持っている。先端軸部4aは、外周面に幅広の係合溝10が形成され、液圧室側に有底筒状のバルブガイド11が連結部材12を用いて被着されており、バルブガイド11の内部を弁室13としている。先端軸部4aの中心軸上には縦連通孔14が貫通しており、該縦連通孔14の液圧室側に弁座15が圧入され、縦連通孔14のシリンダ孔開口部側と弁座15の通孔15aとにセンタバルブ16のバルブステム16bが挿通されると共に、センタバルブ頭部の弁体16aが弁室13に突出配置されている。
【0011】
中間軸部4bには、細幅の横連通孔17が半径方向に貫通して設けられ、その外周に補給油室18が設けられており、横連通孔17と補給油室18とは、シリンダ孔3の上部壁に穿設した液通孔19を通して常時リザーバの内部と連通している。第1,第2摺動部4c,4dは、シリンダ孔3よりも僅かに小径に形成されていて、先端軸部4aと第2摺動部4dに形成されたシール溝20a,20bにカップシール21,22が嵌着されている。カップシール21,22には、内リップ21a,22aと外リップ21b,22bとを備えたリップ状のものが用いられており、シリンダ孔3の底部方向に向けて拡がる外リップ21b,22bの先端側をシリンダ孔3に弾接させて、液圧室5と補給油室18のそれぞれを液密にシールしている。
【0012】
バルブガイド11とセンタバルブ16の弁体16aとの間には弁ばね23が縮設されており、センタバルブ16を常時シリンダ孔3の開口部方向へ付勢している。横連通孔17と補給油室18には、シリンダ孔3を半径方向に横切るストッパピン24が挿通されており、弁ばね23に付勢されるセンタバルブ16のバルブステム16bがストッパピン24に当接することによって、センタバルブ16の後退限を規制するようになっている。
【0013】
前記バルブガイド11は、ピストン4の先端軸部4aの外周面を覆う大径筒部11aと、先端軸部4aの液圧室側でセンタバルブ16の弁体16aを収容する小径筒部11bとを肉厚の剛性材を削り出して形成している。大径筒部11aの内周面には、ピストン4の係合溝10と略同一幅の係合溝25が、開口部側に周縁11cを残して凹設されており、また小径筒部11bの内部を前述の弁室13としている。小径筒部11bの外周面には複数の液通孔11dが穿設され、液圧室5と弁室13とはこの液通孔11dを通して連通している。
【0014】
液圧室5とリザーバとは、図1及び図2の非作動状態において、センタバルブ16の弁体16aが弁座15のシール面15bから離間しており、バルブガイド11の液通孔11dと弁室13,弁座15の通孔15a及び縦連通孔14,横連通孔17,補給油室18,液通孔19を介して連通している。また、ピストン4が液圧室方向へ前進した作動時には、センタバルブ16の弁体16aが弁座15のシール面15bに着座し、液圧室5とリザーバとの連通が遮断される。
【0015】
連結部材12は、ピストン4の先端軸部4aの外周面とバルブガイド11の大径筒部11aとの間に配設される筒状部12aと、先端軸部4aの先端面とバルブガイド11の大径筒部11aの底壁11eとの間に配設されるリング状の底板12bとからなっている。筒状部12aの先端側には同径のカップシールガイド12cが延設されており、カップシールガイド12cを含む連結部材12は、例えば、ステンレス鋼板等の若干の弾性力を持つ金属薄板をプレス成形して形成される。
【0016】
筒状部12aには、内爪12dと外爪12eとが複数個ずつ交互に設けられている。内爪12dは、先端を液圧室側に向けて内側に傾斜し、また外爪12eは、先端をシリンダ孔開口部側に向けて外側に傾斜しており、連結部材12を上述のごとくステンレス鋼板等で形成することによって、これらの爪12d,12eに内外方向の弾性力を持たせている。
【0017】
連結部材12を用いてバルブガイド11をピストン4に装着する場合に、連結部材12は、予めピストン4に組み付けしておいてもよいし、先にバルブガイド11に組み付けしてからバルブガイド11と一体にピストン4に取り付けてもよい。
【0018】
連結部材12をピストン4へ先に組み付けする場合には、連結部材12の筒状部12aをピストン4の先端軸部4aに外挿して行くことにより、内爪12dが先端軸部4aの外周面によって外側へ一旦押し戻され、内爪12dの内側にピストン4の係合溝10が位置すると、内爪12dがその復元力によって係合溝10に入り込み、底板12bが先端軸部4aの先端に当接して、連結部材12がピストン4に組み付けされる。また、連結部材12と一体のカップシールガイド12cは、プライマリ側のカップシール21の内リップ21aと外リップ21bとの間に突出し、ピストン4がシリンダ孔3内を摺動した際の外リップ21bのめくれを防止する。
【0019】
次に、バルブガイド11の大径筒部11aを連結部材12の筒状部12aに外挿して行くと、連結部材12の外爪12eがバルブガイド11の周縁11cによって内側へ一旦撓み、外爪12eの外側を周縁11cが通過してバルブガイド11の係合溝25が位置すると、外爪12eがその復元力によって係合溝25に入り込み、大径筒部11aの底壁11eが連結部材12の底板12bに当接して、バルブガイド11が連結部材12を介してピストン4に被着される。
【0020】
爪12d,12eの先端と係合溝10,25との間には、それぞれ若干の空隙が残るが、バルブガイド11と連結部材12とピストン4とをユニットとしてシリンダ孔3に装着した際には、液圧室5内のリターンスプリング6がバルブガイド11と連結部材12とをピストン4に押圧するため、バルブガイド11と連結部材12とのシリンダ軸方向へのガタ付きは生じない。
【0021】
本形態例はこのように、バルブガイド11を内外に爪12d,12eを有する連結部材12を用いてピストン4に装着するので、バルブガイド11を高液圧にも堪える肉厚の剛性材としながらも、ピストン4やバルブガイド11,連結部材12にいたずらな負荷をかけることなく、これらを短時間で簡便に組み付けすることができる。また、バルブガイド11と連結部材12の組み付けは低荷重の押し込み力でよく、ピストン4とバルブガイド11,連結部材12に傷や損耗を与えないで済む。
【0022】
さらに本形態例は、ピストン4の係合溝10と係合する連結部材12の内爪12dを液圧室側へ向けて傾斜させ、またバルブガイド11の係合溝25と係合する連結部材12の外爪12eを、シリンダ孔の開口部側へ向けて傾斜させたことにより、内爪12dと外爪12eとがバルブガイド11と連結部材12の差し込み方向に沿って突出するので、内爪12dや外爪12eがバルブガイド11や連結部材12に引っ掛かることがなく、こられの組み付けをスムーズに行うことができるようになる。さらに、カップシールガイド12cを連結部材12に一体形成しても、連結部材12は金属薄板で形成されるので、加工性に優れ且つ低コストでの製作が可能となる。
【0023】
なお、上述の形態例では、シングル型の液圧マスタシリンダで説明したが、本発明は、タンデム型の液圧マスタシリンダにも適用が可能である。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のセンタバルブ型車両用液圧マスタシリンダによれば、バルブガイドに高液圧に堪え得る肉厚の剛性材を用いながらも、ピストンやバルブガイド,連結部材にいたずらな負荷をかけることなく、これらを短時間で簡便に組み付けすることができる。また、バルブガイドと連結部材の組み付けは低荷重の押し込み力で済むので、ピストンやバルブガイド,連結部材に傷や損耗を与えない。
【0025】
また、連結部材の内爪を液圧室側に向けて傾斜させ、外爪をシリンダ孔の開口部側へ向けて傾斜させることにより、内爪と外爪とがバルブガイドと連結部材の差し込み方向に沿って突出するので、バルブガイドと連結部材の組み付けをスムーズに行うことができるようになる。さらに、カップシールのめくれを防止するカップシールガイドを連結部材に一体形成することにより、カップシールガイド付きの連結部材を、安価で容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態例を示すセンタバルブ型液圧マスタシリンダの要部拡大断面図
【図2】 本発明の一形態例を示すセンタバルブ型液圧マスタシリンダの一部断面正面図
【図3】 図1のIII−III断面図
【符号の説明】
1…液圧マスタシリンダ、2…シリンダボディ、3…シリンダ孔、4…ピストン、4a…先端軸部、4b…中間軸部、4c…第1摺動部、4d…第2摺動部、5…液圧室、8…プッシュロッド、10…係合溝、11…バルブガイド、11a…大径筒部、11b…小径筒部、11c…周縁、11d…液通孔、12…連結部材、12a…筒状部、12b…底板、12c…カップシールガイド、12d…内爪、12e…外爪、13…弁室、14…縦連通孔、15…弁座、15b…シール面、16…センタバルブ、16b…バルブステム、17…横連通孔、18…補給油室、19…液通孔、20a,20b…シール溝、21,22…カップシール、21a,22a…内リップ、21b,22b…外リップ、23…弁ばね、25…係合溝

Claims (2)

  1. シリンダボディに穿設された有底のシリンダ孔にピストンを内挿して、該ピストンのシリンダ孔底部側に液圧室を画成し、該液圧室側に位置するピストンの先端側に軸方向の縦連通孔を穿設し、該縦連通孔にセンタバルブのバルブステムを挿通して、該センタバルブ頭部の弁体を、前記ピストンの先端側に被着した有底筒状のバルブガイドの内部の弁室に突出配置し、前記ピストンの前部側外周にカップシールを嵌着したセンタバルブ型車両用液圧マスタシリンダにおいて、前記ピストンの先端側外周面と前記バルブガイドの筒部との間に環状の連結部材を介装し、該連結部材は、前記ピストンの先端軸部の外周面と前記バルブガイドの大径筒部との間に配設される筒状部と、前記先端軸部の先端面と前記大径筒部の底壁との間に配設されるリング状の底板とを備え、前記筒状部には、先端を液圧室側に向けて内側へ傾斜する内爪と、先端をシリンダ孔の開口部側へ向けて外側へ傾斜する外爪とを交互に形成し、前記ピストンの先端側外周面に形成した係合溝に前記内爪を係着するとともに、前記バルブガイドの筒部内周面に形成した係合溝に前記外爪を係着して、前記ピストンの先端側外周面の係合溝と前記内爪の先端との間及び前記バルブガイドの筒部内周面の係合溝と前記外爪との間にそれぞれ空隙を残し、前記ピストンとバルブガイドとを連結部材にて連結し、前記液圧室内に配設したリターンスプリングにて前記バルブガイドと前記連結部材の底板と前記ピストンとを押圧せしめたことを特徴とするセンタバルブ型車両用液圧マスタシリンダ。
  2. 前記連結部材に、前記カップシールのめくれを防止するカップシールガイドを一体に設けたことを特徴とする請求項1に記載のセンタバルブ型車両用液圧マスタシリンダ。
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