JP4361424B2 - 溶接用超高純度フェライト系鉄合金とその溶接方法および溶接構造物 - Google Patents

溶接用超高純度フェライト系鉄合金とその溶接方法および溶接構造物 Download PDF

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本発明は、溶接用超高純度フェライト系鉄合金に関し、特に、溶接部に組織変化が出ない溶接用超高純度フェライト系鉄合金とその溶接方法およびその溶接構造物に関するものである。
沸騰水型軽水炉のシュラウドやその再循環系配管は、SUS304やSUS316L等のオーステナイト系鉄合金を素材として製造された部材を溶接して製造されているが、最近、それらの溶接部において応力腐食割れが発見され、大きな社会問題となっている。オーステナイト系鉄合金は、フェライト系鉄合金と比べて、応力腐食割れ感受性が高いことは従来から知られており、耐応力腐食割れ性の向上を図るためには、フェライト系鉄合金を用いることが好ましい。
しかし、従来用いられているフェライト系鉄合金は、耐食性がオーステナイト系鉄合金と較べて劣っていた。そこで、耐食性の向上を目的として、Crを多量に添加したフェライト系鉄合金の開発が試みられたが、鋼の靭性が劣化して、製造性が劣ったり、製品自体の靭性が劣化したりするほか、これを溶接した場合には、溶接部の靭性が大きく低下するという問題があった。そのため、工業的レベルで製造されるフェライト系鉄合金のCrの含有量は、高々30mass%程度に留まっており、軽水炉等の高い耐食性と信頼性が要求される用途には用いることができなかった。
また、フェライト系鉄合金の溶接性については、例えば、特許文献1には、高温におけるクリープ強度と靭性が共に優れる高Crフェライト系耐熱用溶接金属が開示されている。また、特許文献2には、高温強度に優れるガスメタルアーク溶接用の高Cr鋼が開示されている。しかしながら、これらのフェライト系鉄合金はいずれも、Crの含有量が13mass%程度のものでしかない。
従来のフェライト系鉄合金が溶接性に劣る原因は、以下のように考えられている。溶接金属部では、溶融した金属が凝固する際、凝固方向に沿ってデンドライト組織を形成し、組成のゆらぎが生じる。この組成のゆらぎは、溶接後の熱処理によっても容易に消失しない。そのため、機械的特性や耐食性等の物理的、化学的特性にばらつきが生じることとなる。また、熱影響部では、溶接時に投入された熱量により、鋼中に含まれている不純物が粒界などに析出し、この析出物によって靭性の低下が引き起こされる。
また、上記のように溶接部(溶接金属、溶接熱影響部)とその母材部分との間で物理的特性(熱膨張率、強度、伸び等)が異なる場合には、その後の使用によって熱サイクルが負荷された場合には、両部分間に大きな歪が発生し、短時間で破壊に至ることがある。また、組成のゆらぎによって発生したCr濃度の低い部分は耐食性が劣るため、局所的な腐食が進行し、応力腐食割れ感受性が高くなるという問題もある。
ところで、最近、安彦らの研究により、フェライト系合金(Fe-Cr系合金)においても、超高純度化することにより、耐食性が著しく向上することが明らかとなった。また、超高純度化することにより、Cr含有量を増加しても、加工性や靭性の劣化がないことも明らかとなった。その結果、Crを60mass%超え含有する、耐食性や靭性、加工性に優れる超高純度フェライト系鉄合金が開発されている(例えば、特許文献3,4、非特許文献1、2参照)。
特開2000-015480号公報 特開2001-219292号公報 特開2000-336449号公報 特開2001-342535号公報 安彦兼次「究極の超高純度金属」日経サイエンス2000年10月号、p32〜41 Kanou,Harima,Takagi,Abiko 「Mechanical Prooerties of a High-Purity 60mass% Cr-Fe Alloy」Materials Transactions,JIM,Vol.41,No.1(2000)p197-202
しかしながら、上記超高純度フェライト系鉄合金の溶接性、特に溶接金属、溶接熱影響部を含めた溶接部の組織や溶接後の熱処理条件等については、従来、全く知見がないのが実情である。そのため、超高純度フェライト系鉄合金は、優れた耐食性や強度、靭性を有するにも拘わらず、その特性が有効に活用されないままでいた。
本発明の目的は、耐食性、強度、靭性等に優れるだけでなく、耐応力腐食割れ性にも優れる溶接部を得ることができる溶接用超高純度フェライト系鉄合金とその溶接方法およびその溶接構造物を提供することにある。
発明者らは、安彦らの開発した超高純度フェライト系鉄合金を用いて、溶接とその後の熱処理が溶接部の特性に及ぼす影響について鋭意研究を重ねた。その結果、上記超高純度フェライト系鉄合金は、従来のフェライト系鉄合金と同様の条件で溶接することができること、溶接により形成された溶接部には溶接熱影響部が形成されないこと、さらにその後、適切な熱処理を施せば、溶接金属は母材とほぼ同じ組織となり、その結果、溶接部における強度や靭性、耐食性ならびに耐応力腐食割れ性が母材部の特性とほぼ同等となることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、Crを15〜70mass%、WおよびMoを単独でまたは複合して10mass%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系鉄合金において、C,N,SおよびOの合計含有量を100massppm以下に抑えることにより、溶接部に熱影響部が出現しないようにしたことを特徴とする溶接用超高純度フェライト系鉄合金である。
また本発明は、上記記載の超高純度フェライト系鉄合金を溶接した後、900〜1300℃の温度範囲で熱処理して、組織変化のない溶接部を得ることを特徴とする溶接方法を提案する。
また、本発明は、上記記載の超高純度フェライト系鉄合金を溶接した後、その溶接箇所を900〜1300℃の温度範囲で熱処理して、組織変化のない溶接継手を設けてなることを特徴とする溶接構造物を提供する。
本発明によれば、溶接ままでも溶接熱影響部のない超高純度フェライト系鉄合金を提供することができる。また、本発明の超高純度フェライト系鉄合金は、溶接後、適切な熱処理を施すことにより、溶接部の物理的、化学的特性を母材部とほぼ同等とすることができるので、溶接部の強度、靭性、耐食性および耐応力腐食割れ性が母材部なみに優れた溶接構造物を得ることができる。その結果、従来のフェライト系鉄合金の問題点であった溶接部の靭性、耐食性や耐応力腐食割れ性が劣るという問題を、完全に払拭することが可能となる。
本発明を開発する契機となった実験について説明する。
Crを59.5mass%含有し、C,N,SおよびOの合計量が80.7mass ppmであり、残部が実質的にFeからなる超高純度フェライト系鉄合金(超高純度60Cr−Fe)を、超高真空溶解炉を用いて溶製し、鋳造して10kgの鋳塊とした後、この鋳塊を1250℃に加熱後、熱間圧延して、板厚30mmの板状鋼材とした。この鋼材から、幅100mm×長さ200mm×板厚20mmの試験片を2枚採取し、これらの試験片の長さ方向を突き合わせて電子ビーム溶接(EBW)し、溶接継手を製作した。この溶接継手を溶接線に垂直に、50mm間隔で切断し、熱処理用の試験片を作製した。また、同様の要領で、代表的なフェライト系鉄合金であるSUS430についても、溶接継手を製作し、熱処理用の試験片を作製した。次に、これらの試験片を、Arガス雰囲気下で、1050℃の温度で60minの熱処理を施し、熱処理前と熱処理後の試験片について、組織観察および硬さの測定を行った。組織観察は、試験片断面を研磨し、王水で腐食して、金属組織を出現させた後、光学顕微鏡を用いて25〜500倍で観察した。また、硬さの測定は、JIS Z 2244(またはJIS Z 2251)に準拠し、母材部と溶接部(溶接金属、溶接熱影響部)を含む溶接部近傍部の板厚中央部における硬さの分布を、マイクロビッカース硬度計を用いて200μm間隔で測定した。
図1は、熱処理前、即ち溶接ままの状態における超高純度60Cr−FeとSUS430の溶接部断面組織の光学顕微鏡写真を比較して示したものである。この図1の写真から、SUS430では、顕著な熱影響部が観察されるのに対し、超高純度60Cr−Feでは、熱影響部は認められないことがわかる。図2は、超高純度60Cr−Feの試験片を熱処理した前後における、溶接部(溶接金属)の組織の変化を光学顕微鏡で観察した写真である。この写真から、超高純度60Cr−Feの溶接金属部は、電子ビーム溶接ままでは非常に微細な組織であるが、1050℃×60minの熱処理を施した後は、当初の微細な溶接金属組織は全く消失し、母材と同様の均質な組織となっていることがわかる。図3は、超高純度60Cr−FeとSUS430の母材部および溶接部を含む溶接部近傍の硬さ分布を測定した結果である。図3から、超高純度60Cr−Feでは、溶接ままでも、溶接金属部の硬さの上昇は認められるが、溶接熱影響部に相当する硬さのピークは認められないこと、また、溶接後の熱処理により、上記溶接金属部の硬さのピークも消失し、母材部とほぼ同等の硬さとなっていることがわかる。一方、SUS430の場合には、熱処理した後でも、硬さの変動が大きく均一化していないことがわかる。
以上の結果から、本発明の溶接用フェライト系鉄合金は、急熱・急冷を伴う電子ビーム溶接によっても溶接熱影響部が出現せず、また、溶接後の熱処理により溶接金属が母材と同等の特性を有するものとなることがわかった。本発明は、上記知見に基き開発したものである。
次に、本発明の成分組成を限定する理由について説明する。
Cr:15〜70mass%
Crは、本発明のフェライト系鉄合金において、耐食性を向上する最も重要な元素であり、15〜70mass%の範囲で含有する必要がある。Cr含有量が15mass%未満では、耐食性向上効果が得られない。一方、Crは高いほど耐食性の向上効果が期待できるが、70mass%を超えるCrの添加は、靭性が低下するとともに、コスト上昇に見合うだけの耐食性の向上が得られない。なお、優れた耐食性を得るためには、Crは好ましくは25mass%以上、より好ましくは30mass%以上とするのがよい。
C+N+S+O:合計で100mass ppm以下
C,N,SおよびOは、鋼中に不可避的不純物として混入してくる元素である。これらの元素は、他の元素と炭窒化物、硫化物および酸化物等を形成し、粒界や粒内に析出して、靭性や加工性、耐食性の低下を引き起こすだけでなく、溶接した時の溶接熱影響部の形成に大きく関与し、靱性や耐応力腐食割れ性を著しく劣化させる。特に、これらの元素の合計量が100mass ppm以下を超えると悪影響が顕著となるため、C,N,SおよびOは、合計で100mass ppm以下に制限する必要がある。好ましくは、50mass ppm以下、より好ましくは、30mass ppm以下である。
本発明のフェライト系鉄合金は、上記成分組成に加えて、W,MoおよびNb、Tiを下記の範囲で添加することができる。
W,Mo:単独または複合して10mass%以下
W,Moは、高温強度を高めるのに有効な元素であり、必要に応じて添加することができる。本発明のフェライト系鉄合金は優れた高温強度を有するが、より優れた高温強度を得るためには、1mass%以上添加することが好ましい。しかし、10mass%を超えて添加した場合には、靭性の低下を招くため、10mass%以下に制限する。W,Moの効果を有効に活かすには、好ましくは3〜6mass%の範囲で添加するのがよい。
Nb:0.01〜0.2mass%、Ti:0.01〜0.2mass%
NbおよびTiは、フェライト系鉄合金の靭性を高める元素であり、必要に応じて添加することができる。この効果を発現させるためには、それぞれ0.01mass%以上添加することが好ましい。一方、NbおよびTiは、0.2mass%を超えて添加すると、金属間化合物を形成して靭性を低下させるので、添加量の上限はそれぞれ0.2mass%とするのが好ましい。また、NbおよびTiを同時に添加する場合には、合計で0.01mass%以下に制限するのが好ましい。なお、NbおよびTiは、CおよびNと炭窒化物を形成するが、C,Nが上記範囲内に制御されていれば、これら炭窒化物による悪影響は抑えることができる。
本発明のフェライト系鉄合金は、上記以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。ただし、靭性の向上を目的として、Niを5mass%以下の範囲で添加しても、本発明の効果に何ら影響するものではない。なお、不可避的不純物として含まれる元素としては、Si,Mn,Al,Cu,Pb,Mg,Ca,B,As,P,S,Sn,Zn,Zr等があるが、これらの元素の合計は、0.02mass%以下に制限することが好ましく、より好ましくは0.01mass%以下である。
次に、溶接後の熱処理条件について説明する。
本発明の超高純度フェライト系鉄合金は、溶接ままでも溶接熱影響部がなく、さらにその後、適切な熱処理を施すことにより、溶接金属の組織が消失して母材組織と同じとなり、その結果、溶接部は、母材金属とほぼ同等の物理的、化学的特性を有するものとなる。そのような均一化効果を得るための溶接後の熱処理は900〜1300℃の温度で行うことが好ましい。900℃未満では、組織の均一化に要する時間が長時間となり、好ましくない。一方、1300℃を超えると、結晶粒が粗大化し、強度、靭性の低下を招く。好ましくは950〜1200℃、より好ましくは1000〜1200℃の温度範囲である。
なお、熱処理時間は、上記温度で、30min〜2hrの範囲で行うことが好ましい。30min未満では、900℃近傍の低温では、十分な均一化効果が得られず、一方、2hrを超えると、その効果が飽和するだけでなく、組織の粗大化を招くので好ましくない。また、熱処理における雰囲気は、鋼材表面の酸化を防止する観点から、Arガス等の非酸化性雰囲気、あるいは、H2ガスを含む還元性雰囲気下で行うのが好ましい。
なお、本発明のフェライト系鉄合金に用いる溶接方法は、上記した電子ビーム溶接の他、TIG溶接、MAG溶接等を好適に用いることができる。なお、TIG溶接、MAG溶接に用いる場合には、母材と同じ素材から製造した溶接ワイヤを用いることが好ましい。
表1に示した60Cr-Feと35Cr-Feの2種の超高純度フェライト系鉄合金を、超高真空溶解炉を用いて溶製し、鋳造して10kgの鋳塊を得た。この鋳塊を1250℃に加熱後、熱間圧延して板厚25mmの板状の鋼材とした。この鋼材から、幅100mm×長さ200mm×厚さ20mmの試験片を2枚採取し、この2枚の長辺を突き合わせて、電子ビーム溶接し溶接継手を作製した。この際の溶接条件は、ビーム電流50mA、移動速度500mm/minであった。このようにして得た溶接継手を2等分し、一つは、溶接ままの試験材として用いた。もう一つは、Arガス雰囲気に保持された加熱炉中で1050℃×30minの熱処理を施した後、熱処理後の試験材とした。なお、比較材として、オーステナイト系鉄合金の代表として通常のSUS304を、フェライト系鉄合金の代表として通常のSUS430を溶製し、同様の工程で同様の試験材を製作した。上記のようにして得たそれぞれの試験材について、下記の試験を行った。
<引張試験>
それぞれの試験材から、溶接線が引張試験片の引張方向に対して垂直で、溶接部が引張試験片の標点間のほぼ中央部に位置するようにJIS Z 2201に準拠する引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、0.2%耐力、引張強さ、伸びおよび絞りを測定した。なお、参考として、各鋼種の母材からも同様の試験片を採取し、引張試験を行った。
<シャルピー衝撃試験>
それぞれの試験材および母材から、JIS Z 2202に規定された2mmVノッチ標準試験片を切り出し、室温、大気中でJIS Z 2242に準拠して衝撃試験を行い、シャルピー吸収エネルギーおよび破断面の脆性破面率を測定した。なお、溶接部の試験片は、溶接線がVノッチの部位となるように採取した。
<耐食性試験(硫酸腐食試験)>
耐食性は、硫酸腐食試験により評価した。試験は、それぞれの試験材および母材から切り出した幅20mm×長さ20mm×厚さ3mmの試験片を、70℃の温度に保持した70%の硫酸溶液中に24hr浸漬して腐食減量を測定し、1時間当たり単位面積当たりの腐食減量を測定し評価した。なお、溶接した試験材からは、溶接部をほぼ中央部に含むよう、試験片を採取した。
<耐応力腐食割れ性>
耐応力腐食割れ性は、低歪速度試験(SSRT試験:Slow Strain Rate Technique)により評価した。引張試験片は、平行部が3mm×3mm×20mmの寸法のものを、溶接部を中央に含むように、溶接方向に垂直方向に採取し、この試験片を、歪速度 1.6×10-5/secで引張試験し、得られた最大荷重、破断伸びおよび破面観察により、割れ感受性を評価した。なお、上記引張試験は、温度300℃、加圧力10MPaの加圧温水中で、溶存酸素量250〜300ppb、Cl濃度100ppmの応力腐食割れが発生しやすい腐食環境下で行った。
Figure 0004361424
表2に、引張試験およびシャルピー衝撃試験の試験結果を示した。
引張特性について見ると、本発明の超高純度フェライト系鉄合金(35Cr-Fe、60Cr-Fe)は、溶接ままの特性は、母材のそれと比較して若干低下するが、溶接後の熱処理により回復し、ほぼ母材と同じ強度、伸びが得られている。これは、溶接後の熱処理により、溶接金属の組織が母材とほぼ同じものとなったためと考えられる。これに対して、比較鋼であるSUS430は、溶接後の引張延性は大きく劣化しており、その後の熱処理によっても完全に回復していない。また、シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーについても全く同様の傾向がある。なお、超高純度60Cr-Feの伸びとシャルピー吸収エネルギーが超高純度35Cr-Feより低い理由は、Cr含有量が多いことによる。
また、表2中には、耐食性試験の結果を併せて示した。この結果から、本発明の35Cr-Fe、60Cr-Feは、いずれの段階でも、比較鋼であるSUS304およびSUS430より優れた耐食性を示している。なお、超高純度60Cr-Feの腐食減量が著しく低い理由は、Cr含有量が他と較べて高いことによる。
Figure 0004361424
表3は、SSRT試験の結果を示したものである。上記引張試験の結果と同様、本発明の超高純度フェライト系鉄合金は、溶接ままでも耐応力腐食割れ性の劣化が小さく、さらに溶接後に適切な熱処理を施すことにより、溶接部の耐応力腐食割れ性は母材なみに回復していることがわかる。一方、比較鋼であるSUS304は、オーステナイト系であるため母材自身の耐応力割れ性が低い。また、溶接することでさらに低下し、その後の熱処理によっても回復していない。図4は、代表例として、本発明の超高純度フェライト系鉄合金(35Cr-Fe、60Cr-Fe)および比較鋼SUS304の溶接後、1050℃×30minの熱処理を施した試験片のSSRT試験の応力−歪曲線を示したものである。本発明の35Cr-Fe、60Cr-Feはいずれも大きな強度と伸びを示すのに対し、SUS304は、低強度低歪で破断している。また、図5の写真は、図4に示したSSRT試験片の破断面をSEMにて観察したものである。超高純度の35Cr-Fe、60Cr-Feはいずれも延性破面を呈しているのに対し、SUS304は粒界破面を呈しており、粒界が応力腐食割れをしていることがわかる。
Figure 0004361424
本発明は、応力腐食割れが問題となっている軽水炉のシュラウドや配管系統の素材としてだけでなく、同様の問題を抱える化学プラント等の分野にも適用することができる。
超高純度60Cr-Fe、SUS430の溶接部の溶接ままの組織を示す写真である。 超高純度60Cr-Feの溶接部の熱処理前後のミクロ組織変化を示す写真である。 超高純度60Cr-Fe、SUS430の溶接部を熱処理したときの、熱処理前後の硬さ分布の変化を示すグラフである。 超高純度60Cr-Fe、35Cr-Fe、SUS304を溶接後、熱処理した材料をSSRT試験したときの応力−歪線図を示すグラフである。 超高純度60Cr-Fe、35Cr-Fe、SUS304を溶接後、熱処理した材料のSSRT試験片の破断面をSEMで観察した写真である。

Claims (3)

  1. Crを15〜70mass%、WおよびMoを単独でまたは複合して10mass%以下含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるフェライト系鉄合金において、C,N,SおよびOの合計含有量を100massppm以下に抑えることにより、溶接部に熱影響部が出現しないようにしたことを特徴とする溶接用超高純度フェライト系鉄合金。
  2. 請求項1に記載の超高純度フェライト系鉄合金を溶接した後、900〜1300℃の温度範囲で熱処理して、組織変化のない溶接部を得ることを特徴とする溶接方法。
  3. 請求項1に記載の超高純度フェライト系鉄合金を溶接した後、その溶接箇所を900〜1300℃の温度範囲で熱処理して、組織変化のない溶接継手を設けてなることを特徴とする溶接構造物。
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