JP3515770B2 - 耐熱鋼線及びばね - Google Patents
耐熱鋼線及びばねInfo
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Description
ねに関するものである。特に、高温での耐へたり性に優
れ、エンジン部品、原子力発電用部品、タービン部品等
の耐熱性が要求される部品、主にばね素材として最適な
高強度の耐熱鋼線に関する。
ね部品素材として、使用温度域〜450℃程度では、従
来、耐熱鋼として使用されてきたSUS304、SUS316、SUS6
31J1などのオーステナイト系ステンレスが用いられてい
る。また、500℃を越える温度域に使用される部品素材
としてNi基耐熱合金であるInconel 718、Inconel X75
0、Inconel 601などが用いられている。
規制への要求の高まりから、エンジンおよび触媒の高効
率化のために排気系温度が上昇する傾向にある。このた
め、使用温度域が最高400℃であったばね部品において
も500℃近くまで上昇し、従来のSUS304などのオーステ
ナイト系ステンレスでは、耐熱特性、特に耐熱ばねに必
要な高温耐へたり性が不十分となる場合がある。
てInconel X750などのNi基耐熱合金がある。しかし、N
i基超硬合金を用いると、材料コスト増加や、熱間加工
の歩留まり低下によるコスト増加、高温で長時間に及ぶ
時効熱処理などによる製造コスト増加から免れない。ま
た、Inconel X750に代表されるNi基耐熱合金は、その
使用温度域を600℃以上とする構造材用合金であり、600
℃未満の温度域に用いるには過剰仕様である。
熱Ni基超合金の中間の耐熱特性とコストを持つものとし
てA286(AISI660)などのγ’相析出強化型オーステナイ
ト系耐熱鋼の使用が有望である。
では、耐熱特性、特に700℃以上での高温引張強さや高
温耐クリープ性を向上させるために、成分中のTi/Al比
を5〜20とし、γ’相の析出を短時間で促進させてい
る。
では、η相[Ni3Ti:hcp構造]析出を積極的に利用す
ることで熱疲労性の向上を図っている。
術では、600℃程度での高温引張強さ及び高温耐へたり
性の両立を図るために、時効熱処理後の金属組織中のη
相[Ni 3Ti:hcp構造]/γ’相の比率を限定している。
術は、耐熱ばねに必要な高温耐へたり性とばね加工に必
要な引張強さとの両立を図ったものでなく、後者特開20
00-109955号公報に記載の技術は、450℃程度における高
温耐へたり性を言及するものでない。ここで、析出強化
型耐熱鋼の母相であるγ相(オーステナイト)の形態は、
鋼の耐熱特性に様々な影響を及ぼす。そのため、ばね加
工に必要な引張強さと高温耐へたり性との両立、特に高
温耐へたり性の向上を図るためには、γ相(オーステナ
イト)の形態を限定する必要がある。
高温域、特に450℃程度においてばね材に必要な高温耐
へたり性に優れる高強度の耐熱鋼線とそれを用いたばね
を提供することを目的とする。
であるオーステナイト系耐熱鋼の母相であるγ相(オー
ステナイト)の組織を制御することで、高温耐へたり性
に優れる高強度の耐熱鋼線であって、C:0.02〜0.30wt
%、Si:0.02〜3.5wt%、Mn:0.02〜2.5wt%、Ni:20〜30w
t%、Cr:12〜25wt%、Ti:1.0〜5.0wt%、Al:0.002〜1.0
wt%を含有し、かつNb:0.1〜2.0wt%、Ta:0.1〜2.0wt
%、Mo:0.1〜4.0wt%から選択された1種以上を含有し、
残部が主にFe及び不可避的不純物からなり、Ti、Al、N
b、及びTaの合計含有量が2.0〜7.0wt%である耐熱鋼線
であって、横断面のγ相(オーステナイト)結晶粒径が平
均8μm以上であり、引張強さが800〜1800MPaであること
を特徴とする。
織中の塑性変形の原因である転位が多く存在しないこと
が好ましい。そのため、できるだけ高い温度で長時間の
固溶化熱処理による転位の除去、線引き加工における減
面率の低下による転位導入量の低減という2つの方法が
有効である。更に、これら2つの方法を同時に行うこと
で、より高温耐へたり性を向上させることができる。
母相であるγ相(オーステナイト)の結晶粒径が変化する
こと、即ち、転位の低減に従いγ相(オーステナイト)結
晶粒径が大きくなる傾向を見出し、耐熱性の向上に必要
な大きさを規定した。具体的には、横断面において平均
8μm以上とする。なお、本発明において、横断面とは、
線引き加工方向に対して垂直な方向の断面を言う。ま
た、本発明で規定する規定する結晶粒径とは、ばね加工
や時効熱処理前の鋼線におけるものである。
を制御することで、鋼線の引張強さにも影響を及ぼすと
考えられる。そこで、本発明は、引張強さの下限をばね
加工などに最低限必要な800MPa以上、同上限をばね加工
などに必要な靭性を考慮して1800MPa以下に規定する。
なお、本発明に規定する引張強さとは、ばね加工や時効
熱処理前の鋼線における室温での引張強さである。
以上にするための具体的な条件を以下に示す。固溶化熱
処理温度は、1000〜1300℃、特に1100〜1250℃、保持時
間(線直径の単位長さあたりの熱処理保持時間:熱処理
保持時間(分)/線径(mm))は、0.5〜3分/mm、特に、0.5〜
1.5分/mmが好ましい。線引き加工において減面率は、20
〜50%、特に、35〜45%が好ましい。
金属組織中、特に粒界や結晶粒内のすべり帯上に析出す
るη相[Ni3Ti:hcp構造]が極力少ない方が好まし
い。そこで、本発明は、上記析出物が、鋼線の横断面に
おける金属組織全体に占める面積比率を0.01%以上5.00
%未満とする。
に析出するγ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の球状粒子
は、出来るだけ微細であることが好ましい。そのため、
γ相(オーステナイト)結晶粒内に析出するγ’相[Ni3
(Al,Ti,Nb,Ta)]の球状粒子の直径は1nm以上15nm未満
であることが望ましい。直径を1nm以上とするのは、微
細分散した析出物による析出強化の効果を得るためであ
り、15nm未満とするのは、析出物の粗大化による析出強
化の効果を低下させないためである。
であるη相[Ni3Ti:hcp構造]の析出量やγ’相[Ni
3(Al,Ti,Nb,Ta)]の析出形態を規定することで、引張
強さに加え、より優れた高温耐へたり性を有する耐熱鋼
線を提供する。なお、η相[Ni3Ti:hcp構造]の析出
量やγ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の球状粒子の直径
は、それぞれ時効熱温度や時効時間によって変化させる
ことができる。本発明において時効温度は、600〜850
℃、時効時間は0.5〜48時間が好ましい。特に、η相[N
i3Ti:hcp構造]の析出量を0.01%以上5.00%未満にす
るには、時効温度を650〜720℃にすることが好ましい。
特に、γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の球状粒子の直径
を1nm以上15nm未満にするには、時効時間を4〜8時間と
することが好ましい。
η相[Ni3Ti:hcp構造]の析出量や析出相であるγ’
相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の形態の制御は、鋼線におけ
る横断面形状が矩形、正方形、長方形、楕円、たまご型
などの異形断面においても可能である。
えば、ばね特性として耐疲労性などを具えた上で、耐熱
性を発揮するために鋼線の表面粗さをRzで1〜20μmとす
る。鋼線の表面粗さをRzで1μm以上とするのは、通常、
平滑加工には非常にコストがかかるものであり、コスト
をより低減するためである。一方、高温において付加さ
れる応力の増減が比較的短時間で繰り返される自動車排
気系などに用いられるばねは、ばねの表面疵などに応力
集中が発生し、その結果、局所的にへたりが生じる恐れ
がある。そこで、本発明において表面粗さを20μm以下
とするのは、鋼線の表面粗さを低減することで、ばね加
工後の応力集中を低減するためである。表面粗さをRzで
20μm以下とするには、ダイスの構成や線速などの線引
き加工の条件や、熱処理の際における鋼線の取り扱いな
どの従来行われている工程管理により実現する。更に、
電解研磨などを行うことで、できるだけ低減させること
が好ましい。
記のように固溶化熱処理及び線引き加工することで得ら
れる。更に、時効熱処理を施すことにより得られる。ま
た、本発明耐熱鋼線は、耐熱性が要求されるばねなどに
用いることが好適である。
選定及び成分範囲を限定する理由を述べる。
することで高温強度を高める。しかし、多量に含有する
と靭性及び耐食性が低下する。そこで、有効な含有量と
してC:0.02〜0.30wt%とした。
果がある。また、溶解精錬時の脱酸剤としても有効であ
り、これらの効果を現すためには0.02wt%以上含有する
ことが好ましい。但し、靭性劣化を考慮して3.5wt%以
下とした。
用される。また、オーステナイト系ステンレスのγ相
(オーステナイト)の相安定にも有効である。但し、高温
での耐酸化性には悪影響を及ほすため、Mn:0.02〜2.5w
t%とした。
効である。また、Niは、本発明の耐熱特性向上の一因と
なるγ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)](析出相)の構成元素
である。そこで、γ相(オーステナイト)の安定を考慮し
て20wt%以上とし、コスト上昇抑制のため30wt%以下と
した。
な構成元素であり、耐熱特性、耐酸化性を得るために有
効な元素である。そこで、本発明における他の元素成分
からNi当量、Cr当量を算出し、γ相(オーステナイト)の
相安定性を考慮した上で、必要な耐熱特性を得るために
12wt%以上とし、靭性劣化を考慮して25wt%以下とし
た。
を目的とし、γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の析出強化
を行う。以下に、その構成元素の成分範囲を限定する理
由を述べる。
成するAlと置換し得る主要な構成元素である。Tiは、多
量に添加するとη相[Ni3Ti:hcp構造]を粒界に過剰
に析出し、耐熱特性を得るために必要なγ’相[Ni3(A
l,Ti,Nb,Ta)]の析出を熱処理によって制御することが
不可能となる。そこで、γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]
の有効な析出量を得るためにTi:1.0〜5.0wt%とする。
a)]の主要な構成元素であるが、酸化物を形成しやすく
溶解精錬時の脱酸剤としても使用される。但し、過度の
添加は熱間加工性の劣化を生じやすいため、1.0wt%以
下とする。
a)]を構成するAlと置換し得る主要な構成元素である
が、過剰に添加するとFe2Nb(ラーバス)相を析出する。
このとき強度劣化が見込まれるため0.1〜2.0wt%とし
た。
Ta)]を構成するAlと置換し得る主要な構成元素であ
る。Taの過剰の添加は、γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]
の相の安定を劣化させるため、0.1〜2.0wt%とした。
すると、γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の析出量も増加
し、母相であるγ相(オーステナイト)の不安定化を生じ
る。そこで、高温特性向上に有効な合計含有量として2.
0wt%以上、γ相(オーステナイト)の相の安定性を考慮
し7.0wt%以下とした。
高温引張強さ、高温耐へたり性の向上に大きく寄与す
る。そこで、耐へたり性向上に最低限必要な0.1wt%以
上とし、加工性の劣化を考慮して4.0wt%以下とした。
する。鋼材を真空溶解炉で溶解鋳造し、鍛造後熱間圧延
を施し圧延材を作製した。その後、固溶化熱処理と線引
き加工を繰り返し、最終的に線引き加工の減面率が40%
である線径3mmの試験片を作製した。このとき、各試験
片の室温における引張強さは、約1000〜1100MPaであっ
た。次に、圧縮コイルばね形状に加工後、時効熱処理又
は低温焼鈍を行った。以下、表1に試験片の化学成分、
γ相(オーステナイト)結晶粒径、η相[Ni3Ti:hcp構
造]の金属組織全体に占める面積比率、及びγ’相[Ni
3(Al,Ti,Nb,Ta)]の粒子直径を示す。γ相(オーステナ
イト)結晶粒径及びη相[Ni3Ti:hcp構造]の面積比率
は、王水腐蝕を施した鋼線の横断面SEM(Scanning Elec
tron Microscope)写真から得られたものである。γ’
相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の粒子直径は、TEM(Transmiss
ion Electron Microscope)画像で確認した。
ンレス鋼であるSUS304-WPBである。
す熱処理条件により作製した。 1.発明材1〜10及び比較例1〜4は、γ相(オーステナイ
ト)結晶粒径を変化させるため、固溶化熱処理条件とし
て温度:約1100℃、保持時間:1分/mmを基準として、結
晶粒径の大きなものは、設定温度及び保持時間を上記基
準よりも大きくした。結晶粒径の小さいものは、設定温
度及び保持時間を基準条件よりも小さくした。 2.η相[Ni3Ti:hcp構造]の析出状態を変化させるた
めに、時効温度を600〜800℃のうち、各試験片に適切な
ものを選択した。 3.γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の結晶粒子の径を変化
させるために、時効時間を1〜50時間のうち、各試験片
に最適なものを設定した。比較材5については、時効熱
処理を行ってないが400℃×20分の低温焼鈍を行った。
などや熱処理の際における鋼線の取り扱いなどの従来行
われている工程管理により、線引き方向の表面粗さがRz
で20μm以下となるように設定した。コイルばね形状に
加工し、時効熱処理又は低温焼鈍後に調べた結果、いず
れの試験片も表面粗さがRzで20μm以下であった。
温耐へたり性を評価した。いずれの試験片も、圧縮コイ
ルばね形状に加工し、時効熱処理又は低温焼鈍後に試験
を行った。試験に用いたコイルばねを以下に示す。
をコイルばね1とした後、室温で圧縮荷重を付加し(負荷
せん断応力600MPa)、ひずみ一定の状態で試験温度450℃
において24hrs.保持する。その後、室温で荷重を解放し
て、ばねのへたり量の測定から残留せん断ひずみを求め
た。その結果を表2に示す。
より求められる。 残留せん断ひずみ(%)=8/π×(P1-P2)×D/(G×d3)×10
0 但し、 d(mm):線径 D(mm):平均コイル径(図1参照) P1(N):応力600MPaに相当する荷重 P2(N):450℃の試験後に変位a(mm)まで押さえたときの
荷重 変位a(mm):450℃の試験前にP1をかけたときのコイルば
ねの変位(図1参照) G :横弾性係数 P1及びP2は、室温で測定されるものとする。表2に示す
残留せん断ひずみ(%)は、試験後におけるものであり、
この残留せん断ひずみの値が小さいほど、より高い高温
耐へたり性を有する。
a、Moのいずれも含まない比較材1、Ti、Al、NbおよびTa
の合計含有量が2.0〜7.0wt%を満たさない比較材2、γ
相(オーステナイト)結晶粒径が平均8μm未満である比較
材3及び4よりも残留せん断ひずみが小さいことが分か
る。また、いずれの発明材も、一般的な耐熱ステンレス
鋼である比較材5と比べて残留せん断ひずみが小さいこ
とが分かる。即ち、発明材は、高温耐へたり性が高く、
非常に優れた耐熱特性を有することが確認できる。
粒径に着目すると、例えば、比較材3(6.4μm)、発明材1
(8.2μm)、発明材2(8.4μm)、発明材7(10.8μm)は、順
に結晶粒径は大きくなっている。このとき、粒径の増加
に従ってこれらの試験片は、残留せん断ひずみが小さく
なっており、高温耐へたり性が向上していることが分か
る。また、これらの結果から、γ相(オーステナイト)結
晶粒径は平均8μm以上が好ましいことが確認できた。
率に着目すると、例えば、発明材1(6.3%)、発明材2(5.
8%)、発明材3(3.7%)、発明材4(3.4%)、発明材8(1.0
%)は、順に面積比率が小さくなっている。このとき、
面積比率の減少に従ってこれらの試験片は、残留せん断
ひずみが小さくなっており、高温耐へたり性が向上して
いることが分かる。このことから、η相[Ni3Ti:hcp
構造]の面積比率は、より小さい方が好ましいことが分
かる。また、発明材2(5.8%)及び発明材10(5.2%)と発
明材3(3.7%)及び発明材6(3.8%)とを比較すると、発明
材3及び発明材6の方がより残留せん断ひずみが小さい。
このことから、η相[Ni3Ti:hcp構造]の面積比率
は、5.00%未満の方がより高温耐へたり性に優れること
が確認された。また、より詳しく調べると、η相[Ni3
Ti:hcp構造]の面積比率は、0.01%以上が好ましいこ
とが確認できた。
に着目すると、例えば、発明材3(24μm)、発明材4(23μ
m)、発明材5(11μm)、発明材6(9μm)、発明材9(5μm)
は、順に粒子直径が小さくなっている。このとき、粒子
直径の減少に従って、これらの試験片は、残留せん断ひ
ずみが小さくなっており、高温耐へたり性が向上してい
ることが分かる。このことから、γ’相[Ni3(Al,Ti,N
b,Ta)]の粒子直径は、より小さい方が好ましいことが
分かる。また、発明材3及び発明材4と発明材5とを比較
すると、発明材5の方がより高温耐へたり性に優れてい
る。これより詳しく調べると、γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,
Ta)]の粒子直径は、1nm以上15nm未満が好ましいこと
が確認できた。
γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の粒子直径が9nmである
が、η相[Ni3Ti:hcp構造]の面積比率が5.00%未満
である発明材6の方が残留せん断ひずみが小さく、より
高温耐へたり性に優れることが分かる。一方、発明材9
と比較材4とを比較すると、γ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,T
a)]の粒子直径がそれぞれ5nm、6nmと15nm未満であり、
η相[Ni3Ti:hcp構造]の面積比率がそれぞれ3.4%、
2.1%と5.00%未満である。しかし、γ相(オーステナイ
ト)結晶粒径が平均8μm未満である比較材4の方が、残留
せん断ひずみが大きく、発明材6よりも高温耐へたり性
が劣ることが確認された。このことから、γ’相[Ni3
(Al,Ti,Nb,Ta)]の粒子直径が15nm未満であり、η相[N
i3Ti:hcp構造]の面積比率が5.00%未満であっても、
γ相(オーステナイト)結晶粒径が平均8μm未満では、要
求される耐熱性を有さない恐れがあることが分かる。
μm以下であることで、表面疵に応力集中が起こること
がなく、局所的なへたり(塑性変形)が生じることがなか
った。これに対し、比較材1の表面を紙やすり(#120)で
荒らして表面粗さをRzで20μmを超えるようにした試験
片について、同様の試験を行うと、表面疵に応力集中が
起こり、局所的なへたり(塑性変形)が確認できた。
化学成分のものについて、固溶化熱処理条件、及び線引
き加工の減面率を変化させて、引張強さの異なる試験片
を作製した。一つは、固溶化熱処理温度を低めにし、減
面率を約40%よりも小さくして、引張強さ900MPa程度の
試験片を得た。また別の試験片は、固溶化熱処理温度を
高めにし、減面率を約40%よりも大きくして、1500MPa
程度の試験片を得た。引張強さは、共に室温での大きさ
である。これらの試験片を圧縮コイルばね形状に加工
し、時効熱処理を施して、試験例1と同様の試験を行
い、残留せん断ひずみを求めた。すると、引張強さが低
い試料ほど、より優れた高温耐へたり性を示した。この
ことから、ばね加工に必要な引張強さ800〜1800MPaの範
囲では、同様の化学成分を有する試料を比較すると、引
張強さが低い試料の方がより優れた耐熱性を示すことが
分かった。
化学成分で同様の製造条件により製造した矩形や長方形
などの異形断面を有する試験片について、時効熱処理を
施して、試験例1と同様の試験を行い、残留せん断ひず
みを求めた。その結果、試験例1と同様に発明材の方が
比較材よりも高温耐へたり性に優れていることが確認で
きた。
は、Fe基であるオーステナイト系耐熱鋼の母相であるγ
相(オーステナイト)の組織を制御することで、450℃以
上600℃以下の高温域、特に450℃程度において引張強さ
及び高温耐へたり性を両立することができる。特に、粒
界や結晶粒内のすべり帯上に析出するη相[Ni3Ti:hc
p構造]の析出量やγ相(オーステナイト)結晶粒内に析
出するγ‘相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の析出形態を規定
することで、より高温耐へたり性に優れる。
系に用いられるフレキシブルジョイント部品であるボー
ルジョイント、ブレード、三元触媒に用いられるニット
メッシュなど、耐熱ばね材に用いることが最適である。
また、Fe基合金とすることでNi基耐熱超合金の使用によ
るコスト上昇を小さくすることが可能であり、工業的価
値が高い。
である。
Claims (6)
- 【請求項1】 C:0.02〜0.30wt%、Si:0.02〜3.5wt%、
Mn:0.02〜2.5wt%、Ni:20〜30wt%、Cr:12〜25wt%、T
i:1.0〜5.0wt%、Al:0.002〜1.0wt%を含有し、かつNb:
0.1〜2.0wt%、Ta:0.1〜2.0wt%、Mo:0.1〜4.0wt%から
選択された1種以上を含有し、残部が主にFe及び不可避
的不純物からなり、Ti、Al、Nb、及びTaの合計含有量が
2.0〜7.0wt%である耐熱鋼線であって、横断面のγ相
(オーステナイト)結晶粒径が平均8μm以上であり、引張
強さが800〜1800MPaであることを特徴とする耐熱鋼線。 - 【請求項2】 鋼線の横断面において、金属組織中に析
出するη相[Ni3Ti:hcp構造]の金属組織全体に占め
る面積比率が0.01%以上5.00%未満であることを特徴と
する請求項1記載の耐熱鋼線。 - 【請求項3】 母相であるγ相(オーステナイト)結晶粒
内に析出するγ’相[Ni3(Al,Ti,Nb,Ta)]の球状粒子
の直径が1nm以上15nm未満であることを特徴とする請求
項1又は2記載の耐熱鋼線。 - 【請求項4】 鋼線の横断面が矩形、正方形、長方形、
楕円、たまご型のいずれかであることを特徴とする請求
項1〜3のいずれかに記載の耐熱鋼線。 - 【請求項5】 鋼線の表面粗さがRzで1〜20μmであるこ
とを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の耐熱鋼
線。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の耐熱鋼線
を用いたことを特徴とするばね。
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