JP4380826B2 - 含フッ素(メタ)アクリル系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素アクリル系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の被着材料の表面に、良好な離型性、剥離性、防汚性、撥水性、撥油性等の表面特性を付与するために、含フッ素(メタ)アクリル系重合体を含有するコーティング剤を塗布することが行われている。
【0003】
このような含フッ素(メタ)アクリル系重合体としては、炭素数が6〜16のポリフルオロアルキル基もしくはパーフルオロアルキル基を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル(以下、両者を合わせて(メタ)アクリル酸エステルと称する。)等のフッ素系モノマーを重合させたものが知られている。しかし、フッ素系モノマーを単独重合させて得られる含フッ素(メタ)アクリル系重合体は、汎用溶媒に対する溶解性が低く、更に材料コストも高くなる。このため、通常は、フッ素系モノマーと非フッ素系モノマーとを共重合させたものが使用されており、この場合の重合方法としては、汎用溶媒を用いた溶液重合法や乳化重合法が行なわれている。
【0004】
しかしながら、フッ素系モノマーと非フッ素系モノマーとを共重合させた場合には、汎用溶媒に対する溶解性が良くなり材料コストも低下させることができるが、含フッ素系重合体に特有の離型性、剥離性や防汚性などの特性が大きく低下する傾向がある。
【0005】
そこで、含フッ素系重合体に特有の特性を重視する場合には、全モノマー中のフッ素系モノマーの割合を上げることが必要となり、一般には、全モノマー中のフッ素系モノマーの割合を少なくとも70重量%とすることが必要となる。
【0006】
この場合、即ち、全モノマー中のフッ素系モノマーの割合が70重量%を超えるような条件下で重合を行う場合に、界面活性剤を大量に使用する乳化重合法を採用することは好ましくない。これは、使用した界面活性剤がコーティング膜表面にブリーディングし、そのために含フッ素系重合体からなるコーティング膜の表面特性が劣化するからである。
【0007】
また、重合法の一種である塊状重合法の適用も考えられるが、重合反応の制御性に問題があり、しかも重合体が取り扱いにくい硬い固まりとして得られ、フッ素系溶剤に溶解させるとしばしばゲル化してしまうという問題もある。そのため、塊状重合法を採用することは現実的ではない。
【0008】
従って、全モノマー中のフッ素系モノマーの割合が70重量%を超えるような条件下で重合を行う場合には、溶液重合法を採用することとなる。
【0009】
溶液重合法の場合には、フッ素系モノマーを溶解するとともに、生成する含フッ素系重合体をも溶解することのできる溶剤を使用する必要がある。そのため、含フッ素系重合体を溶解させることのできない一般的な汎用溶剤ではなく、トリクロロトルフルオロエタン、メタキシレンヘキサフルオライド、テトラクロロヘキサフルオロブタン、FC−726(3M社製)等のフッ素系溶剤(PFC)や塩素フッ素系溶剤(CFC)が使用されている(特開昭61−23656号公報、特公平1−42983号公報参照)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フッ素系溶剤や塩素フッ素系溶剤は、一般の汎用溶剤に比べて非常に高価な溶剤であるので、含フッ素系重合体の製造コストを低減させる際の障害となるという問題がある。この問題に対し、フッ素系溶剤の使用量を比較的少ない量、例えば全モノマー100重量部に対して、フッ素系溶剤200重量部以下の量で使用することも考えられるが、重合の進行に伴って溶液粘度が上昇し、撹拌が非常に困難となるだけでなく、生成した重合体が反応容器から非常に取り出し難くなるという問題がある。
【0011】
本発明は、以上のような従来の技術の課題を解決しようとするものであり、フッ素系モノマーの割合の高い含フッ素(メタ)アクリル系重合体を、少ない量の溶剤を用いて重合できるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、非ハロゲン系溶剤とフッ素系溶剤との混合溶剤を使用して重合した場合に、その溶剤の種類や使用量等を調整することにより、重合の進行に伴い、モノマーと有機溶剤を主成分とする溶液相と、含フッ素(メタ)アクリル系重合体と有機溶剤を主成分とする重合体含有液相とを相分離させることができ、それにより溶剤量が少ない場合でも、含フッ素系重合体を含む反応混合物を十分に撹拌することができ、効率よく含フッ素系重合体を製造できること、特に、フッ素系モノマーとして、ポリフルオロアルキル基の炭素数が9以上であるものや、分子内に水酸基を有するものを使用した場合でも、この方法により効率よく含フッ素系重合体を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、ポリフルオロアルキル基及び水酸基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを有機溶剤を用いて重合する含フッ素(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、有機溶剤として非ハロゲン系溶剤とフッ素系溶剤を使用し、且つ、重合の進行に伴い、前記モノマーと有機溶剤を主成分とする溶液相と、含フッ素(メタ)アクリル系重合体と有機溶剤を主成分とする重合体含有液相とが相分離するように重合することを特徴とする製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の含フッ素(メタ)アクリル系重合体の製造方法は、ポリフルオロアルキル基及び水酸基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマー類を有機溶剤を用いて重合し、含フッ素(メタ)アクリル系重合体を製造する方法である。
【0016】
この製造方法においては、重合反応開始当初は均一な溶液相を呈しているが、重合の進行に伴い、生成する含フッ素(メタ)アクリル系重合体と有機溶剤とを主成分とする重合体含有液相が、モノマーと有機溶剤を主成分とする溶液相から分離するように重合を行う。このように相分離させて重合させることにより、重合反応中に重合体がゲル化することなく、少ない溶剤量で効率よく重合反応を進行させることができる。この理由は明確ではないが、以下のような理由と思われる。
【0017】
即ち、有機溶剤の種類や使用量等を調整することにより、反応混合物は、重合初期には均一な溶液相を形成しているが、重合の進行に伴って2相に分離する。この場合、下層の相は、含フッ素(メタ)アクリル系重合体と有機溶剤を主成分とする重合体含有液相、より詳しくは、生成した含フッ素(メタ)アクリル系重合体を多く含み、その重合体に有機溶剤とフッ素系モノマーとがそれぞれの溶解度に見合う量で溶け込んでいる相である。また、上層の相は、モノマーと有機溶剤を主成分とする溶液相、より詳しくは、フッ素系モノマーとオリゴマーとが有機溶剤に溶解した相である。これらそれぞれの相において、重合反応は別々に進行し、拡散移動により各成分の平衡が保たれていると考えられる。
【0018】
このように相分離させた状態で重合反応を進行させると、重合体含有液相では、含フッ素系重合体が非常に高い濃度であるにもかかわらず、この重合体中に有機溶剤が溶け込んでいるので、粘度は重合反応中に低く保たれる。このため、重合体含有液相は、重合終了時まで容易に撹拌することが可能となり、しかも生成した重合体を反応容器から簡単に取り出すことができる。
【0019】
また、重合体含有液相では重合速度がコントロール可能な範囲で速やかであり、大きな重合度の重合体を得られる。
【0020】
本発明の製造方法において、重合終期には、溶液相は、生成した重合体に溶け込みきれない過剰の溶剤と未反応のフッ素系モノマー及びオリゴマーからなる。従って、溶液相を重合体含有液相から簡単に分別することができる。また、有機溶剤の使用量を予め少なめに設定すれば、重合終期にほとんどの溶剤が重合体含有液相に吸収されるので、溶液相量を非常に小さくすることができ、重合を効率よく進行させることができる。
【0021】
なお、実質的にフッ素系モノマーのみを使用した場合には、重合終了後に反応混合物を冷却すると、重合体含有液相が有機溶剤を含有したままワックス状に固化する場合が多い。このような場合には、含フッ素系重合体を反応容器から容易に取り出すことができる。そしてこれを粉砕し、その後に有機溶媒を除去することにより、含フッ素系重合体の粉砕物を容易に得ることが可能となる。
【0022】
本発明の製造方法において、フッ素系モノマーとして、式(1)又は(2)
【0023】
【化1】
Rf−X−OCOCH=CH2 (1)
Rf−X−OCOC(CH3)=CH2 (2)
(式(1)及び(2)中、Rfは、ポリフルオロアルキル基であり、Xは水酸基を有するスペーサー基である。)で表されるポリフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを使用する。ここで、Rfのポリフルオロアルキル基の炭素数は、6〜16が好ましい。これは、炭素数が6未満であると、生成する重合体が汎用溶媒に溶解し易くなって反応混合物が2相分離しにくくなり、炭素数が16を超えると、モノマー自体の入手コストが大きく増大し、それに見合う特性の重合体が得られにくいためである。ここで、Rfのポリフルオロアルキル基の具体例としては、式(3)又は(4)
【0024】
【化2】
CF3(CF2)n− (3)
(CF3)2CF(CF2)m− (4)
(式中、nは5〜15の数であり、mは3〜13の数である。)
の直鎖状のパーフルオロアルキル基や分岐状のパーフルオロアルキル基を挙げることができる。パーフルオロアルキル基のフッ素原子の一部が水素原子に置換したものも使用することができる。
【0025】
また、式(1)及び(2)において、Xの水酸基を有するスペーサー基としては、特に限定されず、一般に入手可能なモノマーに利用されている水酸基を有するスペーサー基を利用することができ、例えばヒドロキシプロピレン基を挙げることができる。
【0027】
本発明において、全モノマー中のフッ素系モノマー、即ち、含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、目的とする重合体の特性に応じて適宜選択することができるが、少なすぎると重合体含有液相を相分離させることができなくなるばかりでなく、含フッ素系重合体自体の離型性や剥離性等の特性が低下するので、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
【0028】
本発明において有機溶剤としては、非ハロゲン系溶剤とフッ素系溶剤との混合溶剤を使用する。作業環境あるいは地球の環境保全やコストの点からは、有機溶剤として非ハロゲン系溶剤を使用することが好ましいが、有機溶剤にフッ素系溶剤を含有させることにより、非ハロゲン系溶剤のみを使用した場合に比べて重合体含有液相の粘度を低下させることができるので、溶剤量を少なく設定した場合でも、重合終期まで反応混合物を撹拌することが可能となる。したがって、本発明によれば、有機溶剤にフッ素系溶剤を使用することと、前述の相分離させて重合を進行させることの効果により、従来の溶液重合に比べて、必要とされる有機溶剤量を1/5〜1/10程度の極めて少ない量とすることができる。
【0029】
また、有機溶剤にフッ素系溶剤を含有させることにより、フッ素系モノマーとして、ポリフルオロアルキル基の炭素数が9以上であるものや、分子内に水酸基を有するものを使用した場合でも、重合体含有液相が溶液相から相分離するように重合することが可能となる。なお、分子内に水酸基を有するフッ素系モノマーの重合体は、非シリコーン系剥離剤として有用であり、また、この重合体は架橋剤等の使用により耐熱性の向上した重合体となるので、かかるモノマーを効率よく重合できることにより本発明の有用性はいっそう高まる。
【0030】
本発明において有機溶剤、即ち、非ハロゲン系溶剤とフッ素系溶剤との混合溶剤の溶解力としては、フッ素系モノマーを溶解するが、生成した含フッ素系重合体に対しては重合体を自由な比率で溶解する良溶媒でもなく、また、重合体をほとんど溶解しないか、あるいは重合体にはほとんど溶け込まない貧溶媒でもない、中間的な溶解力に調整することが好ましい。より具体的には、混合溶剤の溶解力を、重合温度において、含フッ素系重合体に10〜50重量%の範囲で溶け込むことができるように調整することが好ましい。なおこの場合、含フッ素系重合体に溶け込む混合溶剤中の非ハロゲン系溶剤とフッ素系溶剤との割合としては、フッ素系溶剤が多くなってよい。
【0031】
混合溶剤を構成する非ハロゲン系溶剤としては、極性の程度を示すSP(Solubility Parameter)値(ポリマーハンドブック VII-519、第3版(1989年)、John Wiley & Sons, Inc.)を考慮した場合に、8.0〜10.5のものが好ましく、8.5〜9.5のSP値を示すものがより好ましい。より具体的には、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。
【0032】
一方、フッ素系溶剤としては、上記の非ハロゲン系溶剤と混合溶解可能なものを使用することができる。例えば、(パーフルオロアルキル)−アルキルエーテル類や芳香族系フッ素化合物等をあげることができる。このうち、(パーフルオロアルキル)−アルキルエーテル類としては、(パーフルオロブチル)−メチルエーテル(3M社製、HFE7100等)、(パーフルオロブチル)−エチルエーテル(3M社製、HFE7200等)、パーフルオロブチルテトラヒドロフラン等をあげることができ、また、芳香族系フッ素化合物としては、ベンゾトリフルオライド、ヘキサフルオロキシレン等をあげることができる。
【0033】
また、フッ素系溶剤としては、非ハロゲン系溶剤と単独では混合溶解しにくいものであっても、非ハロゲン系溶剤と混合溶解が可能な上記のフッ素系溶剤と併用したり、生成してくる重合体と非ハロゲン系溶剤とに溶け込む割合を調整することにより、重合体含有液相が溶液相から相分離するように混合溶剤を調整できる限り、使用することができる。このようなフッ素系溶剤としては、パーフルオロアルカン類、パーフルオロシクロアルカン類、パーフルオロトリアルキルアミン類、パーフルオロサイクリックエーテル類、パーフルオロポリエーテル類、特に低分子量のパーフルオロポリエーテル類(アウジモント社製、GALDEN等)などがある。
【0034】
混合溶剤の使用量は、少なすぎると重合体含有液相の粘度が高くなりすぎて撹拌が困難となり、多すぎると実用的な反応速度が得られなくなり、しかも残留モノマーやオリゴマーの量が増大するので、フッ素系モノマーである含フッ素(メタ)アクリル酸エステル100重量部に対して好ましくは10〜200重量部、より好ましくは10〜100重量部である。
【0035】
本発明の製造方法において、重合方法は、公知の溶液重合と同様の方法をとることができる。即ち、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、ラジカル重合開始剤(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等)を使用し、好ましくは30〜100℃、より好ましくは45〜85℃の温度で行うことがよい。
【0036】
なお、重合反応させる全モノマー中のフッ素系モノマーの割合が非常に高い場合、例えば、フッ素系モノマー90重量%以上である場合には、以上のような重合により得られた重合体含有液相は、冷却することにより固化する。したがって、その固化物を粉砕することにより、粉状の含フッ素アクリル系重合体を容易に得ることができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0038】
実施例1
表1の重合条件に示すように、16gの3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート[(CF3)2CF(CF2)6CH2CH(OH)CH2OCOC(CH3)=CH2、M3833、ダイキンファインケミカル研究所製]と15gの酢酸エチルと4gのヘキサフルオロキシレン(HFX)を、撹拌装置と還流管とを備えた250mLの三口フラスコに仕込み、80℃に昇温した湯浴中で撹拌しながら窒素ガスを30分間流した後、0.5gのメチルエチルケトン(MEK)に溶解した50mgのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加し重合を開始させた。
【0039】
開始後約50分後に反応混合物の粘度が上昇し始め、1時間半後には僅かの量の上層(溶液相)と大部分の下層(重合体含有液相)との相分離が認められた。下層の粘度は水飴状にまで上昇し、その後粘度上昇は観察されなくなった。2時間後に蒸発飛散する溶剤を補う目的で、5gの酢酸エチルを追加し、さらに3時間反応を継続させた後、反応を停止させた。その後、反応混合物を室温にまで冷却し、そのまま一昼夜放置したところ、下層の重合体含有液相は柔らかいワックス状に固化した。この重合結果を表2に示す。
【0040】
同表に示したように、この固化物は27.1gあり、固化物中には41.0%(11.1g)の溶剤が含まれていた。また、上層の溶液相は5.5gあり、溶液相中の溶剤を揮発させたところ、残留モノマーを主成分とする0.01gの不揮発成分が含まれていた。これにより、重合中に飛散した溶剤は、7.9gと計算された。
【0041】
比較例1
フッ素系溶剤を使用することなく、非ハロゲン系溶剤のみを使用して、実施例1に準じて表1に示す重合条件で重合を行った。
【0042】
重合開始後約1時間で粘度が上昇し、相分離が認められた。この相分離においては、上層の溶液相の液量が実施例1よりも多くなった。下層の重合体含有液相は、撹拌を継続することはできたが、粘度が実施例1の場合よりも高くなった。反応混合物を室温まで冷却し、そのまま一昼夜放置したところ、下層の重合体含有液相は、脆いワックス状に固化した。この重合結果を表2に示す。
【0043】
同表に示したように、この固化物は、22.9gあり、固化物中には、32.5%(7.45g)の溶剤が含まれていた。また、上層の溶液相は17.2gあり、溶液相中の溶剤を揮発させたところ、残留モノマーを主成分とする0.55gの不揮発成分が含まれていた。これにより、重合中に飛散した溶剤は、7.9gと計算された。
【0044】
実施例1と比較例1とから、フッ素系モノマーとして、分子内に水酸基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを使用する場合には、非ハロゲン系溶剤だけでなく、フッ素系溶剤も含有させた混合溶剤を使用した方が、重合体含有液相の粘度を低くすることができ、撹拌しやすくなることがわかる。
【0045】
参考例1
表1の重合条件に示すように、200gのパーフルオロオクチルエチルメタクリレート[CF3(CF2)7CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、ライトエステルFM108、共栄社化学製]と22gの酢酸エチルと10gのヘキサフルオロエチレン(HFX)を、撹拌装置と還流管とを備えた1Lの三口フラスコに仕込み、80℃に昇温した湯浴中で100rpmの速度で撹拌しながら窒素ガスを30分間流した後、3gのメチルエチルケトン(MEK)に溶解した0.6gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加し、重合を開始させた。
【0046】
反応開始後約35分で反応混合物の粘度上昇が観察され、1時間後には相分離が認められた。この相分離において、上層の溶液相はごく僅かの量(数mL)であり、ほとんどが下層の重合体含有液相であった。この重合体含有液相は、2時間後には、粘度が水飴状にまで上昇したが、その後、明らかな粘度上昇は観察されなかった。この時点で、回転速度を20rpmにまで下げ、蒸発飛散する溶剤を補う目的で20gの酢酸エチルを追加し、さらに3時間反応を継続させた後、反応を停止させた。その後、反応混合物を室温にまで冷却し、下層の重合体含有液相を取り出した。取り出した重合体含有液相は、室温で1週間後に柔らかい餅状に固化した。この重合結果を表2に示す。
【0047】
同表に示したように、この固化物は245.8gあり、固化物中には18.6%(45.8g)の溶剤が含まれていた。また、上層の溶液相は3.9gあり、溶液相中の溶剤を揮発させたところ、残留モノマーを主成分とする0.04gの不揮発成分が含まれていた。これにより、重合中に飛散した溶剤は、5.4gと計算された。
【0048】
参考例2
表1の重合条件に示すように、フッ素系溶剤を(パーフルオロブチル)−エチルエーテル(HFE−7200、3M社製)に代えた以外は参考例1と同様の操作で重合を行った。重合経過は参考例1とほぼ同様であった。この重合結果を表2に示す。
【0049】
参考例3
表1の重合条件に示すように、有機溶剤を10gのメチルイソブチルケトン(MIBK)と6gのヘキサフルオロキシレン(HFX)に代えた以外は参考例1と同様の操作で重合を行った。
【0050】
反応開始後約25分で反応混合物の粘度上昇が観察され、45分後には相分離が認められた。この相分離において、上層の溶液相はごく僅かの量であり、ほとんどが下層の重合体含有液相であった。この重合体含有液相は、1時間後には、粘度が硬い水飴状にまで上昇し、撹拌の継続が困難になったので、シクロヘキサノンを4g追加したところ、撹拌できる程度まで粘度が低下し、その後は、粘度上昇が観察されなかった。3時間後に蒸発飛散した溶剤を補う目的で10gの酢酸エチルを追加し、さらに3.2時間反応を継続させた後、反応を停止させた。その後、反応混合物を室温まで冷却し、一昼夜放置したところ、硬い餅状に固化した。この重合結果を表2に示す。
【0051】
同表に示したように、この固化物は227.3gあり、固化物中には12.0%(27.3g)の溶剤が含まれていた。また、上層の溶液相は1.9gあり、溶液相中の溶剤を揮発させたところ、残留モノマーを主成分とする0.02gの不揮発成分が含まれていた。これにより、重合中に飛散した溶剤は、3.8gと計算された。
【0052】
比較例2
表1の重合条件に示すように、フッ素系溶剤を用いずに非ハロゲン系溶剤を少量用いた以外は参考例1の操作に準じて重合を行った。
【0053】
反応開始後約35分で反応混合物の粘度上昇が観察され、1時間後には相分離が認められた。この相分離において、上層の溶液相はごく僅かの量であり、ほとんどが下層の重合体含有液相であった。この重合体含有液相は、2時間後には、粘度が硬い水飴状にまで上昇したが、その後、明らかな粘度上昇は観察されなかった。この時点で、撹拌速度を10rpmにまで下げ、さらに3.5時間反応を継続させた後、反応を停止させた。その後、反応混合物を室温まで冷却し、一昼夜放置したところ、硬い餅状に固化した。この重合結果を表2に示す。
【0054】
同表に示したように、この固化物は226.1gあり、固化物中には11.6%(26.2g)の溶剤が含まれていた。また、上層の溶液相は3.3gあり、溶液相中の溶剤を揮発させたところ、残留モノマーを主成分とする0.12gの不揮発成分が含まれていた。これにより、重合中に飛散した溶剤は、5.6gと計算された。
【0055】
参考例1〜3と比較例2とから、有機溶剤として、非ハロゲン系溶剤に加えてフッ素系溶剤を併用すると、少ない溶剤量でも重合体含有液相を重合終期まで撹拌でき、均一に反応を行えることがわかる。また、参考例1,2と比較例2とから、本実施例によれば、フッ素系溶剤を使用しない場合よりも固化物が柔らかくなることがわかる。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、フッ素系モノマーの割合の高い含フッ素系重合体を、溶剤量を低減させて溶液重合することが可能となる。
Claims (9)
- ポリフルオロアルキル基及び水酸基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーを有機溶剤を用いて重合する含フッ素(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、有機溶剤として、非ハロゲン系溶剤とフッ素系溶剤との混合溶剤を使用し、且つ、重合の進行に伴い、前記モノマーと有機溶剤を主成分とする溶液相と、含フッ素(メタ)アクリル系重合体と有機溶剤を主成分とする重合体含有液相とが相分離するように重合することを特徴とする製造方法。
- 全モノマー中の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの割合が70重量%以上である請求項1記載の製造方法。
- 全モノマー中の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの含有量が90重量%以上である請求項2記載の製造方法。
- 非ハロゲン系溶剤が、ケトン類又はエステル類である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 非ハロゲン系溶剤が、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノンから選択された少なくとも一種である請求項4記載の製造方法。
- フッ素系溶剤が、芳香族系フッ素化合物、(パーフルオロアルキル)−アルキルエーテル類、パーフルオロサイクリックエーテル類、パーフルオロアルカン類、パーフルオロシクロアルカン類、パーフルオロポリエーテル類及びパーフルオロトリアルキルアミン類から選択された少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- フッ素系溶剤が、ベンゾトリフルオライド、ヘキサフルオロキシレン、(パーフルオロブチル)−メチルエーテル及び(パーフルオロブチル)−エチルエーテルから選択された少なくとも一種である請求項6記載の製造方法。
- 有機溶剤の使用量が、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル100重量部に対して10〜200重量部である請求項1記載の製造方法。
- 得られた重合体含有液相を冷却して固化させ、その固化物を粉砕することにより粉状の含フッ素(メタ)アクリル系重合体を得る請求項1記載の製造方法。
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