JP4295933B2 - クラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法 - Google Patents

クラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法に関するものであり、さらに詳しくは、クラフトパルプ漂白工程中の各種装置に対するスケールの付着を防止するとともに、付着したスケールの除去、ならびに再スケール化の防止などに優れた効果を有するクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、晒クラフトパルプの製造において、クラフトパルプ漂白工程では酸またはアルカリの薬剤を用いて、複数の工程によりパルプ中に含有される着色物質を除去、あるいは無色化するための漂白処理が行われている。この漂白工程では、パルプの原料木材中に含まれるカルシウム成分やシュウ酸成分などが工程水に溶出し、炭酸カルシウムやシュウ酸カルシウムなどのスケールが析出することによって種々の障害が生じている。
【0003】
また、クラフトパルプ漂白工程中の一工程として、酸素漂白工程を導入することにより環境への負荷低減が図られてきたが、近年、環境問題への関心が高まる中で、環境負荷のより一層の低減を図ることを目的として、海外はもとより日本においても、クラフトパルプ漂白工程中に、塩素ガスを用いる漂白方法から塩素ガスを用いない無塩素漂白方法(以下、ECF漂白方法と略す。ECF:Elemental Chlorine Free)を採用する方向への転換が急速に進んでいる。
【0004】
一般に、ECF漂白方法を採用する場合には、従来の塩素ガスを用いる漂白方法に比べて、後段(後工程)に持込まれるカルシウムイオンなどの金属イオンの量が増加する傾向にある。また、ECF漂白方法では、主として二酸化塩素を用いる場合、塩素ガスを用いる漂白方法に比べて、酸化力が大きくなる。特に、パルプ原料として広葉樹を用いる場合には、パルプ繊維中に存在するリグニンやヘキセンウロン酸が酸化され、シュウ酸となり、その結果、クラフトパルプ漂白工程に用いられる装置内ではシュウ酸カルシウムを主成分とするスケールが形成されやすくなることから改善の余地があった。
【0005】
ここで、従来のECF漂白方法を用いたクラフトパルプ漂白方法について、図でもって説明する。図2は、ECF漂白方法を用いたクラフトパルプ漂白工程の一例を示す概略図である。図2において、クラフトパルプ漂白工程は、二酸化塩素を用いて処理するD0段21およびD1段24、水酸化ナトリウムを用いて処理するE段22、次亜塩素酸ナトリウムを用いて処理するH段23、再選工程26、ならびに、例えば、エキストラクター付きシックナーを用いて処理する沈降分離工程27からなる。図中、25は晒タンク、28は完成チェスト、29は抄紙工程への配管を示す。
【0006】
上記の二酸化塩素を用いたECF漂白方法では、長期にわたる連続操業により、クラフトパルプ漂白工程における各々の装置、例えば、洗浄器やポンプインペラーなどの装置にスケールが付着し、様々な障害を引き起す。すなわち、洗浄器にスケールが付着した場合には、洗浄不良の原因となり、結果として漂白用薬剤がパルプスラリー中に残存するために、後段での薬剤の添加量を増加させる必要が生じる。その対策のために、パルプスラリーの処理量を減らすと漂白処理効率が著しく低下する。また、ポンプにスケールが付着した場合には、所定の流量での送液ができなくなるため、一定のパルプ生産量の維持が困難になる。したがって、クラフトパルプ漂白工程の各装置では、定期的なスケール付着の点検および除去、ならびにスケール付着の防止対策が必要とされている。
【0007】
クラフトパルプ漂白工程における装置のうち、例えば、ディフューザー漂白装置のスクリーンプレート上に付着したスケールを除去する方法としては、従来から、クラフトパルプ漂白工程の操業を停止して、作業員がディフューザー漂白装置内に入り、付着したスケールを高圧水などを用いて物理的に強制除去する方法、あるいはスケール除去薬剤を添加した洗浄水をディフューザー漂白装置内に循環させ、長時間かけて付着したスケールを溶出させる方法などが採用されてきた。
【0008】
しかしながら、これらの方法では、クラフトパルプ漂白工程の操業を長時間にわたって停止させなければならず、パルプ生産量が低下して多大な損失となる。特に、ディフューザー漂白装置を用いる場合には、ドラム式フィルターに比べて、その構造上の理由から、スケールの除去には多大な時間と手間が必要であり、従来から深刻な問題であった。
【0009】
このような状況に鑑み、ディフューザー漂白装置を用いたクラフトパルプ漂白工程において、操業を継続しながらディフューザー漂白装置のスクリーンプレート上にスケールが付着するのを防止する方法として、キレート剤を添加する方法が採られてきた。キレート剤は、カルシウムイオンなどを封鎖する効果があることから、従来からスケール防止剤として使用されている。しかしながら、キレート剤は金属選択性が悪く、目的とするカルシウムイオン以外の金属イオンをも封鎖してしまうことから、カルシウム系のスケールの付着を防止するためには多量のキレート剤を必要とし、コスト面において多くの負担を要することになる。
【0010】
また、酸処理によって重金属を除去することでスケールの付着を防止する方法もあるが、専用の装置を設置する必要があることから、この方法でもコスト面において多くの負担を要する。
【0011】
上記のとおり、ECF漂白方法を用いたクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法は、未だ有効な対処方法が確立されておらず、低コストで、かつ効果的なECF漂白方法を用いたクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法の確立が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クラフトパルプ漂白工程中の各種装置に対するスケールの付着を防止するとともに、付着したスケールの除去、ならびに再スケール化の防止などに優れた効果を有するクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ECF漂白方法を用いたクラフトパルプ漂白工程におけるパルプスラリー中に、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加することにより、意外にもカルシウムイオンが効率的に封鎖され、スケールの付着を防止することができる事実を見出した。
【0014】
さらに、前記漂白工程の装置内に既にシュウ酸カルシウムを主成分とするスケールが付着している場合においても、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加することにより、スケールおよびそれを形成する粒子が膨潤化され、一旦付着したスケールの剥離ならびに再スケール化の防止が図れる事実も見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法は、ECF漂白方法を用いたクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法において、該漂白工程のパルプスラリー中に、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加し、該漂白工程に用いられる、脱水洗浄設備であるディフューザー漂白装置の洗浄器内部およびスクリーンプレート上にスケールが付着するのを防止することを特徴とするものである。
【0016】
本発明において、ECF漂白方法は、主として二酸化塩素を用いた漂白方法であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明において、漂白工程前の未晒クラフトパルプスラリー中に硫酸を添加し、該パルプスラリーのpHを1〜6に調整することを特徴とする。
【0018】
本発明において、スケールの内でも、特にシュウ酸カルシウムを主成分とするスケールであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明において、ディフューザー漂白装置にはパルプスラリーを供給する中濃度ポンプが連結してなり、該中濃度ポンプのサクション側におけるパルプスラリー中に、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加することを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明において、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を、パルプスラリーに対して1〜20mg/リットルの濃度となるように添加することを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法について、詳細に説明する。
【0024】
本発明のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法は、ECF漂白方法を用いたクラフトパルプ漂白工程におけるスケールの付着を防止する方法であり、スケール付着防止剤として1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩をパルプスラリー中に添加した場合、カルシウムイオンを効率的に封鎖できること、またスケールおよびスケールを形成する粒子を膨潤化して容易に付着したスケールを剥離することができること、という特異的な特性を見出したことによって発明に至ったものである。
【0025】
本発明におけるスケール付着防止剤としての1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩は、カルシウムイオンを含むスケール、特にシュウ酸カルシウムを主成分するスケールに対して優れた付着防止効果を発揮するものである。
【0026】
そして、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩からなるスケール付着防止剤は、クラフトパルプ漂白工程に用いられるディフーザー漂白装置に付着するスケールの防止効果に対応でき、特に脱水洗浄設備ではディフーザー漂白装置の洗浄器内部やスクリーンプレート上へのスケールの付着に対して優れたスケール防止効果を有する。
【0027】
次に、本発明のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法について、図1を用いて具体的に説明する。図1は、ECF漂白方法およびディフューザー漂白装置を用いたクラフトパルプ漂白工程の部分概略図である。
【0028】
ディフューザー漂白装置2を用いる通常のクラフトパルプ漂白工程における処理フローは、次に述べるとおりである。すなわち、フィードタンク7に供給された入口パルプスラリー12は、該パルプスラリー12に添加された漂白用薬剤9とともに中濃度ポンプ8によってミキシングされながらパルプ供給口Bからディフューザー漂白装置2に送液される。次いで、パルプスラリー6は、ディフューザー漂白装置2の上部に設けられた洗浄器のスクリーンプレート1が洗浄水3により洗浄、脱水され、パルプ排出口Cから出口パルプスラリー11として次工程に送液される。一方、脱水された漂白処理液である抽出水(白水)4は、スクリーンプレート1から抽出され、白水タンク5に送液される。
【0029】
本発明のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法は、上記のクラフトパルプの漂白処理を行いながら、漂白工程の各装置、例えば、ディフューザー漂白装置2の洗浄器内部およびスクリーンプレート1におけるスケールの付着を防止する。また、スケールの中でも、シュウ酸カルシウムが付着しやすい条件下では、ディフューザー漂白装置2にパルプスラリーを供給する中濃度ポンプ8のサクション側のパルプスラリーに、すなわち、図1では薬剤添加口Aから、スケール付着防止剤としての1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩10を添加する方法である。
【0030】
本発明によるスケール付着防止効果を最大限に発揮させるためには、スケール付着防止剤としての1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩の添加場所は、シュウ酸カルシウムなどのスケールが生成しやすいポイント、つまりパルプスラリーのpHが大きく変化するポイント、例えば、液性がアルカリ性から酸性に切り替わるポイントまたはその逆のポイント、に添加するのが好ましい。このことからも、ディフューザー漂白装置2にパルプスラリーを供給する中濃度ポンプ8のサクション側のパルプスラリーに1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加するのが好ましい。
【0031】
また、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩をパルプスラリー中に均一に分散させるためにも、図1のように中濃度ポンプ8のサクション側にあるフィードタンク7に薬剤添加口Aを設けることが好ましい。
【0032】
本発明において用いられる1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸の塩としては、易水溶性塩が好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が好ましい。
【0033】
本発明において、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩の添加量としては、付着されるスケールの成分や使用する1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩の種類によって適宜増減することができ、パルプスラリーに対して、好ましくは1〜20mg/リットル、より好ましくは3〜10mg/リットルの濃度となるように添加する。
【0034】
ここで、パルプスラリーに対して、1mg/リットル未満の濃度である場合には、十分なスケールの付着防止効果が得られず、一方、20mg/リットルを超えて多く添加した場合には、添加量に見合うだけの効果が得られないことから好ましくない。
【0035】
本発明において、付着されるスケールの内でも、シュウ酸カルシウムを主成分とするスケールに対して、本発明の1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を上記濃度で用いた場合に、優れた付着防止効果を発揮する。
【0036】
本発明において、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加する際に、パルプスラリーの性状は特に限定されるものではないが、パルプスラリーの性状としては、3〜15質量%の濃度、pH2〜12、45〜95℃の温度であることが好ましい。
【0037】
本発明のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法では、本発明の効果が阻害されない限り、本発明の1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩以外の、他のスケール付着防止剤やピッチコントロール剤などを併用することも何ら限定するものではない。
【0038】
【実施例】
本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。以下の実施例および比較例については、図1または図2を用いて説明する。
【0039】
実施例1
図2に示すような某製紙工場のECF漂白方法およびディフューザー漂白装置を採用したクラフトパルプ漂白工程において、その操業中のパルプスラリー中に、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(以下、HEDPと略す。)を添加して、装置内におけるスケール付着の防止効果を確認した。
【0040】
この漂白工程は、二酸化塩素を用いて処理するD0段21およびD1段24、水酸化ナトリウムを用いて処理するE段22、次亜塩素酸ナトリウムを用いて処理するH段23、再選工程26ならびにエキストラクター付きシックナーを用いて処理する沈降分離工程27からなる。また、漂白処理前に未晒クラフトパルプパルプスラリーのpH調整を目的として、硫酸を用いた。
【0041】
具体的には、D1段24の部分概略図である図1より、ディフューザー漂白装置にパルプスラリーを供給する中濃度ポンプのサクション側の薬剤添加口Aから常時、入口パルプスラリー12に対する濃度が10mg/リットルになるように、HEDPを添加した。これにより、HEDPは中濃度ポンプ8によってパルプスラリーと十分にミキシングされ、ディフューザー漂白装置2に供給された。
【0042】
HEDPによるスケール付着防止の効果を見極めるために、入口パルプスラリー12、出口パルプスラリー11および抽出液4に含まれる全カルシウム濃度TC(mg/リットル)および溶存カルシウム濃度DC(mg/リットル)を測定し、これらの比率DC/TCを求めた。得られた結果について下記表1に示した。
【0043】
実施例2
入口パルプスラリー12に対するHEDPの濃度を5mg/リットルにすること以外は、実施例1と同様にして試験し、評価した。得られた結果について下記表1に示した。
【0044】
比較例1
HEDPを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして試験し、評価した。得られた結果について下記表1に示した。
【0045】
【表1】
Figure 0004295933
【0046】
表1の結果から、HEDPを添加した実施例1および実施例2では、試料の違いによる全カルシウム濃度(TC)の変化は認められない。一方、HEDPを添加しなかった比較例1では、入口パルプスラリー12よりも出口パルプスラリー11および抽出液4のTCが減少している。これは、パルプおよび漂白用薬剤がディフューザー漂白装置を通過する際に、装置内にカルシウム成分を残してきた、つまりカルシウム成分がスケールとなって装置内に付着したものと考えられる。このことから、HEDPの添加によって、ディフューザー漂白装置のスクリーンプレート上へのスケールの付着を防止できることがわかる。
【0047】
また、HEDPを添加した実施例1および実施例2では、HEDPを添加しなかった比較例1に比べて、各測定試料において溶存カルシウム濃度(DC)が高く、DC/TCが大きい。このことから、HEDPの添加によって、カルシウム成分の溶解量が増加し、ディフューザー漂白装置のスクリーンプレート上へのスケールの付着が防止できることがわかる。
【0048】
実施例3
実施例2と同様にして、クラフトパルプ漂白工程におけるD1段24に、パルプスラリーに対して5mg/リットルになるようにHEDPを添加し、D1段の抽出液中のシュウ酸イオン濃度を測定し、その経日変化を調べた。得られた結果について下記表2に示した。
【0049】
【表2】
Figure 0004295933
【0050】
表2の結果から、HEDPの添加によりD1段の抽出液中のシュウ酸イオン濃度が増加し、クラフトパルプ漂白工程の装置内でのシュウ酸イオンを主成分とするスケールの付着が抑制されていることがわかる。なお、スケールの付着が防止されるメカニズムは明らかではないが、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩が、何らかの形で、スケール形成成分であるシュウ酸イオン、カルシウムイオンなどをマスキングして、スケールの生成を抑えているものと考えられる。
【0051】
比較例2
比較例1と同様にして、HEDPを添加しないで、クラフトパルプ漂白工程の操業を継続したところ、図1に示すディフューザー漂白装置2の抽出液4の流量が低下し、漂白効率が低下してきたため、その原因を調査したところ、ディフューザー漂白装置2の上部に設けられているスクリーンプレート1の表面にスケールが付着していることが判明した。
【0052】
そこで、クラフトパルプ漂白工程の操業を停止し、ディフューザー漂白装置内のパルプを排出した後、スケール洗浄液(アミノカルボン酸系キレート剤と水酸化ナトリウムとの混合液)をディフューザー漂白装置内に循環させて、スケールを溶解・除去して、抽出液4の流量の回復を図った。洗浄液量に対して、前記スケール洗浄剤は50g/リットル、水酸化ナトリウムは10g/リットルの濃度により洗浄を実施した。しかしながら、この方法では多量のスケール洗浄液と多大な洗浄時間を必要とする上に、洗浄終了後の廃液処理をも必要とした。なお、付着したスケールは、これを蛍光X線およびIRで分析したところ、シュウ酸カルシウムを主成分とするスケールであることがわかった。
【0053】
参考例1
クラフトパルプ漂白工程にECF漂白方法を採用する前後において、各漂白段のパルプスラリー中に含まれるシュウ酸イオン濃度を測定した。具体的には、図2のD0段21を、塩素ガスと二酸化塩素水を併用して処理するC/D段に代えたECF漂白方法を採用する前のクラフトパルプ漂白工程において、各漂白段の抽出液(脱水液)中のシュウ酸イオン濃度を測定した。E段22では水酸化ナトリウム、H段23では次亜塩素酸ナトリウム(ハイポ)、D1段24では二酸化塩素を処理薬剤としてそれぞれ用いた。得られた結果を下記表3に示した。また、C/D段をD0段21に代えてECF漂白方法を採用した後のクラフトパルプ漂白工程において、各漂白段の抽出液(脱水液)中のシュウ酸イオン濃度を測定した。得られた結果について下記表3に示した。
【0054】
【表3】
Figure 0004295933
【0055】
表3の結果から、ECF漂白方法を採用した後のクラフトパルプ漂白工程においては、ECF漂白方法を採用する前に比べて、各漂白段の抽出液中のシュウ酸イオン濃度が顕著に増加していることがわかる。したがって、ECF漂白方法を採用することにより、シュウ酸イオンを主成分とするスケールが形成されやすい状態になることがわかる。
【0056】
【発明の効果】
本発明のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法は、クラフトパルプ漂白工程中の各種装置に対するスケールの付着を防止するとともに、付着したスケールの除去、ならびに再スケール化の防止などに優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ECF漂白方法およびディフューザー漂白装置を用いたクラフトパルプ漂白工程の部分概略図である。
【図2】ECF漂白方法を採用したクラフトパルプ漂白工程の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 スクリーンプレート
2 ディフューザー漂白装置
3 洗浄水
4 抽出液(白水)
5 白水タンク
6 パルプスラリー
7 フィードタンク
8 中濃度ポンプ
9 漂白用薬剤
10 1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩
11 出口パルプスラリー
12 入口パルプスラリー
A 薬剤供給口
B パルプ供給口
C パルプ排出口
21 D0段
22 E段
23 H段
24 D1段
25 晒タンク
26 再選工程
27 沈降分離工程
28 完成チェスト
29 抄紙工程への配管

Claims (6)

  1. 無塩素漂白方法(ECF漂白方法)を用いたクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法において、該漂白工程のパルプスラリー中に、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加し、該漂白工程に用いられる、脱水洗浄設備であるディフューザー漂白装置の洗浄器内部およびスクリーンプレート上にスケールが付着するのを防止することを特徴とするクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法。
  2. 前記ECF漂白方法が、主として二酸化塩素を用いた漂白方法である請求項1記載のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法。
  3. 前記漂白工程前の未晒クラフトパルプスラリー中に硫酸を添加し、該パルプスラリーのpHを1〜6に調整する請求項1または2記載のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法。
  4. 前記スケールが、シュウ酸カルシウムを主成分とするものである請求項1〜3のいずれか1つに記載のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法。
  5. 前記ディフューザー漂白装置にはパルプスラリーを供給する中濃度ポンプが連結してなり、該中濃度ポンプのサクション側におけるパルプスラリー中に、前記1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を添加する請求項1に記載のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法。
  6. 前記1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸またはその塩を、前記パルプスラリーに対して1〜20mg/リットルの濃度となるように添加する請求項1に記載のクラフトパルプ漂白工程におけるスケール付着防止方法。
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