JP4361893B2 - ABOx型ペロブスカイト結晶構造の誘電体薄膜の形成装置及び形成方法 - Google Patents

ABOx型ペロブスカイト結晶構造の誘電体薄膜の形成装置及び形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、ABO型ペロブスカイト構造をもつ例えばチタン酸バリウムからなる誘電体薄膜を形成する装置及びその方法に関する。
一般にコンピュータのCPU(中央処理ユニット)への電力供給システムは、電圧ドロップをなくすためにプリント基板上のコンデンサから給電される構成としている。しかしCPUの動作速度が急速に向上していることから、やがてCPUの動作時にコンデンサからの給電のタイミングが遅れてしまい、結果としてCPUの動作速度が制限されてしまうことになる。このようにコンデンサからの給電が追いつかなくなる原因は、プリント基板上におけるコンデンサとCPUとの距離を実装の都合上ある程度までしか小さくできないことにある。そこで、プリント基板の上に誘電体薄膜からなるコンデンサを実装し、その上にCPUを載せてこれらを直接接続することにより両者の距離を実質ゼロにしようとする試みがある。
このような誘電体薄膜として注目を集めている材質の一つとしてABOx型ペロブスカイト結晶構造をもつ例えばチタン酸バリウム(BaTiO3)が知られており、その製法としてゾルゲル法が知られている(特許文献1)。ゾルゲル法とは、チタン酸バリウムの前駆体である有機金属化合物を含む塗布液、より具体的にはBa、Tiを含む例えば金属アルコキシドと有機溶媒とを含む誘電体膜形成用組成物(ゾルゲル材料)である塗布液を基板上に塗布し、加水分解させて金属−酸素−金属結合を生成することで前駆体膜を形成し、その後加熱してペロブスカイト構造をもつ結晶体からなる焼結体を得る手法である。この方法により得られた薄膜は、クラック耐性が低く、一回の塗布膜厚が100nm以上になるとクラックが発生し、良好な塗布膜を得ることが困難となる。このため、一回の塗布膜厚を100nm以下にする必要がある。
このため多層塗りを行ってチタン酸バリウム薄膜の全体の膜厚を大きくするようにしているが塗布膜中に含まれるBa(バリウム)イオン、Ba(OH)2(水酸化バリウム)あるいはBaO(酸化バリウム)は大気中のCO2(二酸化炭素)を吸収し、このCO2と反応してBaCO3(炭酸バリウム)となる特性がある。従って塗布膜を焼成する前、具体的には例えば塗布液を塗布する際、塗布膜のシンナーを乾燥する際あるいは焼成炉へ基板を搬送する際などにおいて当該塗布膜が大気に暴露されると、焼成後に形成されるチタン酸バリウム薄膜中にBaCO3が混入することになる。この薄膜中へ混入したBaCO3は電流を運ぶパスとなることからリーク電流の増大を招くことになるという問題がある。
更に大気中には水分が存在することから、CO2と水分とが反応してH2CO3(炭酸水)が生成し、この炭酸水は表面張力が小さいため塗布膜の表面に付着した後に塗布膜中に侵入し、結果として塗布膜中にCO2が取り込まれるというメカニズムもあると言われている。この場合、空気中の水分はCO2を膜中に取り込むためのいわば触媒であるといえる。
このようなCO2の膜中への取り込みは、塗布膜1層の形成毎に起こることから、多層化するとCO2の取り込み量が多くなるため、結果としてリーク電流が流れやすくなり、従って塗布膜を多層化することは得策ではない。なお塗布膜中で一旦生成してしまったBaCO3を完全に分解するためには例えば900℃以上の高温で加熱することが必要となる。
そこでチタン酸バリウムの結晶粒子のサイズを100nm程度にする手法が提案されている(非特許文献2)。この手法は、上記のゾルゲル材料を特殊な条件で加水分解、分散させた材料を塗布液として用いる手法であり、この塗布液中には平均粒径100nm以下の粒子が分散されている。ここで説明の便宜上このような薄膜をナノ粒子の薄膜と呼ぶことにすると、ナノ粒子のチタン酸バリウム薄膜を形成する場合には、1層の塗布膜の厚さを大きくできるので、通常のゾル、ゲル法により得られる数nmオーダの結晶粒子のチタン酸バリウム薄膜に比べて積層数を少なくでき、1層とすることも可能である。このため成膜プロセス中におけるCO2の取り込み量を抑えることができる利点がある。
しかしながらコンデンサの製品化を実現するには、リーク特性をより一層向上させる必要があり、薄膜中へのCO2の取り込みをより一層抑える工夫をしなければならない。
特開平8−316433号公報(段落0021) 福岡県工業技術センター研究報告 No14(2004年インターネット掲載)
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、ABO型ペロブスカイト結晶構造をもつ例えばチタン酸バリウムなどからなる誘電体薄膜を製造するにあたって、誘電率が高くかつリーク電流の少ない誘電体薄膜を形成する装置及び方法を提供することにある。
本発明は、塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABOX型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成装置であって、ABOX型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するための塗布ユニットと、前記基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットと、前記基板を塗布ユニットから加熱ユニットまで搬送する基板搬送手段と、前記塗布ユニット、加熱ユニット及び基板搬送手段がその中に配置される本体用の筐体と、前記基板搬送手段による搬送領域に気流を形成するための気流形成手段と、この気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部と、を備えたことを特徴とする。
なおここで「焼成」とは有機溶媒を蒸発させた誘電体膜形成用組成物をアモルファスな状態から結晶化させることをいう。
またXの値は当該ABOx型ペロブスカイト構造の誘電体薄膜を形成する各工程における処理雰囲気中の酸素の量により変動するが2.5〜3.5の範囲に含まれる。
前記気流形成手段は、前記本体用の筐体内に気流を形成するものであってもよいし、あるいは基板搬送手段に組み合わせて設けられていてもよい。基板搬送手段に気流形成手段を設ける場合には、例えば搬送アームに保持された基板の表面に対向するように多孔板を配置し、この多孔板から気流がシャワー上に基板に降りかかるようにすることができる。また気流形成手段は、パーティクルを除去するための第1のフィルタ部を備えた構成としてもよい。
中和処理部は、気流形成手段に気体を送る気体供給路に設けられた、アルカリ溶液を収容する容器と、前記アルカリ溶液内に気体を供給してバブリングするバブリング手段と、を備えた構成であってもよいし、アルカリ成分を付着した第2のフィルタ部を含むいわばケミカルフィルタとして構成してもよい。また前記気流形成手段から筐体内に供給された気体を、前記中和処理部を介して当該気流形成手段に戻して循環するための循環手段を備えた構成とすることが好ましい。
本発明において、塗布ユニットは、塗布ユニット用の筐体内に設けられた基板の載置台と、ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するためのノズルと、塗布ユニット用の筐体内に気流を形成するための気流形成手段と、を含み、気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部を設けた構成としてもよい。
加熱ユニットは、容器内に設けられ、塗布液が塗布された基板を載置する載置台と、基板を加熱する加熱手段と、前記容器内に気流を形成するための気流形成手段と、を含み、加熱ユニット用の気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部を設けた構成としてもよい。
また本体をなす筐体内には、既述のように中和処理された気体を供給し、塗布ユニットあるいは加熱ユニットについては、例えば窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気としてもよい。
他の発明は、塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABOX型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成装置であって、筐体内に設けられた基板の載置台と、ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するためのノズルと、前記筐体内に気流を形成するための気流形成手段とを含む塗布ユニットと、前記気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部と、前記基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットと、前記基板を塗布ユニットから加熱ユニットまで搬送する基板搬送手段と、を備えたことを特徴とする。
塗布ユニット用の中和処理部は、アルカリ成分を付着した第2のフィルタ部を含む構成としてもよいし、アルカリ溶液を収容する容器と、前記アルカリ溶液内に気体を供給してバブリングするバブリング手段と、を備えた構成としてもよい。
更に他の発明は、塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABOX型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成装置であって、ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するための塗布ユニットと、容器内に設けられ、塗布液が塗布された基板を載置する載置台と、基板を加熱する加熱手段と、前記容器内に気流を形成するための気流形成手段と、を含み、基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットと、前記気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部と、前記基板を塗布ユニットから加熱ユニットまで搬送する基板搬送手段と、を備えたことを特徴とする。加熱ユニット用の中和処理部は、塗布ユニット用の気流形成手段に気体を送る気体供給路に設けられた、アルカリ溶液を収容する容器と、前記アルカリ溶液内に気体を供給してバブリングするバブリング手段と、を備えた構成としてもよい。
以上の加熱ユニットや塗布ユニットにおける筐体内には、既述のように中和処理された気体を供給し、塗布膜形成装置本体をなす筐体内については、例えば窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気としてもよい。
前記誘電体膜形成用組成物は、(i)金属種A及び金属種Bを含むABOx型結晶構造を有する粒子、(ii)金属種A及び金属種Bを含む金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体及び金属水酸化物の群から選ばれる少なくとも1種の成分、(iii)有機溶媒、の中から少なくとも(i)、(ii)のうちいずれか一方と(iii)とを含んでいてもよい。また例えば前記ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜は、金属種Aがリチウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタンから選ばれる一種以上の金属であり、金属種Bがチタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブから選ばれる一種以上の金属である、ABOペロブスカイト型の結晶構造を有する薄膜であってもよい。
本発明の方法は、塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成方法であって、基板を載置台に載置する工程と、気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去し、その気体を載置台上の基板に供給しながら、ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体膜形成用組成物を含む塗布液を載置台上の基板に塗布する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の方法においては、気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去し、その気体を基板の搬送領域に供給する工程と、塗布液が塗布された基板を、塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットに前記搬送領域を通って搬送する工程と、を含むようにしてもよい。また本発明の方法においては、塗布液が塗布された基板を加熱ユニットに搬送する工程と、気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去し、その気体を加熱ユニット内に供給しながら、当該加熱ユニット内にて基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行う工程と、を含むようにしてもよい。
本発明の塗布膜形成装置によれば、塗布ユニットから加熱ユニットまで基板を搬送する基板搬送手段と前記基板搬送手段による基板の搬送領域に気流を形成するための気流形成手段と、この気流形成手段により取り込まれる気体中の二酸化炭素を中和して除去するための中和処理部とを備えることにより、当該搬送領域に二酸化炭素が除去された気流を形成し、前記搬送領域の二酸化炭素濃度を抑えながら基板搬送手段によりこの搬送領域における基板の搬送を行うことができる。従ってこの搬送中に基板に形成された塗布膜に二酸化炭素が取り込まれることが抑えられるため、塗布膜中に含まれる化合物と二酸化炭素とが反応することにより生じる生成物が塗布膜中に混入することを抑えることができる。その結果としてこのように搬送された基板を焼成して得られるABOx型ペロブスカイト結晶構造をもつ誘電体薄膜においては当該ABOx型ペロブスカイト結晶構造膜中における前記生成物の混入が抑えられることになるためこの生成物による電流を運ぶパスが結晶構造膜中に形成されることが抑えられる。この結果ABOx型ペロブスカイト結晶構造膜の薄膜化を達成しつつ高い誘電率を確保しながら、リーク電流を抑えることができる。
また他の塗布膜形成装置によれば筺体内に設けられた基板の載置台と基板に塗布液を供給するノズルとを備えた塗布ユニットが設けられ、また前記筺体内に気流を形成する手段とこの気流形成手段により取り込まれる気体中の二酸化炭素を中和して除去するための中和処理部とを備えることにより、筺体内に二酸化炭素が除去された気流を形成することで筺体内を二酸化炭素濃度が抑えられた雰囲気とし、その雰囲気中で基板に塗布液を供給して塗布膜を形成することができる。従って前記塗布膜が形成される際にこの塗布膜への二酸化炭素の取り込みが抑えられるため、塗布膜中に含まれる化合物と二酸化炭素とが反応することにより生じる生成物が膜中に混入することを抑えることができる。
さらにまた本発明の塗布膜形成方法によれば、二酸化炭素が除去された気体の雰囲気中で塗布液を基板に塗布しているため、同様の効果が得られる。
以下、本発明に係るABO型ペロブスカイト膜であるBaTiO3からなる誘電体薄膜を例えばシリコンウエハ(以下ウエハとする)からなる基板W(詳しくはウエハ上の下部電極膜の表面)に成膜するために用いられる塗布膜形成装置1について図面を参照しながら説明する。図1はこの塗布膜形成装置1の斜視図であり、図2は同平面図である。塗布膜形成装置1は複数枚例えば25枚の基板Wが棚状に収納された搬送容器をなす基板キャリア(以下単に「キャリア」という)Cが搬入出されるキャリア載置部B1と、基板Wに対して塗布、加熱(ベーク)処理を行うための処理部B2と、天井ブロック4とを備えている。キャリア載置部B1にはキャリアCを複数個並べて載置可能なキャリアステーション11と、キャリアCから基板Wを取り出して処理部B2へ受け渡すための受け渡し手段12とが設けられている。
キャリア載置部B1の奥側には処理部B2が接続されており、この処理部B2は上部が開口した本体をなす筐体(本体用の筺体)20により周囲を囲まれている。前記筺体20のキャリア載置部B1に面する側壁にはシャッタ22により開閉自在な搬送口21が設けられており、この搬送口21を介して前記受け渡し手段12は筺体20内に進入し、後述の棚ユニット24Aの受け渡しユニット25に基板Wを受け渡すことができるようになっている。なおシャッタ22は例えば受け渡し手段12が筐体20内に進入する場合を除いて閉鎖されることで、キャリア載置部B1から処理部B2への気体の流入が抑えられるように構成されている。
この処理部B2の筺体20内の構成について図3をも用いて説明する。この図3はこの処理部B2に含まれる基板搬送手段であるメイン搬送アーム23、塗布ユニット5及び棚ユニット24Aを同一平面に示した展開図である。処理部B2の中央には進退自在、昇降自在かつ鉛直軸周りに回転自在に構成されたメイン搬送アーム23が設けられており、キャリア載置部B1から見てこのメイン搬送アーム23の右側には2段に積層された塗布ユニット5が奥側に向けて2つ連なるように設けられている。またメイン搬送アーム23の前後及び左側には夫々加熱、冷却系のユニットが積層された棚ユニット24A、24B、24Cが設けられており、棚ユニット24Aは複数の加熱ユニット6、受け渡しユニット25及び前記加熱ユニット6にて加熱処理された基板Wを所定の温度に冷却するための複数の冷却ユニット26が上からこの順に積層されて構成されている。棚ユニット24B、棚ユニット24Cは例えば受け渡しユニット25が設けられていない他は棚ユニット24Aと同様に構成されており、前記メイン搬送アーム23はこれらの棚ユニット24A〜24Cを構成する各ユニット及び前記塗布ユニット5に基板Wを受け渡せるようになっている。なお図3中27はメイン搬送アーム23を鉛直方向に移動させるためのガイドである。
筺体20の底部には例えば複数の排気口28が間隔をおいて開口しており、各排気口28には排気管29が夫々接続されている。各排気管29は例えば筺体20外へ伸長し、途中で夫々が合流しており、合流した排気管29の端部は中和処理部であるバブリング装置3を構成する容器32内に浸漬されて設けられている。なお図中31は合流した排気管29に介設された圧力ポンプであり、排気口28を介して筺体20内の気体を吸引し、この気体を排気管29の下流側に加圧して供給するようになっている。
前記バブリング装置3の容器32はキャップ32aにより開口部32bが塞がれることでその内部が気密になるように構成されており、その容器32の内部には例えばアルカリ成分としてCa(OH)2(水酸化カルシウム)が溶解した溶液33が貯留されている。なお排気管29、後述の供給管36は図示しない継手により容器32から取り外せるように構成されており、前記キャップ32aを外して開口部32bを介して前記容器32内の溶液33の交換、充填を行うことができるようになっている。図中34は前記排気管29の端部に接続されたバブリングを行うためのノズルであり、既述のように圧力ポンプ31により排気管23の下流側へ押し出された気体がノズル34から溶液33中に吐出されてバブリングされると下記の化学反応が起きてその吐出された気体中に含まれていた二酸化炭素(CO2)が中和されて除去されるようになっている。
Ca(OH)2+CO2 → CaCO2+H2O
また容器32内の気相部分には当該容器32内の前記気体を後述の天井ブロック4へ送り出すための気流形成手段である供給管36の一端が開口している。なお図中35は供給管36に介設されたミストフィルタであり、供給管36はこのミストフィルタ35の下流側において後述する天井ブロック4のフィルタユニットFの数に応じて分岐している。
図1〜図3に示すように天井ブロック4は筺体40を備え、処理部B2の天井部を構成しており、これにより筺体20内が概ね気密空間とされる。この天井ブロック4は筺体40内に気流形成手段である複数のフィルタユニットFが並設され、各フィルタユニットFはパ−ティクル除去用の清浄化フィルタ41を備えており、各フィルタ41の上方には当該フィルタ41と筺体40とに囲まれる空間となっている通気室43が設けられている。この通気室43は各フィルタ41に面する領域ごとに区画されている。また各通気室43には前記気体供給管36が接続されており、既述のようにノズル34から溶液33中に気体が吐出されて容器32内の圧力が高まると前記中和反応によってCO2が除去された気体が供給管36内に供給される。この気体はミストフィルタ35を通過することにより水分が除かれた状態で通気室43に流入し、フィルタ41を通過して筺体20内全域にダウンフローされることにより低CO2濃度雰囲気に保たれるようになっている。そしてダウンフローされた気体は排気口28を介して排気管29内に流入し、圧力ポンプ31により再び溶液33中へ送り込まれバブリングされるようになっている。この例では供給管36及び排気管29および圧力ポンプ31により筺体20内の気体を循環する循環手段が構成され、また循環路に設けられた容器32は、特許請求の範囲でいう「気体供給路に設けられた」構成に相当する。
次に塗布ユニット5について図4を用いて説明する。塗布ユニット5は筺体50を備えており、筺体20内における前記メイン搬送アーム23の移動する領域を搬送用通路R1とすると、この搬送用通路R1に面する筺体50の側壁には基板Wの搬送口51が設けられている。前記搬送口51には開閉自在のシャッタ52が設けられ、当該シャッタ52は例えばメイン搬送アーム23が筐体50内に進入する場合を除いて閉鎖されるようになっている。筐体50の内部には基板Wの載置部をなすスピンチャック53が設けられ、このスピンチャック53は不図示の駆動部により鉛直軸回りに回転自在、かつ昇降自在に構成されている。またスピンチャック53の周囲にはカップ54が設けられ、当該カップ54の底面には排気管やドレイン管などを含む排液部(図示せず)が設けられている。図中55は塗布液の供給ノズルであり、例えばBaTiO3の前駆体膜を作成するための例えば水酸化バリウム一水和物とイソプロポキシチタンとを有機溶媒である2−メトキシメタノールに溶解した誘電体膜形成用組成物を含む塗布液5Aをスピンチャック53に保持された基板Wに供給するようになっている。
また筐体50の上方には気流形成手段であるフィルタユニット6が設けられており、このフィルタユニット6は図5に示すように中和処理部であるCO2を除去するためのフィルタ部61、吸引手段であるファン62及びパーティクル除去用のフィルタ部63が上からこの順に積層されて構成されている。
前段側のフィルタ部61について図6を参照しながら説明するとこの第1のフィルタ部61は濾材としてシート体64を備えている。この例におけるシート体64としては活性炭繊維あるいはオレフィン系繊維などの材質からなる繊維網状体をアルカリ成分であるCa(OH)2を含んだ溶液に浸漬させ、前記溶液を繊維網状体の微細孔中にしみ込ませてからその微細孔中の溶液の一部を遠心分離機によりはじき飛ばして前記微細孔の内壁面にCa(OH)2分子を吸着させた後に、微細孔の密度を高めるとともに微細孔の形状をそろえ、かつ当該微細孔を規則正しく配列させるためにプレスされることによってプレート化されたものを用いることができる。図中65は前記シート体64の側周部を囲むように形成された支持枠であり、シート体64はこの支持枠65を介して筐体50内において当該シート体64の山側部分及び谷側部分が上下方向に向かうように配設されている。また図中66は後述するようにこの第1のフィルタ部61に流入した気体がシート体64を通過するために当該シート体64に設けられたスリットであり、図中66aは支持枠65においてファン62側に取り付けられたガスケットである。
後段側のフィルタ部63は、気体中に含まれるパーティクルを除去するために設けられたものであり、例えばこのフィルタ部63を構成するシート体の材質としてグラスファイバが用いられている点及び当該シート体にCa(OH)2を吸着させていない点を除いて既述の第1のフィルタ部61と同様に構成されている。
図4中67は通気室であり、前記フィルタユニット6と筺体50とに囲まれ、区画された空間となっている。この通気室67は例えば筺体50の背面の側壁に開口された気体供給孔68を介して筐体50の外部に設けられた気体供給ダクト69に接続されており、この気体供給ダクト69は例えば塗布ユニット5の背面側の側部から下段側の塗布ユニット5の底部に回り込み筺体20の外へ伸長している。なお図3中69aは気体供給ダクト69の端部における開口部であり、前記ファン62が所定の回転数により回転すると前記開口部69aを介して気体が気体供給ダクト69内に流入し、その気体は通気室67を介してフィルタユニット6に流入する。そしてフィルタユニット6に流れ込んだ気体が前段のフィルタ部61を通過する際に気体中に含まれていたCO2がシート体64に吸着されたCaCO3と既述のような中和反応を起こすことにより除去された後、後段のフィルタ部63を通過することによりパーティクルが除かれて筺体50内全域にダウンフローされて、筐体50内が低CO2濃度雰囲気に保たれるようになっている。
続いて図7を用いて加熱手段である加熱ユニット7について説明する。図7中70は筐体であり、71は前記搬送用通路R1に面する筺体70の側壁に設けられた基板Wの搬送口である。筺体70の内部には有底の円筒状に形成された熱板支持部材72が設けられており、前記熱板支持部材72内には例えば円形状の熱板73が設けられている。図中74は熱板73に埋めこまれたヒータである。また図中75は昇降可能な気流形成手段である整流用の天板であり、フランジ部を有する蓋状に形成されている。図中76はOリングであり、基板Wが前記熱板73上に載置されると天板75が下降してOリング76を介して天板75の周縁部と熱板支持部材72の周縁部とが密着することにより基板Wの周囲に密閉空間が形成されるようになっている。
前記天板75には前記フランジ部の内方全周に亘り気体供給口77が設けられており、この気体供給口77には気体供給管77aの一端が接続されている。この気体供給管77aの他端は図3に示すように既述した気体供給管36のミストフィルタ35の上流側に接続されている。また天板75の中央下部には排気口78が開口しており、この排気口78には排気管78aの一端が接続されている。そして排気管78aの他端は排気管29の圧力ポンプ31の下流側に接続されており、気体供給管32から気体供給管77aにCO2が除去された気体が供給されて当該気体が気体供給口77から吐出される一方で排気口78からは吸引排気が行われることにより筐体70内が低CO2濃度雰囲気に保たれるようになっている。また基板Wが熱板73に載置されて既述のように密閉空間が形成されると図7中矢印で示すような基板Wの外周から中央に向かう気流が形成されながら当該基板Wが加熱されるようになっている。
棚ユニット24A〜24Cに含まれる冷却ユニット26の詳しい説明は省略するがこの冷却ユニット26は例えば前記加熱ユニット7と同様に搬送用通路R1に向かって搬送口71が開口された筺体70を備え、その筺体70内部には例えば水冷方式の冷却プレートを備えた構成の装置が設けられている。また棚ユニット24Aに含まれる受け渡しユニット25は例えば加熱ユニット7と同様に筺体70を備え、その筺体70の内部に基板Wを載置するための例えば円形のステージが設けられており、このステージを介して基板Wのメイン搬送アーム23と受け渡し手段12との間で基板Wの受け渡しが行われるようになっている。
続いてこの塗膜形成装置1に備えられた制御部について説明する。この制御部は、例えばコンピュータからなるプログラム格納部を有しており、プログラム格納部には後述するような塗布膜形成装置1の作用、つまり基板Wの塗布、加熱処理、基板Wの受け渡し、各ユニット及び処理部B2の筺体内における気体の供給の制御などが実施されるように命令が組まれた例えばソフトウエアからなるプログラムが格納される。そして当該プログラムが制御部に読み出されることにより制御部は後述する塗布膜形成装置1の作用を制御する。なおこのプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードなどの記録媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
次に既述の塗布膜形成装置1を用いて表面に下部電極としてPt(プラチナ)からなる膜が形成されている基板Wに、塗布膜であるBaTiO3膜を形成する手順について図8を参照しながら説明する。この図8は前記コンデンサ構造が形成されるまでの一連の処理を示しており、図8において点線で囲まれる処理は塗布ユニット5により行われる工程を示している。また鎖線で囲まれる処理は加熱ユニット7で行われる工程を示し、この点線部と鎖線部とを囲う実線内に示した処理はこの塗布膜形成装置1内で行われる工程を示している。
先ず例えば前記基板Wをこの塗布膜形成装置1に搬入する前に圧力ポンプ31を稼動させて既述のように筺体20内においてダウンフローを形成するとともに筺体70内において既述のように天板75からの気体供給と吸引排気とを行い各筺体内を低CO2濃度雰囲気にしておく。また塗布ユニット5においても既述のようにファン62を回転させて筺体50内にダウンフローを形成して筺体50内を低CO2濃度雰囲気にしておく。
そして外部からキャリアCがキャリア載置部B1に搬入され、キャリアステーション11に載置されると受け渡し手段12がこのキャリアCから基板Wを搬出する。続いてシャッタ22が開き基板Wを保持した受け渡し手段12が処理部B2内に進入し、棚ユニット24Aの受け渡しユニット25に基板Wを受け渡した後、この受け渡し手段12は処理部B2から退避してシャッタ22が閉じられる。
その後メイン搬送アーム23が前記受け渡しユニット25から基板Wを受け取ると、このメイン搬送アーム23は基板Wを塗布ユニット5内に搬送し、スピンチャック53上に受け渡した後、塗布ユニット5内から退去する。そしてスピンチャック53を回転させながら供給ノズル55から基板Wの中央部に塗布液5Aを供給し、塗布液5Aを遠心力により展伸させるいわゆるスピンコーティングにより基板Wの全面に液膜を形成する。
このように塗布液5Aによる液膜が形成されるとメイン搬送アーム23が塗布ユニット5に進入してスピンチャック53から基板Wを受け取り、この基板Wを加熱ユニット7内に搬送する。熱板73上に基板Wが載置されると既述のように天板75が下降して基板Wの周囲が密閉空間となり、気流が形成されながら低CO2濃度雰囲気で基板Wが例えば250℃で1分間加熱されることにより誘電体膜形成用組成物5A中の有機溶媒である2−メトキシメタノールが蒸発して例えばアモルファスな状態であるBaTiO3膜の前駆体膜が形成される。
このように加熱ユニット7における加熱処理を受けた基板Wはメイン搬送アーム23により冷却ユニット26に搬送され、所定の温度に冷却された後に受け渡しユニット25に搬送される。その後この基板Wは受け渡し手段12により処理部B2に搬送されたときとは逆の手順で元のキャリアCに戻される。
キャリアCに戻された基板Wは例えば縦型熱処理装置などの焼成炉8Aに搬送され、その焼成炉8Aにおいて例えば750℃で焼成されることにより前記前駆体膜が結晶化して例えば膜厚100nm程度のBaTiO3膜81が基板WのPt膜82上に形成される。その後BaTiO3膜の上部に例えば上部電極としてNi(ニッケル)からなる膜83が蒸着により形成されることで図9に示すように基板Wにコンデンサ構造が形成される。なお前記Niに代えて例えばAl(アルミニウム)を用いて上部電極を構成してもよい。
この塗布膜形成装置1によれば、塗布ユニット5から加熱ユニット7まで基板Wを搬送するメイン搬送アーム23の搬送用通路R1にダウンフローを形成するためのフィルタユニットFと、このフィルタユニットFにより取り込まれる気体中のCO2を中和して除去するためのバブリング装置3を備えているため、前記搬送用通路R1にCO2が除去された気体によるダウンフローを形成し、この搬送用通路R1を低CO2濃度雰囲気に保ちながらメイン搬送アーム23により当該搬送用通路R1における基板Wの搬送を行うことができる。その結果としてこの搬送用通路R1を基板Wが搬送される間にCO2が基板Wに形成された塗布膜表面に取り込まれることが抑えられるため、塗布膜中におけるBaCO3の混入が抑えられる。従って基板Wを焼成してBaTiO3型ペロブスカイト構造をもつ誘電体薄膜を形成し、この膜を用いて形成したコンデンサ構造は当該BaTiO3膜中におけるBaCO3の混入が抑えられることになる。この結果BaTiO3膜の薄膜化を達成して高い誘電率を確保しながら、リーク電流を抑えることができる。
またこの塗布膜形成装置1によれば筺体50内にステージ53と基板Wに塗布液を供給するノズル55とを備えた塗布ユニット5が設けられており、また前記筺体50内にダウンフローを形成するフィルタユニット6が設けられ、このフィルタユニット6はフィルタユニット6に流入する気体中のCO2を中和して除去する第1のフィルタ部61を備えている。従って筺体50内にCO2が除去された気体によるダウンフローを形成することにより筺体50内を低CO2濃度雰囲気にし、その雰囲気中で基板Wに塗布膜を形成できるためこの塗布膜形成工程において前記塗布膜へのCO2の取り込みによって塗布膜にBaCO3が混入することを抑えることができる。その結果として塗布膜形成後にメイン搬送アーム23によって加熱ユニット7に搬送されて加熱処理を受け、さらに焼成処理を受けることにより形成されるBaTiO3膜中におけるBaCO3の混入が抑えられることになる。
さらに塗布膜形成装置1によれば加熱ユニット7と、加熱ユニット7の筺体70内に気流を形成する天板75と、この天板75に取り込まれる気体中のCO2を中和して除去するためのバブリング装置3とを備えることにより、筺体70内にCO2が除去された気体による気流を形成することにより筺体70内を低CO2濃度雰囲気とすることができ、その低CO2濃度雰囲気で基板Wに焼成の前処理である加熱処理を行うことができる。従ってこの加熱処理において基板Wに形成された塗布膜にCO2が取り込まれることが抑えられるため、焼成後に形成されるBaTiO3膜中における前記BaCO3の混入が抑えられることになる。
本実施形態では塗布ユニット5内あるいは加熱ユニット7内を空気を中和処理した雰囲気とせずに例えばN2ガスなどの不活性ガス雰囲気としてもよく、そして上述のように処理部B2の本体である筺体20内を低CO2濃度雰囲気としておくことにより、塗布ユニット5や加熱ユニット7の外からCO2を多く含んだ通常の大気が流入して処理雰囲気が乱されないという効果がある。また塗布ユニット5内については、必ずしも低CO2濃度雰囲気としなくとも、大気雰囲気であっても塗布の手法に工夫を凝らすことで塗布膜中へのCO2の巻き込みを防止できる技術、例えば予め基板上にシンナーを塗布した後スピンコーティングを行う手法が有効であることを把握している。このように処理部B2の本体である筺体20内だけを低CO2濃度雰囲気とする手法は、塗布ユニット5や加熱ユニット7内の雰囲気を乱すことがないという利点があり、また特にシンナーが多く含まれていていわば液膜の状態において搬送アームにより風を切りながら移動していくときにCO2が液膜中に取り込まれる懸念が大きいことなどから、搬送雰囲気を低CO2濃度雰囲気としておくことで、搬送中における液膜中へのCO2の取り込み量を低減できる利点がある。
またこの塗布膜形成装置1において処理部B2の外部にバブリング装置3を設けて空気の中和処理を行っていることから、アルカリ溶液33中のアルカリ成分が少なくなってきて中和能力が低くなったときに、アルカリ溶液33の交換が容易である。また空気を塗布膜形成装置1内とバブリング装置3との間で循環させているので塗布膜形成装置1の隙間から循環路中に新しい外気が入ってきてもバブリング装置3内に供給される空気中のCO2濃度は大気中のCO2濃度よりは小さいのでアルカリ成分の消費が抑えられる。
また中和処理部としてバブリング装置3を用いる場合図10に示すようにバブリング装置として第1のバブリング装置3A及び第2のバブリング装置3Bを用い、これらの使用をバルブにより切り替えるように構成しておけば、一方のバブリング装置3A(3B)についてアルカリ溶液の交換などのメンテナンスを行う場合に他方のバブリング装置3B(3A)を使用することで、中和処理された気流の供給を止めることなく連続運転することができる。
ところで既述の塗布膜形成装置1において塗布ユニット5にフィルタブロック6を設ける代わりに天井ブロック4に設けられたフィルタユニットFと同様のフィルタユニットを設け、さらにそのフィルタユニットと気体供給管36とを側管により接続することによって、筐体20内にダウンフローが形成されると気体供給管36からCO2が除かれた気体が前記側管を介して前記フィルタユニットに流入し、当該フィルタユニットからその気体が筐体50内にダウンフローされることで筐体50内が低CO2濃度雰囲気に保たれるようになっていてもよい。
また天井ブロック4としては例えば上部が開口した筺体を備え、その筺体に塗布ユニット5に設けられたフィルタユニット6と同様に構成された複数のフィルタユニットが並設され、筺体の開口部を介して前記各フィルタユニットに処理部B2の外部の気体が流入し、当該フィルタユニットにより前記気体中に含まれているCO2及びパーティクルが除去された後、その気体が筐体20内にダウンフローされることにより筐体20内が低CO2濃度雰囲気に保たれるようになっていてもよい。
なお容器32内に充填される溶液としては容器32内に流入する気体中のCO2を中和できればよいためCa(OH)2に代えてアルカリ成分としてCaO(酸化カルシウム)やLiOH(水酸化リチウム)を含んだ水溶液が貯留されていてもよい。
ところで焼成炉8Aは塗布膜形成装置1に連結されていてもよい。図11はこのような塗布膜形成装置の例を示しており、この塗布膜形成装置T1においては既述の塗布膜形成装置1の処理部B2の奥側にインターフェイス部B3を介して焼成炉8Aを備えた焼成部B4が接続されている。この塗布膜形成装置T1における処理部B2は既述の塗布膜形成装置1における処理部B2と略同様に構成されているが、棚ユニット24Cは受け渡しユニット25を備えている。そして前記インターフェイス部B3は例えば内部が概ね気密空間になっている筺体90を備え、筺体90内には処理部B2から焼成部B4に基板Wを受け渡すためのインターフェイスアーム91が設けられており、このインターフェイスアーム91と前記受け渡しユニット25との間で基板Wの受け渡しが行われるようになっている。
また焼成部B4は内部が概ね気密空間になっている筺体94を備えており、その筺体94内に前記焼成炉8Aとこの焼成炉8Aに対して基板Wの搬入出を行う搬入出機構(不図示)とが設けられており、前記インターフェイスアーム91とこの搬入出機構との間で基板Wが受け渡されるようになっている。
そして筺体90,94の上部には夫々例えば処理部B2に備えられているものと同様のフィルタユニットFが複数並設されている。また筺体90,94の夫々の底部には例えば複数の排気口(不図示)が間隔をおいて開口しており、各排気口には夫々排気管92,95が接続されている。各排気管92,95は筺体90,94外へと伸長する途中で夫々合流しており、排気管92,95の端部は処理部B2の排気管29の圧力ポンプ31の下流側に夫々接続されている。またこの塗布膜形成装置T1のバブリング装置3の気体供給管36はミストフィルタ35が介設されている部位の下流側において各ブロックB2,B3,B4に応じて分岐され、その端部は各ブロックに夫々設けられたフィルタユニットFに接続されており、バブリング装置3の圧力ポンプ31が稼動すると各ブロックの排気口から各筺体内の気体の吸引排気が行われると同時に気体供給管36を介して各筺体のフィルタユニットFにCO2が除去された気体が供給され、当該気体が各筺体内にダウンフローされる。そして各筺体の排気口から吸引された気体はバブリング装置3でバブリングされた後に再び気体供給管36を介して各筺体のフィルタユニットFに流入することで各筺体内が低CO2濃度雰囲気になるように構成されている。
この図11に示す塗布膜形成装置T1において、外部からキャリアCに格納された状態でキャリア載置部B1に搬入された基板Wは既述した塗布膜形成装置1と同様の経路に従って搬送されて塗布処理及び加熱処理を受けるが、この基板Wは加熱処理後、冷却ユニット26で冷却されるとメイン搬送アーム23により棚ユニット24Cの受け渡しユニット25に搬送される。その後基板Wはインターフェイスアーム61を介して焼成部B4の搬入出機構に受け渡された後、焼成炉8A内に搬入され焼成処理されてBaTiO3膜が形成される。焼成処理された基板Wは搬入出機構→インターフェイスアーム61→棚ユニット24Cの受け渡しユニット25→メイン搬送アーム23→棚ユニット24Aの受け渡しユニット25→受け渡し手段12の順に搬送されて、キャリアC内に格納される。このような塗布膜形成装置T1を用いた搬送方法においては加熱ユニット7にて基板Wが加熱されBaTiO3膜の前駆体膜が形成されてからBaTiO3膜が形成されるまでの間も低CO2濃度雰囲気で基板Wが搬送されるためBaTiO3膜へのCO2の取り込みをより確実に防ぐことができる。
また既述の実施形態においてはABO型ペロブスカイト結晶構造膜としてBaTiO3膜を形成する工程を示したが、ABO型ペロブスカイトの金属種Aとしては例えばLi(リチウム)、Na(ナトリウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba、La(ランタン)の中から選ばれる一種以上の金属であり、また金属種Bとしては例えばZr(ジルコニウム)、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Tiから選ばれる一種以上の金属であり、これらの所望の金属を含んだABO型ペロブスカイト結晶構造膜にあわせて塗布液5A中に含まれる誘電体膜形成用組成物を選択するようにしてもよく、またこの誘電体形成用組成物としては例えば、(i)金属種A及び金属種Bを含むABOx型結晶構造を有する粒子、(ii)金属種A及び金属種Bを含む金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体及び金属水酸化物の群から選ばれる少なくとも1種の成分、(iii)溶剤である例えばアルコールやエステル、エーテル等の有機溶媒の中から少なくとも(i)、(ii)のうちいずれか一方と(iii)とを含む溶液を用いることができる。
本発明に係るチタン酸バリウム膜をウエハに形成するために用いる塗布膜形成装置の斜視図である 前記塗布膜形成装置を示す平面図である。 前記塗布膜形成装置の処理部を示す展開図である。 前記塗布膜形成装置に設けられた塗布ユニットの縦断側面図である。 前記塗布ユニットに設けられたフィルタユニットの構成を示した説明図である。 前記フィルタユニットに備えられた第1のフィルタ部の構成を示す斜視図である。 前記塗布膜形成装置に設けられた加熱ユニットの縦断側面図である。 前記チタン酸バリウム膜を含んだコンデンサ構造を基板に形成する工程を示した説明図である。 前記コンデンサ構造を示した縦断側面図である。 他の塗布膜形成装置の一例を示した模式図である。 既述の塗布膜形成装置に焼成炉を接続した塗布膜形成装置の一例を示す平面図である。
符号の説明
W 基板
B2 処理部
1 塗布膜形成装置
4 天井ブロック
5 塗布ユニット
7 加熱ユニット

Claims (19)

  1. 塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成装置であって、
    ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体薄膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するための塗布ユニットと、
    前記基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットと、
    前記基板を塗布ユニットから加熱ユニットまで搬送する基板搬送手段と、
    前記塗布ユニット、加熱ユニット及び基板搬送手段がその中に配置される本体用の筐体と、
    前記基板搬送手段による搬送領域に気流を形成するための気流形成手段と、
    この気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部と、を備えたことを特徴とする塗布膜形成装置。
  2. 前記気流形成手段は、前記本体用の筐体内に気流を形成するものであることを特徴とする請求項1記載の塗布膜形成装置。
  3. 気流形成手段は、パーティクルを除去するための第1のフィルタ部を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の塗布膜形成装置。
  4. 中和処理部は、気流形成手段に気体を送る気体供給路に設けられた、アルカリ溶液を収容する容器と、前記アルカリ溶液内に気体を供給してバブリングするバブリング手段と、を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
  5. 中和処理部は、アルカリ成分を付着した第2のフィルタ部を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
  6. 前記気流形成手段から筐体内に供給された気体を、前記中和処理部を介して当該気流形成手段に戻して循環するための循環手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
  7. 塗布ユニットは、塗布ユニット用の筐体内に設けられた基板の載置台と、ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体薄膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するためのノズルと、塗布ユニット用の筐体内に気流を形成するための気流形成手段と、を含み、
    前記塗布ユニットに設けられた気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部を設けたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
  8. 加熱ユニットは、容器内に設けられ、塗布液が塗布された基板を載置する載置台と、基板を加熱する加熱手段と、前記容器内に気流を形成するための気流形成手段と、を含み、
    加熱ユニット用の気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部を設けたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一つに記載の塗布膜形成装置。
  9. 塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成装置であって、
    筐体内に設けられた基板の載置台と、ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体薄膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するためのノズルと、前記筐体内に気流を形成するための気流形成手段とを含む塗布ユニットと、
    前記気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部と、
    前記基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットと、
    前記基板を塗布ユニットから加熱ユニットまで搬送する基板搬送手段と、を備えたことを特徴とする塗布膜形成装置。
  10. 塗布ユニット用の中和処理部は、アルカリ成分を付着した第2のフィルタ部を含むことを特徴とする請求項7または9に記載の塗布膜形成装置。
  11. 塗布ユニット用の中和処理部は、塗布ユニット用の気流形成手段に気体を送る気体供給路に設けられた、アルカリ溶液を収容する容器と、前記アルカリ溶液内に気体を供給してバブリングするバブリング手段と、を備えたことを特徴とする請求項7または9に記載の塗布膜形成装置。
  12. 塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成装置であって、
    ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体薄膜形成用組成物を含む塗布液を基板に塗布するための塗布ユニットと、
    容器内に設けられ、塗布液が塗布された基板を載置する載置台と、基板を加熱する加熱手段と、前記容器内に気流を形成するための気流形成手段と、を含み、基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットと、
    前記気流形成手段に取り込まれる気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去する中和処理部と、
    前記基板を塗布ユニットから加熱ユニットまで搬送する基板搬送手段と、を備えたことを特徴とする塗布膜形成装置。
  13. 加熱ユニット用の中和処理部は、塗布ユニット用の気流形成手段に気体を送る気体供給路に設けられた、アルカリ溶液を収容する容器と、前記アルカリ溶液内に気体を供給してバブリングするバブリング手段と、を備えたことを特徴とする請求項8または12に記載の塗布膜形成装置。
  14. 前記誘電体膜形成用組成物は、
    (i)金属種A及び金属種Bを含むABOx型結晶構造を有する粒子、
    (ii)金属種A及び金属種Bを含む金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属錯体及び金属水酸化物の群から選ばれる少なくとも1種の成分、
    (iii)有機溶媒、
    の中から少なくとも(i)、(ii)のうちいずれか一方と(iii)とを含むことを特徴とする請求項1ないし13のいずれか一に記載の塗布膜形成装置。
  15. 前記ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜は、金属種Aがリチウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ランタンから選ばれる一種以上の金属であり、金属種Bがチタン、ジルコニウム、タンタル、ニオブから選ばれる一種以上の金属である、ABOペロブスカイト型の結晶構造を有する薄膜であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一に記載の塗布膜形成装置。
  16. 塗布液を基板に塗布し、更に焼成することにより得られるABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜を製造するための塗布膜形成方法であって、
    基板を載置台に載置する工程と、
    気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去し、その気体を載置台上の基板に供給しながら、ABO型ペロブスカイト構造の結晶構造を有する薄膜の誘電体形成用組成物を含む塗布液を載置台上の基板に塗布する工程と、を含むことを特徴とする塗布膜形成方法。
  17. 気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去し、その気体を基板の搬送領域に供給する工程と、
    塗布液が塗布された基板を、塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行うための加熱ユニットに前記搬送領域を通って搬送する工程と、を含むことを特徴とする請求項16記載の塗布膜形成方法。
  18. 塗布液が塗布された基板を加熱ユニットに搬送する工程と、
    気体中の二酸化炭素をアルカリ成分により中和して除去し、その気体を加熱ユニット内に供給しながら、当該加熱ユニット内にて基板上の塗布膜に対して焼成の前処理である加熱処理を行う工程と、を含むことを特徴とする請求項16記載の塗布膜形成方法。
  19. 二酸化炭素を中和して除去する工程は、容器内のアルカリ溶液内に気体を供給してバブリングする工程、及びアルカリ成分を付着したフィルタ部を気体を通過させる工程から選択された工程である請求項16ないし18のいずれか一つに記載の塗布膜形成方法。
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