JP4369116B2 - コンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法および微量元素製剤 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明はコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法および微量元素製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
長期にわたる高カロリー輸液療法により、鉄や亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、コバルト、セレンなどの人体必須微量元素の欠乏症が引き起こされることがあるのはよく知られている。この欠乏症の発症予防のため、前記必須微量元素を含有した静脈注射用の微量元素製剤が用いられる。そして、当該微量元素製剤には、鉄コロイドとして安定化したコンドロイチン硫酸ナトリウム・鉄コロイドが配合される。
【0003】
コンドロイチン硫酸・鉄コロイドは、通例、コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液に、塩化第二鉄水溶液と水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液を交互に混合撹拌して製造される。図5は、従来のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法を示すフロー図、図6は当該製造工程における混合液のpHの推移およびコロイド平均粒子径の推移の一例(従来例1に相当する。)を示した図である。この方法では、混合液のpHが約7〜14のアルカリ側において、所定濃度のコンドロイチン硫酸ナトリウムの水溶液に塩化第二鉄水溶液とアルカリ水溶液とを交互に加えて攪拌混合し、最後に混合液のpHが7〜10となるように調整している。より具体的に説明すれば、コンドロイチン硫酸ナトリウム水溶液に、所定量の塩化第二鉄水溶液を添加した後、所定量のアルカリを加えて液のpHを7以上の中性付近に初期調整した上で、さらに所定量のアルカリを加え、鉄コロイドが十分に形成される強アルカリ性(pH12付近)としている。そして、必要とされる鉄イオン含量となるまで、塩化第二鉄水溶液とアルカリ水溶液とを交互に添加している。この間、塩化第二鉄混合後のpHは約7〜10の中性に近いアルカリ域にあり、また、アルカリ混合後のpHは、塩化第二鉄混合後のpHよりも高い約12〜14の強アルカリ域にある。このように、混合液のpHが7〜14のアルカリ側において、約10〜14の強アルカリ域と約7〜10のアルカリ域との間を交互に推移しながら、平均粒子径が100nm以下のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドが製造される。なお、この製造方法では、初期調整として、アルカリを添加してpHをひとまず7〜10に調整した後、さらにアルカリを添加している。これは、製造工程全体を通じて毎回添加するアルカリ量および塩化第二鉄量を一定にするためであって、初回アルカリを加えた際に混合液のpHを当該範囲に調整しておくと、以後pH7〜14の範囲内においてアルカリと塩化第二鉄の添加混合を容易に行える。
【0004】
一方、特公昭36−15296号公報(特許文献1)や特開2000−178181号公報(特許文献2)、特開2002−193816号公報(特許文献3)などにもその製造方法が記載されているが、最終調整pHや製造工程中におけるpH範囲が記載されているにすぎず、その詳細な製造方法については触れられてはいない。
【0005】
【特許文献1】
特公昭36−15296号公報、第1〜2頁
【特許文献2】
特開2000−178181号公報、第3頁
【特許文献3】
特開2002−193816号公報、第4頁
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、原料となるコンドロイチン硫酸ナトリウムの品質が異なると、例えば図7(従来例2に相当する。)に示すように、上記方法では平均粒子径100nm以下のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドが得られないことが分かってきた。すなわち、現在まで使用されてきたコンドロイチン硫酸のほとんどがウシ由来のものであったが、原料の入手困難などの理由からサメやサケなどウシ以外の由来のものに移りつつあり、これらウシ由来以外のコンドロイチン硫酸を用いた場合、上記の製造方法では平均粒子径が100nm、場合によっては200nmを超えるものしか得られない場合がある。このような大きな平均粒子径のものは静脈注射用の製剤原料として不適切である。
【0007】
そこで、本発明者らが鋭意努力したところ、コンドロイチン硫酸ナトリウムを溶解した後、初期調整時のpHを従来よりも酸性側にした後、強アルカリ側と酸性側とで混合液のpHが推移するようにアルカリと塩化第二鉄とを交互に添加調整することで、所望する100nm以下の平均粒子径であるコンドロイチン硫酸・鉄コロイドが得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法は、コンドロイチン硫酸の水溶液に、塩化第二鉄およびアルカリを混合攪拌して微量元素製剤用のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドを製造する方法において、前記コンドロイチン硫酸が、分子量(プルラン標準品を用いた液体クロマトグラフ法による)が15,000〜40,000で、その二糖組成比としてΔDi-6Sが50〜85重量%かつΔDi-4Sが10〜30重量%および2硫酸totalが5〜15重量%であって、前記コンドロイチン硫酸の水溶液に、塩化第二鉄を加えた後、アルカリを加えて撹拌混合して液のpHを3〜7に初期調整した後、アルカリ添加後のpHが7〜14のアルカリ側、塩化第二鉄添加後のpHが3〜7の酸性側となるようにアルカリおよび塩化第二鉄を添加混合することを特徴としている。
【0010】
また、本発明のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法は、前記アルカリが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウムのいずれかであることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法は、上記製造方法において、得られたコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径が100nm以下であることを特徴としている。
【0013】
本発明の微量元素製剤は、上記本発明のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法により得られたコンドロイチン硫酸・鉄コロイドを含有することを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の製造方法を示すフロー図であり、図2〜4はそれぞれ当該製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を示す図(実施例1〜3に相当する。)である。以下、各図を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の製造方法は、コンドロイチン硫酸の水溶液に所定量の塩化第二鉄を加えた後、アルカリを加えて攪拌混合して液のpHを3〜7の酸性側に初期調整した後、液のpHが3〜14の範囲内でアルカリおよび塩化第二鉄を添加混合することを特徴としている。より具体的に言うと、初期調整時における混合液のpHを3〜7の酸性側に一旦調整した後、さらにアルカリを加えて混合液のpHを7〜14のアルカリ側とし、再び塩化第二鉄を添加した場合に混合液のpHが3〜7の酸性側となるようにアルカリと塩化第二鉄を添加混合することを特徴とする。
【0016】
本発明の製造方法は、従来の方法では適用できなかったサメ由来、サケ由来のものに適用でき、特にサメ由来やサケ由来のコンドロイチン硫酸のように、以下に述べる不飽和二糖の6位に硫酸が結合したΔDi-6Sを多く含有するものを用いる場合に好適である。
【0017】
コンドロイチン硫酸は、二糖体であるN−アセチルコンドロイシンを基本単位とするムコ多糖の硫酸化体であって、通常、二糖単位当たり1モルの硫酸が結合している。また、コンドロイチナーゼ処理は、種々の不飽和二糖を生成し、不飽和二糖の4位に硫酸が結合したもの(ΔDi-4S)、6位に硫酸が結合したもの(ΔDi-6S)、不飽和二糖に2モルの硫酸が結合したもの(ΔDi-diSD ,ΔDi-diSB ,ΔDi-diSE)などを生成する。これらのうち、ΔDi-6Sを多く含むコンドロイチン硫酸は通常タイプCと呼ばれ、ΔDi-4Sを多く含むコンドロイチン硫酸は通常タイプAと呼ばれる。
【0018】
コンドロイチン硫酸は、通常水に溶解しやすい塩の形で用いられ、コンドロイチン硫酸のナトリウム塩が汎用される。その分子量は制約されるものではないが、好ましくは10,000〜50,000、さらに好ましくは15,000〜40,000、より望ましくは20,000〜25,000である。大きな分子量のものは得られるコロイド粒子の平均粒子径が大きくなり、小さすぎるとコロイド粒子の安定性が低下する傾向にある。
【0019】
また、本発明においては、ΔDi-6Sを多く含有するいわゆるタイプCが好ましく用いられるが、その中でもある一定範囲の二糖体組成比を有するコンドロイチン硫酸ナトリウム、特に一定範囲量の二硫酸結合体(2硫酸total)を含有するコンドロイチン硫酸が好ましく用いられる。同じタイプCのものであっても、二硫酸結合体含量が多い場合には得られたコロイド粒子の平均粒子径が大きくなる傾向にあり、10重量%を超えると得られたコロイド粒子の平均粒子径が100nmを上回る場合がある。
【0020】
従って、これらを勘案すれば、本発明に最適なコンドロイチン硫酸は、分子量が15,000〜40,000、二糖組成比としてΔDi-4Sの含有量が10〜30重量%、ΔDi-6Sの含有量が50〜85重量%、かつ2硫酸totalすなわち結合位置を問わず2モルの硫酸が結合した二硫酸結合体(本発明においては、ΔDi-diSD ,ΔDi-diSB ,ΔDi-diSEの合計量をいう。)含有量が5〜15重量%、さらに望ましくは5〜10重量%のものである。なお、コンドロイチン硫酸の分子量や二糖組成比は実施例に記載された方法により測定されたものを意味する。
【0021】
本発明の製造方法は、従来方法とほぼ同様の製造方法であるが、異なるのはコンドロイチン硫酸の溶液にアルカリを加えて初期調整時における混合液のpHを3〜7の中性から酸性側にする点と、アルカリを加えて強アルカリ側にした混合液に、所定量の塩化第二鉄を加えて液のpHを再び3〜7の酸性側にする点である。このとき用いられるアルカリは特に制約されるものではないが、得られたコンドロイチン硫酸・鉄コロイドが製剤原料として用いられる観点から水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、さらに望ましくは水酸化ナトリウムである。もちろん、医療用薬剤に用いられるアルカリであれば、これらに限定されるものではない。
【0022】
引き続き本発明の製造方法についてさらに具体的に説明する。まず、コンドロイチン硫酸ナトリウムを水に溶解する。その初期濃度は約0.1〜5w/v%であり、好ましくは約0.5〜3w/v%である。これに所定量の塩化第二鉄を加え攪拌混合する。一回に加える塩化第二鉄量は、所望する鉄イオンの最終含有量および添加混合する回数によって適宜定められる。そして、アルカリを添加して液のpHを酸性域である3〜7、好ましくは4〜6の範囲内に初期調整する。その後、さらにアルカリを添加して混合する。このときの混合液のpHを7〜14、好ましくは10〜13のアルカリ域に調整する。このとき、本発明において重要なのは、コンドロイチン硫酸ナトリウムの水溶液に、多量のアルカリを一度に加えて液を(強)アルカリ性にせず、多くない量のアルカリを加えて液を酸性側に維持することである。すなわち、コンドロイチン硫酸ナトリウムを水に溶解した液のpHは通例3〜4の酸性域にあるが、本発明では最初に酸性域を保てる程度でアルカリを加え、液のpHを溶解時のpHよりもややアルカリ側にすることが必要である。そうしないと、次工程から添加するアルカリ量および塩化第二鉄量を変更する必要が生じる。
【0023】
アルカリ側にした後再び所定量の塩化第二鉄を加え、混合液のpHを3〜7、好ましくは4〜6の酸性域に調整する。このとき、先に加えたのとほぼ同量の塩化第二鉄を加えればこのpH域内に液のpHを調整できる。そして、再びアルカリを加えて、混合液のpHを7〜14、好ましくは10〜13のアルカリ域に調整する。
【0024】
こうして、初期調整した後からアルカリを加えては液のpHを7〜14、好ましくは10〜13のアルカリ側にし、その後塩化第二鉄を加えては液のpHを3〜7、好ましくは4〜6の酸性側にしながら、必要量の塩化第二鉄を加える。そして、必要量の塩化第二鉄を加え終わると、混合液のpHを最終目標値である7〜10にアルカリを加えて調整し、平均粒子径100nm以下のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドを調製する。その後、必要があれば液量調整、加熱滅菌を行う。
【0025】
このように本発明では、初期調整時にアルカリを添加混合して混合液のpHを3〜7、好ましくは4〜6の酸性側に調整した後、pH3〜14の範囲内でアルカリと塩化第二鉄を交互に加えているので、従来のウシとは異なるサメやサケ等を由来とするコンドロイチン硫酸を用いても、ほぼ従来と同じ工程にて100nm以下の平均粒子径のコンドロイチン硫酸・コロイド鉄を得ることができる。
【0026】
添加する塩化第二鉄およびアルカリは、通常各々水溶液として用いられる。塩化第二鉄水溶液の濃度および一回当たりの添加量は、好ましくは毎回の添加量がほぼ等量となるように定められ、アルカリ添加後に塩化第二鉄を加えた後の混合液のpHが3〜7、好ましくは4〜6の範囲内となるように設定される。また、アルカリ水溶液の濃度および添加量は、塩化第二鉄を加えた後の混合液のpHが7〜14、好ましくは10〜13の範囲内になるように設定される。こうすれば、第2回目以降塩化第二鉄を加え攪拌混合した後には、混合液のpHは7未満の酸性側に傾き、アルカリを加えた際には、混合液のpHは7より高いアルカリ側に傾く。なお、塩化第二鉄水溶液および水酸化ナトリウム水溶液の濃度や一回当たりの添加量は従来例を参考にして容易に決定でき、初期調整時のpHを調整さえすれば原料の変更に容易に対応できる。
【0027】
【実施例】
以下、次の実施例に基づいて本発明についてさらに詳細に説明する。
【0028】
(実施例1)
コンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-791,サメ由来)の3w/v%水溶液900mLに、塩化第二鉄水溶液(Fe2Cl3・6H2O 7.9w/v%)を45mL加え攪拌した(図2:Fe-1)。次に、水酸化ナトリウム水溶液(10.6w/v%)を10mL加えて攪拌して初期調整をした後(図2:OH-1)、さらに、同濃度の水酸化ナトリウム水溶液15mLを加えて攪拌した(図2:OH-2)。なお初期調整した後のpHは約4.0であった。そして、先と同濃度の塩化第二鉄水溶液を45mL加えた後(図2:Fe-2)、水酸化ナトリウム水溶液15mLと塩化第二鉄水溶液45mLをそれぞれ6回交互に添加混合し(図2:OH-3,Fe-3・・・OH-8,Fe-8)、水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合液のpHを7.7に調整した上で最後に水を加えて全量を1.5Lとした。この間、操作は常温下で行い、回転数3,500rpmで攪拌をし続けた。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図2に示す。
【0029】
用いたコンドロイチン硫酸ナトリウムは、平均分子量21,500、ΔDi-6Sが74.6重量%、ΔDi-4Sが16.5重量%、2硫酸totalが7.3重量%であった。
【0030】
〔コンドロイチン硫酸ナトリウムの平均分子量の測定〕
コンドロイチン硫酸ナトリウム20mgを精密に量り、移動相で正確に10mLとして試料溶液とした。別にプルラン標準品(分子量20,000)20mgを精密に量り、移動相で正確に20mLとして標準溶液とした。試料溶液および標準溶液300μLにつき、次の操作条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、光散乱データ処理 GPC LALLSプログラムにより試料の平均分子量を算出した。
試験条件
HLC-8120GPCシステム
検出器:示差屈折計、光散乱光度計
カラム:TOSOH TSK-GEL G3000PWXL 7.8mm×300mm
カラム温度:40℃
移動相:0.2mol/L NaNO3水溶液
流量:0.8mL/min
【0031】
〔不飽和二糖の測定〕
コンドロイチン硫酸ナトリウム5mgにコンドロイチナーゼABC溶液0.5mLを加え溶解させ、37℃の恒温槽中で4時間反応させた。反応後、沸騰水浴中で1分間加熱したものを試料溶液とした。別に標準となるΔDi-HA、ΔDi-0S、ΔDi-UA2S、ΔDi-6S、ΔDi-4S、ΔDi-diSD ,ΔDi-diSBおよびΔDi-diSEそれぞれ250μgを0.05Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)0.25mLに溶解させ、それぞれ20μLを合わせて標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10μLにつき、下記の操作条件で液体クロマトグラフ法により試験した。
試験条件
検出器:SPD-10A 測定波長:232nm
カラム:TOSOH TSKgel Amido80(4.6×250mm)
温度:70℃
移動相:アセトニトリル/メタノール/ギ酸アンモニウム緩衝液=60/25/15
流量:1mL/min
Integrator:Class LC10
〔試液の調整〕
コンドロイチナーゼABC溶液:コンドロイチナーゼABC(生化学工業社製)に0.05Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を加えて溶かし、2U/mLとする。
ギ酸アンモニウム緩衝液:0.5mol/Lギ酸アンモニウム溶液にギ酸を加えてpH4.8に調整する。
【0032】
〔コンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径の測定〕
10mmのセルにコンドロイチン硫酸・鉄コロイド溶液を1mL入れ、蒸留水を加えて4mLとし試料溶液とした。この試料溶液を光散乱光度計 ELS8000 (大塚電子株式会社)にて平均粒子径を測定した。ただし、濃度が薄いまたは濃い場合には、試料をさらに加えるかまたは希釈して再度測定した。
【0033】
(実施例2)
平均分子量24,100、ΔDi-6Sが68.4重量%、ΔDi-4Sが20.5重量%、2硫酸totalが9.2重量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-794,サメ由来)1.5w/v%の水溶液1,800mLに、塩化第二鉄水溶液(Fe2Cl3・6H2O 7.9w/v%)を45mL加え、攪拌した(図3:Fe-1)。次に、水酸化ナトリウム水溶液(10.6w/v%)を12mL加えて攪拌して初期調整をした後(図3:OH-1)、最終pHを約8.1に調整すると共に全量を水で3Lとした他は実施例1と同様に行った。なお初期調整後のpHは約4.4であった。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図3に示す。
【0034】
(実施例3)
平均分子量24,100、ΔDi-6Sが56.0重量%、ΔDi-4Sが28.3重量%、2硫酸totalが10.3重量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-790,サメ由来)3.0w/v%の水溶液を用い、最終pHを約7.9に調整した以外は実施例1と同様に行った。なお初期調整後のpHは約4.0であった。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図4に示す。
【0035】
(実施例4)微量元素製剤の製造
実施例1で得たコンドロイチン硫酸・鉄コロイド溶液5Lに水13Lを加えた。この溶液に、攪拌しながら2w/v%塩化マンガン溶液0.1L、35w/v%硫酸亜鉛溶液0.5L、25w/v%硫酸銅溶液0.05Lおよび17w/v%ヨウ化カリウム溶液0.01Lを順次加えた。さらに1%w/v水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整し、蒸留水で全量を20Lにした。この溶液を2mLずつガラス容器に充填・密封した後、加熱滅菌して微量元素製剤を得た。この製剤中のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径は55nmであった。この製剤を60℃で3週間保存すると共に1週間経過毎に平均粒子径および外観試験を実施したところ、いずれの時点においても製造直後と差はほとんどなく、安定な微量元素製剤が得られた。
【0036】
(従来例1)
コンドロイチン硫酸ナトリウム(生化学工業株式会社製、Lot.BN-3342,ウシ由来)の3w/v%水溶液900mLに、塩化第二鉄水溶液(Fe2Cl3・6H2O 7.9w/v%)を45mL加え、攪拌した(図6:Fe-1)。次に、水酸化ナトリウム水溶液(10.6w/v%)を15mL加えて攪拌して初期調整をした後(図6:OH-1)、さらに同濃度の水酸化ナトリウム水溶液15mLを加えて攪拌した(図6:OH-2)。なお初期調整した後のpHは8.0であった。そして、先と同濃度の塩化第二鉄水溶液を45mL加えた後(図6:Fe-2)、水酸化ナトリウム水溶液15mLと塩化第二鉄水溶液45mLをそれぞれ6回交互に添加混合し(図6:OH-3,Fe-3・・・OH-8,Fe-8)、水酸化ナトリウム水溶液を加えて混合液のpHを7.9に調整した上で最後に水を加えて全量を1.5Lとした。この間、操作は常温下で行い、回転数3,500rpmで攪拌をし続けた。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図6に示す。
【0037】
用いたコンドロイチン硫酸ナトリウムは、平均分子量19,000、ΔDi-6Sが33.0重量%、ΔDi-4Sが61.0重量%、2硫酸totalが1.0重量%であった。
【0038】
(従来例2)
平均分子量21,500、ΔDi-6Sが74.6重量%、ΔDi-4Sが16.5重量%、2硫酸totalが7.3重量%のコンドロイチン硫酸ナトリウム(マルハ株式会社製、Lot.PUC-791,サメ由来)を用いた以外は、最終pHを約9.7に調整した以外は従来例1と同様に行った。なお初期調整後のpHは約9.2であった。この製造工程におけるpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を図7に示す。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、従来法では製造できなかったウシ以外の由来によるコンドロイチン硫酸を用いて、平均粒子径100nm以下のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドを製造できる。また、当該方法は、従来法とほぼ同様な手順であり、用いる塩化第二鉄水溶液とアルカリ水溶液の濃度調整や添加量調整をして混合液のpH調整を行うだけで、コンドロイチン硫酸原料の変更に容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造工程を示すフロー図である。
【図2】実施例1における混合液のpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を示す図である。
【図3】実施例2における混合液のpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を示す図である。
【図4】実施例3における混合液のpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を示す図である。
【図5】従来の製造工程を示すフロー図である。
【図6】従来例1における混合液のpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を示す図である。
【図7】従来例2における混合液のpHの推移とコロイド平均粒子径の推移を示す図である。
Claims (4)
- コンドロイチン硫酸の水溶液に、塩化第二鉄およびアルカリを混合攪拌して微量元素製剤用のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドを製造する方法において、
前記コンドロイチン硫酸が、分子量(プルラン標準品を用いた液体クロマトグラフ法による)が15,000〜40,000で、その二糖組成比としてΔDi-6Sが50〜85重量%かつΔDi-4Sが10〜30重量%および2硫酸totalが5〜15重量%であって、
前記コンドロイチン硫酸の水溶液に、塩化第二鉄を加えた後、アルカリを加えて撹拌混合して液のpHを3〜7に初期調整した後、アルカリ添加後のpHが7〜14のアルカリ側、塩化第二鉄添加後のpHが3〜7の酸性側となるようにアルカリおよび塩化第二鉄を添加混合することを特徴とするコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法。 - 前記アルカリが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウムのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法。
- 得られたコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径が100nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの製造方法により得られたコンドロイチン硫酸・鉄コロイドを含有することを特徴とする微量元素製剤。
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