JP4360923B2 - マイクロミラー装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光をスキャンするための静電容量型のマイクロミラー装置に関する。
従来、静電容量型マイクロミラー装置(以下、単にマイクロミラー装置という)は、通信用の光スイッチ、計測機器、スキャナ等多様な技術分野で利用されている。静電容量型マイクロミラー装置は、入射光をスキャンするミラー面の下方に位置する基板上に複数の電極が配設されている。そして、任意の電極に電圧を印加することにより、静電引力を発生させて、ミラー面を傾けるように構成される。従来の典型的なマイクロミラー装置は、例えば以下の特許文献1に開示される。
特開2003−29172号公報
近年、マイクロミラー装置は、より小型化しつつも広い走査範囲を確保できることが要望されている。広い走査範囲を実現するためには、例えば、ミラー下部に配設される電極の面積を大きくしたり、該電極に印加する電圧を大きくしたりすることにより、ミラーを傾けるための静電引力を高める手法が考えられる。
しかし、装置全体の小型化を実現するためには、電極の面積を広くするにも限界がある。また、ミラー面自体に与える負荷やマイクロミラー装置の周辺に配設される他の素子への影響が大きくなることから、印加電圧を大きくするにも限界がある。従って、いずれの手法も実効性に乏しい。
そこで、特許文献2に開示するようなマイクロミラー装置が提案されている。特許文献2に開示するマイクロミラー装置は、ミラーと電極間に設けられるスペースを小さく設計して静電引力を高めることにより、装置全体を小型化しつつも広い走査範囲を得ようとする。
特開2003−57575号公報
しかし、特許文献2のように、ミラーと電極間に設けられるスペースを小さく設計した場合、傾いたミラー面と電極とが密着し制御不能となる、いわゆるプルイン現象がおきるおそれがある。そのため、制御可能な傾き角は必然的に小さくなり、走査範囲も小さくなってしまう。
ここで、一般に全ての電極には予め所定のバイアス電圧が印加されている。つまり、マイクロミラー装置では、実際に光をスキャンするために該装置を駆動する前から既にミラーと電極間に静電引力が発生している。従って、ミラーと電極間に設けられるスペースを小さくすると、バイアス電圧に対応する微弱な静電引力であっても、ミラー面を電極側に引きつけるおそれがある。ミラー面全体が電極側に引きつけられる、換言するとミラー面が電極側に平行移動すると、ミラー面に入射する光の入射位置がずれる状態が生じる。該状態では、該光が所定の走査位置から外れた位置を走査してしまうという問題がある。
該問題に対し、特許文献2では、電極が配設される基板にミラーの中心を支持するピボット(支点突起)を設けている。これにより、ミラー面が電極側に平行移動することを回避している。さらに、特許文献2では、上述したプルイン現象を回避すべく、特殊な階段形状を持つ基板を使用している。しかし、小型なマイクロミラー装置を構成する基板に上記のような階段形状や該ピボットを形成する工程は極めて高い精度とコストアップが要求されるだけでなく、該ピボットがミラー中心に位置するように高精度での位置決めも必須となる。
以上の事情に鑑み、本発明は、小型でありながらも広い走査範囲を有する、簡易かつ安価に製造可能なマイクロミラー装置を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明に係るマイクロミラー装置は、中心を通る第一の軸に沿って回動自在に支持されるミラー面を有するミラー層と、ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ第一の軸と平行である第一上部境界を挟んで配設される第一上部電極部と第二下部電極部を有し、第一のスペースを確保しつつミラー層における一方の側と積層される透過性ある上部基板と、ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ第一の軸と平行である第一下部境界を挟んで配設される第一下部電極部と第二下部電極部を有し、第二のスペースを確保しつつミラー層における他方の側と積層される下部基板と、を有し、上部基板のミラー層と対向しない面には、入射する光をミラー面へ入射させるための反射部が形成され、第一の軸を基準にして対角に位置する一対の電極に電圧を印加することにより、ミラー面を第一の軸に沿って回動させることを特徴とする。
上記のように本発明に係るマイクロミラー装置は、ミラー面に対して上下の位置に電極を配設する。従って、ミラー面の回動に用いる電極の数が倍になる、換言すれば回動に用いる電極の実質的な面積が倍になる。これにより、大きな傾き角が得られる。なお、本発明に係るマイクロミラー装置は、ミラー層と各基板間に十分スペースを設けることにより、大きな傾き角を確保するとともに、プルイン現象も回避している。また、電極の実質的な面積が大きく構成されるため、一つの電極あたりの印加電圧を小さく抑えても、十分に広い走査範囲が得られる。
また、従来の装置におけるミラー面は、一方の側に設けられた電極との間に発生する静電引力によってのみ回動する。つまり、従来の装置では、一方の側に生じた直線的な牽引力によってのみミラーを回動させていたため、特にミラー層の構造に負荷をかけることになる。これに対し、本発明によれば、第一の軸を基準にして対角に位置する電極に電圧を印加することにより、ミラー面を第一の軸に沿って回動させる。つまり、上下の二方向からミラー面を牽引することにより、効率よく略純粋に近い曲げモーメントを取得することができる。従って、ミラー層の構造に負荷を与えることがなくなり、長寿命化が達成される。
さらに、上記構成を採ることにより、上下の電極にバイアス電圧を印加することになる。従って、特許文献2のようにピボットのような支持部を配設しなくてもミラー面の位置ずれを有効に防止することができる。
以上のように、本発明に係るマイクロミラー装置は、従来の装置と比べると、上部基板の分だけ厚みが増すものの、小型で簡易な構成を維持しつつも広い走査範囲を有する。
ここで第一の軸を基準にして対角に位置する一対の電極は、ミラー層の中心に対して対称な関係にあることが望ましい(請求項2)。これにより、各電極に印加する電圧の制御が容易になる。
また、本発明に係るマイクロミラー装置は、2軸以上のミラー回動にも対応することができる。すなわち、請求項3に記載のマイクロミラー装置によれば、上記ミラー面は、さらに、第一の軸と中心で交わる少なくとも第二の軸に沿って回動自在に支持され、上部基板は、ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ第二の軸と平行である第二上部境界を挟んで配設される第三上部電極部と第四上部電極部を有し、下部基板は、ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ第二の軸と平行である第二下部境界を挟んで配設される第三下部電極部と第四下部電極部を有し、第二の軸を基準にして対角に位置する一対の電極に電圧を印加することにより、前記ミラー面を第二の軸に沿って回動させることができる。
ここで、第二の軸を基準にして対角に位置する一対の電極も、第一の軸を基準にして対角に位置する一対の電極の関係と同様、ミラー層の中心に対して対称な関係にあることが望ましい(請求項4)。
さらに、ミラー面を2軸で回動する、つまりミラー面に入射する光を二次元で走査する場合、第一の軸と第二の軸を互いに直交するように構成することにより、回動制御が容易になる(請求項5)。
また、ミラー面を2軸で回動する場合、ミラー層は、ミラー面の周囲に配設されるフレームと、フレームの周囲に配設される外枠と、第一の軸に沿って配設され、ミラー面とフレームを結合する第一のヒンジ部と、第二の軸に沿って配設され、フレームと外枠を結合する第二のヒンジ部と、を有する構成にすることが望ましい(請求項6)。
なお、第一スペースと第二スペースは、略同一高さを有することが望ましい(請求項7)。特に、各基板に配設される電極がすべてミラー層に対して対称な関係にある場合、各スペースの高さを同一にすることにより、回動時において、回動軸を基準として対角に位置する電極に印加する電圧を略等しくすることができ、電圧制御が容易になる。
上記の各スペースを確保するためのスペーサを各基板とミラー層の間に配設する場合、いずれか一方のスペーサを、ミラー層に一体形成することができる。これにより、ミラー層をエッチング等の工法により製造する際に、該スペーサも同時に形成することができる。そのため、マイクロミラー装置全体としての製造工程を簡略化することができる。
また、上記の通り、電極を広くすることによりミラー面を大きく傾けることができる。但し、上部基板において電極が占める面積を広く採りすぎると、入射光が該電極により遮られてしまう。そこで、請求項10に記載の発明によれば、上部基板に配設される各電極は、透明電極であることが望ましい。また、別の観点から、請求項11に記載の発明によれば、上部基板に配設される各電極は、ミラー面に入射する光および該ミラー面で偏向した光の光路を妨げない位置に配設されることが望ましい。例えば、上部基板の中央部に光が入射するようなドーナッツ形状を形成するように各電極を配設することができる。
なお、マイクロミラー装置を構成する各基板に互換性をもたせれば、製造工程のより一層の簡略化を図ることができる。そのため、下部基板に配設される各電極も、上記請求項10または請求項11に記載される、上部基板に配設される各電極と略同一構成を採ることが好ましい。
上述した、本発明に係るマイクロミラー装置は、例えば、体腔内の生体組織に光源から照射される光束を走査することにより該生体組織の観察像を得る走査型共焦点プローブに好適である。本発明の走査型共焦点プローブは、光源からの光束を導くとともに、生体組織で反射した反射光を受光部に導くシングルモード光ファイバと、シングルモード光ファイバから射出された光束を平行光に変換するとともに、該反射光をシングルモード光ファイバへ入射するレンズ部と、レンズ部から射出された光を生体組織へ導き、該生体組織からの反射光を上記レンズ部へ導く、上述したマイクロミラー装置とを有ることを特徴とする。
走査型共焦点プローブのように体腔内に挿入される構造では、各電極に印加する電圧はなるべく低く設定することが望まれる。この点、本発明に係るマイクロミラー装置によれば、上述したように、一つあたりの電極に印加される電圧を低く抑えつつも大きな走査範囲を確保することができる。以上より、本発明に係る走査型共焦点プローブは、安全でありながらも、広い範囲を観察することが可能になる。
また、本発明に係るマイクロミラー装置を構成する上部基板を上記実装基板として活用することも可能である。具体的には、上部基板をミラー層や下部基板よりも大きく(長く)構成し、ミラー層と接合される面と反対側の面に偏向手段を配設すればよい。これにより、走査型共焦点プローブを構成する、マイクロミラー装置、偏向手段、シングルモード光ファイバの相対的位置決めが容易に行われる。
以上のように、本発明によれば、ミラー面の上下の双方に電極を配設したことにより、小型を維持しつつも、大きな傾き角、換言すれば広い走査範囲を有するマイクロミラー装置が提供される。しかも、該マイクロミラー装置は、ミラー層の位置ずれ等を防止するため等の特殊な構造が不要であるため、簡易かつ安価に製造することができる。
さらに、本発明に係るマイクロミラー装置は、一方の基板を走査型共焦点プローブにおける実装基板として活用することができる。そのため、プローブ内において他の部材との相対的な位置決めを容易に行うことができる。
以下、本発明の実施形態のマイクロミラー装置について説明する。図1は、実施形態のマイクロミラー装置10の概略構成を示す図である。図1に示すように、マイクロミラー装置10は、略直方体形状になっている。また、図2は、マイクロミラー装置10を構成部材毎に分解して示す図である。
図1、図2に示すように、マイクロミラー装置10は、ミラー層1を挟んで上部基板2と下部基板3が積層されて構成される。なお、上部基板2はスペーサ4を介してミラー層と積層される。従って、マイクロミラー装置10は、光が入射する側から順に、上部基板2、スペーサ4、ミラー層1、下部基板3が互いに積層されている。なお本文では、説明の便宜上、光が入射する側からみて順に上部、下部と定義する。
図2に示すように、ミラー層1は、中央部に位置する円形状のミラー面11、ミラー面11の外周を囲んで設けられるリング状のフレーム12、フレーム12の外周に設けられる外枠13を有する。フレーム12には、ミラー面11を挟んで、第一の方向(x方向)に沿って配設される一対のヒンジ部(以下、第一ヒンジ部という)12Xを有する。第一ヒンジ部12Xは、その一端がミラー面11と結合され、他端がフレーム12に結合されている。すなわち、第一ヒンジ部12Xは、x方向に沿うX軸周りにミラー面11を回動自在に保持する。さらにフレーム12には、ミラー面11を挟んで、x方向に直交する第二の方向(y方向)に沿って配設される一対のヒンジ部(以下、第二ヒンジ部という)12Yを有する。第二ヒンジ部12Yは、その一端がフレーム12と結合され、他端が外枠13と結合されている。すなわち、第二ヒンジ部12Yは、y方向に沿うY軸周りにミラー面11およびフレーム12を回動自在に保持する。なお、図2中、X軸とY軸は破線で示し、両軸の交点、つまりミラー層の中心をC1として表す。
なお、各ヒンジ部12X、12Yは、どのような構造であってもよい。例えば、本実施形態では、図示するように各ヒンジ部を構成する線状材が各軸に対して直交する方向に折り重ねられる、いわゆるつづら折り形状を想定する。
図3は、図2に示すミラー層1のX軸に沿った断面形状を模式的に示す図である。図3に示すように、外枠13の周縁部近傍において、下部基板3に対向する面は、ミラー面がある中央部に比べて所定高さ分だけ突出する凸部14が設けられている。凸部14は、ミラー層1と下部基板3との間に所定のスペース(以下、下部スペースという)を確保するために設けられている。
上記構成のミラー層1は、RIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングや各種ウェットエッチング等を用いてSOI(Silicon On Insulator)ウエハを加工することにより製造される。具体的には、SOIウエハは、アクティブ又はデバイスレイヤ(Si)、ボックスレイヤ(SiO2)及びハンドルレイヤ(Si)の3層構造で構成されたものであり、RIE法を用いて図3のように加工されたアクティブレイヤの表面に、Alや金等の金属膜や誘電体多層膜を蒸着することにより、高反射率のミラー面11を有するミラー層1が得られる。
次に図4を参照しつつ、上部基板2の説明をする。図4(A)は、図2に示す上部基板2のA−A線(つまり対角線)での断面図である。図4()は、上部基板2を光が入射する側からみた図、図4()は、上部基板2をミラー層側から見た図である。
上部基板2は、外部から導かれた光がミラー面11に入射するような、透過性あるガラス基板2aを加工している。そして、図4(A)、(B)に示すように、上部基板2において、ミラー層に対向する平面2bには、第一〜第四までの駆動電極T1〜T4が設けられている。各駆動電極T1〜T4は、ミラー面への光の入射を妨げないように、ITO膜のような透明電極として形成されている。各駆動電極T1〜T4はどれも同一サイズの扇形形状として形成されている。より具体的には、第一駆動電極T1と第二駆動電極T2は、上部基板2の中心C2を通りy方向に延出する境界(第一の境界:ミラー層におけるy軸に相当)に対して対称な配置関係にある。第三駆動電極T3と第四駆動電極T4は、該中心C2を通りx方向に延出する境界(第二の境界:ミラー層におけるX軸に相当)に対して対称な配置関係にある。
図4(A)、(C)に示すように、上部基板2において、ミラー層に対向する面と反対側にある面2cには、マイクロミラー装置10外部から送られた電圧を各駆動電極T1〜T4に印加するための配線電極板t1〜t4が設けられる。
また、ガラス基板2aは、各配線電極板t1〜t4と各駆動電極部T1〜T4を導通させるための導電部2dを有する。導電部2dは、サンドブラスト工法等によりガラス基板2aに貫通孔を設け、該貫通孔に導電性材料を充填することにより形成される。なお、サンドブラスト工法を用いて導電部2d(貫通孔)を形成するというのは、あくまで一例である。つまり該サンドブラスト工法以外の工法を採用して導電部2d(貫通孔)を形成することも可能である。以上の構成により、マイクロミラー装置10外部から送られた電圧は、導電部2dを介して、各駆動電極T1〜T4に印加される。
本実施形態の下部基板3は、上述した上部基板2と同一のものを使用する。ここで、上部基板2と下部基板3を共通化させることにより、コスト削減および組み立て作業の効率化が達成される。また、これにより、ミラー層1を挟んで対峙する各電極のうち、X軸またはY軸を基準とした対角に位置する電極はどれも、ミラー層1の中心C1に対して互いに対称な関係にある。従って、どの電極に所定の電圧を印加しても、略同一の静電力を発生させることができる。
スペーサ4は、上部基板2とミラー層1の間に所定のスペース(以下、上部スペースという)を確保するために設けられている。詳しくは、スペーサ4は、シリコン製であり、ミラー層1における凸部14と略同一の高さに設計される。つまり、本実施形態のマイクロミラー装置10において、スペーサ4により確保される上部スペースと、凸部14により確保される下部スペースは略同一高さを有する。従って、各電極に電圧を印加することによりミラー面に与えられる静電引力は、どれも略等しい。よって、バイアス電圧を印加していても、ミラー面11が位置ずれを起こすことは無い。
各部材1〜4を積層するにあたっては、様々な周知の接合方法が例示される。本実施形態では、陽極接合を用いて各部材を接合している。但し、スペーサ4とミラー層1は、互いにシリコン製であるため、直接陽極接合はできない。そこで、本実施形態では、スペーサ4とミラー層1間に薄いガラス層を敷き、該ガラス層を介して両者を陽極接合する。なお、該ガラス層は、各部材1〜4に比べて遙かに薄い。そのため、該ガラス層によって生じる上部スペースの高さ誤差は実使用上何ら影響を与えない。
なお、マイクロミラー装置10の製造の最終工程において、各部材1〜4を真空パッケージングする場合には、パイレックス(登録商標)ガラス製のスペーサ4を用いることが好ましい。また、陽極接合ができない箇所はポリイミド系接着剤(例えば、フォトニース(登録商標))を使用して接合することもできる。
以上のように構成されたマイクロミラー装置10の駆動原理について図5を参照しつつ説明する。なお、図5に示すミラー層1は、図3に示す形状と一致する。つまり図5は、マイクロミラー装置10における、X軸および図2に示すA−A線を含む面での断面形状を表す図である。図5(A)は、駆動電極に電圧を印加する前のマイクロミラー装置10の状態を、図5(B)は、駆動電極に電圧を印加した時のマイクロミラー装置10の状態を、それぞれ示す。なお、図5(A)、(B)において、上部基板2に設けられた各駆動電極と下部基板3に設けられた各駆動電極を区別するため、便宜上、前者を上部駆動電極T1u〜T4u、後者を下部駆動電極T1d〜T4dと記す。
ミラー面11をY軸周りに回動する場合、図5(A)に示すように、下部駆動電極T1dおよび上部駆動電極T2uに所定の電圧(+V)を印加する。電圧を印加すると、ミラー面11と各電極T1d、T2u間に静電引力が発生して、図5(A)中塗りつぶし矢印で示すように、互いに引きつけ合う。その結果、一対の第二ヒンジ部12Y(図2参照)を軸にして、ミラー面11およびフレーム12が回動する(図5(B))。なお、Y軸周りにおいて上記(図5(B))とは逆方向にミラー面を回動させる場合には、下部駆動電極T2dおよび上部駆動電極T1uに所定の電圧を印加すればよい。
以上のように、本実施形態のマイクロミラー装置10は、Y軸を基準にして対角に位置する一対の電極T1d、T2u、あるいは一対の電極T2d、T1uに、同時にかつ同量の電圧を印加することにより、ミラー面11(およびフレーム12)をY軸周りに回動させる。これにより発生した静電力は、図5(B)中塗りつぶし矢印で示すように、ミラー面に対して略純粋な曲げモーメントとして付与される。従って、従来の構成に比べて、ミラー回動にあたり、第二ヒンジ部12Yやミラー面11に与える負荷を低減することができる。
また、上部基板2と下部基板3の双方に電極を配設することにより、ミラー回動時に使用される電極の面積を大きく取ることができる。加えて、ミラー層1の凸部14とスペーサ4によって十分なスペース(上部スペース、下部スペース)が確保されている。従って、本実施形態のマイクロミラー装置10によれば、電極一つあたりに印加する電圧を小さく抑えても大きな傾き角が保証される。
以上が、本実施形態のマイクロミラー装置10の駆動原理の説明である。なお、上記では、ミラー面11をY軸周りに回動させる時の説明のみしたが、X軸周りにミラー面11を回動させる場合も同様の原理によって実行される。但し、主として以下の点がY軸周りに回動させる時とは異なる。すなわち、X軸周りに回動させる場合、電圧は、X軸を基準にして対角に位置する一対の上部駆動電極T3uと下部駆動電極T4d、あるいは上部駆動電極T4uと下部駆動電極T3dに印加される。また、第一ヒンジ部12Xが支軸となるため、フレーム12は回動しない。
以上説明した、マイクロミラー装置10は、例えば走査型共焦点プローブにおけるレーザ光の走査手段として好適である。図6は、マイクロミラー装置10を搭載する走査型共焦点プローブ100の概略構成を示す図である。
図6に示すように、走査型共焦点プローブ100は、光ファイバ20と、GRINレンズ30と、偏向部40と、対物レンズ50を有する。
光ファイバ20は、単一のモードを伝送するシングルモードファイバである。光ファイバ20は、図示しない光源から照射された光束をGRINレンズ30に導く。GRINレンズ30は、光ファイバ20から射出された光束を平行光束に変換するコリメートレンズとして機能する。GRINレンズ30から射出された平行光束は、偏向部40に入射する。
偏向部40は、上述したマイクロミラー装置10、および入射した光束をマイクロミラー装置へ偏向するミラー部5を有する。
従来、マイクロミラー装置やミラー部は、別個独立に製造されていた。そして両者は、透過性ある実装基板を介して相互に位置決めを行いつつ走査型共焦点プローブに実装されていた。そのため、マイクロミラー装置とミラー部相互の位置調整だけでなく、実装時における他の部材との光路合わせに非常に高い精度が要求され、製造作業に関する効率の低下が指摘されていた。
これに対し、本実施形態のマイクロミラー装置10は、上部基板2(より厳密には、ガラス基板2a)を図6に示すように他の部材1、3、4よりも大きく設計されたものを使用する。つまり、上部基板2が上記実装基板として機能する。そして、上部基板2において、ミラー層と対向する面と反対側の面(光路上、対物レンズ50側の面)にミラー部5を形成している。このように偏向部40を一つのユニットとして形成することにより、マイクロミラー装置10とミラー部5との相対的位置決めが不要になるだけでなく、走査型共焦点プローブ100に実装する際の他の部材20、30、50との光路合わせも容易になる。
偏向部40内において、平行光束は、ミラー部5や上部基板2を介してマイクロミラー装置10のミラー層(より正確にはミラー面11)に入射する。ミラー層で反射した平行光束は対物レンズ50によって収束しつつ体腔内の生体組織Kを照射する。ここで、ミラー面11が上述した駆動原理に従ってX軸もしくはY軸に回動することにより、生体組織Kは、光束によって二次元に走査される。
生体組織Kで反射した光束は、上述した光路を逆に進み、光ファイバ20を介して受光素子に導かれる。ここで、光ファイバの端面がピンホールとして機能する。つまり、対物レンズ50の物体側焦点面からの反射光のみが、該端面から光ファイバ20に入射する。
以上が本発明の実施形態の説明である。なお、本発明に係るマイクロミラー装置は、上記実施形態に示す構成に限定されるものではなく、例えば以下のような変形を行っても上記実施形態のマイクロミラー装置10と同様の効果を奏する。
上記実施形態のマイクロミラー装置10では、電圧制御を容易にする観点より、上部基板2および下部基板3に配設される各駆動電極がどれもミラー層の中心に対して対称であるような構成にした。また、各電極に所定の電圧(バイアス電圧)が印加されたことによってミラー面に与えられる静電引力を等しくするため、上部スペースと下部スペースの高さも等しく設計した。ここで、電圧の制御を行う制御部が、より柔軟な電圧制御を可能とし、かつ該制御部への影響を無視できるのであれば、各電極の面積や形状、各スペースの高さ等が異なっていても良い。この場合、各電極の面積や形状、各スペースの高さ等に対応して各電極に印加する電圧を変化させることにより、上記実施形態と略同一の効果を得ることができる。さらに、設計誤差等の個体差も、各電極に印加する電圧を変化させることにより解消させることが可能である。
また、上記実施形態では、最も利用頻度の高い2軸で回動可能なマイクロミラー装置10を説明した。しかし、本発明に係るマイクロミラー装置は、2軸に限定されるものではなく、1軸のみでもよく、3軸以上であっても良い。また、上記実施形態では、最も制御が容易な構成として、X軸とY軸が直交している構成を説明したが、各軸は直交していなくても良い。
また、上記実施形態では、下部スペースを形成するための凸部14をミラー層1に一体形成した構成を説明した。しかし、スペースの形成は、該構成に限定されるものではない。例えば、下部スペースも上部スペースと同様に、凸部14ではなく独立したスペーサによって確保することも可能である。
また、上記実施形態では、上部基板2に配設される各電極は、透明電極を使用している。ここで、本発明に係るマイクロミラー装置では、入射光が上部基板2を介してミラー面11に達し、かつミラー面で反射した反射光が上部基板2から外部に射出されるような構成であれば、駆動電極として透明電極を使用しなくても良い。該構成としては、光が入射する領域および該光がミラー面11によって偏向する領域以外に各駆動電極を配設する構成が挙げられる。例えば、上記の領域を囲むようなドーナッツ形状を形成するように各駆動電極を配設する構成が挙げられる。
以上のように、本発明に係るマイクロミラー装置は、低電圧でも大きな走査範囲を得ることができる。従って、本発明に係るマイクロミラー装置は、従来搭載されている光スイッチ、計測機器、スキャナ等のみならず、被検者の人体や生命の安全が最重視される上記のような走査型共焦点プローブといった医療分野に好適である。
本発明の実施形態のマイクロミラー装置の概略構成を示す図である。 実施形態のマイクロミラー装置を構成部材毎に分解して示す図である。 ミラー層のX軸に沿った断面形状を模式的に示す図である。 上部基板に関し、A−A線での断面図、光が入射する側からみた図、ミラー層側から見た図である。 マイクロミラー装置の駆動原理について説明するための図である。 マイクロミラー装置を搭載する走査型共焦点プローブの概略構成を示す図である。
符号の説明
1 ミラー層
2 上部基板
3 下部基板
4 スペーサ
T1〜T4 駆動電極

Claims (12)

  1. 中心を通る第一の軸に沿って回動自在に支持されるミラー面を有するミラー層と、
    前記ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ前記第一の軸と平行である第一上部境界を挟んで配設される第一上部電極部と第二上部電極部を有し、第一のスペースを確保しつつ前記ミラー層における一方の側と積層される透過性ある上部基板と、
    前記ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ前記第一の軸と平行である第一下部境界を挟んで配設される第一下部電極部と第二下部電極部を有し、第二のスペースを確保しつつ前記ミラー層における他方の側と積層される下部基板と、を有し、
    前記上部基板のミラー層と対向しない面には、入射する光を前記ミラー面へ入射させるための反射部が形成され、
    前記第一の軸を基準にして対角に位置する一対の電極に電圧を印加することにより、前記ミラー面を第一の軸周りに回動させることを特徴とするマイクロミラー装置。
  2. 請求項1に記載のマイクロミラー装置において、
    前記第一の軸を基準にして対角に位置する一対の電極は、前記ミラー層の中心に対して対称な関係にあることを特徴とするマイクロミラー装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載のマイクロミラー装置において、
    前記ミラー面は、さらに、前記第一の軸と前記中心で交わる少なくとも第二の軸に沿って回動自在に支持され、
    前記上部基板は、前記ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ前記第二の軸と平行である第二上部境界を挟んで配設される第三上部電極部と第四上部電極部を有し、
    前記下部基板は、前記ミラー層に対向する面に、該面の中心を通りかつ前記第二の軸と平行である第二下部境界を挟んで配設される第三下部電極部と第四下部電極部を有し、
    前記第二の軸を基準にして対角に位置する一対の電極に電圧を印加することにより、前記ミラー面を第二の軸周りに回動させることを特徴とするマイクロミラー装置。
  4. 請求項3に記載のマイクロミラー装置において、
    前記第二の軸を基準にして対角に位置する一対の電極は、前記ミラー層の中心に対して対称な関係にあることを特徴とするマイクロミラー装置。
  5. 請求項3または請求項4に記載のマイクロミラー装置において、
    前記第一の軸と前記第二の軸は互いに直交することを特徴とするマイクロミラー装置。
  6. 請求項3から5の何れかに記載のマイクロミラー装置において、前記ミラー層は、
    ミラー面の周囲に配設されるフレームと、
    前記フレームの周囲に配設される外枠と、
    前記第一の軸に沿って配設され、前記ミラー面と前記フレームを結合する第一のヒンジ部と、
    前記第二の軸に沿って配設され、前記フレームと前記外枠を結合する第二のヒンジ部と、を有することを特徴とするマイクロミラー装置。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかに記載のマイクロミラー装置において、
    前記第一スペースと前記第二スペースは、略同一高さを有することを特徴とするマイクロミラー装置。
  8. 請求項1から請求項7のいずれかに記載のマイクロミラー装置において、
    前記第一スペースを形成するための第一スペーサと、
    前記第二スペースを形成するための第二スペーサと、をさらに有することを特徴とするマイクロミラー装置。
  9. 請求項8に記載のマイクロミラー装置において、
    前記第一スペーサまたは前記第二スペーサのいずれか一方は前記ミラー層に一体形成されていることを特徴とするマイクロミラー装置。
  10. 請求項1から請求項9のいずれかに記載のマイクロミラー装置において、
    前記上部基板に配設される各電極は、透明電極であることを特徴とするマイクロミラー装置。
  11. 請求項1から請求項9のいずれかに記載のマイクロミラー装置において、
    前記上部基板に配設される各電極は、前記ミラー面に入射する光および該ミラー面で偏向した光の光路を妨げない位置に配設されることを特徴とするマイクロミラー装置。
  12. 体腔内の生体組織に光源から照射される光束を走査することにより該生体組織の観察像を得る走査型共焦点プローブであって、
    前記光源からの光束を導くとともに、前記生体組織で反射した反射光を受光部に導くシングルモード光ファイバと、
    前記シングルモード光ファイバから射出された光束を平行光に変換するとともに、前記反射光をシングルモード光ファイバへ入射するレンズ部と、
    前記レンズ部から射出された光を前記生体組織へ導き、前記生体組織からの反射光を前記レンズ部へ導く、請求項1から請求項11のいずれかに記載のマイクロミラー装置と、からなることを特徴とする走査型共焦点プローブ。
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