JP4382376B2 - 低誘電率膜用組成物、低誘電率膜及びその製造方法、並びに、半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体集積回路における多層配線に好適な低誘電率膜用組成物、該低誘電率膜用組成物を用いて形成した低誘電率膜及びその製造方法、並びに、該低誘電率膜を層間絶縁膜として有する半導体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路の集積度の増加及び素子密度の向上に伴い、特に半導体素子の多層化への要求が高まっている。この半導体集積回路の高集積化に伴い、配線間隔は更に狭くなることから、配線間の容量増大による配線遅延が問題となっている。ここで、前記配線遅延(T)は、次式、T∝CR、で表され、配線抵抗(R)及び配線間の寄生容量(C)に影響を受ける。そして、前記比誘電率(ε)と前記配線間の寄生容量(C)との関係は、次式、C=ε0εr・S/d、で表される。なお、該式において、Sは電極面積、ε0は真空の比誘電率、εrは絶縁膜の比誘電率、dは配線間隔をそれぞれ表す。前記配線間の寄生容量(C)は、配線厚を薄くし電極面積を小さくすることで低減できるものの、配線厚を薄くすると、更に前記配線抵抗(T)の上昇を招くために高速化を達成し得ない。したがって、前記配線遅延(T)を小さくし、高速化を図るためには、絶縁膜の低比誘電率化が有効な手段となる。
このような寄生容量に基づく信号遅延の増大を防止するために、前記寄生容量の式のうち比誘電率εrに注目して、層間絶縁膜として比誘電率εrの低い絶縁膜材料を用いることによって信号遅延の増大を抑制することが試みられている。
【0003】
このような層間絶縁膜の材料として凝縮系の樹脂を用いた場合、該層間絶縁膜の比誘電率εrは、局所電場を考慮して、次のクラウジウス−モソッティ(Clausius−Mossotti)の式で表される。
(εr−1)/(εr+2)=(4π/3)・N・α
なお、該式において、αは層間絶縁膜を構成する分子の分極率、Nは単位体積当たりの分子数をそれぞれ表す。この式を、比誘電率εrについて解き、分極率α又は単位体積当たりの分子数Nで偏微分すると、分極率αが小さいほど、また、単位体積当たりの分子数Nが少ないほど、比誘電率εrが小さくなることが判る。したがって、膜の比誘電率を小さくするためには、膜を構成する分子の分極率を小さくし、単位体積当たりの分子数を少なくすること、即ち、膜を多孔質化することが有効である。
【0004】
従来より、絶縁膜の材料としては、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(SiN)、燐珪酸ガラス(PSG)等の無機材料、ポリイミド等の有機系高分子材料などが用いられてきている。しかしながら、半導体装置で多用されているCVD−SiO2膜の場合、比誘電率が4程度と高いという問題があり、また、低比誘電率CVD膜として検討されているSiOF膜の場合、比誘電率が約3.3〜3.5であるが、吸湿性が高く、比誘電率が経時的に上昇してしまうという問題がある。
【0005】
ところで、配線の低抵抗化を行う観点から、Al系配線に代わってCu配線の導入が検討されているが、一方、シロキサン樹脂を多孔質化した低比誘電率膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
SiO2ベースの絶縁膜は、通電時にCuが絶縁膜中に拡散してリーク不良が生ずることが知られている。例えば、Si−Hを含むSiO2ベースの樹脂に代表される塗布型半導体用絶縁材料は、分子構造及び熱処理条件を工夫することによって、比誘電率が2.6〜3.1の絶縁膜として使用できるものの、配線材料としてCuを用いた場合、Cuと接触する状態では、200℃の熱処理によって簡単にCuが拡散してしまうという問題がある。
かかる問題点を解決するため、SiO2ベースの絶縁膜よりも低吸湿性であり、かつCu拡散が生じないことが知られている有機高分子膜の使用が検討されている(例えば、特許文献2及び3等参照)。
【0006】
しかしながら、前記有機高分子膜は比誘電率が2.5〜3.0であり、今後のデバイス微細化に伴う配線遅延を解消するためには、更なる低比誘電率化が必要であるが、かかる要求に十分に応えることができず、更なる改良、開発が強く求められている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−164184号公報
【特許文献2】
特開2001−2994号公報
【特許文献3】
特開2002−105205号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、従来に比べて低比誘電率でかつ耐熱性に優れた低誘電率膜及びその効率的な製造方法、該低誘電率膜の製造に好適な低誘電率膜用組成物、並びに、該低誘電率膜を層間絶縁膜等として有する高速で信頼性の高い多層配線構造の半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段としては、後述する(付記1)から(付記18)に記載した通りである。
本発明の低誘電率膜用組成物は、環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂と、分解乃至揮発可能な分解性成分とを含む。該低誘電率膜用組成物においては、前記基材樹脂が分子密度が高く、耐熱性が高く、高強度であるため、該低誘電率膜用組成物を用いて形成した低誘電率膜においては分子密度が高く、分子の分極が抑制され、該低誘電率膜は、多孔質化しても十分な強度を有し、比誘電率が小さい。また、該低誘電率膜用組成物を用いて低誘電率膜を形成する場合、前記分解性成分を分解乃至揮発させることにより、多孔質化されて該低誘電率膜が形成される。ここで得られた低誘電率膜は、比誘電率が低く、耐熱性に優れており、各種半導体装置等に好適である。
【0010】
本発明の低誘電率膜の製造方法は、本発明の低誘電率膜用組成物を用いて膜を形成する膜形成工程と、該膜に対し熱処理及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかを行って該膜を多孔質化する多孔質化工程とを含む。該低誘電率膜の製造方法においては、前記膜形成工程において、低誘電率膜用組成物を用いて膜が形成される。前記多孔質化工程において、該膜が、該膜に対し熱処理及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかが行われて多孔質化される。ここで得られた低誘電率膜は、比誘電率が低く、耐熱性に優れており、各種半導体装置等に好適である。
【0011】
本発明の低誘電率膜は、本発明の前記低誘電率膜の製造方法により形成される。該低誘電率膜は、多孔質化されており、比誘電率が低く、耐熱性に優れているので、応答速度の高速化が要求される半導体集積回路等に特に好適である。該低誘電率膜を半導体集積回路等に使用すると、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とが達成され、前記信号伝播速度の高速化が可能となる。
【0012】
本発明の半導体装置は、前記低誘電率膜を少なくとも有する。該半導体装置は、低比誘電率でかつ耐熱性に優れ、応答速度の高速化に寄与し得る本発明の低誘電率膜を層間絶縁膜等として有するので、該半導体装置においては、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とが達成され、前記信号伝播速度の高速化が可能で高性能であり、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などに特に好適である。
【0013】
【発明の実施の形態】
(低誘電率膜用組成物)
本発明の低誘電率膜用組成物は、環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂と、分解乃至揮発可能な分解性成分とを含有してなり、更に必要に応じて、溶剤、その他の成分を含有してなる。
【0014】
−環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂−
前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。
前記環式化合物としては、芳香族化合物及び脂環式化合物の少なくともいずれかであるのが好ましい。該芳香族化合物及び脂環式化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記芳香族化合物としては、分子内に芳香族環を有すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ベンゼン環を1個有する化合物、ベンゼン環を2個以上有する化合物、縮合環を有する化合物、などが挙げられる。
前記脂環式化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、四員環、五員環、六員環若しくはそれ以上の飽和又は不飽和の炭素環式化合物、アダマンタン環を有する化合物、などが挙げられる。これらの中でも、前記アダマンタン環を有する化合物が、熱分解温度が高く、耐熱性が良好であり、成膜プロセス等における熱処理に対し十分な耐熱性を示す点で特に好ましい。
【0016】
前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂としては、前記構造を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、下記構造式(1)及び構造式(2)の少なくともいずれかで表される構造単位の繰り返しを主鎖とするポリエーテル系樹脂を含むものが好ましい。
【0017】
【化3】
ただし、前記構造式(1)において、R1は、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、脂肪族環又は芳香族環を表し、これらは、置換基で更に置換されていてもよい。mは、0〜4の整数を表す。mが2以上の場合、R1は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。xは、1以上の整数を表し、10〜10,000が好ましい。なお、R1が結合していない部位には水素原子が結合している。
【0018】
前記アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、などが挙げられる。これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
前記アルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基、などが挙げられる。これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
前記アルキニル基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、例えば、エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、などが挙げられる。これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
前記アルコキシ基としては、炭素数1〜10のものが好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、などが挙げられる。これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
前記脂肪族環としては、炭素数3〜20のものが好ましく、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロへキサン等のシクロアルキル基、アダマンタン環、などが挙げられる。これらは、置換基で更に置換されていてもよい。
前記芳香族環としては、炭素数6〜20のものが好ましく、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、などが挙げられる。
【0019】
前記構造式(1)で表される構造単位の繰り返しを主鎖とするポリエーテル系樹脂の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ポリアリールエーテル樹脂、フッ化ポリアリールエーテル樹脂、環状フッ素樹脂、ベンゾシクロブテン誘導体、環状フッ素樹脂・シロキサン共重合体、ポリペンタフルオロスチレン系樹脂、ポリフッ化ナフタレン系樹脂、これらの誘導体、などが挙げられる。
【0020】
なお、前記ポリアリールエーテル樹脂としては、例えば、下記構造式(1−1)で表されるもの、下記構造式(1−2)で表されるもの、などが挙げられる。
【0021】
【化4】
ただし、Xは1以上の整数を表す。
【0022】
【化5】
ただし、R1は、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、脂肪族環又は芳香族環を表し、これらは、置換基で更に置換されていてもよい。mは、0〜4の整数を表す。xは、1以上の整数を表す。なお、R1が結合していない部位には水素原子が結合している。
【0023】
【化6】
ただし、前記構造式(2)において、R2は、フッ素原子、−OM(ただし、Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、カルボニル基を有する基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、脂肪族環又は芳香族環を表し、これらは、置換基で更に置換されていてもよい。nは、0〜8の整数を表す。nが2以上の場合、R2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。yは、1以上の整数を表し、5〜10,000が好ましい。なお、R2が結合していない部位には水素原子が結合している。
【0024】
前記アルキル基、前記アルケニル基、前記アルキニル基、前記アルコキシ基、前記脂肪族環及び前記芳香族環としては、前記構造式(1)におけるものと同様のものが挙げられる。
前記−OMとしては、例えば、−OH、−ONa、−OK、などが挙げられる。
前記カルボニル基を有する基としては、例えば、−COH、−COCH3、−COC2H5、−COC3H7、アルコキシカルボニル基(ROCO−)、などが挙げられる。
【0025】
前記構造式(2)で表される構造単位の繰り返しを主鎖とするポリエーテル系樹脂としては、ポリアダマンタンエーテル、などが好適に挙げられる。
これらの中でも、前記ポリアダマンタンエーテルは、アダマンタン環同士が酸素分子を介して連結され、原子間の結合が強固であるため、熱分解温度が高く、耐熱性が良好であるため、これを前記低誘電率膜用組成物に使用すると、成膜プロセス等において、熱処理に対する十分な耐熱性を確保することができる点で有利である。
【0026】
前記ポリアダマンタンエーテルの具体例としては、1,3−ジヒドロキシアダマンタン、1,4−ジヒドロキシアダマンタン、1,3−ジヒドロキシ−5−アダマンタンなどを酸性触媒の存在下で、脱水重合して得られる二次元骨格構造のポリアダマンタンエーテルが好適に挙げられる。
【0027】
また、該二次元骨格構造を有するポリアダマンタンエーテル以外にも、前記構造式(2)において、R2が、−OM(ただし、Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、カルボニル基を有する基及びアルコキシ基の少なくともいずれかのエーテル結合可能な基でありかつnが2以上で表される構造単位(特に、アダマンタン環の少なくとも1位、3位及び5位に前記エーテル結合可能な基が結合したものが好ましい)の繰り返しを主鎖とする三次元骨格構造を有するポリアダマンタンエーテルが、更に耐熱性及び強度が向上する点でより好ましい。
前記三次元骨格構造を有するポリアダマンタンエーテルは、例えば、下記構造式(2−1)で表される1,3,5−トリヒドロキシアダマンタンを溶剤に溶解し、該1,3,5−トリヒドロキシアダマンタン1molに対し酸性触媒を0.01〜0.1mol添加し、60〜120℃で1〜2時間加熱することによって重合反応を行うことにより、下記構造式(2−2)で表される三次元骨格構造のアマダンタンポリオールを合成することができる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、などが挙げられる。
前記酸性触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、HCl、H2SO4、CF3SO3H、HSbF6、HAsF6、HBF4、などが挙げられる。
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
ただし、Zは、1以上の整数を表す。
【0030】
前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常、1,000〜500,000程度である。
【0031】
−分解性成分−
前記分解性成分としては、分解乃至揮発可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、化合物等の低分子量成分であってもよいし、樹脂等の高分子量成分であってもよく、例えば、500℃以下(好ましくは200〜500℃)の温度での熱処理、及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかを行うことにより分解乃至揮発可能なものが好ましい。
前記分解性成分の具体例としては、500℃以下の温度での熱処理によって分解する熱分解性樹脂、500℃以下の温度での熱処理によって酸を発生する熱酸発生剤、電離放射線照射によって酸を発生する光酸発生剤、電離放射線照射によって塩基を発生する光塩基発生剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記熱分解性樹脂としては、例えば、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリオール系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール化合物、イミダゾール化合物、アダマンタン化合物、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱処理又は電離放射線処理による分解乃至揮発が容易である点で、ポリt−ブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂が好ましい。
【0033】
前記熱分解性樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、その分解温度や得られる低誘電率膜における孔(空隙)のサイズ等に応じて適宜選択することができるが、例えば、10〜100,000が好ましく、100〜50,000がより好ましい。
【0034】
前記熱酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸塩、芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸塩、金属塩、リン酸エステル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記熱酸発生剤の具体例としては、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸プロピル、p−トルエンスルホン酸メチル、o−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、o−トルエンスルホン酸エチル、ナフタレンスルホン酸メチル、4−メトキシベンゼンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸−2−ブトキシエチル、ベンゼンスルホン酸−2−フェノキシエチル、3−メトキシカルボニルベンゼンスルホン酸ベンジル、ベンゼンスルホン酸−2−ニトロエチル、p−トルエンスルホン酸−3−アセトアミノプロピル、ジエチル硫酸、ジ−n−プロピル硫酸、ジ−n−ブチル硫酸、ビス(2−エチルヘキシル)硫酸、ジラウリル硫酸、ジステアリル硫酸、ビス(2−フェネチル)硫酸、ビス(α−ナフチルメチル)硫酸、ジベンジル硫酸、ビス(2−ブトキシエチル)硫酸、ビス(2−フェノキシエチル)硫酸、ビス(2−オクチルチオエチル)硫酸、ビス〔2−(4−トリル)チオエチル〕硫酸、ビス(4−ニトロエチル)硫酸、ビス(2−クロロエチル)硫酸、ジシクロヘキシル硫酸、ビス(4−メチルシクロヘキシル)硫酸、ビス(4−メトキシシクロヘキシル)硫酸、ビス(4−ブチルチオシクロヘキシル)硫酸、脂肪族オニウム塩(例えば、2−ブチニルテトラメチレンスルフォニウムヘキサフロロアンチモネート)、などが挙げられる。
【0036】
前記光酸発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オニウム塩、スルホニウム塩、ハロゲン含有トリアジン化合物、スルホン化合物、芳香族スルホネート化合物、N−ヒドロキシイミドのスルホネート化合物、などが挙げられる。
【0037】
前記オニウム塩としては、例えば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールセレノニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、などが挙げられる。
前記ジアリールヨードニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメタンスルホネート、などが挙げられる。
前記トリアリールセレノニウム塩としては、例えば、トリフェニルセレノニウムヘキサフロロホスホニウム塩、トリフェニルセレノニウムホウフッ化塩、トリフェニルセレノニウムヘキサフロロアンチモネート塩、などが挙げられる。
前記トリアリールスルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスホニウム塩、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムヘキサフロロアンチモネート塩、ジフェニル−4−チオフェノキシフェニルスルホニウムペンタフロロヒドロキシアンチモネート塩、などが挙げられる。
【0038】
前記スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、p−トリルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、2,4,6−トリメチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート、4−フェニルチオフェニルジフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム ヘキサフルオロアンチモネート、1−(2−ナフトイルメチル)チオラニウム トリフルオロメタンスルホネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4−ヒドロキシ−1−ナフチルジメチルスルホニウム トリフルオロメタンスルホネート、などが挙げられる。
【0039】
前記ハロゲン含有トリアジン化合物としては、例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシ−1−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソラン−5−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、などが挙げられる。
【0040】
前記スルホン化合物としては、例えば、ジフェニル ジスルホン、ジ−p−トリル ジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−tert−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−キシリルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、(ベンゾイル)(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルアセトフェノン、などが挙げられる。
【0041】
前記芳香族スルホネート化合物としては、例えば、α−ベンゾイルベンジル p−トルエンスルホネート(通称ベンゾイントシレート)、β−ベンゾイル−β−ヒドロキシフェネチル p−トルエンスルホネート(通称α−メチロールベンゾイントシレート)、1,2,3−ベンゼントリイル トリスメタンスルホネート、2,6−ジニトロベンジル p−トルエンスルホネート、2−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、4−ニトロベンジル p−トルエンスルホネート、などが挙げられる。
【0042】
前記N−ヒドロキシイミドのスルホネート化合物としては、例えば、N−(フェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(p−クロロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(シクロヘキシルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(1−ナフチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ベンジルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフタルイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)ナフタルイミド、などが挙げられる。
【0043】
これらの中でも、量子収率が高く、分解後に気体として膜から脱離可能な点で、下記構造式(3)で表されるトリアリールスルホニウム塩、下記構造式(4)で表されるジアリールヨードニウム塩、トリアリールセレノニウム塩などが好ましい。
【0044】
【化9】
但し、前記構造式(3)及び前記構造式(4)において、R4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。前記アルキル基又は前記アルコキシ基の炭素数としては、1〜6が好ましい。
【0045】
前記光塩基発生剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヘキサアンモニアコバルト過塩素酸塩、ヘキサプロピルアミンコバルト過塩素酸塩、ヘキサメチルアミンコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタプロピルアミンコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタアンモニアコバルト過塩素酸塩、ブロモペンタメチルアミンコバルト過塩素酸塩、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]エチルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]エチルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]メチルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]エチルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]プロピルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキシルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]アニリン、[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ピペリジン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサメチレンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]フェニレンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ジアミノジフェニルメタン、ビス[[(α,α−ジメチルp−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]トルエンジアミン、ビス[[(α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジル)オキシ]カルボニル]ピペラジン、プロピオニルアセトフェノンオキシム、プロピオニルベンゾフェノンオキシム、プロピオニルアセトンオキシム、ブチリルアセトフェノンオキシム、ブチリルベンゾフェノンオキシム、ブチリルアセトンオキシム、アジポイルアセトフェノンオキシム、アジポイルベンゾフェノンオキシム、アジポイルアセトンオキシム、アクロイルアセトフェノンオキシム、アクロイルベンゾフェノンオキシム、アクロイルアセトンオキシム、などが挙げられる。
【0046】
前記分解性成分の前記低誘電率膜用組成物における含有量としては、特に制限はなく、熱処理又は電離放射線照射処理により生成する酸の強度、前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂における各構造単位の種類等に応じて適宜選択することができるが、前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂100質量部に対し、0.1〜200質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましい。
前記分解性成分が前記熱酸発生剤、前記光酸発生剤又は前記光塩基発生剤である場合には、該分解性成分の前記低誘電率膜用組成物における含有量としては、前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜30質量部がより好ましく、1〜25質量部が特に好ましい。
前記熱酸発生剤、前記光酸発生剤又は前記光塩基発生剤の含有量が、0.1質量部未満であると、比誘電率の低減効果が十分に得られないことがあり、50質量部を超えると、膜強度が低下してしまうことがある。
前記分解性成分が前記熱分解性樹脂である場合には、該分解性成分の前記低誘電率膜用組成物における含有量としては、前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂に対し、0.1〜100質量部が好ましく、5〜50質量部がより好ましい。
前記熱分解性樹脂の含有量が、0.1質量部未満であると、比誘電率の低減効果が十分ではないことがあり、100質量部を超えると、膜強度が低下してしまうことがある。
【0047】
本発明においては、前記分解性成分の種類、含有量等を適宜変更することにより、該分解性成分が熱分解性樹脂である場合にはその重量平均分子量(分子サイズ)を適宜変更することにより、低誘電率膜に所望の大きさの孔を形成することができる。
また、前記分解性成分を2種以上を併用する場合、前記熱処理又は前記電離放射線照射処理を1回又は複数回行うと、異なるサイズの孔を同一の膜内に混在形成させることができる。この場合、分子サイズの小さな前記分解性成分を先に分解乃至揮発させ、前記低誘電率膜用組成物を用いて形成した膜から脱離させると、その後、分子サイズの大きな前記分解性成分を分解乃至揮発させた際に、該分子サイズの大きな前記分解性成分を容易に前記膜から脱離可能とすることができ、該膜を効率よく低誘電率化することができる。
【0048】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、溶剤などが挙げられる。
前記溶剤としては、前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂、前記分解性成分等が良好に溶解可能であり、所望の塗布特性が得られるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール(フェノールメチルエーテル)等の芳香族炭化水素系溶剤、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、シクロペンタノン、エチルセロソルブ、オクタン、デカン、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、水、エタノール、イソプロパノール、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂に対する溶解性の点で、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール(フェノールメチルエーテル)等の芳香族炭化水素系溶剤などが好ましい。
【0049】
本発明の低誘電率膜用組成物は、各種分野において使用することができ、低誘電率膜の形成乃至製造に好適に使用することができ、以下の本発明の低誘電率膜及びその製造方法並びに半導体装置に特に好適に使用することができる。
本発明の低誘電率膜用組成物を用いて形成した膜は、前記分解性成分が分解乃至揮発することにより多孔質化しているため、低誘電率膜としての特性を有し、各種半導体装置等に好適である。
【0050】
(低誘電率膜の製造方法)
本発明の低誘電率膜の製造方法は、膜形成工程と、多孔質化工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、パターン形成工程などを含む。
【0051】
−膜形成工程−
前記膜形成工程は、本発明の前記低誘電率膜用組成物を用いて膜を形成する工程である。
該膜形成工程において、前記膜は、例えば、本発明の低誘電率膜用組成物を基材上に塗布することにより形成することができる。
前記塗布の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法、などが挙げられる。これらの中でも、塗布効率等の点で、スピンコート法、ディップコート法等が好ましい。
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、半導体装置における基板、各層などが好適に挙げられる。
前記塗布の後、必要に応じて乾燥等を行ってもよい。この場合、該乾燥の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100〜250℃程度が好ましい。
【0052】
−多孔質化工程−
前記多孔質化工程は、前記膜に対し熱処理及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかを行って該膜を多孔質化する工程である。
該多孔質化工程において、前記膜に含まれる前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂を硬化させ、該膜を硬化させると共に、該膜に含まれる前記分解性成分を分解乃至揮発させることによって該膜に多数の孔を形成し、該膜を多孔質化させる。その結果、該膜は比誘電率が低い低誘電率膜となる。
【0053】
前記熱処理としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜その温度、雰囲気等の条件を選択することができるが、該条件としては、前記膜に含まれる前記分解性成分の分解乃至揮発が効率的に生ずるような条件を選択するのが好ましく、例えば、前記温度としては、500℃以下が好ましく、200〜500℃がより好ましく、前記雰囲気としては、大気中では酸素の取り込みによる比誘電率の上昇が懸念されるため、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下又は減圧雰囲気下が好ましい。
【0054】
前記電離放射線照射処理としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法、装置等に従って行うことができ、例えば、電離放射線放射装置を用いて電離放射線を前記膜に対し照射すること等により行うことができる。
前記電離放射線としては、前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂の硬化、前記分解性成分の分解乃至揮発を促す効果があるものが好ましく、例えば、赤外線、可視線、紫外線、X線、などが好適に挙げられる。
本発明においては、これらのほかに、電子線も同様の効果が得られる前記電離放射線として用いることができる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記分解性成分の分解性を考慮した場合、主鎖断裂のエネルギーを有する光源として、紫外線、X線、電子線などが好ましい。
前記電離放射線を前記膜に対し照射した際、前記分解性成分を効率的に分解乃至揮発させて膜の下部まで一様に孔を形成するためには、該電離放射線を照射する際の、前記膜の吸光度(照射する放射線の波長(10−1〜106Åにおける吸光度を指す。)が、1.75以下であるのが好ましく、1.25以下であるのがより好ましい。
【0055】
前記熱処理及び前記電離放射線照射処理を行う回数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、それぞれ又は両者につき1回であってもよいし、複数回であってもよい。
また、前記熱処理及び前記電離放射線照射処理を同時に行ってもよい。この場合、前記低誘電率膜の硬化の際におけるパターン形状の変化(例えば、熱ダレ等)を効果的に防止することができる点で好ましい。
【0056】
−その他の工程−
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、パターン形成工程、などが好適に挙げられる。
前記パターン形成工程は、前記膜形成工程において形成した前記膜に対し選択露光、現像等を行ってパターンを形成する工程であり、前記膜形成工程と前記多孔質化工程との間に行うのが好ましい。
前記パターン形成工程におけるパターンの形成は、公知の方法に従って行うことができ、前記露光及び前記現像の間で、反応を促進させるベーク処理等を適宜行ってもよい。
【0057】
ここで、本発明の低誘電率膜の製造方法の一例について説明する。例えば、まず、前記膜形成工程において、本発明の前記低誘電率膜用組成物をスピンコート法により基板上に塗布し、100〜250℃で加熱し、溶剤を乾燥させて膜を形成する。次に、前記パターン形成工程において、前記露光を選択的に行い、前記現像を行い、所望の形状のパターンを形成する。なお、この際、反応を促進させるため、前記露光及び前記現像の間でベーク処理を行ってもよい。その後、前記多孔質化工程において、不活性雰囲気下及び減圧雰囲気下のいずれかで250〜400℃の熱処理又は電離放射線照射処理を行い、前記パターンに含まれる前記環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂の硬化と前記分解性成分の分解乃至揮発とを行う。その結果、前記膜が硬化すると共に多孔質化し、低誘電率膜が形成乃至製造される。
【0058】
本発明の低誘電率膜の製造方法は、各種分野において用いることができ、以下の本発明の低誘電率膜の製造に特に好適である。
【0059】
(低誘電率膜)
前記低誘電率膜は、本発明の前記低誘電率膜の製造方法により製造される。
前記低誘電率膜の比誘電率としては、2.7以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、1.8〜2.5が特に好ましい。
なお、前記比誘電率は、例えば、前記低誘電率膜上に金電極を形成し、比誘電率測定器等を用いて測定することができる。
【0060】
前記低誘電率膜は、多孔質構造を有し、該多孔質構造における孔(空隙)の径(平均径)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、比誘電率を低下させる観点からは、100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、10nm以下が特に好ましい。
なお、前記孔(空隙)の径(平均径)は、例えば、透過型顕微鏡(TEM)により観察し、測定することができる。
前記低誘電率膜の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50〜3000nm程度が好ましい。
【0061】
前記低誘電率膜は、各種分野において好適に使用することができる。該低誘電率膜は、完全な有機材料から形成された有機膜であるため、SiO2等の無機膜とのエッチング選択比を大きくとることができるので、該低誘電率膜を半導体装置等に応用すれば、比誘電率の大きなSiN膜が不要となる。また、該低誘電率膜は、多孔質化されているので、比誘電率が好ましくは2.7以下と低く、隣接する配線層に起因する寄生容量を大幅に低減することができる。また、耐熱性、耐湿性に優れる。このため、デバイスの特性及び信頼性を大幅に向上させることができ、応答速度の高速化に寄与し、応答速度の高速化が要求される半導体集積回路等の半導体装置に好適であり、以下の本発明の半導体装置に特に好適である。
【0062】
(半導体装置)
本発明の半導体装置は、本発明の低誘電率膜を層間絶縁膜として有すること以外には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した部材等を有してなる。本発明の半導体装置の具体例としては、フラッシュメモリ、DRAM、FRAM、MOSトランジスタ、などが好適に挙げられる。
本発明の半導体装置は、本発明の前記低誘電率膜を層間絶縁膜として有するため、各層の層間の絶縁性に優れ、高速で信頼性が高い。
また、本発明の半導体装置においては、本発明の前記低誘電率膜(絶縁層)中を銅が拡散しないため、配線層を形成する金属配線の材料を、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、及び銅合金から好適に選択することができる。また、バリアメタルの材料を、チタン、チタン合金、タンタル、及びタンタル合金から好適に選択することができる。
【0063】
以下に、本発明の半導体装置の一例について、図1を参照しながら説明する。
本発明の半導体装置は、例えば、以下のようにして得られる。即ち、図1に示すように、まず、素子間分離膜2で分離され、ソース拡散層5aとドレイン拡散層5b、サイドウォール絶縁膜3、ゲート電極4を有するトランンジスタ層が形成されたSiウエハ1に層間絶縁膜6、ストッパー膜7を形成し、電極取り出し用のコンタクトホールを形成した。このコンタクトホ−ルにスパッタ法でTiN8を50nm形成した後にWF6と水素を混合し還元することでブランケットW9を埋め込み、化学的機械研磨法(CMP)によりビア以外の部分を除去した。
【0064】
続いて、本発明の低誘電率膜用組成物を用いて低誘電率膜10をSi平板上500nmの成膜と配線溝の形成を同時に行った。この配線溝に、Cuの絶縁層への拡散バリアとして働くTiN8を50nmと電解メッキの際に電極として働くシード層Cu50nmをスパッタ法により形成した。
更に、電解メッキによりCu配線13を600nm積層した後、化学的機械研磨法(CMP)により配線パターン部以外のメタルを除去し、配線層を形成した。第1層目配線層上にCu拡散防止を目的としてシランとアンモニアガスを用いてプラズマCVD法により拡散防止膜としてSiN膜12を50nm、後述する実施例7の低誘電率膜用組成物を用いて低誘電率膜10をSi平板上650nmとなる条件で積層し、ビアパターンを形成した。その後、本発明の低誘電率膜用組成物を用いて低誘電率膜10をSi平板上400nmとなる条件で積層し、配線溝を形成した。
【0065】
次に、低誘電率膜10をマスクとしてビア底に存在するSiN膜をCF4/CHF3ガスを原料としたFプラズマ法にて除去し、このビアと配線溝に、Cuの絶縁層への拡散バリアとして働くTiN8を50nmと電解メッキの際に電極として働くシード層Cuを50nmスパッタ法により形成した。更に、電解メッキによりCu13を1400nm積層した後、化学的機械研磨法(CMP)により配線パターン部以外のメタルを除去し、配線層を形成した化学的機械研磨法(CMP)によりビア以外の部分を除去しビア層を形成した。
以下、上記工程を繰り返し、3層配線を形成した。試作した多層配線の100万個の連続ビアの歩留まりは95%以上であった。
【0066】
本発明の半導体装置は、耐熱性に優れ、高強度で低比誘電率な本発明の低誘電率膜を層間絶縁膜等として有するので、前記配線間の寄生容量の低下と前記配線抵抗の低下とを達成することができ、前記信号伝播速度の高速化が可能で高性能である。
【0067】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0068】
(比較例1)
−低誘電率膜用組成物の調製−
下記構造式で表されるアリールエーテルの構造単位の繰り返しを主鎖に有する基材樹脂を常法により合成した。
【0069】
【化10】
ただし、xは、50である。
【0070】
得られた基材樹脂(重量平均分子量:13,000)100質量部と、前記溶剤として、トルエン500質量部とを常法により混合し、比較例1の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0071】
(比較例2)
−低誘電率膜用組成物の調製−
下記構造式で表されるアリールエーテルの構造単位の繰り返しを主鎖に有する基材樹脂を常法により合成した。
【0072】
【化11】
ただし、xは、150である。
【0073】
得られた基材樹脂(重量平均分子量:14,000)100質量部と、前記溶剤として、トルエン500質量部とを常法により混合し、比較例2の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0074】
(比較例3)
−低誘電率膜用組成物の調製−
下記構造式(2−1)で表される1,3,5−トリヒドロキシアダマンタンを、溶剤(トルエン)に溶解し、該1,3,5−トリヒドロキシアダマンタン1molに対し酸性触媒(H2SO4)を0.05mol添加し、100℃で2時間加熱することによって重合反応を行い、下記構造式(2−2)で表されるアマダンタンポリオール(基材樹脂)を合成した。
【0075】
【化12】
【0076】
【化13】
ただし、Z=50である。
【0077】
得られた基材樹脂(重量平均分子量:18,000)100質量部と、前記溶剤として、トルエン600質量部とを常法により混合し、比較例3の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0078】
(実施例1)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例1で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、重量平均分子量3,000のポリt−ブチルメタクリレートを前記基材樹脂100質量部に対し、10質量部添加して実施例1の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0079】
(実施例2)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例1で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、重量平均分子量10,000のポリt−ブチルメタクリレートを前記基材樹脂100質量部に対し、10質量部添加して実施例2の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0080】
(実施例3)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例1で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、重量平均分子量10,000のポリt−ブチルメタクリレートを前記基材樹脂100質量部に対し、30質量部添加して実施例3の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0081】
(実施例4)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例1で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、重量平均分子量10,000のポリt−ブチルメタクリレートを前記基材樹脂100質量部に対し、50質量部添加して実施例4の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0082】
(実施例5)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例1で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、重量平均分子量3,000のポリt−ブチルメタクリレートを前記基材樹脂100質量部に対し10質量部と、前記分解性成分として、重量平均分子量10,000のポリt−ブチルメタクリレートを前記基材樹脂100質量部に対し10質量部とを添加して実施例5の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0083】
(実施例6)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例2で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、重量平均分子量10,000のポリt−ブチルメタクリレートを前記基材樹脂100質量部に対し10質量部添加して実施例6の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0084】
(実施例7)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例3で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、重量平均分子量5,000のポリスチレンを前記基材樹脂100質量部に対し20質量部添加して実施例7の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0085】
(実施例8)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例3で調製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として、トリフェニルスルホニウムトリフレート(光酸発生剤)を前記基材樹脂100質量部に対し10質量部添加して実施例8の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0086】
(実施例9)
−低誘電率膜用組成物の調製−
比較例3で作製した低誘電率膜用組成物に、前記分解性成分として重量平均分子量5,000のポリスチレンを前記基材樹脂100質量部に対し20質量部と、前記分解性成分としてトリフェニルスルホニウムトリフレート(光酸発生剤)を前記基材樹脂100質量部に対し10質量部とを添加して実施例9の低誘電率膜用組成物を調製した。
【0087】
<評価1>
比較例1〜2及び実施例1〜6により調製した低誘電率膜用組成物をウエハ上にスピンコートし、150℃で5分間の溶剤乾燥を行った。その後、窒素雰囲気中、350℃で60分間のキュアを行って低誘電率膜を形成した。
得られた低誘電率膜上に1mmφのAu電極を形成し、容量測定の結果から低誘電率膜の比誘電率を算出した。また、得られた低誘電率膜の断面透過型顕微鏡(TEM)像から低誘電率膜の孔径(平均径)を測定した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
<評価2>
比較例3及び実施例7により作製した低誘電率膜用組成物をウエハ上にスピンコートし、200℃で5分間の溶剤乾燥を行った。その後、窒素雰囲気中、400℃で30分間のキュアを行って低誘電率膜を形成した。
得られた低誘電率膜上に1mmφのAu電極を形成し、容量測定の結果から低誘電率膜の比誘電率を算出した。また、得られた低誘電率膜の断面透過型顕微鏡(TEM)像から低誘電率膜の孔径(平均径)を測定した。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表1及び表2の結果から、比較例1〜3の場合、分解性成分を含有していないため、熱処理を行っても空孔を形成することができず、得られた膜は比誘電率が高かった。これに対し、前記分解性成分を含有する実施例1〜7の場合、熱処理により空孔が形成され、得られた低誘電率膜の比誘電率は低かった。また、実施例1〜7の結果から、前記分解性成分の重量平均分子量が大きく、前記分解性成分の含有量が多いほど空孔径が大きくなり、比誘電率が小さくなる傾向がが確認された。
【0092】
<評価3>
比較例3及び実施例7〜9により調製した低誘電率膜用組成物をウエハ上にスピンコートし、200℃で5分間の溶剤乾燥を行った。その後、窒素雰囲気中、400℃で30分間のキュアを行った。その後、波長254nmのKrFエキシマランプを用いてウエハの全面に照射した(露光量=50mJcm−2)。なお、KrFエキシマレーザ照射前の膜の波長254nmにおける吸光度を測定した。結果を表3に示す。再び、窒素雰囲気中、400℃で10分間のキュアを行って低誘電率膜を形成した。
得られた低誘電率膜上に1mmφのAu電極を形成し、容量測定の結果から低誘電率膜の比誘電率を算出した。断面透過型顕微鏡(TEM)像から低誘電率膜の孔径(平均径)を測定した。結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3の結果から、比較例3の場合、前記分解性成分を含有していないため、前記熱処理及び前記電離放射線照射処理を行っても空孔が形成されず、得られた低誘電率膜の比誘電率が高かった。これに対し、実施例7〜8の場合、電離放射線照射処理した後、更に熱処理を行うことによって前記分解性成分が膜から分解乃至揮発し、該膜が多孔質化し、得られた低誘電率膜の比誘電率が低下していたことが確認された。
また、実施例9の場合、分子サイズの異なる分解性成分を2種類含有しており、先に前記電離放射線照射処理を行い、分子サイズの小さいトリフェニルスルホニウムトリフレートを分解乃至揮発させた後に、前記熱処理を行い、分子サイズの大きなポリスチレンを分解乃至揮発させるので、該分子サイズの大きなポリスチレンが容易に前記膜から脱離可能となり、前記分解性成分を1種類含有する実施例8の場合よりも、得られる低誘電率膜の比誘電率が更に低くなったことが確認された。
【0095】
(実施例10)
−半導体装置の製造−
図1に示すような、多層配線構造を有する半導体装置を、以下のようにして得た。即ち、まず、素子間分離膜2で分離され、ソース拡散層5aとドレイン拡散層5b、サイドウォール絶縁膜3、ゲート電極4を有するトランンジスタ層が形成されたSiウエハ1に層間絶縁膜6、ストッパー膜7を形成し、電極取り出し用のコンタクトホールを形成した。このコンタクトホ−ルにスパッタ法でTiN8を50nm形成した後にWF6と水素を混合し還元することでブランケットW9を埋め込み、化学的機械研磨法(CMP)によりビア以外の部分を除去した。
続いて、実施例2の低誘電率膜用組成物を平板上に450nmになる条件での成膜した低誘電率膜10上にキャップ膜としてTEOS−SiO211を50nm積層した。この膜に対し、1層目の配線パターンを施したレジスト層をマスクとしてCF4/CHF3ガスを原料としたFプラズマにより加工した。この配線溝に、Cuの絶縁層への拡散バリアとして働くTiN8を50nmと電解メッキの際に電極として働くシード層Cu50nmをスパッタ法により形成した。
【0096】
更に、電解メッキによりCu13を600nm積層した後、化学的機械研磨法(CMP)により配線パターン部以外のメタルを除去し、配線層を形成した。
次に、第1層目配線層上にCu拡散防止を目的としてシランとアンモニアガスを用いてプラズマCVD法により拡散防止膜としてSiN膜12を50nm、実施例2の低誘電率膜10を650nm積層した。
前記配線層部分に、シランとアンモニアガスを用いてプラズマCVD法によりストッパー膜としてSiN膜7を50nmと実施例2の低誘電率膜10をSi平板上400nmとなる条件で成膜を行った後にキャップ膜としてTEOS−SiO211を50nm積層した。この絶縁層にビアパターンを形成したレジスト層をマスクにCF4/CHF3ガスを原料としたFプラズマ法によりガス組成を変えることでSiO2/低誘電率膜/SiN/低誘電率膜/SiNの順に加工した。
【0097】
続いて、第2層目配線パターンを施したレジスト層をマスクにCF4/CHF3ガスを原料としたFプラズマ法により加工した。このビアと配線溝に、Cuの絶縁層への拡散バリアとして働くTiN8を50nmと電解メッキの際に電極として働くシード層Cuを50nmスパッタ法により形成した。更に、電解メッキによりCu13を1400nm積層した後、化学的機械研磨法(CMP)により配線パターン部以外のメタルを除去し、配線層を形成した化学的機械研磨法(CMP)によりビア以外の部分を除去しビア層を形成した。
以下、上記工程を繰り返し、3層配線を形成した。試作した多層配線の100万個の連続ビアの歩留まりは95%以上であった。
【0098】
なお、実施例10の半導体装置においては、バリアメタルとなるTiN膜を30nm堆積させているが、これはTiN膜とCuシード層との密着性を改善させるためである。従ってTiN膜を更に薄くしても問題なく、それによってCu埋め込み配線層におけるCuの体積比が増加するので微細化に伴う配線抵抗の上昇を抑制することができる。
【0099】
ここで、本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 環式化合物及びエーテル結合を主鎖に有する基材樹脂と、分解乃至揮発可能な分解性成分とを含有することを特徴とする低誘電率膜用組成物。
(付記2) 環式化合物が、芳香族化合物及び脂環式化合物の少なくともいずれかである付記1に記載の低誘電率膜用組成物。
(付記3) 脂環式化合物が、アダマンタン環を有する付記2に記載の低誘電率膜用組成物。
(付記4) 基材樹脂が、下記構造式(1)及び構造式(2)の少なくともいずれかで表される構造単位の繰り返しを主鎖とするポリエーテル系樹脂を含む付記1から3のいずれかに記載の低誘電率膜用組成物。
【化14】
前記構造式(1)中、R1は、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、脂肪族環又は芳香族環を表し、これらは置換基で置換されていてもよい。mは、0〜4の整数を表す。xは、1以上の整数を表す。
【化15】
前記構造式(2)中、R2は、フッ素原子、−OM(ただし、Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、カルボニル基を有する基、アルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族環又は芳香族環を表し、これらは、置換基で置換されていてもよい。nは、0〜8の整数を表す。yは、1以上の整数を表す。
(付記5) 基材樹脂が、下記構造式(2)で表される構造単位の繰り返しを主鎖とする三次元骨格構造を有するポリアダマンタンエーテルを含み、該構造式(2)中、R2が−OM(ただし、Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、カルボニル基を有する基及びアルコキシ基から選択されるエーテル結合可能な基であり、nが2以上であり、yが1以上の整数である付記1から4のいずれかに記載の低誘電率膜用組成物。
【化16】
(付記6) 基材樹脂が、下記構造式のいずれかで表される構造単位の繰り返しを主鎖とするポリエーテル系樹脂を含む付記1から5のいずれかに記載の低誘電率膜用組成物。
【化17】
前記構造式中、R1は、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、脂肪族環又は芳香族環を表し、これらは置換基で置換されていてもよい。mは、0〜4の整数を表す。xは、1以上の整数を表す。
【化18】
前記構造式中、Xは、1以上の整数を表す。
【化19】
前記構造式中、Zは、1以上の整数を表す。
(付記7) 分解性成分が、500℃以下の温度での熱処理、及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかにより分解乃至揮発する付記1から6のいずれかに記載の低誘電率膜用組成物。
(付記8) 分解性成分が、500℃以下の温度での熱処理によって分解する熱分解性樹脂であり、該熱分解性樹脂が、アクリル系樹脂及びポリスチレン系樹脂のいずれかである付記7に記載の低誘電率膜用組成物。
(付記9) 分解性成分が、電離放射線照射処理によって酸を発生する光酸発生剤であり、該光酸発生剤が、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びトリアリールセレノニウム塩から選択される少なくとも1種である付記7から8のいずれかに記載の低誘電率膜用組成物。
(付記10) 分解乃至揮発の機構及び分子サイズが互いに異なる2種以上の分解性成分を含有する付記1から9のいずれかに記載の低誘電率膜用組成物。
(付記11) 付記1から10のいずれかに記載の低誘電率膜用組成物を用いて膜を形成する膜形成工程と、該膜に対し熱処理及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかを行って該膜を多孔質化する多孔質化工程とを含むことを特徴とする低誘電率膜の製造方法。
(付記12) 多孔質化工程において、熱処理と電離放射線照射処理とを同時に行う付記11に記載の低誘電率膜の製造方法。
(付記13) 電離放射線照射処理において照射する放射線の波長に対する膜の吸光度が1.75以下である付記12に記載の低誘電率膜の製造方法。
(付記14) 膜形成工程において、付記10に記載の低誘電率膜用組成物を用いて膜を形成し、多孔質化工程において、前記膜に対し熱処理及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかを行って、分子サイズの小さい分解性成分を分解乃至揮発させた後、前記膜に対し熱処理及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかを行って、分子サイズの大きな分解性成分を分解乃至揮発させる付記11から13のいずれかに記載の低誘電率膜の製造方法。
(付記15) 付記11から14のいずれかに記載の低誘電率膜の製造方法によって形成されることを特徴とする低誘電率膜。
(付記16) 多孔質構造を有し、該多孔質構造における孔の平均径が5〜100nmである付記15に記載の低誘電率膜。
(付記17) 付記14から15のいずれかに記載の低誘電率膜を少なくとも有することを特徴とする半導体装置。
(付記18) 基板上に交互に積層した複数の絶縁層及び配線層により形成された多層構造を有する付記17に記載の半導体装置。
【0100】
【発明の効果】
本発明によると、従来における問題を解決し、低比誘電率でかつ耐熱性に優れた低誘電率膜を得ることができる。また、この低誘電率膜を半導体装置の層間絶縁膜として利用した場合は配線層間の寄生容量を大幅に低減することができるので、微細化に伴う信号遅延を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の低誘電率膜を用いた本発明の半導体装置の一例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1・・・シリコンウエハ
2・・・素子間分離膜
3・・・サイドウォール絶縁膜
4・・・ゲート電極
5a・・ソース拡散層
5b・・ドレイン拡散層
6・・・層間絶縁膜(リンガラス)
7・・・ストッパー膜
8・・・バリア膜
9・・・導体プラグ(W)
10・・低誘電率膜
11・・キャップ膜
12・・拡散防止膜
13・・銅配線
Claims (4)
- 下記構造式(2)で表される構造単位の繰り返しを主鎖とするポリエーテル系樹脂と、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩及びトリアリールセレノニウム塩から選択される少なくとも1種とを含有することを特徴とする低誘電率膜用組成物。
- 請求項1に記載の低誘電率膜用組成物を用いて膜を形成する膜形成工程と、該膜に対し熱処理及び電離放射線照射処理の少なくともいずれかを行って該膜を多孔質化する多孔質化工程とを含むことを特徴とする低誘電率膜の製造方法。
- 請求項2に記載の低誘電率膜の製造方法によって形成されることを特徴とする低誘電率膜。
- 請求項3に記載の低誘電率膜を少なくとも有することを特徴とする半導体装置。
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