JP4372538B2 - β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体ならびにβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法 - Google Patents

β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体ならびにβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の製造法に関する。また、本発明は、高品質かつ高収率のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法にも関する。
本発明におけるβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体は、特に限定されず、2−オキサゾリジノンを基本骨格として、その4位ならびに5位の炭素原子上の水素原子が任意に置換されていて良く、また、無置換であっても良い。また、本発明におけるβ−ヒドロキシエチルアミン化合物も、特に限定されず、β−ヒドロキシエチルアミンを基本骨格として、そのα位ならびにβ位の炭素原子上の水素原子が任意に置換されていて良く、また、無置換であっても良い。
本発明の製造法により得られるβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体は、塩基性条件下で水と接触させる(加水分解する)ことにより、対応するβ−ヒドロキシエチルアミン化合物に容易に誘導できることから、β−ヒドロキシエチルアミン化合物の等価体として知られている。
上記のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物、特に光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物は、例えば、エナンチオ選択的なシクロプロパン化、還元、ヒドロシリル化、ディールス−アルダー反応などのキラル触媒の製造[アンゲバンデ・ケミー(Angew.Chem.),103巻,556頁(1991)]に利用されている。また、光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を用いた不斉誘起反応では、例えば、γ−又はδ−ケトカルボン酸との縮合反応による二環式ラクタムの合成[テトラヘドロン(Tetrahedron),47巻,9503頁(1991)]など、しばしば著しく高いエナンチオ選択性又はジアステレオ選択性が発現されている。
更に、光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物は、アミノグリコシド抗生物質をはじめとする各種の天然物中に見出されており、また、ペプチドアイソスターとして、高い生理学的活性を有する化合物群が多数報告されている。中でも、β−カルボキシ−β−ヒドロキシ−α−ベンジルエチルアミン化合物、即ち、3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸は、(2S,3R)体(即ち、スレオ体)の場合は、例えば免疫賦活制ガン剤であるベスタチン[ジャーナル・オブ・アンチバイオチックス(J.Antibiotics),29巻,600頁(1976)]に導くことができ、一方、(2S,3S)体(即ち、エリスロ体)の場合は、例えばHIVプロテアーゼ阻害剤であるKNI−227(特開平5−170722号)に導くことができるなど、医薬品の中間体として有用な化合物である。従って、上記のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物、特に光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の立体選択的な製造法は、重要な意義を有している。
背景技術
光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物、特に、所望の立体異性の光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物、或いは、その等価体であるβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の合成法については、これまで様々な方法論が精力的に検討されている。その方法論の一つとして、光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を、そのエナンチオマー又はジアステレオマーへと変換する方法が挙げられる[特開平9−169744号;特開昭55−145650号;アドバンシズ・イン・カルボハイドレート・ケミストリー・アンド・バイオケミストリー(Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.),22巻,109頁(1967)]。
この方法論による製造例の一つとして、光学活性なβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の水酸基を脱離基に変換して得た、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換する方法[アドバンシズ・イン・カルボハイドレート・ケミストリー・アンド・バイオケミストリー(Adv.Carbohydr.Chem.Biochem.),22巻,139頁(1967)]が知られている。
しかしながら、この方法で得られたβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を、工業的生産における作業上、及び/又は、経済上の観点から、純粋又はほぼ純粋な形に単離及び精製することなく、塩基と接触させた場合には、例えば、塩基性条件下での更なる誘導化に供した場合には、不純物の副生や収率低下といった問題があった。より具体的には、例えば、塩基性条件下で水と接触させてβ−ヒドロキシエチルアミン化合物に誘導する際にも、不純物が副生すると共に収率が低下する傾向があった。このように、塩基との接触に適したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の、経済的に有利かつ工業的生産に適した製造法の確立が強く望まれていた。
発明の開示
本発明は、上記現状に鑑み、経済的に有利かつ工業的生産に適したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の製造法を提供し、更に、これにより、経済的に有利かつ工業的生産に適した、高品質かつ高収率のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、上記β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を製造する方法において、得られたβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を塩基と接触させた場合(例えば、塩基性条件下で水と接触させてβ−ヒドロキシエチルアミン化合物に誘導するなどの、塩基性条件下での更なる誘導化など)に副生する上記不純物の抑制について鋭意検討した。
その結果、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を製造する方法において、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程を組み入れることにより、上記塩基との接触の際に副生する不純物の原因となる成分を無害化できること、ならびに、引き続いて塩基性条件下での更なる誘導化に供した場合に、当該不純物の副生が抑制され、高品質かつ高収率の誘導が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1の発明は、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を製造する方法において、
β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水条件下で、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換し、次いで、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の製造法;ならびに、
β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の製造法;
に関する。
また、本発明の第2の発明は、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を製造する方法において、
β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水条件下で、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換し、次いで、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行った後、更に、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法;ならびに、
β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行った後、更に、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法;
に関する。
発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明を詳述する。
本発明は、より具体的には、例えば、下記一般式(1):
Figure 0004372538
[式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアシル基、置換若しくは無置換のカルボキシル基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のアミジノ基、又は、シアノ基などを表すか、あるいは、R〜Rのうち2〜4個が一緒になって、置換若しくは無置換の多価アルキル基などを表す]
で表される、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体(以下、単にオキサゾリジノン誘導体とも称する)を製造するにあたり、
β位炭素の立体配置が上記オキサゾリジノン誘導体と逆の立体配置を有する、例えば、下記一般式(2):
Figure 0004372538
[式中、Rは、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリール基、又は、置換若しくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基を表し;
は、Rを表すか、又は、Rに誘導され得る基を表し;
は、Rを表すか、又は、Rに誘導され得る基を表し;
は、Rを表すか、又は、Rに誘導され得る基を表し;
は、Rを表すか、又は、Rに誘導され得る基を表し;
、R、R及びRは前記に同じであり;
Lは、脱離基を表す]
で表される、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物(以下、単にN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物とも称する)を、上記式(1)のオキサゾリジノン誘導体に変換する工程に、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を組み入れることを特徴とする、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の製造法に関する。
更に、本発明は、上記製造法により得られたオキサゾリジノン誘導体を塩基性条件下で水と接触させて処理することを特徴とする、例えば、下記一般式(3):
Figure 0004372538
[式中、Rは、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
10は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
11は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
12は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
、R、R及びRは前記に同じである]
で表されるβ−ヒドロキシエチルアミン化合物(以下、単にβ−ヒドロキシエチルアミン化合物とも称する)の製造法にも関する。
上記のR、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアシル基、置換若しくは無置換のカルボキシル基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のアミジノ基、シアノ基などを表すか、又は、R〜Rのうち2〜4個が一緒になって、置換若しくは無置換の多価アルキル基などを表す。
上記の置換若しくは無置換のアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の飽和脂肪族炭化水素から、又は、炭素数2〜30の置換若しくは無置換の不飽和脂肪族炭化水素から水素原子を1個取り除いた1価の有機基を挙げることができる。炭素数1〜30の置換若しくは無置換の飽和脂肪族炭化水素から水素原子を1個取り除いた1価の有機基としては、例えば、メチル基、カルバモイルメチル基、クロロメチル基、エチル基、カルバモイルエチル基、メチルチオエチル基、プロピル基、イソプロピル基、グアニジノプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、4−アミノブチル基、5−アミノペンチル基、シクロヘキシルメチル基、フェニルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、5−イミダゾリルメチル基、3−インドリルメチル基などを挙げることができる。炭素数2〜30の置換若しくは無置換の不飽和脂肪族炭化水素から水素原子を1個取り除いた1価の有機基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−プロピニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテン−4−イニル基、ヘキシニル基などを挙げることができる。
上記の置換若しくは無置換のアリール基としては、特に限定されないが、炭素数6〜30の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素、又は、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の芳香族複素環化合物の環に結合する水素原子を1個取り除いた1価の有機基を挙げることができる。炭素数6〜30の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素の環に結合する水素原子を1個取り除いた1価の有機基としては、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などを挙げることができる。炭素数1〜30の置換若しくは無置換の芳香族複素環化合物の環に結合する水素原子を1個取り除いた1価の有機基としては、例えば、2−ピリジル基、2−オキサゾリル基などを挙げることができる。
上記の置換若しくは無置換のアラルキル基としては、特に限定されないが、炭素数7〜30の置換若しくは無置換の芳香族炭化水素の側鎖炭化水素鎖から水素原子を1個取り除いた1価の有機基を挙げることができる。具体的には、例えば、ベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、フェネチル基、スチリル基、2−フェニルエチニル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、シンナミル基などを挙げることができる。
上記の置換若しくは無置換のアシル基としては、特に限定されないが、ホルミル基、クロロホルミル基、アセチル基、クロロアセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基などを挙げることができる。
上記の置換若しくは無置換のカルボキシル基としては、特に限定されないが、カルボキシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などを挙げることができる。
上記の置換若しくは無置換のカルバモイル基としては、特に限定されないが、カルバモイル基、ジメチルアミノカルボニル基などを挙げることができる。
上記の置換若しくは無置換のアミジノ基としては、特に限定されないが、アミジノ基、N−エチル−N’−メチルアミジノ基、2−イミダゾリン−2−イル基などを挙げることができる。
上記の置換若しくは無置換の多価アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の飽和脂肪族炭化水素から、又は、炭素数2〜30の置換若しくは無置換の不飽和脂肪族炭化水素から水素原子を2〜4個取り除いた2〜4価の有機基を挙げることができる。このような有機基としては、例えば、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の飽和脂肪族炭化水素から水素原子を2個取り除いた2価の有機基、例えば、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピレン基、イソプロピリデン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、あるいは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換の不飽和脂肪族炭化水素から水素原子を2個取り除いた2価の有機基、例えば、ビニリデン基、プロペニレン基、2−プロピニル基、4−ペンテニレン基などを挙げることができる。また、以上に列記した有機基の炭素原子の一部を、例えば、窒素原子、酸素原子、燐原子、硫黄原子などのヘテロ原子に置き換えることによって得られる有機基、例えば、2−オキサ−1,3−ブタンジイル基、2−オキサ−1,4−ブタンジイル基などの有機基も、本発明の選択の範囲内である。
上記のR、R、R及びRのなかで、R及びRとして用いられる有機基としては、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のアラルキル基、又は、置換若しくは無置換のアシル基が好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は、置換若しくは無置換のアラルキル基がより好ましい。なかでも、アミノ酸側鎖、又は、その誘導体である有機基が好ましく用いられる。具体的には、アミノ酸側鎖である有機基としては、例えば、メチル基、カルバモイルメチル基、エチル基、カルバモイルエチル基、メチルチオエチル基、プロピル基、イソプロピル基、グアニジノプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、4−アミノブチル基、5−アミノペンチル基、ベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、5−イミダゾリルメチル基、3−インドリルメチル基などを挙げることができ、アミノ酸側鎖の誘導体である有機基としては、フェニルチオメチル基、ベンジルオキシメチル基、シクロヘキシルメチル基などを挙げることができる。
また、R及びRとして用いられる有機基としては、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアシル基、置換若しくは無置換のカルボキシル基、置換若しくは無置換のカルバモイル基、置換若しくは無置換のアミジノ基、又は、シアノ基が好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアシル基、置換若しくは無置換のカルボキシル基、又は、シアノ基がより好ましい。より具体的には、例えば、シアノ基、無置換のカルボキシル基(即ち、カルボン酸)、メトキシカルボニル基やエトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基やベンジルオキシカルボニル基などのアラルキルオキシカルボニル基(即ち、カルボン酸エステル)、クロロメチル基などのハロメチル基などを挙げることができる。
更に、上記のRとR又はRとRが一緒になって、あるいは、R及びRのいずれか一方とR及びRのいずれか一方とが一緒になって、置換若しくは無置換の2価の有機基である場合も好適である。このような置換若しくは無置換の2価の有機基としては、例えば、置換若しくは無置換のテトラメチレン基(1,4−ブタンジイル基)、2−オキサ−1,3−ブタンジイル基、2−オキサ−1,4−ブタンジイル基などの2価の有機基などを挙げることができる。
当然ながら、上記のR、R、R及びRとして用いられる有機基、ならびに、上記のR、R10、R11及びR12として用いられる有機基は、上記のR、R、R及びRとして用いられる有機基に準ずる。
上記のR、R、R及びRの組み合わせとしては、特に限定されないが、RとRが異なる場合、及び/又は、RとRが異なる場合が好ましく、RとRのいずれか一方が水素原子である場合、及び/又は、RとRのいずれか一方が水素原子である場合がより好ましく、とりわけ、R及びRのいずれか一方が水素原子である場合が特に好ましい。当然ながら、上記のR、R、R及びRの組み合わせ、ならびに、R、R10、R11及びR12の組み合わせは、上記のR、R、R及びRの組み合わせに準ずる。
尚、本発明の一連の操作において、上記のR、R、R、R、R、R、R及びRの内、少なくとも1つの有機基、又は、有機基における置換基が、例えば、メトキシカルボニル基(カルボン酸メチルエステル)の場合には、処理中にカルボキシル基(カルボン酸)に誘導されるなど、置換、脱離、分解、縮合などの副反応により誘導化される場合があるが、そのような場合においても、本発明の本質を損なわない限りは、本発明の範疇である。
上記のN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物におけるアルコキシカルボニル基は、−COORで表されるアミノ基のウレタン型保護基である。このRは、1価の有機基を表し、具体的には、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアリール基、又は、置換若しくは無置換の炭素数7〜30のアラルキル基を表す。上記のアルコキシカルボニル基は特に限定されず、例えば、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS)、第2版、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(JOHN WILLY & SONS)出版(1991年)に記載されているアミノ基のウレタン型保護基から選ぶことができる。一般に、取り扱いの容易さ、安価である点、基質化合物の合成面の便利さなどの観点から、例えば、炭素数1〜4の低級アルコキシカルボニル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数7〜10のアラルキルオキシカルボニル基が好ましく用いられる。なかでも、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基などが好ましく、特に、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が好ましく、とりわけ、エトキシカルボニル基が好ましい。
β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物(2)において、Lは脱離基を表す。この脱離基Lとしては、特に制限されないが、例えば、スルホニルオキシ基、ハロスルフィニルオキシ基、又は、ハロゲン原子が好ましい。スルホニルオキシ基としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1〜4の低級アルキルスルホニルオキシ基、又は、置換若しくは無置換の炭素数6〜10のアリールスルホニルオキシ基が好ましい。低級アルキルスルホニルオキシ基としては、例えば、メタンスルホニルオキシ基、エタンスルホニルオキシ基などを挙げることができ、アリールスルホニルオキシ基としては、p−トルエンスルホニルオキシ基、o−、p−或いはm−ニトロベンゼンスルホニルオキシ基などを挙げることができる。なかでも、メタンスルホニルオキシ基が好適に用いられる。ハロスルフィニルオキシ基としては、例えば、クロロスルフィニルオキシ基、ブロモスルフィニルオキシ基などを挙げることができ、クロロスルフィニルオキシ基が特に好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができ、塩素原子が特に好ましい。
次に、本発明の製造法の出発物質である、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物の製造法について説明する。
N−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物の製造法は、特に限定されず、種々の方法を用いることができるが、従来の技術として例示したように、対応するN−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物の水酸基を上記脱離基に変換する方法が一般的である。N−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物の水酸基を上記脱離基に変換する際には、公知の脱離基導入剤を、特に制限なく用いることができる。
脱離基がスルホニルオキシ基である場合は、脱離基導入剤として、例えば、対応するハロゲン化スルホニル化合物を反応させるのが特に好ましい。ハロゲン化スルホニル化合物としては、通常、安価で入手容易な塩化スルホニル化合物が好適に用いられる。なかでも、塩化メタンスルホニル、塩化エタンスルホニル、塩化ベンゼンスルホニル、塩化p−トルエンスルホニル、塩化ニトロベンゼンスルホニルなどが好適に用いられ、とりわけ、塩化メタンスルホニルが好適である。ハロゲン化スルホニル化合物の使用量は、特に制限されないが、N−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物に対して、通常は1〜10倍モル量、好ましくは1〜5倍モル量、更に好ましくは1〜2倍モル量である。
また、ハロゲン化スルホニル化合物との反応を円滑に進行させるために、上記反応を、塩基の共存下に行うことができる。塩基としては、特に限定されないが、アミン類、とりわけ、第三級アミンを好適に用いることができる。アミンとしては、特に限定されず、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどを挙げることができる。実用面より、安価な塩基が好ましく、普通にはトリエチルアミンが好適に用いられる。アミンの使用量は、特に制限されないが、N−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物に対して、通常は1〜20倍モル量、好ましくは1〜5倍モル量、更に好ましくは1〜3倍モル量である。反応温度は、一律に規定することはできないが、通常は−20〜80℃、好ましくは−10〜50℃であって良い。
N−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物への上記脱離基の導入において、脱離基がハロスルフィニルオキシ基、又は、ハロゲン原子である場合は、脱離基導入剤として、例えば、ハロゲン化チオニルを反応させるのが特に好ましい。ハロゲン化チオニルとしては、通常、安価で入手容易な塩化チオニルが好適に用いられる。ハロゲン化チオニルの使用量としては、特に制限されないが、N−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物に対して、通常は1〜10倍モル量、好ましくは1〜5倍モル量、更に好ましくは2〜3倍モル量である。反応温度は、一律に規定することはできないが、通常は−20〜120℃、好ましくは0〜80℃であって良い。
上記脱離基の導入に使用する反応溶媒は、上記ハロゲン化スルホニル化合物、又は、上記ハロゲン化チオニルなどの脱離基導入剤に対して、本質的に不活性な溶媒であれば特に限定されない。反応溶媒の例としては、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒などを挙げることができる。なかでも、芳香族炭化水素類、エーテル類、又は、脂肪酸エステル類が好ましく用いられる。芳香族炭化水素類としてはトルエンが特に好ましく、エーテル類としてはテトラヒドロフランが特に好ましく、また、脂肪酸エステル類としては酢酸エチルが特に好ましい。これらの溶媒は、単一で使用しても良く、また、2種以上を混合して使用しても良い。尚、N−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物と上記ハロゲン化スルホニル化合物又は上記ハロゲン化チオニルとの反応混合物が、流動性である場合(例えば、溶液状態にある場合など)は、反応溶媒は必ずしも必要ではない。
上記の方法、又は、他の方法により合成したβ位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、抽出、晶析、蒸留、或いは、クロマトグラフィーなどの常法により単離及び/又は精製することができる。しかしながら、工業的生産における作業上、及び/又は、経済上の観点から、常法による単離及び/又は精製をすることなく、そのまま本発明の製造法に用いることもできる。尚、上記の方法などにおいて、合成した上記N−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物が、その反応条件下で、引き続き、上記オキサゾリジノン誘導体にまで変換される場合もあるが、一旦、上記N−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物が中間体として形成される限り、該オキサゾリジノン誘導体を、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理すること、並びに、引き続きβ−ヒドロキシエチルアミン化合物へ誘導することは本発明の範疇である。
次に、本発明の第1の発明である、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を製造する方法について説明する。
第1の発明は、更に分類すると、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、加熱処理、酸処理、又は、塩基処理して、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換する工程(以下、反転工程とも称する)、及び、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程(以下、水処理工程とも称する)の2つの工程からなる。後者の水処理工程は、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を塩基と接触させたときに副生する不純物の原因となる成分を無害化する、本発明の鍵となる工程である。
反転工程と水処理工程の組み合わせとしては、下記の2つの態様がある:
第1の態様:β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水性条件下で加熱処理、酸処理、又は、塩基処理して、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換した後に、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程を行う態様(即ち、反転工程と水処理工程を順次実施する態様);
第2の態様:β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、加熱処理、又は、酸処理して、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換するのと同時に、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程を行う態様(即ち、反転工程と水処理工程を同時に実施する態様)。
まず、上記第1の態様について説明する。この態様は、反転工程と水処理工程を順次実施するが、はじめに、反転工程について説明する。
第1の態様における反転工程は、加熱処理、酸処理、又は、塩基処理により行うことができる。
反転工程を加熱処理により行う場合の温度は、特に制限されないが、好ましくは、約40℃以上であり、より好ましくは、約60℃以上であり、特に好ましくは、約80℃以上である。一般に、反応温度が高いほど反応は速やかに進行する。反応温度の上限は、反応混合物の沸点以下であれば、特に制限されない。
この反転工程において、反応を促進する目的で、必要に応じて酸性物質又は塩基性物質を適当量共存させるか、又は、添加して、酸処理、又は、塩基処理を行っても良い。これによって、より低い温度で反応を速やかに進行させることができるので、より穏和な処理温度、或いは、はるかに穏和な処理温度で反転工程を実施することができる。この場合の処理温度は、好ましくは約40℃以下であり、更には、約20℃以下で実施することも可能である。尚、本工程においては、反応を促進する効果が高く、後の水処理工程を容易に酸性〜中性条件下に行うことができることから、酸性物質を共存させるのが特に好ましい。
酸性物質は特に限定されない。例えば、有機酸類としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−、p−或いはm−ニトロベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類;蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸などのカルボン酸類などを挙げることができ、無機酸類としては、塩酸、硫酸、亜硫酸、リン酸などを挙げることができる。酸性物質の使用量は、特に制限されないが、例えば、N−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対し、通常は0.01〜100倍モル量、好ましくは0.05〜50倍モル量、更に好ましくは0.1〜20倍モル量である。
塩基性物質も特に限定されないが、弱塩基が好ましく用いられる。弱塩基としては、特に制限されないが、一般に共役酸の水溶液中におけるpKaが、例えば、10以下を示すものが特に好ましく、なかでも、5以下を示すものが更に好ましい。具体的には、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジンなどのアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどの炭酸水素塩類などを挙げることができる。また、弱い塩基性を呈する溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドなども選択の範囲である。塩基性物質の使用量は、特に制限されないが、例えば、N−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対し、通常は0.01〜100倍モル量、好ましくは0.05〜50倍モル量、更に好ましくは0.1〜20倍モル量である。
尚、上記反応において共存させたか、又は、添加した、酸性物質又は塩基性物質は、反応終了後に、必要に応じて、常法により除去することができる。
本工程において用いる反応溶媒としては、特に限定されず、一般に用いられる各種溶媒を使用することができる。反応溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類などを挙げることができる。なかでも、芳香族炭化水素類、エーテル類、又は、脂肪族エステル類が好ましく用いられる。芳香族炭化水素類としてはトルエンが特に好ましく、エーテル類としては1,4−ジオキサンが特に好ましく、脂肪族エステル類としては酢酸エチルが特に好ましい。これらの溶媒は、単一で使用しても良く、また、2種以上を混合して使用しても良い。尚、前記の酸性物質又は塩基性物質が前記の反応温度において液体である場合には、前記の酸性物質又は塩基性物質を、反応溶媒を兼ねて用いることもできる。
本工程の処理時間は、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物の種類や処理方法などにより異なるため、一律に規定することはできないが、通常は60時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内で処理を完了することができる。処理時間は、簡単な実験により決定することができる。
本工程の収率は、通常は95%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上が期待できる。
本工程においては、β位炭素の立体配置が実質的に反転する。前記RとRが異なる場合には、β位炭素が不斉炭素であるため、β位炭素の立体配置が見かけ上も反転するが、RとRが、それぞれ独立した全く同一の有機基であるか、又は、それらが一緒になってβ位炭素に対して完全に対称な2価の有機基である場合には、β位炭素の立体配置が実質的に反転しても、見かけ上の変化はない。
本態様では、上記反転工程において、前記脱離基(L)と、前記アルコキシカルボニル基の1価の有機基(R)とからなる、下記一般式(4):
Figure 0004372538
[式中、L及びRは前記に同じである]
で表される副生物が副生する。この副生物が一種のアルキル化剤として作用し得ることから、窒素原子上の水素原子がアルコキシカルボニル基の1価の有機基(R)で置換された不純物を副生させることがある。
例えば、上記反転工程により合成したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を、塩基性条件下で更なる誘導化に供する際に、より具体的には、例えば、塩基性条件下で水と接触させて処理してβ−ヒドロキシエチルアミン化合物に誘導する際に、例えば、下記一般式(5):
Figure 0004372538
[式中、R13は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
14は、Rを表すか、Rより誘導される基を表し;
15は、Rを表すか、Rより誘導される基を表し;
16は、Rを表すか、Rより誘導される基を表し;
、R、R、R及びRは前記に同じである]
で表されるN−置換−β−ヒドロキシエチルアミン化合物が不純物として副生すると共に、β−ヒドロキシエチルアミン化合物の収率が低下する傾向があった。
従って、本発明においては、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を塩基性条件下で更なる誘導化に供する際に、副生する不純物を最少化し、高収率で誘導化を行うために、例えば、上記反転工程により得られたβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を含有する反応混合物中に共存する、上記アルキル化剤として作用し得る副生物を、分解又は除去するなどして無害化するのが好ましい。なかでも、上記アルキル化剤として作用し得る副生物を、加水分解により無害化する方法が、最も簡便かつ効率的であり、経済的に有利な、工業的生産に適した製造法として特に好ましい。従って、本態様においては、上記反転工程により合成したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を、蒸留又は晶析などにより純粋な形に単離及び/又は精製することなく、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程(水処理工程)に供する。
次に、上記第1の態様における水処理工程について説明する。
本工程で用いる水は、上記β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を、塩基と接触させた場合に副生する不純物の原因となる上記副生物を無害化するために必要である。本工程における水の使用量は、特に制限されないが、前記反転工程において使用したβ位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対して、通常は5倍モル量以上である。好ましくは10倍モル量以上であり、より好ましくは20倍モル量以上であり、特に好ましくは50倍モル量以上である。一般に、水の使用量が多いほど、水処理の効果を高め、処理に要する時間を短縮することができる。尚、水の使用量は、多すぎても特に支障はないが、生産性の観点から、普通、1000倍モル量以下であるのが好ましく、500倍モル量以下であるのがより好ましく、100倍モル量以下であるのが特に好ましい。
本工程における処理温度は、反応混合物の沸点以下であれば特に制限されないが、一般に、高温ほど、水処理の効果を高め、処理に要する時間を短縮することができる。処理温度は、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の種類、接触させる水の使用量、水との接触時間、酸性度などの諸条件によって異なるため、一律に規定することはできないが、好ましくは約40℃以上であり、より好ましくは約60℃以上であり、特に好ましくは約80℃以上である。
本工程は酸性〜中性の条件下に行われる。本工程は、一般に、酸性度が強くなるほど、水処理の効果を高め、処理に要する時間を短縮することができる。通常、酸性〜中性条件下で実施するが、酸性条件下で実施するのがより好ましく、強酸性条件下で実施するのが特に好ましい。また、本工程は、反応の進行と共に、中性から徐々に酸性に移行させることにより、好適に行うこともできる。
本工程は、酸性〜中性条件下、より好ましくは酸性条件下、特に好ましくは強酸性条件下に移行させるために、及び/又は、酸性〜中性条件下、より好ましくは酸性条件下、特に好ましくは強酸性条件下を維持するために、必要に応じて酸性物質の共存下に行うことも好適である。酸性物質は特に限定されず、有機酸類としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−、p−或いはm−ニトロベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類;蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸などのカルボン酸類などを挙げることができ、無機酸類としては、塩酸、硫酸、リン酸などを挙げることができる。酸性物質の使用量は、特に制限されないが、例えば、前記反転工程において使用したβ位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対し、通常は0.01〜100倍モル量、好ましくは0.05〜50倍モル量、更に好ましくは0.1〜20倍モル量である。
尚、本工程における酸性度をpHを指標(目安)として表す場合、酸性〜中性条件下とは、pH9以下の範囲を指し、好ましくはpH8以下の範囲を指し、より好ましくはpH7以下の範囲を指す。また、酸性条件下とは、pH4以下の範囲を指し、強酸性条件下とは、pH2以下の範囲を指す。
本工程において用いる反応溶媒は特に限定されず、前記反転工程において用いる反応溶媒として例示した一般に用いられる各種溶媒を使用することができる。通常は、前記反転工程において用いた反応溶媒をそのまま使用するのが簡便であり、また、一般的である。
本工程の処理時間は、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物、又は、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の種類、接触させる水の使用量、処理温度、酸性度などの諸条件によって異なるため、一律に規定することはできないが、通常は1時間以上、好ましくは5時間以上が必要であり、通常は60時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内で処理を完了することができる。処理時間は、簡単な実験により決定することができる。
次に、上記第2の態様について説明する。本態様は、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を加熱処理、又は、酸処理して、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換するのと同時に、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させる態様である。即ち、本態様は、反転工程と水処理工程を同時に実施する、いわば反転−水処理工程とも言うべき態様である。
第2の態様においても、前記第1の態様と同様、N−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体への変換の際に、β位炭素の立体配置が実質的に反転する。前記RとRが異なる場合には、β位炭素が不斉炭素であるため、β位炭素の立体配置が見かけ上も反転するが、RとRが、それぞれ独立した全く同一の有機基であるか、又は、それらが一緒になってβ位炭素に対して完全に対称な2価の有機基である場合には、β位炭素の立体配置が実質的に反転しても、見かけ上の変化はない。
第2の態様で用いる水は、上記β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を、塩基と接触させた場合に副生する不純物の原因となる上記副生物を無害化するために必要である。本工程における水の使用量は、特に制限されないが、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対して、通常は5倍モル量以上である。好ましくは10倍モル量以上であり、より好ましくは20倍モル量以上であり、特に好ましくは50倍モル量以上である。一般に、水の使用量が多いほど、水処理の効果を高め、処理に要する時間を短縮することができる。尚、水の使用量は、多すぎても特に支障はないが、生産性の観点から、普通、1000倍モル量以下であるのが好ましく、500倍モル量以下であるのがより好ましく、100倍モル量以下であるのが特に好ましい。
第2の態様における処理温度は、反応混合物の沸点以下であれば特に制限されないが、一般に、高温ほど、水処理の効果を高め、処理に要する時間を短縮することができる。処理温度は、N−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物の種類、接触させる水の使用量、水との接触時間、酸性度などの諸条件によって異なるため、一律に規定することはできないが、好ましくは約40℃以上であり、より好ましくは約60℃以上であり、特に好ましくは約80℃以上である。
第2の態様は酸性〜中性の条件下に行われる。本態様は、一般に、酸性が強くなるほど、水処理の効果を高め、処理に要する時間を短縮することができる。通常、酸性〜中性条件下で実施するが、酸性条件下で実施するのがより好ましく、強酸性条件下で実施するのが特に好ましい。また、本態様は、反応の進行と共に、中性から徐々に酸性へと移行させることにより、好適に行うこともできる。
第2の態様は、酸性〜中性条件下、より好ましくは酸性条件下、特に好ましくは強酸性条件下に移行させるために、及び/又は、酸性〜中性条件下、より好ましくは酸性条件下、特に好ましくは強酸性条件下を維持するために、必要に応じて酸性物質の共存下に行うことも好適である。酸性物質は特に限定されず、有機酸類としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−、p−或いはm−ニトロベンゼンスルホン酸などのスルホン酸類;蟻酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸などのカルボン酸類などを挙げることができ、無機酸類としては、塩酸、硫酸、リン酸などを挙げることができる。酸性物質の使用量は、特に制限されないが、例えば、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対し、通常は0.01〜100倍モル量、好ましくは0.05〜50倍モル量、更に好ましくは0.1〜20倍モル量である。
尚、第2の態様における酸性度をpHを指標(目安)として表す場合、酸性〜中性条件下とは、pH9以下の範囲を指し、好ましくはpH8以下の範囲を指し、より好ましくはpH7以下の範囲を指す。また、酸性条件下とは、pH4以下の範囲を指し、強酸性条件下とは、pH2以下の範囲を指す。
第2の態様において用いる反応溶媒は、特に限定されず、一般に用いられる各種溶媒を使用することができる。反応溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類や水などを挙げることができる。なかでも、芳香族炭化水素類、エーテル類、又は、脂肪族エステル類が好ましく用いられる。芳香族炭化水素類としてはトルエンが特に好ましく、エーテル類としては1,4−ジオキサンが特に好ましく、脂肪族エステル類としては酢酸エチルが特に好ましい。これらの溶媒は、単一で使用しても良く、また、2種以上を混合して使用しても良い。尚、前記酸性物質が前記反応温度において液体である場合には、前記酸性物質を、反応溶媒を兼ねて用いることもできる。
第2の態様の処理時間は、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物の種類、接触させる水の使用量、処理温度、酸性度などの諸条件によって異なるため、一律に規定することはできないが、通常は1時間以上、好ましくは5時間以上が必要であり、通常は60時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内で処理を完了することができる。処理時間は、簡単な実験により決定することができる。
上記第2の態様においては、反転工程に要する時間が比較的長時間化する傾向にあるため、反応促進剤の存在が必要になる。ところが、反応促進剤を使用した場合には、反応後に余分な後処理が必要になる。従って、第1の発明においては、上記第1の態様が、より好ましい態様である。
尚、言うまでもなく、上記の第1及び第2の態様における水と接触させて処理する工程(水処理工程)は、前記の好ましい処理温度を維持する限りは、例えば、還流、濃縮、溶媒置換、蒸留、晶析、抽出などの各種操作を、如何なる制限も無く、任意に組み合わせて行うことができる。
上記した第1の発明により得られたβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体は、塩基性条件下での更なる誘導化に供した場合に、不純物の副生が抑制され、高品質かつ高収率で誘導化することができる。例えば、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を、塩基性条件下で水と接触させて処理する(加水分解する)ことにより、高品質かつ高収率のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を製造することができる。
第1の発明においては、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物からβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体までの収率として、通常は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上が期待できる。
続いて、本発明の第2の発明である、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、高品質かつ高収率でβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を製造する方法について説明する。
第2の発明では、前記第1の発明における、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を加熱処理、酸処理、又は、塩基処理する工程(反転工程)、及び、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程(水処理工程)に、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程(以下、加水分解工程とも称する)が加わる。
上記3工程の組み合わせとしては、下記の2つの態様がある:
第1の態様:β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水性条件下で加熱処理、酸処理、又は、塩基処理し、次いで、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程を行った後に、即ち、反転工程と水処理工程を順次実施した後に、更に、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程を行う態様;
第2の態様:β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、加熱下、酸性〜中性条件下で水と接触させて処理する工程を行った後に、即ち、反転工程と水処理工程を同時に実施した後に、更に、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程を行う態様。
上記の2つの態様における反転工程ならびに水処理工程の処理条件は、上記の第1の態様については、前記第1の発明の第1の態様に準じ、また、上記の第2の態様については、前記第1の発明の第2の態様に準じ、前記第1の発明における当該工程の処理条件を何ら制限されることなく使用することができる。
尚、前記第1の発明の第2の態様で得られるオキサゾリジノン誘導体は、処理条件によって量比は異なるが、副生物として、上記オキサゾリジノン誘導体と立体配置が同じであるN−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物、より具体的には、例えば、下記一般式(6):
Figure 0004372538
[式中、R17は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
18は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
19は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
20は、Rを表すか、又は、Rより誘導される基を表し;
、R、R、R及びRは前記に同じである]
で表される、N−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物を含んでいる場合がある。しかしながら、このN−アルコキシカルボニル−β−ヒドロキシエチルアミン化合物は、塩基性条件下で水と接触させて処理することにより、上記オキサゾリジノン誘導体と同様に、上記β−ヒドロキシエチルアミン化合物に誘導できるため、第2の発明において全く支障となることはない。
以下に、第2の発明における加水分解工程の処理条件について説明する。
本工程において使用する水の量は、特に制限されないが、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対して、通常は5倍モル量以上である。好ましくは10倍モル量以上であり、より好ましくは20倍モル量以上であり、特に好ましくは50倍モル量以上である。水は、反応溶媒を兼ねて過剰量で使用することができるし、また、そうすることが一般的である。尚、水の使用量は、多すぎても特に支障はないが、生産性の観点から、普通、1000倍モル量以下であるのが好ましく、500倍モル量以下であるのがより好ましく、100倍モル量以下であるのが特に好ましい。言うまでもなく、前記水処理工程において使用した水を、そのまま本工程に使用しても一向に差し支えない。
加水分解工程においては、反応試剤として使用する水以外に、悪影響のない範囲で、一般に用いられる各種溶媒が共存していても良い。例えば、反応の促進、反応液性状の改善などを目的として、溶解力の高い有機溶媒を併用しても良い。各種有機溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、t−ブチルメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどの脂肪酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類などを挙げることができる。なかでも、芳香族炭化水素類、又は、エーテル類が好ましく用いられる。芳香族炭化水素類としてはトルエンが特に好ましく、エーテル類としては1,4−ジオキサンが特に好ましい。これらの溶媒は、単一で使用しても良く、また、2種以上を混合して使用しても良い。言うまでもなく、これらの有機溶媒の使用は、前記水処理工程で使用した有機溶媒を、そのまま溶媒置換することなく使用する場合を含む。
本工程は塩基性の条件下に行われる。本工程は、一般に、塩基性度が強くなるほど、処理に要する時間を短縮することができる。通常、塩基性条件下に実施するが、強塩基性条件下に実施するのがより好ましく、超強塩基性条件下に実施するのが特に好ましい。
本工程において、前記水処理工程における酸性〜中性条件から塩基性条件に移行させるために、及び、塩基性条件を維持するために、塩基性物質を添加するのが簡便かつ効率的であり、また、そうすることが一般的である。塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などの強塩基が好ましく用いられる。なかでも、アルカリ金属水酸化物が好ましく、とりわけ、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムが好ましい。塩基の使用量は、特に制限されず、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物に対し、通常は1〜100倍モル量、好ましくは2〜50倍モル量、更に好ましくは5〜20倍モル量である。
尚、本工程における塩基性度をpHを指標(目安)として表す場合、塩基性条件下とは、pH10以上の範囲を指し、強塩基性条件下とは、pH12以上の範囲を指し、超強塩基性条件下とは、pH14以上の範囲を指す。
本工程の反応温度は、好ましくは約40℃以上であり、より好ましくは約60℃以上であり、特に好ましくは約80℃以上である。一般に、反応温度が高いほど、反応は速やかに進行する。反応温度の上限は、反応混合物の沸点以下であれば、特に制限されない。
本工程の処理時間は、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物の種類、接触させる水の使用量、処理温度、塩基性度などの諸条件によって異なるため、一律に規定することはできないが、通常は1時間以上、好ましくは5時間以上が必要であり、通常は60時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内で処理を完了することができる。処理時間は、簡単な実験により決定することができる。
以上のようにして合成したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物は、本発明の一連の操作により不純物の副生を高度に抑制することができるため、例えば、副生する塩、及び、反応溶媒を含有することを除けば、本質的に高品質のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物である。従って、単離を行わずとも、引き続く誘導化などに好適に用いることが充分に可能である。また、単離を行うのが好ましい場合においても、比較的簡便に高品質のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を単離することができる。
第2の発明においては、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物からβ−ヒドロキシエチルアミン化合物までの収率として、通常は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上が期待できる。
以下に、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(参考例1)(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(エリスロ体)の合成
(S)−1,1−ジブロモ−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−オキソ−4−フェニルブタン67.65gを含有するトルエン溶液677.2gを、氷冷した10%水酸化ナトリウム水溶液691.3g中に、10時間かけて滴下し、同温度で1時間攪拌した。得られた反応液を、更に60℃で6時間攪拌して反応を継続した。得られた反応混合物より有機相を分離し、得られた水相に酢酸エチル400mlを加え、濃塩酸150gでpH2に調整した。得られた有機相を分離して、エリスロ−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸26.52g及びスレオ−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸5.44gを含有する水溶液944.7gを得た。エリスロ体/スレオ体の比は83/17、ジアステレオマー過剰率は66%d.e.であった。
このようにして得られた水溶液940.4g[エリスロ−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸26.40g及びスレオ−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸5.42gを含有]を、氷冷下、30%水酸化ナトリウム水溶液91gでpH10に調整した。これに、30%水酸化ナトリウム水溶液にてpH10程度を維持しながら、内温5℃以下でクロロギ酸エチル19.52gを3時間かけて滴下し、同温度で更に1時間攪拌して反応を継続した。反応液を、室温まで昇温させ、トルエン64mlで洗浄し、酢酸エチル849.3mlを加え、濃塩酸60gでpH2に調整し、水相を分離した。次いで、得られた有機相を水96mlで洗浄して、酢酸エチル抽出液971.9gを得た。HPLCにて定量したところ、得られた抽出液中の3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸のジアステレオマー混合物は、エリスロ体換算で43.07gであった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は83/17、ジアステレオマー過剰率は66%d.e.であった。
このようにして得られた酢酸エチル抽出液870.3g[3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸のジアステレオマー混合物38.57gを含有]を減圧下に濃縮し、更に、トルエンに溶媒置換したところ、結晶が析出した。濃縮液総量770.5gに調整した後、アセトニトリル118.3gを添加し、70℃まで加温して結晶を完全に溶解させた。同温度で1時間以上保持した後、10℃/時間の冷却速度で冷却して晶析し、析出した結晶を吸引濾過で濾取した。この結晶を冷トルエン200mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色結晶30.23gを得た。(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の純度は99重量%であった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は99%d.e.であった。また、(2R,3R)体(エナンチオマー)は検出されなかった。
(参考例2)3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸のジアステレオマー混合物の合成
参考例1で得られた酢酸エチル抽出液96.5g[3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸のジアステレオマー混合物4.28gを含有;エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は83/17]を減圧下に濃縮、乾固した。この固体を磁性乳鉢で粉砕後、更に真空乾燥して、粉末状固体4.43gを得た。エリスロ−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の純度は78重量%であった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は83/17、ジアステレオマー過剰率は66%d.e.であった。
(参考例3)(2S,3S)−3−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(エリスロ体)の合成
(S)−1,1−ジブロモ−3−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−オキソ−4−フェニルブタン42.12gを、トルエン420ml及び水280mlに懸濁し、氷冷した。これに、30%水酸化ナトリウム水溶液133gを1時間かけて滴下し、同温度で20時間攪拌した。得られた反応混合物より有機相を分離し、水相に酢酸エチル600mlを加え、濃塩酸115gでpH2に調整し、水相を分離した。次いで、得られた有機相を水70mlで洗浄して、酢酸エチル抽出液591.9gを得た。HPLCにて定量したところ、得られた抽出液中の3−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸のジアステレオマー混合物は、エリスロ体換算で27.14gであった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は83/17、ジアステレオマー過剰率は66%d.e.であった。
酢酸エチル抽出液589.2g[3−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸のジアステレオマー混合物27.02gを含有]を減圧下に濃縮し、更に、トルエンに溶媒置換したところ、結晶が析出した。濃縮液総量544.5gに調整した後、アセトニトリル120.3gを添加し、70℃まで加温して結晶を完全に溶解させた。同温度で1時間保持した後、2.5℃/時間の冷却速度で−10℃まで冷却して晶析し、析出した結晶を吸引濾過で濾取した。この結晶を冷トルエン150mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色結晶20.23gを得た。(2S,3S)−3−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の純度は99重量%であった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は99%d.e.であった。また、(2R,3R)体(エナンチオマー)は検出されなかった。
(実施例1)(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステルから(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルへの変換
参考例1の方法で得られた、(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は99/1)66.87gを、メタノール340ml及びトルエン300mlに溶解し、メタンスルホン酸2.41gを加えて、還流下で5時間反応させた。得られた反応液を室温まで冷却した後、5%炭酸水素ナトリウム水溶液42.04gでpH6に調整し、減圧下にメタノールを留去した。得られた濃縮液330.6gに、酢酸エチル360ml及び水130mlを添加し、更に5%炭酸水素ナトリウム水溶液12.51gでpH8に調整して、水相を分離した。次いで、得られた有機相を水130mlで洗浄し、減圧下に濃縮して、酢酸エチル抽出液462.7gを得た。HPLCにて定量したところ、得られた抽出液中の(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステルは、68.27gであった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は98%d.e.であった。
このようにして得られた酢酸エチル抽出液450.3g[(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステル66.44gを含有]に、氷冷下、トリエチルアミン33.46gを加えた後、塩化メタンスルホニル32.46gを2時間かけて添加し、同温度で1時間反応させた。得られた反応液に水660mlを添加し、水相を分離した。次いで、得られた有機相を水330mlで洗浄し、減圧下に酢酸エチルを留去し、トルエンに溶媒置換した。得られた溶媒置換液を、110℃で12時間反応させて、トルエン溶液668.5gを得た。HPLCにて定量したところ、得られたトルエン溶液中の(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルは、54.39gであった。尚、スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は99%d.e.であった。
(実施例2)(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−メタンスルホニルオキシ−4−フェニル酪酸メチルエステルの水共存下の反転反応を経る(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換
実施例1で得られた、(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステルの酢酸エチル抽出液10.17g[(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステル1.50gを含有;エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は99/1]に、氷冷下、トリエチルアミン756mgを加えた後、塩化メタンスルホニル733mgを10分かけて添加し、同温度で2時間反応させた。得られた反応液に水15mlを添加し、水相を分離した。次いで、得られた有機相を水8mlで洗浄し、減圧下に酢酸エチルを留去し、トルエンに溶媒置換し、溶媒置換液7.59gを得た。これに、水1.5mlとN,N−ジメチルホルムアミド5.98gを加えた(pH9)。この混合物を85℃で12時間反応させて得られた反応液14.88gはpH4であった。このようにして得られた反応液をHPLCにより定量したところ、反応液中の(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルの含量は0.35gであり、(2R,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステルの含量は1.04gであった。尚、2種の反転生成物を合計した際のスレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は98%d.e.であった。
このようにして得られた反応液14.05g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル0.33g、及び、(2R,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステル0.98gを含有]を減圧下に濃縮し、トルエンに溶媒置換した。不溶物を濾別して得られたトルエン溶液に、水5ml及び30%水酸化ナトリウム水溶液6.61gを加えて、攪拌下、60℃で12時間反応させた。得られた反応液(pH14)より有機相を分離し、この有機相に水2mlを加え、60℃で充分に攪拌混合した。得られた水相を分離して先の水相と合わせた。このようにして得られた水相をHPLCにて定量したところ、水相中の(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は0.95g、収率は97%、純度は99%(面積百分率法)であった。尚、スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は99%d.e.であった。
(実施例3)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルの精製
実施例1で得られたトルエン溶液66.9g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル5.44gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1]を減圧下に濃縮して、油状物7.79gを得た。この油状物にトルエンを加えて54.7gとし、70℃で3時間攪拌して再溶解させた。このトルエン溶液を放冷した後、3日間攪拌したところ、結晶が析出していることが分かった。更に−10℃まで冷却して、析出した結晶を吸引濾過で濾取した。この結晶を冷トルエン150mlで洗浄した後、真空乾燥して、(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルの精製品5.06gを白色結晶として得た。(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルの純度は99%(面積百分率法)であった。尚、スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は99%d.e.であった。
得られた(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルの、H NMRスペクトル(CDCl、TMS内部標準)は、δ:2.79(1H、dd、CHPh、J=13.2Hz(CHPh)、10Hz(H−4))、3.07(1H、dd、CHPh、J=13.2Hz(CHPh)、4.4Hz(H−4))、3.86(3H、s、COCH)、4.01−4.09(1H、m、H−4)、4.72(1H、d、H−5、J=4.4Hz(H−4))、7.15−7.38(5H、m、Ph)であった。
一方、晶析母液及びトルエン洗浄液を合わせた後に、減圧下に濃縮してトルエンを留去した。残留物を更に真空乾燥して、メタンスルホン酸エチルエステル2.69gを油状物として得た。
得られたメタンスルホン酸エチルエステルの、H NMRスペクトル(CDCl、TMS内部標準)は、δ:0.92(3H、t、CH、J=6.8Hz)、2.23(3H、s、CHSO)、3.77(2H、q、CH、J=6.8Hz)であった。
(実施例4)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル精製品から(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換
実施例3で得られた(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル2.35gを、トルエン25ml及び水10mlに懸濁し、30%水酸化ナトリウム水溶液13.33gを加えて、攪拌下、60℃で12時間反応させた。得られた反応液をHPLCにて定量したところ、反応液中の(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は1.91g、収率は98%、純度は98%(面積百分率法)であった。尚、スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は99%d.e.であった。
(実施例5)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルから(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換(水処理あり)
実施例1で得られたトルエン溶液28.88g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル2.35gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;メタンスルホン酸エチルエステルを含有]と水10mlを混合し、攪拌下、80℃で12時間反応させた(pH1)。得られた反応液をGCにて分析したところ、メタンスルホン酸エチルエステルは不検出であった。これに、30%水酸化ナトリウム水溶液13.33gを加えて、攪拌下、60℃で12時間反応させた。得られた反応液より有機相を分離し、この有機相に水5mlを加え、60℃で充分に攪拌混合した。得られた水相を分離して先の水相と合わせた。このようにして得られた水相30.72gをHPLCにて定量したところ、水相中の(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は1.92g、収率は98%、純度は99%(面積百分率法)であった。尚、スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は99%d.e.であった。
(比較例1)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルから(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換(水処理なし)
30%水酸化ナトリウム水溶液13.33gを、攪拌下、5℃に冷却し、これに実施例1で得られたトルエン溶液28.88g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル2.35gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;メタンスルホン酸エチルエステルを含有]を30分間かけて滴下した(pH14)。更に、60℃まで昇温して、攪拌下、12時間反応させた後に、水10mlを加えた。得られた反応液より有機相を分離し、この有機相に水4mlを加え、60℃で充分に攪拌混合した。得られた水相を分離して先の水相と合わせた。このようにして得られた水相27.98gをHPLCにて定量したところ、水相中の(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は1.24g、収率は64%、純度は64%(面積百分率法)であった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は98%d.e.、副生した(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は35%(面積百分率法)であった。
(比較例2)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルから(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換(水処理なし)
実施例1で得られたトルエン溶液28.88g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル2.35gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;メタンスルホン酸エチルエステルを含有]と水10mlを混合し、30%水酸化ナトリウム水溶液13.33gを加え(pH14)、攪拌下、60℃で12時間反応させた。得られた反応液より有機相を分離し、この有機相に水4mlを加え、60℃で充分に攪拌混合した。得られた水相を分離して先の水相と合わせた。このようにして得られた水相をHPLCにて定量したところ、水相中の(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は1.56g、収率は80%、純度は79%(面積百分率法)であった。尚、エリスロ体/スレオ体のHPLC面積比は99/1、ジアステレオマー過剰率は98%d.e.、副生した(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は18%(面積百分率法)であった。
以上の結果から、水処理により、収率、及び、純度が向上することが分かる。
(比較例3/実施例6〜7)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルから(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換(水処理工程:水量の効果)
実施例1で得られたトルエン溶液92.42g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル7.52gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1]を濃縮し、1,4−ジオキサンに溶媒置換して、1,4−ジオキサン溶液92.50gを得た。
このようにして得られた1,4−ジオキサン溶液28.89g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル2.35gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;メタンスルホン酸エチルエステルを含有]と水0.2ml、4ml、10ml[実施例1で使用した原料(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸メチルエステルに対して、1、20、50倍モル量]をそれぞれ混合し、攪拌下、60℃で48時間反応させた。こうして得られた反応液に、水量が10mlとなるようにそれぞれ水を追加し、更に、30%水酸化ナトリウム水溶液13.33gを加えて、攪拌下、60℃で12時間反応させた。2層に分離した反応液に水15mlを加えて均一化し、(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量、収率、純度(面積百分率法)をHPLCにより定量した。結果を表1に示す。
Figure 0004372538
以上の結果から、水量を増量するほど水処理の効果が増大することが分かる。
(比較例4/実施例8〜10)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルから(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換(水処理時間の効果)
実施例1で得られたトルエン溶液28.88g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル2.35gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;メタンスルホン酸エチルエステルを含有]と水10mlを混合し、攪拌下、60℃でそれぞれ1時間、12時間、24時間、及び、48時間反応させた。これに、30%水酸化ナトリウム水溶液13.33gを加えて、攪拌下、60℃で12時間反応させた。得られた反応液より有機相を分離し、この有機相に水5mlを加え、60℃で充分に攪拌混合した。得られた水相を分離して先の水相と合わせた。このようにして得られた水相中の(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量、収率、純度(面積百分率法)をHPLCにより定量した。結果を表2に示す。
Figure 0004372538
以上の結果から、時間を延長するほど水処理の効果が増大することが分かる。
(実施例11)水処理による(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル反応液中に含まれるメタンスルホン酸エチルエステルの無害化
実施例1で得られたトルエン溶液(反応液)28.88g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル2.35gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;メタンスルホン酸エチルエステルを含有]と水10mlを混合し、攪拌下、60℃で反応させた。反応時間0時間、12時間、24時間、及び、48時間目の反応液をサンプリングし、反応液中のメタンスルホン酸エチルエステルの残存率をGCにより定量した。結果を表3に示す。
Figure 0004372538
以上の結果から、水処理により、メタンスルホン酸エチルエステルが加水分解により無害化されていることが分かる。(実施例12)(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の晶析例
実施例5で得られた水相29.97g[(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸1.85gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1]に、60℃にて濃塩酸を少しずつ添加したところ、徐々に結晶が析出した。最終的にpH5に調整した。次いで、5℃/時間の冷却速度で冷却して晶析し、析出した結晶を吸引濾過で濾取した。この結晶を冷水8mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色結晶1.77gを得た。(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸(スレオ体)の純度は98重量%、水分は2重量%であった。尚、エリスロ体(ジアステレオマー)及び(2S,3R)体(エナンチオマー)は共に検出されなかった。
得られた(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の結晶の、H NMRスペクトル(DO、2,2−ジメチル−2−シラペンタン−5−スルホン酸ナトリウム(DSS)内部標準)は、δ:2.95(1H、dd、H−4、J=14Hz(H−4)、J=8.8Hz(H−3))、3.16(1H、dd、H−4、J=14Hz(H−4)、J=6.8Hz(H−3))、3.76−3.83(1H、m、H−3)、4.06(1H、d、H−2、J=2.8Hz(H−3))、7.35−7.48(5H、m、Ph)であった。
また、13C NMRスペクトル(DO、DSS内部標準)は、δ:38.2、58.2、73.4、130.5、132.0、132.3、138.4、179.9であった。
(参考例4)(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステルから(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸への変換
実施例1で得られたトルエン溶液88.73g[(4S,5R)−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン−5−カルボン酸メチルエステル7.22gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;メタンスルホン酸エチルエステルを含有]から、減圧下にトルエンを留去した後に、テトラヒドロフランを加えて、溶媒置換液90.11gを得た。この溶媒置換液を、5℃に冷却した水素化ナトリウム(油性、60重量%)1.48gとテトラヒドロフラン15mlとから成る懸濁液に15分間かけて滴下し、更にTHF30mlを加え、同温度で1時間反応させた。得られた反応液をデカントし、大量の白色沈殿の大部分を除いて得られた上澄み液を更に濾過して不溶物を除去した。濾液の溶媒を減圧下に留去し、更に真空乾燥して、油状物3.94gを得た。
このようにして得られた油状物3.35gに、水30mlおよび30%水酸化ナトリウム30.42gを加え、60℃で20時間反応させた。得られた反応液[(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸17%、(2S,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸1%、副生(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸76%を含有(何れも面積百分率法)]に、60℃下、濃塩酸を少しずつ添加したところ、徐々に結晶が析出した。最終的にpH5に調整した。次いで、5℃/時間の冷却速度で冷却晶析し、析出した結晶を吸引濾過した。この結晶を冷水4mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色結晶1.18gを得た。(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は97%(面積百分率法)であった。
得られた(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の、H NMRスペクトル(DO−KCO、2,2−ジメチル−2−シラペンタン−5−スルホン酸ナトリウム(DSS)内部標準)は、δ:1.03(3H、t、CH、J=7.1Hz)、2.63−2.74(2H、m、CH)、2.83(1H、dd、H−4、J=14Hz(H−4)、J=8.8Hz(H−3))、2.92(1H、dd、H−4、J=14Hz(H−4)、J=6.4Hz(H−3))、3.35(1H、m、H−3)、3.85(1H、d、H−2、J=2.0Hz(H−3))、7.30−7.44(5H、m、Ph)であった。
また、13C NMRスペクトル(DO−KCO、DSS内部標準)は、δ:16.1、40.3、44.0、63.6、74.1、129.5、131.6、132.3、141.6、167.4であった。
(参考例5)(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸と(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸との混合物の晶析例
比較例1で得られた水相25.50g[(2R,3S)−3−アミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸1.13gを含有;スレオ体/エリスロ体のHPLC面積比は99/1;副生(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸35%(面積百分率法)を含有]に水75mlを加え、60℃下、濃塩酸を少しずつ添加したところ、徐々に結晶が析出した。最終的にpH5に調整した。次いで、5℃/時間の冷却速度で冷却晶析し、析出した結晶を吸引濾過した。この結晶を冷水4mlで洗浄した後、真空乾燥して、白色結晶1.07gを得た。(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸の含量は72%(面積百分率法)であった。
得られた結晶の、H NMRスペクトル(DO−KCO、2,2−ジメチル−2−シラペンタン−5−スルホン酸ナトリウム(DSS)内部標準)において、参考例4で示した(2R,3S)−3−エチルアミノ−2−ヒドロキシ−4−フェニル酪酸に特徴的なシグナルを確認した。
(実施例13)(2S,3S)−3−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンの水共存下での反転反応を経る(4S,5R)−5−クロロメチル−4−ベンジル−2−オキサゾリジノンへの変換
(2S,3S)−3−(t−ブトキシカルボニル)アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタン2.50gを、テトラヒドロフラン20mlに溶解した。この溶液に、氷冷下、トリエチルアミン1.11gを加えた後、塩化メタンスルホニル0.99gを30分間かけて添加し、同温度で1時間反応させた。得られた反応液を水15mlに添加し、濃塩酸でpH5に調整した後、酢酸エチル15mlを加え、室温で充分に攪拌混合した。得られた水相を分離し、この水相に酢酸エチル15mlを加え、室温で充分に攪拌混合した。得られた有機相を分離して先の有機相と合わせた。次いで、得られた有機相を水5mlで洗浄し、減圧下に溶媒を留去し、トルエンに溶媒置換し、溶媒置換液5.56gを得た。これに水2mlとN,N−ジメチルホルムアミド5mlを加えた(pH9)。この混合物を85℃で12時間反応させて得られた反応液はpH4であった。このようにして得られた反応液をHPLCにて定量したところ、反応液中の(4S,5R)−1−クロロメチル−4−ベンジル−2−オキサゾリジノンは1.69gであった。
(実施例14)(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタンから(4S,5R)−5−クロロメチル−4−ベンジル−2−オキサゾリジノンへの変換
(2S,3S)−3−(エトキシカルボニル)アミノ−1−クロロ−2−ヒドロキシ−4−フェニルブタン2.23gを、テトラヒドロフラン20mlに溶解した。この溶液に、氷冷下、トリエチルアミン1.10gを加えた後、塩化メタンスルホニル1.01gを30分間かけて添加し、同温度で1時間反応させた。得られた反応液を水15mlに添加し、濃塩酸でpH5に調整した後、酢酸エチル15mlを加え、室温で充分に攪拌混合した。得られた水相を分離し、この水相に酢酸エチル15mlを加え、室温で充分に攪拌混合した。得られた有機相を分離して先の有機相と合わせた。次いで、得られた有機相を水5mlで洗浄し、減圧下に溶媒を留去し、トルエンに溶媒置換し、溶媒置換液5.35gを得た。これにN,N−ジメチルホルムアミド15mlを加え、100℃で12時間反応させた。このようにして得られた反応液を減圧下に濃縮し、油状物2.68gを得た。これに、酢酸エチル30ml及び水15mlを加え、80℃で12時間攪拌した。得られた有機相を分離し、水15mlで2回洗浄した。このようにして得られた有機相をGCにて分析したところ、メタンスルホン酸エチルエステルは不検出であった。この有機相より、減圧下に溶媒を留去して、(4S,5R)−1−クロロメチル−4−ベンジル−2−オキサゾリジノン1.69gを油状物として得た。
得られた(4S,5R)−1−クロロメチル−4−ベンジル−2−オキサゾリジノンの、H NMRスペクトル(CDCl、TMS内部標準)は、δ:2.87−2.98(2H、m、CHPh)、3.52(1H、dd、CHCl、J=12Hz(CHCl)、4.4Hz(H−5))、3.59(1H、dd、CHCl、J=12Hz(CHCl)、4.9Hz(H−5))、3.98(1H、ddd、H−4、J=6.8Hz(H−5)、J=5.9Hz(CHPh)、J=5.4Hz(CHPh))、4.50(1H、ddd、H−5、J=6.8Hz(H−4)、J=4.9Hz(CHCl)、J=4.4Hz(CHCl))、5.57(1H、s、H−3)、7.18−7.38(5H、m、Ph)であった。
産業上の利用の可能性
以上のように、本発明によれば、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換すると共に、該オキサゾリジノン誘導体を塩基と接触させた場合に副生する不純物の原因となる成分を無害化することにより、塩基との接触に適したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を製造することができる。また、β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、不純物の副生を抑制しつつ、高品質かつ高収率のβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を製造することができる。

Claims (17)

  1. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を製造する方法において、
    β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水条件下で、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換し、次いで、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の製造法。
  2. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体を製造する方法において、
    β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体の製造法。
  3. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を製造する方法において、
    β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水条件下で、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換し、次いで、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行った後、更に、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法。
  4. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物から、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物を製造する方法において、
    β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、40℃以上の加熱下、酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を行った後、更に、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程を行うことを特徴とする、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物の製造法。
  5. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水条件下で、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換する工程が、40℃以上の加熱下に行われる請求項1又は3に記載の製造法。
  6. 塩基性条件下で水と接触させて処理する工程が、40℃以上の加熱下に行われる請求項3又は4に記載の製造法。
  7. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物を、非水条件下で、β位炭素の立体配置が反転したβ−ヒドロキシエチルアミン化合物のオキサゾリジノン誘導体に変換する工程が、40℃以上の加熱下に行われ、且つ、塩基性条件下で水と接触させて処理する工程が、40℃以上の加熱下に行われる請求項3に記載の製造法。
  8. 酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を、中性条件から徐々に酸性条件に移行させつつ実施する請求項1〜7のいずれかに記載の製造法。
  9. 酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を、酸性条件下に行う請求項1〜7のいずれかに記載の製造法。
  10. 酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を、強酸性条件下に行う請求項1〜7のいずれかに記載の製造法。
  11. 酸性〜中性条件下に、5倍モル量以上の水と接触させて処理する工程を、酸性物質共存下に行う請求項1〜10のいずれかに記載の製造法。
  12. 脱離基が、スルホニルオキシ基である請求項1〜11のいずれかに記載の製造法。
  13. 脱離基が、ハロスルフィニルオキシ基である請求項1〜11のいずれかに記載の製造法。
  14. 脱離基が、ハロゲン原子である請求項1〜11のいずれかに記載の製造法。
  15. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物が、3−(アルコキシカルボニル)アミノ−2−(脱離基)−4−フェニル酪酸である請求項1〜14のいずれかに記載の製造法。
  16. β位に脱離基を有するN−アルコキシカルボニル−エチルアミン化合物が、3−(アルコキシカルボニル)アミノ−1−クロロ−2−(脱離基)−4−フェニルブタンである請求項1〜14のいずれかに記載の製造法。
  17. アルコキシカルボニル基が、炭素数1〜4の低級アルコキシカルボニル基、又は、置換若しくは無置換の炭素数7〜10のアラルキルオキシカルボニル基である請求項1〜16のいずれかに記載の製造法。
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