JP4363903B2 - 除電器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コロナ放電により空気をイオン化する除電器に関し、より詳しく、イオン化した空気を、チューブやノズルなどの小径管を通じてワーク(除電対象物)の近傍まで搬送する形式の除電器に関する。
【0002】
【従来の技術】
除電器を設置するスペースが無い狭い所での除電や、チューブの屈曲性を利用した可動部の除電にチューブ搬送式除電器が活用されている。
【0003】
コロナ放電により空気をイオン化する除電器は、AC(交流)方式とDC(直流)方式の2種類に大別することができるが、その基本原理は、放電針に高電圧を印加してコロナ放電を発生させ、このコロナ放電により空気をイオン化する点で共通している。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−138090号公報
【0005】
特許文献1は、正負のイオンがチューブ内で打ち消し合うのを回避できるように、交流周波数を1kHz以上に設定した高周波ACによるチューブ搬送式除電器つまりイオン生成装置を提案している。図1、図2は特許文献1に添付の図の一部である。図1を参照して、従来のチューブ搬送式除電器1は、空気流路に設けられた拡大室つまりイオン生成室2を有する。イオン生成室2は、その上壁に空気流入ポート3を有し、この空気流入ポート3は、コンプレッサなどの空気供給手段4に連通している。イオン生成室2の下壁にはイオン化空気流出ポート5を有し、このイオン化空気流出ポート5には可撓性導気チューブ6が連結されている。
【0006】
イオン生成室2には放電針7が設けられ、この放電針7は、空気流入ポート3とイオン化空気流出ポート5とを結ぶ軸線に沿って配置されている。対向電極は、実質的に、イオン化空気流出ポート5の回りの下壁8で構成され、この下壁8は接地されている。
【0007】
放電針7には交流高電圧電源9からAC電源が供給される。交流高電圧電源9は、図2に例示するように、商用電源10を電源とする直流回路11及び発振回路12を有し、発振回路12からの高周波電圧を昇圧するトランス13の出力を高電圧ケーブル14を経由して放電針7に供給するようになっている。
【0008】
従来のチューブ搬送式除電器1は、放電針7に所定の電圧を印加してコロナ放電を発生させ、これにより、イオン生成室2に圧送される空気をイオン化し、次いで、イオン化した空気を、流出ポート5、可撓性導気チューブ6を通じてワーク(図示せず)の近傍に吐出する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、除電器は放電部のメンテナンスが必須である。すなわち、チューブなどの小径管を通じてイオン化した空気をワークの近傍まで搬送する形式の除電器は、コンプレッサなどで圧縮した空気を用いるため、除電器に供給される空気には、微少なゴミやオイルミストなどが含まれている可能性があり、このため、放電針7にゴミやオイルミストが付着して正常な放電が起こらなくなる虞がある。また、イオン生成室2の表面にゴミやオイルミストが付着することにより表面抵抗が低下して、沿面放電が発生してしまう虞がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、放電針に付着したゴミを除去する等のメンテナンスが容易な除電器を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる技術的課題は、本発明によれば、
高圧電源部(204)を内蔵した除電器本体(202)と、該除電器本体(202)に脱着可能に装着される放電部ユニット(206)とを有し、前記高圧電源部(204)から高電圧の供給を受けて前記放電部ユニット(206)の放電針(122)がコロナ放電することにより、供給される空気をイオン化し、イオン化した空気を小径管を通じてワークの近傍に吐出することによりワークの除電を行う除電器であって、
該除電器本体(202)に形成された直線状の内部エア通路(104)と;
該内部エア通路(104)のイオン化エア吐出側から挿入することにより前記内部エア通路(104)の軸線方向に脱着可能に装着される前記放電部ユニット(206)であって、該放電部ユニット(206)のユニット本体(210)に脱着可能な支持部材(124)によって前記内部エア通路(104)の軸線上に固定された前記放電針(122)と、前記放電針(122)の先細りの先端部に対向して位置し且つイオン化エア吐出側に向けて縮径する先細り形状の対向電極(132)とで形成された先細り形状のイオン生成室を備えた放電部ユニット(206)と;を有することを特徴とする除電器を提供することにより達成される。
【0012】
すなわち、本発明によれば、除電器本体(202)から放電部ユニット(206)を取り外し、放電部ユニット(206)を除電器本体(202)から取り外した後に、支持部材(124)を放電部ユニット(206)のユニット本体(210)から取り外すことで放電針(122)を露出させて、電極針(122)の掃除を行うことができる。
【0013】
【実施例】
以下に、本発明の好ましい複数の実施例を添付の図面に基づいて説明する。
【0014】
図3は実施例の除電器100の側面図であり、図4は、図3の矢印IV方向から見た正面図である。図3において、図面に向かって右側から圧縮エアが供給され、左側からイオン化エアが吐出される。
【0015】
除電器100は、その断面を図示する図5から理解できるように、除電器本体102の上部に、水平方向に直線状に延びる内部エア流路104が形成され、除電器本体102の下部には、AC高周波高電圧電源部106と制御回路108とが設けられ、ケーブル110を通じて商用電源から電力の供給を受けるようになっている。
【0016】
内部エア通路104は、圧縮エア供給側に配置されたスリーブ状の放電針ユニット112と、イオン化エア吐出側に配置された対向電極ユニット114とで実質的に構成され、これら放電針ユニット112及び対向電極ユニット114は放電部ユニットを構成して除電器本体102に対して脱着可能であり、内部エア通路104の軸線を中心に回転させることにより除電器本体102に螺合される。なお、図5などでは、放電針ユニット112にフィッティング116を装着した状態を示しており、このフィッティング116を介してエア供給チューブ(図示せず)が連結されるが、イオン化エア吐出側においても同様にフィッティング(図示せず)が装着可能であり、このフィッティングを介してイオン化エア吐出チューブが連結される。
【0017】
放電針ユニット112は、図6、図7に図示のように、除電器本体102と螺合するネジ部118を備えた本体スリーブ120を含み、この本体スリーブ120の前端面から放電針122が突出している。放電針122は内部エア通路104の軸線と同一軸線上に配置されている。放電針122は、本体スリーブ120の前端開口部に嵌入された絶縁性支持部材124によって支持され、この絶縁性支持部材124は、放電針122の挿入される円筒状部分126(図6)と、この円筒状部分126から90度間隔で放射状に延びる4つのフィン部分128(図6)とで構成され、隣接するフィン部分128、128で挟まれた空間が上述した内部エア通路104の一部を構成している。図6などに示す参照符号130はシール用のOリングである。
【0018】
対向電極ユニット114は、図5から理解できるように、除電器本体102のイオン化エア吐出側に配置され、内部エア通路104のエアの流れ方向上流側に、イオン化エア吐出側に向けて徐々に縮径する先細りの対向電極部分132と、エアの流れ方向下流側に位置する円筒状部分134とを有し、対向電極部分132は接地されている。対向電極ユニット114は、円筒状部分134の外周に形成されたネジ部136によって除電器本体102に螺着される。
【0019】
AC高周波高電圧電源部106から放電針122への電源の供給は、内部エア通路104に突出して配置された接点140(図8)と、放電針ユニット112の先端面(絶縁性支持部材124の前面)に配置された、例えばステンレス製の導電部材142とを介して行われる。すなわち、導電部材142は放電針122が密に嵌入される小孔を備え、この小孔から、絶縁性支持部材124と同様に90度間隔で放射状に延びる形状を有し、導電部材142の外径端は本体スリーブ120の前端面に固定されている。
【0020】
内部エア通路140に突出した接点140は、放電針ユニット112を除電器本体102に装着すると、導電部材142を介して放電針122と電気的に接続され、高周波高電圧電源部106から放電針122に電源が供給され、放電針122の先端部分と対向電極部分132との間で生成されるコロナ放電により、内部エア通路140を通過するエアがイオン化される。
【0021】
除電器100の内部エア通路104は、上述した説明からも分かるように、放電針ユニット112と対向電極ユニット114とによって実質的に形成され、放電針122回りのイオン生成室は、従来のように拡大したイオン生成室とは異なり、放電針122の先端形状に沿ってエア吐出側に向けて延びる先細りの形状を有する。
【0022】
放電針122などのメンテナンスを行うときには、放電針ユニット112を軸線回りに回転させて除電器本体102とのネジ締結を解除した後に、放電針ユニット112を内部エア通路104の軸線方向上流側(後方)に移動させることにより除電器本体102から抜き取ることができる。また、必要に応じて、対向電極ユニット114も同様に、除電器本体102とのネジ締結を解除した後に内部エア通路104の軸線方向上流側(後方)に移動させることにより除電器本体102から抜き取ることができる。
【0023】
このように、放電針ユニット112及び対向電極ユニット114を除電器本体102から抜き取ってメンテナンスすることができるため、放電針122などのメンテナンス作業を簡単に行うことができる。また、除電器本体102の後方から放電針ユニット112などを抜き取ることができるため、除電器100がワークに接近して設置されている場合でも、メンテナンス作業を簡単に実施することができる。
【0024】
また、放電針122に対する電源供給を、内部エア通路140に突出した接点140及び放電針ユニット112の先端面(絶縁性支持部材124の前面)に配置された導電部材142とを介して行うようになっているため、放電針ユニット112を装着することで、自動的に、高電圧電源部106と放電針122とを電気的に接続することができる。
【0025】
また、図7に参照符号Lで示すように、絶縁性支持部材124のフィン部分128の長さ寸法によって、エアをイオン生成室の直前で整流化することができる。
【0026】
また、放電針122回りのイオン生成室は、従来のように拡大したイオン生成室とは異なり、放電針122の先端形状に沿った先細りの形状を有することから、エアの流量増大に伴う圧力損失も少なくすることができ、放電に必要な電圧を小さくすることができる。
【0027】
図9の実線は、実施例の除電器100に関する流量と圧力損失との関係を示す曲線である。また、同図の破線は、拡大イオン生成室を備えた従来の除電器に関するものであるが、この従来の除電器は、拡大イオン室に圧縮エアが流入する圧縮エア流入ポートと、拡大イオン室から出るイオン化エア吐出ポートとがオフセットした形式のものであった。
【0028】
上述した除電器100にあっては、後方からアクセスすることにより、放電針ユニット112、また、必要に応じて対向電極ユニット114を脱着する形式のものであるが、変形例として、前方つまりイオン化エア吐出側からアクセスするようにしてもよい。
【0029】
図10、図11は変形例の除電器200を示す。なお、図10は、上述した圧縮エア供給チューブ用のフィッティング116を省いた状態で図示してある。除電器200の本体202には、上述した除電器100と同様に、下方領域に、AC高周波高圧電源部及び制御部204が設けられており、上方領域に、内部エア通路104が形成されているが、この内部エア通路104のイオン化エア吐出側は放電部ユニット206によって形成されている。
【0030】
放電部ユニット206は、イオン化エア吐出ポート208を備えた本体210を有し、この本体210の中心孔には、対向電極部分132及び円筒状部分134を備えた第1部材212が嵌入されている。本体210には、また、イオン化エア吐出ポート208を反対側の部分にスリーブ214が嵌合されている。
【0031】
スリーブ214には絶縁性支持部材124が脱着可能に嵌入され、絶縁性支持部材124は、これをスリーブ214の中に挿入したときに上述した対向電極部分132と当接することにより位置決めされる。絶縁性支持部材124は、先に説明した除電器100と同様に、その中心部分に放電針122の基端部分が固設されている。絶縁性支持部材124にはステンレス製の導電部材142が添設され、この導電部材142の中心部分は放電針122の基端面に当接している。
【0032】
スリーブ214は、外周にネジ部216を有し、放電部ユニット206を除電器本体202のイオン化エア吐出側から挿入して、放電部ユニット206を軸線回りに回転させることにより、ネジ部216によって除電器本体202に螺着させることができ、放電部ユニット206の装着が完了すると、導電部材142が接点140と当接した状態となる。
【0033】
放電針122などのメンテナンスが必要なときには、放電部ユニット206を逆方向に回転させて除電器本体202とのネジ締結を解除することにより、放電部ユニット206を除電器200の前方(イオン化エア吐出側)に抜き取り、放電部ユニット206のスリーブ214から絶縁性支持部材124を抜き取ることにより放電針122及び対向電極部分132を露出させることができる。
【0034】
この変形例の除電器200では、放電針122を露出させるのに、絶縁性支持部材124をスリーブ214から抜き取るようにしたが、スリーブ214と絶縁性支持部材124とを固定し、スリーブ214をユニット本体210に脱着可能に設計してもよい。
【0035】
上述した除電器100及び200は最も好ましい例として高周波AC電源方式の除電器を例に説明したが、従来から知られているAC高圧電源にも同様に適用することができる。交流高圧電源を用いた除電器は、図12に図示するように、交流高電圧電源部106から放電針122に電源を供給し、対向電極134を接地することで、コロナ放電を生成するのが通常である。したがって、交流高電圧電源部106は、接地した対向電極134との間で所望のコロナ放電を生成するのに足りる電圧V0まで昇圧する必要がある(図13)。
【0036】
放電針122と対向電極132とを含むイオン生成室は、供給されるエアの流量の増加に伴ってイオン生成室内部の圧力が上昇し、このため、放電を維持するのに必要な電圧も上昇する(図13)。したがって、供給されたエアをイオン化してこれを吐出する形式の除電器にあっては、供給されるエアの流量が増大してイオン生成室の内部圧力が上昇した場合でもイオンを発生させることのできる高圧電源が必要となる。
【0037】
高圧用の特殊トランスやピエゾ圧電トランスは高価であるだけでなく、比較的大型であり、また、保護抵抗などの周辺素子も大型になるため、高圧電源部を収容するためのスペースを大きく設定する必要があり、除電器の大型化を招いていただけでなく、対向電極以外での接地部分に対して放電する可能性を含むため、絶縁距離を確保するために基板面積を増大させたり、高圧電源部をシリコン樹脂などで包囲して絶縁処理を行う、電極への配線などにも絶縁性の高い材料を使用する必要があるなど、高コスト及び大型化の傾向があった。
【0038】
このような問題を解消するのに、図14に示すように、放電針122と対向電極132とに180度位相を有する交流電圧を印加するのが好ましい。これによれば、放電針122と対向電極132に夫々印加する電圧は、上述した電圧V0の半分の電圧(V0/2)で足りることになる。このための具体的な手法として、図15に図示するように自励式、他励式の共通発振回路300に2つの昇圧トランス302、304を並列に且つ正負を逆に接続することで、2つの昇圧トランス302、304を同期して、つまり位相のズレの無い逆位相の動作を実行させることができる。
【0039】
図15を参照して説明した2つのトランス302、304を用いて放電針122と対向電極134とに逆位相の電圧を印加する具体的な高電圧電源回路の例を図16〜図18に示す。図16と図17とは、周波数調整用のコイル350の接続位置を除いて同一である。第1トランス302の一次コイル352に第2トランス304の一次コイル354が接続され、第1トランス302の帰還巻線356に接続した2つのNPNトランジスタ358、360を用いてスイッチング動作が行われる。図16、図17の回路構成によれば、帰還巻線356で実質的な自励発振回路の主要部が構成されていため、非常に少ない部品点数で高電圧電源回路を構成することができるという利点がある。
【0040】
図18の回路構成は、帰還巻線356にコンパレータ362が接続され、また、2つのMosFET364、366を用いてスイッチング動作が行われるため、効率が良いという特徴を有する。また、コンパレータ362によって、帰還巻線356から侵入する異なる周波数の信号を遮断することができるため、安定した発振を実行できるという利点を有する。
【0041】
上述したように、放電針122と対向電極134とに、位相が180度異なる交流電圧を印加することで、放電針122と対向電極134に夫々印加する電圧は、従来の半分の電圧(V0/2)で足りるため、出力電圧が比較的低い小型のトランスを採用することができるなどの効果を有し、除電器の製造コストを大幅に低下させることができる。放電針122と対向電極134との間での放電を約束することができ、接地した他の部位との間の放電の発生を的確に防止することができる。
【0042】
また、放電針122と対向電極132とに、位相が180度異なる交流電圧を印加する方法の適用範囲は、イオン化エアをチューブやノズルを通じて吐出する形式の除電器に限定されるものではなく、電極針をエアでパージする除電器にも適用可能である。
【0043】
高周波AC方式の除電器は、基本的に一定振幅の電圧を電極に印加する方式が採用されているが、ガス雰囲気での放電現象は、電極の状態(汚染の程度)や電極周囲の圧力の影響を受ける。
【0044】
例えば、コロナ放電を行うと、放電針の先端に空気中のゴミなどが付着し、また、長期間の使用により電極針が摩耗するが、このような状態では、放電針の先端に電界が集中し難くなるため、長期間の使用の間、的確に放電させるために、電圧の値が高めに設定されている。
【0045】
このことから、除電器を入手した初期の期間又は除電器をメンテナンスした後の初期の期間は、電極針に過剰な電圧が印加されることになり、大量のオゾンやNOxを発生したり、場合によっては火花放電を起こして除電能力が著しく低下するという問題を含んでいた。
【0046】
放電針の周囲の圧力が低いときには放電開始電圧は比較的低く、逆に、圧力が高いときには放電開始電圧は比較的高いという特性がある。したがって、一定の振幅の電圧を放電針に印加する従来の方式では、電極針をエアでパージする形式の除電器及びイオン化エアをチューブやノズルを通じて吐出する形式の除電器のいずれにあっても、エアの流量が変化して放電針の周囲の圧力が変化することに伴って、例えば規定の流量よりも大きい流量の場合には放電開始電圧の上昇によって放電が停止して除電が出来ないという問題を発生する可能性を含み、また、規定の流量よりも小さい流量の場合には、過剰な電圧印加による大量のオゾン、NOxの発生や除電能力が悪化するなどの問題を発生する可能性を含んでいた。
【0047】
上記の問題を解決するには、▲1▼放電電流を検知し、高圧電源部を制御して放電針に印加する電圧を最適値に調整する;▲2▼放電針に印加する電圧波形において、マイナス側の電圧が印加されている期間だけ放電を行うようにする。
【0048】
放電電流はパルス状態で発生するが、これを検知するための回路を含む、高周波高電圧電源の出力電圧フィードバック回路の構成を図19、図20を例示的に示す。図19の回路構成にあっては、交流高電圧電源回路400の出力と、放電電流検知回路401とがコンデンサ402で接続されており、また、電源回路400からの出力周波数と放電電流とを分離すると共に放電電流を電圧に変換するための素子としてコイル404が設けられている。例えば、高周波交流方式の除電器にあっては、通常、電源の周波数として10kHz〜100kHzの周波数が採用されている。これに対して検知可能な放電の周波数は約30MHzまでであることから、電源の周波数と放電の周波数とを分離して感度良く放電を検知するために、この実施例では10μH(マイクロヘンリー)のコイル404を採用してある。なお、コンデンサ402の代わりに、高圧電源ケーブル403のシールドなどの寄生容量を利用してもよい。また、高圧電源回路400に含まれるトランスとしてパルストランスを採用したときには、コイル404の代わりに抵抗を用いることができる。
【0049】
また、図20の回路構成にあっては、対向電極132と放電電流検知回路401とを接続し、放電電流を電圧に変換するための素子としてコイル404が設けられている。なお、対向電極134と放電電流検知回路401との間にコンデンサを介在させてもよい。
【0050】
パルス状の放電電流はコイル404で電圧に変換され、アンプ406で増幅された後に検知回路401に入力される。検知回路401には、高圧電源駆動回路405から比較波形が入力され、放電電流の発生タイミングが判定される。
【0051】
図21〜図25は、所定の条件(エアの流量が一定など)で電極針122に印加される電圧を、図21から図25に向けて徐々に高めたときに、パルス状に現れる放電電流のタイミング及びその頻度を示す。
【0052】
図21は、電圧が不十分な状態のときを示し、この場合には放電が発生しない。図22は、印可する電圧が放電開始電圧に等しいときを示し、この場合には、放電は電源出力波形の最下点付近において比較的低い頻度で発生する。プラス側の電位では放電が見られない。
【0053】
図23は、好ましい放電状態となったときの状態を示す。放電が好ましい状態で発生しているときには、放電発生から電源出力波形の最下点までの期間が一定である。図24は、過剰電圧になったときの状態を示す。この状態では、電源出力波形の最下点に至るまでに複数回の放電が発生する。図25は、更に過剰電圧になったときの状態を示す。この状態では、マイナス側の電位だけでなく、プラス側の電位でも放電が発生する。
【0054】
放電針122にマイナス側の電圧が印加されている期間にだけパルス状の放電が発生する状態(図22〜図24)において、プレートモニタを用いて除電器の性能を評価したところ、プラス及びマイナスの両方の帯電を除電できることが分かった。この結果から、放電針122にマイナス側の電圧が印加されている期間だけの放電によってプラスイオンとマイナスイオンの両方が生成されていると考えることができる。高電圧工学の文献によれば、マイナス極近傍でのコロナ放電においても、このマイナス極の周囲にプラスイオンが存在することが記述されている。この文献の記述を考慮に入れると、高周波交流方式の除電器では、放電針に印加される電圧の極性が極めて短時間に交番し、プラスイオンが外部に放出されるために上述した結果が得られたと考えることができる。
【0055】
また、マイナス側だけの放電によりオゾン量を大幅に低減できることが実験により判明した。エアの流量を一定(30リットル/分)に設定し、放電針122に印加する電圧を変化させてオゾン発生量を測定した。図22の放電波形を示すときの電圧(放電開始電圧)は5.4kVppであり、オゾン発生量は0.05ppmであった。図24の放電波形を示すときの電圧(過剰電圧)は9.0kVppであり、オゾン発生量は0.75ppmであった。図25の放電波形を示すときの電圧(過剰電圧)は9.1kVppであり、オゾン発生量は1.75ppmであった。
【0056】
下記の表は、上記の実験結果の一覧である。
【0057】
なお、上記3つの条件での実験において、除電能力を示す除電速度は変化が無かった。
【0058】
図19、図20の出力電圧フィードバック回路を用いた制御は、次のようにして行うのがよい。
【0059】
(1)放電針122にマイナスの電圧が印加されている期間にのみパルス状の放電電流が検出されるように、交流高電圧電源回路400の出力電圧を調整する。
【0060】
(2)パルス状の放電電流が検出される時点で放電針122に印加されている電圧と、放電針122に印加される最低電圧との差(図23のΔV)が一定となるように交流高電圧電源回路400の出力電圧を調整する。すなわち、放電は比較的不安定な現象であることから、放電針122に印加する電圧は、放電電圧に対して一定の余裕代(マージン)を保つのが好ましい。
【0061】
(3)実質的に上記(2)と同義であるが、パルス状の放電電流が検出されるタイミングと、放電針122に最低電圧が印加されるタイミングとの間に一定の位相のずれ(図23のΔT)が生じるように交流高電圧電源回路400の出力電圧を調整する。
【0062】
上記の(1)〜(3)のフィードバック制御を行うことで図23の出力波形を得ることができる。上記(2)のマージン電圧(ΔV)を一定に保つには、放電針122に印加される電圧を以下に式で表すと、最低の電圧は、ωt=90°のときである。
【0063】
V=V0×(−sinωt)
ここに、V0:振幅の半分
【0064】
放電が、最低電圧の10°前に発生したとすると、下記の式で表すことができる。
Vm=V0×(1−sin(90°−10°))
Vmに比べてV0の変化は小さいことから、位相10°を保つことにより、Vmをほぼ一定に保つことができる。
【0065】
交流高電圧電源回路400の出力電圧をフィードバック制御する場合と、従来の出力電圧一定の場合(流量60リットル/minで最適な放電が発生するように電圧を設定)とのオゾン発生量の違いを求めたところ次の通りであった。
【0066】
【0067】
以上の実験結果から、実施例によれば、発生するオゾン量が激減していることが分かる。また、出力電圧をフィードバック制御することで、放電が安定するのでイオンバランスを向上できることも分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のチューブ搬送式除電器の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に図示の除電器の回路ブロック図である。
【図3】実施例の除電器の側面図である。
【図4】図3の矢印IV方向から見た除電器の正面図である。
【図5】図3の除電器の断面図である。
【図6】図3の除電器に脱着可能に装着される放電針ユニットの斜視図である。
【図7】図6の放電針ユニットの断面図である。
【図8】図3の除電器における放電針への電源供給の構造を説明するための概略図である。
【図9】図3の除電器と従来の除電器とを対比して内部に流れるエアの流量と内部エア通路での圧力損失との関係を示すグラフである。
【図10】変形例の除電器の断面図である。
【図11】図10の除電器に含まれる放電部ユニットの断面図である。
【図12】従来のAC電源方式の構造を説明するための図である。
【図13】イオン化室内の圧力と放電電圧との関係をプロットしたグラフである。
【図14】放電針と対向電極とに逆位相の電圧を印加する実施例の原理を説明するための図である。
【図15】図14に図示の原理を実現するために放電針と対向電極とを個々にトランスに接続した例を説明するための図である。
【図16】2つのトランスを用いて放電針と対向電極に逆位相の電圧を印加する具体的な回路構成を示す図である。
【図17】2つのトランスを用いて放電針と対向電極に逆位相の電圧を印加する具体的な回路構成の他の例を示す図である。
【図18】2つのトランスを用いて放電針と対向電極に逆位相の電圧を印加する具体的な回路構成の別の例を示す図である。
【図19】放電電流を検知して、放電針に印加する電圧を調整するためのフィードバック回路の一例を示す図である。
【図20】放電電流を検知して、放電針に印加する電圧を調整するためのフィードバック回路の他の例を示す図である。
【図21】放電針に印加する電圧が不十分で放電が発生しないときの検知波形を示す図である。
【図22】図21のときよりも印加電圧を上昇させて放電開始電圧を放電針に印加したときに現れるパルス状の放電電流の検知波形を示す図である。
【図23】図22のときよりも印加電圧を上昇させたときに現れるパルス状の放電電流の検知波形を示す図である。
【図24】図23のときよりも印加電圧を上昇させた結果、放電過剰となったときに現れるパルス状の放電電流の検知波形を示す図である。
【図25】図24のときよりも更に印加電圧を上昇させたときに現れるパルス状の放電電流の検知波形を示す図である。
【符号の説明】
100 除電器
102 除電器本体
104 内部エア通路
106 AC高周波高電圧電源部
112 放電針ユニット(放電部ユニット)
114 対向電極ユニット(放電部ユニット)
122 放電針
140 内部エア通路に突出して配置された接点
142 導電部材
200 変形例の除電器
206 放電部ユニット
Claims (4)
- 高圧電源部(204)を内蔵した除電器本体(202)と、該除電器本体(202)に脱着可能に装着される放電部ユニット(206)とを有し、前記高圧電源部(204)から高電圧の供給を受けて前記放電部ユニット(206)の放電針(122)がコロナ放電することにより、供給される空気をイオン化し、イオン化した空気を小径管を通じてワークの近傍に吐出することによりワークの除電を行う除電器であって、
該除電器本体(202)に形成された直線状の内部エア通路(104)と;
該内部エア通路(104)のイオン化エア吐出側から挿入することにより前記内部エア通路(104)の軸線方向に脱着可能に装着される前記放電部ユニット(206)であって、該放電部ユニット(206)のユニット本体(210)に脱着可能な支持部材(124)によって前記内部エア通路(104)の軸線上に固定された前記放電針(122)と、前記放電針(122)の先細りの先端部に対向して位置し且つイオン化エア吐出側に向けて縮径する先細り形状の対向電極(132)とで形成された先細り形状のイオン生成室を備えた放電部ユニット(206)と;を有することを特徴とする除電器。 - 前記放電部ユニット(206)のユニット本体(210)が、前記支持部材(124)を包囲するスリーブ(214)を有し、該スリーブ(214)に対して前記支持部材(124)が脱着可能である、請求項1に記載の除電器。
- 前記放電部ユニット(206)のユニット本体(210)が、前記支持部材(124)を包囲するスリーブ(214)を有し、該スリーブ(214)が前記ユニット本体(210)に対して脱着可能である、請求項1に記載の除電器。
- 前記放電部ユニット(206)は、該放電部ユニット(206)のイオン化エア吐出ポート(208)と、前記先細り形状のイオン化生成室の先端との間を連絡する円筒状部分(134)を更に有し、
該円筒状部分(134)が、前記内部エア通路(104)の軸線と同軸に位置している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の除電器。
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