JP4365464B2 - 外部反射鏡レーザ装置及び伝送装置 - Google Patents

外部反射鏡レーザ装置及び伝送装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は光通信システムあるいは光ネットワークの関するものである。更には、本願発明は、これら光通信システムあるいは光ネットワークに供するに適した光伝送装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
複数の波長の光信号を同一の光伝送線路で伝える波長多重光通信は、通信技術、光情報処理技術のさらなる高性能化、低コスト化に向け重要である。
【0003】
現在、使用する各チャンネルの波長または周波数は、国際標準化により100GHz間隔(約0.8nm間隔)で詳細に決められている。従って、光源となる半導体レーザ装置の波長をいかにして、高歩留まりで標準値に設定するかが大きな課題のひとつである。
【0004】
波長多重光通信用光源の作製方法は従来、発振波長が誤差範囲±3nm程度で広く分布している多数の半導体発光素子から標準波長に適合するものを選び出す手法がとられてきた。このため、その手数も多大であり、且つ当初製造する半導体発光素子の波長歩留まりには大きな問題が有った。
【0005】
一方、こうした問題を解決する一手法として、例えば、入射端面を無反射コーティングした半導体レーザ装置と外部ブラッグ反射鏡とを用いた外部反射鏡レーザ装置が検討されている。こうした中に、例えば、シリコン(Si)基板上に形成したシリカ系回折格子導波路と無反射コーティングつき半導体レーザ部を表面実装技術により光学結合させた、表面実装型外部反射鏡レーザ装置がある。この種の波長多重通信光源として、例えば、第2回オプトエレクトロニクスアンドコミュニケーションズコンファレンス:Optpelectronics and Communication Conference 1997年(OECC‘97)10D3−3が挙げられる。
【0006】
しかし、このレーザ装置を用いて変調光信号を発生させるためには、基本的に直接変調するかまたは、外部変調器と組み合わせる必要がある。しかし、前者の場合には、高速性および直接変調に伴う波長チャーピングが、後者の場合には、外部変調器の多段接続による光出力の低下が各々問題である。尚、ここで波長チャーピングとは、いわゆる発光をオン・オフした場合の発光波長の変動幅のことを称する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、発振波長の安定な光源を有する光伝送システムを提供することである。本願発明によれば、容易な手法で波長国際標準チャンネルに適合する波長多重通信用光源を高歩留まりで実現することが出来る。尚、ここで波長国際標準チャンネルとはいわゆるITU gridに適合するチャネルを意味する。
【0008】
本願発明の更なる目的は、外部変調器をモノリシック集積した発振波長の安定な送信装置を提供することにある。発光特性の経年変化も極めて少なくすることが可能である。この為、本願発明はわけても、長距離光伝送システムに有用である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明者らは、発光領域(利得領域とも称される)、第1の光帰還手段、例えば分布反射型導波路、光吸収層とが順に形成された半導体導波路型積層体と、外部の第2の光帰還手段、例えば回折格子とを組み合わせた変調器集積化複合共振器レーザを提案する。また、これを用いて、本願発明の目的に合致する光伝送システムおよび光伝送装置を提案する。それは、波長多重伝送を容易に実現可能である。
【0010】
以下に本願発明の主な形態を列挙する。
【0011】
(1)本願発明の第1の形態は、分布反射型の第1の光帰還手段と発光領域と光吸収領域とを少なくとも集積化されて有する半導体導波路領域と、当該半導体導波路領域の前記第1の光帰還手段に対向する端面に対向して前記半導体導波路領域と別体の第2の光帰還手段とを少なくとも有し、前記光吸収領域において光変調がなされる光伝送装置を、光源として少なくとも有することを特徴とする光伝送システムである。
【0012】
従来の外部反射鏡型レーザ装置の欠点を解消し、安定した発振波長、光出力を確保した光伝送装置およびこれを用いた光伝送システムを提供することが出来る。
【0013】
第2の光帰還手段は別体に形成される為、そのストップバンド幅は半導体導波路積層体における材料的な規制なしに選択することを可能とする。この為、発振波長のずれはこの小さなストップバンド幅に規制されるものに止めることが出来る。
【0014】
尚、各領域組成波長の設定には、発振波長を発光領域、光吸収領域、第1の光帰還領域の順に短くする。
【0015】
(2)本願発明の第2の形態は、分布反射型の第1の光帰還手段と、発光領域と、光吸収領域とを少なくとも集積化されて有する半導体導波路領域と、当該半導体導波路領域の前記第1の光帰還手段に対向する端面に対向して前記半導体導波路領域と別体の第2の光帰還手段とを少なくとも有し、前記光吸収領域において光変調がなされる光伝送装置の複数を、異なる2波長以上の光信号の波長多重用光源として少なくとも有することを特徴とする光伝送システムである。
【0016】
本願発明は発振波長が極めて安定であり、前記第1の形態に加えて、波長多重用として有用である。
【0017】
尚、波長多重光通信装置とは、少なくとも異なる2波長以上の光波信号を同一の光伝送線路上に伝搬させることにより情報を伝達するものである。
【0018】
(3)本願発明の第3の形態は、第2の光帰還手段のストップバンドの幅が前記第1の光帰還手段のストップバンドの幅より小さいこと特徴とする前記項目(1)又は(2)に記載の光伝送システムである。前記半導体導波路領域とこれと別体の第2の光帰還手段とが所定基板に搭載されている光伝送装置である。
【0019】
第2の光帰還手段の回折格子のストップバンド幅を前記半導体導波路領域に設ける第1の光帰還手段たる回折格子のストップバンド幅より極めて小さくすることが重要である。このことによって、出来る。第1の光帰還手段、発光領域、第2の光帰還手段によって構成される複合共振器は、その幅が小さな第2の光帰還手段のストップバンドに規制されて発振可能となる。この為、発振波長のずれは極めて小さな波長幅に止めることが出来る。
【0020】
前記半導体導波路領域と第2の光帰還手段とを別体に構成することは、第1の光帰還手段と第2の光帰還手段の双方の回折格子の両ストップバンド幅を大きく異ならせることを容易にする。
【0021】
(4)本願発明の第4の形態は、分布反射型の第1の光帰還手段と発光領域と光吸収領域とを集積化されて少なくとも有する半導体導波路領域と、当該半導体導波路領域の前記第1の光帰還手段に対向する端面に対向して前記半導体導波路領域と別体の第2の光帰還手段とを少なくとも有し、前記光吸収領域において光変調がなされ、第2の光帰還手段のストップバンドの幅が前記第1の光帰還手段のストップバンドの幅より小さく、且つ前記半導体導波路領域とこれと別体の第2の光帰還手段とが所定基板に搭載されていることを特徴とする光伝送装置である。
【0022】
従来の外部反射鏡型レーザ装置の欠点を解消し、安定した発振波長、光出力を確保した光伝送装置を提供することが出来る。
【0023】
尚、本例における各部材が前記項目(1)より(3)に説明した技術思想を適宜用いることが出来ることはいうまでもない。
【0024】
(5)本願発明の第5の形態は、前記半導体導波路積層体の入出力端の両者またはどちらか一方にスポット拡大機能を有する光導波路をモノリシック集積化したことを特徴とする前記光伝送システムならびに光伝送装置である。
【0025】
このスポット拡大部はいわゆる導波路レンズと称されているもので良く、これの使用によって当該光学系の光結合の効率を格段に向上することが出来る。
【0026】
尚、本例における部材が前記項目(1)より(4)に説明した技術思想を適宜用いることが出来ることはいうまでもない。
【0027】
(6)本願発明の第6の形態は、上記各光伝送装置ならびに光伝送システムにおいて、前記半導体導波路積層体の導波路が形成された積層体表面側に実装基板に当該半導体導波路積層体の光軸を位置合わせするための位置決めマーカに有することを特徴とするものである。このマーカは当該光伝送装置の製造に実用上極めて有用である。
【0028】
尚、波長多重光通信装置の波長多重光源に、前記項目(4)より(6)に記載の各光伝送装置を各種光伝送システムに使用可能なことはいうまでもない。又、本願発明に係わる光伝送装置の適用が下記発明の実施の形態の欄に説明される光伝送システムに限られるものでないことはいうまでもない。
【0029】
[解決手段諸部材の具体的事例の説明]
上述の本願発明の諸形態に係わる主要な各部材の具体的事例の詳細を以下に説明する。
【0030】
前記分布反射型の第1の光帰還手段と発光領域と光吸収領域とを少なくとも有する半導体導波路領域は、通例半導体材料による複数の多重量子井戸導波路の積層体で集積化して形成される。多重量子井戸導波路の積層体の形成にあたって、その代表的な具体的構成例を示せば、InP基板あるいはGaAs基板に周知の方法に従って多重量子井戸導波路を形成する。導波路の形成には、InP基板にはInGaASPあるいはInGaAlAsなど一般にInP系と称される化合物半導体材料が、GaAs基板にはGaInNAsなどの化合物半導体材料が用いられる。導波路自体の構成は当該光伝送装置の仕様に従って周知の方法によれば良い。
【0031】
前記光吸収領域における光変調は、当該光吸収領域の電界による光の吸収率の変化を利用する。即ち、当該光吸収領域に電圧を印加してなされる。より実際的には、通例この光吸収領域に2種類の電極を設け、光変調用の第1の光吸収領域と、光モニター用の第2の光吸収領域を形成する。この第2の光吸収領域は光モニター用として用いられる。この光モニターは必ずしも必要ではない。しかし、これを用いて当該光吸収領域を通過する光電流を検出し、光出力を調整することが出来、極めて実際的である。従って、上述の具体的構成例によれば、当該光伝送システムの発振波長および発光出力の双方を制御することを可能とする。
【0032】
前記分布反射型の第1の光帰還手段は当該半導体導波路領域内に設けられた回折格子で構成される。前記第2の光帰還手段は、当該半導体導波路領域とは別体に設けられた回折格子で構成される。
【0033】
前記半導体導波路領域とこれと別体の第2の光帰還手段とは当然、その光軸が合わせて構成される。そして、第2の光帰還手段の具体例としては、周知の石英光導波路を用い、その内部に回折格子が形成されたものをあげることが出来る。より具体的には、例えば、二酸化シリコン(SiO2)の基体の上に窒化シリコン(SiN)層、更にこの上部に二酸化シリコン層が搭載されて構成される。前記窒化シリコン(SiN)層には若干のGeが添加される場合もある。この窒化シリコン(SiN)層に所望特性の回折格子が形成されている。勿論、第2の光帰還手段として更に別な材料を用いることも可能である。
【0034】
第2の光帰還手段が石英光導波路で構成される場合、その回折格子のストップバンド幅を前記半導体導波路領域に設ける第1の光帰還手段たる回折格子のストップバンド幅より極めて小さくすることを容易に実現出来る。従って、第1の光帰還手段、発光領域、第2の光帰還手段によって構成される複合共振器は、その幅が小さな第2の光帰還手段のストップバンドに規制されて発振可能となる。この為、発振波長のずれは極めて小さな波長幅に止めることが出来ることは前述した通りである。尚、半導体導波路領域の回折格子のストップバンド幅は、2nmより20nm程度、一方、石英光導波路の回折格子のストップバンド幅は概ね、0.3nmより2nm程度である。
【0035】
又、第2の光帰還手段が石英光導波路で構成された場合、その具体的な大きさは前記半導体導波路領域より当然大きい。この為の実装基板として、実際的な例としてシリコン基板が最適である。シリコンは結晶格子の異方性を利用した食刻によって形成された溝によって極めて好都合に、光導波路等を保持することが出来る。前述の半導体導波路領域と第2の光帰還手段との光軸が合わせも高精度に行うことが出来き、前述の各部材の大きさの相違の調整の容易に行うことが出来る。
【0036】
シリコン基板上に作製された石英系導波路上に、紫外線照射による回折格子を形成し、実装基板とすることが通例である。
【0037】
尚、発光領域は通例の技術に従って光源に要求される発振波長に応じて形成される。発光領域の具体的構造は、要求される特性に応じて単一量子井戸、多重量子井戸、あるいは歪み量子井戸の各種形態を取り得る。
【0038】
スポット拡大機能を有する光導波路の実際的な構成例として、当該多重量子井戸構造導波路の積層体の前後を端面に向かって導波路のコア膜厚が徐々に薄くなる膜厚テーパ導波路とすれば良い。この部分は概ね50nmから200nm程度の膜厚とするのが一般的である。この領域の長さは概ね200μm程度である。このスポット拡大部はいわゆる導波路レンズと称されているもので、これの使用によって当該光学系の光結合の効率を格段に向上することが出来る。
【0039】
【発明の実施の形態】
<実施の形態1>
光変調器内臓光源を有する光伝送装置の例を説明する。図1は本願発明になる光変調器内臓光源を有する光伝送装置の概略説明図である。図2は光伝送装置の斜視図である。図1は図2において光源の光軸に平行な面での断面図である。この光変調器内臓光源の波長帯の例は1.55μm帯である。
【0040】
図1、図2に示すように、本光伝送装置は実装基板101に、半導体光素子部102が搭載される。一方の端面に光伝送路104、他方の端面に第2の光帰還手段106を少なくとも有する。即ち、この半導体光素子部102は外部の別体の第2の光帰還手段106を有している。この第2の光帰還手段106は通例回折格子であって、半導体発光素子部内に設けられらた第1の光帰還手段108とによって、レーザ共振器を構成する。この意味において、本願発明の光源は、いわゆる外部反射鏡型レーザに光変調器を集積化し、変調器集積化複合共振器レーザ装置と言うことが出来る。
【0041】
前記半導体光素子部102と光伝送路104の間に、通例、別体の光アイソレータ103が挿入される。この光アイソレータ103は半導体光素子部102と光伝送路104に集積化して構成することも可能である。前記光伝送路104には通例光ファイバーが多用される。半導体光素子部102、および光伝送路104は多くの場合、実装基板101に樹脂によって固定される。半導体光素子部102、光伝送路104、あるいは光アイソレータの間に樹脂が挿入される場合は当然所望光学特性の透光性樹脂が用いられる。
【0042】
更に、一般的には図2に見られるように、第2の光帰還手段の一方の端部に光受光器113が設けられ、光の波長をモニターする。回折格子106によって波長選択がなされる為、フォトダイオード113の光出力によって、発振波長のずれの程度を光出力によってモニターすることが出来る。この光受光器113はフォトダイオードが用いられ、やはり樹脂で実装基板に固定される。
【0043】
実装基板101はシリコンが好適であり、基板表面には、石英光導波路105が搭載されている。シリコンは結晶格子の異方性を利用した食刻によって形成された溝によって極めて好都合に、光導波路等を保持することが出来る。この石英光導波路105の一部には周期0.54μmの回折格子106が形成されている。この回折格子のブラッグ波長は1552nm、ストップバンド幅は約0.3nmである。
【0044】
一方、半導体光素子部102は、素子表面を実装基板101に対して下側にするいわゆるジャンクションダウン実装されている。半導体光素子部102は、InP基板上に形成されたInGaAsP材料系で構成される複数の多重量子井戸構造導波路の積層体を有する。当該複数の多重量子井戸導波路の積層体は、少なくとも次の領域を有している。(1)活性層を含む発光領域107、(2)分布ブラッグ反射導波路108、(3)光吸収層109、および(4)光出力調整用光吸収層110である。尚、光吸収層109および光出力調整用光吸収層は同一の領域として構成されることが多用される。
【0045】
前記各領域は次のような特性を有している。発光領域107は1560nm波長帯近傍に発光ピークを有する。分布ブラッグ反射導波路108は1400nm波長帯近傍に発光ピークを有し、約1552nmのブラッグ波長で4乃至6nmのストップバンド幅の回折格子を有する。光吸収層109は1500nmの波長帯近傍に発光ピークを有する。光出力調整用光吸収層110は1500nmの波長帯近傍に発光ピークを有する。また、実際的な構成として、当該多重量子井戸構造導波路の積層体の前後には端面に向かって導波路のコア膜厚が徐々に薄くなる膜厚テーパ導波路111がモノリシック集積されスポット拡大部を構成している。このスポット拡大部によって、当該光学系の光結合の効率を向上することが出来る。前記スポット拡大部の導入により、半導体光素子部102と光ファイバ104、石英光導波路105間の光結合は約60%にまで向上可能である。また、当該半導体光素子の両端面には反射率0.02%以下の低反射膜112が施されている。
【0046】
次に、前記多重量子井戸構造導波路の積層体の製造工程について説明する。
【0047】
図3は多重量子井戸構造を結晶成長させる為の選択成長用マスクの平面図である。図4より図7は多重量子井戸構造導波路の積層体の製造工程をその工程順に示した断面図である。それは光軸に平行な面での断面図である。
【0048】
所定の結晶成長用の半導体基板、例えばn型InP基板1上部に、図2に示した選択成長用のマスクを例えば二酸化シリコン(SiO2)膜によって形成する。基板面は(100)面を使用した。この選択成長用マスクの領域2は光変調器を形成する光吸収領域、領域3は回折格子を形成する第1の光帰還手段の領域、更に領域4は発光領域の対応する。
【0049】
一般に半導体層の選択成長はそのマスクの幅によって成長させる膜厚が調整されることは周知の事項であり、この選択成長はこの原理を用いて、成長の膜厚を調整する。尚、この選択成長技術に関しては、例えばInternational Journal of High Speed Electronics andSystems,Vol.5,No.1(1994)67−90に詳しい。本例では、導波路形成の領域んに対応するマスクの開口部の幅は10μmより30μm程度である。又、領域2、領域3、および領域4におのおの対応したマスク幅は片側の幅を各々30μm、10μm 、60μmとした。
【0050】
前記の選択成長用マスクを用いて周知のMOCVD法(有機金属気相成長法)を用ちいて多重量子井戸構造7を一括形成する。材料系はInGaAsPである。尚、多重量子井戸構造は通例のもので良いので、図4より図7ではその細部構造の図示は省略した。井戸層(ウエル層)は組成波長が1.7μm、障壁層(バリア層)は1.3μmである。周期は8周期である。前述の選択成長用マスクを用いた結果、各領域の結晶成長の結果の膜厚は、領域2、領域3、および領域4におのおの対応して、光吸収領域109,110は0.25μm、分布ブラッグ反射導波路領域108は0.1μm、および活性層領域107は0.3μmである。更に、多重量子井戸構造の端面領域115および116は0.05μmである。図4はこの結晶成長の結果を示している。
【0051】
次いで、図5にみられる様に、分布ブラッグ反射導波路領域108に周知の方法で回折格子を形成する。この領域108の回折格子は、1400nmの波長帯近傍のに発光ピークを有し、約1552nmのブラッグ波長、ストップバンド幅が4nmより6nmである。
【0052】
尚、光吸収領域109および110は1500nmの波長帯近傍に発光ピークを有する。光吸収領域109はモニター用、光吸収領域110は光出力調整用である。発光領域107は1560nmは波長帯近傍に発光ピークを有する。
【0053】
こうして準備した半導体基体に約3μmのp型InP層8および約0.2μmのp型InGaAs層9を周知の方法で結晶成長する。更に、多重量子井戸積層体の持つ光軸と交差する両サイドをいわゆる埋め込みヘテロ構造となす。埋め込み材料はFeドープの高抵抗InPとし、又、埋め込みヘテロ構造の厚さは約5μmとした。光吸収領域2、回折格子の領域3、および発光領域4を分離する為、高抵抗領域9、および10をプロトン打ち込みにより形成し、この表面を覆ってパッシベーション膜として二酸化シリコン層11を形成する。そしてこの二酸化シリコン層11に所定の電極12、13、14、15を形成する。本例の材料はTiPtAuである。電極12は光出力調整用電極、13は光出力モニター用電極、14は回折格子のブラック波長調整が必要な場合に用いる波長チューニング用電極である。15は発振領域の電極である。
【0054】
尚、半導体基板1の裏面に第2電極18を例えばAuGeにて形成する(図6)。
【0055】
そして、半導体になる多重量子井戸構造の光出力端面に周知のAR(Anti−Refrection)膜を、例えば窒化シリコン(SiNx)にて被覆する(図7)。この反射率は0.02%以下とした。
【0056】
図2に見られるように、前記石英光導波路105の終端には光出力モニタ用のフォトダイオード113が配置されている。光部品は屈折率約1.4の樹脂114により充填されておりこれにより、部品端面での光反射を防止している。
【0057】
レーザの共振器は、回折格子付き石英光導波路105、いわゆる活性層を含む発光領域107および分布ブラッグ反射導波路108によって構成される。レーザ発振光は、光吸収層109を通過し変調された後、膜厚テーパ導波路111、光アイソレータ103を介して光ファイバ104に導かれる。
【0058】
こうして形成された半導体発光装置は、前述の図1および図2に示すように、温度制御の為一般に、温度制御手段、通例はペルチエ素子22上に搭載される。光出力調整用電極12は光変調用、光出力モニター電極13は光出力監視用、発振領域電極15は発振出力制御用である。図2には当該半導体光装置とその外部回路との接続が示されている。
【0059】
光出力調整用電極12には外部の変調用の信号源20より信号が印加される。光出力モニター電極13からの信号は制御回路20に伝達される。そして、この制御回路によって発振領域電極15を介して発振は所望光出力に制御される。他方、前述したように回折格子106によって波長選択された光はフォトダイオード113に受光される。この光信号は温度制御用にペルチエ素子に伝達され、ペルチエ素子22による温度制御によって発振波長が制御される。尚、フォトダイオード113よりの信号電極は21に示される。
【0060】
レーザの発振波長は、回折格子106、分布ブラッグ反射導波路108およびレーザ共振器の位相条件によって決定される。この為、作製上、発振波長に分布が生じ易い。この波長分布はストップバンド幅によって影響を受ける。ストップバンド幅は石英光導波路上の回折格子106で決定されるが、約0.3nmと狭い。従って、前記の波長分布もこの程度以下に抑えることができる。
【0061】
従来の単体の半導体レーザ装置の場合に比べ、発振波長のばらつきが非常に小さく抑えることが可能である。しかも、光変調器が集積されているため、低チャープ変調が容易に実現できる。尚、ここで、低チャープ変調とは、光変調の際、前記波長チャーピングの小さい変調のことを指す。
【0062】
このため、波長多重光通信システムの波長設定の簡易化、伝送高速化、長距離化が容易に実現できる。
【0063】
<実施の形態2>
本願発明を適用した波長多重光伝送装置の例を説明する。図7は波長多重光伝送装置の全体構成を示す図、図8は波長多重光送信部の内部構成を示す平面図である。
【0064】
本例の波長帯域は1.55μm帯である。図7に示すように、当該波長多重光伝送装置は、波長多重光送信部201、光前段増幅器202、光ファイバ203、インライン増幅器204、光後段増幅器205、光受信部206から構成される。これらの構成部材の内、特に特徴を有する波長多重光送信部201以外は通例の部材を用いて十分である。従って、これらについての詳細説明は省略する。
【0065】
図8に構成を示すように、波長多重光送信部201は、例えば少なくとも複数の光変調器内臓光源207と合波器208をもって構成される。個別の光変調器内臓光源207は実施の形態1に説明した光伝送装置である。その内部構成は以下に例示する発振波長に適合するよう設計された。発振波長の設定は回折格子の特性と発光層の材質の選択によってなされるが、多くの微小な波長差の設定は回折格子の設計によってなされる。
【0066】
光変調器内臓光源207の各光源は図8ではCh.1、Ch.2、… … Ch.16等と表示されている。各光源の波長は1533.47nmから1557.36nmまで1.6nm間隔で設定した。各々の集積化された光源からの信号光は合波器208を用いて合波する。この合波器自体は通例のもので良い。そして、この合波された波長多重光信号は所望の光システムに送信される。
【0067】
光出力のモニタ値は各光源に内蔵された光出力調整用光吸収部に印加される電圧値にフィードバックされ光出力は一定に保たれる構成である。
【0068】
上述の構成の光伝送装置は、その光源である半導体レーザ装置が経年劣化した場合でも、レーザの駆動電流は増加しない。従って、ジュール熱の増加による波長変動は生じず極めて安定である。
【0069】
次に本願発明に係わる光伝送装置を用いての双方向光伝送システムの構成例を説明する。図9は、光伝送、送信、受信システムの概要を示す図である。光入力209は、一般には多重伝送されているので、分波器210により所定の波長の光が分波される。この光入力209に前述の波長多重光伝送装置が用いられる。そして、半導体レーザ装置213より入射され、ファイバ増幅器212を増幅する為のレーザ光と入力された光とを混合器211で混合し、ファイバ増幅器に入力する。半導体レーザ装置213は一般に冷却装置215にて冷却され、又これらの各要素は自動制御装置214にて制御されている。
【0070】
一般に送信側では各チャネルを周波数軸上で原情報によって変調された搬送波を割り当て順序に従って並べ、光合波器によって送信信号を合成している。一方、受信側では、光分波器で周波数分離された信号を各チャネルごとに設けられた光検波・復調回路を通すことにより原信号を再生している。一本のファイバでの双方向伝送が行われる。
【0071】
本例によらず光システム、光通信システムを構成することが出来る。
【0072】
本願発明の光伝送装置を用いることによって、高信頼性なる波長多重伝送を実現することが出来る。そして、本願発明の方法は、極めて容易な手法で各チャンネルの光波信号波長を安定化することができ、且つ高信頼な波長多重伝送を低コストで実現できる。
【0073】
以上、各種具体例をもって説明したように、本発明に係る波長多重通信装置によれば、容易な手法でチャンネル間の信号品質の揃った高品質な信号伝送が実現できる。さらに、特に送信光源である半導体レーザが経年劣化しても多重化された信号光の波長が変わらない高信頼の光送信装置を低コストで容易に実現できる。
【0074】
【発明の効果】
本願発明は、発振波長の安定な光源を有する光伝送システムを提供出来る。
【0075】
本願発明は、伝送システムに好適であり、且つ外部変調器をモノリシック集積した光送信装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本願発明の実施例を説明するための概略断面図である。
【図2】図2は本願発明の実施例を説明するための概略の斜視図である。
【図3】図3は本願発明に係わる多重量子井戸積層体の形成の為のマスクの平面図である。
【図4】図4は半導体基板に多重量子井戸積層体を形成した状態を示す断面図である。
【図5】図5は多重量子井戸積層体内に回折格子を形成した状態を示す断面図である。
【図6】図6は本願発明の半導体積層体部を形成した状態を示す断面図である。
【図7】図7は本願発明の半導体光装置を示す断面図である。
【図8】図8波長多重光伝送装置の例を示す図である。
【図9】図9は波長多重光光源部を示す図である。
【図10】図10は光通信システムの例を示す図である。
【符号の説明】
1…結晶成長用基板、2…光吸収領域、3…光帰還手段部、4…発光領域、5、6…多重量子井戸積層体の端部、8…InP層、9、10…領域分離領域、11…パッシベーション層、12…光出力調整領域電極、13…光吸収領域電極、15…発光領域電極、16、17…AR膜、18…第2電極、20…制御部IC、21…光モニター用電極、22…光吸収領域電極、23…発光領域電極、24…光出力変調用電極、25…信号電極、26…ペルチエ素子、101…実装基板、102…半導体光素子部、103…光アイソレータ、104…光ファイバ、105…石英光導波路、106…第2の光帰還手段(例えば、回折格子)、107…発光領域(活性層)、108…第1の光帰還手段(例えば、分布ブラッグ反射導波路)、109…光吸収層、110…光出力調整用光吸収層、111…膜厚テーパ導波路、112…低反射膜、113…光出力モニタ用フォトダイオード、114…樹脂、201…波長多重光送信部、202…光前段増幅器、203…光ファイバ、204…インライン増幅器、205…光後段増幅器、206…光受信部、207…集積化光源、208…合波器、209…光信号、210…分波器、211…混合器、212…ファイバ増幅器、213…半導体レーザ装置、214…自動制御装置、215…冷却装置である。

Claims (6)

  1. 入射端面を無反射コーティングした半導体レーザ装置と、別体の反射鏡とを用いた外部反射鏡レーザ装置において、
    前記半導体レーザ装置は、活性層を含む発光領域と、分布ブラッグ反射導波路と、変調器とが順に出射面に向って集積され、
    前記別体の反射鏡のストップバンドの幅が、前記半導体レーザ装置の分布ブラッグ反射導波路のストップバンドの幅より小さいこと特徴とする外部反射鏡レーザ装置。
  2. 請求項1において、
    前記別体の反射鏡は、分布ブラッグ反射鏡であることを特徴とする外部反射鏡レーザ装置。
  3. 請求項1において、
    前記別体の反射鏡のストップバンドの幅は、0.3nmから2nmの範囲にあり、
    前記分布ブラッグ反射導波路のストップバンドの幅は、2nmから20nmの範囲にあることを特徴とする外部反射鏡レーザ装置。
  4. 第1光源と、第2光源と、前記第1光源と前記第2光源とから出力される光信号を合成する合波器と、を備えた伝送装置において、
    前記複数の光源は異なる波長のチャネルを構成し、
    前記光源は、入力端面を無反射コーティングした半導体レーザ装置と、別体の反射鏡とが同じ基板上に実装された外部反射鏡レーザ装置で構成され、
    前記半導体レーザ装置は、活性層を含む発光領域と、分布ブラッグ反射導波路と、変調器とが順に出射面に向かって集積され、かつ、前記別体の反射鏡のストップバンドの幅が、前記半導体レーザ装置の分布ブラッグ反射導波路のストップバンドの幅より小さいこと特徴とする伝送装置。
  5. 請求項4において、
    前記別体の反射鏡は、分布ブラッグ反射鏡であることを特徴とする伝送装置。
  6. 請求項4において、
    前記別体の反射鏡のストップバンドの幅は、0.3nmから2nmの範囲にあり、
    前記分布ブラッグ反射導波路のストップバンドの幅は、2nmから20nmの範囲にあることを特徴とする伝送装置。
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