JP4381732B2 - 電気掃除機の吸込具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸込口に回転清掃体を備えた電気掃除機の吸込具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の電気掃除機の吸込具に用いられる回転清掃体は、底面の吸込口に面して配置される回転軸と、この回転軸の外周上に軸方向に延長して設けられる清掃体とから形成される。
そして、このようなものにおいて、清掃体を3層のブラシ列から構成し、清掃体厚み方向中央に位置するブラシ列すなわち弾性材を、清掃体厚み方向両端に位置するブラシ列すなわち弾性材に比較して硬質の弾性材から構成したり、これに加えて前記両端に位置する弾性材の高さを、前記中央に位置する弾性材の高さに比較して高くすることで、床や畳の掃除においては、前記両端に位置する柔らかい弾性材が床面等に接し、前記中央に位置する比較的硬質の弾性材が接しにくいようにし、絨毯の掃除においては、前記両端に位置する柔らかい弾性材が、前記中央に位置する硬質の弾性材に支持されて極端に曲がることがなく、絨毯面に絡みついたゴミや糸屑を十分に掻き出すことができるようにして、床や畳の掃除においても、また絨毯の掃除においても、被掃除面を傷つけることなく、常に良好な掃除状態を維持できるようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、清掃体を、長尺の繊維束を蛇行状に折曲した所定幅の帯板状体の両側縁部に紐状の取付用部材を縫付、編込、接着等の手段で各々固着させて構成し、かつその幅方向の中央付近で折り返し、前記両側縁部の取付用部材を各々回転軸の外周に設けた複数条の支持溝内に挿入固定することにより、清掃体の自由端にループパイル部を形成して、清掃体に繊維ごみ等がからみつくのを防止するようにしたものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、清掃体をブレードから構成し、そのブレードの側面に多数の突起を形成し、あるいはそのブレードの側面にその長手方向に延びる複数の突条を形成して、集塵性能を向上させるようにしたものが提案されている(例えば特許文献3および特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平7−59689号公報
【特許文献2】
特開2002−517号公報
【特許文献3】
実開平3−84056号公報
【特許文献4】
特開平5−49565号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、回転清掃体の清掃体が3層のブラシ列からなるものにあっては、回転清掃体を一方向にしか回転しない通常タイプ(電気掃除機の吸込具の回転清掃体の多くは一方向にしか回転しない)のものに使用した場合、清掃体の回転方向前方に位置するブラシ列(弾性材)は、そのバックアップとして作用する清掃体中央部の硬質なブラシ列(弾性材)により床面に押し付けられ、塵埃除去に寄与するが、回転方向後方に位置するブラシ列(弾性材)は、中央部の硬質なブラシ列(弾性材)で床面に押し付けられることはなく、塵埃除去にあまり寄与しない。
【0007】
また、このような3層構造の清掃体を有する回転清掃体の製造は、まず清掃体厚み方向両端に位置する2列のブラシ列と清掃体厚み方向中央に位置する1列のブラシ列を基台上に形成して、計3列のブラシ列からなる一つの清掃体を製作し、このような清掃体を複数製作し、その後、これら清掃体を回転軸に取り付けることにより行われる。このため、製造工程が複雑で、コスト高を招いていた。
【0008】
更に、清掃体を、長尺の繊維束をその幅方向中央で折り返してなるループパイルから構成したものにあっては、髪の毛等の繊維ごみを絡みつき難くすることはできるが、ループパイルをバックアップして床面に押し付ける手段が存在しないため、集塵性能はさほど向上しない。
【0009】
更にまた、清掃体をブレードから構成し、そのブレードの側面に多数の突起や長手方向に延びる複数の突条を形成したものにあっては、絨毯上の糸、毛などの除去性能を向上させることはできるが、一般家庭の床面に多く存在する土埃、花粉、小麦粉・片栗粉などの食材の飛散物等、粒径40μm以下の微細塵埃に対する除去性能は十分ではなかった。この微細塵埃に対する問題は、前述の各従来例においても存在していた。
【0010】
また、いずれの従来例においても、清掃体に塵埃を付着し難くする、あるいは清掃体に付着した塵埃を剥離・放出させるための配慮がなされていなかった。
【0011】
本発明は、叙上の点に鑑み、比較的大きな塵埃はもちろんのこと、微細な塵埃に対しても除去性能が高く、除去した塵埃の床面への再付着もなく、かつ製造コストを削減することのできる安価な電気掃除機の吸込具を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電気掃除機の吸込具は、下記の構成からなるものである。すなわち、底面に吸込口を有する吸込具本体に、吸込口に臨ませて回転清掃体を設けた電気掃除機の吸込具において、回転清掃体は、回転軸と、回転軸の外周上に軸方向に延長して配設された清掃体とを有し、清掃体は、ループ状繊維の束と、ループ状繊維の束のループ内に弛みのある状態で覆われ配置された弾性体とから構成し、吸込具本体の前縁部には、クリーニング用のエアスリットを設けて、エアスリットから吸引された気流が清掃体に吹き付けられるようにして、ループ状繊維の束が床面から離れエアスリットの近傍を通過するときに前記吹き付け気流の圧力によりばらけるように構成したものである。
【0013】
本発明の電気掃除機の吸込具のように、回転軸の外周上に軸方向に延長して配設される清掃体を、ループ状繊維の束と、ループ状繊維の束のループ内に弛みのある状態で覆われ配置された弾性体とから構成することで、ループ状繊維の束を、バックアップ機能をもつ弾性体により押さえつけながら床面と接触させることができる。このため、床面への押し付け力が増し、塵埃除去時の乗り越え(かすり)を減らすことができ、塵埃除去性能を高めることができる。また、回転に伴って床面から離れたループ状繊維の束は、弛んだ状態となり、繊維間に保持された塵埃が放出されるとともに、繊維に付着している塵埃も剥がれやすくなる。さらに、吸込具本体の前縁部に設けたクリーニング用のエアスリットから吸引された気流が清掃体に吹き付けられるようにして、ループ状繊維の束が床面から離れエアスリットの近傍を通過するときに吹き付け気流の圧力によりばらけるように構成することにより、ループ状繊維間に保持された塵埃を放出することができるとともに、ループ状繊維の束に付着していた塵埃も剥がれ易くすることができる。さらにまた、吸込口からの吸引気流による吹き付け効果と相俟って清掃体をクリーニングすることができ、微細塵埃などが床面に再付着することを抑制でき、塵埃除去性能を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施形態1.
図1は第1実施形態に係る電気掃除機の吸込具の外観を示す上面図、図2はその上面断面図、図3はその側面断面図、図4はその要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図、図5はその清掃体の除塵動作の説明図である。
【0015】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、吸込具本体1の後方に接続パイプ2が設けられ、ホース(図示せず)を介して電気掃除機本体(図示せず)に接続されるようになっている。吸込具本体1の前縁部にはブラシクリーニング用のエアスリット11が、またその底部には吸込口3が設けられているとともに、吸込口3に臨ませて単一方向(図4の矢印方向)回転のみ可能に回転清掃体4が設けられている。
【0016】
回転清掃体4は、回転軸41と、回転軸41の外周上に等間隔毎に配置されて軸方向に延長して設置された複数(ここでは4つ)の清掃体42とを有している。各清掃体42は、それぞれ基台421に植設された回転方向前後2層のブラシ列422,423からなり、このうち回転方向前側に位置するブラシ列422は、繊維径30μm以下の曲げ弾性の弱い繊維で構成され、また回転方向後ろ側に位置するブラシ列423は、前列より太い繊維径(例えば100μm程度)からなる曲げ弾性の強い繊維で構成されている。更に、曲げ弾性の弱いブラシ列422を構成する繊維と曲げ弾性の強いブラシ列423を構成する繊維は、いずれも表面エネルギの低い素材、例えばフッ素系樹脂でコーティングしたもの、または繊維そのものがフッ素系樹脂でできたものを使用しており、清掃体42は、回転軸41に設けられた溝411に基台421を挿入することで固定されるようになっている。
【0017】
また、回転清掃体4には、図3のように駆動源(モータ)5からベルト6、回転軸プーリ43を介して駆動力が伝達されるようになっていて、回転清掃体4の回転によって清掃体42が床面9と接触することにより、床面9の塵埃が除去され、除去された塵埃は吸引気流により吸込具内風路12を経て接続パイプ2から電気掃除機本体へ輸送されるようになっている。なお、吸込具本体1には前車輪7と後車輪8が設けられている。
【0018】
以上の構成を有する本実施形態の電気掃除機の吸込具において、回転清掃体4が回転すると、図5のように細い繊維径からなる曲げ弾性の弱いブラシ列422が、太い繊維径からなる曲げ弾性の強いブラシ列423により押さえつけられながら床面9と接触する。このため、比較的大きな塵埃はもちろんのこと、土埃、花粉、小麦粉・片栗粉などの食材の飛散物等、粒径40μm以下の粒子からなる微細塵埃10も除去することができる。
【0019】
すなわち、従来使用されているこの種のブラシ繊維は、前述の曲げ弾性の強いブラシ列423等で使用されるような繊維径100μm程度のものが殆どであり、微細塵埃10をブラシ繊維が乗り越えて(かすって)しまい、うまく除去できなかったのに対し、本実施形態においては曲げ弾性の弱いブラシ列422として微細塵埃10の粒径に近い繊維径φ30μm以下のものを使用しているので、除去時の乗り越え(かすり)が低減され、塵埃除去性能が高まる。
【0020】
また、曲げ弾性の弱いブラシ列422のみでは床面への押し付け圧力が弱く、除去時に微細塵埃10を乗り越えて(かすって)しまい、うまく除去されない場合があるが、本実施形態のように曲げ弾性の弱いブラシ列422を、曲げ弾性の強いブラシ列423によって後方から押さえつけながら微細塵埃10を除去することにより、床面9への押し付け力が増し、塵埃除去時の乗り越え(かすり)を減らすことができ、塵埃除去性能を高めることができる。
【0021】
更に、3層ブラシ列からなる従来の複雑で高価な清掃体に対し、本実施形態の清掃体は2層のブラシ列422,423からなるため、製造工程が簡素化され、製造が容易となって、製造コストを削減することができる。また、例えば従来の3層ブラシ列方式のものにおける最後列のブラシ列を前側に配置して本実施形態のような2層ブラシ列方式とすれば、同量(同じ厚み)のブラシでより高い除塵性能を得ることができる。
【0022】
また、各ブラシ列422,423を構成するブラシ繊維を、いずれも表面エネルギの低いフッ素系樹脂等の素材でコーティングし、またはブラシ繊維そのものがフッ素系樹脂等の素材でできたものを使用しているので、その防汚効果によりブラシ繊維表面に微細塵埃10が付着し難く、また例え付着しても剥離し易く、吸引気流に放出され易い。このため、床面9から除去された微細塵埃10が床面9に再付着することが抑制され、除去性能が向上する。なお、フッ素系コーティングを施したブラシ繊維を使用する場合は、ブラシ繊維そのものの素材を自由に選べるので、曲げ弾性の最適化による塵埃除去性能のさらなる向上が図れる。また、ブラシ繊維そのものがフッ素系樹脂からなる場合は、コーティングのような摩耗・剥離がなく、長期的に防汚機能が得られる。
【0023】
また、図3のように回転清掃体4が回転時に清掃体42が床面9をはなれ、吸込具本体1の前縁部に設けられたエアスリット11の近傍を通過するとき、エアスリット11から吸引された気流が清掃体42に吹き付けられる。このときの吹き付け気流の圧力により、曲げ弾性の弱いブラシ列422や曲げ弾性の強いブラシ列423を構成するブラシ繊維はばらけて、ブラシ繊維間に保持された塵埃が放出されるとともに、ブラシ繊維に付着していた塵埃も剥がれ易くなる。さらに吸込口3からの吸引気流による吹き付け効果と相俟って清掃体42がクリーニングされ、微細塵埃10などが床面9に再付着することが抑制され、塵埃除去性能が向上する。この吸引気流の吹き付けによるクリーニング効果は、前述のフッ素系樹脂による防汚効果と相俟ってより高められ、塵埃除去性能のさらなる向上が期待できる。
【0024】
実施形態2.
図6は第2実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図であり、図中、前述の第1実施形態のものと同一部分には同一符号を付してある。なお、説明にあたっては前述の図1、図3、及び図5を参照するものとする。
【0025】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、回転方向後側に位置するブラシ列423Aのブラシ繊維の毛足の長さを、回転方向前側に位置するブラシ列422のブラシ繊維の毛足の長さよりも短くなるように設定した点に特徴を有し、それ以外のブラシ繊維径やフッ素系コーティングあるいは材質等の構成およびそれによる作用は前述の第1実施形態のものと全て同一であり、第1実施形態のもつ機能を全て備えている。
【0026】
本実施形態の電気掃除機の吸込具のように、曲げ弾性の強い回転方向後ろ側のブラシ列423Aの毛足の長さを、曲げ弾性の弱い回転方向前側のブラシ列422の毛足よりも短く調整することにより、回転清掃体4が回転したときの微細塵埃10の除去に関する作用、塵埃除去性能は前述の第1実施形態のものと同様に高めることができる。つまり、曲げ弾性の強い回転方向後ろ側のブラシ列423Aが、曲げ弾性の弱い回転方向前側のブラシ列422のバックアップとして働き、回転方向前側のブラシ列422は、回転方向後ろ側のブラシ列423Aによって押さえつけられながら床面9と接触する。このため、比較的大きな塵埃はもちろんのこと、土埃、花粉、小麦粉・片栗粉などの食材の飛散物等、粒径40μm以下の粒子からなる微細塵埃10も除去することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、回転清掃体4の回転時の床面9との摩擦抵抗が調節可能となり、回転清掃体4の回転数が調整でき、塵埃除去性能に優位な回転数の設定が可能となる。このため、塵埃除去性能をさらに高めることができる。さらに、曲げ弾性の強いブラシ列423Aの毛足を短く調整することで、曲げ弾性の弱い回転方向前側のブラシ列422の床面への押し付け圧力・接触具合も調整可能となり、押し付け圧力が高くなりすぎることによる回転数の低下等を防止できる。このため、塵埃除去性能が高まるように押し付け圧力と回転数を最適化することにより、塵埃除去性能を高めることができる。
【0028】
実施形態3.
図7は本発明に係る第3実施形態の電気掃除機の吸込具の一実施例の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図であり、図中、前述の第1実施形態のものと同一部分には同一符号を付してある。なお、ここでも説明にあたっては前述の図1、図3、及び図5を参照するものとする。
【0029】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、回転清掃体4が、回転軸41と、回転軸41の外周上に等間隔毎に配置されて軸方向に延長して設置された複数(ここでも4つ)の清掃体42とを有している。各清掃体42は、それぞれ基台421の回転方向中央部に植設された弾性体424と、弾性体424を覆うように設けられて、両端が基台421における回転方向前側と後ろ側すなわち弾性体424の前後に植設された繊維径30μm以下のループ状繊維425とから構成されている。また、ループ状繊維425を構成する繊維は、表面エネルギの低い素材、例えばフッ素系樹脂でコーティングしたもの、または繊維そのものがフッ素系樹脂でできたものを使用しており、清掃体42は、回転軸41に設けられた溝411に基台421を挿入することで固定されるようになっている。
【0030】
すなわち、ループ状繊維425は、弾性体424を締め付けるのではなく、弾性体424をある程度弛みのある状態でループ状に覆い、両端が基台421に植設されている。なお、ここではループ状繊維425が回転軸41の軸方向に垂直な面内でループを形成しているものを例に挙げて説明しているが、ループ形状はこれに限らず、螺旋状ループや複数のループが交差するようなループ形状など種々の形態のものが採用可能である。要するに、弾性体424を弛みのある状態で覆うようなループ形状であればよい。それ以外の構成は前述の第1実施形態のものと同様である。
【0031】
このように構成された本実施形態の電気掃除機の吸込具において、回転清掃体4が回転すると、前述の第1実施形態のものと同様に、微細塵埃10の粒径に近い繊維径30μm以下の繊維からなるループ状繊維425が、バックアップ機能をもつ弾性体424に押さえつけられながら床面9と接触する。このため、床面9への押し付け力が増し、塵埃除去時の乗り越え(かすり)を減らすことができ、塵埃除去性能を高めることができる。
【0032】
また、回転に伴って床面9から離れたループ状繊維425は、弛んだ状態となり、繊維間に保持された塵埃が放出されるとともに、繊維に付着している塵埃も剥がれやすくなる。さらに、エアスリット11の近傍を通過するとき、エアスリット11から吸引された気流がループ状繊維425に吹き付けられる。このときの吹き付け気流の圧力により、繊維径30μm以下のループ状繊維425は捌けて、ループ状繊維間に保持された塵埃が放出されるとともに、ブラシ繊維に付着していた塵埃も剥がれ易くなる。さらに吸込口3からの吸引気流による吹き付け効果と相俟ってループ状繊維425がクリーニングされ、微細塵埃10などが床面9に再付着することが抑制され、塵埃除去性能が向上する。この吸引気流の吹き付けによるクリーニング効果は、前述のフッ素系樹脂による防汚効果との相乗効果によりさらに高められ、塵埃除去性能の一層の向上が期待できる。
【0033】
実施形態4.
図8は本発明に係る第4実施形態の電気掃除機の吸込具の他の実施例の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図であり、図中、前述の第3実施形態のものと同一部分には同一符号を付してある。なお、ここでも説明にあたっては前述の図1、図3、及び図5を参照するものとする。
【0034】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、回転清掃体4が、回転軸41と、回転軸41の外周上に等間隔毎に配置されて軸方向に延長して設置された複数(ここでも4つ)の清掃体42とを有している。各清掃体42は、それぞれ基台421の回転方向中央部に植設された弾性体424と、弾性体424の先端部を覆うように設けられて、両端が弾性体424の前後面に植設された繊維径30μm以下の繊維からなるループ状繊維425Aとから構成されている。また、ループ状繊維425Aを構成する繊維は、表面エネルギの低い素材、例えばフッ素系樹脂でコーティングしたもの、または繊維そのものがフッ素系樹脂でできたものを使用しており、清掃体42は、回転軸41に設けられた溝411に基台421を挿入することで固定されるようになっている。
【0035】
すなわち、ループ状繊維425Aは、弾性体424の先端部を締め付けるのではなく、弾性体424の先端部をある程度弛みのある状態でループ状に覆い、両端が弾性体424の高さ方向中間部の前後面に植設されている。なお、ここでもループ状繊維425Aが回転軸41の軸方向に垂直な面内でループを形成しているものを例に挙げて説明しているが、ループ形状はこれに限らず、螺旋状ループや複数のループが交差するようなループ形状など種々の形態のものが採用可能である。要するに、弾性体424の先端部を弛みのある状態で覆うようなループ形状であればよい。それ以外の構成は前述の第3実施形態のものと同様であり、第3実施形態のもつ機能を全て備えている。
【0036】
このように構成された本実施形態の電気掃除機の吸込具において、回転清掃体4が回転すると、前述の第1実施形態のものと同様に、微細塵埃10の粒径に近い繊維径30μm以下の繊維からなるループ状繊維425Aが、バックアップ機能をもつ弾性体424に押さえつけられながら床面9と接触する。このため、床面9への押し付け力が増し、塵埃除去時の乗り越え(かすり)を減らすことができ、塵埃除去性能を高めることができる。
【0037】
また、回転に伴って床面9から離れたループ状繊維425Aは、弛んだ状態となり、繊維間に保持された塵埃が放出されるとともに、繊維に付着している塵埃も剥がれやすくなる。さらに、エアスリット11の近傍を通過するとき、エアスリット11から吸引された気流がループ状繊維425Aに吹き付けられる。このときの吹き付け気流の圧力により、繊維径30μm以下のループ状繊維425Aは捌けて、ループ状繊維間に保持された塵埃が放出されるとともに、ブラシ繊維に付着していた塵埃も剥がれ易くなる。さらに吸込口3からの吸引気流による吹き付け効果と相俟ってループ状繊維425Aがクリーニングされ、微細塵埃10などが床面9に再付着することが抑制され、塵埃除去性能が向上する。この吸引気流の吹き付けによるクリーニング効果は、前述のフッ素系樹脂による防汚効果との相乗効果によりさらに高められ、塵埃除去性能の一層の向上が期待できる。
【0038】
また、本実施形態のループ状繊維425Aは、前述の第3実施形態のループ状繊維425に比べ繊維長さが短くてよく、その分、材料費が安くつき、製造コストを削減することができる。
【0039】
実施形態5.
図9は第5実施形態の電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図、図10はその回転清掃体を構成するブラシ繊維を拡大して先端側より示す斜視図であり、各図中、前述の第1実施形態のものと同一部分には同一符号を付してある。なお、ここでも説明にあたっては前述の図1、図3、及び図5を参照するものとする。
【0040】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、回転清掃体4が、回転軸41と、回転軸41の外周上に等間隔毎に配置されて軸方向に延長して設置された複数(ここでも4つ)の清掃体42とを有している。各清掃体42は、それぞれ基台421に植設された先端多毛ブラシ繊維426でなるブラシ列から構成されている。すなわち、先端多毛ブラシ繊維426は、図10のようにその先端側が複数繊維426a、根元側が単一繊維(モノフィラメントまたは撚りあわされた繊維)426bからなり、根元側の繊維径が先端側の繊維径よりも太くなっている。また、先端多毛ブラシ繊維426は、表面エネルギの低い素材、例えばフッ素系樹脂でコーティングしたもの、または繊維そのものがフッ素系樹脂でできたものを使用しており、清掃体42は、回転軸41に設けられた溝411に基台421を挿入することで固定されるようになっている。それ以外の構成は前述の第1実施形態のものと同様である。
【0041】
このように構成された本実施形態の電気掃除機の吸込具において、回転清掃体4が回転すると、先端側の複数繊維426aが根元側の単一繊維426bに押し付けられた状態で床面9と接触する。このため、床面9への押し付け力が増し、微細塵埃10の乗り越え(かすり)を減らすことができ、塵埃除去性能を高めることができる。
【0042】
また、清掃体42は先端多毛ブラシ繊維426の1種類(単層)のみを基台421に植設するだけでよく、製造工程が簡素となり、製造コストを削減することができる。
【0043】
また、先端多毛ブラシ繊維426を表面エネルギの低いフッ素系樹脂等の素材でコーティングし、または先端多毛ブラシ繊維426そのものがフッ素系樹脂等の素材でできたものを使用しているので、その防汚効果によりブラシ繊維表面に微細塵埃10が付着し難く、また例え付着しても剥離し易く、吸引気流に放出され易い。このため、床面9から除去された微細塵埃10が床面9に再付着することが抑制され、塵埃除去性能が向上する。
【0044】
実施形態6.
図11は第6実施形態の電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維の一例を拡大して先端側より示す斜視図、図12はそのブラシ繊維の他の例を拡大して先端側より示す斜視図である。なお、ここでは説明にあたって前述の図1、図3、図5、及び図9を参照するものとする。
【0045】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、清掃体42の基台421に植設されるブラシ繊維として、前述の第5実施形態の先端多毛ブラシ繊維426に代えて、図11のように断面が多角形(ここでは5角形)のブラシ繊維427、または図12のように断面が凹多角形(ここでは十字形)のブラシ繊維428を用いた点に特徴を有し、それ以外のフッ素系コーティングあるいは材質等の構成は前述の第5実施形態のものと全て同一である。
【0046】
このように構成された本実施形態の電気掃除機の吸込具において、回転清掃体4が回転すると、多角形ブラシ繊維427(又は凹多角形ブラシ繊維428)が床面9に接触し、この多角形ブラシ繊維427(又は凹多角形ブラシ繊維428)の弾性によってその表面が床面9に押し付けられる。このとき、多角形ブラシ繊維427(又は凹多角形ブラシ繊維428)の表面の多角形コーナーエッジ部分に圧力が集中し、押し付け圧力が部分的に高まり、床面9から微細塵埃10を効率よく剥離させることができる。このため、塵埃除去性能が向上する。
【0047】
また、多角形ブラシ繊維427(又は凹多角形ブラシ繊維428)を表面エネルギの低いフッ素系樹脂等の素材でコーティングし、または多角形ブラシ繊維427(又は凹多角形ブラシ繊維428)そのものをフッ素系樹脂等の素材でできたものを使用することで、その防汚効果によりブラシ繊維表面に微細塵埃10が付着し難くすることができ、また例え付着しても剥離し易く、吸引気流に放出され易くすることができる。このため、床面9から除去された微細塵埃10が床面9に再付着することが抑制され、塵埃除去性能が向上する。
【0048】
なお、ここでは多角形ブラシ繊維427として断面が5角形のものを、また凹多角形ブラシ繊維428として断面が十字形のものを、それぞれ例に挙げて説明したが、これらの角数を増減させた断面形状のものを採用することもでき、この場合でも本実施形態のものと同等の作用、効果を奏する。
【0049】
実施形態7.
図13は第7実施形態の電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維の一例を拡大して先端側より示す斜視図、図14はそのブラシ繊維の他の例を拡大して先端側より示す斜視図である。なお、ここでも説明にあたって前述の図1、図3、図5、及び図9を参照するものとする。
【0050】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、清掃体42の基台421に植設されるブラシ繊維として、前述の第5実施形態の先端多毛ブラシ繊維426に代えて、図13のように表面に各種形状の凸部429a,429b,429c…が形成された凸部付きブラシ繊維429、または図14のように表面に突起物430aが形成された突起物付きブラシ繊維430を用いた点に特徴を有し、それ以外のフッ素系コーティングあるいは材質等の構成は前述の第5実施形態のものと全て同一である。
【0051】
このように構成された本実施形態の電気掃除機の吸込具において、回転清掃体4が回転すると、凸部付きブラシ繊維429(突起物付きブラシ繊維430)が床面9に接触し、この凸部付きブラシ繊維429(突起物付きブラシ繊維430)の弾性によってその表面が床面9に押し付けられる。このとき、凸部付きブラシ繊維429の表面の凸部429a,429b,429c…(突起物付きブラシ繊維430の表面の突起物430a)に圧力が集中し、押し付け圧力が部分的に高まり、床面9から微細塵埃10を効率よく剥離させることができる。このため、塵埃除去性能が向上する。
【0052】
また、凸部付きブラシ繊維429(突起物付きブラシ繊維430)を表面エネルギの低いフッ素系樹脂等の素材でコーティングし、または凸部付きブラシ繊維429(突起物付きブラシ繊維430)そのものをフッ素系樹脂等の素材でできたものを使用することで、その防汚効果によりブラシ繊維表面に微細塵埃10が付着し難くすることができ、また例え付着しても剥離し易く、吸引気流に放出され易くすることができる。このため、床面9から除去された微細塵埃10が床面9に再付着することが抑制され、塵埃除去性能が向上する。
【0053】
実施形態8.
図15は第8実施形態の電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維を拡大して先端側より示す斜視図である。なお、ここでも説明にあたって前述の図1、図3、図5、及び図9を参照するものとする。
【0054】
本実施形態の電気掃除機の吸込具は、清掃体42の基台421に植設されるブラシ繊維として、前述の第5実施形態の先端多毛ブラシ繊維426に代えて、図15のように表面に各種形状の凹部431a,431b,431c,431d…が形成された凹部付きブラシ繊維431を用いた点に特徴を有し、それ以外のフッ素系コーティングあるいは材質等の構成は前述の第5実施形態のものと全て同一である。
【0055】
このように構成された本実施形態の電気掃除機の吸込具において、回転清掃体4が回転すると、凹部付きブラシ繊維431が床面9に接触し、この凹部付きブラシ繊維431の弾性によってその表面が床面9に押し付けられる。このとき、凹部付きブラシ繊維431の表面と凹部431a,431b,431c,431d…のエッジ部分に圧力が集中し、押し付け圧力が部分的に高まり、床面9から微細塵埃10を効率よく剥離させることができる。このため、塵埃除去性能が向上する。
【0056】
また、凹部付きブラシ繊維431を表面エネルギの低いフッ素系樹脂等の素材でコーティングし、または凹部付きブラシ繊維431そのものをフッ素系樹脂等の素材でできたものを使用することで、その防汚効果によりブラシ繊維表面に微細塵埃10が付着し難くすることができ、また例え付着しても剥離し易く、吸引気流に放出され易くすることができる。このため、床面9から除去された微細塵埃10が床面9に再付着することが抑制され、塵埃除去性能が向上する。
【0057】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、回転軸の外周上に軸方向に延長して配設される清掃体を、ループ状繊維の束と、ループ状繊維の束のループ内に弛みのある状態で覆われ配置された弾性体とから構成し、吸込具本体の前縁部には、クリーニング用のエアスリットを設けて、エアスリットから吸引された気流が清掃体に吹き付けられるようにして、ループ状繊維の束が床面から離れエアスリットの近傍を通過するときに前記吹き付け気流の圧力によりばらけるように構成したので、ループ状繊維の束を、バックアップ機能をもつ弾性体により押さえつけながら床面と接触させることが可能となり、床面への押し付け力が増して、塵埃除去時の乗り越え(かすり)を減らすことができ、塵埃除去性能を高めることができた。また、回転に伴って床面から離れたループ状繊維の束は、弛んだ状態となり、ループ状繊維間に保持された塵埃を放出することができ、ループ状繊維の束に付着していた塵埃も剥がれ易くすることができた。さらに吸込口からの吸引気流による吹き付け効果と相俟って清掃体をクリーニングすることができ、微細塵埃などが床面に再付着することを抑制でき、塵埃除去性能を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態に係る電気掃除機の吸込具の外観を示す上面図である。
【図2】 第1実施形態に係る電気掃除機の吸込具の上面断面図である。
【図3】 第1実施形態に係る電気掃除機の吸込具の側面断面図である。
【図4】 第1実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図である。
【図5】 第1実施形態に係る電気掃除機の吸込具の清掃体の除塵動作の説明図である。
【図6】 第2実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図である。
【図7】 本発明に係る第3実施形態の電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図である。
【図8】 本発明に係る第4実施形態の電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図である。
【図9】 第5実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を拡大して示す側面断面図である。
【図10】 第5実施形態に係る電気掃除機の吸込具の回転清掃体を構成するブラシ繊維を拡大して先端側より示す斜視図である。
【図11】 第6実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維の一例を拡大して先端側より示す斜視図である。
【図12】 第6実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維の他の例を拡大して先端側より示す斜視図である。
【図13】 第7実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維の一例を拡大して先端側より示す斜視図である。
【図14】 第7実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維の他の例を拡大して先端側より示す斜視図である。
【図15】 第8実施形態に係る電気掃除機の吸込具の要部である回転清掃体を構成するブラシ繊維を拡大して先端側より示す斜視図である。
【符号の説明】
1 吸込具本体、3 吸込口、4 回転清掃体、9 床面、11 エアスリット(エア吹き付け用)、41 回転軸、42 清掃体、422 ブラシ列(前側)、423,423A ブラシ列(後ろ側)、424 弾性体、425,425A ループ状繊維、426 先端多毛ブラシ繊維、426a 先端側の複数繊維、426b 根元側の単一繊維、427 多角形ブラシ繊維、428 凹多角形ブラシ繊維、429 凸部付きブラシ繊維、430 突起物付きブラシ繊維、431 凹部付きブラシ繊維。
Claims (2)
- 底面に吸込口を有する吸込具本体に、前記吸込口に臨ませて回転清掃体を設けた電気掃除機の吸込具において、
前記回転清掃体は、回転軸と、該回転軸の外周上に軸方向に延長して配設された清掃体とを有し、
前記清掃体は、ループ状繊維の束と、該ループ状繊維の束のループ内に弛みのある状態で覆われ配置された弾性体とから構成し、
前記吸込具本体の前縁部には、クリーニング用のエアスリットを設けて、該エアスリットから吸引された気流が前記清掃体に吹き付けられるようにして、前記ループ状繊維の束が床面から離れ該エアスリットの近傍を通過するときに前記吹き付け気流の圧力によりばらけるように構成したことを特徴とする電気掃除機の吸込具。 - ループ状繊維を、繊維径φ30μm以下の繊維から構成したことを特徴とする請求項1記載の電気掃除機の吸込具。
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