JP4362203B2 - 釣り用部品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、釣り用部品、特に、金属製の板材をプレス成型して得られた釣り用部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
両軸受リール等の釣り用品に使用される釣り用部品には、部品の軽量化やコストダウンを図るためにアルミニウム合金等の金属薄板をプレス成型した釣り用部品を使用されている。たとえば、両軸受リールの側カバーやスピニングリールや片軸受リールのスプールに金属製のプレス成型品が使用されている。
【0003】
この種のプレス成型された釣り用部品の場合、高級感のある金属光沢を得るためにプレス成型後に旋盤や研磨盤による切削加工が行われることがある。このように切削加工を行うと、金属光沢が増加するとともに精度が向上する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の切削加工された釣り用部品では、プレス成型後に切削加工を行うと、表面全体が金属光沢を有する光輝面となり、表面の高級感が向上する。しかし、表面全体が光輝面となるので、表面の意匠が単調になる傾向がある。表面の意匠を複雑にするために、多数の孔を機械加工により設けることが考えられる。しかし、孔加工を行うと、加工が複雑になるとともに強度が低下する。また、防水が必要な場合には、防水のための構造を別に設ける必要があるため、製造コストが上昇する。
【0005】
本発明の課題は、プレス成型された釣り用部品において、複雑な意匠を強度を低下させることなく安価かつ容易に実現できるようにすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明1に係る釣り用部品の製造方法は、金属製の釣り用部品の製造方法であって、金属製の薄板材を準備する準備工程と、準備された金属薄板をプレス成型して所望の形状のプレス品を得るプレス工程と、プレス成型されたプレス品の表面に凹んだパターンを形成するパターン形成工程とパターンが形成されたプレス品の表面に梨地面を形成する梨地面形成工程と、梨地面が形成されたプレス品の表面を切削加工して梨地面をパターンに残しその他の部分に光輝面を形成する光輝面形成工程とを含んでいる。
【0007】
この場合には、プレス成型後に表面にたとえばプレス加工により凹んだパターンを形成し、パターンが形成されたブレス品の表面全体に、たとえばショットブラスト加工により梨地面を形成する。そして、梨地面が形成されたプレス品の表面を切削加工する。すると、表面の梨地面は切削加工により光輝面に変わり、凹んだパターン形成部分にだけ梨地面が残る。このため、光輝面と梨地面とを有する複雑な意匠を実現できる。しかも、部品に孔あけ加工を行っていないので、強度が低下せず、別に防水構造を設ける必要がない。このため、製造コストを低減することができる。
【0008】
発明2に係る釣り用部品の製造方法は、発明1に記載の方法において、薄板材は、アルミニウム合金又はマグネシウム合金製であり、光輝面が形成されたプレス品に耐蝕層を形成する耐蝕層形成工程をさらに含む。この場合には、プレス品に耐蝕層が形成されるので、腐食しやすいアルミニウム合金又はマグネシウム合金製を使用しても腐食しにくくなる。
【0009】
発明3に係る釣り用部品は、発明1又は2に記載の方法において、梨地面形成工程では、プレス品の表面をショットブラスト加工する。この場合には、ショットブラスト加工によって梨地面を簡単に形成できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜図3において、本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、ベイトキャスト用の丸形のリールである。このリールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを備えている。
【0011】
〔リール本体の構成〕
リール本体1は、アルミニウム合金製の部材であり、フレーム5と、フレーム5の両側方に着脱自在に固定された第1側カバー6及び第2側カバー7と、第2側カバー7に着脱自在に固定された機構装着板11とを有している。リール本体1の内部には糸巻用のスプール12がスプール軸16を介して回転自在かつ着脱自在に装着されている。
【0012】
フレーム5内には、図3に示すように、スプール12と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチ操作レバー17と、スプール12内に均一に釣り糸を巻くためのレベルワインド機構18とが配置されている。またフレーム5と第2側カバー7との間には、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構18に伝えるための回転伝達機構19と、クラッチ機構21と、クラッチ操作レバー17の操作に応じてクラッチ機構21を制御するためのクラッチ制御機構22と、スプール12を制動するドラグ機構23と、スプール12の回転時の抵抗力を調整するためのキャスティングコントロール機構24と、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための遠心ブレーキ機構25とが配置されている。
【0013】
フレーム5は、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の側板8,9と、これらの側板8,9を一体で連結する上下の連結部10a,10bとを有している。側板8,9は、スプール軸方向から見て円形で内部に空間を有する扁平有底筒状の部材である。側板9の中心部よりやや上方には、スプール12を着脱するための円形の開口9aが形成されている。下側の連結部10bには、リールを釣り竿に装着するための竿装着脚4が一体形成されている。
【0014】
第1側カバー6は、外方に僅かに凸に湾曲した扁平有底筒状の金属製のプレス加工により形成された部材である。第1側カバー6の表面の大部分は、図1に示すように、切削加工により形成された光輝面を有する第1表面部6aとなっている。第1表面部6aの一部には、プレス加工により凹んで形成された文字や図柄等の種々のパターンからなる第2表面部6bが点在している。第2表面部6bは、ショットブラスト加工により形成された梨地面を有している。第2側カバー6の中心には、銘板6cが取り付けられている。この銘板6cは、第1側カバー6の着脱用の部材でもある。第1側カバー6の表裏面には、図8に示すように、アルマイト膜からなる耐蝕層6dが形成されている。
【0015】
このような第1側カバー6は、図9に示すような工程で製造される。ステップS1では、まずアルミニウム合金製の薄板材を準備する。ステップS2では、準備された薄板材をプレス成型して所望の扁平有底円筒形状のプレス品を得る。ステップS3では、プレス成型されたプレス品の表面に凹んだパターンからなる第2表面部6bを形成する。このパターンは、図柄でも文字でもよい。ステップS4では、パターンが形成されたプレス品の表面にたとえばショットブラスト法により梨地面を形成する。これにより、第1側カバー6の全ての表面が梨地面になる。ステップS5では、梨地面が形成されたプレス品の表面を、たとえば旋盤により切削加工して梨地面を第2表面部6bのみに残し、その他の部分、つまり第1表面部6aに光輝面を形成する。これにより、第1表面部6aは光輝面になり、それより凹んだパターンからなる第2表面部6bは梨地面になる。ステップS6では、得られたプレス品を陽極酸化法により処理して表裏面にアルマイト膜からなる耐蝕層を形成する。これにより、第1側カバー6の耐蝕性が向上する。なお、第1側カバー6は、銘板6cにより側板8に内側からねじにより固定されている。
【0016】
第2側カバー7も、たとえばアルミニウム合金製の扁平有底筒状のプレス成形品である。第2側カバーは、すべてが光輝面となっており、図9のステップS3に示すパターンプレス工程やステップS4に示す梨地面形成工程は行わない。第2側カバー7は、2本のねじ13(図2では1本のみ図示)によってフレーム5の側板9に着脱自在に固定されている。このねじ13は、手で回せるような頭部を有している。このため、第2側カバー7は、ドライバーなどの工具を使用することなく簡単に着脱できる。
【0017】
機構装着板11には、クラッチ制御機構22や回転伝達機構19などの機構が装着されている。機構装着板11は、内部に装着された各機構を第2側カバー7と一体で着脱できるように設けられたものである。機構装着板11は、第2側カバー7にねじ14により着脱自在に固定されている。このねじ14は、たとえば、丸頭ねじであり工具により回せるようになっている。機構装着板11は、側板9の外側面に接触して配置されている。
【0018】
〔スプール及びスプール軸の構成〕
スプール12は、図3に示すように、両側部に皿状のフランジ部12aを有しており、両フランジ部12aの間に筒状の糸巻き胴部12bを有している。スプール12は、糸巻き胴部12bを貫通するスプール軸16にたとえばセレーション結合により回転不能に固定されている。この固定方法はセレーション結合に限定されず、キー結合やスプライン結合等の種々の結合方法を用いることができる。
【0019】
スプール軸16は、図3及び図4に示すように、側板9を貫通して第2側カバー7の外方に延びている。スプール軸16は、棒状の軸本体20と、軸本体20の両端部に設けられ、1対の玉軸受26a,26aにより支持される環状に突出した1対の第1回転支持部20aを有している。また、スプール軸16は、軸本体20のスプール12装着部分の近傍に設けられ、玉軸受26bにより支持される環状に突出した第2回転支持部20bを有している。さらに、スプール12を装着するためのセレーションからなるスプール装着部20cと、遠心ブレーキ機構25を装着するためのセレーションからなるブレーキ装着部20dとが第2回転支持部20bに隣接して設けられ、右側の第1回転支持部20aと第2回転支持部20bとの間にピニオンギア(後述)を装着するためのギア装着部20eが設けられている。スプール軸16の一端は、側板9を貫通して第2側カバー7に固定されたボス部7bから外方に突出している。
【0020】
図3右側の玉軸受26aは、ボス部7bに装着されており、左側の玉軸受26aは、側板8に装着されている。中間の玉軸受26bは、図6に示すように、機構装着板11に形成されたボス部11bに装着されている。
【0021】
ここで、図6に示すように、突出した第1回転支持部20aの軸方向長さL1は、玉軸受26aの内輪の軸方向長さL2より短く、たとえば、軸方向長さL1は軸方向長さL2の15〜40%の範囲である。また、第1回転支持部20aの外周面と玉軸受26aの内輪との間には隙間があいており、たとえば、第1回転支持部20aの外径は、内輪の内径の98〜99.5%の範囲である。また、突出した第2回転支持部20bの軸方向長さL3は、玉軸受26bの内輪の軸方向長さL4より短く、たとえば、軸方向長さL3は軸方向長さL4の10〜35%の範囲である。また、第2回転支持部20bの外周面と玉軸受26bの内輪との間には隙間があいており、たとえば、第2回転支持部20bの外径は、内輪の内径の95〜99%の範囲である。ここでは、玉軸受との隙間は、第1回転支持部20aの隙間の方が第2回転支持部20bより小さく設定され、軸方向長さは、第2回転支持部20bの方が軸受に対して小さく設定されている。
【0022】
このように、両回転支持部20a,20bを玉軸受26a,26bに対して設定すると、製造誤差等によりスプール軸16が傾いても、玉軸受26bと第2回転支持部20bの両端部とが接触しにくくなり、玉軸受26bの回転が妨げられにくくなる。このため、スプール軸16が傾いても軽負荷時の回転性能が低下しにくくなる。
【0023】
スプール軸16の第2回転支持部20bの右側には、クラッチ機構21を構成する係合ピン21aが固定されている。係合ピン21aは、直径に沿ってスプール軸16を貫通しており、その両端が径方向に突出している。
【0024】
クラッチ操作レバー17は、図3に示すように、1対の側板8,9間の後部でスプール12後方に配置されている。クラッチ操作レバー17は側板8,9間で上下方向にスライドする。クラッチ操作レバー17のハンドル装着側には、側板9を貫通する係合軸17aがインサート成型により一体形成されている。この係合軸17aは、クラッチ制御機構22に係合している。係合軸17aの先端は、機構装着板11に接近している。機構装着板11には、係合軸17aの移動範囲にそって長溝11aが形成されている。このような長溝11aを形成することにより、係合軸17aの先端を突っ切り加工により処理して凸部が生じても、長溝11aにより機構装着板11との接触を防止できる。このため、後処理で凸部を取り除く必要がなくなり、係合軸17aの加工コストを低減できる。
【0025】
〔回転伝達機構の構成〕
回転伝達機構19は、ハンドル軸30と、ハンドル軸30装着されたマスターギア31と、マスターギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32とを有している。ハンドル軸30は、側板9及び第2側カバー7に回転自在に装着されており、ローラ型のワンウェイクラッチ86及び爪式のワンウェイクラッチ87により糸繰り出し方向の回転(逆転)が禁止されている。
【0026】
ワンウェイクラッチ87は、図4に示すように、ハンドル軸30に回転不能に装着されたラチェットホイール88と、機構装着板11に揺動自在に装着されたラチェット爪89とを有している。ラチェットホイール88の外周部には、略平行四辺形状に突出して形成されたラチェット歯88aが周方向に間隔を隔てて配置されており、ラチェット爪89がラチェット歯88aに噛み合うことによりハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転が禁止される。ラチェット爪89は、ラチェットホイール88を両側から挟む制御片89aを先端部に有している。制御片89aは、糸巻取方向の回転時にラチェット爪89をラチェットホイール88から離反させ、糸繰り出し方向の回転時に接近させる。
【0027】
マスターギア31は、図3に示すように、ハンドル軸30に回転自在に装着されており、ハンドル軸30とドラグ機構23を介して連結されている。ドラグ機構23は、スタードラグ3と、スタードラグ3によりマスターギア31への圧接力が変化するドラグ板35と、スタードラグ3とワンウェイクラッチ86との間に配置された調節用の皿ばね36と、皿ばね36とスタードラグ3との間にはさまれたドラグスペーサ37とを有している。ドラグスペーサ37は、モリブデン含有ナイロン製のワッシャ形状の部材であり、スタードラグ3に外周部が係合してはまり込んでいる。内周部は、ハンドル軸30の外径より大きい内径の孔が形成されている。
【0028】
ピニオンギア32は、図6に示すように、側板9の外方から内方に延び、中心にスプール軸16が貫通する筒状部材であり、スプール軸16のギア装着部20eに軸方向に移動自在かつ回転自在に装着されている。ピニオンギア32の図6左端部には係合ピン21aに噛み合う噛み合い溝32aが形成されている。この噛み合い溝32aと係合ピン21aとによりクラッチ機構21が構成される。また中間部にはくびれ部32bが、右端部にはマスターギア31に噛み合うギア部32cがそれぞれ形成されている。
【0029】
〔クラッチ制御機構の構成〕
クラッチ制御機構22は、図4〜図7に示すように、係合軸17aに係合するクラッチプレート55と、クラッチプレート55に係合してスプール軸16を中心に回動するクラッチカム56と、クラッチカム56によりスプール軸16方向に沿って移動するクラッチヨーク57とを有している。また、クラッチ制御機構22は、スプール12の糸巻取方向の回転に連動してクラッチ機構21をクラッチオンさせるクラッチ戻し機構58を有している。
【0030】
クラッチプレート55は、扇形に形成された板状部材であり、機構装着板11に形成された案内部(図示せず)により回転方向に案内されている。クラッチプレート55の一端は、クラッチ操作レバー17の下方への移動に連動して図4反時計回りに移動するようにクラッチ操作レバー17の係合軸17aの下端に接触する位置に延びている。クラッチプレート55の他端には、クラッチカム56に係止されるU字状の係止部55a(図7)が形成されており、クラッチプレート55とクラッチカム56とは連動してスプール軸16回りに回動する。
【0031】
クラッチカム56は、たとえばポリアセタール樹脂等の合成樹脂製の略リング状の部材であり、機構装着板11に形成されたボス部11bの外周面にスプール軸16回りに回動自在に装着されている。クラッチカム56は、ボス部11bの先端にねじ止めされた押さえ板60により抜け止めされている。押さえ板60には、クラッチヨーク57をスプール軸方向に案内する1対のガイド部60a,60aが折り曲げて形成されている。
【0032】
クラッチカム56の外側面のスプール軸16を挟んで対向する位置には、1対の傾斜カム56a,56aが形成されている。また、傾斜カム56a,56aに隣接してクラッチヨーク57の傾斜カム57b,57b(後述)が収納される凹部56b,56bが形成されている。クラッチカム56の外周部には、クラッチプレート55の係止部55aに係合する係合ピン56cが形成されている。さらに、クラッチカム56の外周部には突出部56dが形成されており、この突出部56dの機構装着板11側にクラッチ戻し機構58を構成する戻し部材59が揺動自在に装着されている。突出部56dは、図6に示すように、機構装着板11と第2側カバー7との隙間を埋める厚みを有している。突出部56dには、連結ピン63を挿入可能な連結孔56eがスプール軸に平行に形成されている。
【0033】
連結ピン63は、たとえばガラス繊維を混入したポリアセタール樹脂などの合成樹脂製の部材であり、戻し部材59を揺動自在に連結する鍔63a付きのピンである。鍔63aは、機構装着板11と戻し部材59とに挟まれて配置されており、これにより連結ピン63が抜け止めされている。
【0034】
このように突出部56dを隙間を埋めるような厚みで設け、戻し部材59を突出部56dと機構装着板11とで挟むことにより、戻し部材59に負荷が作用しても、クラッチカム56が変形しにくくなり、戻し部材59が浮きにくくなる。
【0035】
クラッチヨーク57は、クラッチカム56の軸方向外方に対向して配置されている。クラッチヨーク57は、機構装着板11と第2側カバー7との間にスプール軸16を挟んで立設された2本のガイド部60a,60aにより案内されてスプール軸16方向に移動自在である。また、第2側カバー7とクラッチヨーク57との間でガイド部60a,60aの外周側に圧縮状態で配置されたコイルばね61により軸方向内方(図6左方)に付勢されている。
【0036】
クラッチヨーク57は、ピニオンギア32のくびれ部32bに係合する半円弧状の係合部57aが形成されている。クラッチヨーク57のクラッチカム56と対向する側面には、傾斜カム56a,56aに乗り上げる傾斜カム57b,57bが形成されており、クラッチカム56が図4反時計回りに回動して傾斜カム56a,56aに傾斜カム57b,57bが乗り上げると、クラッチヨーク57は図6右方のクラッチオフ位置に移動する。また、傾斜カム57b,57bが傾斜カム56a,56aから下りると、コイルばね61により付勢されてクラッチオン位置に戻る。このクラッチヨーク57の移動に連動してピニオンギア32がスプール軸方向に移動し、クラッチ機構21がクラッチオフ状態とクラッチオン状態とに切り換わる。傾斜カム57bの先端部と係合部57aとの間には、段差Dが形成されている。このような段差Dを形成することにより、クラッチオン位置にあるときのクラッチカム56とクラッチヨーク57との厚みを薄くすることができ、リールのスプール軸方向の寸法を小さくすることができる。
【0037】
クラッチ戻し機構58は、ハンドル2に連動して回転するラチェットホイール88と、クラッチ操作レバー17に連動して回動するクラッチカム56と、クラッチカム56に揺動自在に連結された戻し部材59と、戻し部材59とクラッチカム56とを揺動自在に連結する連結ピン63と、戻し部材59を付勢するトグルばね62とを有している。
【0038】
戻し部材59は、ステンレス合金などの金属製の板状部材であり、連結ピン63によりクラッチカム56に揺動自在に連結されている。戻し部材59は、クラッチカム56の回動によりラチェットホイール88のラチェット歯88aに接触する係合位置(図5)とそこから離反した離反位置(図4)とに移動する。戻し部材59の先端には、ラチェット歯88aに接触する係合爪59aと、機構装着板11に形成された細長い案内溝11cに案内される案内爪59bとが折り曲げて形成されている。その基端には、連結ピン63により揺動自在にクラッチカム56に連結される連結孔59cと、トグルばね62を係止するための係止孔59dとが形成されている。
【0039】
トグルばね62は、一端が戻し部材59に係止され、他端が機構装着板11に回動自在に係止された捩じりコイルばねからなる。トグルばね62は、戻し部材59を係合位置と非係合位置との2つの位置に振り分けて付勢し、戻し部材59を両位置で保持する。
【0040】
このクラッチ戻し機構58では、クラッチ操作レバー17の押圧操作によりクラッチ機構21がクラッチオフ状態になると、クラッチカム56が反時計回りに回動して、図4に示す非係合位置から図5に示すラチェット歯88aに接触する係合位置に戻し部材59が前進する。このとき、戻し部材59は、トグルばね62が死点を超えるまでは、トグルばね62の付勢力に抗して案内溝11cの外側の縁に案内爪59bが案内されてラチェットホイール88に向けて前進し、死点を超えると、反時計まわりに回動して案内溝11cの内側の縁に案内されて係合位置に移動する。
【0041】
この戻し部材59が係合位置にある状態で、ハンドル2の操作によりハンドル軸30が糸巻取方向に回転すると、戻し部材59の係合爪59aがラチェット歯88aにより押圧されて非係合位置に戻る。これと同時に、クラッチカム56を図5時計回りに回動し、クラッチ機構21をクラッチオン状態に戻す。
【0042】
〔遠心ブレーキ機構の構成〕
遠心ブレーキ機構25は、図6に示すように、スプール軸16のブレーキ装着部20dに回転不能に装着された合成樹脂成形品からなるブレーキ取付台70と、ブレーキ取付台70に放射状に立設された6本のガイド軸71と、ガイド軸71にそれぞれ移動自在に装着された6個のブレーキカラー72と、ブレーキカラー72の外周側に配置されたブレーキパイプ73とを有している。
【0043】
ブレーキ取付台70は、合成樹脂製の厚肉円板状の部材であり、その周方向の6カ所にブレーキカラー72を収容するための凹部70aが形成されている。この凹部70aに放射状に立設されたガイド軸71が一体形成されている。ガイド軸71は、図10に示すように、断面が略小判形で棒状に形成されている。ガイド軸71の図10上側の外周面71aの曲率半径R1は、下側の外周面71bの曲率半径R2より小さい。これにより、両外周面71a,71bの接続部分には段差75が形成される。この接続部分は、成型時の型の分割部分(パーティションライン)になる。ここに段差75を形成することで、樹脂成型時にバリが生じにくくなり、成形後にバリ取り加工を行う必要がなくなる。
【0044】
ブレーキカラー72は、略鍔付き円筒形状の合成樹脂製の部材であり、鍔部が凹部70aに径方向に間隔を隔てて形成された2つの突起(図示せず)に係止可能である。これにより、ブレーキカラー72をブレーキパイプ73に接触可能な位置と接触不能な位置とに切り換えできる。
【0045】
ブレーキパイプ73は、金属製の薄肉筒状の部材であり、機構装着板11に接着等の適宜の固定手段によって固定されている。
【0046】
〔両軸受リールの動作〕
キャスティングを行うときには、クラッチ操作レバー17を下方に押圧する。すると、クラッチプレート55が図4反時計回りに移動する。クラッチプレート55が移動すると、それに連動してクラッチカム56が反時計回りに回動し、クラッチヨーク57が図6右方のクラッチオフ位置に移動する。この結果、クラッチ機構21を構成するピニオンギア32が軸方向外方に移動し、クラッチオフ状態になる。このクラッチオフ状態では、スプール12が自由回転状態になり、キャスティングを行うと仕掛けの重さにより釣り糸がスプール12から勢いよく繰り出される。このとき、製造誤差等によりスプール軸16が傾いていても第2回転支持部20bの軸方向長さが短いので、玉軸受26bにスプール軸16が接触しにくくなり、回転性能が低下しにくくなる。
【0047】
仕掛けが着水すると、ハンドル2を糸巻取方向に回転させる。すると、ラチェットホイール88が糸巻取方向(図5時計回り)に回転し、ラチェット爪89が制御片89aの作用によりラチェットホイール88の外方に揺動する。この結果、糸巻取時にラチェット爪89がラチェットホイール88に接触しなくなり、糸巻取時に両者の接触によるクリック音が生じなくなる。また、ラチェットホイール88が糸巻取方向に回転すると、ラチェット歯88aが戻し部材59の先端の係合爪59aに当接し、戻し部材59を後方に押圧する。すると、戻し部材59はトグルばね62の死点を越えて後退し、トグルばね62により非係合位置側に付勢される。この移動に連動してクラッチカム56が図5時計回りに回動し、クラッチヨーク57がコイルばね61の付勢力によりクラッチオン位置に移動し、クラッチ機構21がクラッチオン状態になる。このため、ハンドル2の回転がスプール12に伝達され、スプール12が糸巻取方向に回転する。
【0048】
ハンドル軸30が糸巻取方向に回転すると、その回転がレベルワインド機構18に伝達され釣り糸がスプール12に均一に巻き取られる。
【0049】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では、両軸受リールの側カバーを例に本発明を説明したが、本発明は、スピニングリールや片軸受リールのスプール等のリール用の部品や、釣り竿のリールシート等、プレス成型された全ての釣り用部品に適用できる。
【0050】
(b)前記実施形態では、アルミニウム合金製の薄板材を用いたが、マグネシウム合金やステンレス合金や真鍮などの他の金属を用いてもよい。耐蝕性を有するステンレス合金や真鍮で部品を製造する場合には、耐蝕層を形成しなくてもよい。
【0051】
(c)前記実施形態では、ショットブラスト加工により梨地面を形成したが、エッチング加工等の他の加工方法により梨地面を形成してもよい。
【0052】
(d)前記実施形態では、旋盤による切削加工により光輝面を形成したが、さらに研磨盤により切削加工を行ってもよい。また、研磨盤による切削加工だけを行ってもよい。
【0053】
(e)前記実施形態では、酸化膜により耐蝕層を形成したが、塗膜や各種のコーティング法により形成されたコーティング膜により耐蝕層を形成してもよい。また、酸化膜と塗膜やコーティング膜とにより耐蝕層を形成してもよい。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、切削加工により得られた光輝面を有する第1表面部と、第1表面部の一部に形成された梨地面を有する凹んだ第1表面部とがプレス成型された部品本体の表面に形成されている。このため、光輝面と梨地面とを有する複雑な意匠を実現できる。しかも、部品本体に孔あけ加工を行っていないので、強度が低下せず、別に防水構造を設ける必要がない。このため、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を採用した両軸受リールのハンドルと逆側の斜視図。
【図2】 その両軸受リールのハンドル側の斜視図。
【図3】 その縦断面図。
【図4】 クラッチオン時の側カバーを外した状態の側面図。
【図5】 クラッチオフ時の側カバーを外した状態の側面図。
【図6】 そのクラッチ制御機構の断面拡大図。
【図7】 クラッチ制御機構の分解斜視図。
【図8】 第1側カバーの断面模式図。
【図9】 第1側カバーの製造工程を示すフローチャート。
【図10】 遠心ブレーキ機構の拡大図。
【符号の説明】
1 リール本体
6 第1側カバー
6a 第1表面部
6b 第2表面部
6d 耐蝕層
Claims (3)
- 金属製の釣り用部品の製造方法であって、
金属製の薄板材を準備する準備工程と、
準備された前記金属薄板をプレス成型して所望の形状のプレス品を得るプレス工程と、
プレス成型されたプレス品の表面に凹んだパターンを形成するパターン形成工程と、
前記パターンが形成された前記プレス品の表面に梨地面を形成する梨地面形成工程と、
梨地面が形成された前記プレス品の表面を切削加工して前記梨地面を前記パターンに残しその他の部分に光輝面を形成する光輝面形成工程と、
を含む釣り用部品の製造方法。 - 前記薄板材は、アルミニウム合金又はマグネシウム合金製であり、
光輝面が形成された前記プレス品に耐蝕層を形成する耐蝕層形成工程をさらに含む、請求項1に記載の釣り用部品の製造方法。 - 前記梨地面形成工程では、前記プレス品の表面をショットブラスト加工する、請求項1又は2に記載の釣り用部品の製造方法。
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