JP4365159B2 - 光触媒複合粉体 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質無機粉体に光触媒を担持させた光触媒複合粉体に関するものである。本発明の光触媒複合粉体は、水質処理や脱臭効果、大気汚染浄化効果、抗菌効果、セルフクリーニング効果等を必要とする様々な分野で利用できる。
光触媒は、光を照射すると強い酸化還元力(光触媒反応)を生じるため、近年、多くの産業分野で注目され、その用途は拡大の一途をたどっている。例えば、光触媒は、クリーンな光エネルギーを利用して汚染物質を分解することができ、高い酸化還元能を有し、有害気相物質(NOx、SOx、ホルムアルデヒドなど)、真菌類、細菌類等を分解することができるために、抗菌タイル、空気清浄器、生活排水や工業用排水の浄化等、多くの製品に応用されている。また、今日では、二酸化炭素の増加と地球温暖化、NOxやSOx等による大気汚染、有害物質による河川の水質汚染といった地球規模での環境問題が大きく問われており、光触媒反応を利用した環境浄化が注目されている。
最近では、光触媒粉体の光触媒機能を向上させるため、光触媒粉体と鉄化合物を複合した光触媒粉体が報告されている。
例えば、特許文献1では、微粒子酸化チタン粒子の内部や表面に鉄化合物を担持させることにより、優れた光触媒機能を有する酸化チタンを得る方法が開示されている。
特開平7−303835号公報
しかしながら、特許文献1の複合粉体を塗膜や繊維等の支持体に固着して用いる場合、複合粉体同士が、凝集して二次粒子を形成しやすいという問題がある。
さらに、光触媒反応により支持体自体を分解し、劣化させてしまうというおそれもある。酸化チタンへの鉄化合物の担持量を多くすれば、支持体自体を分解し、劣化させてしまうという問題は緩和される傾向となるが、鉄化合物によって酸化チタンが被覆されてしまうため、複合粉体における光触媒活性を有する表面積が減少し、光触媒能が低下してしまうこととなる。
本発明は上記の問題点を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、安価で、無公害な酸化鉄を主成分とする多孔質無機粉体に光触媒を担持させることによって、支持体に固着した場合でも分散性に優れ二次粒子の形成を抑制することができ、支持体自体の劣化を抑制し、かつ、優れた光触媒能を有する光触媒複合粉体が得られることを見出した。
即ち本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.酸化鉄を主成分とする比表面積が40m /g以上の多孔質無機粉体に光触媒を担持してなり、
上記多孔質無機粉体における全金属元素に対するFeの比率が50mol%以上であることを特徴とする光触媒複合粉体。
2.酸化鉄を主成分とする比表面積が40m /g以上の多孔質無機粉体に光触媒及びパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、鉄、銅、銀、金、亜鉛から選ばれる金属を担持してなり、
上記多孔質無機粉体における全金属元素に対するFeの比率が50mol%以上であることを特徴とする光触媒複合粉体。
3.多孔質無機粉体の平均粒子径が、光触媒の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする1.または2.に記載の光触媒複合粉体。
4.酸化鉄が、α―Fe (hematite)、γ―Fe (maghemite)、Fe から選ばれることを特徴とする1.から3.のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
5.光触媒を多孔質無機粉体に対して0.1〜30wt%担持してなることを特徴とする1.から4.のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
6.金属が、であることを特徴とする2.から5.のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
7.金属を多孔質無機粉体に対して0.01〜10wt%担持してなることを特徴とする、2.から6.のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
8.比表面積が40m/g以上であることを特徴とする1.から8.のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
9.平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする1.から8.のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
本発明の光触媒複合粉体は、安価かつ無公害で、水質処理、脱臭、大気汚染浄化等の環境浄化効果、抗菌効果、セルフクリーニング効果等の光触媒効果を有する。また、塗膜、繊維等の支持体に固着させた場合、分散性に優れ二次粒子の形成を抑制することができ、支持体自体の劣化を抑制し、かつ、優れた光触媒能を有する。さらに、塗料等に用いる新規な色彩を有する顔料としても有効である。
以下、本発明をその実施するための最良の形態に基づき詳細に説明する。
(多孔質無機粉体)
本発明の多孔質無機粉体(以下、「多孔質酸化鉄粉体」ともいう。)は酸化鉄を主成分としていれば特に限定されず、公知のものを使用すればよい。
酸化鉄としては、例えば、α―Fe(hematite)、γ―Fe(maghemite)、Fe等が挙げられる。特に、α―Fe(hematite)、γ―Fe(maghemite)を用いた場合、化学的に安定であり、好ましい。また、これらの酸化鉄にAl、Si、Zn、Ca、Sr、Ba、Co、Ni、Bi、Y、ランタノイドから選ばれる少なくとも一種以上の金属元素を部分置換して用いることができる。このような金属元素の含有量を変化させることによって、色彩、磁気特性等を制御することができる。
多孔質無機粉体における全金属元素に対するFeの比率は好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、さらに好ましくは20mol%以上、最も好ましくは50mol%以上である。全金属元素に対するFeの比率が5mol%以上であることにより、光触媒能を十分に発揮することができる。
本発明の無機粉体は多孔質であることを必須とし、好ましくは比表面積が40m/g以上、さらに好ましくは60m/g以上である。無機粉体が多孔質であることにより、ガス吸着能に優れ、また、光触媒の担持量を増加させることができ、光触媒能に優れた複合粉体を得ることができきる。
また、多孔質無機粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01〜100μm、さらには0.1〜50μmであることが好ましい。多孔質無機粉体の粒子径分布、粒子形状などは適宜設定することができる。
多孔質酸化鉄粉体を得る方法としては、酸化水酸化鉄を加熱脱水する方法や、非晶質シリカを担持した酸化鉄粉末を熱処理する方法(例えば、特開2000−290018号公報)等が挙げられる。
酸化水酸化鉄を加熱脱水する方法では、酸化水酸化鉄を空気中、または還元雰囲気下で熱処理することにより、脱水反応が生じて目的とする多孔質酸化鉄粉体を得ることができる。熱処理温度としては、150℃〜500℃の範囲であることが好ましい。この範囲より低い温度では、目的とする脱水反応が起こりにくい。また、この範囲より高い温度では、粒子間の凝集が大きく進行するために、分散性がよく、比表面積が大きい多孔質粉体を得ることができない。
上記の酸化水酸化鉄としては、α―FeOOH(goethite)、β―FeOOH(akaganeite)、γ―FeOOH(lepidocrocite)、δ―FeOOH等を用いることができるが、これらのうち化学的により安定な、α―FeOOH、β―FeOOH、γ―FeOOHをより好適に用いることができる。これらの酸化水酸化鉄にAl、Si、Zn、Ca、Sr、Ba、Co、Ni、Y、ランタノイドから選ばれる少なくとも一種以上の金属元素を部分置換した複合酸化水酸化物も用いることができる。置換元素の含有量を変化させることによって、加熱脱水反応により生じる複合酸化物の色彩、磁気特性等を制御することができる。
なお、これらの酸化水酸化物の粒子径、粒子径分布、粒子形状などを適宜設定することにより、加熱脱水反応により生じる複合酸化物の粒子径、粒子径分布、粒子形状などを制御することができる。
酸化水酸化鉄を製造する方法としては、公知の方法が挙げられるが、例えば、特公昭39−5610、特公昭51−21639、特公昭51−12318、特公昭53−31480、特公平4−42329、特公平6−42889、特公平6−42900、特公平4−22433、特公平4−22433、特公昭54−7292、特公昭59−17050、特開平9−165531、特開平1−182363、特開平3−163172、特公昭46−39681、特公昭53−4078、H.Christensen and A.N.Christensen,Acta Chemica Scandinavica,Series A 32(1978)87、A.L.MacKay,Mineralogical Magagine and Journal of the Mineralogical Society 32 (1960)545等に開示される方法等が挙げられる。また、市販品を用いることもできる。
(光触媒)
本発明で用いる光触媒は、特に制限はなく通常の光触媒を用いることができる。光触媒としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化タングステン等が挙げられ、これらのうち一種以上を用いることができる。特に、二酸化チタン、酸化亜鉛が好ましく用いられる。
光触媒の平均粒子径は特に限定されないが、通常、0.005〜0.25μm、好ましくは0.01〜0.2μm程度である。
さらに本発明では、酸化鉄を主成分とする多孔質無機粉体に、光触媒とともに金属を担持することが好ましい。金属を担持することにより、高い効率で有害物質を分解することができ、水質浄化、脱臭、大気汚染浄化等の環境浄化効果、抗菌効果等の光触媒効果を向上させることができる。この効果は、光照射された光触媒から発生する電子と正孔のうち、電子が金属へ移動するため、電子と正孔との再結合が生じ難くなるためと思われる。
金属としては、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、鉄、銅、銀、金及び亜鉛等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。本発明では、特に、パラジウム、白金、銅、銀、金が好ましく、さらには、白金、銀、金が好ましい。
金属の平均粒子径は、多孔質無機粉体の平均粒子径よりも小さいことが好ましい。金属の平均粒子径としては、特に限定されないが、通常0.005〜0.25μm、さらには0.01〜0.2μmであることが好ましい。
(光触媒複合粉体の製造方法)
本発明光触媒複合粉体の製造方法としては、多孔質無機粉体に光触媒を担持する方法と、多孔質無機粉体に光触媒及び金属を担持する方法がある。
(多孔質無機粉体に光触媒を担持する方法)
多孔質無機粉体に光触媒を担持する方法としては、特に限定されないが、例えば、多孔質酸化鉄粉体に光触媒前駆体を固着した粉体を熱処理する方法、または多孔質酸化鉄粉体の前駆体となる酸化水酸化鉄粒子上に、光触媒前駆体を固着した粉体を熱処理する方法等が挙げられる。
多孔質酸化鉄粒子、または酸化水酸化鉄粒子に対する光触媒前駆体の固着方法としては、沈澱法やスパッタリング法等が挙げられる。沈澱法は、上記の多孔質酸化鉄粒子、または酸化水酸化鉄粒子を混合した溶液中で、中和により金属イオンを水酸化物として析出させる、あるいは、金属アルコキシドを加水分解する等の手段によって、光触媒前駆体を、徐々に多孔質酸化鉄粒子、または酸化水酸化鉄粒子の表面に生成させる方法である。次に、濾過等により溶媒を除去して得られた光触媒前駆体を固着した多孔質酸化鉄粉体、または酸化水酸化鉄粉体を、加熱処理することにより、光触媒を担持した多孔質酸化鉄粉体が得られる。
このとき、光触媒前駆体を固着した酸化水酸化鉄粉体の加熱処理温度は、固着した光触媒によって異なるが、通常、150℃〜500℃の範囲であることが好ましい。
また、光触媒前駆体を固着した多孔質酸化鉄粉体の熱処理温度は、固着した光触媒によって異なるが、通常、500℃以下の範囲であることが好ましい。
本発明では、多孔質酸化鉄粉体または酸化水酸化鉄粒子の粒子径を適宜選択することによって、大きさの揃った光触媒複合粉体、あるいは、ある程度の粒度分布を持つ光触媒複合粉体等、目的に合わせて粒子径を制御できる。
多孔質酸化鉄粉体に担持される光触媒の重量は、多孔質無機粉体に対して0.1〜30wt%、さらには0.5〜20wt%であることが好ましい。光触媒の重量がこの範囲より少ないと、光触媒能としての効果が小さくなる。また、光触媒の重量がこの範囲よりも多いと、多孔質酸化鉄粉体に担持されない光触媒粒子が生じる恐れがあるため、本発明の目的とする光触媒を担持した光触媒複合粉体のみを作製することが困難となる。
本発明の光触媒複合粉体は、光触媒が多孔質酸化鉄粉体に担持されたものであり、酸化鉄複合により光触媒活性が向上する。さらに、光触媒複合粉体を支持体に固着させた場合、光触媒同士が接触しにくく分散性に優れ、二次粒子の形成を抑制することができ、また、光触媒と支持体が接触しにくく、支持体の劣化を抑えることができる。また、多孔質粒子を用いているためガス吸着等にも優れている。なお、光触媒は多孔質酸化鉄粉体の孔内に多く存在するが、本発明の効果を損なわない程度に、多孔質酸化鉄粉体表面にあってもよい。
本発明は、酸化鉄を主成分とする多孔質無機粉体に光触媒を担持してなる光触媒複合粉体であり、多孔質無機粉体の平均粒子径が、光触媒の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。多孔質無機粉体の平均粒子径が、光触媒の平均粒子径よりも大きいことにより、多孔質無機粉体に担持された光触媒が、塗膜や繊維の支持体と接触しにくく、支持体の劣化を抑制することができ、かつ、優れた光触媒性能を有する。
また、光触媒複合粉体は、BET法にて測定される比表面積が40m/g以上、さらに60m/g以上であることが望ましい。比表面積が40m/g以上であることによって、光触媒としての吸着分解をより効率よく進行させることができる。
光触媒複合粉体の粒子径は、0.01〜100μm、さらには0.1〜50μmであることが好ましい。塗膜や繊維等の支持体に用いた場合、粒子径がこのような範囲であることにより、分散性、隠蔽性に優れており、また紫外線遮蔽能にも優れており、紫外線による支持体の劣化を保護する効果もある。
また本発明の光触媒複合粉体は、少なくともFe成分と光触媒成分を含有する有色の粉体であって、さらに粉体が多孔性を有していることから、色彩性に富んだ、新規な色彩を有する粉体を得ることができる。このような光触媒複合粉体は、塗料等の有色顔料としても用いることができる。
(多孔質無機粉体に光触媒及び金属を担持する方法)
多孔質無機粉体に光触媒及び金属を担持する方法としては、多孔質無機粉体に光触媒を担持した後に金属を担持する方法、多孔質無機粉体に光触媒と金属を同時に担持する方法等が挙げられ、本発明では、多孔質無機粉体に光触媒を担持した後に金属を担持する方法が好適に用いられる。
多孔質無機粉体に光触媒を担持する方法としては、上述の方法を用いればよい。
さらに金属を担持する方法としては、例えば、無電解めっき法、物理蒸着法、メカニカルアロイング法等の方法がある。特に、メカニカルアロイング法は、排出される廃液が少なく、比較的安価な装置が使用できるため、好ましい。
メカニカルアロイング法による金属の担持方法としては、多孔質無機粉体に光触媒を担持させた光触媒複合粉体と、金属を混合する方法、あるいは多孔質無機粉体に光触媒を担持させた光触媒複合粉体と、金属塩溶液及び還元剤を混合する方法等が挙げられる。本発明では、多孔質無機粉体に光触媒を担持させた光触媒複合粉体と、金属塩溶液及び還元剤を混合する方法が好ましい。この方法によれば、金属をより均一に多孔質無機粉体表面に担持することができる。
本発明の金属塩溶液は、還元剤と反応して金属を析出するために用いるものである。このような金属塩溶液の溶質としては、特に限定されないが、例えば、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、鉄、銅、銀、金及び亜鉛等から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むものが好適に用いられ、特にパラジウム、白金、銅、銀、金を含むもの、さらには白金、銀、金を含むものが安定であるために、好ましい。本発明では、このような金属元素の硝酸塩、塩化物、酢酸塩、硫酸塩、アセチルアセトナート、アンミン錯体等の金属塩を用いることもできる。
金属塩溶液の溶媒としては、金属塩を安定に溶解するものあれば限定されず、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体の他、エステル類、ケトン類、エーテル類、n−ヘキサン、n−ペンタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、テルピン油、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類、その他、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
さらに、公知の塩基または酸を用いて、金属塩溶液のpHを0〜14の範囲で適宜調製してもよい。pHを調製することにより、安定な金属塩溶液を作製することができる。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、アンモニア、尿素、アミン類等が挙げられる。また、酸としては、例えば、塩酸、硫酸、酢酸、硝酸、クエン酸、蟻酸等が挙げられる。
還元剤は、金属塩溶液と反応して金属を析出させるの働きをするものである。還元剤としては、例えば、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、あるいはグルコース等の多糖類等が挙げられ、特に、安全性が高く安価な、グルコース等の多糖類が好ましい。
還元剤の混合量としては、金属元素に対して、通常25〜400wt%程度であればよい。
多孔質無機粉体に担持される金属の重量は、多孔質無機粉体に対して0.01〜10wt%、さらには0.1〜9.0wt%であることが好ましい。金属の重量がこの範囲より少ないと、光触媒効果のさらなる向上がみられにくくなる。また、金属の重量がこの範囲よりも多いと、担持された金属により光触媒への光照射が阻害されるため、光触媒効果が低下する場合がある。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
(測定方法)
1.複合粉体の結晶構造は、X線回折装置(RINT−1100,株式会社リガク社製)により解析した。
2.複合粉体の粒子形状、粒子径は、電子顕微鏡(JSM−5310,日本電子株式会社製)により観察した。
3.複合粉体の比表面積は、柴田科学機器工業株式会社製の表面積測定装置P−700型を用いて、死容積測定ガス:ヘリウム、吸着ガス:窒素にて、BET法により測定した。
4.光触媒活性の評価試験
5gの複合粉体をガラス皿に取り、エタノール12.5gを用いて均一に分散した後、110℃で2時間乾燥し、このガラス皿をガラス天板(厚さ5mm)に吊るして反応容器内に固定した。次に、市販のアンモニアガスを通気し、反応容器内のアンモニア濃度が1%に安定したところで通気を止め、UVの照射を開始し、40分後のアンモニアの分解率を測定した。なお、光源には6WのUVランプを使用し、試験体の5cm上部から照射した。
5.色相試験
予め、複合粉体をアクリルシリコン樹脂(固形分50%)に分散し、同樹脂でレッドダウンすることにより、アクリルシリコン樹脂(固形分50%)72重量部、複合粉体10重量部、シンナー18重量部のベース塗料を得た。このベース塗料100重量部に対し、硬化剤10重量部を混合し、標準白紙に0.25mmの塗付厚で塗付け、24時間乾燥し試験体を得た。得られた試験体を、色差計(SPECTROPHOTOMETER CM−3700d、ミノルタ株式会社製)で測定した。
6.隠蔽率試験
色相試験と同様の方法で調合した塗料を、隠蔽率試験紙に0.25mmの塗付厚で塗付け、24時間乾燥し試験体を得た。得られた試験体を、色差計(SPECTROPHOTOMETER CM−3700d、ミノルタ株式会社製)で隠蔽率を測定した。
7.塗膜劣化試験
色相試験と同様の方法で調合した塗料を、予め白色のアクリル樹脂塗料が塗装されたアルミニウム板(70mm×150mm×0.8mm)(JIS H 4000)に0.25mmの塗付厚で塗付け、24時間養生し試験体を得た。得られた試験体の鏡面光沢度(測定角度:60度)(初期光沢度)を光沢度計(マイクロトリグロス、ビックケミー・ジャパン株式会社製)で測定した。結果は図7に示す。また、試験体をサンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)に取り付け、500時間暴露後の光沢度を測定し、初期光沢度と500時間暴露後の光沢度から光沢保持率を算出した。結果は図8に示す。なお光沢保持率は、次式により算出した値である。
光沢保持率(%)=500時間暴露後の光沢度/初期光沢度×100
(実施例1)
針状の形状を有するα−FeOOH(長軸長1μm)20gをエタノール400mlに懸濁し、チタンブトキシド2gを加えた。60分間攪拌混合の後、30%過酸化水素水を28ml加えて、75℃で6時間攪拌した。エタノール―水溶媒を濾過により除去後、乾燥して、チタニアゾル複合α−FeOOHを得た。次に、チタニアゾル複合α−FeOOHを空気中300℃で2時間熱処理することにより、マホガニー色の二酸化チタン―α−Fe複合粉体を得た。
得られた複合粉体のX線回折パターンの解析を行った結果、図1に示すように、α−Feとともにアナターゼ型二酸化チタンが生じていることが確認された。また、電子顕微鏡で観察したところ、長軸長1μm程度の針状の形状を有する酸化チタン―α−Fe複合粉体が観察された。また、比表面積は97.0m/gであった。
アンモニア分解率は80%であり、アンモニアの分解が顕著に起こっており、優れた光触媒活性を有していることがわかった。初期光沢度は、図7に示すように84.1であり、分散性に優れていた。光沢保持率も、図8に示すように100%を保っており、耐侯性にも優れていた。また、塗膜化した時の、色相は、それぞれL値が41.72、a値が28.93、b値が23.65であり、隠蔽率は99.6%であった。
(実施例2)
α−FeOOHに替えて針状のγ−FeOOH(長軸長0.5μm)した以外は、実施例1と同様に作製し、平均粒径を0.5μmとする琥珀色の二酸化チタン−γ−Fe複合粉体を得た。
得られた複合粉体のX線回折パターンの解析を行った結果、図2に示すように、γ−Feとともにアナターゼ型二酸化チタンが生じていることが確認された。また、電子顕微鏡で観察したところ、長軸長0.5μm程度の針状の形状を有する酸化チタン―γ−Fe複合粉体が観察された。また、比表面積は106.3m/gであった。
アンモニア分解率は82%であり、アンモニアの分解が顕著に起こっており、優れた光触媒活性を有していることがわかった。初期光沢度は、図7に示すように84.9であり、分散性に優れていた。光沢保持率も、図8に示すように100%を保っており、耐侯性にも優れていた。また、塗膜化した時の、色相は、それぞれL値が37.50、a値が21.87、b値が19.11であり、隠蔽率は98.9%であった。
(実施例3)
針状の形状を有するα−FeOOH(長軸長1.0μm)20gをイオン交換水1000mlに懸濁し、硝酸亜鉛6水和物2gを加えた。60分間攪拌混合の後、2N水酸化ナトリウム500mlを加えて、100℃で6時間攪拌した。溶媒を濾過により除去後、乾燥して、酸化亜鉛複合α−FeOOHを得た。次に、酸化亜鉛複合α−FeOOHを空気中300℃で2時間熱処理することにより、マホガニー色の酸化亜鉛―α−Fe複合粉体を得た。
得られた複合粉体のX線回折パターンの解析を行った結果、図3に示すように、α−Feとともにアナターゼ型二酸化チタンが生じていることが確認された。また、電子顕微鏡で観察したところ、長軸長1.0μm程度の針状の形状を有する酸化亜鉛―α−Fe複合粉体が観察された。また、比表面積は47.8m/gであった。
アンモニアの分解率は60%であり、アンモニアの分解がある程度起こっており、光触媒活性を有していることがわかった。初期光沢度は、図7に示すように83.9であり、分散性に優れていた。光沢保持率も、図8に示すように100%を保っており、耐侯性にも優れていた。また、塗膜化した時の、色相は、それぞれL値が41.50、aが28.30、b値が23.77、隠蔽率は98.8%であった。
(実施例4)
実施例1で得られた二酸化チタン―α―Fe複合粉体10.0g、硝酸銀0.025g、蒸留水20.0g、25%アンモニア水10.0g、グルコース2.0gを混合し、ジルコニア製ビーズ(直径3mm)、遊星型ボールミル(フリッチュ社製)を用いて、回転速度450rpm、温度25℃で、150分間、混合・粉砕した。その後、固液分離して洗浄し、100℃で2時間乾燥して、やや暗褐色がかったマホガニー色の銀―二酸化チタン―αFe複合粉体を得た。
得られたX線回折パターンの解析を行った結果、α―Fe複合粉体、アナターゼ型二酸化チタンとともに銀が生じていることが確認された。また、電子顕微鏡で観察したところ、長軸長1.0μm程度の針状の形状を有する、銀―二酸化チタン―αFe複合粉体が観察された。また、比表面積は103.2m/gであった。
アンモニア分解率は89%であり、アンモニア分解が顕著に起こっており、優れた光触媒活性を有していることがわかった。初期光沢度は、図7に示すように83.1であり、分散性に優れていた。光沢保持率も、図8に示すように100%を保っており、耐光性にも優れていた。また、塗膜化した時の、色相はそれぞれL値が40.62、a値が27.53、b値が21.54であり、隠蔽率は99.8%であった。
(比較例1)
多孔性を有さない酸化鉄(平均粒子径0.16μm)を用い、その表面をチタニアゾルでコーティングし、空気中70℃で乾燥することにより、赤褐色のアナターゼ型二酸化チタン複合粉体を得た。
得られた複合粉体のX線回折パターンの解析を行った結果、図4に示すように、α−Feとともにアナターゼ型二酸化チタンが生じていることが確認された。比表面積は12m/gであった。
アンモニアの分解率は70%であり、アンモニアの分解がある程度起こっており、光触媒活性を有していることがわかった。しかし、実施例に比べ分散性が劣るため、初期光沢度は、図7に示すように70.1であった。光沢保持率は、図8に示すように86.8%であり、耐侯性に劣る結果となった。また、塗膜化した時の、色相は、それぞれL値が37.12、aが28.40、b値が13.35、隠蔽率は99.0%であった。
(比較例2)
市販のシリカゲル(富士シリシア化学株式会社製、サイリシア370(商品名)、平均粒子径0.30μm)を用い、チタニアゾルでコーティングし、空気中70℃で乾燥することにより、乳白色の二酸化チタン−シリカゲル複合粉体を得た。
得られた複合粉体のX線回折パターンの解析を行った結果、図5に示すように、シリカゲルとともにアナターゼ型二酸化チタンが生じていることが確認された。比表面積は280m/gであった。
アンモニア分解率は82%であり、アンモニアの分解が顕著に起こっており、優れた光触媒活性を有していることがわかった。しかし、実施例に比べ分散性が劣るため、初期光沢度は、図7に示すように68.1であった。光沢保持率は、図8に示すように74.9%であり、耐侯性に劣る結果となった。また、塗膜化した時の、色相は、それぞれL値が94.37、aが−0.62、b値が2.47、隠蔽率は7.8%であった。
(比較例3)
乳白色のアナターゼ−ルチル複合型二酸化チタン(テブサ株式会社製、P25(商品名)、平均粒子径0.16μm)を用いて、X線回折パターンの解析を行った結果、図6に示すように、アナターゼ型とルチル型の複合型二酸化チタンが確認された。
アンモニア分解率は70%であり、アンモニアの分解がある程度起こっており、光触媒活性を有していることがわかった。しかし、実施例に比べ分散性が劣るため、初期光沢度は、図7に示すように68.3であった。光沢保持率は、図8に示すように73.1%であり、耐侯性に劣る結果となった。また、塗膜化した時の、色相は、それぞれL値が94.02、aが−0.62、b値が2.05、隠蔽率は52.9%であった。
実施例1で作製した粉体の粉末X線回折パターンである。 実施例2で作製した粉体の粉末X線回折パターンである。 実施例3で作製した粉体の粉末X線回折パターンである。 比較例1で作製した粉体の粉末X線回折パターンである。 比較例2で作製した粉体の粉末X線回折パターンである。 比較例3の粉体の粉末X線回折パターンである。 実施例1〜4及び比較例1〜3の初期光沢度グラフである。 実施例1〜4及び比較例1〜3の光沢保持率グラフである。

Claims (9)

  1. 酸化鉄を主成分とする比表面積が40m /g以上の多孔質無機粉体に光触媒を担持してなり、
    上記多孔質無機粉体における全金属元素に対するFeの比率が50mol%以上であることを特徴とする光触媒複合粉体。
  2. 酸化鉄を主成分とする比表面積が40m /g以上の多孔質無機粉体に光触媒及びパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、鉄、銅、銀、金、亜鉛から選ばれる金属を担持してなり、
    上記多孔質無機粉体における全金属元素に対するFeの比率が50mol%以上であることを特徴とする光触媒複合粉体。
  3. 多孔質無機粉体の平均粒子径が、光触媒の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光触媒複合粉体。
  4. 酸化鉄が、α―Fe (hematite)、γ―Fe (maghemite)、Fe から選ばれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
  5. 光触媒を多孔質無機粉体に対して0.1〜30wt%担持してなることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
  6. 金属が、であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
  7. 金属を多孔質無機粉体に対して0.01〜10wt%担持してなることを特徴とする、請求項2から請求項6のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
  8. 比表面積が40m/g以上であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の光触媒複合粉体。
  9. 平均粒子径が0.01〜100μmであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の光触媒複合粉体。

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