JP4381864B2 - 基板固定治具 - Google Patents

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Description

本発明は、単独では工程内ハンドリングが困難な、あるいは作業性の悪い基板を固定するための基板固定治具に関し、特には金属箔張り積層板、透明導電膜を形成した基板を固定し、パターンを形成するための基板固定治具に関する。
携帯電話に代表される携帯機器には、配線板が内蔵されるが、この配線板としては、薄型化、軽量化の要求から折り曲げ実装可能なフレキシブルプリント配線板(以下、FPCという)が多用される。また、薄型ディスプレイやタッチパネル等には、プラスチックフィルム基材に透明導電膜による導電パターンを形成した基板が多用されている。これらの基板は、絶縁性の基材の少なくとも一面に導電層を備えた基板の該導電層上に、感光性材料からなるレジスト膜を形成し、該レジスト膜に部分的に紫外線等を照射することで現像液に対する溶解性を変化させ、現像することで導電パターンとなるべき部分を残してレジスト膜を除去し、導電層の露出した部分をエッチングにより除去、最後に残留したレジスト膜を除去して導電パターンが形成される。
上記の導電パターン形成工程においては、ロール状の基板を送り出し、巻き取りながら行う方法(いわゆる「ロール to ロール」)の場合は、基板の固定に関し特に問題はないが、枚葉の基板を取り扱う場合、これを単独で平坦に保持することは非常に困難で作業性が悪く、また、複数個の一括処理ができず、作業効率が非常に悪かった。この問題を解消する手段として、例えば特許文献1に示される基板固定用の治具の適用が考えられるが、この種の基板固定治具は、図示しないが、基材と、この基材の表面に設けられるシリコーン樹脂製の微粘着層とを備え、この微粘着層上に、FPCが着脱自在に粘着固定される。
特許第3435157号公報
従来の基板固定治具は以上のように構成され、要求される特性としては、半田リフロー等での耐熱性、密着保持性であり、現像工程やエッチング工程における酸性溶液やアルカリ性溶液の使用は考慮されておらず、事実、シリコーンゴムでは耐アルカリ性が特に劣り、現像液やエッチング液によりエラストマー保持層の表面の状態及び弾性率が変化し、基板保持性能が劣化して、繰り返し使用に耐えるものではなかった。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、導電パターン形成の各工程に使用される液剤に接触しても基板保持性能が劣化することなく、繰り返し耐久性に優れた基板固定治具を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、酸性水溶液及びアルカリ性水溶液に浸漬した際のゴム弾性率変化を、特定の範囲内に抑制することで現像、エッチング、レジスト除去工程への耐久性を備えることができることを見出し、さらにその材料、組成について検討を重ね、本発明を完成させた。
本発明は、上記課題を解決したものであり、これは、電子部品を着脱自在に保持する基板固定治具であって、基材と、この基材の一面の少なくとも一部に設けられるエラストマー保持層とを含み、該エラストマー保持層が、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬した際及び37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬した際の弾性率変化が±20%の範囲内であることを特徴としている。
また、エラストマー保持層をフッ素系のエラストマーとすることができ、さらに、前記フッ素系のエラストマー保持層を、(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有し、アルケニル基と付加反応可能な化合物、(C)付加反応触媒、(D)付加反応制御剤を含有する硬化物とすることができる。
また、前記エラストマー保持層に、(E)片末端のみにアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物を含有させることができる。
さらに、前記エラストマー保持層に、補強性フィラーとして(F)ケイ素系表面処理剤で処理されたヒュームドシリカを含有させることができる。
そして、これらは特に、導電層を備えた基板を保持し、現像又はエッチング工程を含む導電パターン形成工程に好適に使用されるものである。
ここで、特許請求の範囲における基板としては、絶縁性の基材の少なくとも一面に導電層を備えた基板であり、ガラスエポキシ基材銅張り積層板、ポリイミド基材銅張り積層板、プラスチックフィルム基材にITO等の透明導電膜を設けた基板、ガラス基材に透明導電膜を設けた基板等が挙げられる。基板固定治具を構成する基材は、薄板の長方形、正方形、矩形、円形、多角形等、各種形状に形成され、剛性を有することが好ましく、レジスト膜の現像工程や導電層のエッチング工程、さらに残留レジスト膜の除去工程に使用される液剤に侵されないものを使用し、リフロー等の熱処理に耐えうる耐熱性を有するものが好ましい。
エラストマー保持層は、単数複数を問うものではなく、基材の一面、他面、両面の全部または一部に設けることができる。このエラストマー保持層は、電子部品との間の空気を排除し、空気の再浸入を規制することにより、密着保持する。
本発明によれば、エラストマー保持層として、(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有し、アルケニル基と付加反応可能な化合物、(C)付加反応触媒、(D)付加反応制御剤を含有する硬化物としたフッ素系のエラストマーとし、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬した際及び37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬した際の弾性率変化が±20%の範囲内であるフッ素系エラストマーを使用するので、導電パターン形成の各工程に使用される液剤に接触しても基板保持性能が劣化することなく、優れた繰り返し耐久性を有する基板固定冶具とすることができる。
また、前記エラストマー保持層に、(E)片末端のみにアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物を含有させることで、片末端のアルケニル基が硬化物に化学結合すると共に、結合していない長鎖により、粘着性を付与することができ、高い密着性を得ることができるとともに、このものは耐加水分解性に優れるため、導電パターン形成工程で使用される液剤での劣化を防止することができる。
さらに、エラストマー保持層に、補強性フィラーとして(F)ケイ素系表面処理剤で処理されたヒュームドシリカを含有させることで、エラストマー保持層の母材強度を向上させ、エラストマー保持層の破損を抑制し、破断した小さなエラストマー切片が電子部品に付着することを抑制することができると共に、湿式法により製造したシリカのようにNa等の不純物を含むことを抑制し、耐加水分解性を向上させると共に、未処理のヒュームドシリカを分散させるためのウェッターと呼ばれるオイル成分の添加が不要となり、オイル成分の変質、溶出等による基板保持性能の劣化を抑制することが可能となる。
本発明によれば、エラストマー保持層に耐酸性、耐アルカリ性を付与することで、導電パターン形成の各工程に使用される液剤に接触しても基板保持性能が劣化することなく、繰り返し耐久性に優れた基板固定治具を提供することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における基板固定治具は、図1ないし4に示すように表裏面が平坦な板状の基材1と、この基材1の表面の少なくとも一部に形成されるエラストマー保持層2とを備え、エラストマー保持層2上に、複数の基板3を着脱自在に配列搭載して固定するようにしている。
基材1は、0.5〜10mmの範囲の厚さを有する、表面を被覆した金属、プラスチック、繊維強化プラスチック、セラミック、ガラス又はこれらの複合材料を用いて剛性を有する平板に形成される。この基材1は、通常略矩形とされるが、多角形、円形、円形の一部を切り欠いた形等に形成される。基材1には、既に基板3上に設けられた補強板等の位置、形状に応じたザグリ、穴、基板3用の位置決め穴、基板固定治具自体を作業テーブルに位置合わせするための穴等が必要に応じて加工される。
基材1を構成する材料として、好ましくはガラス繊維強化エポキシ樹脂、ガラス、セラミックス、全表面をアルマイト処理したアルミ合金が良い。これは、これらが、耐熱性、耐熱変形性、加工性、耐酸性、耐アルカリ性に優れること、アルミニウム合金、ガラス繊維強化エポキシ樹脂の場合には軽量であること、ガラス、セラミックスの場合は面精度に優れるからである。
このエラストマー保持層2は、フッ素系のエラストマーを使用して所定の厚さを有する所定のパターンあるいは全面に形成され、複数の基板3を着脱自在に密着固定するよう機能する。このエラストマー保持層2は、基板3の導電層のパターン形成に使用される場合、パターン形成工程で使用される溶剤に耐えることが要求され、このため、、(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有し、アルケニル基と付加反応可能な化合物、(C)付加反応触媒、(D)付加反応制御剤を含有する硬化物としたフッ素系のエラストマーとし、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬した際及び37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬した際の弾性率変化が±20%の範囲内であるものが使用される。
ここでエラストマー保持層の弾性率は、例えば、島津製作所製ダイナミック超微小硬度計「DUH−W201S」によって測定される。微小硬度計を使用するのは、エラストマー保持層2の厚さが後述のごとく薄いためである。JIS等に定められる一般のゴム硬度計では薄いものでも1.5mm以上の試料厚さが求められ、エラストマー保持層2を剥がし取り積層して所定の厚さとする必要が生じ、この際、誤差を大きく含むため好ましくない。
エラストマー保持層2は、5〜1,000μm、好ましくは10〜500μmの厚さに形成される。エラストマー保持層2の厚さが、5〜1,000μmの範囲なのは、5μm未満の場合には、密着力が極端に低下して基板3等の電子部品を固定できなくなるからである。逆に、1,000μmを超える場合には、厚さ精度を保つことが困難となるからである。
エラストマー保持層2の基板3に対する密着力は、同じ組成であれば、エラストマー保持層2の表面が鏡面であるほど強くなり、粗面であるほど弱くなる。また、エラストマー保持層2は、厚くなると強くなり、薄くなると弱くなる。このため、密着力を意図的・部分的に調整する場合には、面粗度や厚さを調整すればよく、それ以外では均一に形成することが好ましい。具体的な密着強度としては、固定しようとする基板3の表面性、耐変形性等により適宜設定すれば良く、固定時は確実に密着し、取り外す際には基板3が破損、変形しないような強度に設定する。
このフッ素系エラストマーがエラストマー保持層2として使用される場合、主ポリマーである(A)成分は、主鎖が完全にフッ素され、非常に優れた耐酸、耐アルカリ性を有するとともに、シリコーンゴムのように平衡反応により合成されるのではなく、一方の不可逆反応により合成されるため、合成完了段階で低分子成分、オリゴマー成分を含まず、溶剤に対する耐性が優れ、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬した際及び37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬した際の弾性率変化を±20%の範囲内とすることが可能である。







また、エラストマー保持層2には、高い密着性を得る観点から、(E)片末端のみにアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物が選択的に含有される。また、補強性のフィラーとして、(F)ケイ素系表面処理剤で処理されたヒュームドシリカが選択的に含有される。
このようなエラストマー保持層2は、上記成分からなる硬化性組成物をスクリーン印刷、メタルマスク印刷、ディッピング、ドクターブレードコーティング、ナイフコーティング、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ディスペンス等の方法により、基材1の全面又は一部に塗布した後に硬化することにより形成するか、金型内で基材1上にコンプレッション、インジェクション等の方法で成形するか、あるいはカレンダー、押し出し、プレス等によりシート状に成形したものを基材1に貼着する方法により形成される。
(A)成分のパーフルオロ化合物は、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するとともに、主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有し、好ましくは25℃における粘度が25〜1,000,000mPa・sである直鎖状パーフルオロ化合物であり、このパーフルオロ化合物としては、例えば下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
ここで、Rfは、2価パーフルオロアルキレン基又は2価パーフルオロポリエーテル基であり、特に2価パーフルオロアルキレン基としては−CmF2m−(但し、m=1〜10、好ましくは2〜6である。)で示されるものが好ましく、2価パーフルオロポリエーテル基としては下記式で示されるものが好ましい。
式(1)中、Qは上述の一般式(2),(3)又は(4)で示される基であり、ここで、R1は水素原子又は置換又は非置換の1価炭化水素基であり、置換又は非置換の1価炭化水素基としては炭素数1〜12のものが好ましく、これらの基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基或いはこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子等で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等を挙げることができる。
3は置換又は非置換の2価炭化水素基であり、これは炭素数1〜10、特に2〜6のものが好適である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、へキサメチレン基等のアルキレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等のアリーレン基、或いはこれらの水素原子の一部をハロゲン原子で置換した基等を挙げることができる。なお、式(4)において、2個のR3は互いに同一でも異なっていてもよい。
4は結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子の1種又は2種以上を介在させてもよい置換又は非置換の2価炭化水素基、或いは、上記式(5)又は(6)で示される基である。
4の式(5)又は(6)で示される基において、R5の1価炭化水素基としては、R1で説明した置換又は非置換の1価炭化水素基と同様のものが挙げられる。また、R6の例として、置換又は非置換の2価炭化水素基が挙げられるが、これは炭素数1〜20、特に1〜10の2価炭化水素基が好適であり、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、へキサメチレン基等のアルキレン基、シクロへキシレン基等のシクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等のアリーレン基、これらの基の水素原子の一部をハロゲン原子等で置換した基、あるいはこれらの置換又は非置換のアルキレン基、アリーレン基の組み合わせ等が例示される。
また、R6の他の例として酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子の一種又は2種以上を主鎖構造中に含む2価の基が挙げられる。この場合、酸素原子は−O−、硫黄原子は−S−、窒素原子は−NR−(Rは水素原子又は炭素数1〜8、特に1〜6のアルキル基又はアリール基である)等として介在させることができる。また、ケイ素原子はオルガノシロキサンを含有する基、あるいはオルガノシリレン基として介在させることもでき、具体的には下記の基を例示することができる。
4の結合途中に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子及び硫黄原子の1種又は2種以上を介在させてもよい置換又は非置換の2価炭化水素基としては、R6で説明した置換又は非置換の2価炭化水素基及びこれに上記酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子介在基を介在させたものが示される。
上記式(2)、(3)、(4)により示される式(1)中のQとしては、以下の基が具体的に示される。なお、以下の式において、Meはメチル基、Phはフェニル基である。
式(1)においてaは0以上の整数、好ましくは0〜10、特に0〜6の整数である。したがって、式(1)の含フッ素化合物は1分子中に2価パーフルオロアルキレン基又は2価パーフルオロポリエーテル基を1個以上含むものである。
次に、Xは、下記に挙げるものである。
また、pは0又は1であり、式(1)のパーフルオロ化合物は両末端にビニル基、アリル基等を有するものである。
上記(A)成分の直鎖状パーフルオロ化合物は、25℃での粘度が25〜1,000,000mPa・sの範囲にあることが好ましく、特に100〜60,000mPa・sであることが好ましい。これは、粘度が係る範囲外であるときは満足する特性を有するゴム硬化物を形成することが困難になったり、作業性が低下したりするからである。
(B)成分の、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含むアルケニル基と付加反応可能な化合物としては、有機化合物中にヒドロシリル基を含有するもの、有機ケイ素化合物中にヒドロシリル基を含有するものでも良いが、分散性や耐熱性を考慮すると、以下の式(7)又は式(8)の化合物が好ましい。
Rf、X、pの具体例については、上記の通りであるが、式(7)、(8)におけるRf、X、pと式(1)におけるRf、X、pとは、同一であっても異なるものでも良い。
また、Zは式(9)で示される基であり、ここで、R2は置換又は非置換の1価炭化水素基である。R2の置換又は非置換の1価炭化水素基としては、炭素数1〜8のものが好ましい。
これらの基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基或いはこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子等で置換したクロロメチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等を挙げることができる。
bは、式(7)の化合物の場合は1、2、又は3であり、式(8)の化合物の場合には2又は3である。
(C)の付加反応触媒としては、白金族金属化合物が好ましい。この白金族金属化合物は一般的に貴金属の化合物であり、高価格であるが、比較的入手しやすい白金化合物が好適に用いられる。
白金化合物としては、例えば塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、白金/シリカ又はアルミナ又はカーボン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。白金化合物以外の白金族金属化合物としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物も知られており、例えばRhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、RhCl(C、Ru(CO)12、IrCl(CO)(PPh、Pd(PPh等が挙げられる。
これらの触媒の使用量は、特に制限されるものではなく、触媒量で所望とする硬化速度を得ることができるが、経済的観点又は良好な硬化物を得るためには、(A)、(B)成分及び、(E)成分の全量に対して0.1〜1,000ppm(白金族金属換算)、より好ましくは0.1〜500ppm程度の範囲が良い。上記付加反応の条件は適宜設定することができ、反応は室温で行ってもよいが、反応を速めるには50〜200℃に加熱して行うことが好ましい。
(D)の付加反応制御剤としては、組成物の硬化速度を制御する目的で加えるCH2=CH(R)SiO単位(式中、Rは水素原子又は置換もしくは非置換の1価炭化水素基である。)を含むポリシロキサン(特公昭48−10947号公報参照)、及びアセチレン化合物(米国特許第3445420号及び特公昭54−3774号公報参照)、さらに、重金属のイオン性化合物(米国特許第3532649号参照)等があげられる。
(E)の、片末端のみにアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物は、加熱前後の密着上昇を招くフリー成分を添加せずに、表面粘着性を付与する目的で添加されるものである。これは、以下の式(10)で示すものが挙げられる。
ここで式(10)中、X、Rf及びQは、上記式とは独立に上記説明と同様の基を示す。また、Rfは、アルケニル基以外の任意の基を示し、1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロポリエーテル基が好ましい。
上記成分(A)、(B)、(E)の割合は、(B)成分中のヒドロシリル基量/(A)及び(E)成分中のアルケニル基量が、モル比で1.0〜1.4、特に1.05〜1.2であることが好ましい。これは、モル比が1.0を下回る場合には、(A)又は(E)成分中、反応に寄与しない分子が存在することになり、これが密着保持性能を徐々に変化させる原因となり、基板固定治具として使用できなくなるからである。
なお、モル比1.05を下限とすれば、(A)又は(E)成分中、反応に寄与しない分子の存在割合をほぼ皆無とすることができる。
また、モル比が1.4を上回る場合には、(B)成分として硬化物中に固定されない分子の存在確立が高くなり、残留したヒドロシリル基が使用環境中でシラノール基に変化し、これがエラストマー保持層の物性の変化となり、経時密着特性に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
なお、モル比1.2を上限とすれば、全く固定されない(B)成分の分子をほぼ皆無にすることができ、しかも、エラストマー保持層の物性変化がほぼ影響のないレベルに抑えることができる。
エラストマー保持層2には、エラストマー保持層2の母材強度を向上させ、エラストマー保持層2の破損を抑制する目的で、補強性フィラーを添加することができる。この際、(F)ケイ素系表面処理剤で処理されたヒュームドシリカを選択することで、湿式法により製造したシリカのようにNa等の不純物を含むことを抑制することができ、優れた耐加水分解性を得ることができる。また、未処理のヒュームドシリカを分散させるためのウェッターと呼ばれるオイル成分の添加が不要となり、オイル成分の変質、溶出等による基板保持性能の劣化を抑制することが可能となる。
表面処理剤とヒュームドシリカの割合は、使用するヒュームドシリカの比表面積、及び、使用する表面処理剤の単位重さ当たりの処理面積から求めればよい。なお、既に表面処理がなされている市販の処理シリカを使用することも可能である。
(F)成分の配合量は、(A)〜(E)成分全量100質量部に対し、1〜100質量部とするのが良い。これは、1質量部未満では、(F)成分添加の効果をほとんど期待することができないからである。逆に、100質量部を超えると、加工性が著しく低下し、基板固定治具の製造に支障をきたすからである。
以下、本発明に係る基板固定治具の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1
基材として、厚さ1.1mm、縦150mm×横250mmの大きさを有するガラス板を準備した。
エラストマー保持層の材料として、以下の材料を準備した。
(A)成分
(B)成分
(C)成分:白金化合物触媒「Cat−PL50T」(信越化学工業社製、商品名)
(D)成分:エチニルシクロヘキサノールの50%トルエン溶液
(A)成分100質量部に対し、(D)成分0.4質量部、(B)成分3.34質量部、(C)成分0.2質量部を、30℃以下の温度に保ち、この順に撹拌しながら混合し、硬化性の組成物を得た。この組成物における、(B)成分中のヒドロシリル基量/(A)中のアルケニル基量は、モル比で1.1である。
上記組成物をガラス板からなる基材の片面の全面に、ロールコーターにより厚さ50μmとなるように塗布した。こうして組成物を基材に塗布したら、熱風式オーブン中で150℃、60分間の条件で一次硬化させ、200℃まで昇温して到達後4時間保持して二次硬化させ、その後、オーブンから取り出して冷却し、基板固定治具を製造した。
実施例2
実施例1の(A)〜(D)の各成分に加え、(E)成分として以下の化合物を添加した。この化合物のビニル基量は、0.0061モル/100gである。


配合割合は、(A)成分100質量部に対し、(E)成分100質量部、(D)成分0.8質量部、(B)成分4.91質量部、(C)成分0.3質量部とし、30℃以下の温度に保ち、この順に撹拌しながら混合し、硬化性の組成物を得た。この組成物における、(B)成分中のヒドロシリル基量/(A)及び(E)成分中のアルケニル基量は、モル比で1.1である。
こうして硬化性の組成物を得たら、この組成物を実施例1と同様にして基板固定治具を製造した。
実施例3
実施例2の組成物100質量部に対し、(F)成分として、ケイ素系表面処理剤で処理されたヒュームドシリカ[日本アエロジル株式会社製、商品名R972]を30質量部添加し、硬化性の組成物を得た。硬化性の組成物を得たら、この組成物を実施例1と同様にして基板固定治具を製造した。
実施例4
(A)成分100質量部に対し、(D)成分0.8質量部、(B)成分3.19質量部、(C)成分0.3質量部を、30℃以下の温度に保ち、この順に撹拌しながら混合し、硬化性の組成物を得た。硬化性の組成物を得たら、この組成物を実施例1と同様にして基板固定治具を製造した。
実施例5
(A)成分100質量部に対し、(E)成分100質量部、(D)成分0.8質量部、(B)成分4.55質量部、(C)成分0.3質量部を、30℃以下の温度に保ち、この順に撹拌しながら混合し、硬化性の組成物を得た。硬化性の組成物を得たら、この組成物を実施例1と同様にして基板固定治具を製造した。
実施例6
(A)成分100質量部に対し、(E)成分100質量部、(D)成分0.8質量部、(B)成分4.46質量部、(C)成分0.3質量部を、30℃以下の温度に保ち、この順に撹拌しながら混合し、硬化性の組成物を得た。硬化性の組成物を得たら、この組成物を実施例1と同様にして基板固定治具を製造した。
比較例
硬化性の組成物として、信越化学工業製、二液型RTVゴム「KE−1216」100質量部に対し、硬化剤として、信越化学工業製「Cat−RQ」を4質量部加えたものを使用した。この組成物を実施例1と同様にして基板固定治具を製造した。
実施例1〜6、比較例の基板固定治具について、初期弾性率、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬した後及び37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬した後の弾性率を、島津製作所製ダイナミック超微小硬度計「DUH−W201S」を用いて、次の測定条件にて測定した。
圧子:三角錐圧子(稜間の角115°、ベルコビッチタイプ)
試験力:1.0mN
評価
次に、実施例1〜6、比較例の基板固定治具について、初期密着強度を、JIS Z 0237に規定される90°引き剥がし法により、厚さ25μmのポリイミドを貼り付けて引き剥がし、測定した。
次いで、厚さ25μmのポリイミド基材片面銅張り積層基板をそれぞれの基板固定治具に銅箔面を外側になるように固定し、ニチゴーモートン製ドライフィルムレジスト「NIT−215」を、基板固定時治具ごと基板の銅箔面にラミネートした。マスクを介して紫外線照射することにより導電パターン部分のレジスト膜を不溶化した後、1%の炭酸ナトリウム水溶液にてスプレー現像し、洗浄した。塩化第二鉄の20%水溶液(50℃)をスプレーして銅箔の露出部分をエッチング除去した後、水酸化ナトリウムの2%水溶液に浸漬して導電パターン上に残留したレジスト膜を除去し、洗浄して導電パターン形成を行った。最後に基板固定治具から導電パターンを形成した配線板を取り外し、1回の導電パターン形成工程を終了した。
この導電パターン形成工程を500回繰り返し、密着強度を上述の方法に従って測定した。なお、比較例においては基板を保持することができなくなった時点で繰り返し試験を終了し、密着強度測定を行った。
実施例、比較例のエラストマー保持層の硬化性組成物の配合、弾性率測定結果、密着強度評価結果を表1にまとめた。比較例の配合は実施例とは異なるため、「−」と表記した。
ポリイミドフィルムの初期密着強度は、実施例1、4と比較し、実施例2、3では(E)成分の添加により粘着性が増し、高い保持性能を得た。さらに、実施例5、6では、架橋剤の比率を調整することでより高い密着強度を得た。固定する基板の種類、寸法、形状等に応じ、密着性の程度は適宜選択することが可能である。
実施例1〜6においては、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬した際及び37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬した際の弾性率はほとんど変化せず、導電パターン形成工程に使用した後も密着強度の変化はほとんどなく、優れた耐久性を示した。
これに対し、比較例においては、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬、及び、37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬によりエラストマー保持層は分解を生じ、大きな弾性率変化を示し、導電パターン形成工程に使用した場合、実際は20回程度で現像、エッチング中に基板の脱落を生じ、50回程度で完全に基板の固定ができなくなった。
本発明に係る基板固定治具の実施形態における基板を固定した状態を示す平面模式図である。 本発明に係る基板固定治具の実施形態における基板を固定した状態を示す側面模式図である。 本発明に係る基板固定治具の実施形を示す平面模式図である。 本発明に係る基板固定治具の実施形を示す側面模式図である。
符号の説明
1 基材
2 エラストマー保持層
3 基板

Claims (4)

  1. 基板を着脱自在に保持する基板固定冶具であって、基材と、この基材の一面の少なくとも一部に設けられるエラストマー保持層とを含み、該エラストマー保持層が、(A)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有し、アルケニル基と付加反応可能な化合物、(C)付加反応触媒、(D)付加反応制御剤を含有する硬化物としたフッ素系のエラストマーとし、40%水酸化ナトリウム水溶液に40℃で7日間浸漬した際及び37%塩酸水溶液に40℃で7日間浸漬した際の弾性率変化が±20%の範囲内であることを特徴とする基板固定冶具。
  2. 前記エラストマー保持層に、(E)片末端のみにアルケニル基を有し、かつ主鎖中に2価パーフルオロアルキレン又は2価パーフルオロポリエーテル構造を有するパーフルオロ化合物を含有させた請求項1記載の基板固定冶具。
  3. 前記エラストマー保持層に、補強性フィラーとして(F)ケイ素系表面処理剤で処理されたヒュームドシリカを含有させた請求項1又は2記載の基板固定冶具。
  4. 前記基板固定冶具が、導電層を備えた基板を保持し、現像又はエッチング工程を含む導電パターン形成工程に使用されるものであることを特徴とする請求項1ないし3に記載の基板固定冶具。
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