JP4376286B2 - トンネル用防音壁及びその施工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、トンネル工事における発破音等の騒音を低減するためのトンネル用防音壁及びその施工方法に関するものである。
トンネル工事において、掘削に発破を使用する場合、近隣集落への振動及び騒音防止対策が大きな課題になっている。かかるトンネル工事での騒音対策として、坑口から切羽までの間の複数箇所に、厚さ数十センチ程度の防音壁を設置するのが一般的である。
しかし、トンネルの内部に複数の防音壁を設けるには、トンネル内へ資材や土砂を搬入する煩雑な作業が必要となり、トンネル内であることから防音壁の組立作業も困難となる。
そのため、下記特許文献1には、トンネルの内部ではなくトンネルの外部で坑口を塞ぐように設置されるトンネル用防音壁が提案されている。
特許文献1に記載のトンネル用防音壁は、前後に間隔をあけて配置された坑口壁部及び正面壁部と、坑口壁部と正面壁部とを連結する連結壁部を備えている。坑口壁部及び正面壁部は、壁幅方向に複数本の縦梁部材や上下方向に複数本の横梁部材の組合せによって構成された骨組みに、多数枚の小壁部材(防音用のパネル)や防音扉を取り付けることによって構成されている。
特開2006−283545号公報
特許文献1に記載のトンネル用防音壁は、縦梁部材、横梁部材、小壁部材、防音扉、これらの連結用のボルトなど多種多様な部品から構成され、これらはバラバラに分解された状態で現場に搬入又は現場から搬出される。したがって、運搬トラック等への荷積みが非常に面倒であり、部品数が多いため多くの運搬トラックが必要となる。
さらに、このトンネル用防音壁は、まず、トンネルの坑口前に複数本の縦梁部材や横梁部材を組み立てて骨組みを作り、この骨組みに1枚ずつ小壁部材を取り付ける必要がある。また、各部品の連結にはボルトが用いられているため、多数の箇所についてボルトの締結作業を行う必要もある。そのため、トンネル用防音壁の組立作業及び解体作業に非常に時間がかかる。
上記トンネル用防音壁を用いたトンネル工事においては、ある程度掘削が進行したのちトンネル用防音壁を一旦解体して撤去し、覆工コンクリートを打設するためのセントルをトンネル内に入れ、その後再びトンネル用防音壁を組み立てる作業が行われる。しかし、特許文献1記載のトンネル用防音壁は、上述のごとく組立と解体に時間がかかるため、セントルの導入作業にも時間を要し、トンネル工事全体の長期化に繋がる。
本発明は、壁幅方向及び上下方向に連結される複数の組立ユニットによってトンネル用防音壁を構成することで、部品の運搬、組立、及び解体の作業を短時間で効率良く行うことができるようにすることを目的とする。
本発明は、トンネル外部の坑口前に設置され、前後に間隔をあけて配置された坑口壁部と正面壁部とを備えているトンネル用防音壁であって、
坑口壁部及び正面壁部の一部を形成する相対向した2つの小壁部材と、各小壁部材の外周を囲む2つの取付枠と、この2つの取付枠を連結する連結枠とを有する直方体形状又は立方体形状の複数の組立ユニットを備え、この複数の組立ユニットを壁幅方向及び上下方向に連結することによって構成されており、
前記組立ユニットは、
前記小壁部材が開き扉として前記取付枠に開閉可能に支持されている扉ユニットと、
前記扉ユニットよりも壁幅方向の側方に配置されるサイドユニットと、
前記扉ユニットの上方に配置されるアッパーユニットと、を含むことを特徴とする(請求項1)。
本発明のトンネル用防音壁は、坑口壁部と正面壁部との2重壁構造を具備している。そして、現場において骨組みと共に各壁部をそれぞれ個別に組み立てるのではなく、双方の壁部の一部を形成する2つの小壁部材を具備した組立ユニットを予め製造しておき、現場でこの組立ユニットを壁幅方向及び上下方向に積み重ねて連結することによってトンネル用防音壁を組み立てる。
したがって、現場への運搬のため、運搬用トラックには直方体形状又は立方体形状の組立ユニットを積み込めばよいので、荷積みが容易となる。また、現場において、柱や梁等の骨組みを組み立てたり、小壁部材を一枚ずつ取り付けたりする作業を無くすことができ、施工現場における組立作業及び解体作業を少ない手間で短時間に効率よく行うことが可能となる。そのため、トンネル用防音壁の組立・解体のために長い工期をとる必要がなく、トンネル工事全体の工期短縮にも寄与する。
上記のようにトンネル用防音壁をユニット化する場合、作業車両等の出入口となる開き扉(防音扉)を如何に構成するかが問題となる。仮に、開き扉を組立ユニットとは別に構成し、組み上がったトンネル用防音壁に個別に取り付けるようにした場合、組立作業及び解体作業の効率化が妨げられる。そのため、本発明では、坑口壁部側の開き扉及び正面壁部側の開き扉の双方を扉枠(取付枠)も含めたかたちで組立ユニットとしてユニット化している。これによりトンネル用防音壁の全体の組立作業及び解体作業を効率よく行うことができる。
一方、開き扉は、作業車両の通過を許容する関係上非常に大きく(通常、幅及び高さが5m程度)、そのままの状態で単体のユニットにすると、非常に大型となり、運搬等の取り扱いに支障が生じる可能性がある。そのため、本発明では、扉ユニットを上下2分割構造とすることによって、取り扱いを容易に行えるようにしている(請求項2)。ここで、扉ユニットを上下2分割構造としたのは、扉ユニットを左右2分割構造とすると、高さ寸法を縮小することができず、運搬上の高さ制限が問題になるからである。なお、扉ユニットを左右2分割構造とし、横向きの状態で運搬すれば、運搬上の高さ制限を回避することは可能であるが、分割された扉ユニットを姿勢変更するためには大がかりな作業が必要となるため、好ましくない。
扉ユニットを上下方向の中央で上部ユニットと下部ユニットとに上下に2分割する場合、その他の組立ユニットについてもこの上部ユニットと下部ユニットとを基準として寸法を設定することが好ましい(請求項3)。具体的には、扉ユニットよりも壁幅方向の側方に配置されるサイドユニットは、上部ユニット及び下部ユニットと同じ高さ寸法に設定することが好ましく、扉ユニットの上方に配置されるアッパーユニットは、扉ユニットと同じ壁幅方向寸法に設定することが好ましい。このようにすれば、組立ユニットに寸法の統一性を持たせ、部品の共通化や製造の標準化を図ることができ、製造コストを低減することができる。また、トンネル用防音壁の組立もより簡単に行うことができる。
扉ユニットにおいて、開き扉は、その一側部が取付枠にヒンジ等を介して連結されるため、その荷重は、取付枠に曲げモーメントを生じさせるように作用し、取付枠を壁幅方向の内側へ向けて変形(曲げ、倒れ)させようとする。特に、扉ユニットが上部ユニットと下部ユニットとに分割されている場合、取付枠が変形する可能性はより高くなる。そのため、扉ユニットとサイドユニットとの連結構造を、互いに隣接する取付枠同士が離反しないような形態とし、扉ユニットの取付枠に作用する曲げモーメントに抗して、取付枠をサイドユニットに支持させることが好ましい(請求項4)。このようにすれば、扉ユニットの取付枠自体の強度をさほど高くしなくても、当該取付枠の形状、姿勢を維持することができる。そのため、扉ユニットの取付枠の部材寸法(太さ等)を小さくし、その分、出入口の寸法を大きくとることが可能となる。
扉ユニットとサイドユニットとの連結構造は、互いに隣接する取付枠の一方に設けられた係合ピンと、他方に設けられ、前記係合ピンに係合する係合フックとを備えていることが好ましい。これによって簡単な構造で扉ユニットの取付枠をサイドユニットによって支持することができる。また、扉ユニットとサイドユニットとの連結にボルト等の締結具が不要となり、組立及び解体をより短時間で簡単に行うことができる。
本発明のトンネル用防音壁の施工方法は、複数の組立ユニットを上下方向複数段かつ壁幅方向複数列に連結することによって構成されるとともに、開き扉を有しているトンネル用防音壁の施工方法であって、上下方向の各段について、開き扉を含む列の組立ユニットを先行して設置し、その後、当該組立ユニットの壁幅方向側部に他の組立ユニットを設置することを特徴とするものである。
このように、開き扉を含む列の組立ユニットを先行して設置することにより、開き扉の位置を設計通りに正確に設定することが可能となる。
本発明によれば、トンネル用防音壁が複数の組立ユニットを壁幅方向及び上下方向に連結することによって構成されるので、部品の運搬、組立、及び解体の作業を短時間で効率良く行うことができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るトンネル用防音壁10の正面図であり、図2は、トンネル用防音壁10の側面図であり、図3は、トンネル用防音壁10の平面図である。トンネル用防音壁10は、トンネルTの内部には設置されず、トンネルTの外部から坑口T1を塞ぐように設置されている。すなわち、このトンネル用防音壁10は、トンネルTの坑口T1に密接して坑口T1前に設置されている。なお、図1は、トンネル用防音壁10を外部側からみた正面図であり、トンネル用防音壁10の裏側に位置するトンネルTの坑口T1を仮想線で示している。
図1に示すように、トンネル用防音壁10は、全体として幅W0と高さH0を有する正面矩形状に形成されている。トンネル用防音壁10の正面の壁面積はトンネルTの坑口T1の開口面積よりも大きく形成されている。トンネル用防音壁10は、トンネルTの内部ではなく外部に設置されるので、その壁体形状をトンネル内周面の断面形状と一致させる必要はない。
図2及び図3に示すように、トンネル用防音壁10は、前後方向(トンネルTの延長方向)に間隔をあけて対向する正面壁部11と、坑口壁部12とを有している。また、正面壁部11と坑口壁部12の周縁部同士は、連結壁部13,14によって互いに連結されている。これによって、トンネル用防音壁10は、全体として中空構造の矩形壁体に構成されている。
坑口壁部12と正面壁部11の周縁部同士を連結する連結壁部13,14は、天井壁部13と側面壁部14とからなる。天井壁部13は、坑口壁部12と正面壁部11の天井縁同士を互いに連結しており、側面壁部14は、坑口壁部12と正面壁部11の側面縁同士を互いに連結している。
正面壁部11と坑口壁部12の左右方向(壁幅方向)の中央部には観音開きタイプの防音扉15が設けられている。この防音扉15を介して作業車両や機材、人員等の出入りが可能となっている。また防音扉15の上側には、図示しないダクトを貫通させるためのダクト孔16が形成されている。
本実施形態のトンネル用防音壁10は、直方体形状の複数の組立ユニットU1〜U12を左右方向及び上下方向に並列させ、互いに連結させることによって構成されている。具体的には、図1〜図3に示すように、トンネル用防音壁10は、合計12個の組立ユニットU1〜U12から構成され、12個の組立ユニットU1〜U12を左右方向3列、上下方向4段に並列させることにより構成されている。
本実施形態では、防音扉15を含む組立ユニットを扉ユニットDU(U1,U2)といい、この扉ユニットU1,U2よりも左右方向の側方に配置される組立ユニットをサイドユニットU4〜U9といい、扉ユニットDUの上方に配置される組立ユニットをアッパーユニットU3という。また、本実施の形態では、最上段の組立ユニットを高さ調整用の調整ユニットU10〜U12という。
左右方向中央部の列には、扉ユニットU1,U2、アッパーユニットU3、調整ユニットU10が上下方向に積み重ねられており、これらは同一の左右方向寸法W1に形成されている。一方、左右方向の両側部の列には、サイドユニットU4〜U9及び調整ユニットU11,U12が上下方向に積み重ねられている。左右方向一方側のサイドユニットU4〜U6及び調整ユニットU11の左右方向寸法W2と、同他方側のサイドユニットU7〜U9及び調整ユニットU12の左右方向寸法W3とは同一寸法とされ(W2=W3)、扉ユニットU1,U2の左右方向寸法W1よりもやや小さくなっている(W1>W2=W3)。
下から3段目までの組立ユニットU1〜U9は、その高さ寸法H1,H2,H3が全て同一とされている。最上段の組立ユニット(調整ユニット)U10〜U12の高さ寸法H4は、高さ寸法H1〜H3よりも小さくなっている。
また、図2に示すように、各組立ユニットU1〜U12の奥行き寸法(前後方向寸法)は、トンネル用防音壁10全体の奥行き寸法D0と同一とされている。
なお、各寸法について例示すると、トンネル用防音壁10全体の高さ寸法H0は8.2m、左右寸法W0は14.25mとされ、奥行き寸法D0は2mとされている。また、組立ユニットの高さ寸法H1〜H3は2.5m、H4は0.7m、左右方向寸法W1は5.25m、W2及びW3は4.5mとされている。
図4は、サイドユニットU4〜U9を示す斜視図である。このサイドユニットU4〜U9を例として組立ユニットの基本構造について説明する。組立ユニットは、正面壁部11及び坑口壁部12の一部を形成する相対向した2枚の小壁部材s1を備えており、各小壁部材s1の外周部は、方形状の取付枠22に囲まれた状態で取付枠22に取り付けられている。前後の取付枠22の4隅は、連結枠24によって互いに連結されている。したがって、取付枠22及び連結枠24によって、組立ユニットの外郭形状である直方体形状の各辺部が構成されている。なお、図示はしていないが、組立ユニットの内部には、直方体形状を保持するためのブレス材(補強材)が必要に応じて設けられる。また、取付枠22や連結枠24には、H型鋼や溝型鋼等の型鋼材が用いられている。
トンネル用防音壁10の左右方向両側及び最上部に位置する組立ユニットU4〜U12には、図1に示すように、天井壁部13及び側面壁部14の一部を構成する小壁部材s2,s3が更に設けられている。すなわち、図4に示すサイドユニットU4〜U9や、調整ユニットU11,U12には、側面壁部14の一部を構成する小壁部材s3が左右片側に設けられ、最上段の調整ユニットU10〜U12には、天井壁部13の一部を構成する小壁部材s2が上部に設けられている。
サイドユニットU4〜U9は、全て同一の構造であり、左右一方側のサイドユニットU4〜U6と、左右他方側のサイドユニットU7〜U9とは、前後の向きを反転させた関係となっている。
また、アッパーユニットU3は、左右方向の幅W1が異なる点、小壁部材s1にダクト孔16が形成されている点、小壁部材s3を備えていない点を除き、サイドユニットU4〜U9とほぼ同一の構造である。
最上段両側の調整ユニットU11,U12は、上下方向の高さ寸法H4が異なる点、天井壁部13を形成する小壁部材s2を備えている点を除き、サイドユニットU4〜U9とほぼ同一の構造である。また、最上段中央の調整ユニットU10は、左右方向及び上下方向の寸法W1,H4が異なる点、小壁部材s3を備えず小壁部材s2を備えている点を除き、サイドユニットU4〜U9とほぼ同一の構造である。
なお、小壁部材s1〜s3は、防音機能(遮音又は吸音)を有するパネルであり、例えば、扁平な直方体形状に形成された中空ボックス内に、コンクリート、砂、土、水等の防音材を封入した構成とすることができる。防音材としてコンクリートを用いる場合は、コンクリート面がパネル外面に露出するようにしてもよい。また、取付枠22や連結枠24のうち外側に面する部分の内部にも、コンクリート等の防音材が封入されている。小壁部材s1〜s3として、金属製のボックス又は基板にコンクリートを接着させる場合には、両者の熱膨張差による剥離を防止するため、スタッドジベル等の結合部材を設けることが好ましい。
次に、扉ユニットDUについて説明する。図5は、扉ユニットDUの斜視図である。
扉ユニットDUは、下部ユニットU1と上部ユニットU2とからなり、上下方向に2分割構造とされている。下部ユニットU1及び上部ユニットU2の基本構造は、他の組立ユニット(例えば、図4のサイドユニットU4〜U9)とほぼ同一であり、小壁部材s1と、取付枠22と、連結枠24とを有している。ただし、小壁部材s1が、左右に2分割されるとともに、それぞれ取付枠22の左右両側の縦枠部材22aにヒンジ26を介して揺動可能に取り付けられている点、取付枠22が、小壁部材s1の上側又は下側を囲む横枠部材を備えていない点が主に異なる。この上部ユニットU2及び下部ユニットU1の小壁部材s1は、上下に対応するものが連結ブラケット28及びボルト29を介して連結されることによって、防音扉(開き扉)15を構成している。
図6は下部ユニットU1の正面図、図7は下部ユニットU1の平面図である。下部ユニットU1は、防音扉15の下半分(以下、「下扉15L」という)と、この下扉15Lの左右方向両側及び下側の3方を囲むように設けられた取付枠22と、前後の取付枠22の4隅同士を連結する連結枠24とを有している。下扉15Lは、取付枠22の縦枠部材22aにヒンジ26を介して連結されている。
取付枠22は、下扉15Lの上側を囲む横枠部材を備えていないため、その代わりに、左右の下扉15Lに亘って固定横梁30が複数のボルト・ナット等の締結具31によって固定されている。この固定横梁30によって、下部ユニットU1の運搬中等に下扉UDが開かないように固定されるとともに、下部ユニットU1の直方体形状が保持されるようになっている。この固定横梁30は、トンネル用防音壁10の組立後に取り外され、解体後に再度取り付けられる。
図8は、上部ユニットU2の正面図である。この上部ユニットU2は、下部ユニットU1を上下方向に反転させた形態とほぼ同じであり、防音扉15の上半分(以下、「上扉15H」という)と、この上扉15Hの左右方向両側及び上側の3方を囲む取付枠22と、前後の取付枠22の4隅同士を連結する連結枠24とを有している。上扉15Hは、取付枠22の縦枠部材22aにヒンジ26を介して連結されている。また、左右の上扉15Hは固定横梁30及び締結具31によって固定されている。
次に、各組立ユニットU1〜U12の連結構造について説明する。
上下方向に隣接する組立ユニットの連結構造を図5〜図8の扉ユニットDUを例に説明する。図6及び図7に示すように、下部ユニットU1の上端面の4隅には、4本の嵌合ピン35が立設されている。一方、下部ユニットU1の上端面に重ねられる上部ユニットU2の下端面の4隅には、図8に示すように、4本の嵌合ピン35が嵌合される嵌合穴36が形成されている。したがって、下部ユニットU1上に上部ユニットU2を積み重ねる際に嵌合ピン35を嵌合穴36に嵌合させることによって、水平方向の位置ズレが生じないように両者を連結することができる。
嵌合ピン35は、最上段の組立ユニットU10〜U12(図1参照)を除く組立ユニットU1〜U9に設けられ、嵌合穴36は、最下段の組立ユニットU1,U4,U7を除く組立ユニットU2,U3,U5,U6,U8〜U12に設けられている。そして、全ての組立ユニットU1〜U12が、下段側の組立ユニットの嵌合ピン35に上段側の組立ユニットの嵌合穴36を嵌合させることによって上下方向に連結されている。
なお、最下段の組立ユニットU1,U4,U7には嵌合穴36が設けられていてもよい。特に、最下段のサイドユニットU4,U7は、他のサイドユニットU5,U6,U8,U9との構造の共通化のため嵌合穴36を備えておくことが好ましい。この場合、図1に示すようにサイドユニットU4〜U9が配置されるべき場所であれば、どの位置にどのサイドユニットを配置してもよいことになるため、トンネル用防音壁10の施工性を向上することができる。
次に、左右方向に隣接する組立ユニットの連結構造を、下部ユニットU1と、これに隣接するサイドユニットU4を例に説明する。図6及び図7に示すように、下部ユニットU1の取付枠22の左右各側面には、正面視L字形状で上向きに屈曲する係合フック38が上下前後の4箇所に設けられている。一方、図4に示すように、サイドユニットU4の取付枠22の、下部ユニットU1に対向する側面には、前記係合フック38に係合可能な係合ピン39が4箇所に設けられている。
図9(a)は、係合フック38と係合ピン39の連結部(例えば、図1のB部)を示す正面断面図であり、図9(b)は、(a)のA−A断面図である。サイドユニットU4の取付枠22の縦枠部材22aは、図9(b)に示すように、一対のフランジ部22a1が前後に対向するように配置されたH型鋼により構成されており、係合ピン39は一対のフランジ部22a1間に前後方向に架け渡されるように設けられている。
そして、係合フック38を一対のフランジ部22a1間の溝に挿入し、係合ピン39に係合させることによって、下部ユニットU1の縦枠部材22aと、サイドユニットU4の縦枠部材22aとが互いに左右方向に離反しないように連結される。
上記係合フック38は、図1に示すように左右方向中央部に配置された組立ユニットU1〜U3、U10の左右両側部に設けられている。上記係合ピン39は、左右方向両側の組立ユニットU4〜U9,U11,U12の、組立ユニットU1〜U3,U10に隣接する側部に設けられている。そして、トンネル用防音壁10の上下方向の各段において、上述のように、左右方向に隣接する組立ユニット同士が係合フック38と係合ピン39によって連結される。
以上のように、トンネル用防音壁10は、複数の組立ユニットU1〜U12を左右方向及び上下方向に並列させることによって組み立てられるため、従来のように縦梁部材や横梁部材を組み立てて骨組みを作り、この骨組みに小壁部材を1枚ずつ取り付けるといった手間と時間を要する作業が不要となり、組立及び解体作業を簡単且つ短時間に効率よく行うことができる。また、各組立ユニットU1〜U12は、嵌合ピン35と嵌合穴36、及び、係合フック38と係合ピン39により連結されるため、ボルトやナット等の締結具を用いる必要がなく、組立及び解体作業をより簡単且つ短時間に行うことができる。そのため、例えば、トンネル工事中、トンネルT内にセントル等を入れるためにトンネル用防音壁10を解体し、再度組み立てる作業を行う場合であっても、当該作業に長い工期をとる必要もなく、トンネル工事全体の工期短縮を図ることができる。但し、組立ユニットU1〜U12の連結構造として、ボルト・ナット等の締結具を用いることも勿論可能である。
図10に示す扉ユニットDUにおいて、防音扉15の荷重はヒンジ26を介して縦枠部材22aにかかり、2点鎖線で示すように縦枠部材22aを左右方向内方へ曲げるように作用する。特に、扉ユニットDUは、下部ユニットU1と上部ユニットU2とに2分割されているので、下部ユニットU1と上部ユニットU2との連結部分において、縦枠部材22aが左右方向内方へ折れ曲がりやすくなっている。
この点、本実施形態のトンネル用防音壁10は、扉ユニットDUの縦枠部材22aが、係合ピン39及び係合フック38によってサイドユニットU4,U5,U7,U8から離反しないように支持されるため、扉ユニットDUの縦枠部材22aが左右方向内方へ曲がってしまうことはない。言い換えると、サイドユニットU4,U5,U7,U8によって扉ユニットDUの縦枠部材22aを支持する連結構造を採用することによって、取付枠22を含むかたちで防音扉15を組立ユニット(扉ユニットDU)としてユニット化することが可能となり、さらに、扉ユニットDUを上下に2分割構造とすることが可能になっている。
また、扉ユニットDUの縦枠部材22aがサイドユニットU4,U5,U7,U8によって支持されるため、当該縦枠部材22a自体の寸法(特に左右方向寸法)を可及的に小さくして強度を下げることも可能となり、その分、作業車両等の出入口を広くすることができるとともに、当該縦枠部材22aの材料コストを下げることができる。
本実施形態のトンネル用防音壁10は、扉ユニットDUが上下方向の中央で2分割され、下部ユニットU1と上部ユニットU2との高さ寸法H1,H2が同一とされている。そして、その高さ寸法を基準として、サイドユニットU4〜U9の高さ寸法が設定されている。また、アッパーユニットU3の左右方向幅は、扉ユニットDUの左右方向幅W1を基準として設定されている。これにより、組立ユニットU1〜U9の寸法の統一化を可及的に図ることができ、組立ユニットU1〜U9の部品の共通化及び製造の標準化等によって製造コストを低減することが可能となる。
なお、最上段の調整ユニットU10〜U12は、トンネル用防音壁10として必要とされる高さ寸法H0(坑口T1よりも大きい高さ寸法)を確保するために備えられており、その高さ寸法H4は、必要な高さ寸法H0を最低限満たすことができる寸法とされる。したがって、他の組立ユニットU1〜U9によって必要な高さ寸法H0を確保することが可能であれば、調整ユニットU10〜U12を省略することができる。また、調整用ユニットU10〜U12として、サイドユニットU4〜U9やアッパーユニットU3と同じ高さ寸法H1〜H3及び幅寸法W1〜W3のものを用いれば、サイドユニットU4〜U9及びアッパーユニットU3と部品の共通化、製造の標準化等を図ることができ、製造コストの低減が可能となる。
本実施形態のトンネル用防音壁10は、次のような順序で組立ユニットU1〜U12を設置することにより組み立てられる。すなわち、トンネル用防音壁10は、上下方向の各段について、左右方向中央列の組立ユニットU1〜3,U10を先行して設置し、その後、その隣の列の組立ユニットU4〜U9,U11,U12を設置するという順序で組み立てられる。
例えば、最初に下部ユニットU1を設置し、次に、その隣のサイドユニットU4,U7を設置し、次に上部ユニットU2を設置し、その後、その隣のサイドユニットU5,U8を設置するといったように、1段づつ完成させながら上に積み重ねて組み立てることができる。
または、最初に左右方向中央列の組立ユニットU1〜U3,U10を複数段(2〜4段)積み重ね、その後、その隣の組立ユニットU4〜U9,U11,U12を順次積み重ねていってもよい。
このように上下方向の各段について、左右方向中央列の組立ユニットU1〜U3,U10を先行して設置することにより、防音扉15を設計通りの位置に正確に設置することが可能となる。
また、左右方向中央列の組立ユニットU1〜U3,U10の左右両側部には、上向きに屈曲する係合フック38(図6等参照)が設けられているため、当該係合フック38を備えている組立ユニットU1〜U3,U10を先行して設置しないと、その後、他の組立ユニットU4〜U9,U11,U12の係合ピン39を係合フック38に係合させることが困難となる。そのため、上記のように左右方向中央列の組立ユニットU1〜U4を先行して設置することがトンネル用防音壁10の組立を効率よく行ううえで好適となる。
ただし、左右方向中央列の組立ユニットU1〜U3,U10側に係合ピン39を設け、左右方向両側の組立ユニットU4〜U9,U11,U12側に係合フック38を設ければ、左右方向側部の組立ユニットU5〜U12を先行して設置することも可能となる。また、左右方向中央列の組立ユニットU1〜U3,U10の係合フック38を下向きに屈曲する形状とした場合も同様である。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
例えば、トンネル用防音壁10や各組立ユニットU1〜U12の寸法は、例示した値に限定されるものではなく、トンネルTの坑口T1の大きさ等に応じて適宜変更可能である。また、サイドユニットU4〜U9の左右方向寸法W2,W3は、必ずしも同一(W2=W3)でなくてもよく、扉ユニットDUの左右方向の位置に応じて変更することができる。扉ユニットDUは、上下2分割構造とするに限らず、一体の構造とすることも可能である。組立ユニットU1〜U12は直方体形状に限らず立方体形状とすることができる。
本発明の実施形態に係るトンネル用防音壁の正面図である。 同トンネル用防音壁の側面図である。 同トンネル用防音壁の平面図である。 組立ユニット(サイドユニット)の斜視図である。 扉ユニットの斜視図である。 扉ユニットの下部ユニットの正面図である。 扉ユニットの下部ユニットの平面図である。 扉ユニットの上部ユニットの正面図である。 左右方向の連結構造を示す断面図である。 扉ユニットとサイドユニットとの左右方向の連結構造を示す概略図である。
符号の説明
10 トンネル用防音壁
11 正面壁部
12 坑口壁部
15 防音扉(開き扉)
22 取付枠
24 連結枠
38 係合フック
39 係合ピン
s1 小壁部材

Claims (6)

  1. トンネル外部の坑口前に設置され、前後に間隔をあけて配置された坑口壁部と正面壁部とを備えているトンネル用防音壁であって、
    坑口壁部及び正面壁部の一部を形成する相対向した2つの小壁部材と、各小壁部材の外周を囲む2つの取付枠と、この2つの取付枠を連結する連結枠とを有する直方体形状又は立方体形状の複数の組立ユニットを備え、この複数の組立ユニットを壁幅方向及び上下方向に連結することによって構成されており、
    前記組立ユニットは、
    前記小壁部材が開き扉として前記取付枠に開閉可能に支持されている扉ユニットと、
    前記扉ユニットよりも壁幅方向の側方に配置されるサイドユニットと、
    前記扉ユニットの上方に配置されるアッパーユニットと、を含むことを特徴とするトンネル用防音壁。
  2. 前記扉ユニットが、上下2分割構造とされていることを特徴とする請求項1記載のトンネル用防音壁。
  3. 前記扉ユニットが、上下方向の中央で上部ユニットと下部ユニットとに2分割されており、
    前記サイドユニットが、前記上部ユニット及び下部ユニットと同じ高さ寸法を有し、
    前記アッパーユニットが、扉ユニットと同じ壁幅方向寸法を有していることを特徴とする請求項2記載のトンネル用防音壁。
  4. 壁幅方向に隣接する前記扉ユニットの取付枠と前記サイドユニットの取付枠とを、互いに離反しないように連結する連結構造を備えている請求項1〜3のいずれかに記載のトンネル用防音壁。
  5. 前記連結構造が、互いに隣接する取付枠の一方に設けられた係合ピンと、他方に設けられ、前記係合ピンに係合する係合フックとを備えている請求項4記載のトンネル用防音壁。
  6. 複数の組立ユニットを上下方向複数段かつ壁幅方向複数列に連結することによって構成されるとともに、開き扉を有しているトンネル用防音壁の施工方法であって、
    上下方向の各段について、前記開き扉を含む列の組立ユニットを先行して設置した後、当該組立ユニットの壁幅方向側部に他の組立ユニットを設置することを特徴とするトンネル用防音壁の施工方法。
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