JP4370066B2 - 耐汚染性多層塗膜形成方法および耐汚染性多層塗膜 - Google Patents
耐汚染性多層塗膜形成方法および耐汚染性多層塗膜 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、建築物や構造物に対して優れた耐汚染性を示す多層塗膜に関し、特に、耐久性に優れた耐汚染性多層塗膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
JIS A 6909(2000)に記載されているビルや住宅等の外装材における建築用仕上塗材には、20℃において伸び率120%以上という防水形複層塗材がある。このような複層塗材は、下地への主材の吸い込み調整や付着性を高める下塗材、仕上がり面に立体的または平坦な模様を形成する主材および仕上げ面の着色、光沢の付与、耐候性の向上等の機能を付与する上塗材からなり、基材であるコンクリートの膨張や歪みによるクラックに追従できる柔軟性の高い多層塗膜である。
【0003】
ところで、塗料にシリケート化合物を含有させることにより、耐汚染性に優れた塗膜を形成する方法が開発されつつあり、これらは、例えば、WO94/06870号公報、WO96/262458号公報、特開平10−72569号公報に記載されている。このような塗膜の耐汚染性は、表面に局在化するシリケート化合物が加水分解反応を起こしてシラノールが生成し、塗膜表面が親水性化することによって発現すると考えられている。
【0004】
このような耐汚染性上塗り塗料を先の防水形複層塗材の上塗材として用いた場合、経時において主材と上塗材との間でハガレが生じたり、上塗材表面にワレが生じたりするという問題点があった。
【0005】
これは、耐汚染性上塗り塗料から得られる塗膜の柔軟性が劣るため、経時によって基材の伸縮に追従できる柔軟性の高い主材と、柔軟性に劣る耐汚染性塗膜との間に歪みが生じてしまうことが原因と考えられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐汚染性および耐久性に優れた多層塗膜を得ることができる耐汚染性多層塗膜形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材上の主材層に対して、上塗材として中塗り塗料を塗布して上塗り第1層を形成した後、さらに、耐汚染性上塗り塗料を塗布して上塗り第2層を形成するものであって、
(1)上記主材層単独での20℃における伸び率が50%以上であり、
(2)上記上塗り第1層単独での20℃における抗張力が50kgf/cm2以上、かつ、伸び率が40%以上であり、さらに、
(3)上記上塗り第2層単独での20℃における伸び率が30%以上であり、かつ、20℃、湿度65%で7日間放置した後の水接触角が60度以下であることを特徴とする耐汚染性多層塗膜形成方法である。
【0008】
ここで、中塗り塗料は水酸基価20〜100、ガラス転移温度0〜30℃、数平均分子量3000〜20000である水酸基含有アクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、顔料、および、ポリオルガノシロキサンユニットとポリアルキレンオキサイドユニットとを含み、かつ、反応性硬化官能基を末端に有するブロックポリマーを含有しているものであることが好ましく、また、耐汚染性上塗り塗料は水酸基含有フッ素系樹脂、ポリイソシアネート化合物および一般式1:
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R1は同じかまたは異なり、いずれも窒素原子、酸素原子、フッ素原子および/または塩素原子を含んでいてもよい炭素数1〜9の有機基、または水素原子であり、nは1〜100の整数である。)で表されるシリケート化合物を含有するものであることが好ましい。
【0011】
さらに、中塗り塗料は顔料の固形分体積濃度が10〜30%であることが好ましい。
【0012】
ここで、基材と主材層との間に下塗材層が形成されていてもよく、また、主材層が旧塗膜であってもよい。
【0013】
また、本発明は、上記の形成方法によって得られる耐汚染性多層塗膜である。
【0014】
さらに、本発明は、水酸基価20〜100、ガラス転移温度0〜30℃、数平均分子量3000〜20000である水酸基含有アクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、顔料、および、ポリオルガノシロキサンユニットとポリアルキレンオキサイドユニットとを含み、かつ、反応性硬化官能基を末端に有するブロックポリマーを含有していることを特徴とする耐汚染性多層塗膜用中塗り塗料組成物である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の耐汚染性多層塗膜形成方法における第1の工程は、基材上の主材層に対して、上塗材層として、中塗り塗料を塗布して上塗り第1層を形成するものである。
【0016】
上記上塗材層のうちの上塗り第1層単独では、20℃において、抗張力が50kgf/cm2以上であることが好ましく、100kgf/cm2以上であることがさらに好ましい。また、伸び率が40%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。上記抗張力が50kgf/cm2未満である場合、または、上記伸び率が40%未満である場合、基材の変形に対応することができず、塗膜にワレやハガレが生じる恐れがある。
【0017】
なお、抗張力および伸び率は、テンシロン(東洋ボールドウィン社製)等の引っ張り試験器による定速伸長測定等、当業者によってよく知られている応力−歪み特性の測定方法によって測定することができる。
【0018】
上記上塗り第1層を形成するために用いられる中塗り塗料は、水酸基含有アクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、顔料、および、ポリオルガノシロキサンユニットとポリアルキレンオキサイドユニットとを含み、かつ、反応性硬化官能基を末端に有するブロックポリマーを含んでいることが好ましい。
【0019】
上記水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は20〜100であり、40〜80であることが好ましい。上記水酸基価が20未満である場合、硬化性が低下し、100を超える場合、得られる塗膜の耐水性が低下したり、硬化が進みすぎ、上塗り第1層が硬く脆くなったりする。また、ガラス転移温度は0〜30℃であり、0〜20℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度が0℃未満である場合、得られる上塗り第1層の硬度が不充分になり、30℃を超える場合、得られる上塗り第1層の伸び率が低下する。上記ガラス転移温度は、後述のモノマーのガラス転移温度から計算によって求められるものである。さらに、数平均分子量3000〜20000であり、5000〜15000であることが好ましい。上記数平均分子量が3000未満である場合、得られる上塗り第1層の物性が低下し、20000を超える場合、塗料の粘度が高くなり、塗布時の有機溶剤の使用量が増加する。
【0020】
また、上記アクリル樹脂は酸価を有していてもよい。酸価を有することで、後述の上塗り第2層との付着性を向上させることができる。上記酸価としては、樹脂固形分酸価1〜15であることが好ましく、3〜10であることがさらに好ましい。上記樹脂固形分酸価が1未満である場合、付着性の向上効果が不充分になる恐れがあり、15を超える場合、耐水性が低下する恐れがある。
【0021】
このようなアクリル樹脂を得る方法としては、例えば、不飽和二重結合を有するモノマーを常法によって重合する方法を挙げることができる。上記不飽和二重結合を有するモノマーとしては、具体的には、必須成分として(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の水酸基含有アクリルモノマーと、必要に応じて、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有アクリルモノマー、および、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルケトン等の重合性芳香族化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合性ニトリル、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、ブタジエン、イソプレン等のジエン等の硬化性官能基を含有しないモノマーを挙げることができる。
【0022】
上記ポリイソシアネート化合物は、例えば、ジイソシアネートおよび/またはその多量体を挙げることができる。このようなものとして、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のジイソシアネート、および、これらの三量体、これらのアダクト体やビュレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するものや、リジントリイソシアネート等のトリイソシアネート等を挙げることができるが、低温硬化性の観点から、ビュレット体であることが好ましい。
【0023】
上記中塗り塗料中の上記水酸基含有アクリル樹脂の水酸基と上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比(OH/NCO)は2.0〜0.2であることが好ましく、1.3〜0.7であることがさらに好ましい。
【0024】
上記中塗り塗料に含まれる顔料としては特に限定されず、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック等の無機系顔料、フタロシアニン系、ベンズイミダゾリン系、イソインドリノン系、アゾ系、アンスラキノン系、キノフタロン系、アンスラピリジン系、キナクリドン系、トルイジン系、ピラスロン系、ペリレン系等の有機系顔料、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、タルク、クレー等の体質顔料等を挙げることができる。上記中塗り塗料中の顔料体積濃度(PVC)は、10〜30%であることが好ましく、15〜25%であることがさらに好ましい。上記顔料体積濃度が10%未満である場合、着色力が不充分になる恐れがあり、30%を超える場合、最終的に得られる多層塗膜の外観が低下したり、上塗り第1層の伸び率が低下したりする恐れがある。
【0025】
上記中塗り塗料に含まれるブロックポリマーは、ポリオルガノシロキサンユニットとポリアルキレンオキサイドユニットとを含み、かつ、反応性硬化官能基を末端に有するものである。このようなブロックポリマーは後述の上塗り塗料との付着性を向上することができる。下記のようなアルキレンオキサイドユニット側に極性基が結合しているもの(以下、ブロックポリマーAという)およびオルガノシロキサンユニット側に極性基が結合しているもの(以下、ブロックポリマーBという)の2種類を挙げることができる。
【0026】
【化3】
【0027】
上記オルガノシロキサンユニットとしては、例えば、下記の一般式(2)で示されるものを例示することができる。
【0028】
【化4】
【0029】
一般式(2)において、R3およびR4は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または炭素数7〜9のアラルキル基である。アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシルなどが例示できる。アリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、t−ブチルフェニルなどが例示できる。アラルキル基としては、ベンジル、プロピルフェニルなどが例示できる。R3およびR4は、互いに同じであってもよいし異なっていてもよい。mは1〜135である。
【0030】
このようなオルガノシロキサンユニットとしては、具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルプロピルシロキサンおよびポリジフェニルシロキサン等を挙げることができる。オルガノシロキサンユニットの数平均分子量は、132〜20000であることが好ましく、400〜10000であることがより好ましく、600〜10000であることがさらに好ましい。上記分子量が132未満の場合、本発明の効果が不充分になる恐れがあり、20000を超える場合、塗装工程において、ハジキなどの不具合が生じる恐れがある。また、上記オルガノシロキサンユニットは2種類以上であってもよい。
【0031】
一方、上記アルキレンオキサイドユニットとしては、例えば、一般式(3)として−(OR5)b−を例示することができる。
【0032】
一般式(3)において、R5は、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、または、イソプロピレン基であり、bは、通常、2〜230である。なお、R5は全て同一であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
このようなアルキレンオキサイドユニットとして、具体的には、ポリメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(エチレン/プロピレン)オキサイド等を挙げることができるが、親水性および製造の容易さの観点から、ポリエチレンオキサイド、ポリ(エチレン/プロピレン)オキサイドが好ましい。上記アルキレンオキサイドユニットの数平均分子量は、200〜10000であることが好ましく、400〜5000であることがさらに好ましい。上記分子量が200未満の場合、本発明の効果が充分に得られない恐れがあり、10000を超える場合、ブロックポリマーの溶剤溶解性が低下する恐れがある。
【0034】
上記ブロックポリマーAおよびブロックポリマーBにおいて、αは1〜10であることが好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。上記αが10を超える場合、本発明の効果が不充分になる恐れがある。
【0035】
上記ブロックポリマーの有する極性基として、具体的には、エポキシ基、1級水酸基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、1級アミノ基、2級アミノ基、アミド基、ウレタン結合を含む基およびアルコキシシリル基等を挙げることができるが、経済的な観点から、エポキシ基、1級水酸基、カルボキシル基またはアミノ基であることが好ましい。上記分子両末端の極性基は同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、上記アルキレンオキサイドユニットは2種類以上であってもよい。
【0036】
なお、上記ブロックポリマーを得る方法としては、例えば、以下の4つの方法を例示することができる。
(1)分子両末端の極性基がエポキシ基であるブロックポリマーを得る方法
方法1:上記オルガノシロキサンユニット(またはアルキレンオキサイドユニット)の両末端に1級アミノ基を有するポリアルキレンオキサイド化合物(またはポリオルガノシロキサン化合物)と、(メタ)アクリロイル基を有する1級水酸基含有化合物とを反応させ(第1の反応)、さらに、アルキレンオキサイドユニット(またはオルガノシロキサンユニット)の両末端にエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン化合物(またはポリアルキレンオキサイド化合物)を反応させ(第2の反応)て得る。
【0037】
方法2:上記オルガノシロキサンユニット(またはアルキレンオキサイドユニット)の両末端にエポキシ基を有するポリアルキレンオキサイド化合物(またはポリオルガノシロキサン化合物)と、1級水酸基含有1級アミン化合物とを反応させ(第1の反応)、さらに、アルキレンオキサイドユニット(またはオルガノシロキサンユニット)の両末端にエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン化合物(またはポリアルキレンオキサイド化合物)を反応させ(第2の反応)て得る。
(2)分子両末端の極性基が1級水酸基であるブロックポリマーを得る方法
上記方法(1)によって得られるブロックポリマーの分子両末端のエポキシ基を、さらに、1級水酸基を2個含有する2級アミン化合物によって開環し(第3の反応)て得る。
【0038】
この際、第1の反応で用いる両末端にエポキシ基を有する化合物と、第2の反応で用いる両末端にエポキシ基を有する化合物は、互いに同一のユニットではない。また、所望するブロックポリマーが上記ブロックポリマーAか上記ブロックポリマーBかに応じて、上記第2の反応で用いる化合物として、ポリアルキレンオキサイド化合物またはポリオルガノシロキサン化合物を選択することができる。
(3)分子両末端の極性基がカルボキシル基でブロックポリマーを得る方法
上記方法(2)で得られた分子両末端の極性基が1級水酸基であるブロックポリマーに、さらに、酸無水物化合物を反応させ(第4の反応)て得る。
(4)分子両末端の極性基がアミノ基であるブロックポリマーを得る方法
方法1:上記オルガノシロキサンユニットの両末端にエポキシ基を有するポリオルガノシロキサン化合物と、上記アルキレンオキサイドユニットの両末端にアミノ基を有するポリアルキレンオキサイド化合物とを反応させて得る。
【0039】
方法2:上記オルガノシロキサンユニットの両末端にアミノ基を有するポリオルガノシロキサン化合物と、上記アルキレンオキサイドユニットの両末端にエポキシ基を有するポリアルキレンオキサイド化合物とを反応させて得る。
【0040】
この際、所望するブロックポリマーが上記ブロックポリマーAか上記ブロックポリマーBかによって上記ポリオルガノシロキサン化合物と上記ポリアルキレンオキサイド化合物との量比を任意に設定することができる。
【0041】
上記ブロックポリマーの含有量は、上記中塗り塗料固形分に対して0.1〜2.0重量%であることが好ましい。上記含有量が0.1重量%未満である場合、本発明の効果が不充分になる恐れがあり、2.0重量%を超える場合、最終的に得られる多層塗膜の耐水性が低下する恐れがある。
【0042】
さらに、上記中塗り塗料は、上記成分の他必要に応じて、硬化触媒、顔料分散剤、増粘剤、表面調整剤、消泡剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、防錆剤等、当業者によってよく知られている各種成分を含むことができる。
【0043】
なお、上記中塗り塗料は、ポットライフの観点から、通常、上記水酸基含有アクリル樹脂、および必要に応じて水酸基と反応しないその他の成分を塗料液として、また、上記ポリイソシアネート化合物、および必要に応じてイソシアネートと反応しないその他の成分を硬化剤液として、それぞれ別々に保管し、使用直前に混合して用いることが好ましい。
【0044】
上記上塗り第1層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、上記中塗り塗料を、ハケ、スプレー、ローラー等当業者によってよく知られている塗装用具を用いて基材に塗布した後、常温放置し乾燥させることによって得ることができる。なお、塗布量は特に限定されず、例えば、約0.05〜0.30kg/m2である。なお、本明細書中の常温とは、約5〜約40℃であり、湿度は特に限定されないが、40%以上であることが好ましい。
【0045】
上記基材としては、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等およびその表面処理物の金属基材、セメント類、石灰類、石膏類等のセメント系基材、ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等、および、これらからなる建築物や構造物等を挙げることができる。
なお、上記基材上には予め主材層が形成されている。
【0046】
上記主材層単独では、20℃における伸び率が50%以上である。上記伸び率が50%未満である場合、上記基材のひび割れや歪み等に追従することができず、最終的に得られる多層塗膜にワレが生じる。さらに好ましくは50〜400%である。なお、JIS A 6909(2000)建築用仕上塗材で規定されている防水形の複層塗材を形成する場合は、20℃における伸び率が120%以上のものを用いる必要がある。
【0047】
このような主材層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、JIS A 6916(2000)建築用下地調整塗材、JIS A 6021(2000)屋根用塗膜防水材、JIS A 6909(2000)防水形複層塗材E、防水形複層塗材CE、防水形複層塗材RE、防水形複層塗材RS、シーリング材、水和凝固形塗膜防水材および一般の塗膜防水材等の主材を、上記上塗り第1層を形成する方法のところで述べた方法と同様のものを挙げることができる。塗布量は特に限定されず、例えば、約0.3〜3kg/m2である。
【0048】
なお、基材が上記セメント系基材である場合、経年による基材自身の歪みやワレ等の変化に追従するために、上記主材はJIS A 6909(2000)防水形複層塗材E、防水形複層塗材CE、防水形複層塗材RE、防水形複層塗材RSであることが好ましい。
【0049】
なお、本発明の耐汚染性多層塗膜形成方法を塗り替え等の改修方法として用いる場合においては、既に形成されている単層または複層の旧塗膜が上記条件を満たす時は、旧塗膜をそのまま主材層とすることができるが、旧塗膜が上記条件を満たさない時は、旧塗膜を基材として見なし、その上に上記主材層を形成してもよく、また、予め旧塗膜を除去したり、また除去した後さらに、後述の下塗材層を形成したりしてもよい。また、建築物等の目地部にシーリング材が用いられている場合は、これを主材層としてもよい。
【0050】
また、上記基材と主材層との間に下塗材層が形成されていてもよい。特に、セメント系基材等のような多孔質の基材を用いる場合は、主材層を形成する際の吸い込み調整や付着性の点から予め下塗材層を形成しておくことが好ましい。上記下塗材層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、プライマー、シーラーおよびサーフェーサーと呼ばれる下地調整材等を、上記上塗り第1層を形成する方法のところで述べた方法と同様のものを挙げることができる。なお、塗布量は特に限定されず、例えば、0.05〜0.3kg/m2である。
【0051】
本発明の耐汚染性多層塗膜形成方法における第2の工程は、上記上塗り第1層に対して、上塗材層として、さらに耐汚染性上塗り塗料を塗布して上塗り第2層を形成するものである。
【0052】
上記上塗材層のうちの上塗り第2層単独では、20℃における伸び率が30%以上であり、かつ、20℃、湿度65%で7日間放置した後の水接触角が60度以下である。上記伸び率が30%未満である場合、基材の変形に対応することができず、塗膜にワレやハガレが生じる。好ましくは50%以上である。また、上記水接触角が60度を超える場合、汚れが付着しやすく、また、目立ちやすくなる。好ましくは50度以下である。また、上記上塗り第2層の抗張力は50kgf/cm2以上であることが好ましく、100kgf/cm2以上であることがさらに好ましい。なお、上記水接触角の測定方法は、放置する環境条件によっては数値にずれが生じるため、本明細書では、放置する環境条件を20℃、湿度65%と定めた。
【0053】
上記上塗り第2層を形成するために用いられる耐汚染性上塗り塗料は、水酸基含有フッ素系樹脂、ポリイソシアネート化合物およびシリケート化合物を含有することが好ましい。上記水酸基含有フッ素系樹脂としては、フルオロオレフィン共重合体を例示することができる。上記フルオロオレフィン共重合体の樹脂固形分の水酸基価としては特に限定されないが、硬化性および得られる塗膜の可撓性の観点から、20〜200であることが好ましく、30〜150であることがさらに好ましい。また、その数平均分子量としては特に限定されないが、硬化性、耐候性および塗装作業性の観点から、1000〜100000であることが好ましく、1500〜30000であることがさらに好ましい。なお、数平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)等、当業者によってよく知られた方法にて測定し決定することができる。
【0054】
このようなフルオロオレフィン共重合体で、市販されているものとしては、ゼッフルシリーズ(ダイキン工業社製)、ルミフロンシリーズ(旭硝子社製)、セフラルコートシリーズ(セントラル硝子社製)、フルオネートシリーズ(大日本インキ化学工業社製)、ザフロンシリーズ(東亞合成社製)等を例示することができる。
【0055】
上記ポリイソシアネート化合物は、上記中塗り塗料のところで述べたものを挙げることができる。
【0056】
また、上記水酸基含有フッ素樹脂の有する水酸基と上記ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基との当量比(OH/NCO)は、得られる塗膜の硬化性および性能の観点から、2.0〜0.2であることが好ましく、1.3〜0.7であることがさらに好ましい。
【0057】
上記シリケート化合物は、具体的には、直鎖状、分岐鎖状、環状、三次元化重合体等を挙げることができる。上記直鎖状のものとしては下記一般式(1):
【0058】
【化5】
【0059】
で表される化合物および/または縮合物である。上記nは重合度を表していて、1〜100の整数である。揮発および樹脂のハンドリングの観点から、2〜100であることが好ましく、4〜20であることがさらに好ましい。
【0060】
また、式中、R1は同じかまたは異なり、いずれも窒素原子、酸素原子、フッ素原子および/または塩素原子を含んでいてもよい炭素数1〜9の有機基、または水素原子であり、分散安定性および加水分解性の観点から、炭素数1〜6の有機基であることが好ましい。上記炭素数が上記範囲外である場合、分散安定性が低下したり、得られる塗膜の耐汚染性が低下したりする。
【0061】
このようなものとして具体的には、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4およびその縮合物や共縮合物等を挙げることができ、市販されているものとしては、MKCシリケートMS56、MKCシリケートMS51、MKCシリケートMS60(三菱化学社製メチルシリケート化合物)、エチルシリケート40、エチルシリケート48(いずれもコルコート社製エチルシリケート化合物)を例示することができる。また、これらのアルキルシリケートの有機基を、上記R1を有するアルコール化合物によって一部置換したものであってもよい。
【0062】
上記アルコール化合物としては具体的には、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール等のアルキルアルコールやブチルセロソルブ、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール等のエーテルアルコール等を挙げることができる。
【0063】
なお、得られる塗膜の耐汚染性の観点から、上記R1のうちの少なくとも1つがフッ素原子を含んでいることが好ましく、全てのR1がフッ素原子を含んでいることがさらに好ましい。このようなシリケート化合物において、その安定性と得られる塗膜の耐汚染性の観点から、上記R1としては、具体的には、CH2−CF2−RやCH2CH2−CF2−R2(式中、R2は窒素原子、酸素原子、フッ素原子および/または塩素原子を含んでいてもよい有機基または水素原子である)であることが好ましく、R2の炭素数が1〜3であることがさらに好ましい。このようなものとして具体的には、CH2CF3、CH2CF2CF3、CH2(CF2)2CF3、CH2CH2(CF2)3CF3、CH2(CF2)2H、CH2(CF2)3H、CH2(CF2)4H等を挙げることができる。
【0064】
上記R1がフッ素原子を含んでいる場合、上記シリケート化合物に含まれるフッ素原子の含有率は15重量%以上であることが好ましく、30〜50重量%であることがさらに好ましい。上記含有率が15重量%未満である場合、得られる塗膜の耐汚染性が不充分になる恐れがある。
【0065】
上記フッ素原子含有シリケート化合物としては、例えば、
Si(OCH2CF2CF3)4
Si(OCH(CF3)2)4
Si(OCH2CF2CF2H)4
Si(OCH2C4F8H)4
Si(OCH2CF2CF3)2(OCH3)2
Si(OCH(CF3)2)2(OCH3)2
Si(OCH2CF2CF2H)2(OCH3)2
Si(OCH2CF2CF3)2(OH)2
およびその縮合物や共縮合物等を挙げることができ、市販されているものとしては、ゼッフルGH110(ダイキン工業社製)等を例示することができる。
【0066】
なお、上記耐汚染性塗料におけるシリケート化合物の含有量は、上記水酸基含有フッ素樹脂の樹脂固形分100重量部に対して0.1〜80重量部であり、1〜50重量部であることが好ましい。上記含有量が0.1重量部未満である場合、最終的に得られる多層塗膜の耐汚染性が不充分である恐れがあり、80重量部を超える場合、得られる塗膜の硬化性や外観が低下する恐れがある。
【0067】
さらに、上記耐汚染性上塗り塗料は、上記成分の他必要に応じて、硬化触媒、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、増粘剤、表面調整剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、難燃剤、帯電防止剤、防錆剤等、当業者によってよく知られている各種成分を含むことができる。
【0068】
なお、上記耐汚染性上塗り塗料は、上記中塗り塗料同様、ポットライフの観点から、通常、上記水酸基含有フッ素樹脂、および必要に応じて水酸基と反応しないその他の成分を塗料液として、また、上記ポリイソシアネート化合物、シリケート化合物、ならびに必要に応じてイソシアネートやシリケートと反応しないその他の成分を硬化剤液として、それぞれ別々に保管し、使用直前に混合して用いることが好ましい。
【0069】
上記上塗り第2層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、上記耐汚染性上塗り塗料を、上記上塗り第1層を形成する方法のところで述べた方法と同様のものを挙げることができる。また、塗布量は特に限定されず、例えば、約0.05〜0.30kg/m2である。
【0070】
また、本発明の耐汚染性多層塗膜は、上記第1の工程および第2の工程によって得られるものであり、耐汚染性に優れ、かつ、経時においても各塗膜の付着性が良好であり耐久性に優れる。
【0071】
さらに、本発明の耐汚染性多層塗膜用中塗り塗料組成物は、上記第1の工程で述べた中塗り塗料であり、直上および直下の塗膜に対して良好な付着性を示すものである。
【0072】
【実施例】
製造例1 上塗り塗料1の製造
ゼッフルGK510(ダイキン工業社製、水酸基およびカルボキシル基含有テトラフルオロオレフィン共重合体、固形分50重量%)17.0重量部、ゼッフルGK500(ダイキン工業社製、水酸基含有テトラフルオロオレフィン共重合体、固形分60重量%)34.0重量部、タイペークCR−95(石原産業社製二酸化チタン)35.0重量部およびキシレン2.9重量部をディスパーにて攪拌混合して塗料液を得た。この塗料液88.9重量部に対して、コロネートHX(日本ポリウレタン工業社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、固形分100重量%)6.1重量部、ゼッフルGH110(ダイキン工業社製、フッ素原子含有シリケート化合物、有効成分100重量%)5.0重量部を加え、さらにディスパーにて攪拌混合して上塗り塗料1を得た。
【0073】
得られた上塗り塗料1から80×10mm、かつ、乾燥塗膜40μmの試験片を作製し、JIS A 5400 8.8に従って伸び率を測定したところ、伸び率70%であった。また、20℃、湿度65%で7日間放置した後の塗膜の水接触角を測定したところ、39度であった。
【0074】
製造例2 上塗り塗料2の製造
ゼッフルGH110を用いず、キシレンをさらに5.0重量部加えたこと以外は製造例1と同様にして、伸び率80%の上塗り塗料2を得た。得られた塗料を製造例1と同様にして試験片を作製して伸び率および水接触角を測定したところ、それぞれ、69%、76度であった。
【0075】
製造例3 ブロックポリマー溶液の製造
攪拌機、温度計および窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに、BY16−853C(東レダウコーニング社製ジアミン化合物)56.2重量部とキシレン50重量部とを仕込み、80℃に加温した後保持し、4−ヒドロキシブチルアクリレート21.6重量部とn−ブタノール20重量部とを滴下ロートに仕込み、30分かけて滴下した。滴下終了後、80℃に保持したまま、デナコールEX−810(ナガセ化成社製ジエポキシ化合物)19.6重量部とキシレン20重量部とを滴下ロートに仕込み、30分かけて滴下した。
【0076】
この溶液をそのまま80℃で1時間保持し、さらに、ジエタノールアミン5.1重量部とn−ブタノール10重量部とを滴下ロートに仕込み、30分かけて滴下した。滴下終了後、さらに、80℃で1時間に保持し、固形分50重量%のブロックポリマー溶液を得た。
【0077】
実施例1 中塗り塗料1の製造
水酸基含有アクリル樹脂1(水酸基価50、ガラス転移温度15℃、数平均分子量13000、固形分酸価5、固形分50重量%、モノマー組成:アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、スチレン、アクリル酸)50.0重量部、ブロックポリマー0.5重量部、タイペークCR−95(石原産業社製二酸化チタン)20.0重量部、キシレン25.1重量部をディスパーにて撹拌混合し、塗料液を得た。この塗料液95.6重量部に、コロネートHX(日本ポリウレタン社製ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)4.4重量部を加え、さらにディスパーにて撹拌混合して中塗り塗料1を得た。
【0078】
得られた中塗り塗料1から乾燥塗膜40μmの80×10mmの試験片を作製し、JIS A 5400 8.8に従って塗膜の抗張力および伸び率を測定したところ、抗張力は120kgf/cm2、伸び率80%であった。
【0079】
実施例2 中塗り塗料2の製造
水酸基含有アクリル樹脂1に代えて、水酸基含有アクリル樹脂2(水酸基価50、ガラス転移温度50℃、数平均分子量3500、固形分酸価5、固形分50重量%、モノマー組成:アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、スチレン、アクリル酸)としたこと以外は実施例1と同様にして、抗張力は190kgf/cm2、伸び率10%の中塗り塗料2を得た。
【0080】
比較例1および2 中塗り塗料3および4の製造
ブロックポリマーを用いなかったこと以外は実施例1および2と同様にして、抗張力が120kgf/cm2、伸び率80%の中塗り塗料3および抗張力が190kgf/cm2、伸び率10%の中塗り塗料4を得た。
【0081】
実施例3
JIS R 5201に規定された70×70×20mmのモルタル板に対して、ニッペ浸透用シーラー(日本ペイント社製2液型特殊エポキシ樹脂シーラー)を0.2kg/m2スプレー塗布し、20℃、湿度65%にて1日間乾燥させて基材を得た。
【0082】
基材上に内のり寸法40×40×1mmの型枠を置き、その中に主材としてニッペDANタイル中塗りを充填し、金ベラを用いて上面を平らに仕上げて成型した後、型枠を除去し、20℃、湿度65%にて1日間乾燥させた。なお、ニッペDANタイル中塗りから得られる塗膜の20℃における伸び率は、JIS A 6909 6.31に従って試験片を作製し測定したところ、360%であった。
【0083】
次に、この上に中塗り塗料として、実施例1で得られた中塗り塗料1を乾燥膜厚が25μmとなるようにスプレー塗布し、20℃、湿度65%にて3日間乾燥させた。
【0084】
さらに、この上に耐汚染性上塗り塗料として、製造例1で得られた上塗り塗料1を乾燥膜厚が25μmとなるようにスプレー塗布し、20℃、湿度65%にて7日間乾燥させ、耐汚染性多層塗膜Aを得た。
【0085】
また、300×100×5mmのスレート板に対して、同様にニッペ浸透用シーラーを塗布して、基材を得た後、主材としてニッペDANタイル中塗りを1.0kg/m2となるようにスプレー塗布し、20℃、湿度65%にて1日間乾燥させたこと以外、同様にして、耐汚染性多層塗膜Bを得た。
【0086】
実施例4および5ならびに比較例3〜12
表1に基づいて、主材、中塗り塗料および上塗り塗料を塗布したこと以外は実施例3と同様にして、各耐汚染性多層塗膜を得た。なお、ニッペDANエクセル中塗りJ、ニッペアンダーフィラー弾性エクセルから得られる塗膜の20℃における伸び率は、JIS A 6909 6.31に従って試験片を作製し測定したところ、それぞれ順に400%、80%であった。
【0087】
評価試験
実施例3〜5および比較例3〜12で得られた各耐汚染性多層塗膜AおよびBについて、以下の各評価試験を行った。得られた評価結果は表1および2に示す。
【0088】
<付着性>
耐汚染性多層塗膜Aに対して、JIS K 5400 8.5.2の碁盤目テープ法に準拠して隙間間隔2mm、マス目数25個にて付着試験を行った。付着数20個以上を合格(○)とした。
【0089】
<耐久性>
耐汚染性多層塗膜Aに対して、JIS A 6909 6.11に準拠して、20℃の水中に18時間浸漬した後、直ちに−20℃の恒温器中で3時間冷却し、次いで50℃の恒温器中で3時間加温する工程を1サイクルとした試験を連続して10サイクル繰り返し、多層塗膜表面の状態を目視にて評価した。異常のないものを○、ワレやハガレのあるものを×とした。
【0090】
<耐汚染性>
耐汚染性多層塗膜Bに対して、大阪府寝屋川市において南面45度の傾斜で屋外暴露を実施し、初期と6ヶ月後の色差(ΔE)をCR−200(ミノルタ社製色彩色差計)にて測定した。ΔEが3.0以下を合格とした。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
表1および2の結果から明らかなように、本発明の耐汚染性多層塗膜形成方法によって得られた耐汚染性多層塗膜は、付着性、耐久性および耐汚染性に優れている(実施例3〜5)が、塗膜の伸び率が不充分な中塗り塗料を用いた場合(比較例3、8および9)は耐久性が低下し、中塗り塗料が上記ブロックポリマーを含まない場合(比較例4〜7)は付着性が低下し、また、耐汚染性上塗り塗料がシリケート化合物を含まない場合(比較例10〜12)は耐汚染性が低下した。
【0094】
【発明の効果】
本発明の耐汚染性多層塗膜形成方法は、主材、上塗材である上塗り第1層および耐汚染性を有する上塗り第2層の各々の塗膜物性値を規定し、さらには、上塗り第1層を形成するために用いられる中塗り塗料中に、特定構造を有するブロックポリマーを含んでいることを特徴としているので、優れた付着性および耐久性を有する耐汚染性多層塗膜を形成することができる。
【0095】
これは、各塗膜が各々規定範囲の物性値を有することで、経年で受ける基材の変形や歪み等の物理的変化を、多層塗膜全体として吸収することができることによると考えられる。また、ブロックポリマーは密着性付与剤として機能していると考えられ、従来、付着性に劣ると言われてきた耐汚染性上塗り塗膜であっても、本発明の耐汚染性多層塗膜形成方法を用いることによって付着性に優れた多層塗膜を形成することができる。
Claims (3)
- 基材上の主材層に対して、上塗材層として、中塗り塗料を塗布して上塗り第1層を形成した後、さらに、耐汚染性上塗り塗料を塗布して上塗り第2層を形成するものであって、
前記主材層は、JIS A 6916(2000)建築用下地調整塗材、JIS A 6021(2000)屋根用塗膜防水材、JIS A 6909(2000)防水形複層塗材E、防水形複層塗材CE、防水形複層塗材RE、防水形複層塗材RS、シーリング材、水和凝固形塗膜防水材、または旧塗膜から選ばれるいずれかであり、
(1)前記主材層単独での20℃における伸び率が50%以上であり、(2)前記上塗り第1層単独での20℃における抗張力が50kgf/cm2以上、かつ、伸び率が40%以上であり、さらに、(3)前記上塗り第2層単独での20℃における伸び率が30%以上であり、かつ、20℃、湿度65%で7日間放置した後の水接触角が60度以下であり、
前記中塗り塗料は水酸基価20〜100、ガラス転移温度0〜30℃、数平均分子量3000〜20000である水酸基含有アクリル樹脂、ポリイソシアネート化合物、顔料、および、ポリオルガノシロキサンユニットとポリアルキレンオキサイドユニットとを含み、かつ、反応性硬化官能基を末端に有するブロックポリマーを含有しており、
前記中塗り塗料中の前記水酸基含有アクリル樹脂の水酸基と前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比(OH/NCO)が2.0〜0.2であり、
前記中塗り塗料中の前記顔料の固形分体積濃度が10〜30%であり、
前記ブロックポリマーの含有量が中塗り塗料固形分に対して0.1〜2.0重量%であり、
前記耐汚染性上塗り塗料は水酸基含有フッ素系樹脂、ポリイソシアネート化合物および下記の一般式(1):
前記耐汚染性上塗り塗料中の前記水酸基含有フッ素系樹脂の水酸基と前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比(OH/NCO)が2.0〜0.2であり、
前記耐汚染性上塗り塗料中の前記シリケート化合物の含有量が水酸基含有フッ素樹脂の樹脂固形分100重量部に対して0.1〜80重量部である、
耐汚染性多層塗膜形成方法。 - 前記基材と前記主材層との間に下塗材層が形成されている、請求項1に記載の耐汚染性多層塗膜形成方法。
- 請求項1または2に記載の形成方法によって得られる、耐汚染性多層塗膜。
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