JP4356116B2 - 高周波回路デバイス,高周波モジュール及び通信装置 - Google Patents

高周波回路デバイス,高周波モジュール及び通信装置 Download PDF

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Description

この発明は、マイクロ波やミリ波等の高周波信号を伝送するスロット線路を用いた高周波回路デバイス,高周波モジュール及び通信装置に関するものである。
半導体素子等の電気素子を接続することが容易であることや特性インピーダンスを高くすることが容易であること等の理由で、高周波回路デバイスにスロット線路が多用されるようになった。特に、近年では、伝送損失の低減化の観点から誘電体基板の表裏両面に対称的にスロット線路を形成した両面スロット構造タイプのもの(これをPDTL(Planer Dielectric Transmission Line)という)を高周波回路デバイスに使用するようになってきた(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特開平08−265007号公報 特開2004−007349号公報
しかし、上記PDTLタイプの線路を用いた従来の高周波回路デバイスでは、次のような問題がある。
図22は、従来の高周波回路デバイスの問題点を説明するための概略断面図である。
図22(a)に示すように、PDTL線路では、略同一形状のスロット線路111,112が誘電体基板100の両面に形成され、同一の高周波信号が両スロット線路111,112に送られる。
したがって、スロット線路111を伝搬する高周波信号とスロット線路112を伝搬する高周波信号とに位相差が生じない場合には、図22(a)に示すように、両高周波信号によって生じる電界E1,E2が同方向を向くので、誘電体基板100の上下間に電位差は生じない。つまり、かかる場合には、不要波が誘電体基板100内に発生せず、無用な電力損失や周辺機器との不要結合は生じない。
しかしながら、高周波回路デバイスでは、図22(b)に示すように、FET等の電気素子110をスロット線路111上に取り付けるため、スロット線路111,112との間の対称性が崩れ、スロット線路111を伝搬する高周波信号とスロット線路112を伝搬する高周波信号とに位相差が生じてしまう。この結果、図22(b)に示すように、両高周波信号によって生じる電界E1,E2が互いに逆方向を向いて、誘電体基板100の上下間に電位差が生じてしまう。つまり、かかる場合には、誘電体基板100内に不要な電界Eが発生し、無用な電力損失が生じると共にこの電界Eによる不要波が周辺機器と不要結合して、周辺機器の動作特性を劣化させるおそれがある。
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、不要波の発生を防止して、電力損失と不要結合との回避を図った高周波回路デバイス,高周波モジュール及び通信装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、基板の表面に対向配置された電極間の間隔線路で成る第1スロット線路と、基板の裏面に対向配置された電極間の間隔線路で成り且つ第1スロット線路と対向する第2スロット線路と、第1スロット線路に介設された電気素子とを備える高周波回路デバイスであって、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整するための位相調整部を、第2スロット線路に設けた構成とする。
かかる構成により、同一の高周波信号を第1スロット線路と第2スロット線路とに伝搬させることができる。そして、第1スロット線路を伝搬する高周波信号は、第1スロット線路に介設された電気素子によって所定の処理がなされる。ところで、電気素子が第1スロット線路に介設されていることにより、第1スロット線路を伝搬する高周波信号と第2スロット線路を伝搬する高周波信号とに位相差が生じる場合がある。かかる場合には、第2スロット線路に設けられた位相調整部を用いて、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整することができる。これにより、位相差によって基板内に生じる不要波を抑圧することができる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の高周波回路デバイスにおいて、位相調整部は、第2スロット線路から分岐するスタブである構成とした。
かかる構成により、第2スロット線路から分岐するスタブの長さや形状を調整することで、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整することができる。
請求項3の発明は、請求項2に記載の高周波回路デバイスにおいて、スタブは、所定長さの直状ショートスタブである構成とした。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の高周波回路デバイスにおいて、位相調整部は、第2スロット線路を跨ぐように両電極間に接続された所定長さの電極ラインである構成とした。
かかる構成により、電極ラインの長さを調整することで、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整することができる。
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の高周波回路デバイスにおいて、位相調整部は、第2スロット線路の部位であって、電気素子の介設位置の略真裏に位置する部位に設けた構成とする。
請求項6の発明に係る高周波モジュールは、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の高周波回路デバイスを備える構成とした。
請求項7の発明に係る通信装置は、請求項6に記載の高周波モジュールを備える構成とした。
請求項8の発明は、請求項7に記載の通信装置において、通信装置は、レーダ装置である構成とした。
以上詳しく説明したように、請求項1〜請求項9の発明に係る高周波回路デバイスによれば、位相調整部により、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整して、基板内に生じる不要波を抑圧することができるので、不要波の発生を防止して電力損失を低減させることができると共に、不要波が基板外部に漏洩して、周囲の外部機器と不要結合することを防止することができる。この結果、高周波回路デバイス自体の特性改善、設計性改善、特性バラツキの軽減を図ることができる。
特に、請求項2の発明に係る高周波回路デバイスによれば、スタブの長さや形状を調整することで、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整することができるので、不要波の発生を抑圧することができるだけでなく、第2スロット線路の伝送特牲の設計性を向上させることができる。
また、請求項4の発明に係る高周波回路デバイスによれば、大きな配置スペースが必要なスタブを用いずに、第2スロット線路を跨ぐ電極ラインによって、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相調整をすることができるので、高周波回路デバイス自体の小型化を実現することができる。また、第2スロット線路側のアイソレーションが向上するので、デバイスの特性改善と設計性改善の効果を得ることができる。
また、請求項6〜請求項8の発明によれば、高周波モジュールや通信装置の動作特性を向上させることができると共に、特性のバラツキを軽減することができる。また、これらの機器の設計性も改善させることができる。
この発明の第1実施例に係る高周波回路デバイスを示す斜視図である。 図1に示す高周波回路デバイスの分解斜視図である。 高周波回路デバイスの表面側を示す平面図である。 高周波回路デバイスの裏面側を示す平面図である。 スタブを有しない高周波回路デバイスの利得を示す線図である。 スタブの長さに対する漏洩損失の見積もりの計算値を示す線図である。 400μmの長さのスタブを有する高周波回路デバイスの利得を示す線図である。 この発明の第2実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。 この発明の第3実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。 この発明の第4実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。 この実施例の高周波回路デバイスの裏面側を示す平面図である。 電極ラインを有する高周波回路デバイスの利得を示す線図である。 この発明の第5実施例に係る高周波回路デバイスの要部である裏面側を示す平面図である。 スタブの長さに対する漏洩損失の見積もりの計算値を示す線図である。 この発明の第6実施例に係る高周波発振回路の要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。 この発明の第7実施例に係る高周波モジュールを示す分解斜視図である。 高周波モジュールのブロック図である。 上記第7実施例に係る高周波モジュールを備えた通信機の要部を示す斜視図である。 通信機のブロック図である。 一変形例に係る高周波回路デバイスの裏面側を示す平面図である。 他の変形例に係る高周波回路デバイスの裏面側を示す平面図である。 従来の高周波回路デバイスの問題点を説明するための概略断面図である。
符号の説明
1…高周波回路デバイス、 2…誘電体基板、 3…第1スロット線路、 3a,4a…アイソレーション用のスタブ、 4…第2スロット線路、 5…FET、 6,61,62…位相調整用のスタブ、 7…高周波発振回路、 8…高周波モジュール、 9…BBチップ、 31,32,41,42…電極、 32a…DC電極、 63…電極ライン、 70…誘電体共振器、 71,72 DCカット線路、 81〜85…分割基板、 81A…アンテナ回路、 82A…共用器回路、 83A…送信回路、 84A…受信回路、 85A…発振回路、 86…パッケージ、 87…蓋、 88…無給電アンテナ、 89…閉塞板、 D…ドレイン電極、 G…ゲート電極、 M1,M2…高周波信号、 S…ソース電極。
以下、この発明の最良の形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の第1実施例に係る高周波回路デバイスを示す斜視図であり、図2は、図1に示す高周波回路デバイスの分解斜視図であり、図3は、高周波回路デバイスの表面側を示す平面図であり、図4は、高周波回路デバイスの裏面側を示す平面図である。
図1に示すように、この実施例の高周波回路デバイス1は、増幅回路デバイスであり、誘電体基板2の両面にそれぞれ設けられた第1スロット線路3及び第2スロット線路4と、電気素子としての電界効果トランジスタ素子(以下「FET」と記す)5とを備えている。
第1スロット線路3は、誘電体基板2の表面2aに対向配置された1対の電極31,32間の間隔線路で成る。具体的には、図2にも示すように、電極31,32を間隔Wで誘電体基板2上に形成することにより、幅Wの第1スロット線路3を得ている。そして、スタブ3aを電極31であって且つ後述するFET5の実装部分に凹設している。このスタブ3aは、アイソレーション用のスタブであり、その長さは第1スロット線路3に伝搬させる高周波信号M1の波長の1/4に設定されている。
一方、第2スロット線路4は、誘電体基板2の裏面2bに対向配置された1対の電極41,42間の間隔線路で成る。この第2スロット線路4は、第1スロット線路3と対向する。すなわち、電極41,42を間隔Wで誘電体基板2の下に形成し、且つ第1スロット線路3のアイソレーション用スタブ3aと同長同形のスタブ4aをスタブ3aと対向する部位に形成している。
FET5は、増幅素子等の能動素子として機能する素子であり、図1に示すように、第1スロット線路3に介設されている。具体的には、FET5は、裏面にドレイン電極Dとゲート電極Gとソース電極Sとを有し、ソース電極Sを電極32に接続させ、ドレイン電極D及びゲート電極Gをアイソレーション用スタブ3aを跨ぐように電極31に接続させた状態で、実装されている。
このようにFET5を第1スロット線路3に介設することで、第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1と第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2とに位相差が生じるおそれがあるため、この実施例では、位相調整部としてのスタブ6を第2スロット線路4に設けている。これにより、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相が第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1の位相と略同位相になるように調整される。
具体的には、スタブ6は、図2に示すように、長さLの直状ショートスタブであり、第2スロット線路4のスタブ4aの位置からスタブ4aとは逆側に分岐している。これにより、スタブ6は、FET5の略真裏に位置するので、スタブ6の長さLを変化させることで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整することができる。
次に、この実施例の高周波回路デバイスが示す作用及び効果について説明する。
まず、図1,図3及び図4に示すように、同一の高周波信号M1,M2を高周波回路デバイス1の第1スロット線路3と第2スロット線路4とに伝搬させると、第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1が、第1スロット線路3に介設されたFET5によって増幅処理がなされて、出力される。このとき、FET5が第1スロット線路3に介設されていることから、第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1の位相が第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相と異なるおそれがある。しかし、この実施例では、スタブ6の長さLを変化させて、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整し、第1スロット線路3の高周波信号M1の位相と同位相にしているので、位相差は生じない。この結果、誘電体基板2内に生じる不要波が抑圧されるので、不要波の発生による電力損失や周囲の外部機器との不要結合を防止することができる。
発明者等はかかる効果を確認すべく次のようなシミュレーションを行った。
このシミュレーションでは、図1に示す高周波回路デバイス1において、誘電体基板2として、誘電率24の誘電体を長さ(第1スロット線路3の長さ方向)8.03mmで幅(第1スロット線路3の幅方向)6.60mmの矩形状に形成した基板を用い、第1スロット線路3の間隔を10μmに設定すると共に第2スロット線路4の間隔を100μmに設定した。また、FET5として、GS型FETを使用した。
このシミュレーションでは、まず、高周波回路デバイス1において、スタブ6の長さLを「0mm」に設定した。つまり、スタブ6を有しない高周波回路デバイスについて、周波数が54GHz〜66GHzの範囲の高周波信号を伝搬させて、その利得を計算させた。
図5は、スタブを有しない高周波回路デバイスの利得を示す線図である。
図5の利得曲線S1で示すように、スタブ6を有しない高周波回路デバイスでは、54GHz〜66GHzの範囲で、点p,p′,p1で示すような周期的なリップルが発生している。具体的には、点p−p間の周期と点p′−p′間の周期が共に約3.7GHzであり、その波長は誘電体基板2の長さに対応する。また、点p1−p1間の周期が約4.5GHzであり、その波長は誘電体基板2の幅に対応する。すなわち、このことは、誘電体基板2内に不要波が発生し、この不要波が誘電体基板2で共振することによって、上記のようなリップルが発生したと推定される。通常、ミリ波帯では、60GHzを中心周波数として、59GHz〜61GHzの範囲内の高周波信号を使用するが、スタブ6を用いない高周波回路デバイスでは、利得曲線S1に示すように、この範囲における利得の差が11.9dBとなり、動作特性が著しく悪い。
次に、高周波回路デバイス1において、スタブ6の長さLを所定長さに設定し、周波数が54GHz〜66GHzの範囲の高周波信号を伝搬させて、その利得を計算させた。
このとき、長さLを0μm〜800μmの範囲のスタブ6について、スタブ6の長さLに対する漏洩損失の見積もり(Q換算値)を計算した。図6は、スタブ6の長さに対する漏洩損失の見積もりの計算値を示す線図であり、曲線S1がこのシミュレーションに用いた高周波回路デバイスの計算値である。
図6の曲線S1が示すように、計算値を最も大きくするスタブ6の長さLは400μmであった。したがって、スタブ6の長さLを400μmに設定して、高周波回路デバイスの利得を計算させた。
図7は、400μmの長さのスタブを有する高周波回路デバイスの利得を示す線図である。
図7の利得曲線S2で示すように、このシミュレーションにおいても、スタブ6を有しない場合と同様に、54GHz〜66GHzの範囲で、点p,p′,p1で示すような周期的なリップルが発生している。しかし、59GHz〜61GHzの範囲内の高周波信号を使用する場合において、このスタブ6を有する高周波回路デバイスでは、この範囲における利得の差が5.6dBに圧縮されており、不要波が大きく抑圧されている。
次に、この発明の第2実施例について説明する。
図8は、この発明の第2実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。
図8に示すように、この実施例の高周波回路デバイス1は、位相調整部としてのスタブの形状を上記第1実施例のスタブ6の形状と異ならしめた。
すなわち、スタブ4aの位置に円形状のショートスタブ61を形成した。そして、ショートスタブ61の直径の大きさを調整することで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整するようにしている。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
なお、この実施例の変形例として、スタブ4aの位置に楕円形状のショートスタブを形成したものを提示することができる。そして、ショートスタブの長軸や短軸の大きさを調整することで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整する。
次に、この発明の第3実施例について説明する。
図9は、この発明の第3実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。
図9に示すように、この実施例の高周波回路デバイス1は、位相調整部としてのスタブの形状を上記第1及び第2実施例のスタブ6,61の形状と異ならしめた。
すなわち、スタブ4aの位置にテーパ状のショートスタブ62を形成した。このショートスタブ62は、第2スロット線路4との分岐部が幅狭に設定され、先端部側に向かって拡開するように設定されている。そして、ショートスタブ62の拡開の角度や第2スロット線路4からの突出長さ等を調整することで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、その記載は省略する。
なお、この実施例の変形例として、スタブ4aの位置に扇形状のショートスタブを形成したものを提示することができる。
次に、この発明の第4実施例について説明する。
図10は、この発明の第4実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図であり、図11は、この実施例の高周波回路デバイスの裏面側を示す平面図である。
図10及び図11に示すように、この実施例の高周波回路デバイス1では、電極ライン63を位相調整部とした点が、上記第1ないし第3実施例と異なる。
すなわち、所定長の電極ライン63を第2スロット線路4を跨ぐように電極41,42間に接続した。具体的には、橋状の電極ライン63を、第2スロット線路4におけるFET5の真裏の個所であって且つFET5のドレイン電極Dとソース電極Sに対応する個所に渡して、当該個所を短絡した。
かかる構成により、電極ライン63の長さを調整することで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1の位相と略同位相に調整することができる。この結果、不要波の発生を抑圧することができる。
発明者等はかかる効果を確認すべく上記第1実施例の場合と略同様のシミュレーションを行った。
図12は、電極ラインを有する高周波回路デバイスの利得を示す線図である。
図12の利得曲線S3で示すように、このシミュレーションにおいても、54GHz〜66GHzの範囲で、点p,p′,p1で示すような周期的なリップルが発生している。しかし、59GHz〜61GHzの範囲内の高周波信号を使用する場合において、この電極ライン63を有する高周波回路デバイスでは、この範囲における利得の差が3.1dBにも圧縮されており、上記第1実施例に比べて、不要波が極めて大きく抑圧されている。
また、上記第1ないし第3実施例では、比較的大きな配置スペースが必要なスタブ6,61,62を用いて、位相調整する構成としたが、この実施例では、第2スロット線路4を跨ぐ電極ライン63によって、位相調整をする構成としたので、高周波回路デバイス1自体の小型化を実現することができる。また、第2スロット線路4側のアイソレーションが向上するので、デバイスの特性改善と設計性改善の効果を得ることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、その記載は省略する。
次に、この発明の第5実施例について説明する。
図13は、この発明の第5実施例に係る高周波回路デバイスの要部である裏面側を示す平面図である。また、図14は、スタブの長さに対する漏洩損失の見積もりの計算値を示す線図である。なお、図14において、縦軸は挿入損失の逆数であり、曲線S2がこの実施例の高周波回路デバイスにおける計算値である。
この実施例は、第2スロット線路4に電極ライン63の他にスタブ6も設けた点が、上記第4実施例と異なる。
すなわち、図13に示すように、所定長の電極ライン63を第2スロット線路4を跨ぐように電極41,42間に接続すると共に、スタブ6をスタブ4aの位置に形成した。具体的には、第2スロット線路4におけるFET5の真裏の個所であって、FET5のドレイン電極Dとソース電極Sに対応する個所を電極ライン63で短絡すると共に、スタブ6によって高周波信号M2を反射させる構成とした。
かかる構成においては、図14の曲線S2に示すように、漏洩損失の計算値を最も小さくするスタブ6の長さLは約300μmであった。
その他の構成、作用及び効果は、上記第4実施例と同様であるので、その記載は省略する。
なお、この実施例の変形例として、直状のスタブ6の代わりに、円形状や楕円形状のショートスタブを用いたり、テーパ形状や扇形のショートスタブを用いたものを提示することができる。
次に、この発明の第6実施例について説明する。
図15は、この発明の第6実施例に係る高周波発振回路の要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。
この実施例は、高周波回路デバイスを高周波発振回路に適用した例を示す。
高周波発振回路7は、図15に示すように、誘電体共振器70で生成した所定共振周波数の高周波信号を第1及び第2スロット線路3,4に伝送させ、FET5で増幅して出力する回路である。
具体的には、誘電体基板2の表面側の電極32に、DCカット線路71,72を形成して、DC電極32aを画成している。そして、FET5のゲート電極GをDC電極32aに接続し、ドレイン電極DをDCカット線路71の右側に位置する電極32に接続すると共に、ソース電極Sを電極31に接続している。一方、誘電体基板2裏面側の第2スロット線路4にも、DCカット線路71′,72′が形成され、DCカット線路71′の位置に位相調整用の直状スタブ6が突設されている。
かかる構成により、高周波発振回路7の誘電体基板2内に生じる不要波を抑制して、高周波発振回路の動作特性を向上させることができると共に、特性のバラツキ軽減することができる。また、これらの回路の設計性も改善させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
次に、この発明の第7実施例について説明する。
図16は、この発明の第7実施例に係る高周波モジュールを示す分解斜視図であり、図17は、高周波モジュールのブロック図である。
図16に示すように、この実施例の高周波モジュール8は、各回路が形成された分割基板81〜85と、これらの分割基板81〜85を収納するパッケージ86とを有して成る。
各分割基板81〜85は、PDTL構造の回路基板であり、各分割基板81〜85には、回路ブロックとして、アンテナ回路81A、共用器回路82A、送信回路83A、受信回路84A、発振回路85Aがそれぞれ形成されている。
図17に示すように、分割基板81に形成されたアンテナ回路81Aは、送信電波を送信し及び受信電波を受信するブロックであり、放射スロット81aによって構成される。また、分割基板82に形成された共用器回路82Aは、アンテナ回路81Aに接続されてアンテナ共用器をなすブロックであり、共振器82a等で構成される。分割基板83に形成された送信回路83Aは、共用器回路82Aに接続されアンテナ回路81Aに向けて送信信号を出力するブロックであり、ミキサ回路としての混合器83aと、帯域通過フィルタ83bと、高周波増幅回路としての電力増幅器83cとで構成されている。分割基板84に形成された受信回路84Aは、共用器回路82Aに接続されアンテナ回路81Aによって受信した受信信号を入力するブロックであり、高周波増幅回路としての低雑音増幅器84aと、帯域通過フィルタ84bと、ミキサ回路としての混合器84cとで構成されている。分割基板85に形成された発振回路85Aは、送信回路83Aと受信回路84Aとに接続され搬送波となる所定周波数の信号を発振するブロックであり、上記第6実施例の高周波発振器と同構造である。
一方、図16において、パッケージ86は、導電性金属材料のメッキ処理(メタライズ)が施された樹脂パッケージであり、上記分割基板81〜85がその内部に収納される。そして、パッケージ86の上に取り付けられる蓋87は、その中央部に開口87aを有し、この開口87a内に、無給電アンテナ88を有した電磁波透過可能な閉塞板89が取り付けられている。これにより、無給電アンテナ88が分割基板81上の放射スロット81aと対向する。
なお、図16及び図17において、符号86aは、送信回路83Aに中間周波信号を入力するための入力端子であり、符号86bは、受信回路84Aから中間周波信号を出力するための出力端子である。
なお、この第7実施例においては、発振回路85Aに第6実施例の高周波発振回路を適用した。すなわち、発振回路85Aの分割基板85の裏側に位相調整用のスタブ6を設けたが、混合器83aと電力増幅器83cを有しFETを介設する必要がある送信回路83Aの分割基板83や、低雑音増幅器84aと混合器84cとを有しFETを介設する必要がある受信回路84Aの分割基板84にも、位相調整用のスタブ6を設けて、これらの回路を伝搬する高周波信号の位相を合わせることが好ましい。
その他の構成、作用及び効果は上記第6実施例と同様であるので、その記載は省略する。
次に、この発明の第8実施例について説明する。
図18は、上記第7実施例に係る高周波モジュールを備えた通信機の要部を示す斜視図であり、図19は、通信機のブロック図である。
図18において、符号90は基板であり、上記第7実施例の高周波モジュール8とBB(ベースバンド)チップ9とがこの基板90に実装されている。
かかる構成により、BBチップ9がBB部として機能し、BBチップ9で変調された中間周波数のベースバンド信号が、出力端子91から入力端子86aを介して高周波モジュール8(RF部として機能する)に入力される。すると、中間周波数のベースバンド信号が送信回路83Aで所定の高周波に変換され、無給電アンテナ88から電波として送信される。また、無給電アンテナ88で受信され、受信回路84Aで中間周波数に変換された受信信号は、出力端子86bからBBチップ9の入力端子92に出力される。すると、受信信号がBBチップ9において所定のベースバンド信号に復調される。
このように上記実施例の高周波モジュール8を用いることにより、動作特性に対する信頼性の高く且つ特性のバラツキの少ない通信機を提供することができる。また、これらの機器の設計性も改善させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第7実施例と同様であるので、その記載は省略する。
なお、この実施例では、高周波モジュール8とBBチップ9とで成る携帯電話等の通信機を例にして説明したが、BBチップ9の代わりに信号処理部を用いることにより、ミリ波帯の高周波信号を送受信するレーダ装置にも適用することができる。
なお、この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内において種々の変形や変更が可能である。
例えば、上記第1ないし第3実施例では、位相調整用のスタブ6,61,62を第2スロット線路4のアイソレーター用スタブ4aと同位置に形成したが、図20に示すように、スタブ6をスタブ4aから変位させて形成しても良い。同様に、上記第4及び第5実施例では、位相調整用の電極ライン63を第2スロット線路4のアイソレーター用スタブ4aと同位置に形成したが、図21に示すように、電極ライン63をスタブ4aから変位させて形成しても良いことは勿論である。
また、上記実施例では、第1スロット線路3と第2スロット線路4の各間隔Wを等しく設定したが、第1スロット線路3の幅を第2スロット線路4よりも小さくしたり、逆に大きくしたりして、第1及び第2スロット線路3,4の線幅を異ならしめても良い。
また、上記第6実施例では、この高周波回路デバイスを高周波発振回路に適用した例を示したが、第7実施例の高周波モジュールに適用された高周波増幅回路やミキサ回路にもこの発明の高周波回路デバイスを適用することができることは勿論である。

Claims (8)

  1. 基板の表面に対向配置された電極間の間隔線路で成る第1スロット線路と、当該基板の裏面に対向配置された電極間の間隔線路で成り且つ上記第1スロット線路と対向する第2スロット線路と、上記第1スロット線路に介設された電気素子とを備える高周波回路デバイスであって、
    上記第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を上記第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整するための位相調整部を、上記第2スロット線路に設けた、
    ことを特徴とする高周波回路デバイス。
  2. 請求項1に記載の高周波回路デバイスにおいて、
    上記位相調整部は、上記第2スロット線路から分岐するスタブである、
    ことを特徴とする高周波回路デバイス。
  3. 請求項2に記載の高周波回路デバイスにおいて、
    上記スタブは、所定長さの直状ショートスタブである、
    ことを特徴とする高周波回路デバイス。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の高周波回路デバイスにおいて、
    上記位相調整部は、上記第2スロット線路を跨ぐように両電極間に接続された所定長さの電極ラインである、
    ことを特徴とする高周波回路デバイス。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の高周波回路デバイスにおいて、
    上記位相調整部は、上記第2スロット線路の部位であって、上記電気素子の介設位置の略真裏に位置する部位に設けた、
    ことを特徴とする高周波回路デバイス。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の高周波回路デバイスを備える、
    ことを特徴とする高周波モジュール。
  7. 請求項6に記載の高周波モジュールを備える、
    ことを特徴とする通信装置。
  8. 請求項7に記載の通信装置において、
    当該通信装置は、レーダ装置である、
    ことを特徴とする通信装置。
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