JP4369690B2 - 絶縁軸受の絶縁性能試験機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄道車両の主電動機などに用いられる絶縁軸受の絶縁性能試験機に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両においては、台車の主電動機、駆動装置、車軸などの各部位に軸受が用いられている。近年、鉄道技術の進歩に伴い、上記主電動機にもVVVF(可変電圧・可変周波数制御法)が適用されるようになり、それに伴って主電動機に用いられる軸受に電食の発生が多くなっている。軸受に電食が発生すると、軸受転走面が損傷を受けて、異音が発生し、さらには剥離が発生することがあり、それを防ぐために軸受の絶縁性が必要となっている。このような要請に応えるために、転動体に絶縁体であるセラミックスを用いたり、外輪の外径面にセラミックスやPPS樹脂などからなる絶縁皮膜を形成した絶縁軸受が開発されている。
【0003】
図9は鉄道車両の一般的な台車の構造概略図を示す。台車41に設置された主電動機42の駆動は、そのモータ軸43から駆動装置44を介して車軸45に伝達される。車軸45は、両端で車軸軸受68に支持される。このように台車41においては主電動機42内の軸受、駆動装置44の軸受、および車軸軸受68があるが主電動機42内の軸受に絶縁軸受が用いられる。
図10は主電動機42の断面図を示す。モータ軸43の一端部は第1の絶縁軸受46を介してモータハウジング48の一端部に支持され、モータ軸43の他端部は第2の絶縁軸受47を介してモータハウジング48の他端部に支持される。モータ軸43の中間部にはロータ49が設けられ、このロータ49の外径側にステータコイル等を含むステータ50が、モータハウジング48に設置されている。第1の絶縁軸受46は玉軸受からなり、第2の絶縁軸受47はモータ軸43等の熱伸縮を許容するために円筒ころ軸受が用いられている。これらの絶縁軸受46,47は、その外輪がモータハウジング48の両端の分割ハウジング部51,52に設置されている。モータハウジング48における上記各絶縁軸受46,47の両側の幅面と対向する部分には、それぞれグリースポケット67を有する蓋部材53〜56が取付けられている。グリースポケット67は、絶縁軸受46,47の潤滑寿命ないしグリース補給間隔を長くなるために設けられるものである。
【0004】
このような絶縁軸受(例えば外輪の外径面に絶縁皮膜を形成したもの)の絶縁性能を評価する場合、従来は、図11のように、絶縁軸受61を単体で2つ割りハウジング63に組み込んで、絶縁抵抗測定器64の両電極64a,64bをハウジング63と軸受外輪62の母材とに接触させ、ハウジング63と外輪母材の間の絶縁抵抗を測定していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、モータ軸43等に対として用いられる両側の絶縁軸受46,47は、負荷される荷重が互いに異なる。そのため、上記のような軸受単体の測定では、運転時間に対応した実機相当の絶縁性能の変化を調べることができなかった。
また、鉄道車両の主電動機に用いられる絶縁軸受等では、主電動機に組み込まれた状態でグリースが封入され、図10のように絶縁軸受46,47にはグリースポケット67を有する蓋部材53〜56等の周辺部材が取付けられる。そのため、上記したように軸受単体で絶縁抵抗を測定する場合と異なる状況になる。また、主電動機の回転駆動によりグリースが移動・排出されることにもなる。グリースは完全な絶縁体ではなく、グリース移動による洩れから絶縁性が低下することもある。そのため、軸受単体で測定する場合とは、絶縁性能の試験結果が異なって来る。しかし、従来は、このような実機相当状態での絶縁性能については、確認されていなかった。
なお、図10に示す主電動機42等の実機において、モータハウジング48とモータ軸43との間の絶縁性能を測定することはできる。しかし、その場合、両端の絶縁軸受46,47を組み合わせた状態での絶縁性能が測定されることになり、個々の絶縁軸受46,47についての測定は行えない。そのため、実機または実機相当状態での個々の絶縁軸受46,47の絶縁性能は、いずれの方法でも評価することができなかった。
鉄道車両主電動機等における性能向上の要求から、このような実機相当状態での個々の絶縁軸受46,47の絶縁性能の評価が求められてきている。
【0006】
この発明の目的は、実機使用状態に近似した状態での個々の絶縁軸受の絶縁性能を評価できる絶縁軸受の絶縁性能試験機を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の絶縁軸受の絶縁性能試験機は、複数の絶縁軸受の内輪を嵌合させる共通の軸と、各絶縁軸受の外輪をそれぞれ嵌合させる複数の個別ハウジングと、これら個別ハウジングを設置する共通の基台と、上記各個別ハウジングと基台との間に介在させた絶縁体と、上記各絶縁軸受に対してそれぞれ設けられてその絶縁軸受における絶縁部分よりも内径側の部分とその絶縁軸受に対応する個別ハウジングとの間の絶縁抵抗を測定する複数の絶縁抵抗測定手段とを備え、上記基台は、立設された一対のコラム体と、両コラム体にまたがって横架されたスリーブとを有し、このスリーブの両端部分でその内径孔内に、上記絶縁体を介在させて各個別ハウジングを設置したものである。
この構成によると、一対の絶縁軸受を共通の軸に嵌合させて絶縁抵抗を測定するようにしたため、実機における軸の両端に使用された状態での絶縁軸受の絶縁性能を評価することができる。例えば、軸を回転させて、運転時間に対応した実機相当の絶縁性能の変化を調べることができる。また、各絶縁軸受に対して個別ハウジングを設け、個別ハウジングと共通の基台との間に絶縁体を介在させたため、個々の絶縁軸受の絶縁抵抗を測定することができる。このように、例えば鉄道車両の主電動機等の軸受装備実機に組み込まれた軸受使用状態での絶縁性能の評価を、実機試験の前に行うことができる。
【0008】
この発明において、上記絶縁軸受が外輪の母材の外径面および幅面に上記絶縁部分である絶縁被覆を有するものであり、上記絶縁抵抗測定手段に導通させる上記絶縁軸受の絶縁部分よりも内径側の部分が、上記絶縁軸受の外輪の母材部分であっても良い。
この構成の場合は、絶縁軸受の外輪にその絶縁被覆を介して嵌合した個別ハウジングと軸受外輪の母材との間で絶縁抵抗測定手段による測定を行うので、内外輪間の転動体やグリース等の影響を受けずに、絶縁被覆の絶縁性能を評価することができる。
【0009】
この発明において、上記絶縁軸受が外輪の母材の外径面および幅面に上記絶縁部分である絶縁被覆を有するものであり、上記絶縁抵抗測定手段に導通させる上記絶縁軸受の絶縁部分よりも内径側の部分が、上記絶縁軸受の内輪または上記軸であっても良い。
この構成の場合は、内外輪間に介在した転動体やグリースの影響を含めた絶縁性能の評価が行える。
【0010】
この発明において、上記絶縁軸受がセラミックス製の転動体を有し、この転動体が上記絶縁部分となるものであり、上記絶縁抵抗測定手段に導通させる上記絶縁軸受の絶縁部分よりも内径側の部分が、上記絶縁軸受の内輪または上記軸であっても良い。
この構成の場合は、絶縁軸受がセラミックス製の転動体を有することで絶縁性能が付与されたものであっても、絶縁性能を評価することができる。
【0011】
これらの発明において、上記複数の絶縁軸受を備える軸受装備実機の軸受周辺部を模して上記絶縁軸受の幅面を覆う蓋部材を上記個別ハウジングに取付けても良い。
この構成の場合は、実機における絶縁軸受の幅面を覆う蓋部材の影響を含めた絶縁性能の評価が行え、実機での使用により近い評価をすることができる。
【0012】
上記のように蓋部材を設ける場合に、その蓋部材の軸受対向面にグリースポケットを設けても良い。
この構成の場合、実機の蓋部材の軸受対向面に設けられるグリースポケットにグリースを充填した状態での絶縁性能を評価することができる。上記のように、グリースは完全な絶縁体ではなく、グリース移動による洩れから絶縁性が低下することもある。そのため、軸受装備実機により近似した状態での絶縁性能の評価が行える。
【0013】
これらの発明において、上記各個別ハウジングと基台との間に介在させた絶縁体が絶縁シートであっても良い。
絶縁体を介在させる場合、個別ハウジングと基台とをどのように結合するかが問題となるが、薄い部材である絶縁シートを用いることで、簡単にかつ堅固に個別ハウジングと基台とを結合することができる。また、絶縁体をどの位置でどのように介在させるかは、絶縁性能の評価において重要な要素であるが、絶縁シートを用いることで、絶縁部位が狭い空間になるように配置することが容易であり、絶縁部位の広がり等からのノイズによる外乱を少なくすることができる。
【0014】
この発明において、上記共通の軸を回転させる回転駆動手段、および上記共通の軸が回転している状態で上記共通の軸にラジアル負荷を作用させる荷重負荷手段を設けても良い。
この場合、実機において軸に作用するラジアル荷重を模して軸受運転を行った状態での絶縁性能を評価することができ、さらに実機に近似した状態の絶縁性能評価が行える。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この実施形態の絶縁軸受の絶縁性能試験機は、図10と共に前述した鉄道車両の主電動機42に装備された両端の絶縁軸受46,47の絶縁性能を評価する試験機である。この絶縁性能試験機は、上記複数の絶縁軸受46,47の内輪57,58を嵌合させる共通の軸3と、各絶縁軸受46,47の外輪59,60をそれぞれ内部に嵌合させる複数の個別ハウジング11,12と、これら個別ハウジング11,12を設置する共通の基台4と、各絶縁軸受46,47に対応する複数の絶縁抵抗測定手段1,2とを備える。
【0017】
基台4は、ベースフレーム5と、このベースフレーム5の上に立設された前後一対のコラム体6,6と、両コラム体6,6にまたがって横架されるスリーブ7とを有する。上記各個別ハウジング11,12は、両側のコラム体6,6の内部に設置される。より詳しくは、スリーブ7のコラム体6,6で支持された両端部分でその内径孔内に設置される。各個別ハウジング11,12と基台4との間には、図2および図4に拡大して示すように、絶縁シートからなる絶縁体8,9がそれぞれ介在させてある。絶縁体8,9の材質は、フッ素樹脂等の樹脂シート等が用いられる。上記スリーブ7は、図10の主電動機42のモータハウジング48を模した部材である。また、各個別ハウジング11,12は、図10の主電動機42の両端の分割ハウジング部51,52を模した部材である。
【0018】
個別ハウジング11,12における各絶縁軸受46,47の周辺部には、これら絶縁軸受46,47の両幅面を覆う蓋部材13〜16が取付けられている。これら蓋部材13〜16は軸受対向面にグリースポケット13a〜16aを設けたものである。片方の絶縁軸受46の両側の幅面に対応する蓋部材13,14は個別ハウジング11に、もう片方の絶縁軸受47の両側の幅面に対応する蓋部材15,16は個別ハウジング12にそれぞれ取付けられる。絶縁軸受46に対応する蓋部材13,14は、軸3に嵌合して絶縁軸受46の内輪57を軸方向に位置決めする一対の軸受押さえ部材17,18との間でラビリンスシール19,20をそれぞれ形成している。また、絶縁軸受47に対応する蓋部材15,16は、軸3に嵌合して絶縁軸受47の内輪58を軸方向に位置決めする一対の軸受押さえ部材21,22との間でラビリンス23,24をそれぞれ形成している。上記各蓋部材13〜16は、図10の主電動機42の蓋部材53〜56を模した部材であり、各蓋部材13〜16とこれに対応する絶縁軸受46,47との間隔、およびグリースポケット13a〜16aの形状,寸法は、主電動機42の蓋部材53〜56と同様に形成されている。
【0019】
上記各絶縁軸受46,47は、外輪59,60の外径面および幅面に絶縁部分59a,60aである絶縁被覆を有するものである。絶縁軸受46に対応する絶縁抵抗測定手段1は、絶縁軸受46の絶縁部分(絶縁被覆)59aよりも内輪57側の部分と個別ハウジング11との間の絶縁抵抗を測定するものである。具体的には、上記絶縁抵抗測定手段1の一方の電極1aが個別ハウジング11に、他方の電極1bが絶縁軸受46の外輪59の母材部分59bにそれぞれ電気的に接続される。上記一方の電極1aは、例えば上記スリーブ7および絶縁体8に渡って孔71(図2)を設けて個別ハウジング11に接続しても良い。絶縁抵抗測定手段1の他方の電極1bは、蓋部材14に軸方向に向けて貫通させた貫通孔14bに絶縁部材からなるスリーブ25を嵌合させ、このスリーブ25内を経て上記外輪59の内径面に臨ませることにより、外輪母材部分59bに接触させている。電極1bはばね部材からなり、その弾性変形により、外輪母材部分59bに押し当てられる。蓋部材14のグリースポケット14aは、グリースポケット14aからグリースが流れ出ないように、図3に正面図で示すように周方向に複数個が分離して配置されており、隣合うグリースポケト14a,14aの間の部分に上記スリーブ25の貫通孔14bが設けられる。
【0020】
もう一方の絶縁軸受47に対応する絶縁抵抗測定手段2は、絶縁軸受47の絶縁部分(絶縁被覆)60aよりも内輪58側の部分と個別ハウジング12との間の絶縁抵抗を測定するものである。この場合も、絶縁抵抗測定手段2の一方の電極2aが個別ハウジング12に、他方の電極2bが絶縁軸受47の外輪60の母材部分60bにそれぞれ電気的に接続される。絶縁抵抗測定手段2の他方の電極2bが、蓋部材16に軸方向に向けて貫通させた貫通孔16bに絶縁部材からなるスリーブ26を嵌合させ、このスリーブ26内を経て上記外輪60の内径面に臨ませることにより外輪母材部分60bに接触させていることは、先の絶縁抵抗測定手段1の場合と同じである。上記一方の電極2aも、スリーブ7および絶縁体9に渡って孔72(図4)を設けて個別ハウジング12に接続しても良い。
なお、上記孔71,72は、必要であれば、さらに個別ハウジング11,12および絶縁軸受47,48の絶縁部分(絶縁被覆)59a,60aに渡って貫通させ、上記他方の電極1a,2aをこの孔71,72から外輪59,60の母材に接続しても良い。上記孔71,72は、電極1a,2aまたは電極1b,2bの挿通に用いない場合、形成しなくて良い。
【0021】
また、この絶縁性能試験機では、その軸3に対してラジアル荷重を負荷させる負荷手段27が設置されている。この荷重負荷手段27による軸3への荷重の負荷は、軸受装備実機である図10の主電動機42におけるロータ49の自重の影響を模して与えるものである。この荷重負荷手段27は、上記軸3に軸受28を介して回転自在に設けられた環体29と、この環体29に継手30を介して進退ロッド31が連結される油圧シリンダ等の駆動源32とで構成される。駆動源32は基台4のベースフレーム5に固定され、その進退ロッド31を後退移動させることにより軸3へ荷重が負荷される。継手30は、連結およびその解除が自在なものであり、この継手30には、軸3に負荷される荷重を測定するロードセル等の荷重測定手段(図示せず)が組み込まれる。
【0022】
軸3の一端部は、継手33を介してモータからなる回転駆動源34の回転駆動軸35に連結される。継手33は、連結および結合が自在なものである。
この継手33、および上記ラジアル荷重の負荷手段27における継手30は、絶縁抵抗測定手段1,2により絶縁性能の測定時には結合が解除されるものである。この絶縁性能試験機を、軸3の回転中の軸受絶縁測定可能なものとする場合は、継手30,33において、軸3側と基台側との絶縁を行うための絶縁体(図示せず)を介在させる。
【0023】
次に、上記構成の絶縁性能試験機による絶縁軸受46,47の絶縁性能試験について説明する。この試験は、回転負荷用の回転駆動源34の回転駆動軸35を継手33で軸3に連結し、荷重負荷手段27でラジアル荷重を負荷した状態で回転駆動源34により軸3を回転させた後に行われる。この回転駆動により、軸受46,47に封入したグリースの移動や、軸受46,47の発熱等が生じ、使用時に近似した状態となる。測定時には、継手30,33を分離して、荷重負荷手段27の進退ロッド31や、回転駆動源34の回転駆動軸35を、軸3から電気的に切り離す。この状態で、絶縁抵抗測定手段1により第1の絶縁軸受46の絶縁性能を、また絶縁抵抗測定手段2により第2の絶縁軸受47の絶縁性能をそれぞれ測定する。この場合に、絶縁抵抗測定手段1は、第1の絶縁軸受46における外輪59の母材部分59bと、この絶縁軸受46に対応する個別ハウジング11との間の絶縁抵抗を測定する。また、絶縁抵抗測定手段2は、第2の絶縁軸受47における外輪60の母材部分60bと、この絶縁軸受47に対応する個別ハウジング12との間の絶縁抵抗を測定する。
【0024】
このように、この構成の絶縁性能試験機によると、鉄道車両の主電動機42に組み込まれる絶縁軸受46,47に対して、使用状態をシュミレートして絶縁性能を評価することができ、かつ個々の絶縁軸受46,47の絶縁性能の評価が行える。特に、軸受装備実機である主電動機42の軸受周辺部を模して、絶縁軸受46,47の幅面を覆う蓋部材13〜16を個別ハウジング11,12に取付けているので、実機に使用した状態に近い状態で絶縁性能を評価できる。また、蓋部材13〜16の軸受対向面にはグリースポケット13a〜16aを設けているので、軸受装備実機により近似した装備状態で絶縁性能を評価できる。
個別ハウジング11,12と基台4との間の絶縁を行う場合、絶縁シートからなる絶縁体8,9をどの部分に挿入するかは絶縁性能評価の上で重要な要素であるが、この実施形態のように、絶縁部位が狭い空間になるように配置することで、ノイズによる外乱を少なくすることができる。
なお、個別ハウジング11,12や、蓋部材13〜16は、絶縁軸受46,47のサイズに応じた種々のものを準備しておけば、各種サイズの絶縁軸受46,47の絶縁性能の測定を行うことができる。
【0025】
なお、上記実施形態では、絶縁抵抗測定手段1,2の片方の電極1b,2bを、外輪59,60の母材部分59b,60bに電気的に接続させたが、これに代えて、図2および図4に1点鎖線で示すように、軸3あるいは軸受46,47の内輪57,58に電気的に接続しても良い。この場合、絶縁軸受46では、個別ハウジング11と軸3または内輪57の間の絶縁抵抗を測定することになる。また絶縁軸受47では、個別ハウジング12と軸3または内輪58の間の絶縁抵抗を測定することになる。
【0026】
また、上記実施形態では、軸3の回転を止めて各絶縁軸受46,47の絶縁性能を測定するようにしたが、回転駆動源34で軸3を回転させながら絶縁性能を測定しても良い。この場合には、継手30,33に絶縁体を介在させて、軸3を基台4から絶縁させる必要がある。このように、軸3を回転させながら絶縁性能を測定する場合、回転によるグリースの移動および軸受発熱の影響下で、絶縁性能が時間経過と共にどのように変化するかを評価することもできる。グリースは上記のように完全な絶縁体ではないため、回転中の絶縁測定が行えることで、グリースの影響をシュミレートしたより正確な絶縁性能評価が行える。
【0027】
図5および図6はこの発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、図1〜図4に示した第1の実施形態の絶縁性能試験機において、試験対象である絶縁軸受46,47が、セラミックス製の転動体65,66を有するものであって、この転動体65,66が絶縁軸受46,47の絶縁部分となるものである。絶縁軸受46に対応する絶縁抵抗測定手段1は、その一方の電極1bを、上記絶縁部分である転動体65よりも内輪57の部分、具体的には軸3または内輪57に電気的に接続している。また、絶縁軸受47に対応する絶縁抵抗測定手段2も、その一方の電極2bを、上記絶縁部分となる転動体66よりも内輪58の部分、具体的には軸3または内輪58に電気的に接続している。その他の構成は第1の実施形態の場合と同じである。
【0028】
この実施形態の絶縁性能試験機の場合も、鉄道車両の主電動機42に組み込まれる絶縁軸受46,47に対して、使用状態での絶縁性能を評価することができる。
【0029】
図7は、この発明の参考提案例の概略構成を示す。この参考提案例は、第1の実施形態において、基台4のスリーブ7を省略したものである。第1の実施形態における蓋部材13〜16や、回転駆動源34、荷重負荷手段27は図示を省略しているが、蓋部材13〜16はこの参考提案例においても第1の実施形態と同様に設けても、また省いても良い。第1の絶縁軸受46の外輪59は、個別ハウジング11を介して基台4を構成する一方のコラム体6に支持され、コラム体6と個別ハウジング11の間は絶縁体8で電気的に分離される。第2の絶縁軸受47の外輪60は、個別ハウジング12を介して基台4を構成する他方のコラム体6に支持され、コラム体6と個別ハウジング12の間は絶縁体9で電気的に分離される。絶縁軸受46に対応する絶縁抵抗測定手段1は、個別ハウジング11と、絶縁軸受46の外輪母材部分59bの間の絶縁抵抗を測定する。絶縁軸受46に対応する絶縁抵抗測定手段2は、個別ハウジング12と、絶縁軸受47の外輪母材部分60bの間の絶縁抵抗を測定する。その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0030】
図8は、この発明の他の参考提案例を示す。この参考提案例でも、第1の実施形態において、基台4のスリーブ7を省略している。この参考提案例では、試験対象の各絶縁軸受46,47の外輪をそれぞれ嵌合させる個別ハウジング11A、12Aがコラム状に設けられ、これら個別ハウジング11A,12Bの下端面と基台4のベースフレーム5の上面との間に絶縁シートからなる絶縁体8,9を介在させている。個別ハウジング11A,12Bは、コラム状の個別ハウジング本体に、軸受嵌合部材11Aa,12Aaを取付けたものとされている。第1の実施形態における蓋部材13〜16は、図示を省略しているが、この参考提案例においても第1の実施形態と同様に設けても、また省いても良い。軸3を回転駆動する回転駆動源34および荷重負荷手段27は第1の実施形態と同様に設けており、さらに軸3の絶縁軸受47設置側の端部にも、別の荷重負荷手段27Aを連結している。負荷手段27,27Aは同一構造のものである。その他の構成は第1の実施形態の場合と同様である。絶縁軸受46に対応する絶縁抵抗測定手段1は、個別ハウジング11と、絶縁軸受46の外輪母材部分59bの間の絶縁抵抗を測定する。絶縁軸受46に対応する絶縁抵抗測定手段2は、個別ハウジング12と、絶縁軸受47の外輪母材部分60bの間の絶縁抵抗を測定する。
【0031】
なお、上記実施形態では、各絶縁軸受46,47に対応する個別ハウジング11,12と基台との間に絶縁体8,9を介在させた構成について示したが、これに代えて、各絶縁軸受の外輪をそれぞれ嵌合させる個別ハウジングと、両個別ハウジングの間に介在させた絶縁体とを設けたものとしても良い。例えば、図1に示す第1の実施形態において、いずれか片方の個別ハウジング11,12と基台4との間の絶縁体8,9を省略しても良い。その場合、その省略側の個別ハウジング11,12と基台4とでなるものが、この変形例で言う個別ハウジングとなる。
【0032】
【発明の効果】
この発明の絶縁軸受の絶縁性能試験機は、複数の絶縁軸受の内輪を嵌合させる共通の軸と、各絶縁軸受の外輪をそれぞれ嵌合させる複数の個別ハウジングと、これら個別ハウジングを設置する共通の基台と、上記各個別ハウジングと基台との間に介在させた絶縁体と、上記各絶縁軸受に対してそれぞれ設けられてその絶縁軸受における絶縁部分よりも内径側の部分とその絶縁軸受に対応する個別ハウジングとの間の絶縁抵抗を測定する複数の絶縁抵抗測定手段とを備え、上記基台は、立設された一対のコラム体と、両コラム体にまたがって横架されたスリーブとを有し、このスリーブの両端部分でその内径孔内に、上記絶縁体を介在させて各個別ハウジングを設置したため、実機使用状態に近似した状態での個々の絶縁軸受の絶縁性能を評価することができる。特に、絶縁軸受の幅面を覆う蓋部材を設け、これにグリースポケットを設けた場合は、グリースの封入、蓋の取付状態等の実機により近似した状態での絶縁性能の評価が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる絶縁軸受の絶縁性能試験機の一部破断正面図である。
【図2】同試験機の一部の拡大断面図である。
【図3】同試験機における蓋部材の側面図である。
【図4】同試験機の他の一部の拡大断面図である。
【図5】この発明の他の実施形態にかかる絶縁軸受の絶縁性能試験機の一部の拡大断面図である。
【図6】同試験機の他の一部の拡大断面図である。
【図7】 この発明の参考提案例にかかる絶縁軸受の絶縁性能試験機の概略構成を示す断面図である。
【図8】 この発明の他の参考提案例にかかる絶縁軸受の絶縁性能試験機を示す断面図である。
【図9】軸受装備実機である主電動機を装備した鉄道車両台車の概略正面図である。
【図10】同主電動機の拡大断面図である。
【図11】従来例の説明図である。
【符号の説明】
1,2…絶縁抵抗測定手段
3…軸
4…基
6…コラム体
7…スリーブ
,9…絶縁体
11,12…個別ハウジング
13〜16…蓋部材
13a〜16a…グリースポケット
46,47…絶縁軸受
57,58…内輪
59,60…外輪
59a,60a…外輪の絶縁被覆(絶縁部分)
59b,60b…外輪の母材部分
65,66…転動体(絶縁部分)

Claims (8)

  1. 複数の絶縁軸受の内輪を嵌合させる共通の軸と、各絶縁軸受の外輪をそれぞれ嵌合させる複数の個別ハウジングと、これら個別ハウジングを設置する共通の基台と、上記各個別ハウジングと基台との間に介在させた絶縁体と、上記各絶縁軸受に対してそれぞれ設けられてその絶縁軸受における絶縁部分よりも内径側の部分とその絶縁軸受に対応する個別ハウジングとの間の絶縁抵抗を測定する複数の絶縁抵抗測定手段とを備え、上記基台は、立設された一対のコラム体と、両コラム体にまたがって横架されたスリーブとを有し、このスリーブの両端部分でその内径孔内に、上記絶縁体を介在させて各個別ハウジングを設置した絶縁軸受の絶縁性能試験機。
  2. 請求項1において、上記絶縁軸受が外輪の母材の外径面および幅面に上記絶縁部分である絶縁被覆を有するものであり、上記絶縁抵抗測定手段に導通させる上記絶縁軸受の絶縁部分よりも内径側の部分が、上記絶縁軸受の外輪の母材部分である絶縁軸受の絶縁性能試験機。
  3. 請求項1において、上記絶縁軸受が外輪の母材の外径面および幅面に上記絶縁部分である絶縁被覆を有するものであり、上記絶縁抵抗測定手段に導通させる上記絶縁軸受の絶縁部分よりも内径側の部分が、上記絶縁軸受の内輪または上記軸である絶縁軸受の絶縁性能試験機。
  4. 請求項1において、上記絶縁軸受がセラミックス製の転動体を有し、この転動体が上記絶縁部分となるものであり、上記絶縁抵抗測定手段に導通させる上記絶縁軸受の絶縁部分よりも内径側の部分が、上記絶縁軸受の内輪または上記軸である絶縁軸受の絶縁性能試験機。
  5. 請求項1ないし請求項4にいずれかにおいて、上記複数の絶縁軸受を備える軸受装備実機の軸受周辺部を模して上記絶縁軸受の幅面を覆う蓋部材を上記個別ハウジングに取付けた絶縁軸受の絶縁性能試験機。
  6. 請求項5において、上記蓋部材の軸受対向面にグリースポケットを設けた絶縁軸受の絶縁性能試験機。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれかにおいて、上記各個別ハウジングと基台との間に介在させた絶縁体が絶縁シートである絶縁軸受の絶縁性能試験機。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれかにおいて、共通の軸を回転させる回転駆動手段、および上記共通の軸が回転している状態で上記共通の軸にラジアル負荷を作用させる荷重負荷手段を設けた絶縁軸受の絶縁性能試験機。
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