JP4363970B2 - アルミニウム材の表面処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる、押出材や圧延材等のアルミニウム材表面の金属光沢を均一に制御し、仕上り外観に斑のない均一な低光沢表面状態を有する表面処理アルミニウム材を製造するためのアルミニウム材の表面処理方法に関する。
特開平3−047937号公報 特開平3−257177号公報 特開平5−070906号公報 特開平6−336682号公報 特開2003−027282号公報 特開2003−027283号公報 特開2003−027284号公報 特開2003−027285号公報 特開2003−027286号公報 特開2003−027287号公報
アルミニウム材は、軽量で耐蝕性や耐久性、加工性、表面処理性等に優れており、また、適度な強度を有することから、外装材、内装材、表層材等の建築材料や電気機器等のケーシング材料を始めとして、極めて多くの分野で広範囲に使用されている。
そして、このようなアルミニウム材については、その使用目的に応じて周囲の環境との調和や意匠性等の向上を図る目的で、梨地処理、ブラスト処理等の方法で表面光沢を調整したり、あるいは、電解着色処理、塗装処理等の方法で着色する表面処理が行われたりしている。
この種の表面処理の具体例としては、例えば、Fe、Mn、Zr、Si、Cr、Mg、Zn、Cu等の合金成分の添加量を調整し、粗面化処理で表面色調を白色に調整した後に陽極酸化処理を施して色調が白色のアルミニウム材を得る方法(特許文献1)、熱処理とエッチング処理を施して結晶粒を粗大化させ、結晶模様を有するアルミニウム材を得る方法(特許文献2)、完全軟化焼鈍処理を施した後に塑性変形を加え、次いで熱処理を施して結晶粒を粗大化させ、結晶模様を有するアルミニウム材を得る方法(特許文献3)、Fe成分とCu成分とを所定の割合で含むAl−Mg−Si系合金を押出加工し、次いでエッチング処理して結晶模様を有するアルミニウム材を得る方法(特許文献4)が提案されている。更に、酸化皮膜処理の後、アノード電解処理、アルカリ処理する方法(特許文献5〜10)等が提案されている。
しかしながら、このような従来の表面処理方法では、アルミニウム材の表面に付与される表面光沢の選択の幅が狭く、観察角度によって色調が異なる角度依存性があり、また、処理後の外観を制御できないために表面光沢や色調において均一性や再現性に乏しく、更に、特に建築材料等の分野で嗜好の多様化に伴って要求される広範囲でバラエティに富む表面光沢や色調、特に手で触れてもザラザラした感じがあり、金属光沢感がなくて目にやさしいザラザラ感を有する表面光沢や色調に対応できないという問題があった。また、酸化皮膜処理の後、アノード電解処理、アルカリ処理する方法によっては、これらの問題を解決したが、より、再現性の良い、低光沢のアルミニウム材を達成する表面処理方法が求められていた。
そこで、本発明の目的は、素材形成時の圧延痕や押出痕等が消失すると共に、表面光沢や色調において均一性や再現性に富み、広範囲に亘って極めて低い表面光沢度を付与することができるアルミニウム材の表面処理方法を提供することにある。
本発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討した結果、アルミニウム材を脱脂処理して表面に付着する油脂類等の汚れを除去した後、陽極酸化処理等の酸化処理に続いて、酸性水溶液中での酸エッチングを行い、更に引き続いてアルカリ性水溶中でのアルカリエッチングを行うことにより、表面光沢や色調において均一性や再現性に富み、広範囲に亘って制御された目にやさしいザラザラ感のある表面光沢や色調を付与することができ、同時にアルミニウム素材に由来する圧延痕や押出痕等も消失しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、押出加工又は圧延加工により形成されたアルミニウム材の表面の脱脂を行う第一工程と、酸化皮膜を形成する酸化処理を行う第二工程と、酸性水溶液において酸エッチング処理を行う第三工程と、アルカリ性水溶液中に浸漬してアルカリエッチング処理を行う第四工程とを含む低光沢表面処理方法であり、前記第一工程が無浸食脱脂工程であって、この無浸食脱脂工程の前後におけるアルミニウム材の表面粗さの変化量ΔRaが0.05μm以下であることを特徴とする。
本発明のアルミニウム材の表面処理方法は、第一工程において、該アルミニウム材表面を脱脂処理する前処理工程を含み、第一工程においてエッチング処理しないことが好ましい。これにより、第一工程におけるアルミニウム材表面の粗度改変を防止し、第三乃至第四工程における酸エッチング処理及びアルカリエッチング処理のみで表面光沢を制御することができる。
本発明のアルミニウム材の表面処理方法において、無浸食脱脂工程とは、アルミニウム材表面の油脂分等の汚れを除去する工程であって、アルミニウム材表面を実質的に浸食しない工程を云う。この無浸食脱脂工程については、界面活性剤法、有機溶剤法、硫酸法、リン酸法等の、常法の工程に従って行うことができる。
本発明のアルミニウム材の表面処理方法においては、前処理乃至第一工程において、アルミニウム材表面を高濃度の水酸化ナトリウム水溶液で処理することをしないので、従来、前処理として高濃度の水酸化ナトリウム水溶液でエッチングした際の、水酸化ナトリウム濃度の変動による、アルミニウム材表面粗さのバッチ間の変動を抑えることができ、生産性の向上に寄与することができる。また、前処理エッチングによるアルミニウム材の過度の消耗を防ぐこともできる。
本発明のアルミニウム材の表面処理方法により、第四工程のアルカリエッチング処理後の表面処理アルミニウム材は、光沢度6以下、表面粗さ(Ra)9μm以下とすることができる。第四工程のアルカリエッチング処理後の表面処理アルミニウム材は、より好ましくは、光沢度5以下、表面粗さ(Ra)3〜6μmである。
本発明において、アルミニウム材の表面に酸化皮膜を形成せしめる第二工程の酸化処理には、多塩基酸及び/又はその塩を含む水溶液中での陽極酸化処理、酸素雰囲気中における熱酸化処理又は熱水溶液中に浸漬する水和酸化処理がある。
本発明において、アルミニウム材の表面に陽極酸化皮膜を形成せしめる第二工程の酸化処理で使用される多塩基酸及び/又はその塩としては、例えば、ホウ酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、酒石酸等の多塩基酸や、そのアンモニウム、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等の塩を挙げることができる。これらはその1種のみを単独で用いることができるほか、2種以上を混合して得られた混酸及びその塩として用いることもできる。
そして、このような多塩基酸及び/又はその塩を含む水溶液としては、例えば、四ホウ酸ナトリウム-ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の中性浴や、硫酸、リン酸、シュウ酸、酒石酸等の酸性浴を挙げることができ、中性浴を用いる場合には、形成される陽極酸化皮膜が障壁型皮膜を形成しているので、その膜厚を実用上0.01〜1μmの範囲とするのがよく、また、酸性浴を用いる場合には、形成される陽極酸化皮膜が多孔質皮膜を形成しているので、その膜厚を実用上0.01〜10μmの範囲とするのがよい。この陽極酸化皮膜の膜厚が不足すると凹凸の均一性が低下し、反対に、必要以上に厚くしても効果の向上が認められず、時間及び電力の点で経済的でない。
この第二工程の陽極酸化処理における処理条件については、中性浴を用いるか又は酸性浴を用いるか、形成される陽極酸化皮膜の膜厚をどの程度に設計するか等によって異なるが、例えば、中性浴の場合には、浴濃度1〜300g/l、pH4〜10、浴温度0〜80℃、定電流(電流密度)1〜100A/m2、最終電圧10〜1000V(好ましくは10〜500V)であり、また、酸性浴の場合には、浴濃度1〜300g/l、浴温度0〜50℃、定電流(電流密度)5〜300A/m2又は定電圧5〜150V、時間5〜3600秒である。
本発明において、第二工程の酸化処理として熱酸化皮膜を形成せしめる処理条件は、アルミニウム材を酸素雰囲気中で、加熱温度300〜600℃、好ましくは450〜550℃で、加熱時間が5〜60分、好ましくは5〜30分である。加熱温度が300℃に達しない、又は加熱時間が5分に満たない熱酸化処理では、アルミニウム材の表面に十分な熱酸化皮膜が生成されず、第三乃至第四工程において均一な凹凸の分布が得られない。反対に、加熱温度が600℃を超えるとアルミニウム材の溶融が生じてしまう。また、加熱時間が60分を超える熱酸化処理では、例えば、本発明の表面処理方法を適用するアルミニウム材が、JIS A6063等のAl−Mg−Si系合金のアルミニウム材である場合、Mg2Siの時効析出が進行して、十分な材料強度が得られなくなる。
この熱酸化処理における加熱温度は、理論的にはアルミニウム材の表面に熱酸化皮膜をできるだけ均一に形成せしめるための温度ということであり、具体的には、加熱温度が450℃以下では、熱酸化処理の時間に比例してアルミニウム材の表面に無定型γ−アルミナの緻密な皮膜が生成し、500℃以上では、熱酸化処理の初期には緻密な無定型γ−アルミナの皮膜が生成し、その後は結晶性のγ−アルミナが生成する。
ここで、無定型のγ−アルミナは、アルミニウム材の表面に均一に生成するため、アルミニウム材の表面酸化物の厚さは均一となる。また、結晶性のγ−アルミナは、アルミニウム材の表面に点在するように生成し、加熱温度が高温になるほど、また、加熱時間が長くなるほどその生成量が多くなり、アルミニウム材の表面を被覆する。熱酸化皮膜を形成したアルミニウム材は、第三工程の酸エッチング処理を施すと、熱酸化皮膜の欠陥部を破壊してピットを形成するが、この際に、結晶性酸化物によって被覆された部分は、他の部分に比べ、破壊が起こりにくくなる。従って、アルミニウム材の表面に形成されるピットの数は、結晶性のγ−アルミナの被覆率が高くなるにつれ少なくなる。
本発明において、第二工程の酸化処理として水和酸化皮膜を形成せしめる第二工程は、アルミニウム材の表面に水和酸化皮膜を生成させる処理であればよく、アルミニウム材を熱水中に浸漬する熱水処理であっても、アルミニウム材を水蒸気雰囲気中に放置する水蒸気処理であってもよい。この熱水処理、又は水蒸気処理は、理論的にはアルミニウム材の表面に擬似ベーマイト皮膜を形成せしめるためのものであり、表面に水和酸化皮膜を形成したアルミニウム材に対し、第三工程の酸エッチング処理を施すと、水和酸化皮膜の一部が破壊され、アルミニウム材の表面にピットを形成させることができる。
本発明の上記第二工程における熱水処理の処理条件は、熱水が温度60℃以上、好ましくは80℃以上、pH5〜10の水溶液であって、アルミニウム材を熱水に浸漬する浸漬時間が1〜30分である。水溶液の温度が60℃未満、又はpHが5より小さい、又はpHが10を超える、又は浸漬時間が1分未満の熱水処理では、アルミニウム材の表面に十分な厚さの水和酸化皮膜が生成されず、均一な外観を得ることができない。反対に、浸漬時間が30分を超える浸漬を行っても、効果の向上は認められず、時間及び熱量の点で経済的ではない。
また、水和酸化皮膜の生成を促進するために、上記水溶液にアルカリ性添加剤を加えてもよく、具体的には、アンモニア及び/又はアミノアルコールを使用してもよい。アミノアルコールとしては、トリエタノールアミンが望ましい。また、上記アルカリ性添加剤の濃度は0.1〜1質量%、好ましくは0.3〜0.5質量%である。第二工程における水蒸気処理の処理条件は、温度75〜200℃、好ましくは75〜120℃の飽和水蒸気雰囲気中に、アルミニウム材を放置する放置時間が1〜30分、好ましくは3〜20分である。
また、本発明において、第三工程における酸性水溶液は、アルミニウム材を浸蝕する化合物から成る水溶液であることが好ましい。アルミニウム材を浸蝕する化合物は、例えば、フッ酸、塩酸、硝酸、第二銅化合物又は第二鉄化合物の少なくとも一種から成る。この際に用いられる第二銅化合物及び第二鉄化合物には塩酸、硝酸、酢酸、硫酸等の塩が挙げられ、好ましくは塩化第二銅、硝酸第二銅、硫酸第二銅、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、酢酸第二鉄、硝酸第二鉄等が挙げられる。フッ酸、塩酸、硝酸、第二銅化合物又は第二鉄化合物は、その1種のみを単独で用いてもよいほか、2種以上を混合して得られた混酸及びその塩として用いてもよい。この第三工程の酸エッチング処理により、第二工程の酸化処理によってアルミニウム材の表面に形成された酸化皮膜を破壊し、このアルミニウム材の表面に極めて微細なピットが均一に形成される。
この第三工程の酸エッチング処理における処理条件については、溶質濃度が好ましくは10〜300g/l、より好ましくは30〜200g/lであり、また、処理温度が好ましくは20〜50℃、より好ましくは25〜40℃であり、更に、処理時間が好ましくは20分以下、より好ましくは3〜15分である。この酸性水溶液による酸エッチング処理は、溶質濃度10g/l以上、処理温度20℃以上で進行し、反対に、溶質濃度が200g/lより高くなったり、あるいは、処理温度が50℃より高くなったりすると、化学溶解反応が激しくなって微細な凹凸の抑制が難しくなり、また、処理時間が20分を超えると均一溶解が過度に進行してかえって凹凸が目立たなくなるほか、アルミニウムの溶解減量も大きくなって好ましくない。
また、本発明においては、上記第三工程の酸エッチング処理として、電解処理と上記の浸漬処理を組み合わせて行うことができる。電解処理における処理条件については、使用する酸性水溶液の種類(塩酸、硝酸、酢酸、及び過塩素酸)によっても異なるが、通常、1〜500g/l、好ましくは1〜200g/lの濃度の処理液を用い、液温度10〜60℃、好ましくは20〜50℃の範囲で、アルミニウム材を陽極として電流密度0.1〜3A/dm2、好ましくは0.5〜2.5A/dm2の直流、商用交流、矩形波交流、パルス波形等の電流を2〜180秒間通電し、アノード電解を行う。この電解処理により、第二工程の酸化処理によってアルミニウム材の表面に形成された酸化皮膜全面に均一な微細なピットを形成させる。
そして、本発明においては、上記第三工程の酸エッチング処理に引き続いて、第四工程としてアルカリ性水溶液中に浸漬するアルカリ処理を行う。第四工程では、第三工程で生成したピットを拡大することができる。この第四工程のアルカリ処理における処理条件については、遊離アルカリ濃度が好ましくは20〜100g/l、より好ましくは40〜70g/lであり、処理温度が好ましくは30〜70℃、より好ましくは40〜60℃であり、また、pH値が好ましくは13以上であり、更に、処理時間が好ましくは3〜20分、より好ましくは5〜15分である。遊離アルカリ濃度20g/l未満、処理温度30℃未満、又はpH値13未満では、いずれの場合も、溶解速度が遅く、生産性が低下する。反対に、遊離アルカリ濃度100g/l超、又は処理温度70℃超では、溶解速度が速くなりすぎる。ピットの拡大も過多となり、表面がなだらかになってしまい、所望の表面状態を得るのが困難になる。
また、処理時間についても、遊離アルカリ濃度、処理温度、pH値等の条件によっても異なるが、3分に達しない短時間浸漬では均一溶解が進行せずに所望の凹凸を得ることが難しく、また、20分を超える長時間浸漬では均一溶解が過度に進行してかえって凹凸が目立たなくなるほか、アルミの溶解減量も大きくなって好ましくない。
更に、必要に応じて、上記第四工程のアルカリ処理の後に、スマット除去処理、中和処理、陽極酸化処理、染色又は金属の電解析出による着色処理、あるいは封孔処理又は電着塗装等の塗装処理を行ってもよく、また、これらの処理に代えて、クロメート処理を行ってもよい。これらの陽極酸化処理、着色処理、封孔処理、電着塗装処理及びクロメート処理については、従来公知の方法で実施することができる。
本発明のアルミニウム材の表面処理方法によれば、第一工程の脱脂処理によりアルミニウム材表面に付着する油脂類等の汚れを除去し、表面粗度を改変しない前処理をし、第二工程の酸化処理によりアルミニウム材の表面に酸化皮膜を形成せしめ、次いで第三工程の酸エッチング処理及び第四工程のアルカリエッチング処理を行うことによりこの酸化皮膜を破壊し、アルミニウム材の素地の金属組織に影響されること無く、このアルミニウム材の表面に均一かつ微細で大きさの揃ったピットを形成せしめ、素材形成時の圧延痕や押出痕等が消失すると共に、表面光沢や色調において均一性や再現性に富み、広範囲に亘って制御された表面光沢や色調を付与することができる。
以下、実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
A6063アルミニウム押出形材を、前処理として、市販界面活性剤濃度5g/l、浴温50℃の水溶液中に300秒間浸漬し、このアルミニウム押出形材表面の油脂分を除去した(第一工程)。
次に、前処理済のアルミニウム押出形材を硫酸濃度150g/lの水溶液中、浴温20℃及び電流密度100A/m2で180秒間定電流にて陽極酸化した(第二工程)。次いで、浴温40℃及び塩酸濃度100g/lの水溶液中に300秒間浸漬してアルミニウム押出形材表面に多数の微細なピットを形成せしめた(第三工程)。更に、水酸化ナトリウム濃度50g/l、浴温50℃の水溶液中に600秒間浸漬して、第三工程で形成された微細ピットを拡大させ(第四工程)、表面処理されたアルミニウム押出形材を得た。
得られたアルミニウム押出形材の光沢度及び表面粗さ(Ra、Rmax)を測定した。この表面処理アルミニウム押出形材は、その光沢度及び表面粗さにおいてバラツキがなく、触感においても視覚においても凹凸のザラツキ感があり、表面光沢度が極めて低く、質感のある均一な表面外観であった。また、アルミニウム押出形材に特有のダイスマークが消失し、アルミニウム押出形材の表面欠陥(ウエルダーラインやストリーク等)がなく、表面品質が安定した。
実施例1と同様の第一工程を経て油脂分を除去したアルミニウム押出形材をシュウ酸濃度30g/lの水溶液中、浴温25℃及び電流密度50A/m2で120秒間定電流にて陽極酸化した(第二工程)。次いで、浴温が40℃で、塩酸濃度100g/l及び塩化第二鉄40g/lの混合水溶液中に300秒間浸漬してアルミニウム押出形材表面に多数の微細なピットを形成せしめた(第三工程)。更に、水酸化ナトリウム濃度50g/l、浴温50℃の水溶液中に600秒間浸漬して、第三工程で形成された微細ピットを拡大させ(第四工程)、表面処理されたアルミニウム押出形材を得た。
得られたアルミニウム押出形材の光沢度及び表面粗さ(Ra、Rmax)を実施例1と同様にして測定した。次いで、このアルミニウム押出形材を陽極酸化、電解着色及び艶消し電着塗装を行い処理を終了した。この実施例2の表面処理アルミニウム押出形材は、その光沢度及び表面粗さにおいてバラツキがなく、触感においても視覚においても凹凸のザラツキ感があり、表面光沢度が極めて低く、質感のある均一な表面外観であった。また、アルミニウム押出形材に特有のダイスマークが消失し、アルミニウム押出形材の表面欠陥がなくて均一な表面外観であった。
A6063アルミニウム押出形材を、前処理として、硫酸80g/l、浴温25℃の水溶液中に240秒間浸漬し、このアルミニウム押出形材表面に付着した油脂分を除去した(第一工程)。次に、この前処理済みのアルミニウム材を、濃度50g/lのホウ酸アルミニウム水溶液中、浴温30℃及び電流密度10A/m2、最終電圧80Vの条件で陽極酸化した(第二工程)。次いで、濃度100g/lの塩酸水溶液中、浴温20℃、電流密度100A/m2、及び処理時間60秒の条件でアノード電解処理して多数の微細なピットを形成せしめ、更に、濃度100g/lの塩酸水溶液中、浴温30℃、及び処理時間120秒の条件で浸漬してピットを拡大させた(第三工程)。また、濃度50g/lの水酸化ナトリウム水溶液中、浴温50℃、10分の条件で浸漬して、上記第三工程の塩酸エッチング処理で形成されたピットを更に拡大させ(第四工程)、表面処理されたアルミニウム合金押出形材を得た。
得られたアルミニウム押出形材の光沢度及び表面粗さ(Ra、Rmax)を実施例1と同様にして測定した。この実施例3の表面処理アルミニウム押出形材は、その光沢度及び表面粗さにおいてバラツキがなく、触感においても視覚においても凹凸のザラツキ感があり、表面光沢度が極めて低く、質感のある均一な表面外観であった。また、アルミニウム押出形材に特有の圧延模様(ダイスマーク)が消失し、アルミニウム押出形材の表面欠陥(ウェルダーラインやストリーク等)がなくて均一な表面外観であった。
実施例3と同様の第一工程を経て油脂分を除去した前処理済みのアルミニウム押出形材を電気炉にて空気中で500℃、300秒間加熱処理して熱酸化皮膜した(第二工程)。次いで、浴温40℃及び塩酸濃度100g/lの水溶液中に300秒間浸漬してアルミニウム押出形材表面に多数の微細なピットを形成せしめた(第三工程)。更に、水酸化ナトリウム濃度50g/l、浴温50℃の水溶液中に600秒間浸漬して、第二工程で形成された微細ピットを拡大させ(第四工程)、表面処理されたアルミニウム押出形材を得た。
得られたアルミニウム押出形材の光沢度及び表面粗さ(Ra、Rmax)を測定した。この表面処理アルミニウム押出形材は、その光沢度及び表面粗さにおいてバラツキがなく、触感においても視覚においても凹凸のザラツキ感があり、表面光沢度が極めて低く、質感のある均一な表面外観であった。また、アルミニウム押出形材に特有のダイスマークが消失し、アルミニウム押出形材の表面欠陥がなく、表面品質が安定した。
A6063アルミニウム押出形材を、前処理として、硫酸濃度100g/lの水溶液中、浴温20℃にて180秒間浸漬し、このアルミニウム押出形材表面の油脂分を除去した(第一工程)。
次に、この前処理済のアルミニウム合金押出形材を硫酸濃度150g/lの水溶液中、浴温20℃及び電流密度100A/m2で200秒間定電流にて陽極酸化した(第二工程)。次いで、浴温30℃及び塩酸濃度100g/lの水溶液中で電流密度100A/m2、及び通電時間60秒の条件でアノード電解して多数の微細なピットを形成せしめ、更に、濃度100g/lの塩酸水溶液中、浴温30℃、及び処理時間120秒の条件で浸漬してピットを拡大させた(第三工程)。更に、濃度50g/lの水酸化ナトリウム水溶液中、浴温50℃、10分の条件で浸漬して、上記第三工程の酸エッチング処理で形成されたピットを更に拡大させ(第四工程)、表面処理されたアルミニウム合金押出形材を得た。
得られたアルミニウム押出形材の光沢度及び表面粗さ(Ra、Rmax)を測定した。この表面処理アルミニウム押出形材は、その光沢度及び表面粗さにおいてバラツキがなく、触感においても視覚においても凹凸のザラツキ感があり、表面光沢度が極めて低く、質感のある均一な表面外観であった。また、アルミニウム押出形材に特有のダイスマークが消失し、アルミニウム押出形材の表面欠陥(ウエルダーラインやストリーク等)がなく、表面品質が安定した。また、実施例5を10個のアルミニウム押出形材に実施して、得られた10個の表面処理されたアルミニウム押出形材のRaのバラツキを求めたところ、σ=0.15μmであった。
次いで、このアルミニウム押出形材を陽極酸化、電解着色及び艶消し電着塗装を行い処理を終了した。この実施例6の表面処理アルミニウム押出形材は、その光沢度及び表面粗さにおいてバラツキがなく、触感においても視覚においても凹凸のザラツキ感があり、表面光沢度が極めて低く、質感と暖かみのある均一な表面外観であった。また、アルミニウム押出形材に特有のダイスマークが消失し、アルミニウム押出形材の表面欠陥がなくて均一な表面外観であった。また、10個のアルミニウム押出形材について実施例6を実施して、Raのバラツキを求めたところ、σ=0.13μmであった。
(比較例1)
第一工程として、硫酸100g/l、浴温20℃の水溶液中に180秒間浸漬する脱脂処理と水酸化ナトリウム50g/l、浴温50℃の水溶液中に300秒間浸漬するエッチング処理と中和処理を行った。次に、この自然酸化皮膜を除去されたアルミニウム押出形材に実施例5と同様の第二乃至第四工程の処理を行い、更に、実施例6と同様の陽極酸化、電解着色及び艶消し電着塗装を行い、処理を終了した。この比較例1の処理を10個のアルミニウム押出形材に施し、10個の表面の表面処理アルミニウム合金押出形材を得た。
得られた表面処理アルミニウム合金押出形材の光沢度及び表面粗さ(Ra)を測定した。また、Raのバラツキを求めたところ、σ=0.86μmであった。
実施例1〜6及び比較例1の60度鏡面光沢度と表面粗さの測定値を表1に示す。
Figure 0004363970

Claims (7)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、押出加工又は圧延加工により形成されたアルミニウム材の表面の脱脂を行う第一工程と、酸化皮膜を形成する酸化処理を行う第二工程と、酸性水溶液中で酸エッチング処理を行う第三工程と、アルカリ性水溶液中に浸漬してアルカリエッチング処理を行う第四工程とを含む低光沢表面処理方法であり、前記第一工程が無浸食脱脂工程であって、この無浸食脱脂工程の前後におけるアルミニウム材の表面粗さの変化量ΔRaが0.05μm以下であることを特徴とする、アルミニウム材の表面処理方法。
  2. 第四工程のアルカリエッチング処理後の表面処理アルミニウム材が、光沢度6以下、表面粗さ(Ra)9μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のアルミニウム材の表面処理方法。
  3. 第三工程における酸性水溶液が、アルミニウム材を浸蝕する化合物から成る水溶液である、請求項1に記載のアルミニウム材の表面処理方法。
  4. 第三工程における酸性水溶液の溶質濃度が10〜300g/lであり、該酸エッチング処理温度を20〜50℃とする、請求項1に記載のアルミニウム材の表面処理方法。
  5. 第三工程における酸エッチング処理が電解処理及び/又は浸漬処理である請求項1乃至のいずれかに記載のアルミニウム材の表面処理方法。
  6. 第三工程の電解処理で用いる酸性水溶液が、塩酸、硝酸、酢酸、及び過塩素酸からなる群より選ばれた1種の酸又は2種以上の混酸の水溶液であり、その電解条件が、電流密度0.1〜3A/dm2及び処理時間2〜300秒である請求項5に記載のアルミニウム材の表面処理方法。
  7. 第四工程におけるアルカリ性水溶液の溶質濃度が20〜100g/lであり、該アルカリエッチング処理温度を30〜70℃とし、該アルカリエッチング処理時間を180〜1200秒間とする、請求項1に記載のアルミニウム材の表面処理方法。
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