本発明は屈曲モードで振動する振動腕と基部から成る水晶振動子とその振動子とケースと蓋から構成される水晶ユニットと増幅回路と帰還回路から成る水晶発振器に関する。特に、小型化、高精度化、耐衝撃性、低廉化の要求の強い情報通信機器用の基準信号源として最適な水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器で、新形状、新電極構成及び最適寸法を有する超小型の屈曲水晶振動子から構成される水晶ユニットと、基本波モード振動の発振周波数が出力信号である水晶発振器に関する。
一例として、従来の屈曲水晶振動子は音叉腕と音叉基部から構成され、音叉腕の上下面と側面に電極が配置されている。即ち、2電極端子を構成するように電極が配置されている。また、従来の水晶ユニットはケースと蓋と一体に形成された音叉腕と音叉基部から成る音叉型屈曲水晶振動子から構成され、更に、水晶発振器は増幅器とコンデンサと抵抗と音叉腕の上下面と側面に電極が配置された従来の音叉型屈曲水晶振動子から成る水晶発振器がよく知られている。多用されている従来の音叉型屈曲水晶振動子は2本の音叉腕と音叉基部から構成され、前記振動子の共振周波数は音叉の腕幅Wに比例し、音叉の腕の長さの二乗に反比例する。それ故、小型化を図るためには、腕幅Wを小さくする必要がある。しかしながら、腕幅Wを小さくすると、等価直列抵抗R1が大きくなるという課題が残されていた。また、前記音叉型屈曲水晶振動子から成る従来例の水晶ユニットと水晶発振器の小型化も同時に課題として残されていた。
このR
1が大きくなる理由は、音叉腕に配置された電極の、水晶の電気軸(x軸)方向の電界成分Exが大きいほど等価直列抵抗R
1が小さくなり、品質係数Q値が大きくなる。しかしながら、従来から使用されている音叉型屈曲水晶振動子は、各音叉腕の上下面と側面の4面に電極を配置している。そのために電界が直線的に働かず、かかる音叉型屈曲水晶振動子を小型化させると、電界成分Exが小さくなってしまい、等価直列抵抗R
1が大きくなり、品質係数Q値が小さくなる。同時に、時間基準として高精度な、即ち、高い周波数安定性を有し、2次高調波モード振動を抑えた屈曲水晶振動子を得ることが課題として残されていた。また、前記課題を解決する方法として、例えば、特開昭56−65517では音叉腕に溝を設け、且つ、溝の構成と電極構成について開示している。しかしながら、アース電極からなる3電極端子の電極構成、溝の構成、寸法と振動モード並びに基本波モード振動での等価直列抵抗R
1と2次高調波モード振動での等価直列抵抗R
2との関係及び周波数安定性に関係するフイガーオブメリットMについては全く開示されていない。と同時に、前記溝を設けた振動子を従来の回路に接続し、水晶発振回路を構成すると、基本波モード振動の出力信号が衝撃や振動などの影響で出力信号が2次高調波モード振動の周波数に変化、検出される等の問題が発生していた。さらに、水晶発振器の消費電流を低減するために、負荷容量C
Lを小さくすると、2次高調波モードの振動がし易くなり、基本波モード振動の出力周波数が得られない等の課題が残されていた。更に、隣接する振動腕に配置される電極が2電極端子の構成では、その形成が難しいという課題が残されていた。同時に、音叉の全長を短くできないという課題も残されていた。
特開昭56−65517 国際公開第00/44092 特開平10−153432 特開2003−163568
このようなことから、水晶振動子に配置される電極の構成、接続が容易で、水晶振動子が衝撃や振動を受けても、それらの影響を受けない2次高調波モード振動を抑えた基本波モードで振動する屈曲水晶振動子とそれを備えた水晶ユニットと水晶発振器が所望されていた。さらに、基本波モードで振動する水晶振動子の長さ寸法の短い、即ち、全長の短い超小型で、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値が高くなるような新形状で、電気機械変換効率の良い溝の構成と電極構成を有する超小型の屈曲水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットと、その水晶ユニットを具えた、出力信号が基本波モード振動の発振周波数で、高い周波数安定性(高い時間精度)を有する超小型の水晶発振器が所望されていた。同時に、消費電流の少ない、立ち上がり時間の短い水晶発振器が所望されていた。
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した屈曲モードで振動する屈曲水晶振動子とそれを備えた水晶ユニットと水晶発振器を提供することを目的とするものである。
即ち、本発明の水晶振動子の第1の態様は、第1電気的極性を有する電極と、第1電気的極性と異なる第2電気的極性を有する電極と、第1電気的極性と第2電気的極性と異なる第3電気的極性を有する電極を備えて構成さる3電極端子の水晶振動子において、前記水晶振動子は、屈曲モードで振動する少なくとも第1振動腕と第2振動腕を備えて構成される複数の振動腕と基部からなる屈曲水晶振動子で、第1振動腕と第2振動腕の各々は上面と下面と側面とを有し、第1振動腕と第2振動腕の上面と下面の各々に溝が設けられ、第1振動腕と第2振動腕の側面と上面と下面の各々に設けられた溝に電極が配置されていて、前記側面の電極と前記溝の電極のいずれか一方がアースに接地されている水晶振動子である。
本発明の水晶振動子の第2の態様は、第1の態様において、前記屈曲水晶振動子は音叉基部とその音叉基部に接続された少なくとも第1音叉腕と第2音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、第1音叉腕の上下面の各々に第1溝が設けられ、かつ、第1溝に第1電気的極性を有する第1電極が配置され、第2音叉腕の上下面の各々に第2溝が設けられ、かつ、第2溝に第1電気的極性と異なる第2電気的極性を有する第2電極が配置され、第1音叉腕と第2音叉腕の各々は第1側面とその第1側面に対抗する第2側面を有し、第1音叉腕の第1側面と第2側面に第3電極が配置され、第2音叉腕の第1側面と第2側面に第4電極が配置され、第3電極と第4電極は電気的に接続されていて、電気的に接続された第3電極と第4電極は、第1電気的極性と第2電気的極性と異なる第3電気的極性を有し、かつ、アースに接地されている水晶振動子である。
本発明の水晶振動子の第3の態様は、第1の態様において、前記屈曲水晶振動子は音叉基部とその音叉基部に接続された少なくとも第1音叉腕と第2音叉腕を備えて構成される音叉型屈曲水晶振動子で、第1音叉腕と第2音叉腕の各々は第1側面とその第1側面に対抗する第2側面を有し、第1音叉腕の第1側面と第2側面に第1電気的極性を有する第1電極が配置され、第2音叉腕の第1側面と第2側面に第1電気的極性と異なる第2電気的極性を有する第2電極が配置され、第1音叉腕の上下面の各々に第1溝が設けられ、かつ、第1溝に第3電極が配置され、第2音叉腕の上下面の各々に第2溝が設けられ、かつ、第2溝に第4電極が配置され、第3電極と第4電極は電気的に接続されていて、電気的に接続された第3電極と第4電極は、第1電気的極性と第2電気的極性と異なる第3電気的極性を有し、かつ、アースに接地されている水晶振動子である。
このように、本発明は屈曲モードで振動する屈曲水晶振動子とそれを備えた水晶ユニットと水晶発振器で、しかも、屈曲水晶振動子の振動腕の電極の配置を改善することにより、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い屈曲水晶振動子が得られ、かつ、増幅回路と帰還回路との関係を示すことにより、2次高調波モード振動を抑え、基本波モード振動で振動する発振周波数を出力する水晶発振器を得る事ができる。
加えて、振動腕に溝を設け、且つ、3電極端子となる電極を振動腕に配置し、溝の寸法の最適化を図る事により、超小型で、等価直列抵抗R1が小さく、Q値が高く、電気機械変換効率の良い、安価な音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。と同時に、帰還回路の負荷容量を小さくできる。その結果、消費電流の少ない水晶発振器が実現できる。
以下、本発明の実施例を図面に基づき具体的に述べる。
実施例1の屈曲水晶振動子
図1の(a)と(b)は、本発明の実施例1の屈曲モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子10の上面図と下面図を示す。また、x、y、zはそれぞれ水晶の電気軸、機械軸、光軸である。本実施例の屈曲水晶振動子10は振動腕(音叉腕)11、振動腕(音叉腕)12と基部25とを備えて構成され、振動腕11と振動腕12の一端部は基部(音叉基部)25に接続されている。また、振動腕11と振動腕12はそれぞれ上面と下面と側面とを有し、振動腕11の上面には溝13が下面には溝15が設けられ、又、振動腕12の上面と下面にも振動腕11と同様に溝14、16が設けられている。なお、角度θは、x軸廻りの回転角であり、通常0〜15°の範囲で選ばれる。本実施例では、振動腕11の中立線を挟むようにして溝13、15が設けられている。他方の振動腕12にも中立線を挟むようにして溝14、16が設けられている。
更に、振動腕11の溝13、15には電極17、19が配置されていて、それぞれの電極が基部25の端部の電極17a、19aに接続されている。更に、電極17aと電極19aは基部25の側面の電極17bを介して接続されている。同様に、振動腕12の溝14、16には電極18、20が配置されていて、それぞれの電極が基部25の端部の電極18a、20aに接続されている。更に、電極18aと電極20aは基部25の側面の電極18bを介して接続されている。更に、振動腕11の側面には電極21,22が配置、接続され、振動腕12の側面には電極23,24が配置、接続されていて、電極22と電極23は同極となるように音叉の叉部付近で接続されている。即ち、電極21,22,23,24は同極となるように接続されている。
更に、振動腕の部分幅W
1、W
3と溝幅W
2とすると、振動腕11,12の腕幅WはW=
W
3となるように形成される。又、溝幅W
2はW
2≧W
1,W
3を満足する条件で形成される。更に具体的に述べると、本実施例では、溝幅W
2と腕幅Wとの比(W
2/W)が0.35より大きく、1より小さくなるように、好ましくは、0.35〜0.95の範囲内にある。また、図2で示すように、溝の厚みt
1と振動腕の厚みtとの比(t
1/t)が0.79より小さくなるように(t
1=0(貫通孔)を含む)、好ましくは、0.01〜0.79となるように溝が振動(音叉)腕に形成されている。本実施例では、t
1<tの関係を有するが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明はt
1=tの関係をも包含する。即ち、振動腕に溝のない平面である。電極は平面である上下面に配置され、電極の配置、接続は溝を有するときと同じである。このように形成することにより、振動腕の中立線を基点とするモーメントが大きくなる。即ち、電気機械変換効率が良くなるので、等価直列抵抗R
1の小さい、Q値の高い、しかも、容量比の小さい音叉形状の屈曲水晶振動子を得ることができる。
これに対して、図示されていないが、溝13、15と溝14、16は溝の長さL
0を、振動腕は腕の長さLを有する。それ故、R
1の小さい振動子を得るために、L
0/Lが0.4〜0.8の値を有する。ここで、溝に配置される電極が溝の一部に配置されるときには、L
0は溝の電極の長さL
dである。更に、屈曲水晶振動子10の全長L
tは要求される周波数や収納容器の大きさなどから決定される。本実施例では、音叉形状で、小型化を図るために、L
tは2.8mm以下の寸法を有し、好ましくは、2.1mm以下の寸法を有する。より小型化を図るために、L
tは1.02mm〜1.95mmの範囲内にある。そして、振動腕の全幅W
5(=2W+W
4)は0.43mm以下に、好ましくは、0.15mm〜0.36mmの範囲内にある。また、本実施例では、(音叉)基部の幅寸法はW
Hで与えられ、W
〜0.53mmの範囲内にある。更に、基本波モードで振動する良好な音叉形状の屈曲水晶振動子を得るためには、溝の長さL
0と全長L
tとの間には密接な関係が存在する。
すなわち、振動腕11,12に設けられた溝の長さL0と音叉形状の屈曲水晶振動子の全長Ltとの比(L0/Lt)が0.23〜0.88となるように溝の長さは設けられる。特に、L0は1.45mm以下に、好ましくは、L0は0.48mm〜1.29mmの範囲内にある。又、L0は基部(基部の溝の長さLK)にまで延在しても良い。このように形成する理由は、特に、不要振動である2次高調波振動を抑圧する事ができると共に、基本波モード振動の周波数安定性を高めることができる。それ故、基本波モードで容易に振動する良好な屈曲水晶振動子が実現できる。詳述するならば、基本波モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子の等価直列抵抗R1が2次高調波モード振動での等価直列抵抗R2より小さくなる。即ち、R1<R2となり、増幅器(CMOSインバータ)、コンデンサ、抵抗素子、本実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子等から成る水晶発振器において、振動子が基本波モードで容易に発振する良好な水晶発振器が実現できる。即ち、基本波モード振動の発振周波数が出力信号として得られる。又、溝の長さL0は振動腕の長さ方向に分割されていても良く、その中の少なくとも1個が前記辺比(L0/Lt)を満足すれば良いか、又は、分割された溝の長さ方向の加えられた溝の長さが前記辺比(L0/Lt)を満足すれば良い。
また、この実施例では、基部25は図1の(a)と(b)中、振動子10のU字形状の下側と幅WHの部分全体とされ、又、振動腕11と振動腕12は、図1の(a)と(b)中、振動子10のU字形状の上側の部分全体とされている。本実施例では音叉の叉部はU字型をしているが、本発明は前記形状に限定されるものではなく、音叉の叉部が矩形をしていても良い。この場合もU字型の形状と同じように、振動腕と基部との寸法の関係は前記関係と同じである。また、本発明で言う溝の長さL0とは、溝幅W2と振動腕幅Wとの比(W2/W)が0.35より大きく、且つ、1より小さく、溝の厚みt1と振動腕の厚みtとの比(t1/t)が0.79より小さくなるように形成された溝の長さである。
換言するならば、中立線を含む振動腕の上下面に各々少なくとも1個の溝が長さ方向に設けられ、前記溝の両側面に電極が配置され、前記溝側面の電極とその電極に対抗する振動腕側面の電極とが互いに異極となるように構成され、振動腕に生ずる慣性モーメントが大きくなるように前記各々少なくとも1個の溝の内少なくとも1個の溝幅W2と振動腕幅Wとの比(W2/W)が0.35より大きく、1より小さく、且つ、前記溝の厚みt1と振動腕の厚みtとの比(t1/t)が0.79より小さくなるように溝が形成されている。
一例として、振動腕は少なくとも第1振動腕と第2振動腕を具えて構成され、前記第1振動腕と前記第2振動腕と前記基部とはエッチング法によって一体に形成されていて、第1振動腕と第2振動腕の上下面にはそれぞれ厚みの方向に対抗して溝が設けられ、前記溝は第1振動腕と第2振動腕の中立線を挟んだ幅方向略中央部の上下面に各々1個の溝が設けられ、少なくとも1個の溝幅W2は部分幅W1、W3と等しいか、又は部分幅W1、W3より大きくなるように形成され、且つ、各々の溝には第1振動腕の溝の電極と第2振動腕の溝の電極との極性が異なる電極が配置されると共に、前記溝の電極と対抗して配置された振動腕の側面の電極とは極性が異なる3電極端子を構成し、前記3電極端子の内、1電極端子は第1振動腕の上下面の溝に配置、接続された電極から構成され、1電極端子は第2振動腕の上下面の溝に配置、接続された電極から構成され、残りの1電極端子は第1振動腕と第2振動腕の両側面に配置、接続された電極から構成されている。
更に詳述するならば、屈曲水晶振動子の誘導性と電気機械変換効率と品質係数を表すフイガーオブメリットMiは品質係数Qi値と容量比riの比(Qi/ri)によって定義され(i=1のとき基本波振動、i=2のとき2次高調波振動)、屈曲水晶振動子の並列容量に依存しない機械的直列共振周波数fsと並列容量に依存する直列共振周波数frの周波数差ΔfはフイガーオブメリットMiに反比例し、その値Miが大きい程Δfは小さくなる。従って、Miが大きい程、屈曲水晶振動子の共振周波数は並列容量の影響を受けないので、屈曲水晶振動子の周波数安定性は良くなる。即ち、時間精度の高い屈曲水晶振動子が得られる。
詳細には、前記音叉形状と溝とその寸法の構成により、基本波モード振動のフイガーオブメリットM1が2次高調波モード振動のフイガーオブメリットM2より大きくなる。即ち、M1>M2となる。一例として、音叉形状の基本波モード振動の基準周波数が32.768kHzで、W2/W=0.5、t1/t=0.34、L0/Lt=0.48のとき、製造によるバラツキが生ずるが、音叉形状の屈曲水晶振動子のM1、M2はそれぞれM1>60、M2<30となる。即ち、高い誘導性と電気機械変換効率の良い(等価直列抵抗R1の小さい)、品質係数の大きい基本波モードで振動する屈曲水晶振動子を得ることができる。その結果、基本波モード振動の周波数安定性が2次高調波モード振動の周波数安定性より良くなると共に、2次高調波モード振動を抑圧することができる。
図2は、図1の屈曲水晶振動子10の振動腕11,12のA−A′断面図を示す。振動腕11には溝13,15が設けられている。同様に、振動腕12には溝14,16が設けられている。更に、溝13と溝15には同極となる電極17,19が配置、接続され、溝14と溝16には同極となる電極18,20が配置、接続されている。また、振動腕11,12の側面には同極となる電極21,22,23,24が配置、接続され、これらの電極はアースに接地されている。即ち、アース電極で、記号B″で表す。更に詳述するならば、振動腕11の溝の電極と振動腕12の溝の電極とは極性の異なる電極が配置されている。それ故、本実施例では3電極端子B−B′−B″を構成している。即ち、1電極端子(記号B)は電極17,19から構成、接続されている。他の1電極端子(記号B′)は電極18,20から構成、接続されている。更に残りの1電極端子(記号B″)はアース電極(零の極性)で、電極21,22,23,24から構成、接続されている。即ち、3電極端子B、B′、B″に接続される電極はそれぞれ極性が異なる。更に電極について詳述するならば、本実施例では、第1振動腕11の両側面と第2振動腕12の両側面に配置された電極21,22,23,24に対抗して配置された対抗電極は前記第1振動腕と前記第2振動腕の両側面の電極の各々に対して一部分対抗して配置されている。
即ち、振動腕のz軸(厚み)方向に対抗する溝電極は同極に、且つ、大略x軸の方向に対抗する電極は極性が異なるように構成、配置されている。詳細には、厚み方向に対抗して設けられた溝に配置された電極の対抗する溝電極と溝電極との間には前記溝電極に対して垂直に発生する電界が厚み方法に存在しないように電極が配置されている。今、2電極端子B−B′間に直流電圧を印加(B端子に正極、B′端子に負極)すると、電界Exは図2に示した矢印のように働く。電界Exは振動腕の側面と溝内の側面とに対抗して配置された電極により前記電極に垂直に、即ち、直線的に引き出されるので、電界Exが大きくなり、その結果、振動(音叉)腕の長さ方向に同時に歪が発生すると共に、中立線に対して振動(音叉)腕の内側と外側では歪の方向が反対に発生し、且つ、第1振動(音叉)腕と第2振動(音叉)腕の中立線に対して音叉の内側に発生する歪の方向とが同じで、第1振動(音叉)腕と第2振動(音叉)腕の中立線に対して音叉の外側に発生する歪の方向が同じで、更に、前記内側の歪と前記外側の歪とが互いに反対の方向に発生する。それ故、2電極端子B−B′間に交番電圧を印加することにより、振動(音叉)腕が基本波モードで、かつ、逆相の屈曲モードで振動し、共振特性が良くなると共に、発生する歪の量も大きくなる。従って、音叉形状の屈曲水晶振動子を小型化させた場合でも、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い屈曲モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。
また、屈曲水晶振動子10の振動(音叉)腕は厚みtを有し、溝は厚みt1を有している。ここで言う厚みt1は溝の一番深いところの厚みを言う。本実施例では、溝の断面形状は矩形の形状をしているが、実際には大略U字形状、又は大略V字形状、あるいは大略U字形状と大略V字形状が合成された形状をしている。より詳細には、溝が深くなるにつれて、溝の幅は徐々に狭くなる傾向を示す。このことは他の実施例の屈曲水晶振動子でも言えることである。
実施例2の屈曲水晶振動子
図3の(a)と(b)は、本発明の実施例2の屈曲モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子30の上面図と下面図を示す。本実施例の屈曲水晶振動子30は振動腕(音叉腕)31、振動腕(音叉腕)32と基部45とを備えて構成され、振動腕31と振動腕32の一端部は基部(音叉基部)45に接続されている。また、振動腕31と振動腕32はそれぞれ上面と下面と側面とを有し、振動腕31の上面には溝33が下面には溝35が設けられ、又、振動腕32の上面と下面にも振動腕31と同様に溝34、36が設けられている。更に、振動腕31の側面には電極41,42が配置、接続されていて、電極41が基部45の上下面の端部の電極41a、41cに接続されている。更に、電極41aと電極41cは基部45の側面の電極41bを介して接続されている。同様に、振動腕32の側面には電極43,44が配置、接続されていて、電極44が基部45の上下面の端部の電極44a、44cに接続されている。更に、電極44aと電極44cは基部45の側面の電極44bを介して接続されている。
更に、振動腕31の溝33,35には電極37,39が配置され、振動腕32の溝34,36には電極38,40が配置されていて、電極37と電極38は同極となるように接続され、かつ、電極39と電極40も同極となるように接続されている。そして、一方の接続された電極37,38は基部45の端部の電極46に接続され、他方の接続された電極39,40は基部45の端部の電極47に接続されている。更に、電極46と電極47は基部45の側面の電極46aを介して接続されている。即ち、電極37,38,39,40は同極となるように接続されている。尚、図3には示されていないが、振動子の各寸法の関係は実施例1と同じように形成される。
図4は、図3の屈曲水晶振動子30の振動腕31,32のC−C′断面図を示す。振動腕31には溝33,35が設けられている。同様に、振動腕32には溝34,36が設けられている。更に、溝33,34,35,36には同極となる電極37,38,39.40が配置、接続され、これらの電極はアースに接地されている。即ち、アース電極である。また、振動腕31の側面には同極となる電極41,42が配置、接続され、振動腕32の側面には同極となる電極43,44が配置、接続されている。更に詳述するならば、振動腕31の側面の電極と振動腕32の側面の電極とは極性の異なる電極が配置されている。それ故、本実施例では3電極端子D−D′−D″を構成している。即ち、1電極端子(記号D)は電極41,42から構成、接続されている。他の1電極端子(記号D′)は電極43,44から構成、接続されている。更に残りの1電極端子(記号D″)はアース電極(零の極性)で、電極37,38,39,40から構成、接続されている。即ち、3電極端子D、D′、D″に接続される電極はそれぞれ極性が異なる。更に電極について詳述するならば、第1振動腕31の両側面と第2振動腕32の両側面に配置された電極41,42,43,44に対抗して配置された対抗電極は前記第1振動腕と前記第2振動腕の両側面の電極の各々に対して一部分対抗して配置されている。今、2電極端子D−D′間に直流電圧を印加(D端子に正極、D′端子に負極)すると、電界Exは図4に示した矢印のように働く。それ故、2電極端子D−D′間に交番電圧を印加することにより、振動(音叉)腕が基本波モードで、かつ、逆相の屈曲モードで振動し、共振特性が良くなると共に、発生する歪の量も大きくなる。従って、音叉形状の屈曲水晶振動子を小型化させた場合でも、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い屈曲モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。
実施例3の屈曲水晶振動子
図5の(a)と(b)は、本発明の実施例3の音叉形状の屈曲水晶振動子で、音叉腕(振動腕)の断面図を示す。図5の(a)では、屈曲水晶振動子50の振動腕51の上面に溝53が、振動腕52の上面には溝54が設けられている。更に、溝53と振動腕51の下面には同極となる電極56,61が配置、接続され、溝54と振動腕52の下面には同極となる電極59,62が配置、接続されている。また、振動腕51,52の側面には同極となる電極55,57,58,60が配置、接続され、これらの電極はアースに接地されている。即ち、アース電極で、記号E″で表す。更に詳述するならば、振動腕51の溝の電極と振動腕52の溝の電極とは極性の異なる電極が配置されている。それ故、本実施例では3電極端子E−E′−E″を構成している。即ち、1電極端子(記号E)は電極56,61から構成、接続されている。他の1電極端子(記号E′)は電極59,62から構成、接続されている。更に残りの1電極端子(記号E″)はアース電極(零の極性)で、電極55,57,58,60から構成、接続されている。即ち、3電極端子E、E′、E″に接続される電極はそれぞれ極性が異なる。
更に、図5の(b)では、屈曲水晶振動子70の振動腕71の上面には溝73が、振動腕72には溝74が設けられている。更に、溝73,74と振動腕71,72の下面に同極となる電極76,79,81,82が配置、接続され、これらの電極はアースに接地されている。即ち、アース電極である。また、振動腕71の側面には同極となる電極75,77が配置、接続され、振動腕72の側面には同極となる電極78,80が配置、接続されている。更に詳述するならば、振動腕71の側面の電極と振動腕72の側面の電極とは極性の異なる電極が配置されている。それ故、本実施例では3電極端子F−F′−F″を構成している。即ち、1電極端子(記号F)は電極75,77から構成、接続されている。他の1電極端子(記号F′)は電極78,80から構成、接続されている。更に残りの1電極端子(記号F″)はアース電極(零の極性)で、電極76,79,81,82から構成、接続されている。即ち、3電極端子F、F′、F″に接続される電極はそれぞれ極性が異なる。それ故、2電極端子E−E′間、又は2電極端子F−F′間に直流電圧を印加(E端子、F端子に正極、E′端子、F′端子に負極)すると、電界Exは図5の(a)と(b)に示した矢印のように働く。それ故、2電極端子E−E′間、又は2電極端子F−F′間に交番電圧を印加することにより、振動(音叉)腕が基本波モードで、かつ、逆相の屈曲モードで振動し、共振特性が良くなると共に、発生する歪の量も大きくなる。従って、音叉形状の屈曲水晶振動子を小型化させた場合でも、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い屈曲モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。また、本実施例では、溝は振動腕の上面に設けられているが、本発明はこれに限定されず、溝は振動腕の上下面の少なくとも一面に設ければ良い。
実施例4の屈曲水晶振動子
図6の(a)と(b)は、本発明の実施例4の屈曲モードで振動する屈曲水晶振動子の上面図とG−G′断面図を示す。本実施例の振動子の形状は音叉形状で、屈曲水晶振動子90は少なくとも振動腕91、振動腕92と基部95とを具えて構成され、振動腕91と振動腕92の一端部は基部95に接続されている。更に、基部95からフレーム96が突出していて、基部95とフレーム96は一体に形成されている。また、振動腕91と振動腕92はそれぞれ上面と下面と側面とを有し、振動腕91の上面には溝93が設けられ、又、振動腕92の上面にも振動腕91と同様に溝94が設けられている。また、振動腕91,92の下面にも上面と同様に溝が設けられている(図6の(b)参照)。本実施例の屈曲水晶振動子では、フレーム96が収納される容器の固定部に導電接着剤又は半田等で固定される。また、基部95は長さ寸法L1と幅寸法WHを有し、L1は小型化を図るために、0.5mm未満の寸法を有する。好ましくは、0.015mm〜0.45mmの範囲内にある。更に、屈曲水晶振動子の固定による振動部の振動エネルギーの漏れを小さくするために、振動腕とフレームの間隔W10とフレームの幅W11はそれぞれ、W10は0.032mm〜0.21mmの範囲内にあり、W11は0.25mm〜0.88mmの範囲内にある。更に、耐衝撃性を高めるために、W11=(1.2〜7.6)×Wの関係を有する。但し、Wは振動腕の幅である。また、W2は溝幅で、W1とW3は部分幅である。また、小型化を図るために本実施例では、腕の全幅W′5(=2W+2W10+W11)は1.2mm以下で、好ましくは、0.63mm〜1.1mmの範囲内にある。更に、衝撃による欠けを防ぐために、基部の角を丸く、又は切り欠きの形状にしても良い。
更に、図6の(b)では、振動腕91,92とフレーム96の断面形状と電極配置について詳述する。振動腕91には溝93,97が、振動腕92には溝94,98が設けられている。更に、溝93,97には同極となる電極100,101が、溝94,98には同極となる電極106,107が配置されている。また、振動腕91の側面には同極となる電極99,102が配置され、振動腕92の側面には同極となる電極105,108が配置されている。詳細には、溝の側面に電極が配置され、前記電極に対抗して極性の異なる電極が振動腕の側面に配置されている2電極端子H−H′を構成している。即ち、一方の1電極端子は電極99,102,106,107から構成、接続されている。他の1電極端子は電極100,101,105,108から構成、接続されている。更に、前記一方の1電極端子はフレーム96に配置された電極103に接続され、前記他の1電極端子はフレーム96に配置された電極104に接続されている。また、フレーム96が容器の固定部に固定され、電極103、104が容器(例えば、ケース)の電極に電気的に接続される。又、電極間の浮遊容量を減らすためにフレームに電極に沿ってスリットを設けても良い。
今、2電極端子H−H′間に直流電圧を印加(H端子に正極、H′端子に負極)すると電界Exは図6の(b)に示した矢印のように働く。それ故、2電極端子H−H′間に交番電圧を印加することにより、振動(音叉)腕が逆相の屈曲モードで振動し、共振特性が良くなると共に、発生する歪の量も大きくなる。従って、音叉形状の屈曲水晶振動子を小型化させた場合でも、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い屈曲モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動子が得られる。本実施例では、振動腕に溝を設けているが、溝はなくても良い。この場合には、溝の電極は振動腕の上下面である平面に配置されている。更に、本実施例では、2電極端子の電極構成について述べたが、上記実施例1から上記実施例3の3電極端子の電極構成でも良い。この場合には、アース電極もフレームまで延びて配置されている。一例として、図6の(b)の電極103と電極104の間に配置される。
更に、上記実施例1から実施例4の屈曲水晶振動子は圧電定数e12(=e′12)によって励振され、その絶対値が大きい程、電気機械変換効率は良くなる。本発明の屈曲水晶振動子の圧電定数e12の絶対値は0.095C/m2より大きい値を有する。通常は、圧電定数e12の絶対値は0.095C/m2〜0.19C/m2の範囲内にある。特に、基本波モード振動で、より小さい等価直列抵抗R1を得るために、好ましくは、e12の絶対値は0.12C/m2〜0.19C/m2の範囲内にある。但し、e12の計算には水晶の圧電定数e11=0.171C/m2と圧電定数e14=−0.0406C/m2を用いた。
実施例1の水晶ユニット
図7は本発明の実施例1の水晶ユニットの上面図である。水晶ユニット130は音叉形状の屈曲水晶振動子10(実施例1の屈曲水晶振動子)、ケース131と蓋(図示されていない)とを具えて構成されている。表面実装型のケース131には固定部138が設けられ、その上に電極132,133,134が配置され、図示されていないがケースの裏面まで延在して配置されている。即ち、3電極端子を構成している。更に詳述するならば、振動子10の基部25はケース131に設けられた固定部138に導電性接着剤や半田によって固定される。詳細には、基部25の電極17a、26、18aが固定部138の電極132,133,134にそれぞれ電気的に接続され、且つ、固定されるように固定部材135,136,137を用いて固定される。固定部材として、接着剤や半田など電気的に導電性の材料が使用される。又、ケース131と蓋は接合部材を介して接合される。また、振動子10の代わりに上記実施例2から上記実施例4の屈曲水晶振動子を搭載しても良い。上記実施例4の場合には、電極端子は2電極端子を構成するようにケースに2個の電極が配置される。
また、前記実施例の水晶ユニットは回路素子(CMOSインバータ、抵抗素子、コンデンサ)に接続され、水晶ユニットの外側に設けられた2電極端子、又は3電極端子に電気的に接続される。即ち、音叉形状の屈曲水晶振動子のみがユニット内に収納されている。このとき、屈曲水晶振動子は真空中のユニット内に収納されている。更に、ケースの部材はセラミックスかガラス、蓋の部材は金属かガラス、そして、接合部材は金属か低融点ガラスでできている。また、前記構成とは異なり、容器(ユニット)内に回路素子と一緒に実施例1から実施例4の音叉形状の屈曲水晶振動子を収納しても良い。
図8の(a)と(b)は、本発明の屈曲水晶振動子の電気的等価回路図である。(a)は3電極端子の場合で、(b)は2電極端子の場合である。L1、C1、R1はそれぞれ等価インダクタンス、等価容量、等価直列抵抗を示す。(a)では、3電極端子J−J′−J″からなり、電極端子J″はアースに接地されている。また、C2、C3、C4は各電極間の容量で、C2は2電極端子J−J′間の容量で、C3は2電極端子J−J″間の容量で、C4は2電極端子J′−J″間の容量である。それ故、これらの容量の和は電気的に2電極端子K−K′の並列容量C0に等価的に置き換えることができる。即ち、C0=C2+C3+C4となり、3電極端子は実質的には2電極端子で扱うことができる。
実施例1の水晶発振器
図9は本発明の実施例1の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一実施例である。本実施例では、水晶発振回路151は増幅器(CMOSインバータ)152、帰還抵抗154、ドレイン抵抗157、コンデンサ155,156と2電極端子の音叉形状の屈曲水晶振動子153から構成されている。即ち、水晶発振回路151は、増幅器152と帰還抵抗154から成る増幅回路158とドレイン抵抗157、コンデンサ155,156と屈曲水晶振動子153から成る帰還回路159から構成されている。詳細には、本発明の水晶発振回路は、増幅回路と帰還回路から構成されていて、増幅回路は少なくとも増幅器から構成され、帰還回路は少なくとも音叉形状の屈曲水晶振動子とコンデンサから構成されている。又、本実施例の水晶発振器に用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子は、上記実施例4で述べた2電極端子の屈曲水晶振動子が用いられ、前記振動子は容器(ユニット)に収納されている。いわゆる、水晶ユニットが用いられる。
実施例2の水晶発振器
図10は本発明の実施例2の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一実施例である。本実施例の水晶発振回路161の構成は、基本的には実施例1の水晶発振回路と同じであるが、異なる点は屈曲水晶振動子の電極構成で、本実施例では、3電極端子の音叉形状の屈曲水晶振動子163が用いられている。即ち、1電極端子がアースに接地されている。又、本実施例の水晶発振器に用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子は、上記実施例1から実施例3の屈曲水晶振動子で述べた3電極端子の屈曲水晶振動子が用いられ、前記振動子は容器(ユニット)に収納されている。いわゆる、水晶ユニットが用いられる。
図11は図9の帰還回路図を示す。今、屈曲モードで振動する音叉形状の水晶振動子の角周波数をωi、ドレイン抵抗157の抵抗をRd、コンデンサ155、156の容量をCg、Cd、水晶のクリスタルインピーダンスをRei,入力電圧をV1,出力電圧をV2とすると、帰還率βiはβi=|V2|i/|V1|iで定義される。但し、iは屈曲振動モードの振動次数を表し、例えば、i=1のとき、基本波モード振動、i=2のとき、2次高調波モード振動である。更に、負荷容量CLはCL=CgCd/(Cg+Cd)で与えられ、Cg=Cd=CgdとRd>>Reiとすると、帰還率βiはβi=1/(1+kCL 2)で与えられる。但し、kはωi、Rd、Reiの関数で表される。又、Reiは近似的に等価直列抵抗Riに等しくなる。
このように、帰還率βiと負荷容量CLとの関係から、CLが小さくなると、基本波モード振動と高調波モード振動の帰還率はそれぞれ大きくなることが良く分かる。それ故、CLが小さくなると、基本波モード振動よりも2次高調波モード振動の方が発振し易くなる。その理由は高調波モード振動の最大振動振幅が基本波モード振動の最大振動振幅より小さいために、発振持続条件である振幅条件と位相条件を同時に満足するためである。
本発明の屈曲水晶振動子を用いた水晶発振器は、消費電流が少なく、しかも、出力周波数が高い周波数安定性(高い時間精度)を有する、基本波モード振動の発振周波数である水晶発振器を提供することを目的としている。それ故、消費電流を少なくするために、負荷容量CLは18pF以下を用いる。より消費電流を少なくするには、消費電流は負荷容量に比例するので、CL=14pF以下が好ましい。また、2次高調波モードの振動を抑え、発振器の出力信号が基本波モード振動の発振周波数を得るために、α1/α2>β2/β1とα1β1>1を満足するように本実施例の発振回路は構成される。但し、α1、α2は基本波モード振動と2次高調波モード振動の増輻回路の増幅率で、β1、β2は基本波モード振動と2次高調波モード振動の帰還回路の帰還率である。
換言するならば、増幅回路の基本波モード振動の増幅率α1と2次高調波モード振動の増幅率α2との比が帰還回路の2次高調波モード振動の帰還率β2と基本波モード振動の帰還率β1との比より大きく、かつ、基本波モード振動の増幅率α1と基本波モード振動の帰還率β1の積が1より大きくなるように構成される。このような構成により、消費電流の少ない、出力信号が基本波モード振動の発振周波数である水晶発振器が実現できる。又、水晶発振回路の出力信号はバッファ回路を介して出力される。更に、基本波モード振動での最適な帰還率を得るために、ドレイン抵抗Rdは通常200kΩから1MΩの範囲内にあるが、好ましくは、300kΩから600kΩが用いられる。
又、本実施例の水晶発振回路を構成する増幅回路の増幅部は負性抵抗−RLiでその特性を示すことができる。i=1のとき基本波モード振動の負性抵抗で、i=2のとき2次高調波モード振動の負性抵抗である。本実施例の水晶発振器は、増幅回路の基本波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL1|と基本波モード振動の等価直列抵抗R1との比が増幅回路の2次高調波モード振動の負性抵抗の絶対値|−RL2|と2次高調波モード振動の等価直列抵抗R2との比より大きくなるように発振回路が構成される。即ち、|−RL1|/R1>|−RL2|/R2を満足するように構成される。好ましくは、|−RL1|/R1>1>|−RL2|/R2の関係を有する。このような水晶発振回路の構成により、2次高調波モード振動の発振起動が抑えられるので基本波モード振動の発振周波数が出力信号として得られる。特に、超小型化した音叉形状の屈曲水晶振動子で前記目的を達成するには、一例として、基本波モード振動の基準周波数が32.768kHz(発振周波数が大略32.768kHz)の場合、その基本波モード振動での増幅部での負性抵抗の絶対値|−RL1|が80kΩより大きく、且つ、2次高調波モード振動の増幅部での負性抵抗の絶対値|−RL2|が75kΩより小さくなることが必要である。また、本実施例の水晶発振回路を構成する屈曲水晶振動子の電極構成は2電極端子であるが、図8で述べたように、2電極端子でも3電極端子でも電気的等価回路は同じになるので、3電極端子の屈曲水晶振動子を用いても、2電極端子と同じ結果の水晶発振回路が得られることは言うまでもない。
更に、上記実施例1〜実施例4の音叉形状の屈曲水晶振動子の基本波モード振動での容量比r1は2次高調波モード振動の容量比r2より小さくなるように構成されている。このような構成により、同じ負荷容量CLの変化に対して、基本波モードで振動する屈曲水晶振動子の周波数変化が2次高調波モードで振動する屈曲水晶振動子の周波数変化より大きくなる。例えば、CL=18pF付近では、そのCL値が1pF変わると、基本波モード振動の周波数変化は2次高調波モード振動の周波数変化より大きくなる。それ故、基本波モード振動では、CLの可変量が小さくても、周波数の可変範囲を広くできるという著しい効果を有する。また、上記各実施例の屈曲水晶振動子の基本波モード振動での容量比r1は230から490の範囲内にあり、容量比r2は1500より大きい値を有する。
また、音叉形状の屈曲水晶振動子の容量比r
1、r
2はそれぞれr
1=C
0/C
1、r
2=C
0/C
2で与えられる。但し、C
0は電気的等価回路の並列容量で、C
1とC
2は等価回路の基本波モード振動と2次高調波モード振動の等価容量である。即ち、C
0は屈曲水晶振動子の2電極端子間、又は3電極端子間の、各々の端子間の全容量である。換言するならば、電界が生じる電極間の容量である。更に、音叉形状の屈曲水晶振動子の基本波モード振動と2次高調波モード振動の品質係数はQ
1値とQ
2値で与えられる。そして、前記各実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子は、基本波モードで振動する共振周波数の並列容量による依存性が2次高調波モードで振動する共振周波数の並列容量による依存性より小さく成るように構成される。すなわち、r
1/2Q
1 2<r
2/2Q
2 2を満たすように構成される。この構成により、基本波モードで振動する共振周波数の並列容量による影響が無視できるほど極めて小さくなるので、高い周波数安定性を有する基本波モードで振動する音叉形状の屈曲水晶振動が得られる。又、本発明では、r
1/2Q
1 2とr
2/2Q
2 2をそれぞれS
1とS
2と置き、S
1とS
2をそれぞれ基本波モード振動と2次高調波モード振動の周波数安定係数と呼ぶ。即ち、S
1=r
1/2Q
1 2とS
2=r
2/2Q
2 2で与えられる。更に、通常、Q
1>Q
2
内にあるときには、Q
1<Q
2の関係が得られる場合がある。
又、上記各実施例で述べた振動子の基本波モード振動の電気機械結合係数は、2次高調波モード振動の電気機械結合係数より大きくなると共に、基本波モード振動の等価直列抵抗R
1は35kΩ〜105kΩの範囲内にある。又、R
2はR
2/R
1>1の関係を有する。即ち、少なくともR
2>35kΩの関係を満たすように溝と電極が構成されている。上記各実施例の音叉形状の屈曲水晶振動子の基本波モード振動での基準周波数として32.768kHzが用いられるが、本発明はこの周波数に限定されるものでなく、10kHz〜200kHzの基準周波数に適用される。また、上記実施例では、圧電材料として水晶を用いたが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明は他の圧電材料、例えば、タンタル酸リチウム(L
iT
aO
3)、ニオブ酸リチウム(L
iN
bO
3)、ランガサイトを含む全ての圧電材料を包含し、且つ、本発明の振動子、ユニットと発振器に適用される。更に、上記実施例では、振動腕の溝の厚みt
1と振動腕の厚みtとの比(t
1/t)は0.79以下で
また、本発明の水晶発振器の製造方法の一例として、音叉形状の屈曲水晶振動子の基準周波数が32.768kHzで、水晶発振回路の出力信号が32.768kHz±100ppm(parts per million)以内の発振周波数を出力周波数として得るには、まず、水晶ウエハ内にフォトリソグラフィ法とエッチング法(例えば、化学的エッチング法又はイオンエッチング法)により、溝あり又は溝なしの振動子で、電極が配置され、且つ、32.768kHzの周波数より高くなるように振動子が形成される。このとき、振動子は上記実施例1〜実施例4で述べた振動子形状と電極配置とを有する。次に、前記振動子を収納する容器の固定部に固定した後に、水晶発振回路の出力信号が32.768kHz±100ppm以内の発振周波数が出力周波数として得られるように音叉腕に重りを付加して周波数調整するか、若しくは、周波数が32.768kHzより低くなるように音叉腕に重りを付着し、前記振動子を収納する容器の固定部に固定した後に、水晶発振回路の出力信号が32.768kHz±100ppm以内の発振周波数が出力周波数として得られるように音叉腕の重りを除去して周波数調整される。この場合、周波数が32.768kHzより低くなるように音叉腕に重りを付着する工程は、ウエハの状態で行い、更に、ウエハの状態で−9500ppm〜+100ppmの範囲内にあるようにレーザビーム等を用いて発振周波数を調整する工程を入れても良い。その後に、振動子は容器に固定され、上述したように発振周波数の調整がなされる。また、水晶発振回路は増幅器、コンデンサ、抵抗素子と屈曲水晶振動子とを備えて構成され、水晶発振回路の負荷容量CL値は18pF以下が用いられる。更に、前記周波数調整には、レーザビームと、蒸着と、電子ビームと、イオン化した原子、分子による、いわゆるイオンエッチング法、又はスパッタリング法の内の少なくとも一つが使用される。また、本実施例では、溝あり又は溝なしの振動子で、電極が配置され、且つ、32.768kHzより周波数が高くなるように、水晶ウエハ内に振動子が形成され、その後に、水晶ウエハ内で良振動子か不良振動子かを検査する工程を入れても良い。即ち、不良振動子が存在するときには、不良振動子は水晶ウエハから取り除かれるか、又は振動子に何かマーキングされるか、又は振動子はコンピユタに記憶される。
本発明の水晶振動子と水晶ユニットと水晶発振器は超小型で、高い周波数安定性を有するので、特に、超小型で、高い周波数安定性を必要とする携帯機器や民生機器等に適用できる。
(a)と(b)は、本発明の実施例1の屈曲水晶振動子の上面図と下面図を示す。
図1のA−A′断面図を示す。
(a)と(b)は、本発明の実施例2の屈曲水晶振動子の上面図と下面図を示す。
図3のC−C′断面図を示す。
(a)と(b)は、本発明の実施例3の屈曲水晶振動子の振動腕(音叉腕)の断面図を示す。
(a)と(b)は、本発明の実施例4の屈曲水晶振動子の上面図とG−G′断面図を示す。
本発明の実施例1の水晶ユニットの上面図である。
(a)と(b)は、本発明の屈曲水晶振動子の電気的等価回路図である。
本発明の実施例1の水晶発振器を構成する水晶発振回路図の一実施例を示す。
本発明の実施例2の水晶発振器を構成する発振回路図の一実施例を示す。
図9の帰還回路図を示す。
符号の説明
WH 音叉基部の幅
W4、W11 音叉腕の間隔、フレームの幅
L0、L1 溝の長さ、音叉基部の長さ
Lt 音叉の全長