JP4376866B2 - ヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2の製造方法 - Google Patents

ヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2(β3GnT2)の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、活性を有する組換えヒトβ3GnT2の製造方法に関する。
2001年にESTシーケンスとPCR法により4種類のヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(β3GnT)2〜5がクローニングされた(非特許文献1および特許文献2参照)。β3GnT2はポリラクトサミン受容体に対し高い活性を示し、ポリラクトサミン鎖の伸長に関与していると推測されている。β3GnT3およびβ3GnT4もポリラクトサミン鎖の伸長に関与する酵素であるが、その酵素活性は、β3GnT2の1/10〜1/20である。β3GnT5は糖脂質上の糖鎖であるラクト、ネオラクト系の糖鎖合成に重要な働きをするラクトアオシルセラミド合成酵素と考えられている。しかしながら、β3GnT2〜5については、解析するために十分な量を天然資源から得ることができないため、その詳細な性質は知られていない。
バキュロウイルス遺伝子発現系(BES)は、昆虫細胞中で組換えタンパク質に対する糖鎖付加、リン酸化などの翻訳後修飾が行なわれるため、活性を有するヒト由来の組換えタンパク質の大量生産に適している(非特許文献3、非特許文献4および非特許文献5参照)。しかしながら、ヒト由来β3GnT2についてBESが適用された場合、組換えβ3GnT2の発現量が少なく、タンパク質の大量生産には適さなかった(非特許文献1参照)。
シライシ(Shiraishi)ら、2001年、J Biol Chem 第276巻、p.3498−3570 トガヤチ(Togayachi)ら、2001年、J Biol Chem 第276巻、p.22032−22040 アラム(Alam)ら、2002年、Protein Expression Purif 第24巻、p.33−42 ジェイムス(James)ら、1995年、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology)第13巻、p.592−596 ヘリコート(Hericourt)、第2000年、Biochem J.、第349巻、p.417−425
本発明は、活性を有するヒト由来β3GnT2を大量に得るための方法を提供することを目的とする。
本発明は、ヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2の製造方法であって、(a)昆虫由来の分泌シグナル配列、および活性部位を含むヒト由来のβ1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2からなる融合タンパク質をコードするDNAを含有するバキュロウイルスベクターで、昆虫細胞に形質導入する工程、(b)形質導入された昆虫細胞を培養し、該融合タンパク質を培養物中に分泌させる工程、および(c)培養物から該融合タンパク質を採取する工程からなる方法を提供する。
また、本発明は、ヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2の製造方法であって、(a)昆虫由来の分泌シグナル配列、および活性部位を含むヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2からなる融合タンパク質をコードするDNA配列を含有し、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子を含有しない昆虫細胞用発現ベクターで、昆虫細胞を形質転換する工程、(b)形質転換された昆虫細胞を培養し、該融合タンパク質を培養物中に分泌させる工程、および(c)培養物から該融合タンパク質を採取する工程からなる方法を提供する。
前記各方法において、昆虫由来の分泌シグナル配列はミツバチのメリチン由来シグナル配列であることが好ましい。
前記各方法において、融合タンパク質は、さらに精製用タグ、レポーター遺伝子および/またはエンテロキナーゼの認識部位を含有することが好ましい。
さらに、本発明は、前記各方法により得られるヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2を用いることを特徴とする、ラクト−N―ネオテトラオースの製造方法に関する。
本発明により、活性を有するヒト由来β3GnT2を効率的に大量生産する方法が提供された。β3GnT2は母乳などの主な成分であるラクト−N−ネオテトラオース(LnNT)の産生に非常に重要な役割を有しており、本発明で得られたβ3GnT2を用いれば、母乳の代わりに乳幼児に与えるミルクの主成分を工業的に得ることができるようになる。したがって、本発明のヒト由来β3GnT2の製造方法は極めて優れた効果を有する。
さらに、本発明の方法により製造されたヒト由来β3GnT2がGFPを含有する場合には、蛍光顕微鏡を用いてその発現を迅速に確認できるうえ、タンパク質の精製や回収に極めて効果的である。さらに、蛍光顕微鏡によるGFPの観察はバキュロウイルス感染後のタンパク質分泌経路の解析にも応用することができる。
(a)および1(b)は、それぞれ実施例1および2で得られた酵素のβ3GnT活性を測定した結果を示す。図1(a)および1(b)において、□は細胞内β3GnT活性を表わし、■は細胞外β3GnT活性を表わす。 (a)および2(b)は、それぞれ実施例1および2で得られた酵素液中のプロテアーゼ活性を測定した結果を示す。図2(a)および2(b)において、○は細胞内プロテアーゼ活性を表わし、●は細胞外プロテアーゼ活性を表わす。 (a)および3(b)は、それぞれ実施例1および2で得られた昆虫細胞において発現した融合タンパク質のGFP蛍光強度を測定した結果を示す。図3(a)および3(b)において、◇は細胞内の蛍光強度を表わし、◆は細胞外の蛍光強度を表わす。 (a)および4(b)は、形質導入体の培養時にプロテアーゼ阻害剤を添加した場合のβ3GnT活性を測定した結果を示す。図4(a)は、細胞外に分泌された酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。図4(b)は、細胞破砕液中の酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。 (a)および5(b)は、形質導入体の培養時にプロテアーゼ阻害剤を添加した場合のプロテアーゼ活性を測定した結果を示す。図5(a)は、細胞外の酵素液中に含有される昆虫細胞由来のプロテアーゼ活性を測定した結果である。図5(b)は、細胞破砕液に含有される昆虫細胞由来のプロテアーゼ活性を測定した結果である。 (a)および6(b)は、それぞれ実施例4および5で得られた酵素のβ3GnT活性を測定した結果を示す。図6(a)および6(b)において、□は細胞内β3GnT活性を表わし、■は細胞外β3GnT活性を表わす。
本発明のヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2(β3GnT2)の製造方法は、少なくとも昆虫由来の分泌シグナル配列および活性部位を含むヒト由来β3GnT2からなる融合タンパク質を昆虫細胞で発現させることに特徴を有する。
ヒト由来β3GnT2は、配列番号1に示すアミノ酸配列(塩基配列は、たとえばGenBank登録番号AF092051)からなる膜貫通糖タンパク質であって、ラクトースを使用するポリラクトサミン鎖の伸長反応を触媒する酵素である。本明細書においてヒト由来β3GnT2は、β3GnT2としての酵素活性を失わない限り、たとえば、アミノ酸配列中のアミノ酸残基の数個が生物学的に同等のアミノ酸配列に置換されていてもよく、数個のアミノ酸残基が付加、欠失されていてもよい。また、本発明の製造方法においては、昆虫細胞内でβ3GnT2を発現させて細胞外に分泌させるため、ヒト由来β3GnT2は膜貫通領域および細胞質領域を欠くもの、たとえばヒトβ3GnT2の第26番〜第397番アミノ酸残基からなるものが好ましい。
本明細書において、分泌シグナル配列は、前駆体タンパク質またはポリペプチドの粗面小胞体膜までの選択的な輸送と膜通過のために働くシグナル配列を意味し、前駆体タンパク質またはポリペプチドのN末端に含有されたかたちで合成される。分泌シグナル配列をβ3GnT2に融合することによって翻訳後修飾が行なわれ、活性を有するβ3GnT2を得ることができる。分泌シグナル配列としては、たとえば、公知のメリチン(melittin)(GenBank登録番号X02007)、gp64(GenBank登録番号NC001623の塩基配列108179bp〜10971717bp)およびセクロピン(cecropin)(GenBank登録番号M34924)などを挙げることができ、この中でもメリチンがとくに好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではなく、使用する昆虫または昆虫細胞の種類によって、分泌シグナル配列を適宜選択することができる。なお、分泌シグナルは、細胞外に分泌されたのちに切断されてもよい。
前記融合タンパク質は、前記β3GnT2および前記分泌シグナル配列とは異なるタンパク質またはペプチドをさらに含有してもよい。さらに含有されるタンパク質またはペプチドとしては、たとえば、精製を容易に行なうための精製用タグペプチドおよび検出を容易に行なうためのレポータータンパク質が挙げられる。さらにたとえば、本発明において製造されるヒト由来β3GnT2は、エンテロキナーゼの認識部位を含有してもよい。ヒト由来β3GnT2がエンテロキナーゼの認識部位を含有する場合、エンテロキナーゼを作用させることによって、ヒト由来β3GnT2の精製に利用した精製用タグなどを除去することができる。
精製用タグとしては、たとえば、ヒスチジンタグ、S・タグ、Trx・タグ、CBD・タグ、HSV・タグなどが挙げられ、回収率が高いことからヒスチジンタグが好ましい。レポータータンパク質としては、たとえば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、GFPの変異体(GFPuv(GenBankの登録番号AF007834)など)、β−ガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼなどが挙げられる。エンテロキナーゼの切断部位としては、Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(配列番号2)からなるペプチド配列を用いることができる。
前記分泌シグナル配列およびヒト由来β3GnT2をコードするDNA配列、また、前記精製用タグ、レポータータンパク質およびエンテロキナーゼの認識部位などをコードするDNA配列は、従来の遺伝子工学的手法を用いて得ることができる。たとえば、それぞれ公知のDNA配列に基づき設計したプライマーを用いることによって、所望のDNA領域をPCRで増幅することができる。ついで各PCR産物を連結することにより融合タンパク質をコードするDNA配列(融合タンパク質遺伝子)を得ることができる。あるいは、適当な制限酵素を用いて切断することにより各DNA領域を得、ついでDNAリガーゼによって各DNA領域を連結することにより、融合タンパク質遺伝子を得ることができる。なお、分泌シグナル配列は、融合タンパク質のアミノ末端側に融合される。
また、β3GnT2については、たとえば、点変異やランダム変異などの従来の遺伝子工学的手法を用いて、数個のアミノ酸残基が置換、付加および/または欠失された変異体をコードするDNA配列を得ることができる。
本発明において使用する昆虫細胞は、当業者により適宜選択され得るが、たとえば、スポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)、スポドプテラリトラリス(Spodoptera littoralis)、スポドプテラエキシグア(Spodoptera exigua)、トリコプルシア・ニ(Trichoplusia ni)を挙げることができ、スポドプテラフルギペルダおよびトリコプルシア・ニが好ましい。
本発明における形質導入において使用される組換えウイルスベクターは、通常の方法でバキュロウイルスベクターDNAに前記融合タンパク質遺伝子を導入することによって得ることができる。ついで、得られた組換えウイルスベクターを昆虫細胞に感染させることによって、形質導入を実施する。
前記組換えウイルスベクターによる昆虫細胞の形質導入は、従来の方法により当業者が適宜実施することができる。たとえば、昆虫細胞を培養液から分離し、約5%の血清を含有する適当量の培地において適当な感染多重度(MOI)の組換えウイルスと昆虫細胞を混合し、27℃で1〜2時間温和な条件で撹拌培養を行なうことによって、実施することができる。
前記MOIは、たとえば1〜100であり、感染効率が良いという理由から、MOI10〜50が好ましい。
本発明はまた、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子を含有しない昆虫細胞用発現ベクター(以下、ノンウイルス系発現ベクターと略称する)を用いて該融合タンパク質を発現させることができる。
本発明において使用するノンウイルス系発現ベクターとは、昆虫細胞内で働くプロモーターをもつプラスミドであり、そのプラスミドの下流に目的遺伝子を挿入することによって昆虫細胞に目的遺伝子を組み込み、目的遺伝子を発現することができるベクターであって、かつウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子を含有しない発現ベクターを意味する。このようなノンウイルス系発現ベクターとしては、たとえば、pXINSECT−DEST38、pIB/His、pIZ/V5-His、pMIB/V5-His、pIB/V5−His−TOPOなどがある。
前記融合タンパク質のノンウイルス系発現ベクターによる昆虫細胞の形質転換は、従来の方法により当業者が適宜実施することができる。たとえば、目的遺伝子を発現プラスミドに挿入して発現ベクターを得る。この発現ベクターに組み込まれた目的遺伝子により昆虫細胞を形質転換するためには一般的にリポフェクション法を用いることが多い。リポフェクション法は、発現ベクター、昆虫細胞の染色体に遺伝子を挿入することのできるヘルパープラスミドおよびカチオン性脂質からなる混合物を昆虫細胞の培養液に滴下し、一定条件下でインキュベーションすることにより実施することができる。リポフェクション後、抗生物質入りの約5%の血清を含有する培地または無血清培地を適当量用いて形質転換された昆虫細胞を単離する。単離のための培養は一般的に26〜28℃で2〜4週間行う。
本発明のヒト由来β3GnT2の製造方法においては、目的の融合タンパク質の正しい高次構造形成を助ける目的で、本発明の融合タンパク質と共に分子シャペロンを染色体に組み込み共発現することが好ましい。このような分子シャペロンとしては、たとえばHSP60、HSP70などのファミリーが知られている。具体的には、カルネキシン(calnexin)、カルレティキュリン(calreticulin)などがあげられる。シャペロン遺伝子を染色体に組み込む方法としては、前記融合タンパク質のノンウイルス系発現ベクターによる昆虫細胞の形質転換と同様に行なうことができる。目的の融合タンパク質遺伝子とシャペロン遺伝子による昆虫細胞の形質転換は、同一の発現ベクターにより行なってもよく、また、別々の発現ベクターにより、順次行なってもよい。
本発明のヒト由来β3GnT2の製造方法においては、培地中に融合タンパク質を分泌させるために、前記形質導入によって得られた形質導入体または前記形質転換によって得られた形質転換体を培養する。培養は通常の方法にしたがって適宜実施し得る。培養の際にはプロテアーゼの阻害剤を添加してもよく、プロテアーゼの阻害剤を培地に添加する場合は、たとえば、1〜7日間、好ましくは2〜4日間、27℃で旋回培養することによって実施することができる。プロテアーゼの阻害剤を培地に添加しない場合は、たとえば1〜5日間、好ましくは1〜2日間、27℃で旋回培養することができる。
前記プロテアーゼの阻害剤としては、ウイルス由来のプロテアーゼ阻害剤およびカルボキシルプロテアーゼの阻害剤を用いることが好ましい。ウイルス由来のプロテアーゼ阻害剤としては、たとえば、ロイペプチンおよびE64を使用することができる。カルボキシルプロテアーゼ阻害剤としては、たとえば、ペプスタチンAを使用することができる。
前記形質導入体または形質転換体の培養によって分泌された融合タンパク質は、従来の方法にしたがって、培養物から採取することができる。たとえば、培養物から細胞を除去し、得られた培養液をアフィニティーカラムによって精製することにより採取することができる。あるいは、培養液に硫酸アンモニウムを添加することにより培養液中のタンパク質を沈殿させ、タンパク質を可溶化したのちに、DEAEなどのタンパク質吸着カラムによって精製することにより採取することができる。
本発明のヒト由来β3GnT2の製造方法に従って得られるヒト由来β3GnT2を用いて、ラクト−N−ネオテトラオースを製造することができる。ラクト−N−ネオテトラオースの製造は、たとえば、ラクトースを基質(出発物質)として前記ヒト由来β3GnT2存在下でウリジン5’−二リン酸−N−アセチルグルコサミンと反応させ、ラクト−N−トリオースIIまで変換し、得られたラクト−N−トリオースIIとガラクトースβ1,4−デキストロースにβガラクトシダーゼ(安価な酵素)を作用させることにより実施できる。この際、ラクト−N−ネオテトラオースの製造には、ヒト由来β3GnT2と同様に前記融合タンパク質を用いることもできる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
製造例1
(融合タンパク質遺伝子の取得)
活性部位を含むβ3GnT2のDNA領域は、Quick-CloneTMヒト胎児脳cDNA(BDバイオサイエンス・クロンテック製)を用い、PCR法により増幅させた。すなわち、Quick-CloneTMヒト胎児脳cDNA1ng、DNAポリメラーゼ(BDバイオサイエンス・クロンテック製)1.25U、2.5mMのdNTPs(東洋紡績(株)製)、下記フォワードプライマー1およびリバースプライマー1を各20pmolならびに蒸留水を混合し、全量50μlのPCR用反応液を調製した。ついで、PCR用反応溶液を、95℃で5分間インキュベーションしたのち、95℃で1分間、60℃で1分間および72℃で2.5分間を1サイクルとしてこれを30サイクル行ない、ついで72℃で3分間インキュベーションすることによりPCRを実施した。使用したプライマーを以下に示す。
フォワードプライマー1:5’−CGGGATCCGGAAGTCTCCAAAAGCAGTAGCCAAG−3’(配列番号3)
リバースプライマー1:5’−CGGAATTCTGAAGGGTTTAGAGGCCCTCAAATGGG−3’(配列番号4)
増幅させたDNA断片は1,264bpであり、β3GnT2のアミノ酸26〜397残基までをコードする領域およびその3’非翻訳領域を含む。ついで、6×ヒスチジンタグ、GFP、エンテロキナーゼの認識部位およびCATを順にコードするプラスミドpBlueBacHis2−GFPuv/CAT(チャー(Cha)ら、1999年、J Biotechnol 69, p9-17)から制限酵素HindIIIを用いてCAT遺伝子を取り除くことによって構築されたプラスミドpBlueBacHis2−GFPuvのBamHI/EcoRI部位に、BamHIおよびEcoRIで処理した前記DNA断片を挿入し、プラスミドpBlueBacHis2/GFPuv−β3GnT2を構築した。
ついで、ヒスチジンタグをコードするDNA配列の5’側にミツバチのメリチン由来の分泌シグナル配列をコードするDNA領域を挿入するために、pBlueBacHis2/GFPuv−β3GnT2を鋳型とするPCRを行なった。すなわち、0.1μgのpBlueBacHis2/GFPuv−β3GnT2、DNAポリメラーゼ(東洋紡績(株)製)1.25U、2.5mMのdNTPs(東洋紡績(株)製)、フォワードプライマー2および前記リバースプライマー1を各20pmolならびに蒸留水を混合し、全量50μlのPCR用反応液を調製した。ついで、PCR用反応溶液を、95℃で5分間インキュベーションしたのち、95℃で30秒間、60℃で30秒間および72℃で2.5分間を1サイクルとしてこれを30サイクル行ない、ついで72℃で3分間インキュベーションすることによりPCRを実施した。なお、フォワードプライマー2のDNA配列は、ミツバチのメリチン由来分泌シグナル配列をコードする遺伝子を含有する。使用したフォワードプライマー2を以下に示す。
フォワードプライマー2:5’−CACCATGAAATTCTTAGTCAACGTTGCCCTTGTTTTTATGGTCGTATACATTTCTTACATCTATGCCGGCCCGCGGGGTTCTCATCATC−3’(配列番号5)
PCRの結果、分泌シグナル配列をコードするDNA領域をさらに含むGFPuv−β3GnT2融合遺伝子(配列番号6)が増幅された。
得られたGFPuv−β3GnT2融合遺伝子を、エントリーベクターpENTR/D−TOPO(インビトロジェン(Invitrogen)製)に挿入し、pENTR/D/GFPuv−β3GnT2とした。
製造例2
(組換えウイルスベクターの製造)
製造例1で得られたpENTR/D/GFPuv−β3GnT2、ならびにポリへドリンプロモーターを含有するドナーベクターpDEST8(インビトロジェン製)およびGATEWAY CLONING TECHNOLOGY(インビトロジェン製)を用いて、双方のベクターの組換えによってプラスミドpDEST8/GFPuv−β3GnT2を構築した。さらにpDEST8/GFPuv−β3GnT2を用いるBac-to-Bac バキュロウイルス発現システム(Baculovirus Expression Systems)(インビトロジェン製)により、GFPuv−β3GnT2融合遺伝子をもつ組換えオートグラファ・カルフォルニカ多角体ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)(AcMNPV−GFPuv−β3GnT2)を作製した。PCR法で得られたすべてのDNA断片の塩基配列は、DNAシーケンサーにより確認した。
製造例3
(融合タンパク質の発現ベクターの製造)
GATEWAY CLONING TECHNOLOGY(インビトロジェン製)を用いることにより、製造例1で得られたpENTR/D/GFPuv−β3GnT2の融合タンパク質遺伝子を、ノンウイルス系発現ベクタープラスミドpXINSECT-DEST38にサブクローニングした。
製造例4
(シャペロン分子遺伝子を組み込んだ発現ベクターの製造)
ヒト胎盤のcDNAライブラリー(BDバイオサイエンス・クロンテック製)からPCRによりカルネキシン遺伝子(シャペロン遺伝子)を増幅した。すなわち、鋳型としてヒト胎盤のcDNAライブラリー1ng、KODポリメラーゼ(東洋紡績(株)製)1.25U、0.2mMのdNTPs(東洋紡績(株)製)、および下記フォワードプライマー3およびリバースプライマー3を各20pmol、ならびに1mMのMgCl2、1×PCRバッファー(東洋紡績(株)製)を混合し、全量50μlのPCR用反応液を調製した。ついで、PCR用反応溶液を、95℃で3分間インキュベーションしたのち、95℃で30秒間、60℃で30秒間および72℃で2分間を1サイクルとしてこれを30サイクル行ない、ついで72℃で5分間インキュベーションすることによりPCRを実施した。使用したプライマーを以下に示す。
フォワードプライマー3:5’−CACCGTCGACATGGAAGGGAAGTGGTTGCTGTGTATG−3’(配列番号7)
リバースプライマー3:5’−GCTCTAGATCACTCTCTTCGTGGCTTTCTGTTTCTTGG −3’(配列番号8)
増幅させたDNA断片(カルネキシン遺伝子)を、ノンウイルス系発現ベクターpIB/V5−His−TOPO(インビトロジェン製)と混合し、22℃で30分間反応させることにより、該DNA断片を該ベクターに挿入し、シャペロン分子発現ベクタープラスミドpIB/CNXを構築した。
実施例1
(形質導入体の獲得)
対数増殖期(2〜3個/ml)のSf−9細胞(インビトロジェン製)を用い、M.O.I.10で製造例2において製造したAcMNPV−GFPuv−β3GnT2を感染させた。
(融合タンパク質の発現)
前記形質導入体の培養は、1%のantibiotics-antimycotic(インビトロジェン製)を含有するSf−900II培地(インビトロジェン製)20mlを入れた100ml容三角フラスコを用いる旋回培養(27℃、回転数100rpm)で行なった。感染から1、2、3または4日後に培養液を回収し、遠心分離(8,000rpm、5分間)によって、融合タンパク質(配列番号9)を含む培養液上清を分取した。サンプル数は各群4本用いた。
(融合タンパク質の精製)
前記フラスコ4本分の培養上清液(80ml)に対し、Ni2+NTAアガロース樹脂(キアゲン製)を0.5mlの割合で加え、氷中で1時間穏やかに攪拌した。融合タンパク質にはNi2+に特異的に結合するヒスチジンタグが付加されているため、Ni2+NTAアガロース樹脂により該融合タンパク質が特異的に吸着される。ついで樹脂をカラムに充填し、樹脂の3倍量(1.5ml)の150mM塩化ナトリウムと40mMイミダゾールを含む50mMトリス緩衝液(pH7.5)で洗浄した。その後、樹脂の3倍量(1.5ml)の150mM塩化ナトリウム、200mMイミダゾールを含む50mMトリス緩衝液(pH7.5)で融合タンパク質を溶出させることにより、融合タンパク質を得た。融合タンパク質を含有する溶出液を、以下の試験に用いる酵素液とした。
(GFPuv−β3GnT2融合タンパク質の性質)
酵素液15μlに、エンテロキナーゼ1Uを添加し、21℃で16時間保温した。その後SDS−PAGEを用い、融合タンパク質の切断を確認した。また別途、酵素液2.5μlに変性条件下で1mUのグリコペプチダーゼF(PNGase F)(タカラバイオメディカル製)を加え、37℃で16時間反応させた後、分子量の変化をSDS−PAGEによって確認した。タンパク質濃度はProtein Assay Kit II(バイオ−ラッド製)を用いて測定した(ブラッドフォード(Bradford), 1976)。
その結果、β3GnT2とその他のヒスチジンタグとGFPuvの2個に切断されることが確認された。
また、糖鎖付加を確認するために融合タンパク質をPNGase処理したところ、分子量が7〜8kDa減少した。これは、β3GnT2は糖付加部位をもっていることを示唆している。
実施例2
(形質導入体の獲得)
対数増殖期(2〜3個/ml)のTn−5B1−4細胞(インビトロジェン製)を用い、M.O.I.10で製造例2において製造したAcMNPV−GFPuv−β3GnT2を感染させた。
(融合タンパク質の発現)
前記形質導入体の培養は、1%のantibiotics-antimycotic(インビトロジェン製)を含有するExpress Five培地(インビトロジェン製)20mlを入れた100ml容三角フラスコを用いる旋回培養(27℃、回転数100rpm)で行なった。感染から1、2、3または4日後に培養液を回収し、遠心分離(8,000rpm、5分間)によって、融合タンパク質を含む培養液上清を分取した。サンプル数は各群4本用いた。
(融合タンパク質の精製)
前記培養液上清を用いたほかはすべて実施例1と同様の方法により、融合タンパク質を得た。融合タンパク質を含有する溶出液を、以下の試験に用いる酵素液とした。
試験例1
(β3GnT活性測定試験)
実施例1および2において組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞について、該昆虫細胞の破砕液および培養液上清を試料としてβ3GnT活性を測定した。なお、細胞破砕液は、1%TritonX−100を含む50mMのトリス緩衝液(pH7.5)で細胞を処理することによって調製した。
β3GnT反応は、50mMトリス緩衝液(pH7.5)、15mM塩化マンガン、19mMのUDP−N−アセチルグルコサミン、22mMのGalβ1−4GlcNAcβ−pNP、試料5μlを含有する全量25μl液を調製したのち、37℃で24時間インキュベーションすることによって行なった。
β3GnT反応終了後、5μlの反応液を分取し、195μlの蒸留水を添加した。さらに5分間煮沸し、0.45μmニトロセルロースフィルターでろ過し、生成物をHPLCによって検出した。HPLCは、カラムとしてMightysil RP−18(H)GP150−4.6(関東化学(株)製)を用い、流速1.0ml/min、カラム温度40℃で行なった。生成物は、10%メタノールを用い、吸光度300nmで検出した。1ユニットは1分間に1μmolのGlcNAcを転移させる酵素量と定義した。
各β3GnT活性を図1(a)および1(b)に示す。図1(a)は、実施例1で得られた酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。図1(b)は、実施例2で得られた酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。
β3GnT活性はSf−9とTn−5B1−4の両細胞において細胞内外で認められ、細胞外の方が細胞内よりも高かった。Tn−5B1−4細胞においては感染後3日で劇的にβ3GnT活性が減少した。それとは反対にSf−9細胞では細胞外のβ3GnT活性は感染後4日間で上昇した。最大のβ3GnT活性はSf−9細胞では0.86mU/ml、Tn−5B1−4細胞では0.68mU/mlであった。
試験例2
(プロテアーゼ活性測定試験)
実施例1および2において組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞について、該昆虫細胞の破砕液および培養液上清を試料として、試料に含有される昆虫細胞由来のプロテアーゼ活性を測定した。なお、細胞破砕液は、1%TritonX−100を含む50mMのトリス緩衝液(pH7.5)で細胞を処理することによって調製した。
反応は次のようにして実施した。試料70μlと430μlのAUEバッファー(0.2%アゾカゼイン、3M尿素、5mMシステイン、5mM EDTA、50mMクエン酸、pH5.4)を混合することによりプロテアーゼ反応液を調製し、37℃で1時間インキュベーションした。ついで、500μlの20%トリクロロ酢酸を反応停止液として反応液に添加し、プロテアーゼ反応を停止させた。反応停止液を遠心分離(15,000rpm、5分間)し、反応液の吸光度を405nmで測定した。1ユニットは1時間で405nmの吸光度値を1上昇させる酵素量と定義した。
各プロテアーゼ活性を図2(a)および2(b)に示す。図2(a)は、実施例1で得られた酵素液中のプロテアーゼ活性を測定した結果である。図2(b)は、実施例2で得られた酵素プロテアーゼ活性を測定した結果である。
感染3日後の細胞外プロテアーゼ活性についてTn−5B1−4細胞の方がSf−9細胞に比べて5倍高く、これがTn−5B1−4細胞の急激な活性の低下の原因であると考えられる。
試験例3
(プロテアーゼの影響の確認試験)
実施例1および2で得られた酵素液について、プロテアーゼの影響を確認するために、細胞外GFPuv−β3GnT2融合タンパク質をSDS−PAGE上でその緑色蛍光により観察した。Sf−9細胞では低分子量のバンド(プロテアーゼで切断されている融合タンパク質)が感染3日後から現われはじめるが、まだ高分子量の融合タンパク質も存在した。一方Tn−5B1−4細胞では、低分子量のバンドは感染後2日目から現われはじめ、3日目ではすべてが低分子量のバンドに分解され、ほとんどがプロテアーゼによって切断された。プロテアーゼで切断されていない融合タンパク質のバンドの減少はβ3GnT活性の減少と一致していた。
試験例4
(ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)による組換えタンパク質の分子量の確認および蛍光イメージの分析)
実施例1および2において組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞について、該昆虫細胞の破砕液、培養液上清および精製酵素を試料として10%または12%のポリアクリルアミドゲルのSDS−PAGEを行なうことにより、GFPuv−β3GnT2融合遺伝子の発現とそのGFPuv−β3GnT2融合タンパク質の精製具合を確認した(リームリ(Laemmli), 1970)。なお、細胞破砕液は、1%TritonX−100を含む50mMのトリス緩衝液(pH7.5)で細胞を処理することによって調製した。ゲル上のGFP由来緑色蛍光バンドは、Molecular Imager FX(バイオ−ラッド (Bio-Rad)製)を用いて検出した。非特異的なバンドは、クーマシーブリリアントブルー(CBB)R−250(ICNバイオメディカル製)でゲルを染色してから検出した。特異的な緑色蛍光バンドを検出する場合、サンプルはサンプルバッファーを混合後、煮沸なしにそのまま電気泳動を行なった。
その結果、精製された融合タンパク質はSDS−PAGEゲル上で約77kDaと推定された。Sf−9細胞(実施例1)とTn−5B1−4細胞(実施例2)との培養液から精製された融合タンパク質の分子量の差は認められなかった。
また、各酵素液の蛍光強度の経時変化を図3(a)および3(b)に示す。図3(a)は、実施例1で得られた昆虫細胞の蛍光強度を測定した結果である。図3(b)は、実施例2で得られた昆虫細胞の蛍光強度を測定した結果である。
Sf−9とTn−5B1−4の両細胞において最大細胞内蛍光強度は最大細胞外蛍光強度の2〜4倍高かった。
実施例3
(形質導入体の獲得)
対数増殖期(2〜3個/ml)のTn−5細胞(インビトロジェン製)を用い、M.O.I.10で製造例2において製造したAcMNPV−GFPuv−β3GnT2を感染させた。
(融合タンパク質の発現)
前記形質導入体の培養は、1%のantibiotics-antimycotic(インビトロジェン製)を含有するExpress Five培地(インビトロジェン製)20mlを入れた100ml容三角フラスコを用いる旋回培養(27℃、回転数100rpm)で行なった。感染から1日後、培地1ml当たり0、0.25、1.0または2.5μgのロイペプチン塩酸塩(Wak598-06471、和光純薬製)を添加して、培養を継続した。感染から1(ロイペプチン添加直前)、2、3または4日後に培養液を回収し、遠心分離(8,000rpm、5分間)によって、融合タンパク質を含む培養液上清を分取した。サンプル数は各群4本用いた。
(融合タンパク質の精製)
前記培養液上清を用いたほかはすべて実施例1と同様の方法により、融合タンパク質を得た。融合タンパク質を含有する溶出液を、以下の試験に用いる酵素液とした。
試験例5
(プロテアーゼ阻害剤のβ3GnT活性への影響)
実施例3で得られた酵素液を用いたほかはすべて試験例1と同様にして、酵素液のβ3GnT活性を測定した。
結果を図4(a)および4(b)に示す。図4(a)は、細胞外に分泌された酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。図4(b)は、細胞破砕液中の酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。
図4(a)および4(b)に示されるように、プロテアーゼ阻害剤を0.25μg/ml以上添加することによって、β3GnT活性は3倍程度上昇した。
(プロテアーゼ阻害剤のプロテアーゼ活性への影響)
実施例3で得られた酵素液を用いたほかはすべて試験例2と同様にして、酵素液中に含有される昆虫細胞由来のプロテアーゼ活性を測定した。
結果を図5(a)および5(b)に示す。図5(a)は、細胞外の酵素液中に含有される昆虫細胞由来のプロテアーゼ活性を測定した結果である。図5(b)は、細胞破砕液中に含有される昆虫細胞由来のプロテアーゼ活性を測定した結果である。
図5(a)および5(b)に示されるように、プロテアーゼ阻害剤を0.25μg/ml以上添加することによって、細胞外プロテアーゼ濃度は1/10程度減少した。一方、細胞内のプロテアーゼ活性には、ほとんど影響がなかった。
実施例4
(形質転換体の獲得)
製造例3で製造した融合タンパク質の発現ベクタープラスミド980ngおよびネオマイシン耐性遺伝子含有プラスミドpBmA:neo(インビトロジェン製)20ngを用い、対数増殖期(2〜3×105個/ml)のTn−5細胞(インビトロジェン製)を24ウエルプレートに移し、4μlのセルフェクチン(インビトロジェン製)を用いてリポフェクション法により形質転換を行った。形質転換した細胞をExpress Five培地(インビトロジェン製)1mlに入れ、72時間27℃で培養した。その後抗生物質ジェネティシン(インビトロジェン製)700μg/mlを含むExpress Five培地(インビトロジェン製)に交換した。抗生物質耐性細胞を得るために以後3〜4日毎に培地(抗生物質ジェネティシン(インビトロジェン製)700μg/mlを含むExpress Five培地)を交換し、14日間27℃で培養した。ここで得られた細胞を抗生物質ジェネティシン(インビトロジェン製)700μg/mlを含むExpress Five培地に入れ、1mlスケールから5mlスケールにまで30日間27℃で培養した。
(融合タンパク質の発現)
前記形質転換体の培養は、Express Five培地(インビトロジェン製)20mlを入れた100mlフラスコに初期細胞濃度5×105個/mlとなるよう形質転換体を播種し、ついで旋回培養(27℃、回転数100rpm)することにより実施した。培養から1、2、3、4、5、6または7日後に培養液を回収し、遠心分離(8,000rpm、5分間)によって、融合タンパク質(配列番号9)を含む培養液上清を分取した。サンプル数は各群4本用いた。
(融合タンパク質の精製)
前記培養液上清を用いたほかはすべて実施例1と同様の方法により、融合タンパク質を得た。融合タンパク質を含有する溶出液を、以下の試験に用いる酵素液とした。
(GFPuv−β3GnT2融合タンパク質の性質)
前記酵素液を用いたほかはすべて実施例1の「GFPuv−β3GnT2融合タンパク質の性質」と同様の方法により、酵素の分子量を測定した。
その結果、β3GnT2とその他のヒスチジンタグとGFPuvの2個に切断されることが確認された。
また、糖鎖付加を確認するために融合タンパク質をPNGase処理したところ、分子量が7〜8kDa減少した。これは、β3GnT2は糖付加部位をもっていることを示唆している。
実施例5
対数増殖期の実施例4で得られた融合タンパク質発現細胞(5×105個/ml)を24ウエルプレートに移し、10μlのセルフェクチン(インビトロジェン製)を用いてリポフェクション法により、製造例4で製造したシャペロン分子発現ベクタープラスミドpIB/CNX 500ngを用いて形質転換を行った。形質転換した細胞をExpress Five培地(インビトロジェン製)500μlに入れ、72時間27℃で培養した。その後抗生物質ブラストサイジン(インビトロジェン製)50μg/mlを含むExpress Five培地(インビトロジェン製)に交換した。ブラストサイジン耐性細胞を得るために以後3日毎に培地(ブラストサイジン(インビトロジェン製)50μg/mlを含むExpress Five培地)を交換し、72時間27℃で培養した。ここで得られた細胞をブラストサイジン(インビトロジェン製)50μg/mlを含むExpress Five培地に入れ、1mlスケールから5mlスケールにまで30日間27℃で培養した。
(融合タンパク質の発現)
前記形質転換体の培養は、ブラストサイジン(インビトロジェン製)50μg/mlを含むExpress Five培地(インビトロジェン製)20mlを入れた100mlフラスコに初期細胞濃度5×105個/mlとなるよう形質転換体を播種し、ついで旋回培養(27℃、回転数100rpm)することにより実施した。培養から7日後に培養液を回収し、遠心分離(8,000rpm、5分間)によって、融合タンパク質(配列番号9)を含む培養液上清を分取した。サンプル数は各群4本用いた。
(融合タンパク質の精製)
前記培養液上清を用いたほかはすべて実施例1と同様の方法により、融合タンパク質を得た。融合タンパク質を含有する溶出液を、以下の試験に用いる酵素液とした。
試験例6
(β3GnT活性測定試験)
実施例4または5で得られた形質転換体について、該細胞の破砕液および培養液上清を試料として用いたほかはすべて試験例1と同様にして、β3GnT活性を測定した。
酵素のβ3GnT活性を測定した結果を図6(a)および6(b)に示す。図6(a)は、実施例4で得られた酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。図6(b)は、実施例5で得られた酵素のβ3GnT活性を測定した結果である。
実施例4において、β3GnT活性は細胞内外で認められ、細胞外の方が細胞内よりも高かった。β3GnT活性は、細胞内で最大1.19mU/ml、細胞外で最大3.74mU/mlであった。実施例5において、β3GnT活性は細胞内外で認められ、細胞外の方が細胞内よりも高かった。β3GnT活性は、細胞内で最大8.33mU/ml、細胞外で最大22.4mU/mlであった。
比較例1
(シグナル配列非含融合遺伝子の発現)
製造例1と同様の方法で、分泌シグナル配列を含有しないpBlueBacHis2/GFPuv−β3GnT2を構築した。
pBlueBacHis2/GFPuv−β3GnT2とBac-N-Blue Transfection Kit(インビトロジェン製)を用いて、シグナル配列を含有しないGFPuv−β3GnT2遺伝子を持つ組換えウイルス(AcMNPV−GFPuv−β3GnT2(-sig))を作製した。
前記AcMNPV−GFPuv−β3GnT2(-sig)を用いたほかはすべて実施例1と同様にして、融合タンパク質を含有する溶出液を得た。
(β3GnT活性の測定試験)
組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞について、該昆虫細胞の破砕液、培養液上清および酵素液を試料として、試験例1と同様の方法でβ3GnT活性を測定した。しかしながら、各試料については、β3GnT活性が認められなかった。
(考察)
実施例1において感染後2日で培養液を採取して得た酵素液に関し、試験の結果をまとめて表1に示す。
Figure 0004376866
酵素の活性と比活性は活性測定に用いる基質や測定条件が異なるため一概には比較できないが、本発明の方法により得られたヒト由来β3GnT2の活性は、以前の報告(免疫グロブリン由来のシグナルを使用した前掲のシライシらの文献)の10〜15倍の活性を示し、マウス由来のβ3GnTとほぼ同程度の活性を示した(イガン(Egan)ら、2000年、Glycoconj J 17:867-875)。また、精製酵素の比活性は、隋膜炎菌(Neisseria meningtidis)由来の組換えN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(ブリクト(Blixt)ら、1999年、Glycobiology 9:1061-1071)よりも約17倍高かった。
さらにGFPと融合させることにより、ウェスタンブロットやELISAなどの煩雑な作業を省くことができる。
また、β3GnT2をGFPuvと融合させることにより、蛍光顕微鏡を用いてGFPuvの緑色蛍光を観察することによってβ3GnT2の発現を簡単に確認することができた。たとえば、組換えウイルスAcMNPV−GFPuv−β3GnT2をSf−9細胞に感染させたときは18〜20時間、Tn−5B1−4細胞では16〜18時間で細胞内に緑色蛍光が観察され始めた。細胞内では細胞膜の内側に沿って、強い緑色蛍光が観察された。感染後2〜4日後、細胞内全体に緑色蛍光が観察されると同時に細胞外にも観察された。細胞外の蛍光強度はTn−5B1−4細胞の方がSf−9細胞よりも高かったが、β3GnT活性はその逆であった。
Tn−5B1−4細胞では細胞外のプロテアーゼ活性が感染後3日で最大となるが、それがβ3GnT活性の減少に関連し、またTn−5B1−4の細胞外プロテアーゼ活性はSf−9に比べて3倍高かった。高いプロテアーゼ活性が、Tn−5B1−4細胞におけるβ3GnT活性の低さの原因と推測される。BES内に存在するプロテアーゼが3種類発見されている。Sf−9細胞内ではウイルス感染に関わらず存在する40kDaのプロテアーゼが発見されている。
GFPuv−β3GnT2融合タンパク質をPNGaseで処理したとき、分子量が7〜8kDa減少した。このことから融合タンパク質は3〜4個N型糖鎖が結合していると推測される。7〜8kDaという差は以前に報告された1.5kDaおよび4kDaよりも大きい(前掲のシライシらの文献、2001年)。また、発現させた融合タンパク質のβ3GnT領域の分子量はSDS−PAGEから45kDaと推定されたが、実際は43,065.49Daであり、その差は約2kDaであった。
ノンウイルス発現系において細胞外β3GnT活性がバキュロウイルスを用いる発現系に比べ、5.5倍高い結果が得られた。また、ノンウイルス発現系では細胞外β3GnT活性はプロテアーゼ阻害剤を添加した結果よりさらに1.9倍上昇した。SDS−PAGE法による生化学的な解析の結果、ノンウイルス発現系の場合、プロテアーゼによって切断されたと考えられる低分子タンパク質は殆ど確認できなかった。このことから、細胞外にGFP−β3GnT2融合タンパク質を分泌生産するためにノンウイルス発現系は非常に有効であると考えられる。さらに、ノンウイルス発現系においてシャペロン遺伝子を共発現させた場合は、シャペロン遺伝子を共発現させていない場合と比較して細胞外β3GnT活性は、約6倍上昇した。
配列番号2:エンテロキナーゼの切断部位のアミノ酸配列
配列番号3:活性部位を含むβ3GnT2をコードするDNA配列を得るためのフォワードプライマー
配列番号4:活性部位を含むβ3GnT2をコードするDNA配列を得るためのリバースプライマー
配列番号5:ミツバチのメリチン由来分泌シグナル配列との融合タンパク質をコードするDNA配列を得るためのフォワードプライマー
配列番号6:GFPuv−β3GnT2融合遺伝子をコードするDNA配列
配列番号7:カルネキシン遺伝子をコードするDNA配列を得るためのフォワードプライマー
配列番号8:カルネキシン遺伝子をコードするDNA配列を得るためのリバースプライマー
配列番号9:GFPuv−β3GnT2融合タンパク質のアミノ酸配列

Claims (3)

  1. ヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2の製造方法であって、(a)ミツバチのメリチン由来シグナル配列、および活性部位を含むヒト由来β1,3−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ2を含む融合タンパク質をコードするDNA配列を含有し、ウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子を含有しない昆虫細胞用発現ベクターで、昆虫細胞を形質転換する工程、(b)形質転換された昆虫細胞を培養し、該融合タンパク質を培養物中に分泌させる工程、および(c)培養物から該融合タンパク質を採取する工程を含む方法。
  2. 前記工程(a)において、さらにシャペロン遺伝子をウイルス由来のプロテアーゼ遺伝子を含有しない昆虫細胞用発現ベクターで昆虫細胞の染色体に組み込み共発現させる請求項1記載の方法。
  3. 前記融合タンパク質が、さらに精製用タグ、レポーター遺伝子および/またはエンテロキナーゼの認識部位を含有する請求項記載の方法。
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