以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
(第一実施形態)
はじめに、図1,図2を参照しながら、本発明の第一実施形態に係る樹脂部材の締結構造の構成について説明する。
図1,図2は本発明の第一実施形態に係る樹脂部材の締結構造の構成を示す図であり、より詳細には、図1(a)は締結構造によって二樹脂部材を締結する前の状態を示す断面図、図1(b)は締結構造によって二樹脂部材を締結した後の状態を示す断面図である。また、図2(a)は締結構造によって二樹脂部材を締結する前の状態を示す斜視図、図2(b)は締結構造によって二樹脂部材を締結した後の状態を示す斜視図である。なお、図1(a),(b)は図2(a),(b)のA−A線断面を示す図である。
本発明の第一実施形態に係る樹脂部材の締結構造10は、例えば、自動車に備えられた樹脂製のインストルメントパネルに樹脂製の車両艤装樹脂部材を装着するのに好適に用いられるものであり、第一の樹脂部材40に突設されたボス部12と、第二の樹脂部材50に設けられた挿通部14と、挿通部14の内側に配置されると共に第二の樹脂部材50に一体に形成された一対の係止部16と、を有して構成されている。
挿通部14は、板状の樹脂部材50の板厚方向に貫通する四角状の貫通孔で構成されていると共に、一方の樹脂部材40に突設されたボス部12が挿入可能な孔径で構成されている。
一対の係止部16は、挿通部14に挿入されたボス部12を係止して固定するためのものであり、それぞれ挿通部14の表裏方向に延びる板状体により構成されている。この一対の係止部16は、挿通部14の内側に互いに平行となるように配置されており、係止部16の長手方向中間部32は、薄肉部からなる薄肉ヒンジ30を介して挿通部14の内壁面14a,14bにそれぞれ回動自在に連結されている。
ここで、図1,図2に示すように、ボス部12を挿通部14へ挿入するときの挿通部14よりも挿入方向の手前側を“挿入方向手前側(X1側)”とし、ボス部12を挿通部14へ挿入するときの挿通部14よりも挿入方向の奥側を“挿入方向奥側(X2側)”としたときに、本例の係止部16は、長手方向中間部32から挿入方向手前側(X1側)に延出する挿入方向手前側延出片34と、長手方向中間部32から挿入方向奥側(X2側)に延出する挿入方向奥側延出片36とを備える構成となっている。
ボス部12は、第一の樹脂部材40から第二の樹脂部材50側へ突出するように構成されており、挿入方向手前側(X1側)から奥側(X2側)に向かって順に、傾斜部20と、細径係止段部22と、先端部24を有して構成されている。
傾斜部20は、ボス部12の挿入方向奥側(X2側)から手前側(X1側)に向かうに従って挿通部14の径方向外側へ向かう傾斜面で構成されている。本例では、傾斜部20は、平面よりは若干湾曲した凸曲面で形成されている。また、この傾斜部20のそれぞれは、ボス部12を挿通部14に挿入するときに係止部16の挿入方向手前側延出片34の先端と接触する位置に設けられている。
この構成により、本例では、ボス部12を挿通部14に挿入するときに、この一対の傾斜部20が挿入方向手前側延出片34のそれぞれと摺接し、この挿入方向手前側延出片34を挿通部14の外側(R1方向)へそれぞれ回動することができるように構成されている。
そして、本例では、上述のように、係止部16は、薄肉ヒンジ30によって回動自在となっているため、係止部16の挿入方向手前側延出片34が挿通部14の外側(R1方向)へそれぞれ回動すると、これと同時に挿入方向奥側延出片36が挿通部14の内側(R2方向)へ強制的に回動するようになっている。
細径係止段部22は、傾斜部20と先端部24との間に形成されている。本例では、ボス部12の先端部24を薄肉ヒンジ30よりも挿入方向奥側(X2側)に位置させたときに挿通部14の内側に回動した挿入方向奥側延出片36が細径係止段部22に係止されるようになっている。
先端部24は、ボス部12の挿入方向奥側(X2側)から手前側(X1側)に向かうに従って挿通部14の径方向外側へ向かうようにテーパ状に形成されており、先端部24の幅寸法は、一対の係止部16の間隔よりも小さく形成されている。
なお、本例では、一対の係止部16の間にボス部12を挿入しやすいようにボス部12の先端部24をテーパ状に構成したが、先端部24の形状はこれに限定されるものではない。その他にも、例えば、先端部24の形状を角状や球状等に構成することが可能である。
また、本例では、傾斜部20が平面よりは若干湾曲した凸曲面で形成されるように説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。その他にも、傾斜部20の面形状は、ボス部12を挿通部14に挿入するときに係止部16の挿入方向手前側延出片34と摺接して係止部16を強制的に回動させることが可能な形状であれば、種々改変することができることは勿論である。例えば、傾斜部20が複数の湾曲面を組み合わせた凸曲面で形成されていても良い。
次に、上記構成からなる樹脂部材の締結構造の作用について説明する。
第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50を重ね合わせるようにしてボス部12を挿通部14に挿入していくと、ボス部12を挿通部14に挿入するに従って傾斜部20と係止部16の挿入方向手前側延出片34とが摺接する。
これによって係止部16の挿入方向手前側延出片34が挿通部14の外側(R1方向)へ回動すると同時に係止部16の挿入方向奥側延出片36が挿通部14の内側(R2方向)へ強制的に回動する。
要するに、本例の樹脂部材の締結構造10では、係止部16が薄肉部からなる薄肉ヒンジ30を支点とするシーソー状となっている。従って、ボス部12を挿通部14に挿通することによって係止部16の一方側に位置する挿入方向手前側延出片34がボス部12の傾斜部20によってR1側へ回動すると、薄肉ヒンジ30を挟んだ反対側に位置する挿入方向奥側延出片36がR2側へ強制的に回動する。
そして、ボス部12を挿通部14に挿入してボス部12の先端部24を挿通部14の反対側に位置させると、挿入方向奥側延出片36の先端側が先端部24の傾斜面と摺接する。
この状態から、さらにボス部12を挿通部14に挿入して、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを重ね合わせると、挿入方向奥側延出片36が先端部24の挿入方向手前側の山を乗り越えて挿入方向奥側延出片36とボス部12の細径係止段部22とが係止される。これにより、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とが締結される。
なお、このとき、挿入方向奥側延出片36が先端部24を乗り越えて細径係止段部22へと係止する過程で、挿入方向奥側延出片36の先端がボス部12の挿入に従い先端部24を押圧しつつ、細径係止段部22へと係止されるように、挿入方向奥側延出片36が先端部24に押されて弾性変形する寸法関係としても良い。
本実施形態では、上述のように、本例の樹脂部材の締結構造10を用いて第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを締結する場合には、ボス部12に形成された傾斜部20が係止部16の挿入方向手前側延出片34を挿通部14の外側へ回動すると同時に挿入方向奥側延出片36を挿通部14の内側へ強制的に回動する力で係止部16の挿入方向奥側延出片36とボス部12の細径係止段部22とが係止される。
従って、従来のように薄肉部が発揮する弾性力で係止部16とボス部12とを係止する構成に比して、ボス部12と係止部16との結合力を高めることができる。
また、ボス部12と係止部16との結合力がヒンジ30の肉厚によって変化することがないので、ヒンジ30に所望の肉厚が得られないなどの製造誤差が生じた場合でも、ボス部12と係止部16との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
さらに、メンテナンス等のために係止部16を繰り返し開閉し、これによってヒンジ30の肉厚が薄肉になるなどの経時変化が生じた場合でも、ボス部12と係止部16との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
このように、本例の樹脂部材の締結構造10によれば、ボス部12と係止部16との結合力を従来の構成に比して高めることができると共に、ヒンジ30の製造誤差や経時変化によってボス部12と係止部16との結合力が低下することを防止できるので、係止部16とボス部12とにガタつきが生じることを抑制することができる。これにより、二つの樹脂部材を確実に締結することが可能となる。
特に、本例の樹脂部材の締結構造10では、挿通部14の内側で相対向する位置に係止部16が一対設けられ、傾斜部20が一対の係止部16のそれぞれに形成された挿入方向手前側延出片34と摺接可能に構成され、細径係止段部22が一対の係止部16のそれぞれに形成された挿入方向奥側延出片36と係止可能に構成されている。
従って、一対の係止部16でボス部12の細径係止段部22を挟持するようにして係止部16とボス部12とを結合することができるので、係止部16とボス部12との結合状態を安定させることができる。これにより、係止部16とボス部12とにガタつきが生じることを確実に抑制することができる。
一方、上記説明では、樹脂部材の締結構造10の締結方法について述べたが、本例の締結構造10による樹脂部材の締結状態を解除するためには、以下のようにすれば良い。
すなわち、図1(b)に示すように、ボス部12と係止部16とが結合した状態にあるときの挿入方向奥行側延出片36と長手方向中間部26との間に形成された空隙部60にマイナスドライバなどの所定の工具を挿入する。
そして、この工具によって挿入方向奥行側延出片36のそれぞれを押し広げ、図1(a)に示すように、一対の係止部16が互いに平行な状態に戻るように、挿入方向奥側延出片36と細径段部22との係止状態を解除すれば良い。
このようにすれば、挿通部14からボス部12を引き抜くようにして他方の樹脂部材50から一方の樹脂部材40を分離することができる。
このとき、本例の樹脂部材の締結構造10によれば、上述のように、メンテナンス等のために係止部16を繰り返し開閉し、これによってヒンジ30の肉厚が薄肉になるなどの経時変化が生じた場合でも、ボス部12と係止部16との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
(第二実施形態)
次に、図3を参照しながら、本発明の第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造について説明する。
図3は本発明の第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造の構成を示す図であり、より詳細には、図3(a)は締結構造によって二樹脂部材を締結する前の状態を示す断面図、図3(b)は締結構造によって二樹脂部材を締結した後の状態を示す断面図である。なお、本発明の第二実施形態において、上述の第一実施形態と同一の構成については同一の符号を用いて説明する。
はじめに、本発明の第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造210の構成について説明する。
第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造210は、上述の第一実施形態に係る樹脂部材の締結構造10の上半分により構成されたものとなっている。つまり、他方の樹脂部材50に形成された挿通孔214の内側には、薄肉ヒンジ30を介して係止部16が一つ設けられている。
また、ボス部212の傾斜部20は、ボス部212を挿通孔214に挿入するときに係止部16に形成された挿入方向手前側延出片34と摺接可能に構成されており、ボス部212の細径係止段部22は、ボス部212の先端部224を薄肉ヒンジ30よりも挿入方向奥側(X2側)に位置させたときに係止部16に形成された挿入方向奥側延出片36と係止可能に構成されている。
なお、本発明の第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造210において、挿通孔214の係止部16が設けられた位置と反対側には、ガイド部218が設けられている。そして、第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造210では、このガイド部218によって、ボス部212を挿通孔214に真っ直ぐに挿入することができるようになっている。
ただし、一方の樹脂部材40を他方の樹脂部材50に重ね合わせるようすれば、必然的にボス部212を挿通孔214に真っ直ぐに挿入することができるので、ガイド部218は第二実施形態に係る締結構造210に必須の構成ではない。
続いて、上記構成からなる第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造210の作用について説明する。
第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50を重ね合わせるようにしてボス部212を挿通部214に挿入していくと、ボス部212を挿通部214に挿入するに従って傾斜部20と係止部16の挿入方向手前側延出片34とが摺接する。
これによって係止部16の挿入方向手前側延出片34が挿通部214の外側(R1方向)へ回動すると同時に係止部16の挿入方向奥側延出片36が挿通部214の内側(R2方向)へ強制的に回動する。
そして、ボス部212を挿通部214に挿入してボス部212の先端部224を挿通部214の反対側に位置させると、挿入方向奥側延出片36の先端側が先端部224の傾斜面と摺接する。
この状態から、さらにボス部212を挿通部214に挿入して、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを重ね合わせると、挿入方向奥側延出片36が先端部224の挿入方向手前側の山を乗り越えて挿入方向奥側延出片36とボス部212の細径係止段部22とが係止される。これにより、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とが締結される。
このように、本例の樹脂部材の締結構造210を用いて第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを締結する場合にも、ボス部212に形成された傾斜部220が係止部16の挿入方向手前側延出片34を挿通部214の外側へ回動すると同時に挿入方向奥側延出片36を挿通部214の内側へ強制的に回動する力で係止部16の挿入方向奥側延出片36とボス部212の細径係止段部22とが係止される。
従って、従来のように薄肉部が発揮する弾性力で係止部16とボス部212とを係止する構成に比して、ボス部212と係止部16との結合力を高めることができる。
また、ボス部212と係止部16との結合力がヒンジ30の肉厚によって変化することがないので、ヒンジ30に所望の肉厚が得られないなどの製造誤差が生じた場合でも、ボス部212と係止部16との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
さらに、メンテナンス等のために係止部16を繰り返し開閉し、これによってヒンジ30の肉厚が薄肉になるなどの経時変化が生じた場合でも、ボス部212と係止部16との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
このように、本例の樹脂部材の締結構造210によれば、ボス部212と係止部16との結合力を従来の構成に比して高めることができると共に、ヒンジ30の製造誤差や経時変化によってボス部212と係止部16との結合力が低下することを防止できるので、係止部16とボス部212とにガタつきが生じることを抑制することができる。これにより、二つの樹脂部材を確実に締結することが可能となる。
また、第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造210によれば、メンテナンス等によりボス部212と係止部16との係止状態を解除する必要が生じた場合には、係止部16を工具等によって開くだけでボス部212と係止部16との係止状態を解除することができる。従って、ボス部212と係止部16との係止状態を解除する作業を容易に行うことができる。
さらに、この第二実施形態に係る樹脂部材の締結構造210のように、係止部16を一つ設ける構成とすると、係止部16を複数設ける構成に比して小型化することができるので好適である。
(第三実施形態)
次に、図4を参照しながら、本発明の第三実施形態に係る樹脂部材の締結構造について説明する。
図4は本発明の第三実施形態に係る樹脂部材の締結構造の構成を示す図であり、より詳細には、図4(a)は締結構造によって二樹脂部材を締結する前の状態を示す斜視図、図4(b)は締結構造によって二樹脂部材を締結した後の状態を示す斜視図である。なお、本発明の第二実施形態において、上述の第一実施形態と同一の構成については同一の符号を用いて説明する。
はじめに、本発明の第三実施形態に係る樹脂部材の締結構造310の構成について説明する。
第三実施形態に係る樹脂部材の締結構造310は、係止部16を円周方向に複数備える構成である。つまり、挿通孔314は、円形状に形成され、この円形状に形成された挿通孔314の内側には、挿通孔314の円周方向に所定間隔を空けて係止部16が三つ設けられている。この係止部16のそれぞれは、挿通孔314の内壁面314aに薄肉部30を介して回動自在に連結されている。
また、ボス部312の傾斜部320は、ボス部312を挿通孔314に挿入するときに三つの係止部16のそれぞれに形成された挿入方向手前側延出片34と摺接可能に構成されており、細径係止段部322は、ボス部312の先端部324を薄肉ヒンジ30よりも挿入方向奥側(X2側)に位置させたときに三つの係止部16のそれぞれに形成された挿入方向奥側延出片36と係止可能に構成されている。
続いて、上記構成からなる第三実施形態に係る樹脂部材の締結構造310の作用について説明する。
第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50を重ね合わせるようにしてボス部312を挿通部314に挿入していくと、ボス部312を挿通部314に挿入するに従って傾斜部320と係止部16の挿入方向手前側延出片34とが摺接する。
これによって係止部16の挿入方向手前側延出片34が挿通部314の外側へ回動すると同時に係止部16の挿入方向奥側延出片36が挿通部314の内側へ強制的に回動する。
そして、ボス部312を挿通部314に挿入してボス部312の先端部324を挿通部314の反対側に位置させると、挿入方向奥側延出片36の先端側が先端部324の傾斜面と摺接する。
この状態から、さらにボス部312を挿通部314に挿入して、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを重ね合わせると、挿入方向奥側延出片36が先端部324の挿入方向手前側の山を乗り越えて挿入方向奥側延出片36とボス部312の細径係止段部322とが係止される。これにより、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とが締結される。
このように、本例の樹脂部材の締結構造310を用いて第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを締結する場合にも、ボス部312に形成された傾斜部320が係止部16の挿入方向手前側延出片34を挿通部314の外側へ回動すると同時に挿入方向奥側延出片36を挿通部314の内側へ強制的に回動する力で係止部16の挿入方向奥側延出片36とボス部312の細径係止段部322とが係止される。
従って、従来のように薄肉部が発揮する弾性力で係止部16とボス部312とを係止する構成に比して、ボス部312と係止部16との結合力を高めることができる。
また、ボス部312と係止部16との結合力がヒンジ30の肉厚によって変化することがないので、ヒンジ30に所望の肉厚が得られないなどの製造誤差が生じた場合でも、ボス部312と係止部16との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
さらに、メンテナンス等のために係止部16を繰り返し開閉し、これによってヒンジ30の肉厚が薄肉になるなどの経時変化が生じた場合でも、ボス部312と係止部16との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
このように、本例の樹脂部材の締結構造310によれば、ボス部312と係止部16との結合力を従来の構成に比して高めることができると共に、ヒンジ30の製造誤差や経時変化によってボス部312と係止部16との結合力が低下することを防止できるので、係止部16とボス部312とにガタつきが生じることを抑制することができる。これにより、二つの樹脂部材を確実に締結することが可能となる。
また、第三実施形態に係る樹脂部材の締結構造310によれば、ボス部312に形成された細径係止段部322の円周方向所定位置を三つの係止部16で三点支持することができるので、係止部16とボス部312との結合状態をより安定させることができる。これにより、係止部16とボス部312とにガタつきが生じることを確実に抑制することができる。
また、第三実施形態に係る樹脂部材の締結構造310のように、ボス部312に形成された細径係止段部322の円周方向所定位置を三つの係止部16で三点支持することができるように構成すると、挿通孔314および係止部16に対してボス部312をあらゆる回転角度で挿入することが可能となる。
これにより、ボス部312の挿入方向中心軸L1を回転軸とする回転方向R3の位置決めを不要にすることができるので、この構成により、一方の樹脂部材40に対して他方の樹脂部材50の取付角度が特に拘束されない場合などに取付作業性を向上させることが可能となる。
なお、本発明の第三実施形態では、係止部16を三つ備えるように説明したが、係止部16は三つ以上備えることができることは勿論である。
(第四実施形態)
次に、図5を参照しながら、本発明の第四実施形態に係る樹脂部材の締結構造について説明する。
図5は本発明の第四実施形態に係る樹脂部材の締結構造の構成を示す図であり、より詳細には、図5(a)は締結構造によって二樹脂部材を締結する前の状態を示す断面図、図5(b)は締結構造によって二樹脂部材を締結した後の状態を示す断面図である。なお、本発明の第二実施形態において、上述の第一実施形態と同一の構成については同一の符号を用いて説明する。
はじめに、本発明の第四実施形態に係る樹脂部材の締結構造410の構成について説明する。
この第四実施形態に係る樹脂部材の締結構造410では、係止部416の薄肉ヒンジ30から挿入方向手前側延出片34の先端までの長さが、薄肉ヒンジ30から挿入方向奥側延出片436の先端までの長さよりも長く形成されている。
また、ボス部412の傾斜部420は、ボス部412を挿通部14に挿入するときに係止部416のそれぞれに形成された挿入方向手前側延出片34と摺接可能に構成されており、細径係止段部422は、ボス部412の24を薄肉ヒンジ30よりも挿入方向奥側(X2側)に位置させたときに係止部416のそれぞれに形成された挿入方向奥側延出片436と係止可能に構成されている。
続いて、上記構成からなる第四実施形態に係る樹脂部材の締結構造410の作用について説明する。
第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50を重ね合わせるようにしてボス部412を挿通部14に挿入していくと、ボス部412を挿通部14に挿入するに従って傾斜部420と係止部416の挿入方向手前側延出片34とが摺接する。
これによって係止部416の挿入方向手前側延出片34が挿通部14の外側(R1方向)へ回動すると同時に係止部416の挿入方向奥側延出片436が挿通部14の内側(R2方向)へ強制的に回動する。
そして、ボス部412を挿通部14に挿入してボス部412の先端部24を挿通部14の反対側に位置させると、挿入方向奥側延出片436の先端側が先端部24の傾斜面と摺接する。
この状態から、さらにボス部412を挿通部14に挿入して、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを重ね合わせると、挿入方向奥側延出片436が先端部24の挿入方向手前側の山を乗り越えて挿入方向奥側延出片436とボス部412の細径係止段部422とが係止される。これにより、第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とが締結される。
このように、本例の樹脂部材の締結構造410を用いて第一の樹脂部材40と第二の樹脂部材50とを締結する場合にも、ボス部412に形成された傾斜部420が係止部416の挿入方向手前側延出片34を挿通部14の外側へ回動すると同時に挿入方向奥側延出片436を挿通部14の内側へ強制的に回動する力で係止部416の挿入方向奥側延出片436とボス部412の細径係止段部422とが係止される。
従って、従来のように薄肉部が発揮する弾性力で係止部416とボス部412とを係止する構成に比して、ボス部412と係止部416との結合力を高めることができる。
特に、この第四実施形態に係る樹脂部材の締結構造410のように、係止部416の薄肉ヒンジ30から挿入方向手前側延出片34の先端までの長さが、薄肉ヒンジ30から挿入方向奥側延出片436の先端までの長さよりも長く形成されていると、梃子の原理により、挿入方向奥側延出片436の細径係止段部422への係止力を高めることができるので、ボス部412と係止部416との結合状態をより強固なものとすることができる。
また、梃子の原理により、挿入方向奥側延出片436の細径係止段部422への係止力を少ない力で高めることができるので、ボス部412の傾斜部420を係止部416の挿入方向手前側延出片434に摺接させる際の力(すなわちボス部412の挿入時の抵抗感)を低減することが可能となる。これにより、取付作業時の負担を軽減することが可能となる。
また、ボス部412と係止部416との結合力がヒンジ30の肉厚によって変化することがないので、ヒンジ30に所望の肉厚が得られないなどの製造誤差が生じた場合でも、ボス部412と係止部416との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
さらに、メンテナンス等のために係止部416を繰り返し開閉し、これによってヒンジ30の肉厚が薄肉になるなどの経時変化が生じた場合でも、ボス部412と係止部416との結合力が低下するといった不都合が生じることを防止することができる。
このように、本例の樹脂部材の締結構造410によれば、ボス部412と係止部416との結合力を従来の構成に比して高めることができると共に、ヒンジ30の製造誤差や経時変化によってボス部212と係止部16との結合力が低下することを防止できるので、係止部416とボス部412とにガタつきが生じることを抑制することができる。これにより、二つの樹脂部材を確実に締結することが可能となる。
なお、本発明の第四実施形態のように、係止部416の薄肉ヒンジ30から挿入方向手前側延出片34までの長さが、薄肉ヒンジ30から挿入方向奥側延出片436までの長さよりも長く形成される構成は、係止部416を一対備えた構成のみに適用されるものではなく、上記第二実施形態のように係止部16を一つ備えた構成もしくは上記第三実施形態のように係止部16を三つ以上備える構成に適用することができることは勿論である。
次に、以上に記載の第二実施形態乃至第四実施形態より導き出される技術的思想を以下に示す。
(1)すなわち、第二実施形態より導き出される技術的思想は、挿通孔の内側には、係止部が一つ設けられ、傾斜部は、一つの係止部に形成された挿入方向手前側延出片と摺接可能に構成され、細径係止段部は、一つの係止部に形成された挿入方向奥側延出片と係止可能に構成されていることを特徴とする樹脂部材の締結構造である。
このように構成されていると、メンテナンス等によりボス部と係止部との係止状態を解除する必要が生じた場合でも、一つの係止部を工具等によって開くだけでボス部と係止部との係止状態を解除することができるので、ボス部と係止部との係止状態を解除する作業を容易に行うことができ好適である。
さらに、上述のように、係止部を一つ設ける構成とすると、係止部を複数設ける構成に比して、樹脂部材の締結構造を小型化することができるので好適である。
(2)続いて、第三実施形態より導き出される技術的思想は、挿通孔は、円形状に形成され、円形状に形成された挿通孔の内側には、挿通孔の円周方向に所定間隔を空けて係止部が少なくとも三つ以上設けられ、傾斜部は、少なくとも三つ以上設けられた係止部のそれぞれに形成された挿入方向手前側延出片と摺接可能に構成され、細径係止段部は、少なくとも三つ以上設けられた係止部のそれぞれに形成された挿入方向奥側延出片と係止可能に構成されていることを特徴とする樹脂部材の締結構造である。
このように構成されていると、ボス部に形成された細径係止段部の円周方向所定位置を少なくとも三つ以上の係止部で多点支持することができるので、係止部とボス部との結合状態をより安定させることができる。これにより、係止部とボス部とにガタつきが生じることを確実に抑制することが可能となる。
このとき、例えば、係止部を三つ備えた構成とした場合には、ボス部を係止部で三点支持することができるので、ボス部を挿通孔に対して同軸上に配置することが可能となる。これにより、係止部とボス部との結合状態をさらに安定させることができる。
また、上述のように、ボス部に形成された細径係止段部の円周方向所定位置を少なくとも三つ以上の係止部で多点支持することができるように構成すると、挿通孔および係止部に対してボス部をあらゆる回転角度で挿入することが可能となるので、これにより、ボス部の挿入方向中心軸を回転軸とする回転方向の位置決めを不要にすることが可能となる。従って、この構成により、第一の樹脂部材に対して第二の樹脂部材の取付角度が特に拘束されない場合などに取付作業性を向上させることが可能となる。
(3)そして、第四実施形態より導き出される技術的思想は、係止部のヒンジから挿入方向手前側延出片の先端までの長さは、ヒンジから挿入方向奥側延出片の先端までの長さよりも長く形成されていることを特徴とする樹脂部材の締結構造である。
このように構成されていると、梃子の原理により、挿入方向奥側延出片の細径係止段部への係止力を高めることができるので、ボス部と係止部との結合状態をより強固なものとすることができる。
また、梃子の原理により、挿入方向奥側延出片の細径係止段部への係止力を少ない力で高めることができるので、ボス部の傾斜部を係止部の挿入方向手前側延出片に摺接させる際の力(すなわちボス部の挿入時の抵抗感)を低減することが可能となる。これにより、取付作業時の負担を軽減することが可能となる。
次に、上記各実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、ボス部12に傾斜部20が形成され、ボス部12を挿通部14に挿入するときに傾斜部20に係止部16の挿入方向手前側延出片34が摺接して係止部16が強制的に回動する構成であるように説明した。
ところが、上記各実施形態の変形例として、挿入方向手前側延出片34に傾斜部が形成され、ボス部12を挿通部14に挿入するときに係止部16に形成された傾斜部にボス部12が摺接して係止部16が強制的に回動する構成であっても良い。
これより、次の技術的思想を導き出すことができる。
すなわち、第一の樹脂部材に突設されたボス部と、前記第一の樹脂部材と対向して配置される第二の樹脂部材に設けられ前記ボス部が挿入可能な挿通部と、前記挿通部の内側に配置されると共に、その長手方向中間部が前記第二の樹脂部材にヒンジを介して回動自在に連結されてなる係止部と、を備え、前記係止部は、前記長手方向中間部から前記ボス部の挿入方向手前側に延出する挿入方向手前側延出片と、前記長手方向中間部から前記ボス部の挿入方向奥側に延出する挿入方向奥側延出片と、前記挿入方向手前側延出片に形成されると共に、前記ボス部の挿入方向奥側から手前側に向かうに従って前記挿通部の径方向外側へ向かう傾斜面で構成された傾斜部と、を有して構成され、前記ボス部は、挿入方向手前側に形成されると共に、前記ボス部を前記挿通部に挿入するときに前記傾斜部と摺接する摺接部と、前記摺接部と前記摺接部よりも挿入方向奥側に形成された先端部との間に形成されると共に、前記ボス部を前記挿通部に挿入したときに前記摺接部が前記傾斜部と摺接することによって回動した前記係止部の挿入方向奥側延出片が係止される細径係止段部と、を有して構成されたことを特徴とする樹脂部材の締結構造である。
このように構成しても、上記各実施形態と同様に、第一の樹脂部材と第二の樹脂部材とを締結する場合には、ボス部が係止部の挿入方向手前側延出片を挿通部の外側へ回動すると同時に挿入方向奥側延出片を挿通部の内側へ強制的に回動する力で係止部の挿入方向奥側延出片とボス部の細径係止段部とが係止される。
この変形例より導き出される技術的思想によっても、従来のように薄肉部が発揮する弾性力で嵌合部とボス部とを係止する構成に比して、ボス部と係止部との結合力を高めることができる。
これにより、係止部とボス部とにガタつきが生じることを抑制することができるので、二つの樹脂部材を確実に締結することが可能となる。