以下、本発明に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る4サイクルの過給機付き多気筒エンジン1の全体を模式的に示す図である。
車両に搭載されるエンジン本体2には、図面の右から、No.(ナンバー)1気筒3a、No.2気筒3b、No.3気筒3c、No.4気筒3dの4つの気筒3が形成されており、エンジン1の運転中は、各気筒とも独立して、No.1気筒3a、No.3気筒3c、No.4気筒3d、No.2気筒3b、No.1気筒3aの順で、順次着火、燃焼が繰り返される。
各気筒3,・・・,3の気筒は、それぞれ同様な構成をしており、特にNo.4気筒3dについて説明すると、各気筒3には図示しない往復動可能なピストンが設置されて、このピストンの頂部と気筒内壁面とにより燃焼室4が形成されている。燃焼室4において、ピストン頂部と対面する内壁面には、2つの吸気弁開口と、2つの排気弁開口とが形成されており、これら2つの吸気弁開口を開閉させる2つの吸気弁5と、2つの排気弁開口を開閉させる2つの排気弁6とが設けられている。尚、以下、エンジン1において、燃焼室4の中心に対してピストン頂部側を指向する方向を、エンジン1の下側と称し、その反対側で吸気弁5や排気弁6側を指向する方向を、エンジンの上側と称すこととする。
これら2つの吸気弁5は、全気筒共通の吸気カム軸7aによって開閉駆動されるとともに、吸気バルブタイミング機構7によって、その開弁時期と閉弁時期との間の開弁期間の位相を、全体的に進角や遅角することで調整可能となっている。一方、2つの排気弁6は、全気筒共通の排気カム軸8aによって開閉駆動されるとともに、排気バルブタイミング機構8によって、その開弁時期と閉弁時期との間の開弁期間の位相を、全体的に進角や遅角することで調整可能となっている。尚、本発明においては、吸気バルブタイミング機構7及び排気バルブタイミング機構8に関して、このように開弁期間の位相を調整するタイプに限らず、開弁期間の長さを変更したり、開弁期間中の吸気弁5あるいは排気弁6の開弁リフト量を変更可能なタイプのものであっても構わない。
また、燃焼室4において、ピストン頂部の対面する面の略中央には、燃焼室4内に吸入された混合気を着火する点火プラグ9が設置されている。
全気筒のピストンの往復動の運動により、各ピストンと連結されたクランク軸10は回転されて、この時の回転トルクは、クランク軸10と連結したドライブプレート11を介して、図示しない動力伝達機構から車輪に伝達され、これにより車両は走行可能となる。
全燃焼室4には吸気が供給されており、そのために、大気からエアフィルタ(図示せず)を介して吸入された吸気の吸気量を測定するエアフローセンサ12と、ターボ式の過給機13のコンプレッサ14と、過給機13により過給された吸気を空気により冷却するインタークーラー15とから成る共通吸気通路16が設けられている。
共通吸気通路16の下流側は、2つに分岐して第1分岐吸気通路17,第2分岐吸気通路18が形成されており、第1分岐吸気通路17には、上流側から、電動式で開度を調整可能な第1スロットル弁19と、第1サージタンク20とが設けられており、更に第1サージタンク20から分岐して、No.2気筒3bに吸気を供給するNo.2独立吸気通路21と、No.3気筒3cに吸気を供給するNo.3独立吸気通路22とが設けられている。
同様にして、第2分岐吸気通路18には、上流側から、電動式で開度を調整可能な第2スロットル弁25と、第2サージタンク26とが設けられており、更に第2サージタンク26から分岐して、No.1気筒3aに吸気を供給するNo.1独立吸気通路27と、No.4気筒3dに吸気を供給するNo.4独立吸気通路28とが設けられている。
このような構成により、着火及び燃焼が連続する気筒同士は、それぞれ第1分岐吸気通路17か第2分岐吸気通路18の内、一方の分岐吸気通路により吸気供給されており、換言すれば、着火及び燃焼が連続しない気筒同士(例えば、No.1気筒3aとNo.4気筒3cの組(群)と、No.2気筒3bとンバー3気筒3cの組(群))は、第1分岐吸気通路17か第2分岐吸気通路18の内、同じ分岐吸気通路から吸気供給されるよう構成される。
以上の4つの独立吸気通路21,22,27,28には、それぞれ燃料噴射弁29(図では、No.4独立吸気通路28に設けられた燃料噴射弁29のみに参照番号を付す。)が設けられている。
(排気系の構造について)
次に排気系について説明すると、No.2気筒3bに接続された独立排気通路30(特許請求の範囲に記載の「過給排気通路」に相当)と、No.3気筒3cに接続された独立排気通路31(特許請求の範囲に記載の「過給排気通路」に相当)とは、それぞれ過給機13の排気タービン32に排気ガスを供給している。
図2にて概略的に示すように、この過給機13は、所謂、ツインスクロールターボ式過給機と称されるもので、2つの排気通路30,31から導入される排気ガスに対して、区画された2つの部屋33、34が形成されており、それぞれの部屋33,34に跨るようにタービン32が設置されている。このように構成することで、No.2気筒3b、No.3気筒3cから排出される排気ガス流のエネルギーを、気筒3b,3c毎で効率的に回転エネルギーに変換させることが可能となり、タービン32とシャフトによって接続された吸気側のコンプレッサ14による過給効果を高めることを可能にしている。
また、本実施形態の過給機13は、タービン32の直ぐ上流側の独立排気通路30と独立排気通路31との間を連通する連通路35が形成されており、連通路35には連通弁36が形成されている。
この連通弁36の構成について、図2のA−A断面を示す図3を参照して説明すると、各独立排気通路30,31の上方の内壁面には、開口37,38が形成されており、開口37,38の上方側には、連通路35となる室が形成されている。各開口37,38に対しては、これらの弁を覆う弁体39が設けられており、この弁体39は、各独立排気通路30,31を形成する壁面の上部に対して、弁体39のエンジン本体2とは反対側の端部が軸支されており、これにより弁体39は、軸支部分を中心として上下方向に回動可能となる。この弁体39を回動動作させるために、弁体39には、エンジン本体2とは反対側且つ斜め上方側に位置するダイヤフラム40と機械的に接続されており、このダイヤフラム40の動作に連動して弁体39が開閉されることになる。
過給機13のタービン32の下流には、第1分岐排気通路41が設置されており、これによりタービン32に供給された排気ガスは第1分岐排気通路41に排出される。
また、No.1気筒3aに接続された独立排気通路42(特許請求の範囲に記載の「非過給排気通路」に相当)と、No.4気筒3dと接続された独立排気通路43(特許請求の範囲に記載の「非過給排気通路」に相当)とは、それぞれ下流側において、過給機13を介さずに第2分岐排気通路44と接続される。
こうした各独立排気通路の構成により、着火及び燃焼が連続する気筒同士は、それぞれ第1分岐排気通路41か第2分岐排気通路44の内、一方の分岐排気通路に接続されている。換言すれば、着火及び燃焼が連続しない気筒同士(例えば、No.1気筒3aとNo.4気筒3cの組(群)と、No.2気筒3bとンバー3気筒3cの組(群))は、第1分岐排気通路41か第2分岐排気通路44の内、同じ分岐排気通路に接続されるよう構成されることになる。
このような構成により、一般に分岐排気通路を形成すると、各気筒と分岐排気通路の上流端との間に介在する独立排気通路の排気通路長が短くなるが、この場合における各気筒の掃気性を向上できる。つまり、着火及び燃焼が連続する気筒同士を接続すると、これらの気筒同士では排気行程も連続することから、一方の気筒の排気行程が開始された後に他方気筒の排気行程が開始されることとなる。その際、独立排気通路の排気通路長が短いと、このように近接して前後する各気筒に対して、各独立排気通路を介して他方側の気筒の排気ガス圧力が作用することになり、各気筒の排気ガスの掃気性を悪化させてしまう。
そこで、排気行程が連続しない、つまり着火及び燃焼が連続しない気筒同士を、同じ分岐排気通路に接続させることで、こうした掃気性の悪化を防止している。
以上のような構成に対し、本実施形態では、更に、タービン32と接続されるNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cにおいて、こられの気筒の各排気弁6に、タービン32を近接配置している。つまり、図2に示すように、エンジン本体2において、位置的に隣接するとともに着火順序が連続しないNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cが位置する部分の独立排気通路30,31側に、過給機13のタービン32および連通路35をケーシングするハウジング13aを直結させている。
このような構成により、No.2気筒3b及びNo.3気筒3cから排出される排気ガスを、そのガス流のエネルギーが大きく低下する前に、タービン32に接触させることができる。
これについて具体的に説明すると、先ず、一つの気筒3の独立排気通路において、一方の排気弁6からタービン32までの最短の排気通路長と、他方の排気弁6からタービン32までの最短の排気通路長との平均長さを、1つの気筒3における排気弁6からタービン32までの気筒平均排気通路長と定義する。
このような定義に基づき、着火及び燃焼が連続せずタービン32に接続されるNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとに関し、No.2気筒3bに接続される独立排気通路30の気筒平均排気通路長と、No.3気筒3cに接続される独立排気通路31の気筒平均排気通路長とを求め、この平均を2−3気筒平均排気通路長とする。同様にして、着火及び燃焼が連続せずタービン32とは接続されないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとに関しても、各気筒3a,3dの気筒平均排気通路長をそれぞれ求め、これらの平均を、1−4気筒平均排気通路長する。
この場合、2−3気筒平均排気通路長は、1−4気筒平均排気通路長よりも短くなるよう設定されている。
より具体的には、本実施形態においては、No.2気筒3bとNo.3気筒3cとにおける各気筒平均排気通長は70mmとなる。尚、これらの気筒の気筒平均排気通長は、100mm以下がよいとされるが、70mm以下が好ましく、下限は、可能な限り短い方が好ましいが、レイアウト上30mm程となる。
また、タービン32に接続される独立排気通路30と独立排気通路31とは、それぞれ排気弁6,6からタービン32までにおける独立排気通路30,31の容積が、その独立排気通路30,31に接続される気筒3b,3cのシリンダ容積(ピストンが下死点にある状態における気筒内容積)と同じか若しくはこれよりも小さくなるよう形成してもよい。この場合、好ましくは、各気筒3において、シリンダ容積に対する、排気弁6,6からタービン32までにおける独立排気通路30,31の容積の割合を、1/2以下にすればよい。
これにより、タービン32と排気弁6との距離を短くして、排気ガス流の運動エネルギーが大幅に減少される前にタービン32に接触させることで、排気ガス流の運動エネルギーを、高効率でタービン32の回転エネルギーに変換できる。
一方、本実施形態では、No.4気筒3dの独立排気通路43はNo.1気筒3aの独立排気通路42を指向して湾曲し、過給機13の下方側を通って、この第2分岐排気通路44に接続しているが、この集合構造は、本実施形態の構造に限定されない。
第1分岐排気通路41と第2分岐排気通路44とは、その下流側において合流することで、共通排気通路45に連通されており、共通排気通路45には、排気ガス中のO2(酸素)濃度が略0.5%を挟んで、短時間に反転され続けることで、排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物とを浄化可能とする、貴金属を担持した三元触媒46が設置されている。
また三元触媒46の下流の共通排気通路45には、排気ガス中のO2濃度が継続的に略2%以上の状態では、排気ガス中に含有される窒素酸化物を積極的に吸収して窒素酸化物の大気放出量を低減するとともに、その後、一時的に(例えば3数秒間以内)排気ガス中のO2濃度を1%以下(好ましくは、0.5%以下)にすることで、吸収した窒素酸化物を積極的に放出するアルカリ土類金属などから成るNOx吸収材と、放出される窒素酸化物を浄化する貴金属とを担持するNOx吸収触媒47(特許請求の範囲の「NOx浄化手段」に相当)が設置されている。尚、NOx吸収触媒47に代えて、NOx吸収材を含有する担体と、放出された窒素酸化物とを浄化する担体とがそれぞれ分離されたユニットであっても構わない。
NOx吸収触媒47を通過した排気ガスは、その後大気放出される。
タービン32と接続されない第2分岐通路44を流れる排気ガスの一部は、吸気循環通路48を通ってコンプレッサ14上流の共通吸気通路16に供給されており、この吸気循環通路48を流通する一部の排気ガスの量(吸気循環量)を調整するための吸気循環バルブ48aが設けられている。
(エンジン制御について)
以上のようなエンジン1を駆動するために、エンジン1には各種のセンサと各種のアクチュエータとが設置されており、次にこれについて詳細に説明する。
図1に示すように、エンジン1には、上述の吸入空気量センサ12の他、第1サージタンク内の過給圧を検出する第1過給圧センサ49a、第2サージタンク内の過給圧を検出する第2過給圧センサ49b、インタークーラー直ぐ下流の吸気温度を検出する吸気温度センサ(図示せず)、エンジン本体2の冷却水温度を介してエンジン温度を検出可能なエンジン温度センサ(図示せず)、吸気バルブタイミング機構7に内蔵された吸気カム軸7aの回転位相を検出する吸気カム角度センサ(図示せず)、排気バルブタイミング機構8に内蔵された排気カム軸8aの回転位相を検出する排気カム角度センサ(図示せず)、ドライブプレート11の回転状態を検出することで、クランク軸10の回転数や回転位相を検出可能とするピックアップセンサ50、第1分岐排気通路41を流通する排気ガス中のO2濃度を線形的に検出可能な第1リニアO2センサ51a、第2分岐排気通路44を流通する排気ガス中のO2濃度を線形的に検出可能な第2リニアO2センサ51b、車室内のアクセルペダルの開度を検出するアクセル開度センサ52が設けられている。これらの検出信号は、車載された制御部53に出力されている。
また、制御部53は、これらの検出信号に基づいて、各種各気筒3に供給する燃料の燃料噴射量や燃料噴射時期、各気筒の点火時期、吸気弁5や排気弁6による各開弁期間を演算して、燃料噴射弁29、点火プラグ9、吸気バルブタイミング機構7、及び排気バルブタイミング機構8を制御するとともに、第1スロットル弁19及び第2スロットル弁25の開度、連通弁36の開度、及び吸気循環バルブ48aの開度を演算し、これらのアクチュエータも制御している。
次に、本実施形態に係るエンジン制御について詳細に説明する。
図4は、制御部53における制御フローチャート図であり、この図に示すように、クランク軸10の所定のクランク角度毎にスタートされた後、ステップS1に進み、上述の各種センサから検出信号を入力して次にステップS2に進む。尚、ステップS1では、ピックアップセンサ50からの検出信号に基づいて、エンジン回転数(回転速度)を算出し、ピックアップセンサ50及び吸気カム軸センサからの検出信号に基づいて、所定の気筒の1サイクルにおける行程を判別している。また、各気筒3内に供給される吸気量は、エアフローセンサ12で検出された吸気量を、各過給圧センサ49a、49bでの検出値と、吸気温度センサでの検出値とに基づいて補正し、実際に各気筒3内に供給される吸気量を精度よく検出している。
ステップS2では、エンジン回転数と、アクセル開度により求まるトルクとに基づいて、図5に示すような多数の運転領域を区画する制御マップにおける現状の運転領域を判定し、判定された領域に基づいて空燃比制御を行なうために、燃料噴射量及びスロットル弁開度を設定している。また、ステップS2では、同時に、この制御マップにより規定されるエンジン制御を行なうために、吸気循環バルブ制御の制御量についても設定している。
図5に示す制御マップを詳細に説明すると、エンジン回転数が第1回転数Ne1以下で、トルクがT1以下の運転領域Z1(特許請求の範囲に記載の「低回転低負荷運転時」に相当する領域)の時には、タービン32に接続されているNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとは、空燃比(吸気量/燃料供給量)が理論空燃比(14.7)近傍となるよう制御される(理論空燃比制御)とともに、タービン32に接続されていないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとは、燃料噴射弁29による燃料噴射が実質的に行なわれず、所謂、燃料カットされるよう設定されている。これにより、エンジン1全体から見れば、所謂、減筒運転が実行されることになる。
尚、この時、No.2気筒3bとNo.3気筒3cとで実行されるような空燃比が理論空燃比近傍となるような制御は、所謂、λ=1制御とも呼ばれるものである。具体的には、第1リニアO2センサ51aから検出信号に基づいて、各気筒3の空燃比は、理論空燃比(つまり、λ=1)を挟んで、リッチ(吸気量に対する燃料供給量の割合が多く、燃焼後の排気ガス中のO2濃度が略0.5%未満の状態)とリーン(吸気量に対する燃料供給量の割合が少なく、燃焼後の排気ガス中のO2濃度が略0.5%以上の状態)とを短期間で反転しながらこれを継続するようF/B制御されている。このようなF/B制御を実行するために、図示しないが、マップは、第1スロットル弁19の開度を所定開度TV11とするよう設定しており、これに対して空燃比の制御に際して応答性の良い燃料噴射量が、F/B制御されることになる。
また、この領域Z1では、No.1気筒3aとNo.4気筒3dに接続される第2スロットル弁25の開度は、略全開相当となるよう設定されるとともに、これらの気筒と第2分岐通路44を介して接続された吸気循環通路48に設置された吸気循環バルブ48aは略全開に制御されるよう設定されており、これにより減筒制御におけるポンピング損失が大幅に低減されることになる。尚、後述する領域Z1以外の領域では、吸気循環バルブ48aは略全閉に設定される。
このように領域Z1では、タービン32に接続されたNo.2気筒3b、No.3気筒3cでは、理論空燃比で運転されるため、タービン32を予回転(つまり、予過給)させておくことができ、この領域Z1での運転中に加速運転がされた場合における過給機13による過給遅れを抑制できる。一方、低負荷低回転にも拘わらず、理論空燃比による運転が行なわれるため、この技術では燃費向上が図れないが、タービン32に接続されないNo.1気筒3a、No.4気筒3dでは、ポンピング損失を低減しながら燃料カットされるため、これにより全体的に燃費向上を図ることが可能となる。
エンジン回転数が第1回転数Ne1以下で、トルクがT1からT2との間の低回転部分負荷領域Z2(但し、後述する領域Z3は除く)では、タービン32に接続されているNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとは、空燃比(空気/燃料供給量)が理論空燃比よりもリーンな空燃比(例えば、A/F=20〜25)近傍となるよう制御設定される(リーン空燃比制御)。このようなリーン空燃比制御を実行するために、マップには、第1スロットル弁19の開度を、開度TV11よりも大きい開度TV12となるよう設定されており、これに対して燃料噴射量は、空燃比がリーンとなるように予め設定された量で噴射されるよう設定されている(フィードフォワード(F/F)制御)。尚、このリーン空燃比制御についても、第1リニアO2センサ51aの検出信号に基づいて、目標空燃比を理論空燃比よりもリーンな空燃比に設定してF/B制御してもよい。
一方、この低回転部分負荷領域Z2では、タービン32に接続されていないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとについても、上述のようなリーン空燃比制御を実行するよう設定される。尚、第2スロットル弁25の開度TV2は、略開度TV12と同等となる。
また、No.1気筒3aとNo.4気筒3dにおけるリーン空燃比制御をF/B制御で実行する場合には、排気ガス中のO2濃度は、第1リニアO2センサ51bによって検出されることになる。
低回転部分負荷領域Z2においては、このように全気筒において、リーン空燃比制御が実行されることで、燃費を向上できる。
エンジン回転数が第1回転数Ne1付近以下で、トルクが、全開トルクToと全開トルクToから微小なトルクΔToを減算した所定トルクとの間にある低回転全負荷領域Z3では、全気筒に亘って、上述のようなF/B制御による理論空燃比制御を実行するよう設定される。この時、タービン32に接続されていないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとについては、排気ガス中のO2濃度検出のために、第2リニアO2センサ51bが用いられる。
このように低回転全負荷領域Z3では、全気筒において理論空燃比制御が実行されるため、十分なトルクが得られ、例えば加速初期における出力不足を防止できる。また、この時には、アクセル開度に応じて第1及び第2スロットル弁19,25の開度も大きく開成されるため吸気量が多い状態となり、合わせて理論空燃比運転されることによる排気ガス流のエネルギーも高いため、過給機13の過給効率が高い状態にある。よって、更に、高い出力の供給が可能となる。
エンジン回転数が第2回転数Ne2以下で、上述の領域Z1、Z2、及びZ3の領域を除いた領域Z4aと、エンジン回転数が第2回転数Ne2と第3回転数Ne3との間で、低トルク側の領域Z4bとを合わせた部分負荷領域Z4では、タービン32に接続されているNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとは、上述のようにリーン空燃比制御を実行するとともに、タービン32に接続されていないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとは、上述のような理論空燃比制御を実行するよう設定されている。
尚、第1及び第2スロットル弁19,25の各開度TV1,TV2とも、上述の開度TV11より大きい開度でエンジン回転数及びトルクが増大するにつれて、開度が大きくなるよう設定されるが、第1スロットル弁19の開度TV1と第2スロットル弁25の開度TV2とを比較すると、開度TV2の方が小さくなるよう設定されている。
このような制御により、一部の気筒についてはリーン空燃比制御が実行されることで、燃費を向上することができるとともに、この時、残りの気筒では、理論空燃比制御により排気ガス流のエネルギーを増大させて過給機13による過給効果を向上することで、高出力化を図っており、つまりは、確実に燃費を向上できる。また、これにより全体的に高出力化が可能となるためエンジン本体2、延いてはエンジン1を全体的に小型化することも可能となる。
エンジン回転数が少なくとも第3回転数Ne3以上で、上記領域Z4以外の高回転領域Z5(特許請求の範囲に記載の「高速運転時」に相当する領域)では、タービン32に接続されているNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとは、上述のような理論空燃比制御を実行するとともに、タービン32に接続されていないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとは、上述のようなリーン空燃比制御を実行するよう設定されている。 尚、第1及び第2スロットル弁19,25の各開度TV1,TV2とも、基本的に領域Z4における各開度TV1,TV2よりそれぞれ大きい開度で、エンジン回転数及びトルクが増大するにつれて大きくなるよう設定されるが、第1スロットル弁19の開度TV1と第2スロットル弁25の開度TV2とを比較すると、TV1の方が小さくなるよう設定されている。
このような制御により、一般的に、高回転運転状態では、タービン32に接続されている気筒3をリーン運転すると、出力向上のために過給効率増大が要求される運転域であるにもかかわらず、リーン運転により排気ガス流のエネルギーが増大されずに過給効率を高めることができない状態となってしまい、出力不足が発生する。そこで、本実施形態では、タービン32に接続されているNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとに対しては、理論空燃比制御を実行して、過給機13による過給効率を増大させて出力増大を図るとともに、一方で、タービン32に接続されていないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとは、リーン空燃比制御にして、出力及び燃費を向上させている。
また、高速運転である領域Z5では、NOx吸収触媒47が熱劣化し易いが、No.1気筒3a及びNo.4気筒3dの空燃比を理論空燃比近傍よりもリーンにすることで、No.1気筒3a及びNo.4気筒3dから比較的低温の排気ガスが排出されて、NOx吸収触媒47の昇温による熱劣化を防止できる。
一方、理論空燃比制御されるNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cから排出される高温の排気ガスは、熱容量が大きいタービン32やケース13a等との接触や、ターボ過給機13のタービン32の駆動により排気ガスのエネルギーが消費されることで冷却され、NOx吸収触媒47に導入される。従って、上述のように、No.2気筒3bとNo.3気筒3cとに対する理論空燃比制御により過給効率の増大を図りつつ、NOx吸収触媒47の昇温による熱劣化を防止できる。
尚、この領域Z5においては、タービン32に接続されているNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとは、理論空燃比よりもリッチな空燃比で運転されるよう設定してもよく、これにより更なる高出力化が可能となる。
次に、ステップS3に進み、全気筒における吸気弁5と排気弁6とのバルブタイミング制御を実行するため、バルブタイミング制御の各種制御量が設定される。
先ずは、排気バルブタイミング機構8による排気バルブタイミング制御について説明すると、図6に示すように、排気弁6の開弁期間EOPは、開弁時期EOTと閉弁時期ECTとの間の期間として規定されている。このように規定された開弁期間EOPは、エンジン回転数が低回転側で且つトルクが大きい程、カムプロフィールを維持したまま遅角側にシフト設定される(EOP1参照)。
具体的には、図7の制御マップで示されるように、領域Z2の全域と、領域Z3、Z4の低回転且つ高トルク側の領域と、領域Z1の低回転且つ高トルク側の領域とを合わせた領域C1において、開弁期間EOPは、それ以外の領域CEにおける開弁期間EOPよりも遅角側に設定される。また、特に、領域Z2の全域と、領域Z4のより低回転且つ高トルク側の領域とを合わせた領域C2においては、開弁期間EOP1(開弁時期EOT1と閉弁時期ECT1との間の期間)は、領域CEにおける開弁期間EOPに対して最大に遅角されている。具体的には、領域CEにおける開弁期間EOPに対して、領域C2における開弁期間EOP1は、クランク角度にして略10°から略50°、燃焼安定性なども考慮して好ましくは略30°から略40°程遅角設定される。
これにより、上述のように、排気弁6とタービン32との間の気筒平均排気通路長の経路が短いNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとにおいては、低回転運転状態であっても排気弁6の開弁期間EOPを遅角化することで排気ガス流のブローダウン効果を高めることが可能となる。よって、高効率で排気ガス流のエネルギーをタービン32の回転エネルギーに変換させることができ、全気筒において低回転運転時に高い過給効果を得ることが可能となる。
特に、本実施形態では、過給効果の要求が高い低回転側且つ高トルク側において、開弁期間EOPを大幅に遅角することにより、高い過給効果を発現させることが可能となる。また、高回転側の領域CEは、このような排気弁6の開弁期間EOPの遅角化を行わなくても十分過給効果が高いため、過度な過給を防止するため、排気弁6の開弁期間EOPの遅角化が抑制される。また、低回転側且つ低トルク側は、排気弁6の開弁期間EOPの大幅な遅角化を行なうと、燃焼室4内に逆流する排気ガスの割合が増大するため、こうした遅角化は抑制される。
尚、吸気バルブタイミング機構7による吸気バルブタイミング制御は、本発明に関しては直接的に影響しないため、説明は省略する。
次に、ステップS4に進み、連通通路35の連通弁36の開閉制御を実行するための制御量を設定する。
連通弁36は、エンジン回転数が第4回転数Ne4(但し、第4回転数Ne4は第2回転数Ne2付近の回転数となる)以下であれば閉成され、第4回転数Ne4より大きければ開成されるよう設定される。
これは、排気弁6とタービン32との間の気筒平均排気通路長の経路が短いNo.2気筒3bとNo.3気筒3cとにおいては、エンジン回転数が第3回転数Ne3以下の時には、各気筒からの適切な量の排気ガス流を的確にタービン32に接触させることができるが、エンジン回転数が第3回転数Ne3より大きい時には、1気筒当たりの排気ガス流が過剰に増大して、排気ガスがタービン32直前で詰まるような状態になり、排気ガス流のエネルギーを効率的にタービン32の回転エネルギーに変換させることができなくなり、これを防止するためである。
このような状態においては、連通弁36を開成することで、No.2気筒3bとNo.3気筒3cとの内、過剰に増大した一方側の気筒の排気ガスを、着火サイクル時期の違いから、この時には大量の排気ガスが流れていない他方側の気筒の独立排気通路へ逃がすことができ、これにより排気ガス流のエネルギーをタービン32の回転エネルギーへ効率的に変換させることが可能となる。
次に、ステップS5に進み、NOx吸収触媒47に吸収されている窒素酸化物吸収量が推定される。この推定方法は、例えば、NOx吸収触媒47の排気上流と下流とに設置された各NOxセンサ(図示せず)や各O2センサ(図示せず)の検出結果に基づいて、公知の手法により検出される。尚、本手法は、こうしたセンサに拠らず所定時間毎に窒素酸化物吸収量が多いと判定するものも含む。
その後、ステップS6に進み、窒素酸化物吸収量が所定量以下で、まだ十分窒素酸化物を吸収可能であると判断した時には、ステップS7に進んで、ステップS2、S3、S4で設定された各気筒の燃料噴射量、第1スロットル弁19及び第2スロットル弁25の開度、吸気循環バルブ48aの開度、吸気弁5の開弁期間IOP、排気弁6の開弁期間EOP、連通弁36の開度に対応して、燃料噴射弁29や各種アクチュエータ等が駆動され、各制御が実行される。尚、この時、燃料噴射時期や、点火プラグ9の点火時期も予め設定された通りに制御実行されることになる。その後、スタートに戻り、次に着火される気筒に対する制御が行なわれる。
一方、ステップS6において、窒素酸化物吸収量が所定量以上であり、NOx吸収触媒47からNOxを放出するよう強制的に空燃比制御する必要があると判断した時には、ステップS8に進む。
ステップS8では、図5の制御マップに拠らず、強制的に、NOx吸収触媒47に流入する排気ガスのO2濃度が略1%以下となるように空燃比制御されるが、本実施形態においては、このような空燃比制御のために、タービン32に接続されないNo.1気筒3aとNo.4気筒3dとに対して、強制リッチ制御が実行されることになる。但し、この場合、タービン32に接続されたNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cは、図5の制御マップに基づいた空燃比制御が実行される。
強制リッチ制御について具体的に説明すると、先ずは、現時点における全気筒による空燃比制御の実行状況から、強制リッチ制御によりNOx吸収触媒47に流入する排気ガスのO2濃度を略1%以下とするには、No.1気筒3a及びNo.4気筒3dの各気筒の燃料噴射量と、吸気量とをどれぐらいに設定すればよいか、つまり、No.1気筒3a及びNo.4気筒3dの各気筒の空燃比をどれくらいに設定するかが演算される。
この結果、例えば、タービン32に接続されたNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cがリーン空燃比制御により理論空燃比よりもリーンな空燃比で運転されている時(領域Z3やZ4における運転中)には、タービン32に接続されないNo.1気筒3a及びNo.4気筒3dの各気筒の空燃比は、理論空燃比よりもリッチな空燃比(例えば、A/F=12から14)となるよう設定される。
また、No.2気筒3b及びNo.3気筒3cが理論空燃比制御により理論空燃比近傍で運転されるとともに、No.2気筒3b及びNo.3気筒3cは、リーン空燃比制御によりリーンな空燃比で運転されている時(領域Z5)では、全気筒において理論空燃比制御若しくは空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比となるようなリッチ空燃比制御が設定される。
このような設定により、NOx吸収触媒47の窒素酸化物の放出及び浄化のために、タービン32に接続されたNo.2気筒3bやNo.3気筒3cに対して強制リッチ制御が設定されることがないため、過給機13の過度な過給を抑制することができ、こうした過過給によるトルクショックの低減が可能となる。
また、領域Z4を運転中の場合にNOx吸収触媒からNOx放出を行なう必要が生じた場合には、理論空燃比制御が実行されているNo.1気筒3a及びNo.4気筒3dに対して、強制リッチ制御が実行されることになるため、No.1気筒3a及びNo.4気筒3dの空燃比は、理論空燃比近傍とこれよりリッチ側との間で移行させればよく、空燃比を、理論空燃比近傍を挟んでリッチとリーンとの間で大幅に移行させる場合に比べて空燃比移行制御に伴うトルクショックが低減される。
更に、こうしたNo.1気筒3a及びNo.4気筒3dに対する強制リッチ制御における空燃比の移行制御では、燃料噴射量の増量のみで移行が行なう場合には、応答性よく空燃比を移行させることができる。また、吸気量を減量してよりリッチ度合を高めるために、第2スロットル弁25を、所定開度分だけ閉弁する場合があるが、このような場合においても、上述のように、空燃比の変更度合が小さいために、第2スロットル弁25の開度の変更量も低減でき、これにより空燃比の移行における応答性を高めつつ、更にトルクショックを低減することが可能となる。
次に、ステップS7に進んで、ステップS8の設定結果に基づいて、No.1気筒3a及びNo.4気筒3dの燃料噴射量、第2スロットル弁25の開度が変更されて制御実行される。尚、ステップS2、S3、S4で設定した、No.2気筒3b及びNo.3気筒3cの燃料噴射量、第1スロットル弁19の開度、吸気循環バルブ48aの開度、吸気弁5の開弁期間IOP、排気弁6の開弁期間EOP、連通弁36の開度は、変更されずに、実行される。尚、このような強制リッチ制御は、0.5秒から3秒ぐらい実行することで、NOx吸収触媒47から殆どの窒素酸化物を放出及び浄化さあせることができる。
ステップS7の実行後は、スタートに戻る。
(本実施形態における作用及び効果)
次に、本実施形態における作用及び効果を説明する。
本実施形態においては、ターボ式の過給機13のタービン32と接続されたNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cに対して、リーン空燃比制御を実行することで、エンジン1の 高出力化を図りつつ、燃費を向上させることができる。
また、こうしたNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cにおけるリーン空燃比制御により、多量に排出される窒素酸化物を、共通排気通路45に配したNOx吸収触媒47に吸収させることで、空燃比がリーンな状態における窒素酸化物の大気放出を低減できる。また、こうした一部気筒によるリーン空燃比制御の後、タービン32に接続されていないNo.1気筒3a及びNo.4気筒3dに対して一時的に強制リッチ制御が実行されることで、NOx吸収触媒47に吸収された窒素酸化物を放出、浄化させており、これにより、窒素酸化物の大気放出を確実に低減している。
特に、本実施形態においては、こうしたNOx吸収触媒47に対する窒素酸化物の放出、浄化のために、上述のようにタービン32に接続されていないNo.1気筒3a及びNo.4気筒3dに対して強制リッチ制御を実行しているが、この時、タービン32と接続されたNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cに対しては、リーン空燃比制御を継続させている。従って、タービン32と接続されたNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cが強制リッチ制御されることによって発生する過給機13の過過給を防止でき、トルクショックの低減が可能となる。
また、一般的に、ターボ式過給機13には、コンプレッサ14の下流の過給圧に基づいて、該過給圧が信頼性上問題となるような過給圧より大きくなると、タービン32に流入する排気ガスをタービン32の下流にバイパスするウエスト・ゲート・バルブ機構が設けられている。このようなウエスト・ゲート・バルブ機構により、過給機13の過過給を防止することが考えられるが、タービン32に接続された気筒3b、3cに対して強制リッチ制御を実行すると、排気ガス流のエネルギーは膨大となり、通常のウエスト・ゲート・バルブ機構では、対応できない。
これに対して、本実施形態により、確実に過過給を防止してトルクショック低減が図れる。
次に、No.2気筒3b及びNo.3気筒3cの各排気弁6に対して、タービン32を近接配置することによる作用及び効果を、実験結果を参照して説明する。
図8は、1気筒当たりの気筒平均排気通路長(1気筒において、2つの排気弁6におけるそれぞれの排気弁6とタービン32との最短の各排気通路長の平均長さ)と、過給圧及びタービン32上流の排気ガス圧力との関係について示したものである。尚、実験は、シミュレーションにより行い、その際、2リッターの4気筒エンジンのモデルを使用した(以下の実験も同様)。
このグラフにて示すように、気筒平均排気通長が短くなるほど、過給圧(実線)及び排気ガス圧力(破線)は急増しており、気筒平均排気通長は100mm以下、好ましくは70mm以下に設定すれば、高い過給効率が得られている。尚、下限は、可能な限り短い方が好ましいが、レイアウト上30mm程が限度である。
また、この実験結果から、一般的な独立排気通路の断面積を参照すると、シリンダ容積(ピストンが下死点にある状態における気筒内容積)に対する、排気弁6,6からタービン32までの独立排気通路30,31の容積の割合を、1以下、好ましくは1/2以下にすれば、高い過給圧が得られる。
図9は、排気弁6の開弁期間EOPや開弁プロフィールを変化させずに、開弁時期EOTを変更した場合における、過給圧特性について示したグラフである。開弁時期EOTの数値は、排気下死点前のクランク角度を示しており、クランク角度がBTDC52°の時が、高回転時における一般的な排気弁6の開弁時期EOTとなる。また、実線は、気筒平均排気通路長を30mmにした条件での当該特性で、破線は、気筒平均排気通路長を300mmとした条件での当該特性を示している。
このグラフにて示すように、気筒平均排気通路長が短いときには、排気弁6の開弁時期EOTを遅角させることで、過給圧が増大するが、気筒平均排気通路長が長いときには、排気弁6の開弁時期EOTを遅角させても、過給圧の増大は見られない。これにより高い過給効果を得るためには、気筒平均排気通路長を短くして、排気弁6の開弁時期EOTを、BTDC42°から12°(BTDC52°よりも10°から40°遅角側)、好ましくはBTDC22°から12°(BTDC52°よりも30°から40°遅角側)に設定すればよい。
図10は、本実施形態における連通路35の連通弁36を全閉した時におけるエンジン回転数とトルクとの関係(実線)、及び連通弁36を全開した時におけるエンジン回転数とトルクとの関係(破線)について示すグラフである。
この図に示すように、エンジン回転数が3000rpm以下の場合には、連通弁36を全閉にした方がトルクは高い。これは、上述したように、気筒平均排気通路長の経路が短い場合において、低回転時では、1気筒当たりの少ない排気ガス流を確実にタービン32に導くことで、排気ガス流のエネルギーを効率的にタービン32の回転エネルギーに変換させることができるためである。一方、エンジン回転数が3000rpmより大きい場合には、連通弁36を全開にした方がトルクは高い。これは、高回転時では、1気筒当たりの排気ガス流が過剰に増大して、排気ガスがタービン32直前で詰まるような状態になり、排気ガス流のエネルギーを効率的にタービン32の回転エネルギーに変換させることができなくなるためである。よって、高回転時には、過剰に増大した一方側の気筒の排気ガスを、着火サイクル時期の違いから、この時には大量の排気ガスが流れていない他方側の気筒の独立排気通路へ逃がすことにより、排気ガスがタービン32直前で詰まるような状態を解消し、排気ガス流のエネルギーをタービン32の回転エネルギーへ効率的に変換させることが可能となる。
図11、図12は、比較例となるエンジンAに対する、比較例のエンジンBと本実施形態のエンジンCとにおける、部分負荷運転状態でのそれぞれ過給圧増大量と、燃費改善率とを示したグラフである。
尚、エンジンCは、No.2気筒3b及びNo.3気筒3cの各排気弁6に対してタービン32を近接配置したエンジン1において、上述のような領域Z4での部分負荷運転(No.2気筒3b及びNo.3気筒3cはリーン空燃比制御で、No.1気筒3a及びNo.4気筒3dは、理論空燃比制御を実行)を行った時のデータである。これに対して、エンジンAは、過給機を具備しない通常のエンジンにおいて、本実施形態と同様の部分負荷での理論空燃比制御を、4気筒全てに対して実行した時のデータである。また、エンジンBは、4気筒全てからの排気ガス供給を受けて吸気を過給するターボ式過給機を具備するエンジンにおいて、本実施形態と同様の部分負荷でのリーン空燃比制御(A/F=22)を、4気筒全てに対して、実行した時のデータである。
これらの図により、本実施形態であるエンジンCは、高い過給圧により過給効率を高めることで、エンジンBと同等の燃費性能を確保しつつ、高い過給効率を利用して加速時の加速応答性を向上できることが容易に判断される。
(他の実施形態)
尚、本実施形態においては、燃料噴射弁29を各気筒3に対応する独立吸気通路に設置させた、所謂、ポート噴射により、各気筒3に燃料を供給したが、本発明はこれに限定されず、各気筒3内に直接燃料噴射弁を配置して、吸気行程や圧縮行程で燃料噴射を実行する、所謂、直噴によって燃料供給をおこなってもよい。
また、本実施形態においては、4気筒エンジンについて適応したが、6気筒エンジンやそれ以上の多気筒エンジンにも適応可能である。
また、本実施形態において、排気バルブタイミング制御は、全気筒に対しておこなったが、タービン32に接続されたNo.2気筒3b及びNo.3気筒3cに対してのみおこなってもよい。
また、本実施形態においては、2つの独立排気通路30,31を合流させた第1分岐排気通路41と、2つの独立排気通路42,43を合流させた第2分岐排気通路44とを設けたが、このような構造に代えて、2つの独立排気通路30,31を合流させたタービン32の直ぐ下流に2つの独立排気通路42,43を直接合流させてもよい。
また、本発明はディーゼルエンジンにも適応可能である。