JP4373723B2 - シリンダ型気相成長装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、シリンダ型気相成長装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコン単結晶基板の主表面にシリコンエピタキシャル層を気相成長させてシリコンエピタキシャルウェーハを製造する気相成長装置として、シリンダ型(バレル型)気相成長装置が知られている。
このシリンダ型気相成長装置は、反応室となるベルジャ内に多角錐台状のサセプタが回転軸を中心として回転可能に配設されており、サセプタにはそれぞれの外周面に座ぐりが上下に並んで形成されている。また、反応室の外側には加熱手段が設けられている。このようなシリンダ型気相成長装置によりシリコンエピタキシャルウェーハを製造するためには、加熱手段により所定温度に加熱された反応室内に、該反応室の上部に設けられたガス供給管から反応ガスをキャリアガスとともに供給する。この反応ガスは、回転軸の回りに回転されるサセプタの外周面に沿って流れながらシリコン単結晶基板上に供給され、反応室の下部に設けられたガス排気管から外部へ排出される。
【0003】
ところで、上記反応に使用されるシリコン原料ガスとしては、一般にトリクロロシランや四塩化珪素等であり、また、反応前にはシリコン単結晶基板をエッチングするためにHCl(塩化水素)ガスが使用される。HClガスは、反応室や、配管内壁に付着した反応副生成物をエッチングするために行われるクリーニング用にも使用される。これらのガスは腐食性であり、特に水分が付着すると塩酸を形成し、種々の金属を激しく腐食することが広く知られている。
一方、上記シリンダ型気相成長装置の反応室は石英製であるので、これらのガスによって腐食されることはないが、ガス排気管は通常、SUS(ステンレス鋼)で形成されているので、上述した高温の腐食性ガスが通過することによって腐食されることがある。また、例えば、反応が完了したシリコンエピタキシャルウェーハを取り出し、新たに次の反応のためにシリコン単結晶基板をサセプタに載置するために、反応室は一旦、大気に開放される。この際に、大気は反応室に入り込むだけでなく、反応室と接続されたガス排気管にも入り込む。すなわち、大気は相当量の水分を含んでおり、この水分とガス排気管に極微量ではあるが残存する上述の腐食性ガスとが混じり合う結果、塩酸が生じ、ガス排気管を腐食する。
このようにしてガス排気管が腐食されることによりガス排気管に生成された腐食生成物は、SUS単体と比較して、腐食性ガスと容易に反応して気体状の塩化化合物を生成する。そして、この気体状の塩化化合物は蒸気圧が高いため、ガス排気管から反応室へと拡散し、シリコンエピタキシャルウェーハへと取り込まれる。その結果、シリコンエピタキシャルウェーハのライフタイムを低下させる等、品質の低下を招くことがある。
また、ガス排気管の内壁には、反応中に生成する副生成物が付着し、この副生成物は反応中に一部が剥がれ落ちて、細かい粒子となり反応室内を漂いシリコンエピタキシャルウェーハの表面に付着することがあり、これによってシリコンエピタキシャルウェーハに突起等が形成される原因となることがある。
【0004】
そこで、ガス排気管の腐食を防止する手段として、ガス排気管の内壁を例えばTiO2といったセラミックでコーティングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、ガス排気管で生成される微粒子物の反応室への逆流を防止する方法として、ガス排気管と反応室との間の接続部にバッフルを設けて、バッフルの反応室側の開口部よりガス排気管側の開口部を小さくする方法が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−17324号公報
【特許文献2】
特開平4−233220号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の方法は、ガス排気管の腐食防止には効果的であるが、ガス排気管の内壁に反応副生成物が付着してしまうため、依然として高い頻度でガス排気管をクリーニングする必要がある。
一方、後者の方法では、バッフルが、ガス排気管の一部分をカバーする構造になっているが、ガス排気管の内壁の一部分しかカバーされていないことと、バッフルがガス排気管の内壁に密着していないことから、腐食性ガスや反応ガスが、ガス排気管の内壁に接触してしまい、ガス排気管の腐食や、ガス排気管への反応副生成物の付着に対してはほとんど効果を持たない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ガス排気管の腐食やガス排気管への反応副生成物の付着を大幅に低減することができ、これによって、シリコンエピタキシャルウェーハの重金属汚染を低減することができ、その結果、シリコンエピタキシャルウェーハのライフタイムの低下を抑制することのできるシリンダ型気相成長装置を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決するために、本発明のシリンダ型気相成長装置は、シリコン単結晶基板を保持するサセプタを有するシリンダ型の反応室と、反応室の内部に反応ガスを供給するガス供給管と、ガス供給管から反応室内に供給されたガスを排出するガス排気管と、反応室とガス排気管とを接続する排気配管部とを備えたシリンダ型気相成長装置において、
排気配管部の内壁に、該内壁全体を覆うように石英製のカバーが設けられており、
前記石英製のカバーは、前記反応室と前記ガス排気管に連通し、前記排気配管部のコーナー部側に配される断面視略L字型の第1カバー部と、前記反応室に連通し、前記第1カバー部に隣接して配される断面視略矩形状の第2カバー部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明のシリンダ型気相成長装置によれば、排気配管部の内壁には、内壁全体を覆うように石英製のカバーが設けられているので、この石英製のカバーによって、SUS(ステンレス鋼)で形成された排気配管部の内壁がシリコン原料ガス、HClガス等の腐食性ガスと直接接触することを防ぐことができ、排気配管部の内壁の腐食を低減することができる。そのため、腐食により生成される腐食生成物が腐食性ガスと反応して気体状の塩化化合物を生成することを抑制でき、この塩化化合物によるシリコンエピタキシャルウェーハの重金属汚染を低減することができる。この結果、シリコンエピタキシャルウェーハのライフタイムの低下を抑制することができる。
さらに、反応中に生成される反応副生成物が石英製のカバーに付着し、排気配管部の内壁に直接付着することも低減できる。反応副生成物が付着した部品は、クリーニングのために定期的に交換する必要があるが、石英製のカバーの交換は、排気配管部に比べて短時間で行うことができ、しかも交換頻度が少なくて良い。
また、石英製のカバーは、反応室とガス排気管に連通し、排気配管部のコーナー部側に配される断面視略L字型の第1カバー部と、反応室に連通し、第1カバー部に隣接して配される断面視略矩形状の第2カバー部とを備えているので、排気配管部を気相成長装置に固定接続した状態で、第1カバー部を始めに排気配管部内に設置した後に、第2カバー部を排気配管部内に設置することができ、その設置を容易に行うことができ、石英製のカバーの洗浄の際に行う交換作業時間も短縮することができる。
【0010】
石英製のカバーと排気配管部の内壁との間の距離は、2mm以内であることが好ましい。
このように石英製のカバーと排気配管部の内壁との間の距離を2mm以内とすることによって、カバーと内壁との間の隙間にHClガスやシリコン原料ガスの回り込みを少なくすることができ、排気配管部の腐食や排気配管部への反応副生成物の付着を確実に抑制することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係るシリンダ型気相成長装置は、シリコン単結晶基板の主表面にシリコンエピタキシャル層を気相成長させるための装置である。
【0012】
まず、シリンダ型気相成長装置の構成について説明する。図1に示すように、シリンダ型気相成長装置1は、シリコンエピタキシャル層を気相成長するためのシリンダ型の反応室2と、この反応室2内に配設されシリコン単結晶基板Wを保持するサセプタ3と、反応室2の上端部に設けられて該反応室2内にシリコン原料ガス及びキャリアガス等を導入するためのガス導入管4と、反応室2の周囲に設けられて該反応室2を加熱する加熱装置(例えば、ハロゲンランプ)5と、反応室2の下端部に設けられて該反応室2内のガス(シリコン原料ガス及びキャリアガス等)の排気を行うガス排気管6と、反応室2とガス排気管6とを接続する排気配管部7とを備えている。
【0013】
反応室2は、例えば、石英製のベルジャであって、この反応室2の内部にサセプタ3が軸回りに回転自在に吊り下げ支持されている。
サセプタ3は、例えば、平断面形状が略正六角形となるように構成された筒状のものであり、下部に向かうにつれて正六角形が大寸法となるようにテーパー構造となっている。そして、サセプタ3の6つの外周面には例えば、それぞれ上下に2段に座ぐり3aが形成されている。
座ぐり3aは、シリコン単結晶基板Wを載置するためのものであり、その径方向がサセプタ3全体のテーパーに沿って傾斜している。
【0014】
排気配管部7はSUSで形成されており、この排気配管部7の内壁7aには、該内壁7a全体を覆うように石英製のカバー8が設けられている。
石英製カバー8は、透明石英でも良いが、排気配管部7が反応中に加熱装置5からの輻射熱で過熱されることを防ぐために、不透明石英を用いることがより好ましい。
石英製カバー8は、図2に示すように、排気配管部7のうちのガス排気管6に接続する水平方向に延びる排気配管部7の内壁7aを覆う縦断面視略L字型の第1カバー部8Aと、排気配管部7のうちの反応室2に接続する垂直方向の排気配管部7の内壁7aを覆う縦断面視略矩形状の第2カバー部8Bとから構成され、2分割されている。
また、石英製カバー8と排気配管部7の内壁7aとの間の距離は2mm以内である。この距離を2mm以内としたのは、2mmより大きくした場合に、石英製カバー8と内壁7aとの間の隙間への腐食性ガスやシリコン原料ガスの回り込みが多くなるため、排気配管部7の腐食や排気配管部7への反応副生成物の付着の問題が生じるからである。
【0015】
次に、上述のような気相成長装置1を用いて気相成長を行う方法について説明する。まず、サセプタ3の座ぐり3aにシリコン単結晶基板Wを主表面が外向きとなるように立てかけて配置する。
そして、密閉し、反応室2内を窒素ガスによる空気の置換を行い、その後、水素ガスを導入して窒素ガスの置換を行う。
次いで、加熱装置5に電力を与えて、シリコン単結晶基板Wを例えば約1150℃まで加熱するとともに、サセプタ3を軸回りに回転させながらガス導入管4から反応室2内にHClガスを流して、シリコン単結晶基板Wの主表面をエッチングする。その後、HClガスの供給を止め、シリコン原料ガスとしてトリクロロシランを流して、シリコン単結晶基板Wの主表面上に厚さ35μm程度のシリコンエピタキシャル層を気相成長する。
このときに、未反応のシリコン原料ガス及びキャリアガスは、排気配管部7に設けられた石英製カバー8内を通ってガス排気管6から排出される。
【0016】
次に、上述した石英製カバー8を備えたシリンダ型気相成長装置1(以下、カバー有り気相成長装置1と言う)と、石英製カバー8を備えていない気相成長装置(以下、カバー無し気相成長装置と言う;図示略)とをそれぞれ使用して、シリコン単結晶基板Wの主表面上にシリコンエピタキシャル層を気相成長することにより製造されるシリコンエピタキシャルウェーハWを比較した。なお、カバー無し気相成長装置は、石英製カバー8を備えていない点以外は、上記カバー有り気相成長装置1と同様の構成をなしているものとする。
【0017】
まず、カバー有り気相成長装置1とカバー無し気相成長装置とにおいて、反応室2及び排気配管部7を洗浄した後、各装置に組み付けた。そして、上記カバー有り気相成長装置1の排気配管部7内には石英製カバー8を組み入れた。
その後、上述した方法によりシリコン単結晶基板Wの主表面上にシリコンエピタキシャル層の気相成長を行った。
図3には、反応室2と排気配管部7を洗浄した直後からシリコンエピタキシャル気相成長した回数と、得られたシリコンエピタキシャルウェーハWのライフタイムとの関係を示した。なお、図中、○で示した点は、本発明のカバー有り気相成長装置1を使用した場合で、□で示した点は、カバー無し気相成長装置を使用した場合である。
【0018】
図3の結果より、カバー有り気相成長装置1及びカバー無し気相成長装置のどちらの装置においても、反応室2や排気配管部7を洗浄した直後にシリコンエピタキシャル気相成長したシリコンエピタキシャルウェーハWのライフタイムは極端に低下しており、その後、シリコンエピタキシャル層の気相成長回数とともにライフタイムが回復していることがわかる。
また、本発明のカバー有り気相成長装置1においては、組み付け直後のライフタイムの低下が小さく、その後の回復においてもカバー無し気相成長装置と比較して、より高いライフタイムまで回復しており、石英製カバー8はFe等の重金属汚染防止に対して効果があることがわかる。
さらに、カバー無し気相成長装置では、排気配管部7は1ヶ月程度でウェットエッチングによるクリーニングが必要であり、一方、本発明のカバー有り気相成長装置1においても、石英製カバー8は1ヶ月程度でウェットエッチングによるクリーニングが必要であるが、排気配管部7を取り外す必要がないので交換に要する時間は、カバー無し気相成長装置の排気配管部7を交換する場合に対して1/20以下と大幅に短縮できる。しかも、排気配管部7のウェットエッチングによるクリーニング頻度も、カバー無し気相成長装置の1/3以下ですむ。
【0019】
以上、本発明の実施の形態のシリンダ型気相成長装置1によれば、排気配管部7の内壁7aには、内壁7a全体を覆うように石英製カバー8が設けられているので、この石英製カバー8によって、SUSで形成された排気配管部7の内壁7aが腐食性ガスと直接接触することを防ぐことができ、腐食を低減することができる。そのため、腐食により生成される腐食生成物が腐食性ガスと反応して気体状の塩化化合物を生成することもなく、この塩化化合物によるシリコンエピタキシャルウェーハWの重金属汚染を低減することができる。この結果、シリコンエピタキシャルウェーハのライフタイムの低下を抑制することができる。
さらに、反応中に生成される反応副生成物が石英製カバー8に付着し、排気配管部7の内壁7aに直接付着することも低減できる。反応副生成物が付着した部品は、クリーニングのために定期的に交換する必要があるが、石英製カバー8の交換は、排気配管部7に比べて短時間で行うことができ、しかも交換頻度が少なくて良い。
【0020】
また、石英製カバー8は、第1カバー部8Aと第2カバー部8Bとから構成され2分割されているので、排気配管部7を気相成長装置1に固定接続した状態で、第1カバー部8Aを始めに排気配管部7内に設置した後に、第2カバー部8Bを排気配管部7内に設置することができ、その設置を容易に行うことができ、石英製カバー8の洗浄の際に行う交換作業時間も短縮することができる。
【0021】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、石英製カバー8の形状は上記形状に限らず、排気配管部7内に収まり、該排気配管部7の内壁7a全体を覆うことのできる形状であれば適宜変更しても良い。
【0022】
【発明の効果】
本発明に係るシリンダ型気相成長装置によれば、排気配管部の内壁には、内壁全体を覆うように石英製カバーが設けられているので、SUSで形成された排気配管部の内壁が腐食性ガスと直接接触することを防ぐことができ、排気配管部の内壁の腐食を低減することができる。また、反応中に生成される反応副生成物が、排気配管部の内壁に付着することも低減できる。これによって、シリコンエピタキシャルウェーハの重金属汚染を低減することができ、その結果、シリコンエピタキシャルウェーハのライフタイムの低下を抑制することができる。
また、石英製のカバーは、第1カバー部と第2カバー部とを備えているので、排気配管部を気相成長装置に固定接続した状態で、第1カバー部を始めに排気配管部内に設置した後に、第2カバー部を排気配管部内に設置することができ、その設置を容易に行うことができ、石英製のカバーの洗浄の際に行う交換作業時間も短縮することができる。
また、石英製のカバーと内壁との間の距離を2mm以内とすることによって、排気配管部の腐食や排気配管部への反応副生成物の付着を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシリンダ型気相成長装置の一例を示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に係るシリンダ型気相成長装置の排気配管部を示す概略縦断面図である。
【図3】本発明に係るシリンダ型気相成長装置と石英製カバーが備えられていないシリンダ型気相成長装置とをそれぞれ使用した場合における、気相成長回数と、シリコンエピタキシャルウェーハのライフタイムとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 シリンダ型気相成長装置
2 反応室
3 サセプタ
4 ガス供給管
6 ガス排気管
7 排気配管部
7a 内壁
8 石英製のカバー
W シリコン単結晶基板、シリコンエピタキシャルウェーハ
Claims (2)
- シリコン単結晶基板を保持するサセプタを有するシリンダ型の反応室と、前記反応室の内部に反応ガスを供給するガス供給管と、前記ガス供給管から前記反応室内に供給されたガスを排出するガス排気管と、前記反応室と前記ガス排気管とを接続する排気配管部とを備えたシリンダ型気相成長装置において、
前記排気配管部の内壁には、該内壁全体を覆うように石英製のカバーが設けられており、
前記石英製のカバーは、前記反応室と前記ガス排気管に連通し、前記排気配管部のコーナー部側に配される断面視略L字型の第1カバー部と、前記反応室に連通し、前記第1カバー部に隣接して配される断面視略矩形状の第2カバー部とを備えていることを特徴とするシリンダ型気相成長装置。 - 前記石英製のカバーと前記排気配管部の内壁との間の距離が2mm以内であることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ型気相成長装置。
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