JP4378917B2 - 顔料組成物の製造方法、該方法で製造される顔料組成物を用いた顔料分散体、および着色用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷インキ、塗料等の表面コーティング剤、または着色用樹脂組成物の着色に有用な顔料組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、容易に分散しうる、粉末状又は粒状の顔料組成物の製造方法、該方法で製造される顔料組成物を用いた顔料分散体、および着色用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、印刷インキ、塗料、着色用樹脂組成物等を製造する際には、ワニス、樹脂等の有機媒体中に顔料を充分分散させることにより、顔料の着色効果を高めることが要求されている。顔料の分散方法としては、オフセットインキの場合は、乾燥顔料を有機媒体中で練肉する方法や、顔料の水性懸濁液から水分を一部除去したプレスケーキおよび油性ワニスをフラッシャ−に仕込み、顔料を水相から油性相に転相した後、水をデカンテーションによって除去するフラッシング法が挙げられる。また、グラビアインキおよび塗料の場合は、乾燥顔料を有機媒体中でビーズ粉砕機を用いて分散させる方法や、乾燥顔料を有機媒体中で2本ロール等を用いてチップ化した後、さらにビヒクルを加えてビーズ粉砕機中で分散させる方法が挙げられる。
【0003】
これらの分散方法のうち、乾燥顔料を使用する方法は、顔料がその乾燥工程中で強い凝集を生じているため、分散させるには強いエネルギーと長い時間が必要となる。また、チップ化物を用いてインキ化を行う場合も同様に、エネルギーと時間が必要となる。
一方、フラッシング法は、顔料の乾燥工程を経ないため、顔料分散体の顔料粒子は均一かつ微細であり、着色力、色相、透明性等の着色効果において優れた製品が得られる。
【0004】
しかしながら、フラッシング法では、顔料濃度が高い水性ペーストを原料として用いる必要があり、例えばカップリング反応終了後の有機顔料の水性懸濁液をそのまま使用することは難しく、フィルタープレス等によって水分量の調節を行っている。また、フラッシング時に使用できる有機媒体には最終製品となるワニスとの組み合わせ等から制約があり、汎用性があるとは言い難い。さらに、フラッシング時に着色排水が排出されるという問題もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これらの諸問題を解決するために、例えば、ビーズ粉砕機を用いずに攪拌のみでインキを製造できる攪拌型顔料および攪拌型顔料配合物が開発されている。これらは、分散のために要していた時間とエネルギーを消費することなく、作業中に顔料の飛散を発生させることなく、顔料をワニスに混合できる大きな利点を持っている。
攪拌型の顔料または顔料配合物として具体的には、USP3,806,464号公報にアクリルコポリマーで顔料をカプセル化すしたものが記載されており、特開昭57−49664号公報には、塩基性物質を含む水中で溶解する熱可塑性樹脂で処理した顔料配合物の製造方法が記載されている。しかし、これらの場合には、使用できる樹脂に制限がある。
【0006】
また、USP3,904,562号公報には、非常に細かく分散された有機顔料粒子を沈殿によりポリマーからなる外層でカプセル化する方法が記載されている。しかし、この方法では、水性媒体からポリマーを沈殿により析出させるために大量の無機塩を用いる必要があり、コスト及び環境の点から適当ではない。
さらに、特開昭53−66935号公報には、水中におよび(または)有限に水溶性であって水と2相系を形成する有機溶媒中に懸濁された、水に難溶性または不溶性の染料の懸濁体を、機械的に微細化し、水または有限に水溶性の有機溶媒を加えて2相系を形成した後に、高分子状担体と混合し、染料含有有機相が高分子状担体の表面上に一様に分布するまで処理することで、良好に分散性の濃厚な染料配合物を製造する方法が記載されている。
【0007】
しかし、この方法では、大部分の樹脂は、微細に粉砕した上で、2相系を形成させた後に加える必要があり、こうして加えられた樹脂が担体となり、樹脂の表面を染料が被覆することになる。そのため、樹脂の微粉砕の状態が処理物に影響を与えると予想されるが、樹脂によっては粉砕することが困難であり、必ずしも分散性の良好な染料配合物が得られない。
そこで、本発明者は、印刷インキ、塗料等のビヒクルにビーズ粉砕機を用いずに攪拌だけで混合でき、熱可塑性樹脂と混合することで高い濃度の着色用樹脂組成物を製造できる顔料組成物の製造方法、該方法で製造される顔料組成物を用いた顔料分散体および着色用樹脂組成物の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の顔料組成物の製造方法は、顔料と水のみからなる、または、顔料と色素誘導体と水のみからなる顔料の水懸濁液と、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液とを混合することにより、樹脂の溶解溶媒である有機溶媒を水に溶解し、樹脂が水不溶性であることから、樹脂と顔料とが融合した組成物を析出させ、乾燥させるものである。
すなわち、本発明は、顔料と水のみからなる、または、顔料と色素誘導体と水のみからなる顔料の水懸濁液と、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液とを混合し、顔料と水不溶性樹脂を含む組成物を析出させ、乾燥することを特徴とする顔料組成物の製造方法である。
【0009】
本発明の方法で製造される顔料組成物は、顔料と樹脂が非常に良く混合した状態を形成しているため、ワニス、溶剤等のビヒクルや樹脂との混合がエネルギー的にも時間的にも容易である。そのため、本発明の方法で製造される顔料組成物は、塗料やインキのビヒクルにビーズ粉砕機を用いずに、攪拌だけで混合することができ、また、着色用樹脂組成物製造時の分散時間を従来よりも短くできる。
【0010】
本発明の製造方法において、顔料と水のみからなる、または、顔料と色素誘導体と水のみからなる顔料の水懸濁液と、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液とを混合する際には、機械的摩砕処理を行うことが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記方法により製造される顔料組成物である。
また、本発明は、上記顔料組成物を溶剤またはワニスに分散せしめてなる顔料分散体である。
さらに、本発明は、上記顔料組成物と熱可塑性樹脂とを含む着色用樹脂組成物である。
【0012】
まず、顔料組成物の製造方法について説明する。
顔料組成物の製造に用いられる顔料は特に制限はなく、有機顔料、無機顔料、カーボンブラック顔料、またはこれらの混合物を用いることができる。また、顔料は、粗製(クルード)顔料であっても良い。有機顔料として具体的には、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、ペリレン系、ペリノン系、インジゴもしくはチオインジゴ系、イソインドリノン系等の顔料が挙げられる。また、無機顔料として具体的には、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、酸化鉄、紺青、クロム酸顔料等が挙げられる。
【0013】
顔料は、インキを製造する工程で微細化されることはないため、得られる顔料組成物の用途に応じて、機械的なエネルギーを与えることにより、粒径をあらかじめ制御した顔料を用いることが好ましい。顔料の粒径は、平均一次粒子径で0.02〜1μmであることが好ましい。
【0014】
顔料は、水懸濁液、プレスケーキ、または乾燥顔料の形態で水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液と混合することができる。特に、顔料の水懸濁液と水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液と混合する場合には、ため好ましい。
顔料の水懸濁液としては、合成反応後の顔料スラリーや、顔料のプレスケーキまたは乾燥顔料を水に分散してなる水懸濁液を用いることができる。特に、顔料の水懸濁液として合成反応後の顔料スラリーを使用する場合には、製造工程上非常に有利である。顔料の水懸濁液中の顔料濃度は、顔料にもよるが一般的に1〜40重量%であり、2〜20重量%であることが好ましい。
【0015】
顔料のプレスケーキまたは乾燥顔料を水に分散して顔料の水懸濁液を作製する際には、ディスパー、ハイスピードミキサー、ホモジナイザー等の通常の攪拌・混合装置や、パールミル、サンドミル、アトライター等のある程度以上の機械的エネルギーを与えられる分散機を使用することができる。また、一連の処理を同一の装置を使用して進めることも、装置を変えて進めることもできる。顔料の水懸濁液の作製は、室温より高い温度または室温より低い温度で行うことができる。
顔料スラリーまたはプレスケーキを用いる場合には、機械的エネルギーを与えることにより、一次粒子の大きさまで容易に顔料の凝集をほぐすことができる。また、乾燥顔料を用いる場合には、より大きな機械的エネルギーを与えることにより、適切な粒径とすることができる。
【0016】
顔料の水懸濁液には、得られる顔料組成物を用いて製造されるインキ、塗料、着色用樹脂組成物等の顔料の分散性の向上のため、色素誘導体を添加しても良い。色素誘導体は、色素に塩基性、酸性または中性の置換基を導入したものである。色素誘導体を構成する色素としては、例えば、アゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジオキサジン系色素、ペリレン系色素、ペリノレン系色素、インジゴもしくはチオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、ジケトピロロピロール系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等が挙げられる。色素誘導体は、顔料を水に懸濁させる前にあらかじめ水に加えても良く、顔料と同時に水に加えても良い。色素誘導体の添加量は、顔料の種類と顔料組成物の用途によって異なるが、顔料に対して0.5〜30重量%である。
【0017】
また、顔料組成物の製造に用いられる樹脂は、水に溶解しない水不溶性の樹脂であり、室温(25℃)で固体のものである。なお、「水に溶解しない」とは、中性の水に溶解しないことを意味し、中性の水には溶解しないがアルカリまたは酸の共存下で水に溶解する樹脂も、本発明における水不溶性の樹脂に含まれる。水不溶性樹脂として具体的には、ポリエステル樹脂(アルキッド樹脂も含む)、石油樹脂、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ケトン樹脂、カゼイン、セラック、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ライムロジン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合物、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、アミノ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、α−オレフィン−無水マレイン酸樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル酸樹脂等が挙げられる。
なかでも、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ライムロジン樹脂は、顔料に吸着しやすく、かつ得られる顔料組成物がやわらかく力を加えると容易に崩れ、さらに溶剤やワニスが浸透しやすいため好適に用いられる。
【0018】
また、顔料組成物の製造に用いられる水溶性有機溶媒とは、25℃における水への溶解度が30重量%以上の水に完全に溶解する有機溶媒であり、用いる水不溶性樹脂を溶解するものが選択される。ただし、水と2相を形成しない範囲内であれば、25℃における水への溶解度が30重量%未満の有機溶媒を、水への溶解度が30重量%以上の水に完全に溶解する有機溶媒と併用することができる。水に完全に溶解する水溶性有機溶媒として具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、グリセロール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキシレングリコール、N−メチル2−ピロリドン、ジアセトンアルコール、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。25℃における水への溶解度が30重量%未満の有機溶媒としてはメチルエチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ブタノール等が挙げられる。
【0019】
顔料組成物の製造は、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液と顔料と水とを混合し、顔料と樹脂を含む組成物を析出させることにより行われる。水不溶性樹脂は、顔料および水と混合する際に、水溶性有機溶媒に完全に溶解している必要があり、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液と顔料と水とを混合した時に、水不溶性樹脂を溶解していた水溶性有機溶媒がスムースに水中に放出されることにより、顔料と析出した樹脂との融合が進められ、顔料と樹脂を含む顔料組成物が析出する。そのため、水溶性有機溶媒の水への溶解度は、析出した顔料組成物中の樹脂と顔料との混合状態に影響を与える。また、水溶性有機溶媒と水との混合割合も、樹脂の析出しやすさに影響を与える。
【0020】
水溶性有機溶媒と水との混合割合は、樹脂の析出しやすさの点から、水100重量部に対して水溶性有機溶媒5〜100重量部、特に5〜50重量部の範囲にあることが好ましい。
また、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液中の樹脂濃度は、3〜50重量%、特に5〜35重量%の範囲にあることが好ましい。樹脂濃度が3重量%未満の場合は、水溶性有機溶媒の割合が高くなり、樹脂が析出しにくい。樹脂濃度が50重量%を超える場合には、樹脂と顔料の混合状態が不均一になりやすい。
【0021】
さらに、顔料組成物を構成する顔料と水不溶性樹脂との比率は、顔料100重量部に対して水不溶性樹脂10〜300重量部、特に30〜200重量部であることが好ましい。水不溶性樹脂が10重量部未満である場合は、水不溶性樹脂が顔料を完全に覆うことができていないため、インキ等を製造した時の顔料の分散性が不充分となる。また、水不溶性樹脂が300重量部を超える場合は、インキ等の物性には問題がないが、顔料組成物自体の汎用性が低くなる。
【0022】
水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液と顔料と水との混合は、ディスパー、ハイスピードミキサー、ホモジナイザー等により行うことができる。
特に、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液と顔料と水とを混合する際に機械的摩砕処理を行うと、顔料の水懸濁液中の顔料の粒径をとどめて、水不溶性樹脂中に顔料を均一に分布した樹脂組成物を製造することができるため好ましい。機械的摩砕処理は、パールミル、サンドミル、アトライター等により行うことができる。
また、顔料組成物の析出後、さらに析出を進めるために水を加えることができる。
【0023】
次に上記方法により製造される顔料組成物の用途について説明する。
上記方法により製造される顔料組成物は、溶剤またはワニスに分散させることにより顔料分散体となり、非水系または水系のオフセットインキ、グラビアインキ、塗料、インクジェットインキ、カラーフィルター用レジスト材等として用いることができる。
顔料分散体中の顔料組成物の含有量は、顔料分散体の用途により異なるが、顔料分散体を基準として、概ね5〜60重量%程度である。
【0024】
顔料組成物を分散させる溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、2−プロパノール、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、アセトン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、n−ヘキサン、n−パラフィン、イソパラフィン、アロマティック、ナフテン、α−オレフィン、水等が挙げられる。
また、顔料組成物を分散させるワニスとしては、上記溶剤にウレタン樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を溶解および/または分散してなるグラビアインキ用、オフセットインキ用、塗料用等のワニスが挙げられる。
【0025】
また、上記方法により製造される顔料組成物は、熱可塑性樹脂と混合することにより樹脂組成物となり、樹脂の着色に用いることができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体(ランダムまたはブロック共重合体を含む)等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ芳香族エーテル、ポリ芳香族エステル、ポリスルホン等が挙げられ、着色用樹脂組成物中の顔料組成物の含有量は、樹脂組成物を基準として、概ね0.2〜12重量%である。
【0026】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。例中、「部」とは「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
(実施例1)
β型銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue15)のプレスケーキ(顔料濃度45%、顔料の平均一次粒子径0.05μm)50部と水450部を容器に採り、1時間ホモミキサーで攪拌して顔料濃度4.5%の顔料の水懸濁液を作った。次いで、顔料の水懸濁液を攪拌しながら、この中にロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業社製「タマノル135」)のテトラヒドロフラン溶液(樹脂濃度20%)75部を加え、さらに攪拌を1時間続けたところ、青色の固形分が析出した。析出物をろ過洗浄後、乾燥し、青色の粉末(顔料組成物)37部を得た。
この青色の粉末37部とオフセットインキ用ワニス(ロジン変性フェノール樹脂をアマニ油および石油系高沸点溶剤に加熱溶解させたもの)75部とを三本ロール上で混合したところ、ロール1パスでは、グラインドゲージで粗大粒子が認められたので、ロールを2パスさせてオフセットインキを得た。
【0027】
(実施例2)
β型銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue15)のプレスケーキ(顔料濃度45%、顔料の平均一次粒子径0.05μm)50部、フタロシアニン系色素誘導体(アビシア社製「ソルスパーズ12000」)1部、水450部および1mmジルコニアビーズ4kgを縦型サンドミルに入れ、700r.p.m.で1時間攪拌して、顔料濃度4.5%の顔料の水懸濁液を作った。次いで、顔料の水懸濁液を同じ条件で攪拌しながら、この中にロジン変性フェノール樹脂(荒川化学工業社製「タマノル145」)のテトラヒドロフラン溶液(樹脂濃度20%)75部を加え、さらに攪拌を1時間続けたところ、青色の固形物が析出した。析出物をろ過洗浄後、乾燥し、青色の粉末(顔料組成物)37部を得た。
この青色の粉末37部と実施例1と同様のオフセットインキ用ワニス75部とを三本ロール上で混合したところ、ロールを1パスするだけで、グラインドゲージで確認したところ粗大粒子はなく、均一に混合した。こうして得られたオフセットインキは、透明で且つ光沢及び濃度があった。
【0028】
(比較例1)
β型銅フタロシアニン顔料(C.I.Piment Blue15)のプレスケーキ(顔料濃度45%、顔料の平均一次粒子径0.05μm)100部と実施例1と同様のオフセットインキ用ワニスとをフラッシャ−に入れ、2時間フラッシングすることによりオフセットインキを作製した。
【0029】
(実施例3)
ジスアゾ顔料(C.I.Pigment Yellow12)の合成後の顔料スラリー(顔料濃度4%、顔料の平均一次粒子径0.07μm)120部を縦型サンドミルに入れ、1mmジルコニアビーズ1kgを加えて700r.p.m.で30分間攪拌を行った。次いで、顔料スラリー(顔料の水懸濁液)を同じ条件で攪拌しながら、この中にロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製「マルキード3002」のアセトン溶液(樹脂濃度15%)16部を加え、さらに攪拌を1時間続けたところ、黄色の粉末が析出した。さらに、680部の水を加えてろ過、洗浄後、乾燥し、黄色の粉末(顔料組成物)9.6部を得た。
この黄色の粉末9.6部とグラビアインキ用ワニス(ライムロジン樹脂をトルエンに溶解したもの、固形分10%)55部とをハイスピードミキサーで混合して15分攪拌し、グラビアインキを得た。得られたグラビアインキは、グラインドゲージで粗大粒子が確認されなかった。
【0030】
(比較例2)
ジスアゾ顔料(C.I.Pigment Yellow12、平均一次粒子径0.07μmの乾燥顔料)10部と、実施例3と同様のグラビアインキ用ワニス90部と、5mmガラスビーズ100部とをマヨネーズ瓶に詰め、ペイントコンディショナーで2時間分散を行い、グラビアインキを作製した。
【0031】
(実施例4)
カーボンブラック顔料(平均一次粒子径0.03μmの乾燥顔料)10部、水110部、0.8mmジルコニアビーズ1000部を縦型サンドミルに入れて、1000r.p.m.で1時間攪拌を行い、カーボンブラックの水懸濁液を作った。次いで、カーボンブラックの水懸濁液を2000r.p.m.で攪拌しながら、この中にポリウレタン樹脂(モートンケミカル社製「モルセン CA-118」)のジメチルスルホキシド溶液(樹脂濃度20%)25部を加え、そのまま1時間攪拌を続けたところ、黒色の粉末が析出した。さらに、800部の水を加えてろ過、洗浄後、乾燥し、黒色の粉末(顔料組成物)14部を得た。
この黒色の粉末14部と塗料用ワニス(ポリウレタン樹脂をメチルエチルケトンとトルエンとシクロヘキサノンとブチルセロソルブからなる混合溶剤に溶解したもの、固形分3.5%)85部とをハイスピードミキサーで15分攪拌して、黒色塗料を得た。
【0032】
(実施例5)
酸化チタン(平均一次粒子径0.25μmの乾燥顔料)10部、水110部、1.25mmジルコニアビーズ1000部を縦型サンドミルに入れて、1500r.p.m.で1時間攪拌を行い、顔料濃度8.3%の酸化チタンの水懸濁液を作った。次いで、酸化チタンの水懸濁液を2000r.p.m.で攪拌しながら、この中にアクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製「ジョンクリル680」)のメチルエチルケトン/ジアセトンアルコール=20/80(重量比)の混合溶媒溶液(樹脂濃度25%)20部を加え、そのまま40分攪拌を続けたところ、白色の粉末が析出した。さらに、800部の水を加えてろ過、洗浄後、乾燥し、白色の粉末(顔料組成物)14部を得た。
この白色の粉末14部と28%アンモニア水1.2部と水8.1部とをハイスピードミキサーで30分攪拌して、白色水性グラビアインキを得た。
【0033】
(比較例3)
酸化チタン(平均一次粒子径0.25μmの乾燥顔料)9.3部、アクリル樹脂(ジョンソンポリマー社製「ジョンクリル680」)4.7部、28%アンモニア水1.2部、水8.1部および5mmガラスビーズ23部をマヨネーズ瓶に詰めて、ペイントコンデショナーで2時間分散を行い、白色水性グラビアインキを作製した。
実施例1〜5および比較例1〜3で得られたインキおよび塗料をコート紙に塗工し、得られた塗工物について着色力および光沢を下記の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
(1)着色力
塗工物の反射濃度をマクベス社製の濃度計で測定した。ただし、実施例5および比較例3のインキを用いて得られた塗工物については、透過濃度を測定した。
(2)光沢
塗工物の60°鏡面光沢をグロスメーターで測定し、結果を4段階で表示した。
◎:70以上
○:60以上70未満
△:50以上60未満
×:50未満
【0034】
【表1】
【0035】
(実施例6)
酸化チタン(平均一次粒子径0.25μmの乾燥顔料)50部、水500部、1.25mmジルコニアビーズ5000部を縦型サンドミルに入れて、1000r.p.m.で1時間攪拌を行い、顔料濃度約9%の酸化チタンの水懸濁液を作った。次いで酸化チタンの水懸濁液を2000r.p.m.で攪拌しながら、この中にα−オレフィン−無水マレイン酸樹脂(三菱化学社製「ダイヤカルナPA30」)のジメチスルホキシド溶液(樹脂濃度20%)50部を加え、そのまま1時間攪拌を続けた。さらに、3000部の水を加えてろ過、洗浄後、乾燥し、白色の粉末(顔料組成物)60部を得た。
ポリエチレン樹脂38部、得られた白色の粉末55部、およびステアリン酸亜鉛2部と予備混合し、ロータ型2軸混練機を用いて150度で混練し、押し出して冷却後、ペレット化して着色用樹脂組成物(マスターバッチ)を得た。次いで、顔料濃度30%となるように上記のマスターバッチと前記のポリエチレン樹脂とを配合し、Tダイフィルム成型機器(東洋精機社製)を用いて、成型温度340度、回転数60r.p.m.で溶融しつつ、膜厚30μmのフィルム状の溶融混合物を紙上に溶融押し出しラミネートして、樹脂コーティング紙を得た。該樹脂コーティング紙を得る際のサージングの状態(高温高速加工性)及び得られた樹脂コーティング紙上のコーティング面(フィルム表面)状態を目視観察したところ、サージング(フィルム脈動)が全くなく、フィルム表面も非常に良好であった。
【0036】
(比較例4)
酸化チタンとα−オレフィン−無水マレイン酸樹脂とを含む顔料組成物(白色の粉末)55部を酸化チタン45.8部およびα−オレフィン−無水マレイン酸樹脂9.2部に代えた以外は、実施例6と同様にして着色用樹脂組成物(マスターバッチ)を作製し、樹脂コーティング紙を得た。該樹脂コーティング紙を得る際のサージングの状態(高温高速加工性)及び得られた樹脂コーティング紙上のコーティング面(フィルム表面)状態を目視観察したところ、サージングがあり、フィルム表面も膜割れ、物、ピンホールが見られた。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、塗料、インキのワニスに、ビーズ粉砕機を用いずに攪拌だけで分散することができる易分散顔料組成物が得られるようになった。また、熱可塑性樹脂組成物と溶融混合する場合にも、容易に分散することができる易分散顔料組成物が得られるようになった。
Claims (5)
- 顔料と水のみからなる、または、顔料と色素誘導体と水のみからなる顔料の水懸濁液と、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液とを混合し、顔料と水不溶性樹脂を含む組成物を析出させ、乾燥することを特徴とする顔料組成物の製造方法。
- 顔料と水のみからなる、または、顔料と色素誘導体と水のみからなる顔料の水懸濁液と、水不溶性樹脂の水溶性有機溶媒溶液とを混合する際に、機械的摩砕処理を行うことを特徴とする請求項1記載の顔料組成物の製造方法。
- 請求項1または2に記載の方法により製造される顔料組成物。
- 請求項3記載の顔料組成物を溶剤またはワニスに分散せしめてなる顔料分散体。
- 請求項3記載の顔料組成物と熱可塑性樹脂とを含む着色用樹脂組成物。
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