JP4369093B2 - シート状パックおよびそれに用いるシート状基材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、美容効果を与える等の目的で肌に貼付して用いられるシート状パックおよびそれに用いるシート状基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、顔面に、美容成分を含むパック剤を略均一な厚みに塗布し、一定時間保持して肌に美容成分を浸透させたのちこれを剥がすパック施術が行われている。また、最近は、所定形状のシート状基材に美容液を含浸保持させたシート状パックが出回っており、このシート状パックを広げて顔に貼着するだけで、簡単にパックすることができるとして賞用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記シート状基材としては、従来から、凹凸のない不織布等の柔軟シートが用いられているが、従来の柔軟シートでは、美容液等の湿潤物質の含浸保持量に限界があり、肌に湿潤物質をたっぷり供給することができないという問題がある。
【0004】
そこで、シート状基材として、比較的厚地で空隙率の高い不織布を用いたり、メッシュ状の不織布を用いたものも出回っているが、そのようなシート状パックは、取り扱い時に液垂れがひどく、湿潤物質の実質的な含浸保持量はかえって少なくなるという問題がある。また、殆どのシート状パックは、何回か折り畳んでコンパクトにした状態で個包されており、使用時には、これを広げて顔に貼りつける動作が必要であるが、湿潤物質の含浸保持量が多いものは、折り畳んだ状態から広げにくく、シート状基材が破れやすいという問題もある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、湿潤物質の含浸保持量が高く、しかも液垂れせず、取り扱いやすいシート状パックおよびそれに用いるシート状基材の提供をその目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、シート状基材に湿潤物質を含浸保持させた状態で包装袋によって個包されており、使用時には上記包装袋から取り出して顔面に貼付して用いるシート状パックであって、上記シート状基材が、単糸太さ0.5〜2.0デシテックスの繊維を用いた、目付30〜150g/m2 、厚み(T)0.3〜1.50mmの不織布からなる柔軟シートからなり、上記柔軟シートの少なくとも表面に、開口形状が直径0.50〜3.00mmの円形もしくはそれに近似する形状で、深さ(S)が0.05〜1.45mmに設定された、湿潤物質保持用の凹部が、エンボス加工により多数分布形成されており、上記シート状基材に対し湿潤物質が、0.07〜0.20g/cm2 の割合で含浸保持されているシート状パックを第1の要旨とする。
【0007】
また、本発明は、上記シート状パックのなかでも、特に、上記柔軟シートに形成される凹部が、8〜150個/cm2 の密度で分布しているシート状パックを第2の要旨とし、上記湿潤物質が、水もしくは肌への有効成分を含む液体であるシート状パックを第3の要旨とする。
【0008】
そして、本発明は、上記第1の要旨であるシート状パックに用いられるシート状基材であって、単糸太さ0.5〜2.0デシテックスの繊維を用いた、目付30〜150g/m2 、厚み(T)0.3〜1.50mmの不織布からなる柔軟シートからなり、上記柔軟シートの少なくとも表面に、開口形状が直径0.50〜3.00mmの円形もしくはそれに近似する形状で、深さ(S)が0.05〜1.45mmに設定された、湿潤物質保持用の凹部が、エンボス加工により多数分布形成されており、湿潤物質を、0.07〜0.20g/cm2 の割合で含浸保持しうるシート状基材を第4の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、上記シート状基材のなかでも、特に、上記柔軟シートが、セルロース系繊維不織布からなるシート状基材を第5の要旨とし、上記柔軟シートに形成される凹部が、8〜150個/cm2 の密度で分布しているシート状基材を第6の要旨とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0011】
図1は、本発明のシート状パックの一実施の態様を示している。このシート状パックは、セルロース繊維不織布(目付68g/m2 )からなる略円形のシート状基材1に、美容液2を含浸保持させたもので、顔面全体を覆うように広げて顔に貼り付けることにより、肌に、美容液に含有される有効成分を浸透させて、肌にうるおいとはりを与えるようになっている。
【0012】
上記シート状基材1は、その模式的な断面図である図2に示すように、厚みTが0.50mmで、表面全体に、エンボス加工により微細な凹部3が多数分布形成されており、上記凹部3の内部まで含む全体に、美容液2が含浸保持されている。
【0013】
上記凹部3は、その開口形状が直径2.00mmの円形で、深さSが0.20mmに設定されている。そして、上記凹部3の底面は、非常に薄くなってフィルム化している。また、上記凹部3は、互いに均等な間隔で規則的に分布形成されており、その分布密度は、20個/cm2 に設定されている。
【0014】
上記シート状パックによれば、従来品では考えられないほどたっぷりの量の美容液2を含浸保持させることができ、しかも包装袋からの取り出し時や顔面への貼付時に液垂れすることがない。ちなみに、この例では、シート状基材1に対し、約0.07g/cm2 の割合で美容液2(比重1.01)を含浸保持することができる。
【0015】
また、このシート状パックは、通常、図1に示すように、凹部3が形成された面を内側にして、全体を、折り目Pで2つ折したのち、図3(a)に示すように、折り目Qで2つ折し、さらに、図3(b)に示すように、折り目Rで2つ折する(目、鼻、口の切欠きは図示せず)ことにより、コンパクトな略長方形状にして個包されるが、上記シート状基材1の引張強度が、エンボス加工によって高くなっていることと、全体を2つ折したときに重なる面が互いに凹凸面となり、美容液2を含浸保持した状態であっても、重なる面がぴたっと吸いつくようにひっつかないことから、これを折り畳んだ状態から広げる際に、非常に広げやすいという効果を奏する。
【0016】
なお、本発明において、シート状基材1は、美容液2等の湿潤物質を、0.07〜0.20g/cm2 含浸保持するものでなければならず、なかでも、0.07〜0.08g/cm2 含浸保持するものが好適である。
【0017】
上記シート状基材1の材質としては、セルロース繊維不織布に限らず、従来からシート状パック用に用いられている不織布であれば、どのようなものでもよいが、なかでも、肌触り、湿潤時の風合い、引張強度の点等の理由において、上記セルロース繊維不織布が最適である。なお、上記セルロース繊維不織布であって、セルロース繊維以外の繊維、例えばポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維等の合成繊維や、他の繊維素材をその一部に配合したもの(これらを総称して「セルロース系繊維不織布」という)も、好適に用いることができる。
【0018】
また、上記シート状基材1の厚み(美容液未含浸の状態)は、シート状パックの用途、使用部位等によるが、取り扱い性、エンボス加工による凹凸賦形性等を考慮して、通常、0.30〜1.50mmに設定され、なかでも0.40〜1.00mmに設定することが好適である。そして、シート状基材1を構成する不織布に用いる繊維の単糸太さは、0.5〜2.0デシテックスに設定される。さらに、目付は30〜150g/m 2 に設定され、なかでも40〜110g/m 2 に設定することが好適である。
【0019】
さらに、シート状基材1は、1枚の不織布等からなるものに限らず、2種類以上の不織布、シート、紙、フィルム、ウェブ等を組み合わせて積層一体化したものであっても差し支えない。例えば、図4に示すように、補強的な効果を考慮して、やや剛性の高く厚みの薄い不織布4と、エンボス加工しやすい、比較的厚みの厚い不織布4′を積層一体化した積層シートにおいて、上記の例と同様にして不織布4′の表面側をエンボス加工することにより凹部3を形成して、より強度の高い、シート状基材1を得ることができる。
【0020】
そして、シート状基材1は、目的に応じて適宜の形状にすることができる。例えば、鼻や目のまわりだけ被覆する特殊形状のものや、顔の上下半分ずつを覆う形状のものを一セットにしたもの等、各種の形状をあげることができる。
【0021】
一方、上記シート状基材1に、エンボス加工によって賦形される凹部3の形状は、上記の例のように、円形か、円形に近い形状にしなければならない。すなわち、凹部3内全体に美容液2が充満しやすいからである。そして、その大きさは、開口している円の直径が0.50〜3.00mmに設定され、なかでも0.80〜2.00mmとなるような大きさに設定することが好適である。開口径が、0.50mm未満では、凹部3による美容液含浸保持量の増加率が小さく、3.00mmを超えると、開口が大きすぎて、液垂れが生じやすくなるおそれがあるからである。開口形状が円形以外の場合も、上記の大きさに近似する程度のものが好適である。
【0022】
そして、上記凹部3の深さSは、シート状基材1の厚みTにもよるが、美容液2の含浸保持能力の点から、本発明では、0.05〜1.45mmに設定され、なかでも0.05〜0.90mmに設定することが好適である。上記範囲よりも浅いと、美容液2の含浸保持量が少なすぎて、エンボス加工を施す利点が小さく、逆に、上記範囲よりも深くても、一定の効果以上をあげることができないからである。
【0023】
また、上記エンボス加工によって形成する凹部3の分布密度は、凹部3の開口形状にもよるが、通常、シート状基材1の1cm2 当たり8〜150個、なかでも10〜100個に設定することが好適である。すなわち、8個/cm2 より少ない分布密度では、凹部3の間隔が広くなりすぎて、肌に美容液を均一に供給しにくく、逆に、150個/cm2 より多い分布密度にすると、シート状基材1の取り扱いが容易でなくなるからである。なお、凹部3を表面側にのみ形成するのではなく、表裏面同時に、互いの配置が互い違いになるよう形成することもできる。
【0024】
さらに、上記の例において、シート状基材1に含浸保持させる美容液2は、肌に対し、何らかの有効成分を含有するものであれば、水溶液、エマルジョン、サスペンジョン等、どのような形態の液体であってもよい。また、保湿という点では、水そのものも効果があるので、水も美容液2として用いることができる。
【0025】
なお、本発明のシート状パックには、美容液2に限らず、咳止め等の薬理効果を備えた薬剤や、アロマテラピーに用いられる香料等、各種の湿潤物質を保持させることができる。
【0026】
【実施例1,2、比較例1】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。
【0027】
下記の表1に示す特性のシート状基材として、一辺が10cmの正方形の大きさに切り取ったものを用意した。そして、これに、比重1.01の美容液を含浸させ、液垂れしない程度に液切りして、その単位面積当たりの含浸保持量を測定した。また、美容液を含浸させた状態のシート状基材を、その凹凸面を内側にして2つ折し、さらにそれを2つ折したのち、再度元の状態に広げる動作を行い、その動作の容易性を、「◎…広げやすい ○…普通 ×…広げにくい」の3段階で評価した。これらの結果を下記の表1に併せて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、特定の構成を備えたシート状基材に、特殊な形状の凹部がエンボス加工により多数分布形成されているため、シート状基材に対し湿潤物質を、0.07〜0.20g/cm2 という、従来品では考えられないほどたっぷりと含浸保持させることができる。したがって、肌に対し、優れたパック効果を与えることができる。しかも、湿潤物質の含浸保持量が多いにもかかわらず、包装袋からの取り出し時や顔面への貼付時に液垂れすることがなく、取り扱いやすい。さらに、このシート状パックは、通常、全体を小さく折り畳んでから個包されるが、上記シート状基材の引張強度が、エンボス加工によって高くなっていることと、互いに重なる面が凹凸面で、ぴたっと吸いつくようにひっつかないことから、これを折り畳んだ状態から広げる際に、非常に広げやすいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す説明図である。
【図2】上記実施例の模式的な部分断面図である。
【図3】(a),(b)はともに上記実施例のシート状パックを折り畳んで個包する場合の説明図である。
【図4】本発明に用いるシート状基材の他の例の説明図である。
【符号の説明】
1 シート状基材
2 美容液
3 凹部
Claims (6)
- シート状基材に湿潤物質を含浸保持させた状態で包装袋によって個包されており、使用時には上記包装袋から取り出して顔面に貼付して用いるシート状パックであって、上記シート状基材が、単糸太さ0.5〜2.0デシテックスの繊維を用いた、目付30〜150g/m2 、厚み(T)0.3〜1.50mmの不織布からなる柔軟シートからなり、上記柔軟シートの少なくとも表面に、開口形状が直径0.50〜3.00mmの円形もしくはそれに近似する形状で、深さ(S)が0.05〜1.45mmに設定された、湿潤物質保持用の凹部が、エンボス加工により多数分布形成されており、上記シート状基材に対し湿潤物質が、0.07〜0.20g/cm2 の割合で含浸保持されていることを特徴とするシート状パック。
- 上記シートに形成される凹部が、8〜150個/cm2 の密度で分布している請求項1記載のシート状パック。
- 上記湿潤物質が、水もしくは肌への有効成分を含む液体である請求項1または2記載のシート状パック。
- 請求項1記載のシート状パックに用いられるシート状基材であって、単糸太さ0.5〜2.0デシテックスの繊維を用いた、目付30〜150g/m2 、厚み(T)0.3〜1.50mmの不織布からなる柔軟シートからなり、上記柔軟シートの少なくとも表面に、開口形状が直径0.50〜3.00mmの円形もしくはそれに近似する形状で、深さ(S)が0.05〜1.45mmに設定された、湿潤物質保持用の凹部が、エンボス加工により多数分布形成されており、湿潤物質を、0.07〜0.20g/cm2 の割合で含浸保持しうることを特徴とするシート状基材。
- 上記柔軟シートが、セルロース系繊維不織布からなる請求項4記載のシート状基材。
- 上記柔軟シートに形成される凹部が、8〜150個/cm2 の密度で分布している請求項4または5記載のシート状基材。
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