JP4356832B2 - 硬質表面の洗浄方法 - Google Patents
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Description
塩素・フロン系溶剤については、オゾン層を破壊するため使用が制限されている。代替フロンについては洗浄性能に課題が多い。又炭化水素系溶剤は臭気の問題や引火性を示すため、安全上大きな課題がある。
一般的な水系・準水系の洗浄プロセスでは、洗浄槽で洗浄された被洗物に付着した洗浄剤及び残存する僅かな汚垢を除去するために水が用いられる。このリンス廃液には、これらの洗浄剤成分が含まれるため、河川等に放流するにはこれらの成分を除去する必要がある。この水系・準水系洗浄剤を使用する際の最大の問題点は、このリンス廃液・排水の処理である。
沈降分離法については、盛んに研究がなされ、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、ポリ硫酸第二鉄等の無機凝集剤、ポリアクリルアミド等の高分子凝集剤等の優れた凝集剤が開発されてきている。
上記膜処理方法は、特にRO膜処理は除去率が高く効果的であるが、設備、ランニングコスト等に課題が多く、また、生物分解法も一般的に用いられるが、分解速度、設備規模、ランニングコスト等に難点がある。
更にまた、浮上分離方法として、加圧浮上については比較的設備がシンプルではあるが除去率に難点がある。
しかしながら、これらの文献等に記載される抽出法については、比較的高価な抽出物質をあえて排水に添加する必要が有り、ランニングコスト上問題が多い点に課題がある。
(1) アニオン界面活性剤と水難溶性有機溶剤を含む洗浄剤組成物を用いて硬質表面を有する被洗浄物を洗浄し、次いで、被洗浄物を水でリンスした後、該リンス廃液に多価金属塩を添加して混合・静置し、水難溶性有機溶剤を含む液体相と水相の二相に分離して、水相を排出する洗浄後処理工程を含むことを特徴とする硬質表面の洗浄後処理方法。
(2) リンス廃液を分離する際、W/O型乳化系を経由して水相を排出する上記(1)記載の硬質表面の洗浄後処理方法。
(3) 上記(1)又は(2)記載の洗浄後処理方法に用いる洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物が下記1)と、2)及び/又は3)とを含むことを特徴とする洗浄剤組成物。
1) アニオン界面活性剤のアニオンに対する対イオンが多価金属イオンのとき、該アニオン界面活性剤多価金属塩が油溶性又は油分散性となるアニオン界面活性剤。
2) 炭化水素系、エステル系、エーテル系、ケトン系から選ばれる少なくとも1つの水難溶性有機溶剤。
3) 下記一般式(I)で示される水難溶性グリコールエーテル系溶剤。
(5) 上記(1)又は(2)記載の洗浄後処理方法に用いる洗浄剤組成物であって、アニオン界面活性剤及び水難溶性有機溶剤を含有し、該洗浄剤組成物を水で10倍希釈した液に塩化カルシウム2000ppmを添加して混合後、25℃、24時間静置した際、水相と水難溶性有機溶剤を含む液体相のニ相に分離することを特徴とする洗浄剤組成物。
本発明の硬質表面の洗浄後処理方法は、アニオン界面活性剤と水難溶性有機溶剤を含む洗浄剤組成物を用いて硬質表面を有する被洗浄物を洗浄し、次いで、被洗浄物を水でリンスした後、該リンス廃液に多価金属塩を添加して混合・静置し、水難溶性有機溶剤を含む液体相と水相の二相に分離して、水相を排出する洗浄後処理工程を含むことを特徴とするものである。
本実施形態の洗浄後処理方法は、図1に示すように、(a)洗浄槽にアニオン界面活性剤と水難溶性有機溶剤を含む洗浄剤組成物を入れ、該洗浄槽に硬質表面を有する被洗浄物(被洗物)を洗浄する工程、(b)洗浄直後に予備リンス槽(以降、「溜リンス槽」と言う)を設け、少量の水で効率的に洗浄剤成分をリンス、除去する工程と、(c)溜リンス廃液を定期的、又は連続的に清浄な水に交換し、排出された溜リンス廃液に多価金属塩を加え、洗浄剤成分を分離する工程とを含む構成であり、(d)のオーバーフローリンス槽及び(c)の分離槽より排水されるリンス排水負荷を従来の1/10〜1/100に低減可能な洗浄方後処理方法であり、準水系・水系洗浄剤の環境負荷を低減するものである。
本発明方法に用いる洗浄剤組成物としては、下記(1)と、(2)及び/又は(3)とを含むものであることが必要である。
(1) アニオン界面活性剤のアニオンに対する対イオンが多価金属イオンのとき、該アニオン界面活性剤多価金属塩が油溶性又は油分散性となるアニオン界面活性剤。
(2) 炭化水素系、エステル系、エーテル系、ケトン系から選ばれる少なくとも1つの水難溶性有機溶剤。
(3) 下記一般式(I)で示される水難溶性グリコールエーテル系溶剤。
好ましいアニオン性界面活性剤としては、多価金属イオンと多価金属塩を形成して良好な液性を示すジアルキルスルホコハク酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤が好適である。
好ましくは、25℃における水への溶解度が3質量%(以下、質量%を「%」と略記する)以下、更に好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である水難溶性有機溶剤であることが望ましい。
具体的な炭化水素系容剤としては、例えば、n−オクタン、n−デカン、n−ドデカン、ドデセン、テトラデセン、イソパラフィンが挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸ベンジル、2−エチルヘキシルアセテート、ステアリン酸イソプロピルエステル、マロン酸ジエチル等が挙げられる。エーテル系溶剤としては、例えば、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル系溶剤が挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、アセトフェノンが挙げられる。
好ましくは、25℃における水への溶解度が5%以下、更に好ましくは、2%以下、特に好ましくは、1%以下である水難溶性グリコールエーテルであることが望ましい。
具体的には、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルが挙げられる。
(1)アニオン界面活性剤 :3〜40%
(2)水難溶性有機溶剤 :0〜80%
(3)水難溶性グリコールエーテル :0〜80%
(4)水 :0〜60%
含有することが好ましい〔但し、上記(2)、(3)のどちらか一方は0%ではない。〕。
更に、分離性を高めるためそれぞれ、
(1)アニオン界面活性剤 :5〜30%
(2)水難溶性有機溶剤 :0〜70%
(3)水難溶性グリコールエーテル :10〜50%
(4)水 :5〜60%
含有することが更に好ましい。
また、本発明の洗浄剤組成物は、均一透明に一体化していることが安定した洗浄性・リンス性を得るためにより好ましい。更に、本発明の効果発現に影響を及ぼさない範囲内で、非イオン界面活性剤、有機キレート剤、防腐剤、アルカノールアミン等の有機アルカリ剤、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ剤を含有することができる。
金属加工部品としては、電子機器等に用いられる、ビデオヘッド、ハードディスク駆動部品、複写機駆動部品、CRTの電子銃部品等の加工時に使用する加工油等が本発明の洗浄対象となる。
また、光学部品としては、カメラレンズ、CD、CD−R、DVDのピックアップレンズ、眼鏡レンズ、プリズム等の加工時に付着する固定剤(ピッチ、ワックス)、研磨剤等が本発明の洗浄対象となる。
更に、ガラス版加工部品としては液晶パネル、PDPパネル、HDDガラス基板等の加工時に付着する液晶、研磨剤、異物等が本発明の洗浄対象となる。また、樹脂加工品としては、樹脂レンズ、電子機器の駆動部に使用する歯車、治具等に付着しているレンズ切りくず、潤滑油等が本発明の洗浄対象となる。
本実施形態では、(d)のオーバーフローリンス槽の前に、溜リンス槽を設置し、溜リンス槽で大部分の洗浄剤成分を除去し、オーバーフローリンス槽排水中への洗浄剤成分の持ち出しを大幅に削減するものである。
本発明で使用する上記多価金属塩としては、例えば、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム等が適用可能である。なお、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアミジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート系のカチオン系高分子凝集剤を適宜併用することも可能である。
以上、バッチ式リンス廃液処理について具体的に本発明の洗浄後処理方法について説明したが、図1に示すオーバーフローリンス排水の一部を連続的に溜リンス液に供給し、洗浄装置を連続稼働させることも可能である。
なお、洗浄剤組成物を水で10倍希釈後、塩化カルシウム2000ppmを添加し、混合後、25℃にて、24時間静置して、水相と水難溶性有機溶剤を含む液体相のニ相に分離するか否かを指標として、該洗浄剤組成物が本プロセスに適合するか否かを見極めることもできる。
また、本発明の洗浄剤組成物は、従来から用いられているアニオン界面活性剤、溶剤を含有する洗浄剤組成物に較べて、液体状態で相分離するため分離が容易であり、分離速度が速く容易に分離可能である。また、水難溶性有機溶剤の分離抽出率が高く、水相への混入率が極めて少ないので、排水への負荷が少なく環境にやさしいものとなる。
下記表1に示す組成の各洗浄剤組成物(全量100質量%)を調製した。
得られた各洗浄剤組成物を用いて、下記方法により硬質表面を有する被洗浄物である液晶パネル、光学レンズ、精密アルミ部品の洗浄試験を行い、下記方法により洗浄性、リンス性、分離性状・分離率を評価等した。
これらの結果を下記表1に示す。
図1に示す超音波洗浄プロセスで下記部品の洗浄を繰り返し行った。
液晶パネル:パネルギャップ部、表面に液晶の付着したパネル
光学レンズ:表面にワックス系の固定剤が付着した光学レンズ
精密アルミ部品:切削油が付着したビデオヘッド(閉じたネジ孔のある精密部品)
イ)洗浄性の評価
液晶パネル:5分洗浄・5分溜リンス後・5分オーバーフローリンス後、80℃で30分乾燥し、ギャップ部分、表面部分に残留した液晶(汚れ)を偏光顕微鏡で観察し下記評価基準で洗浄性を評価した。
光学レンズ:5分洗浄・5分溜リンス後・5分オーバーフローリンス後、80℃で30分乾燥し、表面部分に残留したワックス(汚れ)を目視により下記評価基準で洗浄性を評価した。
精密アルミ部品:5分洗浄・5分溜リンス後・5分オーバーフローリンス後、80℃で30分乾燥し、閉じたネジ孔に残留した切削油を偏光顕微鏡で観察し、下記評価基準で洗浄性を評価した。
評価基準:
○:汚れが認められない。
△:若干の汚れが認められる。
×:多量の汚れが認められる。
予め四塩化炭素で洗浄した液晶パネル、光学レンズ、精密アルミ部品を10個各々用意し、5分洗浄・5分溜リンス後・5分オーバーフローリンス後、80℃で30分乾燥させる。各部品別に、10個の部品を80℃、100ccの水で10分間超音波処理した後、この100ccの残留洗浄剤抽出水について、TOC(有機炭素:JIS K01202に準拠した。使用機器:島津製作所社製 TOC−500、以下同様)により残留洗浄剤を定量し、リンス性を下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:TOCが10ppm未満。
△:TOCが10〜50ppm。
×:TOCが50ppm超過。
i)通常分離(O/W)
図1に示す溜リンス槽水中の洗浄剤成分及び汚れ成分によるTOCが約5%に上昇するまで洗浄を繰り返し、溜リンス廃液に多価金属塩としてCaC12を0.2%添加・攪拌し25℃で30分静置分離を行った。
分離してきた水難溶性有機溶剤及び汚れ成分等(切削油、液晶、ワックス)の混合物を含む上層の相分離性状(液体、フロック等)を確認すると共に、下層の分離水相のTOCを測定し、下記計算式により分離率を算出した。
分離率(%)=100×(分離前リンス廃液TOC−分離水相TOC)/分離前リンス排液TOC)
上記i)の分離操作を繰り返し行い、分離水相は廃棄し水難溶性有機溶剤及び汚れ成分等(切削油、液晶、ワックス)の混合物の相を700cc作成した。そこに、TOC5%に上昇した溜リンス廃液にCaC12を0.2%添加・攪拌した溜リンス廃液300ccを流し込む。弱く攪拌し、W/O型乳化系を形成させたのち静置分離を行い、上記i)と同様に分離率を算出した。
Claims (5)
- アニオン界面活性剤と水難溶性有機溶剤を含む洗浄剤組成物を用いて硬質表面を有する被洗浄物を洗浄し、次いで、被洗浄物を水でリンスした後、該リンス廃液に多価金属塩を添加して混合・静置し、水難溶性有機溶剤を含む液体相と水相の二相に分離して、水相を排出する洗浄後処理工程を含むことを特徴とする硬質表面の洗浄後処理方法。
- リンス廃液を分離する際、W/O型乳化系を経由して水相を排出する請求項1記載の硬質表面の洗浄後処理方法。
- 更に、水を5〜70質量%含む請求項3記載の洗浄剤組成物。
- 請求項1又は2記載の洗浄後処理方法に用いる洗浄剤組成物であって、アニオン界面活性剤及び水難溶性有機溶剤を含有し、該洗浄剤組成物を水で10倍希釈した液に塩化カルシウム2000ppmを添加して混合後、25℃、24時間静置した際、水相と水難溶性有機溶剤を含む液体相のニ相に分離することを特徴とする洗浄剤組成物。
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