JP4360124B2 - シュウ酸カルシウムスケールの防止方法と洗浄方法 - Google Patents

シュウ酸カルシウムスケールの防止方法と洗浄方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
漂白クラフトパルプ製造のECF漂白またはTCF漂白工程におけるシュウ酸カルシウムスケールの防止方法と洗浄方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙パルプの原料木材中にはシュウ酸成分、カルシウム成分が含まれており、これらが工程水中に溶出する。更に漂白工程では有機物が酸化されシュウ酸成分が生成し、用水中にもカルシウム成分が含まれることもあって、工程水中ではシュウ酸イオン、カルシウムイオンおよび両者の反応生成物であるシュウ酸カルシウムが蓄積され、スケールとなって析出してくる。
【0003】
シュウ酸カルシウムスケールは特にpHが4以上で生成しやすいと言われている。このため、漂白薬品に塩素(C)や次亜塩素酸塩(H)を使用する従来の漂白シーケンスを採用している場合には、pHが7〜10である次亜塩素酸漂白段やその周辺の配管、設備において、また、pHが4〜7である二酸化塩素漂白段やその周辺の配管、設備において生成が顕著であった。例えば、漂白工程ではフィルターワイヤー、シャワーノズル、各種配管、濾過タンク、漂白タワーなどで生成し、操業性を悪化させるのみならず、フィルターの目詰まり、濾過性の低下、洗浄性の低下により、パルプの洗浄が不十分となってパルプ品質の不安定化をもたらし、漂白薬品が多量に必要になるほか、場合によっては操業停止を余儀なくされる場合もあった。シュウ酸カルシウムスケールはいったん生成すると、機械的に除去しているのが現状である。この従来の漂白シーケンスとしては、例えばC−E−H−D、C/D−E/P−D、C/D−E/O−Dなどが挙げられる。Eはアルカリ抽出段、Dは二酸化塩素段、Pは過酸化水素、Oは酸素をそれぞれ意味する。
【0004】
シュウ酸カルシウムは塩酸、硝酸で溶解することができる(非特許文献1参照。)が、シュウ酸カルシウムを溶解するには塩酸または硝酸の添加によりpHを極端に低くしなければならず、漂白反応へ悪影響を及ぼすことが考えられるし、溶解したシュウ酸イオンとカルシウムイオンとが別の箇所でpH上昇により再スケール化する恐れがある。漂白工程内でシュウ酸カルシウムスケールの生成を抑えることを目的とした従来の技術としては、次のような方法がある。水溶性ホスフェート、水溶性ホスホネート、水溶性ホスホネートとアニオン性水溶性高分子電解質を併用してスケールを防除する方法 (特許文献1参照。)、水溶性リン酸塩類とアクリル酸水溶性ポリマーを併用する方法(特許文献2参照)、マレイン酸とアクリル酸低級アルキルと酢酸ビニルの共重合体を用いる方法(特許文献3参照)、マレイン酸と他のエチレン性不飽和化合物とのコポリマーを用いる方法(特許文献4参照)、ポリアミノヘキサメチレンホスホネートを用いる方法(特許文献5参照)、特定分子量のカルボキシル基を有する水溶性重合体を用いる方法(特許文献6参照。)、マレイン酸成分とアルキルビニルエーテル成分を含む薬剤を用いる方法(特許文献7参照。)、ポリ−α−ヒドロキシアクリル酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩のうちの1種または2種以上を有効成分として含有する薬剤を用いる方法(特許文献8参照。)などが提案されている。しかし、これらの従来技術はいずれも特定成分の薬剤を添加しなければならず、コストが高くなるし、これらの成分がパルプ中に残留した場合の問題も懸念され、更に、スケール原因物質であるシュウ酸イオンを分解できる根本的な技術でもない。
【0005】
他方、紙パルプ工場の漂白工程から排出される物質が環境に与える影響に関心が集まる中、従来の塩素および/または塩素系薬品を主に用いた漂白方法から、塩素を使わないECF漂白や更に進んで塩素系薬品を全く使用しないTCF漂白が全世界的に主流となりつつある。外国におけるECF漂白の操業経験から、ECF漂白工程でのシュウ酸カルシウムスケール発生の問題が幾つかの学会で報告されている(非特許文献2〜5参照。)。国内でもECF漂白やTCF漂白の拡大が見込まれる状況から、ECF漂白またはTCF漂白工程におけるシュウ酸カルシウムスケールの防止方法と、形成したシュウ酸カルシウムスケールの洗浄方法の確立が望まれている。
【0006】
【非特許文献1】
長倉三郎ら著「岩波理化学辞典第5版」、1998年2月20日発行、p622
【特許文献1】
特開昭61−153199号公報
【特許文献2】
特開平1−143700号公報
【特許文献3】
特開平4−18184号公報
【特許文献4】
米国特許第5320757号明細書
【特許文献5】
米国特許第5490942号明細書
【特許文献6】
特開平10−180293号公報
【特許文献7】
特開平11−290893号公報
【特許文献8】
特許第3100589号明細書
【非特許文献2】
Roger J.Dexter著、Tappi Pulping Conference Proceedings p.1342,1998
【非特許文献3】
Elsander,A.,Gellerstedt,G.著、Tappi Minimum Effluent Mills Symposium Proceedings p.63,1996
【非特許文献4】
Per Ulmgren、Rune Radestrom著、Tappi Minimum Effluent Mills Symposium Proceedings p.9,1996
【非特許文献5】
Correria,Flavio M.ら著、Tappi Bleaching Conference Proceedings p.213,2000
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
漂白クラフトパルプ製造のECF漂白またはTCF漂白工程で生成するシュウ酸カルシウムスケールを効果的に防止することができ、しかもそのコストが低く、かつスケール防止剤がパルプ中に残留しても問題がない、シュウ酸カルシウムスケールの新規な防止方法と洗浄方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
漂白剤として塩素、次亜塩素酸塩を使用しない、ECF漂白やTCF漂白工程において、pHが2.0〜3.5の条件下で、パルプスラリーまたは漂白工程白水に、シュウ酸カルシウムスケール防止剤として、塩素ガス、塩素水、次亜塩素酸塩水溶液のいずれかを、パルプスラリーまたは白水の容積に対して、塩素は50〜500ppm、または次亜塩素酸塩水溶液は25〜500ppm添加し、シュウ酸カルシウムスケールの生成を防止する。また、シュウ酸カルシウムスケールが形成している箇所を、塩素水で洗浄するか、またはpHが3.5以下の条件で次亜塩素酸塩水溶液で洗浄する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、漂白クラフトパルプ製造のECF漂白またはTCF漂白工程に適用される。原料木材は広葉樹でも針葉樹でもよい。蒸解法には、クラフト−アンスラキノン蒸解法、クラフト−ポリサルファイド蒸解法、クラフト−ポリサルファイド−アンスラキノン蒸解法も含む。さらにクラフト法については修正法として、MCC、EMCC、ITC、Lo-solid法等が知られているが、それらの方法に限定されず適用できる。クラフト蒸解後のパルプは漂白に先立って、公知の条件で酸素脱リグニン処理される。また、酸素脱リグニン処理の次に、ヘキセンウロン酸の除去を目的とした酸処理(A)を施してもよい。
【0010】
ECF漂白シーケンスは、塩素や次亜塩素酸塩による漂白段を含まなければよく、特に限定はない。例えば、Z-E-D-P、ZD-E/P-D、ZD-E/P-D-P、D-E/P-D、D-E/P-D、D-E/P-D-P、D-E/P-P-D、A-ZD-E/P-D、A-D-E/P-D、A-D-E/P-D-Pなどを挙げることができる。また、TCF漂白シーケンスは塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素による漂白段を含まなければよく、特に限定はない。例えば、Z/Q-E/P-P、Z-E/P-Z-P、Z-E/P-P-P、P-E-P-E、P-E-P、A-Z-E/P-P、A-Z-E/P-Z-P、A-Z-E/P-P-P、A-P-E-P-E、A-P-Pなどを挙げることができる。
【0011】
シュウ酸は有機物の酸化で生成する。ECF漂白またはTCF漂白工程では酸化漂白剤として、酸素、二酸化塩素、オゾン、過酸化水素などを使用しているので、これらの酸化漂白段では酸化反応でシュウ酸が生成しており、カルシウムイオンが共存するとシュウ酸カルシウムが析出し、スケールを形成するおそれがある。また、漂白工程では節水のため、ある漂白段の白水を前段の漂白段における希釈水として再使用することも一般に行われているので、前記の酸化漂白段のみならず、例えばアルカリ抽出段などでもスケールが形成することもあり得る。また、リグニン含量が高いほどシュウ酸の生成量は増える。また、従来の技術で記述したようにシュウ酸カルシウムスケールは特にpHが4以上で生成しやすいと言われているが、本発明者らが検討した結果、シュウ酸カルシウムはpHが2.0以上になると生成することがわかった。これを図1に示す。漂白工程ではパルプスラリーや白水のpHは酸処理段を除き、ほとんどの場合、pHは2.0以上である。以上のことから、シュウ酸カルシウムスケールの形成は、酸処理段を除き、ECF漂白またはTCF漂白工程の全ての漂白段で起こる可能性があり、リグニン含量が高い漂白前段ほどスケール形成の危険性が高い。
【0012】
図1について説明する。シュウ酸イオン濃度が90ppmとなるようにシュウ酸標準液を、カルシウムイオン濃度が90ppmとなるように塩化カルシウムを蒸留水にそれぞれ添加し、室温で撹拌しながら2時間保持した。ポア径0.45μmのフィルターを用いてこの溶液を濾過し、生成したシュウ酸カルシウムを除去した。濾液をイオンクロマトグラフィーに注入し、濾液中に残存している未反応シュウ酸イオン濃度を測定した。この濃度を最初のシュウ酸イオン濃度90ppmで割った値をシュウ酸残存率として、溶液pHとシュウ酸残存率との関係を図1に示した。
【0013】
【図1】
Figure 0004360124
【0014】
ECF漂白またはTCF漂白工程では、原料木材チップの樹種、蒸解後のカッパー価、蒸解パルプの洗浄度、用水、使用する漂白薬品の種類と添加量、漂白反応のpH設定、漂白シーケンス、漂白白水の再使用状況などが複雑に絡み合い、各漂白段におけるシュウ酸イオン濃度とカルシウムイオン濃度はパルプ工場毎に異なる。従って、本発明のシュウ酸カルシウムスケールの防止方法を適用する漂白段または箇所の決定に際しては、漂白工程内のシュウ酸イオン濃度とカルシウムイオン濃度とを予め測定し把握する必要がある。カルシウムイオンは使用する用水中にも存在することから、少なくともシュウ酸イオン濃度が高い漂白段で本発明を適用することが効果的である。また、ECF漂白またはTCF漂白の操業時にシュウ酸カルシウムスケールが形成する箇所については、本発明の洗浄方法を適用する。
【0015】
文献(化学大事典、共立出版株式会社)によればシュウ酸カルシウムの水に対する溶解度は、0.67mg(13℃) /100gである。この場合のシュウ酸イオン濃度は4.6ppmとなるので、シュウ酸イオンとカルシウムイオンが共存する水相では、シュウ酸イオン濃度が4.6ppm以上となるとシュウ酸カルシウムが生成する。従って、パルプスラリーの水相、または白水に含まれるシュウ酸イオン濃度が5ppm以上、好ましくは10ppm以上、更に好ましくは15ppm以上の場合に本発明を適用する。また、現にシュウ酸カルシウムスケールが形成している箇所に本発明を適用する。
【0016】
本発明のシュウ酸カルシウムスケール防止方法と洗浄方法で使用する薬剤は、塩素または次亜塩素酸塩であり、次亜塩素酸塩はナトリウム塩またはカルシウム塩である。
【0017】
添加する塩素は、ガス状であっても良いし、塩素ガスを水へ吹き込んで調製した塩素水でも良い。塩素は、塩素含有液のpHに応じて色々な分子形態となり、低pHでは殆ど100%元素状塩素の形で存在するが、pHが上昇するにつれて次亜塩素酸の割合が増し、pH=3.5〜4.5では次亜塩素酸塩100%である。更にpHが上昇するにつれて次亜塩素酸イオンの比率が増し、pHが10.0以上では100%次亜塩素酸イオンとなる。これらの分子形態のうち、シュウ酸を二酸化炭素まで分解できるのは元素状塩素のみであるから、pH3.5以下で塩素を使用しなければ効果が無い。一方、シュウ酸カルシウムスケールが発生する恐れがある系のpHは、前述のように2.0以上である。これらのことを考慮すると、処理する対象がパルプスラリーや白水の場合には、パルプスラリーや白水のpHが2.0〜3.5の条件下、処理する必要がある。好ましくはpH=2.0〜3.0、更に好ましくはpH=2.0〜2.5である。パルプスラリーや白水への塩素添加率は、50〜500ppm(対容積)であり、好ましくは100〜500ppm、更に好ましくは100〜250ppmである。塩素ガスまたは塩素水の添加のみでは、パルプスラリーや白水のpHが前記範囲に入らない場合、pH調節剤として塩酸を併用し、pHを適切な範囲に入れることが必要である。また、この塩酸はシュウ酸カルシウムを溶解する作用も有し、シュウ酸イオンとカルシウムイオンが生成する。生成したシュウ酸イオンは元素状塩素で数分間のごく短時間で酸化分解される。シュウ酸カルシウムスケールが形成している箇所を洗浄する場合は、その箇所へ塩素水を注ぐ。あるいはその上流で塩素ガスまたは塩素水を添加する。洗浄は連続でも良いし、間欠でも良い。
【0018】
次亜塩素酸塩は水溶液の形で使用する。次亜塩素酸塩の分子形態もpHに応じて色々な形が存在し、前述の塩素と同様に、元素状塩素、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオンの3種類である。pHと分子形態の関係は前述の塩素と同様である。処理する対象がパルプスラリーや白水の場合には、パルプスラリーや白水のpHが2.0〜3.5の条件下、処理する必要がある。好ましくはpH=2.0〜3.0、更に好ましくはpH=2.0〜2.5である。パルプスラリーや白水への次亜塩素酸塩添加率は、HClOとして25〜500ppm(対容積)であり、好ましくは50〜500ppm、更に好ましくは100〜400ppmである。パルプの漂白に使用する次亜塩素酸塩は通常アルカリ性水溶液の形で供給されている。従って、次亜塩素酸塩のみの添加では、パルプスラリーや白水のpHが前記範囲には入らないので、pH調節剤として塩酸を併用し、pHを適切な範囲に入れることが必要である。シュウ酸カルシウムスケールが形成されている箇所を洗浄する場合は、その箇所へ次亜塩素酸塩水溶液と塩酸とを別々に注ぐか、あるいはその上流で次亜塩素酸塩水溶液と塩酸を添加するが、次亜塩素酸塩から元素状塩素を発生させるpH領域としなければならず、pHを3.5以下、好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下にすることが必要である。洗浄は連続でも良いし、間欠でも良い。
【0019】
漂白剤には最適な反応pHがあるため、上述の塩素または次亜塩素酸塩添加の処理により、後続の漂白反応への悪影響がある場合には、アルカリ薬剤を添加してpHを最適化する必要がある。アルカリ薬剤には、水酸化ナトリウムを使用する。
【0020】
ECF漂白もTCF漂白も、漂白剤として塩素、次亜塩素酸塩を使用しないが、本発明のシュウ酸カルシウムスケール防止方法と洗浄方法で使用する塩素または次亜塩素酸塩は漂白剤として使用するものではない。漂白剤として使用する場合は、その添加率はパルプ中の残留リグニン量や目標とする白色度などで決まり、通常の添加率は、パルプ固形分重量に対して塩素で4〜8%程度、次亜塩素酸塩で0.1〜3%(有効塩素として)程度である。これに対して、シュウ酸カルシウムスケール防止剤として使用する場合のパルプスラリーや白水への添加率(対容積)は、塩素で0.005〜0.05%、次亜塩素酸塩で0.0025〜0.05%であり、漂白剤として使用する場合の添加率に比較してはるかに低い。従って、ECF漂白またはTCF漂白工程においてシュウ酸カルシウムスケールの防止に塩素または次亜塩素酸塩を使用しても、排水中のAOX濃度などの環境面でも、またパルプ品質面でも問題とはならない。
【0021】
本発明のシュウ酸カルシウムスケール防止方法では、従来からパルプの漂白剤として使用されてきた塩素または次亜塩素酸塩を添加するので、パルプ中に残留することがないという点でも、従来のシュウ酸カルシウム防止技術よりも優位性がある。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に示すが、本願発明は勿論かかる実施例に限定されるものではない。シュウ酸イオンとカルシウムイオンの分析方法を以下に示す。
シュウ酸イオンの分析方法
試料中のシュウ酸イオン濃度はイオンクロマトグラフィー法で分析した。漂白工程排水のシュウ酸イオン濃度は低く、しかも妨害イオンが含有されているため、下記の条件を設定し、検量線法でシュウ酸イオン濃度を正確に測定した。
▲1▼排水試料をポア径0.45μmのフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィーに注入する。
▲2▼イオンクロマトグラフィー条件
溶離液:ホウ酸/マンニトール/トリスヒドロキシメチルアミノメタンの混合液であり、各濃度は15mM/15mM/2.5mM。
カラム:陰イオン交換樹脂PCI-201S(東亜電波工業株式会社製)
流速:1.5ml/min.
恒温槽温度:37℃
検出器:伝導度検出器、セル温度40℃
注入量:15μl
▲3▼0.5Nのシュウ酸標準液を適宜希釈し、この希釈液15μlを注入し、シュウ酸由来のピーク面積とシュウ酸濃度から検量線を作成した。検量線の例を図2に示す。
カルシウムイオンの分析方法
試料中のカルシウムイオン濃度もイオンクロマトグラフィー法で分析した。下記の条件で、検量線法でカルシウムイオン酸濃度を測定した。
▲1▼排水試料をポア径0.45μmのフィルターで濾過し、イオンクロマトグラフィーに注入する。
▲2▼イオンクロマトグラフィー条件
溶離液:酒石酸/エチレンジアミンの混合液であり、各濃度は4mM/2mM。
カラム:陽イオン交換樹脂PCI-302S(東亜電波工業株式会社製)
流速:1.5ml/min.
恒温槽温度:42℃
検出器:伝導度検出器、セル温度45℃
注入量:15μl
▲3▼カルシウム標準液を適宜希釈し、この希釈液15μlを注入し、カルシウム由来のピーク面積とカルシウム濃度から検量線を作成した。
【0023】
【図2】
Figure 0004360124
【0024】
【実施例1】
ECF漂白シーケンスの初段二酸化塩素段(D)の白水を採取した。この白水のシュウ酸イオンは50ppm、カルシウムイオンは40ppmであった。この白水500mlを55℃に調整した。これにシュウ酸と等モル量の次亜塩素酸ナトリウムを添加し、更に塩酸を加えてpH=2.0に調整した後、反応時間5,10,30,60分後に試料を採取し、イオンクロマトグラフィーでシュウ酸イオン濃度を測定した。この測定値からシュウ酸残存率を計算した。反応時間とシュウ酸残存率の関係を図3に示す。白水中のシュウ酸イオンは元素状塩素により、短時間で分解されることがわかる。
【0025】
【図3】
Figure 0004360124
【0026】
【実施例2】
ECF漂白シーケンスのDの白水を採取した。この白水のシュウ酸イオンは55ppm、カルシウムイオンは45ppmであった。この白水500mlを55℃に調整した。これに次亜塩素酸ナトリウムを100,200,400,600,800,1000ppm(対白水容積)となるように添加し、更に塩酸を加えてpH=2.0に調整した後、30分後に試料を採取し、イオンクロマトグラフィーでシュウ酸濃度を測定した。次亜塩素酸ナトリウム添加率とシュウ酸イオン濃度の関係を図4に示す。
【0027】
【図4】
Figure 0004360124
【0028】
図4の結果から、次亜塩素酸ナトリウムを500ppmも添加率すれば白水中のシュウ酸イオンは殆ど酸化分解されることがわかる。
【0029】
【発明の効果】
ECF漂白やTCF漂白工程において、pHが2.0〜3.5の条件下で、パルプスラリーまたは漂白工程白水に、塩素ガス、塩素水、次亜塩素酸塩水溶液のいずれか1種類を添加することにより、シュウ酸カルシウムスケールの生成を防止できる。また、シュウ酸カルシウムスケールが沈着する箇所を、pHが2.0〜3.5の条件下で、塩素水または次亜塩素酸塩水溶液のいずれかで洗浄することにより、スケール溶解とスケール防止を達成できる。本発明のシュウ酸カルシウムスケールの防止方法と洗浄方法により、安定したECF漂白やTCF漂白の操業が可能となり、漂白薬品低減やパルプ品質安定の効果もある。

Claims (2)

  1. 漂白剤として塩素、次亜塩素酸塩を使用しない、漂白クラフトパルプのECF漂白またはTCF漂白工程において、パルプスラリーまたは白水に、pH=2.0〜3.5の条件下、シュウ酸カルシウムスケール防止剤として、塩素ガス、塩素水、次亜塩素酸塩水溶液のいずれか1種類を、パルプスラリーまたは白水の容積に対して、塩素は50〜500ppm、または次亜塩素酸塩水溶液は25〜500ppm添加することを特徴とするシュウ酸カルシウムスケールの防止方法。
  2. 漂白剤として塩素、次亜塩素酸塩を使用しない、漂白クラフトパルプのECF漂白またはTCF漂白工程において、シュウ酸カルシウムスケールが形成している箇所を、塩素水、またはpHが3.5以下の条件で次亜塩素酸塩水溶液で処理する、ことを特徴とするシュウ酸カルシウムスケールの洗浄方法。
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