JP4356116B2 - 高周波回路デバイス,高周波モジュール及び通信装置 - Google Patents
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Description
図22は、従来の高周波回路デバイスの問題点を説明するための概略断面図である。
図22(a)に示すように、PDTL線路では、略同一形状のスロット線路111,112が誘電体基板100の両面に形成され、同一の高周波信号が両スロット線路111,112に送られる。
したがって、スロット線路111を伝搬する高周波信号とスロット線路112を伝搬する高周波信号とに位相差が生じない場合には、図22(a)に示すように、両高周波信号によって生じる電界E1,E2が同方向を向くので、誘電体基板100の上下間に電位差は生じない。つまり、かかる場合には、不要波が誘電体基板100内に発生せず、無用な電力損失や周辺機器との不要結合は生じない。
しかしながら、高周波回路デバイスでは、図22(b)に示すように、FET等の電気素子110をスロット線路111上に取り付けるため、スロット線路111,112との間の対称性が崩れ、スロット線路111を伝搬する高周波信号とスロット線路112を伝搬する高周波信号とに位相差が生じてしまう。この結果、図22(b)に示すように、両高周波信号によって生じる電界E1,E2が互いに逆方向を向いて、誘電体基板100の上下間に電位差が生じてしまう。つまり、かかる場合には、誘電体基板100内に不要な電界Eが発生し、無用な電力損失が生じると共にこの電界Eによる不要波が周辺機器と不要結合して、周辺機器の動作特性を劣化させるおそれがある。
かかる構成により、同一の高周波信号を第1スロット線路と第2スロット線路とに伝搬させることができる。そして、第1スロット線路を伝搬する高周波信号は、第1スロット線路に介設された電気素子によって所定の処理がなされる。ところで、電気素子が第1スロット線路に介設されていることにより、第1スロット線路を伝搬する高周波信号と第2スロット線路を伝搬する高周波信号とに位相差が生じる場合がある。かかる場合には、第2スロット線路に設けられた位相調整部を用いて、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整することができる。これにより、位相差によって基板内に生じる不要波を抑圧することができる。
かかる構成により、第2スロット線路から分岐するスタブの長さや形状を調整することで、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整することができる。
かかる構成により、電極ラインの長さを調整することで、第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整することができる。
具体的には、スタブ6は、図2に示すように、長さLの直状ショートスタブであり、第2スロット線路4のスタブ4aの位置からスタブ4aとは逆側に分岐している。これにより、スタブ6は、FET5の略真裏に位置するので、スタブ6の長さLを変化させることで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整することができる。
まず、図1,図3及び図4に示すように、同一の高周波信号M1,M2を高周波回路デバイス1の第1スロット線路3と第2スロット線路4とに伝搬させると、第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1が、第1スロット線路3に介設されたFET5によって増幅処理がなされて、出力される。このとき、FET5が第1スロット線路3に介設されていることから、第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1の位相が第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相と異なるおそれがある。しかし、この実施例では、スタブ6の長さLを変化させて、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整し、第1スロット線路3の高周波信号M1の位相と同位相にしているので、位相差は生じない。この結果、誘電体基板2内に生じる不要波が抑圧されるので、不要波の発生による電力損失や周囲の外部機器との不要結合を防止することができる。
このシミュレーションでは、図1に示す高周波回路デバイス1において、誘電体基板2として、誘電率24の誘電体を長さ(第1スロット線路3の長さ方向)8.03mmで幅(第1スロット線路3の幅方向)6.60mmの矩形状に形成した基板を用い、第1スロット線路3の間隔を10μmに設定すると共に第2スロット線路4の間隔を100μmに設定した。また、FET5として、GS型FETを使用した。
図5は、スタブを有しない高周波回路デバイスの利得を示す線図である。
図5の利得曲線S1で示すように、スタブ6を有しない高周波回路デバイスでは、54GHz〜66GHzの範囲で、点p,p′,p1で示すような周期的なリップルが発生している。具体的には、点p−p間の周期と点p′−p′間の周期が共に約3.7GHzであり、その波長は誘電体基板2の長さに対応する。また、点p1−p1間の周期が約4.5GHzであり、その波長は誘電体基板2の幅に対応する。すなわち、このことは、誘電体基板2内に不要波が発生し、この不要波が誘電体基板2で共振することによって、上記のようなリップルが発生したと推定される。通常、ミリ波帯では、60GHzを中心周波数として、59GHz〜61GHzの範囲内の高周波信号を使用するが、スタブ6を用いない高周波回路デバイスでは、利得曲線S1に示すように、この範囲における利得の差が11.9dBとなり、動作特性が著しく悪い。
このとき、長さLを0μm〜800μmの範囲のスタブ6について、スタブ6の長さLに対する漏洩損失の見積もり(Q換算値)を計算した。図6は、スタブ6の長さに対する漏洩損失の見積もりの計算値を示す線図であり、曲線S1がこのシミュレーションに用いた高周波回路デバイスの計算値である。
図6の曲線S1が示すように、計算値を最も大きくするスタブ6の長さLは400μmであった。したがって、スタブ6の長さLを400μmに設定して、高周波回路デバイスの利得を計算させた。
図7は、400μmの長さのスタブを有する高周波回路デバイスの利得を示す線図である。
図7の利得曲線S2で示すように、このシミュレーションにおいても、スタブ6を有しない場合と同様に、54GHz〜66GHzの範囲で、点p,p′,p1で示すような周期的なリップルが発生している。しかし、59GHz〜61GHzの範囲内の高周波信号を使用する場合において、このスタブ6を有する高周波回路デバイスでは、この範囲における利得の差が5.6dBに圧縮されており、不要波が大きく抑圧されている。
図8は、この発明の第2実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。
図8に示すように、この実施例の高周波回路デバイス1は、位相調整部としてのスタブの形状を上記第1実施例のスタブ6の形状と異ならしめた。
すなわち、スタブ4aの位置に円形状のショートスタブ61を形成した。そして、ショートスタブ61の直径の大きさを調整することで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整するようにしている。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
図9は、この発明の第3実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。
図9に示すように、この実施例の高周波回路デバイス1は、位相調整部としてのスタブの形状を上記第1及び第2実施例のスタブ6,61の形状と異ならしめた。
すなわち、スタブ4aの位置にテーパ状のショートスタブ62を形成した。このショートスタブ62は、第2スロット線路4との分岐部が幅狭に設定され、先端部側に向かって拡開するように設定されている。そして、ショートスタブ62の拡開の角度や第2スロット線路4からの突出長さ等を調整することで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を調整することができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1及び第2実施例と同様であるので、その記載は省略する。
図10は、この発明の第4実施例に係る高周波回路デバイスの要部を示すために一部を分解して示す斜視図であり、図11は、この実施例の高周波回路デバイスの裏面側を示す平面図である。
すなわち、所定長の電極ライン63を第2スロット線路4を跨ぐように電極41,42間に接続した。具体的には、橋状の電極ライン63を、第2スロット線路4におけるFET5の真裏の個所であって且つFET5のドレイン電極Dとソース電極Sに対応する個所に渡して、当該個所を短絡した。
かかる構成により、電極ライン63の長さを調整することで、第2スロット線路4を伝搬する高周波信号M2の位相を第1スロット線路3を伝搬する高周波信号M1の位相と略同位相に調整することができる。この結果、不要波の発生を抑圧することができる。
図12は、電極ラインを有する高周波回路デバイスの利得を示す線図である。
図12の利得曲線S3で示すように、このシミュレーションにおいても、54GHz〜66GHzの範囲で、点p,p′,p1で示すような周期的なリップルが発生している。しかし、59GHz〜61GHzの範囲内の高周波信号を使用する場合において、この電極ライン63を有する高周波回路デバイスでは、この範囲における利得の差が3.1dBにも圧縮されており、上記第1実施例に比べて、不要波が極めて大きく抑圧されている。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1ないし第3実施例と同様であるので、その記載は省略する。
図13は、この発明の第5実施例に係る高周波回路デバイスの要部である裏面側を示す平面図である。また、図14は、スタブの長さに対する漏洩損失の見積もりの計算値を示す線図である。なお、図14において、縦軸は挿入損失の逆数であり、曲線S2がこの実施例の高周波回路デバイスにおける計算値である。
この実施例は、第2スロット線路4に電極ライン63の他にスタブ6も設けた点が、上記第4実施例と異なる。
すなわち、図13に示すように、所定長の電極ライン63を第2スロット線路4を跨ぐように電極41,42間に接続すると共に、スタブ6をスタブ4aの位置に形成した。具体的には、第2スロット線路4におけるFET5の真裏の個所であって、FET5のドレイン電極Dとソース電極Sに対応する個所を電極ライン63で短絡すると共に、スタブ6によって高周波信号M2を反射させる構成とした。
かかる構成においては、図14の曲線S2に示すように、漏洩損失の計算値を最も小さくするスタブ6の長さLは約300μmであった。
その他の構成、作用及び効果は、上記第4実施例と同様であるので、その記載は省略する。
図15は、この発明の第6実施例に係る高周波発振回路の要部を示すために一部を分解して示す斜視図である。
この実施例は、高周波回路デバイスを高周波発振回路に適用した例を示す。
高周波発振回路7は、図15に示すように、誘電体共振器70で生成した所定共振周波数の高周波信号を第1及び第2スロット線路3,4に伝送させ、FET5で増幅して出力する回路である。
具体的には、誘電体基板2の表面側の電極32に、DCカット線路71,72を形成して、DC電極32aを画成している。そして、FET5のゲート電極GをDC電極32aに接続し、ドレイン電極DをDCカット線路71の右側に位置する電極32に接続すると共に、ソース電極Sを電極31に接続している。一方、誘電体基板2裏面側の第2スロット線路4にも、DCカット線路71′,72′が形成され、DCカット線路71′の位置に位相調整用の直状スタブ6が突設されている。
その他の構成、作用及び効果は、上記第1実施例と同様であるので、その記載は省略する。
図16は、この発明の第7実施例に係る高周波モジュールを示す分解斜視図であり、図17は、高周波モジュールのブロック図である。
図16に示すように、この実施例の高周波モジュール8は、各回路が形成された分割基板81〜85と、これらの分割基板81〜85を収納するパッケージ86とを有して成る。
なお、図16及び図17において、符号86aは、送信回路83Aに中間周波信号を入力するための入力端子であり、符号86bは、受信回路84Aから中間周波信号を出力するための出力端子である。
その他の構成、作用及び効果は上記第6実施例と同様であるので、その記載は省略する。
図18は、上記第7実施例に係る高周波モジュールを備えた通信機の要部を示す斜視図であり、図19は、通信機のブロック図である。
図18において、符号90は基板であり、上記第7実施例の高周波モジュール8とBB(ベースバンド)チップ9とがこの基板90に実装されている。
かかる構成により、BBチップ9がBB部として機能し、BBチップ9で変調された中間周波数のベースバンド信号が、出力端子91から入力端子86aを介して高周波モジュール8(RF部として機能する)に入力される。すると、中間周波数のベースバンド信号が送信回路83Aで所定の高周波に変換され、無給電アンテナ88から電波として送信される。また、無給電アンテナ88で受信され、受信回路84Aで中間周波数に変換された受信信号は、出力端子86bからBBチップ9の入力端子92に出力される。すると、受信信号がBBチップ9において所定のベースバンド信号に復調される。
このように上記実施例の高周波モジュール8を用いることにより、動作特性に対する信頼性の高く且つ特性のバラツキの少ない通信機を提供することができる。また、これらの機器の設計性も改善させることができる。
その他の構成、作用及び効果は、上記第7実施例と同様であるので、その記載は省略する。
例えば、上記第1ないし第3実施例では、位相調整用のスタブ6,61,62を第2スロット線路4のアイソレーター用スタブ4aと同位置に形成したが、図20に示すように、スタブ6をスタブ4aから変位させて形成しても良い。同様に、上記第4及び第5実施例では、位相調整用の電極ライン63を第2スロット線路4のアイソレーター用スタブ4aと同位置に形成したが、図21に示すように、電極ライン63をスタブ4aから変位させて形成しても良いことは勿論である。
また、上記実施例では、第1スロット線路3と第2スロット線路4の各間隔Wを等しく設定したが、第1スロット線路3の幅を第2スロット線路4よりも小さくしたり、逆に大きくしたりして、第1及び第2スロット線路3,4の線幅を異ならしめても良い。
また、上記第6実施例では、この高周波回路デバイスを高周波発振回路に適用した例を示したが、第7実施例の高周波モジュールに適用された高周波増幅回路やミキサ回路にもこの発明の高周波回路デバイスを適用することができることは勿論である。
Claims (8)
- 基板の表面に対向配置された電極間の間隔線路で成る第1スロット線路と、当該基板の裏面に対向配置された電極間の間隔線路で成り且つ上記第1スロット線路と対向する第2スロット線路と、上記第1スロット線路に介設された電気素子とを備える高周波回路デバイスであって、
上記第2スロット線路を伝搬する高周波信号の位相を上記第1スロット線路を伝搬する高周波信号の位相と略同位相に調整するための位相調整部を、上記第2スロット線路に設けた、
ことを特徴とする高周波回路デバイス。 - 請求項1に記載の高周波回路デバイスにおいて、
上記位相調整部は、上記第2スロット線路から分岐するスタブである、
ことを特徴とする高周波回路デバイス。 - 請求項2に記載の高周波回路デバイスにおいて、
上記スタブは、所定長さの直状ショートスタブである、
ことを特徴とする高周波回路デバイス。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の高周波回路デバイスにおいて、
上記位相調整部は、上記第2スロット線路を跨ぐように両電極間に接続された所定長さの電極ラインである、
ことを特徴とする高周波回路デバイス。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の高周波回路デバイスにおいて、
上記位相調整部は、上記第2スロット線路の部位であって、上記電気素子の介設位置の略真裏に位置する部位に設けた、
ことを特徴とする高周波回路デバイス。 - 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の高周波回路デバイスを備える、
ことを特徴とする高周波モジュール。 - 請求項6に記載の高周波モジュールを備える、
ことを特徴とする通信装置。 - 請求項7に記載の通信装置において、
当該通信装置は、レーダ装置である、
ことを特徴とする通信装置。
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