JP4368495B2 - 研磨液組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁層と金属層を有する被研磨表面を研磨する研磨液組成物に関する。さらに詳しくは、半導体基板上の埋め込み金属配線の形成手法に適用される研磨液組成物、研磨方法及び半導体基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造工程において、半導体基板上の絶縁膜表面に配線形状の溝を形成し、該溝を有する絶縁膜上に銅等からなる金属膜を堆積し、前記金属膜をポリッシング装置及び研磨液により研磨処理することにより、前記溝内のみに金属層を残存させ金属配線層を形成させる方法の研磨工程にはメタルケミカルメカニカルポリッシング(Metal Chemical Mechanical Polishing、以下メタルCMPという)が採用されている。
【0003】
しかしながら、このメタルCMPには絶縁膜の溝内の金属配線層にディッシング(Dishing)と呼ばれるくぼみが発生し、金属配線層の断面積が減少して、電気抵抗の増大等を引き起こすという問題がある。このディッシングは、研磨液組成物により金属配線層の表面が絶縁膜表面よりも過剰に研磨又はエッチングされて生じるとされている。特に主要な配線金属の1つである銅は、研磨液組成物により過剰にエッチングされて、ディッシングが発生しやすいという欠陥がある。
【0004】
従って、絶縁膜上の金属膜を研磨するためのエッチング作用は残しつつも、配線形成時には、金属層にディッシング等の欠陥が発生しない研磨液組成物が望まれている。
【0005】
従来の研磨液として、例えば、特開平11−21546号公報には錯生成剤と膜生成剤、研磨材、酸化剤を含む研磨液が開示されているが、エッチングによる浸食を抑制する膜生成剤として用いるベンゾトリアゾールは銅と反応し非常に強固な膜を生成するため、銅などの金属層を研磨するメタルCMPにおいて、研磨速度が不十分となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、絶縁層と金属層を有する被研磨表面において、金属膜の研磨速度を維持し、エッチング速度を抑制し、金属配線層のディッシング等の防止効果に優れた研磨液組成物、研磨方法、及び半導体基板の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、
〔1〕絶縁層と金属層を有する被研磨表面を研磨する研磨液組成物であって、
下記一般式(I):
【0008】
【化2】
Figure 0004368495
【0009】
〔式中、R1 は炭素数4〜18の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基を表し、R2 及びR3 はそれぞれ同一であっても又は異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖アルキル基又はH−(OR4 n −基(R4 は炭素数1〜3の直鎖アルキレン基又は炭素数3の分岐鎖アルキレン基を表わし、nは1〜20である)を表わす〕
で表されるアミン化合物(以下、アミン化合物ともいう)及び/又はその塩とエッチング剤と水とを含有する研磨液組成物(以下、第1研磨液組成物ともいう)、
〔2〕さらに、酸化剤を含有する前記〔1〕記載の研磨液組成物(以下、第2研磨液組成物ともいう)、
〔3〕さらに研磨材を含有する前記〔1〕又は〔2〕記載の研磨液組成物(以下、第3研磨液組成物ともいう)、
〔4〕前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の研磨液組成物を用いて、絶縁層と金属層を有する被研磨表面を研磨し、平坦化する半導体基板の研磨方法、
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載の研磨液組成物を用いて、絶縁層と金属層を有する被研磨表面を研磨し平坦化する工程を有する半導体基板の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、前記アミン化合物及び/又はその塩とエッチング剤とを併用することに一つの大きな特徴があり、かかるアミン化合物及び/又はその塩とエッチング剤とを含有する研磨液組成物を用いることで、実用レベルでの研磨速度を維持し、且つ金属膜の過剰なエッチングを防止することができ、ディッシング等の欠陥のない研磨表面を得ることができるという優れた効果が発現される。
【0011】
本発明に用いられる前記一般式(I)で表されるアミン化合物及び/又はその塩は、研磨速度を維持し、且つディッシングを抑制するという観点から、好ましく、さらに低発泡性及び研磨速度を実用レベルに保ち、且つディッシング抑制の観点から、式中、R1 は炭素数5〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数6〜12の直鎮又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基がより好ましく、炭素数7〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基がさらに好ましい。R2 及びR3 は、水素原子、炭素数1又は2の直鎖アルキル基、H−(OR4 n −基(R4 は炭素数2のアルキレン基、nは1〜4である)が好ましく、水素原子、メチル基及びヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0012】
また、アミン化合物の塩は、無機酸との塩又は有機酸との塩のいずれであってもよいが、エッチング剤として用いられる無機酸又は有機酸との塩が好ましく、さらに半導体汚染防止の観点から、エッチング剤の中でも有機酸の塩がより好ましい。
【0013】
これらアミン化合物及びその塩の具体例としては、ブチルアミン、ぺンチルアミン、へキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、ステアリルアミン等の直鎖モノアルキルアミン、オレイルアミン等の直鎖モノアルケニルアミン、2 −エチルヘキシルアミン等の分岐鎖モノアルキルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン等のジアルキルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン等のトリアルキルアミン、オクチルジエタノールアミン、デシルジエタノールアミン、ドデシルジエタノールアミン等のアルキルアルカノールアミン及びこれらのアミン化合物のカルボン酸塩、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。これらの中でも研磨速度とディッシング抑制の点から直鎖又は分岐鎖のモノアルキルアミン、モノアルキルジメチルアミン、モノアルキルジエタノールアミン及びそれらのカルボン酸塩が好ましく、低発泡性の点からヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン、ドデシルジメチルアミン、オクチルジエタノールアミン、デシルジエタノールアミン及びそれらのカルボン酸塩がさらに好ましい。これらアミン化合物及びその塩は、単独で又は2種類以上を混合して使用しても良い。
【0014】
アミン化合物及びその塩の研磨液組成物中における配合量は、研磨速度を維持し、且つディッシングを抑制する観点から、0.01〜30重量%が好ましく、0.02〜10重量%がより好ましく、0.03〜5重量%がさらに好ましい。
【0015】
本発明に用いられるエッチング剤は、水媒体共存下で、金属、特に銅を溶解、エッチングするものであり、下記のエッチング試験Aより得られるエッチング速度aが3Å/min以上の化合物である。即ち、エッチング試験Aは、まず、長さ100mmの銅リボン((株)ニラコ製:厚み0.10mm、幅6mm)を用意し、表面の汚れ等を紙で拭きとった後、ノルマルヘキサンに浸した状態で超音波洗浄を1分間行い、十分に脱脂し、乾燥させる。その後リボン全面に研磨液が浸漬するようにその金属試験片を、螺旋状に巻き、試験前の金属試験片とし、精密天秤により、浸漬前重量を測定する。
【0016】
次に、エッチング剤を2重量%水溶液とし、さらにアンモニア水によりpHを8±0.5に調整したエッチング液100gを150ccのビーカー((株)テラオカ 150ccデスカップ)に用意し、その中に前記金属試験片を25℃で12時間浸漬する。浸漬中はマグネティックスターラーで銅リボンがエッチング液の流れによって回転する程度に攪拌する。試験後、銅リボン表面を充分に拭き取り、再度精密天秤にて重量を測定し、試験後の重量とする。試験前後の銅リボンの重量減少から銅の膜厚減少量を換算し、それをエッチング時間で除すことによりエッチング速度aを求める。実用的な研磨速度を得るという観点から、上記エッチング試験Aより得られるエッチング速度aが3Å/min以上のエッチング剤が好ましく、5Å/min以上のエッチング剤がより好ましく、10Å/min以上のエッチング剤がさらに好ましい。この場合のエッチング速度aは、2つ以上のエッチング剤を併用した場合のエッチング速度であってもよい。
【0017】
好ましいエッチング剤としては、適切なエッチング速度を有する観点から、下記A〜Eの群から選ばれる一つ以上の化合物を含むものである。
A:炭素数6以下で1〜3個のカルボキシル基を有する脂肪族有機酸
B:炭素数7〜10で1〜4個のカルボキシル基を有する芳香族有機酸
C:炭素数6以下で1〜4個のホスホン酸基を有する有機酸
D:分子内に式(II):
【0018】
【化3】
Figure 0004368495
【0019】
で表される構造を2つ以上有するポリアミノカルボン酸
E:無機酸
【0020】
具体的には、Aの炭素数6以下で1〜3個のカルボキシル基を有する脂肪族有機酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリカルバリル酸等の多価カルボン酸;グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシプロピオン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のヒドロキシカルボン酸;グリシン、アラニン、アスパラギン酸等のアミノ酸等が挙げられる。Bの炭素数7〜10で1〜4個のカルボキシル基を有する芳香族有機酸として、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、マンデル酸、サリチル酸等が挙げられる。Cの炭素数6以下で1〜4個のホスホン酸基を有する有機酸として、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のホスホン酸;メチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸;ホスホン酸メチルエステル等のホスホン酸エステル;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1−ジホスホン酸等のアミノホスホン酸等が挙げられる。Dの分子内に式(II)で表される構造を2つ以上有するポリアミノカルボン酸として、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレンジアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸等が挙げられる。Eの無機酸として、塩酸、過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸等が挙げられる。これらの中でも、研磨速度の点からA又はBに属する多価カルボン酸又はヒドロキシカルボン酸、Cに属するアミノホスホン酸、Dに属する分子内に式(II)で表される構造を2つ以上有するポリアミノカルボン酸、Eに属する塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸が好ましく、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フタル酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1−ジホスホン酸、エチレンジアミン四酢酸、塩酸及び硫酸がさらに好ましい。これらのエッチング剤は単独で又は2種類以上を混合して用いても良い。
【0021】
なお、これらエッチング剤のエッチング速度aは、例えば、グリコール酸:60Å/min、クエン酸:25Å/min、フタル酸:50Å/min、アミノトリ(メチレンホスホン酸):10Å/min、エチレンジアミン四酢酸:30Å/min、酢酸:70Å/min、グリシン:40Å/min、塩酸:400Å/min、硫酸:100Å/minである。
【0022】
本発明に用いられるエッチング剤は、さらに酸化剤、砥粒等が共存する研磨液組成物(但し、前記アミン化合物又はその塩を含有しない組成物)を調製した際に、下記のエッチング試験Bより得られる研磨液組成物のエッチング速度bが20Å/min以上となるように、その種類、含有量等を調整することが好ましい。即ち、エッチング試験Bは、エッチング試験Aのエッチング液として、水、研磨材及びエッチング剤、要すればさらに酸化剤を含む研磨液組成物を用いて、室温(25℃)2時間浸漬すること以外はエッチング試験Aと全く同一の操作で行う。エッチング試験Bによって求めたエッチング速度をエッチング速度bとする。実用的な研磨速度を得るという観点から、上記エッチング試験Bより得られるエッチング速度bは20Å/min以上が好ましく、30Å/min以上がより好ましく、50Å/min以上がさらに好ましい。この場合のエッチング速度bは、2つ以上のエッチング剤を併用した研磨液組成物のエッチング速度であってもよい。
【0023】
本発明において、かかるエッチング剤を用いることで、金属層を構成する各種金属、特に銅と錯体を形成し又は結合し、水溶性の塩及び/又はキレート化合物として表面からの除去を容易にし、研磨の際に、金属層の研磨速度を向上させる効果が発現される。
【0024】
エッチング剤の研磨液組成物中における配合量は、金属層の除去のために実用レベルでの研磨速度を確保し、且つ金属層の過剰なエッチングを防ぐために種々選択することができ、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%である。
【0025】
本発明に用いられる水は、媒体として用いられるものである。その配合量は、被研磨物を効率よく研磨できる観点から、研磨液組成物中において、好ましくは60〜99.89重量%、より好ましくは70〜99.4重量%、さらに好ましくは80〜99.0重量%である。
【0026】
かかる組成を有する本発明の第1研磨液組成物のpHは、研磨速度を実用レベルに保ち、且つディッシング抑制の観点及び表面の微細なスクラッチ傷を除去する観点から、10以下が好ましく、2〜9.5がより好ましく、4〜9がさらに好ましく、5〜9が特に好ましい。pHを前記範囲内に調整するためには、必要に応じて、硝酸、硫酸等の無機酸、有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、有機アミン等の塩基性物質を適時配合することができる。
【0027】
本発明の第2研磨液組成物は、第1研磨液組成物に酸化剤がさらに配合されたものである。本発明に用いられる酸化剤は、金属を酸化させるものである。本発明においては、かかる酸化剤を用いることにより、金属層を酸化させ、金属層の機械的研磨効果を促進させる効果又はエッチング剤による銅の溶解を促進させる効果が発現されると考えられ、金属層の研磨速度を向上させることができる。そのため、酸化剤を配合することが好ましい。
【0028】
酸化剤としては、過酸化物、過マンガン酸又はその塩、クロム酸又はその塩、硝酸又はその塩、ペルオクソ酸又はその塩、酸素酸又はその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられる。
【0029】
その具体例として、過酸化物としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム等;過マンガン酸又はその塩としては、過マンガン酸カリウム等;クロム酸又はその塩としては、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩等;硝酸塩としては、硝酸鉄(III)、硝酸アンモニウム等;ペルオクソ酸又はその塩としては、ペルオクソ二硫酸、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、ペルオクソ二硫酸金属塩、ペルオクソリン酸、ペルオクソ硫酸、ペルオクソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸等;酸素酸又はその塩としては、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等;金属塩類としては、塩化鉄 (III)、硫酸鉄 (III)、クエン酸鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(III)等が挙げられる。好ましい酸化剤としては、過酸化水素、硝酸鉄(III)、過酢酸、ペルオクソ二硫酸アンモニウム、硫酸鉄(III)及び硫酸アンモニウム鉄(III)が挙げられ、特に、半導体の汚染防止の観点から過酸化水素が好ましい。これらの酸化物は、単独で又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
酸化剤は、第2研磨液組成物中において水を媒体とした状態で使用される。該酸化剤の第2研磨液組成物中における配合量は、金属層の迅速な酸化により、実用レベルの研磨速度を得る観点から、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.2〜50重量%、さらに好ましくは0.3〜30重量%、特に好ましくは0.3〜10重量%である。
【0031】
また、第2研磨液組成物におけるアミン化合物及び/又はその塩の配合量は、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.02〜10重量%、さらに好ましくは0.03〜5重量%である。エッチング剤の配合量は、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%である。水の配合量は、好ましくは39.89〜99.79重量%、より好ましくは70〜99.4重量%、さらに好ましくは80〜99重量%である。かかる組成を有する第2研磨液組成物のpHは、第1研磨液組成物と同様、研磨速度を実用レベルに保ち、且つディッシング抑制の観点及び表面の微細なスクラッチ傷を除去する観点から、10以下が好ましく、2〜9.5がより好ましく、4〜9がさらに好ましく、5〜9が特に好ましい。pHを前記範囲内に調整するためには、必要に応じて、硝酸、硫酸等の無機酸、有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、有機アミン等の塩基性物質を適時配合することができる。
【0032】
本発明の第1及び第2研磨液組成物は、固定砥石、パッド中に砥粒を固定した研磨パッド等を用いる研磨方式において有効である。例えば、固定砥石による研磨方式の研磨中に本発明の第1及び第2の研磨液組成物を使用することにより、研磨速度を維持し、且つ金属層のディッシングを抑制することができる。
【0033】
本発明の第3研磨液組成物は、第1又は第2研磨液組成物に研磨材をさらに含有させたものであり、遊離研磨材による研磨方式に用いられるものである。
【0034】
研磨材としては、研磨用に一般に使用される研磨材を使用することができ、例えば、金属、金属又は半金属の炭化物、金属又は半金属の窒化物、金属又は半金属の酸化物、金属又は半金属のホウ化物、ダイヤモンド等が挙げられる。金属又は半金属元素は周期律表の3A、4A、5A、3B、4B、5B、6B、7B又は8B族に属するものが挙げられる。その例としては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、二酸化マンガン、炭化ケイ素、酸化亜鉛、ダイヤモンド及び酸化マグネシウムが挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び酸化セリウムが好ましく、この具体例として、二酸化ケイ素としては、コロイダルシリカ粒子、フュームドシリカ粒子、表面修飾したシリカ粒子等;酸化アルミニウムとしては、α―アルミナ粒子、γ―アルミナ粒子、δ―アルミナ粒子、θ―アルミナ粒子、η―アルミナ粒子、無定型アルミナ粒子、その他の製造法の異なるフュームドアルミナやコロイダルアルミナ等;酸化セリウムとしては、酸化数が3価又は4価のもの、結晶系が、六方晶系、等軸晶系又は面心立方晶系のもの等が挙げられる。特に好ましくは二酸化ケイ素である。これらの研磨材は、単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
かかる研磨材の一次粒子の平均粒径は、好ましくは5〜1000nm、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは20〜300nm、特に好ましくは50nm〜200nm、最も好ましくは50〜100nmである。該平均粒径の下限は、一定の研磨速度を維持する観点から、5nm以上が好ましく、また、その上限は、被研磨物の表面に引っ掻き傷(スクラッチ)を発生させない観点から、1000nm以下が好ましい。
【0036】
特に研磨材として二酸化ケイ素を用いた場合には、研磨速度を向上させる観点から、1次粒子の平均粒径は、5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。
【0037】
なお、研磨材の一次粒子の平均粒径は、0.1%ポリスチレンスルフォン酸ソーダ水溶液100gに該研磨材0.1gを加え、次いで超音波を印加し該研磨材を分散させたものを透過型電子顕微鏡で観察して画像解析により求められる。
【0038】
第3研磨液組成物を半導体装置の配線形成の際に用いる場合、特に好ましく用いられる研磨材は、純度が好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上、特に好ましくは99.9重量%以上のシリカ粒子である。かかる研磨材としては、四塩化ケイ素等の揮発性ケイ素化合物を酸水素焔中での高温加水分解により製造されるフュームドシリカ、又はケイ酸アルカリやケイ酸エチルを出発原料とする製法で得られるコロイダルシリカが挙げられる。
【0039】
なお、前記研磨材の純度は、次のようにして求められる。即ち、研磨材1〜3gを酸又はアルカリ水溶液に溶かし、ICP(プラズマ発光分析)法により、ケイ素イオンを定量することにより測定することができる。
【0040】
かかる研磨材は、第3研磨液組成物中において水を媒体とした、いわゆるスラリー状態で使用される。研磨材の第3研磨液組成物中における配合量は、本発明の研磨液組成物の粘度や被研磨物の要求品質等に応じて種々選択することができ、0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましく、1.0〜10重量%がさらに好ましい。
【0041】
アミン化合物及び/又はその塩の第3研磨液組成物中における配合量は、研磨速度を維持し、且つディッシングを抑制する観点から、0.01〜30重量%が好ましく、0.02〜10重量%がより好ましく、0.03〜5重量%がさらに好ましい。
【0042】
エッチング剤の第3研磨液組成物中における配合量は、金属層除去のために実用レベルの研磨速度を確保し、且つ金属層の過剰なエッチングを防ぐために種々選択することができ、例えば、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%である。
【0043】
酸化剤の第3研磨液組成物中における配合量は、金属層の迅速な酸化により、実用レベルの研磨速度を得る観点から、好ましくは0.1〜60重量%、より好ましくは0.2〜50重量%、さらに好ましくは0.3〜30重量%、特に好ましくは0.3〜10重量%である。
【0044】
また、第3研磨液組成物における水の配合量は、好ましくは39.88〜99.89重量%、より好ましくは60〜99.4重量%、さらに好ましくは75〜99重量%である。かかる組成を有する第3研磨液組成物のpHは、第1研磨液組成物と同様、研磨速度を実用レベルに保ち、且つディッシング抑制の観点及び表面の微細なスクラッチ傷を除去する観点から、10以下が好ましく、2〜9.5がより好ましく、4〜9がさらに好ましく、5〜9が特に好ましい。pHを前記範囲内に調整するためには、必要に応じて、硝酸、硫酸等の無機酸、有機酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア、有機アミン等の塩基性物質を適時配合することができる。
【0045】
本発明の第1研磨液組成物は、例えば以下のような手順により調製することができる。まず、所定量の水にエッチング剤を加え、pHを所定の値に調整する。上記pH調整を行ったエッチング剤の水溶液に、予め所定のpHに調整したアミン化合物及び/又はその塩の水溶液を所定量加え、最終的にpH調整を行うことで第1研磨液組成物を得ることができる。
【0046】
第2研磨液組成物は、例えば以下のような手順により調製することができる。まず、所定量の水にエッチング剤を加え、pHを所定の値に調整する。上記pH調整を行ったエッチング剤の水溶液に、予め所定のpHに調整したアミン化合物及び/又はその塩の水溶液を所定量加える。研磨前に酸化剤を加え、最終的にpHの調整を行うことで第2研磨液組成物を得ることができる。
【0047】
第3研磨液組成物は、例えば以下のような手順により調製することができる。まず、所定量の水にエッチング剤を加え、pHを所定の値に調整する。上記pH調整を行ったエッチング剤の水溶液に、所定量の研磨材を加え、研磨材が均一に分散するよう十分に撹拌する。さらに予め所定のpHに調整したアミン化合物及び/又はその塩の水溶液を所定量加え、必要に応じて研磨前に所定量の酸化剤を添加し、最終的にpH調整を行うことで、第3研磨液組成物を得ることができる。
【0048】
また、第1〜第3研磨液組成物には、各種界面活性剤、分散安定化剤等の上記以外の研磨助剤を加えてもよい。
【0049】
本発明の研磨液組成物は、絶縁層と金属層を有する表面を研磨の対象とし、メタルCMPに好適に用いられる。金属層を形成する金属としては、銅又は銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金、タングステン等が挙げられる。これらの中では、特に半導体基板上の埋め込み金属配線形成工程に用いる場合、銅又は銅合金が好ましい。かかる銅又は銅合金の金属配線層の形成に、本発明の研磨液組成物を用いると、研磨速度を維持し、且つ埋め込み金属配線層のディッシングを抑制する効果が特に顕著に発現される。また、絶縁層を形成する材としては、有機、無機いずれの材を用いてもよく、二酸化ケイ素、フッ素添加二酸化ケイ素、水素含有SOG(スピンオングラス)、窒化物(例えば、窒化タンタル、窒化チタン等)等の無機系の材、有機SOG、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、メチルポリシロキサン、芳香族ポリエーテル、ハイドロジェンシルセスキオキサン、フルオロカーボン等の有機系の材が挙げられる。
【0050】
これらの被研磨物の形状は、半導体基板上の絶縁膜表面に配線形状の溝を形成し、該溝を含む絶縁膜上に金属が堆積した形状であることが好ましい。また、絶縁膜と金属層の間にタンタル、チタン又はそれらの窒化物からなるバリア膜が設けられてもよい。特に金属層が銅又は銅合金である場合、前記バリア膜を設けることにより、絶縁層への銅の拡散を防止できるため好ましい。
【0051】
本発明の第1及び第2研磨液組成物は固定砥石、パッド中に砥石を固定した研磨パッド等を用いる研磨方式において有効であり、第3の研磨液組成物は通常のウレタン製の研磨パッドを用いる遊離研磨材による研磨方式において有効であるが、固定砥石、パッド中に砥石を固定した研磨パッド等を用いる研磨方式においても有効である。
【0052】
本発明の絶縁層と金属層を有する被研磨表面の研磨方法は、本発明の研磨液組成物を用いて半導体基板を研磨し、平坦化する工程を有する。
【0053】
また、本発明の半導体基板の製造方法は、本発明の研磨液組成物を用い、絶縁層と金属層を有する半導体表面を研磨することにより、金属層の研磨速度を維持し、且つ埋め込み金属配線層のディッシングを抑制できるため、半導体基板の製造に好適に用いることができる。
【0054】
【実施例】
実施例1〜8及び比較例1〜5(但し、実施例1〜4、8は参考例である)
所定量の水に表1に示すエッチング剤、アミン化合物をそれぞれ表1に示す組成になるように混合し、混合液のpHが6〜8になるようにアンモニア水を加える。さらに過酸化水素を表1に示す組成になるよう加え、さらに、表1に示した研磨材5重量%分を混合、攪拌した後、混合液のpHを表1に示した値に調整し、研磨液組成物を得た。なお、使用した各研磨材は、フュームドシリカ(1次粒径:50nm)、コロイダルシリカ(1次粒径:100nm)である。また、直径50mm、板厚1mmの圧延した銅板を片面研磨機により下記の条件にて研磨した。以下、かぎ括弧内の用語は、商品名を示す。
【0055】
<片面加工機の設定条件>
使用片面加工機:エンギス社製 片面加工機(定盤サイズ30cm)
加工圧力:29.4×103 Pa
研磨パッド:上層:「IC1000」(ロデールニッタ社製)、下層:「SUBA400 」
(ロデールニッタ社製)
定盤回転数:60rpm
ワーク回転数:50rpm (定盤とワークは同一方向に回転)
研磨液組成物供給流量:100ml/min
研磨時間:10分間
【0056】
また、相対研磨速度、相対エッチング速度、被研磨表面のディッシング等の研磨液組成物の特性を以下の方法に従って評価した。これらの結果を表1に示す。
【0057】
(相対研磨速度)
相対研磨速度とは、研磨液組成物の研磨速度をその研磨液組成物と研磨材、酸化剤及びエッチング剤の種類及び量を同一とした研磨液組成物(比較例)の研磨速度で除した値である。研磨速度は直径50mm、板厚1mmの圧延した銅板を上記研磨条件で研磨し、研磨前後の板厚変化を測定し、それを研磨時間で除することにより求めた。なお、銅板の板厚は、東京精密社製、高精度デジタル測長器「MINIAX」を用いて測定した。実施例1、2、4、5、7は比較例1を、実施例6は比較例2を、実施例3は比較例3を、実施例8は比較例4を基準とした。なお、比較例5は上記規定とは異なり、比較例1を基準として相対研磨速度を算出した。
【0058】
(相対エッチング速度)
相対エッチング速度は、アミン化合物及び/又はその塩を含有する研磨液組成物のエッチング速度をアミン化合物及び/又はその塩を含有しないが、研磨材、酸化剤及びエッチング剤の種類及び量を同一とした研磨液組成物のエッチング速度bで除した値である。実施例1、2、4、5、7は比較例1を、実施例6は比較例2を、実施例3は比較例3を、実施例8は比較例4を基準とした。なお、比較例5は上記規定と異なり、比較例1を基準として相対エッチング速度を算出した。また、実施例1〜8及び比較例5の研磨液組成物のエッチング速度は、これら研磨液組成物を用いる以外は、前記エッチング試験Bと同じ条件下で測定された値である。
【0059】
(ディッシング)
ディッシング評価のために、銅ダマシン配線パターン付きウエハ(SKW社製、「SKW6-2」、サイズ:200mm )から20mm角のウエハチップを切り出し、ウエハチップ5枚をセラミック製の貼り付け板に固定後、上記条件で状態を確認しながら配線幅150μmの銅配線部分周辺の銅膜が除去され、バリア膜が現れた時点まで研磨し、この時点まで要した研磨時間の20%の時間でさらに研磨し、ディッシング評価用サンプルとした。ディッシングは、ウエハチップ上の配線幅150μmの銅配線部分の断面形状プロファイルを表面粗さ測定機((株)ミツトヨ製「SV-600」)で測定し、評価した。なお、測定した銅配線の断面形状プロファイルに0.15μm以上の凹みがない場合、ディッシング無しとし、0.15μm以上の凹みがある場合、ディッシング有りとし、表1中それぞれ「無」、「有」で示す。
【0060】
なお、比較例1〜4の研磨液組成物のエッチング速度bは以下の通りである。比較例1(50Å/min)、比較例2(100Å/min)、比較例3(50Å/min)、比較例4(50Å/min)。
【0061】
【表1】
Figure 0004368495
【0062】
表1の結果からアミン化合物を研磨液組成物に配合した実施例1〜8の研磨液組成物はいずれも、アミン化合物を配合しない比較例1〜4の研磨液組成物に比べて、研磨速度を実質的に低下させることなく、エッチング速度を抑制し、ディッシングが発生しないものであることがわかる。
【0063】
また、エッチングを抑制するベンゾトリアゾールを配合した比較例5の研磨液組成物は、研磨速度が非常に低いことがわかる。
【0064】
従って、アミン化合物とエッチング剤を併用することにより、より高い研磨速度を実現でき、且つディッシングを防止できることがわかる。
【0065】
特に、研磨時の泡立ちの点からアミン化合物としては、ヘプチルアミン、オクチルアミン及びノニルアミンがより好ましい。
【0066】
【発明の効果】
本発明の研磨液組成物を絶縁層と金属層を有する被研磨表面の研磨に用いることにより、金属膜の研磨速度を維持し、エッチング速度を抑制し、配線金属層にディッシング等の欠陥を発生させないという効果が奏される。

Claims (5)

  1. 絶縁層と銅又は銅合金から形成される金属層を有する被研磨表面を研磨する研磨液組成物であって、下記一般式(I):
    Figure 0004368495
    〔式中、R1 は炭素数4〜18の直鎖又は分岐鎖アルキル基、直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基を表し、R2 及びR3 はそれぞれ同一であっても又は異なっていてもよく、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖アルキル基又はH−(OR4 n −基(R4 は炭素数1〜3の直鎖アルキレン基又は炭素数3の分岐鎖アルキレン基を表わし、nは1〜20である)を表わす〕で表わされるアミン化合物及び/又はその塩0.5〜5重量%、エッチング剤、酸化剤、二酸化ケイ素を含む研磨材、及び水を含有する研磨液組成物。
  2. 研磨液組成物のpHが5〜9である請求項1記載の研磨液組成物。
  3. エッチング剤がヒドロキシカルボン酸である請求項1又は2記載の研磨液組成物。
  4. 請求項1〜3いずれか記載の研磨液組成物を用いて、絶縁層と銅又は銅合金から形成される金属層を有する被研磨表面を研磨し、平坦化する半導体基板の研磨方法。
  5. 請求項1〜3いずれか記載の研磨液組成物を用いて、絶縁層と銅又は銅合金から形成される金属層を有する被研磨表面を研磨し平坦化する工程を有する半導体基板の製造方法。
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