JP4379335B2 - コークス炉煙道内部補修方法及び作業用断熱ボックス、並びに、補修時のコークス炉操業方法 - Google Patents

Description

本発明は、コークス炉の煙道内部を補修する方法、および、その補修方法を実施するための作業用断熱ボックスと、前記補修時におけるコークス炉操業方法に関するものである。

長期間稼動したコークス炉には、燃焼排気ガス（以下、「排ガス」とも略称する。）用の煙道内部に堆積物が溜まってくる。この堆積物は、燃焼排気ガスの熱などの影響で焼結するが、煙道内に設置したバタフライ弁の付近に堆積した堆積物は、バタフライ弁の円滑な動作を阻害する要因となる。バタフライ弁の制御が不良になると、コークス炉の燃焼不良の原因となり、熱量ロスや煙突からの黒煙放出という問題を引き起こして、コークス炉の操業上、深刻な悪影響を及ぼす。

したがって、バタフライ弁の周辺部だけでも優先的に堆積物を除去する必要があるが、煙道内部では、酸素濃度が１０％以下の２００℃の燃焼排気ガスが、５ｍ／秒以上の流速で流れており、作業者が特別な安全対策なしで作業できる環境ではない。また、煙道内部の補修工事により煙道のドラフトを変動させることは、コークス炉の燃焼制御にも大きな影響を与えるため、煙道内部の作業時にはコークス炉内部の燃焼状況、温度について細かい管理（煙道内部補修作業時に燃料ガス停止実施等）が必要であった。

したがって、従来は、コークス炉煙道内部を補修する場合には、（１）燃料ガスの供給停止、（２）燃焼エアー供給孔の蓋の全閉、（３）窯出し停止、（４）大ダンパー全閉を行った上で、煙道内部にエアーラインマスクを装着した作業者が入って補修作業を行っていた。

上記項目のうち、（１）は煙道内に流れ込む燃焼排気ガスを止めるため、（２）は燃料ガスの停止で不要となった燃焼エアーを停止して、冷気侵入による炉体冷却を防止するため、（３）は燃焼停止に起因するコークス乾留遅れに対応するため、（４）は煙道を遮断することで炉体の隙間から冷気が侵入することを防止するためである。

ところで、前記（１）〜（４）の対応は、１）コークス生産（窯出し）の中断や、２）燃焼停止によるコークス炉の温度変動に伴う炉体の損傷進展を引き起こすという問題が発生している。しかしながら、従来、このような問題を解決するための手段については全く考慮されていないのが実情であった。

本発明が解決しようとする問題点は、従来は、コークス炉の燃焼を停止することなく、通常の燃焼管理を継続したまま、良好な作業環境雰囲気（４０℃以下、通常大気レベルの酸素濃度、ＣＯ濃度５０ｐｐｍ以下）を維持しながら、コークス炉煙道内部の堆積物を除去・掃除して補修することはできなかったという点である。

本発明のコークス炉煙道内部補修方法は、
コークス炉の燃焼を停止することなく、良好な作業環境雰囲気を維持しながら、コークス炉の煙道内部を補修するために、
コークス炉煙道に開口を設けて、当該開口より煙道内部に、煙道の下流側に向かって燃焼排気ガスの流入防止用開口が設けられ、また、煙道に設けた前記開口に面して入り口が設けられた作業用断熱ボックスを挿入した後、この断熱ボックスに設けられた入り口から断熱ボックス内に入った作業者が、断熱ボックスで囲まれた煙道内部を補修する点を最も主要な特徴としている。

前記本発明のコークス炉煙道内部補修方法を実施するに際しては、
前記煙道の開口時、
前記煙道に設ける開口よりも上流側に、煙道ドラフト計と燃焼排気ガスの酸素濃度計のどちらか一方または両方を設置し、
前記設置する計器の測定値をもとに燃焼制御を行う。これが本発明のコークス炉操業方法である。

本発明によれば、コークス炉の煙道内部を補修する際に、良好な作業環境を維持することができるので、作業時間を短縮できるとともに、コークス炉については燃焼停止を行うことなく操業を継続できるという利点がある。

以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付図面を用いて詳細に説明する。
図１は本発明のコークス炉煙道内部補修方法を説明する概略図で、図１中の１はコークス炉２で発生した燃焼排気ガス３を煙突４まで導く煙道である。

そして、この煙道１の内部に堆積した堆積物を除去するに際し、本発明では、煙道１に開口１ａを設け、この開口１ａより作業用の断熱ボックス５を挿入する。作業者Ｍは、この断熱ボックス５の中に入り、断熱ボックス５で囲まれた煙道１の内部に堆積した堆積物を除去する。

この開口１ａより煙道１の内部に挿入する断熱ボックス５は、煙道内部の堆積物の除去時に作業者Ｍを暑熱と酸欠から保護できるものであれば、その構成は問わないが、本例では、２つの部品を組み合わせて断熱ボックス５を構成したものを示している。以下、この例に基づいて説明する。

まず、図２に示すように、前記開口１ａから、上流側壁面５ａａ、一方の側壁５ａｂおよび天井壁５ａｃの３つの壁面で構成された第１の断熱ボックス部品５ａを、煙道１の内部に挿入する。このような構成の第１の断熱ボックス部品５ａでは、前記開口１ａに面する第１の断熱ボックス部品５ａの他方の側壁に相当する部分が断熱ボックス５の入り口５ｃとなる。

このような構成の第１の断熱ボックス部品５ａを、開口１ａより煙道１の内部に挿入すれば、図３に示すように、煙突４のドラフト力によって前記入り口５ｃから外気６が流れ込むので、第１の断熱ボックス部品５ａの内部には、煙道１内を流れる燃焼排気ガス３が流れ込まなくなる。

したがって、たとえば図４に示すように、両側壁５ｂａと天井壁５ｂｂの３つの壁面で構成された、横断面がコ字状の第２の断熱ボックス部品５ｂを、煙道１の内部に挿入する際には、第１の断熱ボックス部品５ａの内部で、燃焼排気ガス３による暑熱・酸欠から作業者Ｍが保護された状態で、第１の断熱ボックス部品５ａと第２の断熱ボックス部品５ｂの連結作業が行えるようになる。

このように煙道１の内部に挿入した第１の断熱ボックス部品５ａと第２の断熱ボックス部品５ｂは、煙道１の内部において連結するが、この連結は、溶接またはボルト固定または嵌め込みなど、適宜の方法を選択すれば良い。

このように構成された、本発明の断熱ボックス５においては、第２の断熱ボックス部品５ｂの下流側の開口が燃焼排気ガス３の流入防止用開口５ｄとなる。

また、第２の断熱ボックス部品５ｂよりも煙道１の下流側に第２の断熱ボックス部品５ｂと同形状の断熱ボックス部品を逐次連結してゆけば、煙道内のより下流側での作業も可能となる。この場合、最下流側に配置された断熱ボックス部品の下流側の開口が燃焼排気ガスの流入防止用開口となることは言うまでもない。

煙道１の内部は、煙突４のドラフト力によって外気より負圧であるので、常に外気６が断熱ボックス５の入り口５ｃから断熱ボックス５を通って煙道１内に流れ込み、煙突４から排出されることになる。また、煙道１を通過する燃焼排気ガス３は、断熱ボックス５内に流れ込むことがないので、この断熱ボックス５で囲まれた煙道１内の堆積物を除去する作業者Ｍを、暑熱と酸欠から保護することが可能になる。

この断熱ボックス５の挿入後における堆積物の除去の際、断熱ボックス５の入り口５ｃの開口面積を調整できるように、たとえば図５に示したように、煙道１の開口１ａに煙道開口部開口面積調整用扉（以下、「扉」とも略称する）１ｂを設置し、断熱ボックス５を介して煙道１内に流入する外気６の侵入量を調節できるようにしておけば、外気６の過度の吸い込みによる煙突ドラフト力の低下を防止することができる。

この断熱ボックス５への外気６の流入量の調整は、たとえば断熱ボックス５の内部に設置したセンサー１５によって計測した酸素濃度、ＣＯ濃度、温度等を確認しながら、前記扉１ｂを開閉して行えば良い。これにより、作業環境（断熱ボックス５の内部）を通常大気レベルの酸素濃度、ＣＯ濃度５０ｐｐｍ以下、気温４０℃以下に保つことが可能となる。

以上の本発明により、作業者Ｍは、エアーラインマスクを装着することなく、断熱ボックス５の床部に相当する部分の、煙道１内に付着した堆積物の除去作業が可能になる。また、断熱ボックス５内部の温度が４０℃以下に保てることで作業性が向上する結果、作業者Ｍの疲労が軽減されて連続作業時間も延び、作業効率が向上する。また、従来のような窯出しの停止をする必要もない。下記表１に、従来法と本発明法による補修作業に要する時間等を示す。

なお、前記断熱ボックス５の入り口５ｃの開口面積を調整できるものであれば、前記入り口５ｃに扉を設けるものでも良いことは言うまでもない。

図６は、コークス炉２の煙道１内部に、断熱ボックス５を挿入した際の燃焼制御イメージを示した図である。
前述の本発明のコークス炉煙道内部補修方法を実施するに際しては、煙道１の開口１ａより外気６が煙道１の内部に入り込むので、前記開口１ａの下流側における外気６と燃焼排気ガス３が混合された位置で、燃焼排気ガス３のＯ₂値や煙道ドラフト力を測定しても、適正な燃焼状態を把握することはできない。

よって、本発明のコークス炉煙道内部補修方法を実施する際には、適正な燃焼制御を行うために、燃焼排気ガス３の酸素濃度計７と煙道ドラフト計８は、図６に示したように、煙道１の開口１ａより上流側に設置して、燃焼排気ガス３のみの排ガスのＯ₂値と煙突ドラフト力を測定する必要がある。

そして、前記酸素濃度計７と煙道ドラフト計８での測定値を制御演算器９にフィードバックしながら、制御演算器９は、燃料ガス流量計１０から送られてくるコークス炉２への供給燃料ガス流量を勘案して、燃料ガス供給配管１１に設置されたバタフライ弁１２と、煙道１に設置されたバタフライ弁１３の開度制御を実施する。

このようにすることで、煙道１の開口１ａからの外気６の流入影響を除外した燃焼制御が可能となる。これが、本発明のコークス炉煙道内部補修方法を実施する際の、本発明のコークス炉操業方法である。なお、図６中の１４は煙突４の直前の煙道１中に設置された大ダンパーを示す。

ところで、煙突４のドラフト力が弱い場合、煙道１の開口１ａから流入する外気６の分だけドラフト力が不足するということが起こる。しかしながら、このような場合には、燃料ガスカロリーを上昇させて投入熱量を確保しつつ燃料ガス量を下げて、燃焼排気ガス量を下げることで対応すれば良い。

以上の本発明において、ガス流れの説明での「上流」、「下流」とは、流れにおいてベルヌーイの式で表現される「全エネルギー」の大きな部位と小さな部位の相対的表現として用いる。ベルヌーイの式の全エネルギーＵは下記の通りで、流体速度Ｖ、流体の静圧Ｐ、流体の密度ρ、流体に作用する外力Ｚで表現される。
Ｕ＝（１／２）×ρ×Ｖ²＋Ｐ＋Ｚ

本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範囲内で、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。

本発明は、コークス炉の煙道内部の補修に限らず、同様の煙道内部の補修作業にも利用できる。

本発明のコークス炉煙道内部補修方法を説明する概略図で、（ａ）は全体図、（ｂ）は（ａ）図のＢ部詳細図である。 ２つの部品を組み合わせて断熱ボックスを構成した場合の、第１の断熱ボックス部品を煙道に挿入する際の説明図である。 第１の断熱ボックス部品を煙道に挿入した後の説明図である。 第２の断熱ボックス部品を煙道に挿入する際の説明図である。 煙道への断熱ボックスの挿入完了時の説明図である。 コークス炉の煙道内部に、断熱ボックスを挿入した際の燃焼制御イメージを示した図である。

符号の説明

１ 煙道
１ａ 開口
１ｂ 煙道開口部開口面積調整用扉
２ コークス炉
３ 燃焼排気ガス
５ 断熱ボックス
５ｃ 入り口
５ｄ 流入防止用開口
７ 酸素濃度計
８ 煙道ドラフト計

Claims (5)

1. コークス炉煙道に開口を設けて、当該開口より煙道内部に、煙道の下流側に向かって燃焼排気ガスの流入防止用開口が設けられ、また、煙道に設けた前記開口に面して入り口が設けられた作業用断熱ボックスを挿入した後、この断熱ボックスに設けられた入り口から断熱ボックス内に入った作業者が、断熱ボックスで囲まれた煙道内部を補修することを特徴とするコークス炉煙道内部補修方法。
2. 前記作業用断熱ボックスの入り口の開口面積を制御し、作業用断熱ボックスを通して煙道内部に流れ込む空気量を調節しつつ煙道内部を補修することを特徴とする請求項１に記載のコークス炉煙道内部補修方法。
3. コークス炉煙道内部を補修するに際し、
   前記煙道の開口時、
   前記煙道に設ける開口よりも上流側に、煙道ドラフト計と燃焼排気ガスの酸素濃度計のどちらか一方または両方を設置し、
   前記設置する計器の測定値をもとに燃焼制御を行うことを特徴とするコークス炉操業方法。
4. コークス炉煙道内部の補修時、コークス炉煙道に設ける開口から煙道内部に挿入される作業用断熱ボックスであって、
   煙道の下流側に向かって燃焼排気ガスの流入防止用開口が設けられ、煙道に設けた開口に面して入り口が設けられていることを特徴とする作業用断熱ボックス。
5. 前記入り口の開口面積が制御可能なように構成されていることを特徴とする請求項４に記載の作業用断熱ボックス。

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