(第1の実施形態)
以下、本発明を適用してなる原子力プラントの第1の実施形態について図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる原子力プラントの概略構成を示す図である。図2は、本発明を適用してなる原子力プラントが有する酸化分解装置の概略構成を模式的に示す縦断面図である。図3は、本発明を適用してなる原子力プラントが有する酸化分解装置の横断面図である。
本実施形態の原子力プラントは、図1に示すように、沸騰水型原子力発電プラント(Boiling Water Reactor、以下BWRと略称する)であり、核燃料を内包する原子炉圧力容器1には、原子炉圧力容器1内で発生した蒸気が通流する主蒸気管路3が連結されている。主蒸気管路3には、原子炉圧力容器1側から順に、酸化分解装置5、バルブ7、高圧タービン9、湿分分離器11などが設けられ、主蒸気管路3の末端部は、低圧タービン13に連結されている。したがって、原子炉圧力容器1内で発生した蒸気は、酸化分解装置5で処理された後、高圧タービン9に送られ、高圧タービン9を出た蒸気は、その中に含まれる湿分を湿分分離器11で除去され、低圧タービン13に送られる。このように、原子炉圧力容器1内で発生した蒸気が高圧タービン9、低圧タービン13を駆動させ、その駆動力で図示していない発電機を駆動することにより発電を行う。
主蒸気管路3の酸化分解装置5とバルブ7との間の部分からは、タービンバイパス管路15が分岐している。タービンバイパス管路15には、バルブ17が設けられ、タービンバイパス管路15の末端部は、低圧タービン13からの蒸気を冷却して凝縮させ、水に戻す復水器19に連結されている。高圧タービン9及び低圧タービン13へ送られる蒸気の量は、バルブ17の開度を調整することによってタービンバイパス管路15を通流する蒸気の流量を調整することにより制御される。
タービンバイパス管路15のバルブ17の蒸気の通流方向に対して上流側の部分からは、抽気系管路21が分岐している。抽気系管路21には、バルブ23が設けられ、抽気系管路21の末端部は、復水器19に連結されている。また、抽気系管路21には、バルブ23よりも蒸気の通流方向に対して下流側の部分に、上流側から順に、第2給水加熱器25、第1給水加熱器27が設けられている。第1給水加熱器27と第2給水加熱器25は、復水器19で凝縮した水が通流する給水管路29にも、水の通流方向に対して上流側から第1給水加熱器27、第2給水加熱器25の順に設けられた状態となっており、抽気系管路21を通流する蒸気を使って、給水管路29を通流する復水器19で凝縮した水つまり系統水を加熱するものである。
前述のように、低圧タービン13を出た蒸気は、復水器19で冷却され水に戻される。この水は系統水として、所定の処理をして原子炉圧力容器1に給水管路29を介して戻される。このため、給水管路29には、系統水の通流方向に対して上流側から、低圧復水ポンプ31、空気抽出器33、系統水中に含まれる不溶解性固形分を除去する復水ろ過器35、系統水中に含まれるイオンを除去する復水脱塩器37、高圧復水ポンプ39、第1給水加熱器27、給水ポンプ41、第2給水加熱器25などが順次設けられており、給水管路29の末端部は、原子炉圧力容器1に連結されている。
したがって、復水器19で冷却され水に戻された系統水は、低圧復水ポンプ31により送液され、空気抽出器33を通った後、復水ろ過器35で系統水中に含まれる不溶解性固形分が除去され、さらに、復水脱塩器37で系統水中に含まれるイオンが除去される。復水脱塩器37を出た系統水は、高圧復水ポンプ39によって送液され、第1給水加熱器27で、抽気系管路21を通して主蒸気管路3から引き出された蒸気を使って加熱され、加熱された系統水は、給水ポンプ41によって送液され、第2給水加熱器25でも抽気系管路21を通して主蒸気管路3から引き出された蒸気を使って加熱され、原子炉圧力容器1に戻される。
原子炉圧力容器1内で発生した蒸気中に含まれる蒸気以外の気体は、復水器19から所定の処理をして排気管路43を介して排気される。このため、排気管路43には、気体の通流方向に対して上流側から、空気抽出器33、気体排気処理装置45、排気塔47などが順次設けられている。したがって、原子炉圧力容器1内で発生した蒸気中に含まれる蒸気以外の気体は、復水器19から空気抽出器33に送られて、そこで引き出され、気体排気処理装置45で気体に含まれる放射性物質が除去され、また、気体に含まれる水素が酸素との反応により水にすされ、無害化された後、排気塔47から放出される。
また、原子炉圧力容器1には、原子炉圧力容器1の下部と原子炉圧力容器1内のジェットポンプ49への入口部分との間で原子炉圧力容器1内の原子炉水を循環させる再循環系管路51が設けられている。再循環系管路51には、再循環ポンプ53が設けられている。したがって、原子炉水は、原子炉圧力容器1から再循環系管路51を介して、再循環ポンプ53により原子炉圧力容器1内の炉心に強制循環させられる。
また、再循環系管路51の再循環ポンプ53よりも原子炉水の通流方向に対して下流側の部分から、再循環系管路51を通流する原子炉水の一部を引き出し、給水管路29の第2給水加熱器25よりも下流側に合流させる原子炉水浄化系管路55が設置されている。原子炉水浄化系管路55には、再循環系管路51側から、原子炉水浄化系ポンプ57、原子炉水浄化系脱塩器59、還元性窒素化合物注入装置61が順次設けられており、さらに、原子炉水浄化系脱塩器59よりも原子炉水の通流方向に対して上流側と下流側で原子炉水を冷却及び加熱する原子炉水浄化系熱交換器63が設けられている。原子炉水浄化系管路55を通流する原子炉水には、還元性窒素化合物注入装置61によって、アンモニアやヒドラジンなどの酸化数が負の状態の窒素を含む化合物すなわち還元性窒素化合物が注入される。これにより、酸化数が負の還元性窒素化合物が、原子炉水浄化系管路55及び給水管路29を介して原子炉圧力容器1内に持ち込まれる。
ここで、本実施形態の主蒸気管路3に設けられた酸化分解装置5の構成について説明する。酸化分解装置5は、図2及び図3に示すように、主蒸気管路3よりも径が太く、内部に、横断面で見たときに格子状またはハニカム状に形成され、表面にアンモニアを吸着すると共に酸化分解するアンモニア吸着酸化触媒を担持させた間仕切り5aが設置されたアンモニア吸着反応管部5bを有している。さらに、本実施形態の酸化分解装置5は、アンモニア吸着反応管部5bを外側から所定の温度に加熱するための加熱ヒータ5cや、アンモニア吸着反応管部5bよりも蒸気の流れに対して上流側の主蒸気管路3の部分に酸素を供給するための酸素供給部を構成する酸素注入器5d、酸素注入器5dと主蒸気管路3との間に設けられた酸素注入管5e、そして、酸素注入管5eに設けられた酸素注入制御バルブ5fなどを有している。
アンモニア吸着反応管部5bの間仕切り5aには、アンモニア吸着酸化触媒として、アンモニアの吸着剤にアンモニアを酸化分解させる触媒を添着したものを使用している。アンモニアの吸着剤によって、アンモニアを酸化分解させる触媒付近のアンモニアの濃度が高められるため、触媒によるアンモニアの酸化分解を促進できる。アンモニアの吸着剤としては、ゼオライトや活性炭などが挙げられる。アンモニアを窒素、窒素酸化物にする触媒、つまり酸化分解する触媒としては、モリブデン、タングステン、バナジウム、ニッケル、白金、ルテニウムなどの金属、または、その酸化物などが挙げられる。
なお、主蒸気管路3内を通流する蒸気中には、アンモニアの他に、例えば「水化学」研究専門委員会編、「原子炉冷却系の水化学」、(社)日本原子力学会、1987年、p173などに記載されているように、数十mg/kg程度の酸素や、数mg/kg程度の水素が含まれるため、アンモニアを酸素と反応させて窒素と水に分解するのに必要な酸素は、原子炉圧力容器1から供給できる場合がある。したがって、酸化分解装置は、酸素供給部を構成する酸素注入器5d、酸素注入管5e、酸素注入制御バルブ5fなどを有していない構成にすることもできる。また、主蒸気管路3内を通流する蒸気の温度は、288℃といったような高温であるため、酸化分解装置は、加熱ヒータ5cを有していない構成にすることもできる。ただし、酸化分解装置は、酸素供給部や加熱ヒータなどの加熱器を有する構成とした方が、主蒸気管路3内を通流する蒸気に含まれる気体の組成や蒸気の温度に左右されることなく、より確実にアンモニアを酸化分解できるので、アンモニアの酸化分解能力を向上できる。
このような構成の原子力プラントのアンモニアが発生する経路や発生したアンモニアが移行する経路などと、本発明の特徴部について説明する。還元性窒素化合物注入装置61によって原子炉水浄化系管路55を通流する原子炉水中に注入された還元性窒素化合物は、給水管路29を介して原子炉圧力容器1内に流入する。原子炉圧力容器1内の原子炉水は、炉心側部から原子炉底部を通って炉心に流れるように設置された炉内構造物の外面の流路である図示していないダウンカマー及び原子炉底部で、炉心で水の放射線分解によって発生した酸素や、過酸化水素と化学反応を起こし、窒素や水などになる。このとき、酸素や過酸化水素との反応等量よりも過剰な還元性窒素化合物が注入されると、アンモニアが発生する。発生したアンモニアは、炉心で原子炉水が蒸気になるときに、蒸気相に移行し大半は、蒸気に同伴され、原子炉圧力容器1内から主蒸気管路3に流入する。
もし、本実施形態のように主蒸気管路3に酸化分解装置5が設けられていない場合、アンモニアは、蒸気に同伴され、高圧タービン9、湿分分離器11、低圧タービン13を通って復水器19に移行する。これとは別に、アンモニアの一部は、蒸気に同伴され、タービンバイパス配管15や抽気系管路21を通って復水器19に送られる。復水器19で、蒸気は冷却されて水に戻されるが、蒸気に同伴されて移行したアンモニアの一部は、気体のまま存在し、残りは復水器19で凝縮した水に溶解する。気体として存在するアンモニアは、空気抽出器33によって気体排気処理装置45に送られ、次いで排気塔47からプラントの外に放出される。
一方、復水器19で凝縮した水に溶解したアンモニアは、低圧復水ポンプ31によって、復水ろ過器35を通って復水脱塩器37に送られることになる。水中でアンモニアは電離してアンモニウムイオンになり、復水脱塩器37が有する陽イオン交換樹脂に捕獲される。捕獲されたアンモニウムイオンが、復水脱塩器37が有する陽イオン交換樹脂の容量を超えると、持ち込まれたアンモニウムイオンと等量のアンモニウムイオンが復水脱塩器37から流出する。流出したアンモニアは、高圧復水ポンプ39、第1給水加熱器27、給水ポンプ41、第2給水加熱器25を通って原子炉圧力容器1に送られることになる。
このように、蒸気の流路となる主蒸気管路3、タービンバイパス管路15、抽気系管路21、及びこれらの管路に接続された各装置類、復水器19から抽出された気体の流路となる排気管路43やそこに設けられた気体排気処理装置45では、アンモニアは、主に気体で存在する。一方、復水器19で凝縮した水の流路となる給水管路29及び給水管路29に設けられた各装置類では、アンモニアは水に溶解した状態で存在する。
ここで、原子炉圧力容器1で発生した蒸気中に含まれるアンモニアの濃度は、例えば0.5mg/kgより少ない濃度となる。BWRでは、その原子炉圧力容器1内の構造物や核燃料の保全の観点から、原子炉水に対する水質の基準が設けられており、原子炉水の導電率を1μS/cm以下、pHを5.6−8.6に管理することが求められている(例えば、(社)日本原子力学会編、「原子炉水科学ハンドブック」、(株)コロナ社、2000年、p196参照)。この条件を満たすためには、原子炉水中のアンモニア濃度は、0.07mg/kg以下とする必要がある。さらに、このアンモニアがすべて蒸気に同伴されて原子炉圧力容器内から放出されると仮定し、炉心の流量と蒸気流量との比を考慮しても、蒸気に同伴して移行するアンモニア濃度は、0.5mg/kg以下となる。
そこで、本実施形態の原子力プラントのように主蒸気管路3に酸化分解装置5を設けると、酸化分解装置5において、蒸気に同伴されたアンモニアが吸着し、吸着したアンモニアが窒素や酸化窒素と水に分解される。アンモニアの分解によって生じた窒素や酸化窒素は、アンモニアと比較して水に溶け難く、水に溶けても電離しないので、復水器19で凝縮した水に溶解せず気体の状態であるため、復水器19からの排気と共に容易に除去できる。なお、水への溶解度は、アンモニアが520g/Lであるのに対して、窒素は18.34mg/L、酸化窒素は57.8mg/Lである。
このように、本実施形態の原子力プラントでは、主蒸気管路3に酸化分解装置5を設けることによって、アンモニアを窒素や酸化窒素と水素や水とに分解する。これにより、原子炉圧力容器から蒸気に同伴して流出するアンモニアを窒素や酸化窒素とすることで気体の状態で除去できる。つまり、原子炉圧力容器から流出するアンモニアを除去できる。
さらに、本実施形態では、主蒸気管路3に設けた酸化分解装置5によって蒸気に同伴して移行するアンモニアを窒素や酸化窒素と水素や水とに分解して除去するため、アンモニアが復水器19で凝縮した水中に再溶解することを抑制できる。したがって、復水器19などで銅合金を使っている場合、復水器19で凝縮した水に含まれるアンモニアが銅合金の腐食を抑制する効果のある銅酸化物を溶解するのを抑制し、銅合金の腐食の促進を抑制できる。
加えて、復水脱塩器37が有する陽イオン交換樹脂の容量を超えると、持ち込まれたアンモニウムイオンと等量のアンモニウムイオンが復水脱塩器37から流出することによって、原子炉圧力容器1に給水される水のpHがアルカリ性となり、また、原子炉圧力容器1に給水される水の導電率が高くなるのを抑制できる。したがって、水のpHがアルカリ性となり、また、原子炉圧力容器1に給水される水の導電率が高くなるのを抑制できることによって、原子炉内機器などの腐食の促進を抑制できる。さらに、復水器19から排出される排気には、窒素や酸化窒素が含まれるだけであるため、原子力プラントの外に排出されるアンモニアの量を低減でき、アンモニアがプラントの外に放出されることによる環境への影響を抑制できる。
さらに、原子炉のシュラウドヘッド部分に触媒アンモニア転化器を設けた従来の原子力プラントでは、水−蒸気混合物中でアンモニアの形態の放射性窒素を触媒により酸素、過酸化水素と反応させ、硝酸イオンや亜硝酸イオンにしている。このような従来の原子力プラントでは、気相中で放射性窒素を酸化して形態を変えてもタービンに放射性窒素が持ち込まれるため、水-蒸気混合物中で触媒アンモニア転化器によりアンモニアの形態を変えるものであるが、水−蒸気混合物中に触媒アンモニア転化器が位置するため、アンモニアの吸着剤であるゼオライトや活性炭が溶解したり、水分子が吸着サイトを占有したりすることによりアンモニアの吸着能力が低下してしまう。したがって、非放射性アンモニアの分解除去の場合には、アンモニアの吸着能力の低下により、分解除去能力が低下してしまう場合がある。
これに対して、本実施形態の原子力プラントでは、主蒸気管路3に酸化分解装置5気相中に設置し、気相中のアンモニアを酸化分解し除去するため、触媒へのアンモニアの吸着能力の低下は生じ難く、分解除去能力が低下も生じ難い。
また、本実施形態では、主蒸気管路3のタービンバイパス管路15との分岐部よりも上流側に酸化分解装置5を設けた構成としている。しかし、このような構成に限らず、酸化分解装置は、アンモニアが気体状で存在する部位、すなわち、主蒸気管路3、タービンバイパス管路15、抽気系管路21や、各々管路に設けられた装置類などに設置することもできる。ただし、本実施形態のように、主蒸気管路3のタービンバイパス管路15との分岐部よりも上流側に酸化分解装置5を設けた構成とした方が、原子炉圧力容器1から流出する気体状のアンモニアがすべて酸化分解装置を通るため、主蒸気管路3、タービンバイパス管路15、抽気系管路21などに別個に酸化分解装置を設置する必要がなく、効率よくアンモニアを窒素又は窒素酸化物に形態変化させることができる。
また、本実施形態の酸化分解手段である酸化分解装置5は、主蒸気管路3よりも径が太く、内部に、横断面で見たときに格子状またはハニカム状に形成され、表面にアンモニアを吸着すると共に酸化分解するアンモニア吸着酸化触媒を担持させた間仕切り5aが設置されたアンモニア吸着反応管部5bを有している。しかし、酸化分解装置5は、アンモニア吸着反応管部5bを設けず、原子炉圧力容器1で発生した蒸気が通る管路や装置類、すなわち、主蒸気管路、タービンバイパス管路、抽気系管路や、それらの管路に設けられた装置類の蒸気の流路、例えば高圧タービン、湿分分離器、低圧タービン、復水器などの蒸気の流路の蒸気が接する面の一部又は全部にアンモニア吸着酸化触媒を付着させることで、触媒部を設けて酸化分解手段を形成することもできる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用してなる原子力プラントの第2の実施形態について図4を参照して説明する。図4は、本発明を適用してなる原子力プラントの概略構成を示す図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成などには同じ符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と相違する構成や特徴部などについて説明する。
本実施形態の原子力プラントが第1の実施形態と相違する点は、復水器などで銅合金を使っておらず腐食の問題は生じないが、アンモニアが原子力プラントの外に排出されることが問題になる場合に対応するため、復水器からの排気中に含まれるアンモニアを分解除去する構成としたことにある。すなわち、本実施形態の原子力プラントでは、復水器19からの排気管路43の、復水器19と空気抽出器33との間の部分に、第1の実施形態で示したものと同じ構成の酸化分解装置5が設けられている。
したがって、復水器19から抽出されたアンモニアを含む気体は、酸化分解装置5に送られ、排気塔47からプラント外に放出されるため、酸化分解装置5を設けていない場合にプラント外に放出される可能性があるアンモニアのすべてが、酸化分解装置5を通る。このため、排気に含まれるアンモニアは、窒素または窒素酸化物と水素または水に分解され、プラント外に放出除去される。すなわち、排気管路43を介して排気塔47からプラント外に放出されるアンモニアの量を低減でき、アンモニアがプラントの外に放出されることによる環境への影響を抑制できる。
また、本実施形態では、排気管路43の、復水器19と空気抽出器33との間の部分に、第1の実施形態で示したものと同じ構成の酸化分解装置5を設けている。しかし、酸化分解装置5は、排気塔47よりも上流側であれば、排気管路43のどの部分にでも設けることができる。一方、第1の実施形態で示したものと同じ構成の酸化分解装置5に限らず、アンモニア吸着酸化触媒を充填した塔からなる酸化分解手段や、復水器19からの気体が通る管路や装置類、すなわち、排気管路、気体排気処理装置や排気塔などの気体の流路の気体が接する面の一部又は全部にアンモニア吸着酸化触媒を付着させることで形成した酸化分解手段を設けた構成などにすることもできる。また、気体排気処理装置が有する復水器から抽出された酸素と水素を水にする能力を備えた触媒塔の触媒の一部をアンモニア吸着酸化触媒に交換した構成などにもすることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明を適用してなる原子力プラントの第3の実施形態について図5乃至図8を参照して説明する。図5及び図8は、本発明を適用してなる原子力プラントの概略構成を示す図である。図6及び図7は、本発明を適用してなる原子力プラントに設けた陽イオン除去器の概略構成を示す図である。なお、本実施形態では、第1及び第2の実施形態と同一の構成などには同じ符号を付して説明を省略し、第1及び第2の実施形態と相違する構成や特徴部などについて説明する。
本実施形態の原子力プラントが第1及び第2の実施形態と相違する点は、蒸気や気体中のアンモニアを分解除去するものではなく、復水器で凝縮した水に溶解したアンモニアを除去するための陽イオン除去器を系統水が通流する管路つまり給水管路に設置したことにある。すなわち、本実施形態の原子力プラントでは、図5に示すように、給水管路29の復水脱塩器37と高圧復水ポンプ39との間の部分、つまり、復水脱塩器37よりも水の通流方向に対して下流側で第1給水加熱器よりも上流側の部分に、復水脱塩器37側から、水中のアンモニアを検出するためのアンモニアセンサ65、水中のアンモニウムイオンを除去するための陽イオン除去器67を順に設置している。この構成では、復水脱塩器37も、復水脱塩器37が有する陽イオン交換樹脂によりアンモニウムイオンを除去するため、復水脱塩器37が上流側のアンモニア除去手段、陽イオン除去器67が下流側のアンモニア除去手段としての役割を果たす。
ここで、陽イオン除去器67について説明する。陽イオン除去器67の形態としては、陽イオン交換樹脂を充填した槽を備え、アンモニウムイオンを陽イオン交換樹脂に吸着させるものと、内部にイオン交換膜を設置した電解セルでアンモニウムイオンを電気的に分離するものとがある。陽イオン除去器67が陽イオン交換樹脂を用いる形態の場合、次式(1)で示すように、水素イオンを交換基とする陽イオン交換樹脂を使用する。
n(R−−H+)+Mn+ → n(R−−)Mn++nH+ ・・・(1)
ただし、R−−はイオン交換樹脂の交換器以外の部分、Mn+はn価の陽イオン、nは陽イオンMn+の価数、H+は水素イオンである。
アンモニアは、水中では次式(2)のように電離するため、陽イオン交換樹脂による次式(3)に示す反応により除去できる。さらに、電離によって生じた水酸化物イオンも陽イオン交換樹脂から放出される水素イオンと結合して水となるためpHをアルカリ性にすることはない。
NH3+H2O → NH4 ++OH− ・・・(2)
R−−H++NH3 → R−−NH4 ++H2O ・・・(3)
ただし、R−−はイオン交換樹脂の交換器以外の部分、NH3はアンモニア、H2Oは水、NH4 +はアンモニウムイオン、OH−は水酸化物イオンである。
一方、陽イオン除去器67が電解セルを用いる形態の場合、陽イオン除去器67は、図6に示すように、槽67a、槽67a内に対向させて設置されたカソード電極67bとアノード電極67c、カソード電極67bとアノード電極67cとの間に設置され、槽67a内をカソード電極67bが設置された空間67dとアノード電極67cが設置された空間67eとの2つの空間に分割する陽イオン交換膜67fなどを有している。槽67a内の空間67dには、希硫酸水溶液などの酸溶液または水酸化ナトリウム水溶液などの電解液となるアルカリ溶液を空間67dに通流させるための溶液管路69が、槽67a内の空間67eには、給水管路29が接続されている。また、カソード電極67bとアノード電極67cとには、各々電気配線71が接続されている。
槽67a内の空間67eに系統水を通流させ、槽67a内の空間67dにアルカリ溶液を通流させた状態で、カソード電極67bとアノード電極67cとに電圧を印加すると、アノード電極67cでは、水酸化物イオンから酸素が生成する次式(4)に示すような酸素発生反応が起き、槽67a内の空間67eから槽67a内の空間67dへ陽イオン交換膜67fを介してNH4 +が移行し、カソード電極67bでは、次式(5)のような水素発生反応が起き、これにより系統水からアンモニアが除去される。
4OH− → O2+2H2O+4e− ・・・(4)
2H++2e− → H2 ・・・(5)
ただし、OH−は水酸化物イオン、O2は酸素、H2Oは水、e−は電子、H+は水素イオン、H2は水素である。
また、陽イオン除去器67が電解セルを用いる形態の場合、陽イオン除去器67は、図7に示すように、槽67a内に対向させて設置されたカソード電極67bとアノード電極67cとの間に、槽67a内をカソード電極67bが設置された空間67dと電極が設置されていない空間67gとに分割する陽イオン交換膜67f、そして、電極が設置されていない空間67gとアノード電極67cが設置された空間67eとに分割する陽イオン交換膜67fの2枚の陽イオン交換膜67fを設置した構成にすることもできる。この場合、カソード電極67bが設置された空間67dとアノード電極67cが設置された空間67eとには、希硫酸水溶液などの酸溶液または水酸化ナトリウム水溶液などの電解液となるアルカリ溶液を空間67d、67eに通流させるための溶液管路69が、電極が設置されていない空間67gには、給水管路29が接続されている。
槽67a内の空間67d、67eにアルカリ溶液を通流させ、槽67a内の空間67gに系統水を通流させた状態で、カソード電極67bとアノード電極67cとに電圧を印加すると、アノード電極67cでは、水酸化物イオンにより、上記の式(4)に示すような酸素生成反応が起き、アノード電極67cが設置された空間67eから空間67g通ってカソード電極67bが設置された空間67dへ陽イオン交換膜67fを介してH+が移行し、また、空間67gからカソード電極67bが設置された空間67dへ陽イオン交換膜67fを介してNH4 +が移行し、そして、カソード電極67bでは、上記の式(5)に示すような水素生成反応が起き、これにより系統水からアンモニアが除去される。
なお、図5に示すアンモニアセンサ65としては、アンモニアの存在を検出できればよく、イオンメーター、pH計、導電率計などを用いることができる。
このような本実施形態の原子力プラントでは、図5に示すように、復水器19で凝縮して給水管路29を通流する系統水に溶解したアンモニアは、まず、復水脱塩器37の陽イオン交換樹脂に吸着され、除去される。しかし、復水脱塩器37に充填されている陽イオン交換樹脂の吸着容量を超える量のアンモニアが負荷されると、復水脱塩器37の陽イオン交換樹脂に吸着されず、復水脱塩器37から下流側へ放出される。このとき、復水脱塩器37の下流側に設けられたアンモニアセンサ65により、系統水中のアンモニアの有無を検出すれば、復水脱塩器37でのアンモニアの放出つまりアンモニアブレークを検知できる。アンモニアブレークして復水脱塩器37から出てきたアンモニアは、アンモニアセンサ65の下流側つまり復水脱塩器37の下流側に設けられた陽イオン除去器67で捕獲される。
このため、陽イオン除去器67よりも下流側には、アンモニアは放出されない。また、アンモニアセンサ65によるアンモニアの検出によってアンモニアブレークが検知された復水脱塩器37は、その陽イオン交換樹脂をイオン交換樹脂再生操作により再生するか、または、新しい陽イオン交換樹脂と交換することで、再びアンモニアを捕獲できるようになる。
ところで、復水器19では、蒸気を冷却するために海水を用いている。このため、復水器19内の海水が通流する流路から、凝縮した水の流路へ海水が漏洩して系統水に海水が混じってしまう海水リークが生じる可能性がある。したがって、海水リークが生じてもアンモニアを除去できる構成にしておく必要がある。特に、復水脱塩器37は、陽イオン交換樹脂を用いているため、復水脱塩器37の陽イオン交換樹脂でアンモニウムイオンを吸着してアンモニアを除去している状態で、海水リークが生じ、復水脱塩器37の陽イオン交換樹脂にナトリウムイオンが負荷されると、次式(6)に示すような反応により、アンモニウムイオンが陽イオン交換樹脂から放出されるアンモニアブレークが生じる。または、ナトリウムイオンが陽イオン交換樹脂に捕獲されずに水中に残る可能性もある。
R−−NH4 ++Na+ → R−−Na++NH4 + ・・・(6)
ただし、R−−はイオン交換樹脂の交換器以外の部分、NH4 +はアンモニウムイオン、Na+はナトリウムイオンである。
これに対応するために、本実施形態の原子力プラントでは、従来の原子力プラントでも設けられている復水脱塩器37と直列に、陽イオン除去器67を給水管路29に設けている。したがって、上流側に位置するアンモニア除去手段としての役割を果たしていた復水脱塩器37から海水リークによるアンモニアブレークでアンモニウムイオンが放出されたとしても、下流側に位置する陽イオン除去器67でアンモニウムイオンを捕獲することでアンモニアを除去できる。また、復水脱塩器37でナトリウムイオンを捕獲できなかった場合、陽イオン除去器67でナトリウムイオンを捕獲することでナトリウムイオンを除去できる。このように、従来の原子力プラントでも設けられている復水脱塩器37の下流側に陽イオン除去器67を設けることで、少なくとも陽イオン除去器67よりも下流には、アンモニウムイオンが放出されるのを抑制でき、系統水に溶解したアンモニアを効率よく除去でき、さらに、海水リークが生じてもアンモニアやナトリウムイオンが原子炉圧力容器1内に持ち込まれるのを防止できる。
さらに、アンモニアが原子炉圧力容器1内に持ち込まれるのを防止できるため、原子炉圧力容器1内で生じる腐食を抑制できる。
加えて、本実施形態では、給水管路29の復水脱塩器37と陽イオン除去器67との間の部分には、アンモニアを検出するアンモニアセンサ65を設けている。
このため、復水脱塩器37でのアンモニアブレークを検知でき、復水脱塩器37の陽イオン交換樹脂の交換や、陽イオン交換樹脂のアンモニウムイオンを水素イオンに置き換えるイオン交換樹脂再生操作を行なう必要があることを検知できる。
また、本実施形態の図7に示したような電解セルを用いる形態の陽イオン除去器67を用いる場合、槽67aの系統水が通水される空間67gに陽イオン交換樹脂を充填する構成にすることもできる。このような構成とすれば、通常は、空間67gに充填された陽イオン交換樹脂でアンモニアを除去し、アンモニアの負荷が許容量を越えるなどアンモニアブレークしたとき、カソード電極67bとアノード電極67cとに電圧を印加し、前述のように空間67gアンモニウムイオンを空間67dへ移行させることで、陽イオン交換樹脂の再生を行なうことができる。また、電解セルを用いる形態であるが、電気分解のみによってアンモニアを除去する場合に比べ、電圧を印加する時間を短くでき、装置運転コストを低減できる。
また、本実施形態では、図5に示すように、給水管路29に上流側から復水脱塩器37、アンモニアセンサ65、陽イオン除去器67を順に設けた構成としてが、給水管路の復水脱塩器よりも上流側の部分に陽イオン除去器やアンモニアセンサを設けた構成にすることもできる。すなわち、図8に示すように、給水管路29の復水ろ過器35と復水脱塩器37の間、つまり、復水脱塩器37よりも水の通流方向に対して上流側に、復水ろ過器35側から、陽イオン除去器67、アンモニアセンサ65を順に設けた構成にすることもできる。
このような構成では、上流側のアンモニア除去手段の役割を陽イオン除去器67が、下流側のアンモニア除去手段の役割を復水脱塩器37が果たす。陽イオン除去器67が陽イオン交換樹脂を充填した槽を有する構成の場合、復水器19で凝縮した系統水に溶解したアンモニアは、陽イオン除去器67で捕獲される。しかし、陽イオン除去器67に充填されたようイオン交換樹脂の吸着容量を超える量のアンモニアが陽イオン除去器67に入ると、陽イオン除去器67はアンモニアブレークを起こす。そして、アンモニアブレークして陽イオン除去器67から出てきたアンモニアは、下流側に位置する復水脱塩器37で捕獲されるため、復水脱塩器37よりも下流には放出されない。
陽イオン除去器67のアンモニアブレークは、陽イオン除去器67の下流側に配設されたアンモニアセンサ65により検知できる。これにより、アンモニアブレークが検知された場合、陽イオン除去器67の陽イオン交換樹脂を交換や、イオン交換樹脂再生操作を行なえば、陽イオン除去器67は、再びアンモニアを捕獲できるようになる。さらに、アンモニアブレークした時点で海水リークが起こっても、放出されたアンモニアは復水脱塩器37で捕獲されるため、その下流にアンモニアは放出されない。
このように、復水脱塩器37の上流側に陽イオン除去器67を設置しても、系統水に溶解したアンモニアを効率よく除去でき、さらに海水リークが生じてもアンモニアが原子炉圧力容器1内に持ち込まれるのを防止できる。加えて、陽イオン除去器67として陽イオン交換樹脂を用いるものを使用する場合、図5に示すような復水脱塩器37の下流側に陽イオン除去器67を設置した構成と比較して、イオン交換樹脂の再生操作を簡素化できる。
これは、復水脱塩器37は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を混合した混床樹脂が一般的に使用されるため、イオン交換樹脂再生操作の前に陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂を分離する操作を行なう必要があるのに対して、図8に示すような復水脱塩器37の上流側に陽イオン除去器67を設置した構成では、通常アンモニアが負荷されるのは陽イオン交換樹脂のみを充填した陽イオン除去器67であり、混床樹脂の場合に必要な陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との分離操作が必要ないからである。
(第4の実施形態)
以下、本発明を適用してなる原子力プラントの第4の実施形態について図9及び図10を参照して説明する。図9は、本発明を適用してなる原子力プラントの概略構成を示す図である。図10は、本発明を適用してなる原子力プラントに設けた復水ろ過器の概略構成を示す図である。なお、本実施形態では、第1乃至第3の実施形態と同一の構成などには同じ符号を付して説明を省略し、第1乃至第3の実施形態と相違する構成や特徴部などについて説明する。
本実施形態の原子力プラントは、第3の実施形態と同様に、復水器で凝縮した水に溶解しているアンモニアを除去するための陽イオン除去器を系統水が通流する管路つまり給水管路に設置した構成となっているが、第3の実施形態と相違する点は、給水管路に設けられた腹水ろ過器が陽イオン除去器も兼ねていることにある。すなわち、本実施形態の原子力プラントは、図9に示すように、第1乃至第3の実施形態のような主蒸気管路に設けられた酸化分解装置や給水管路に設けられた陽イオン除去器を有していないが、給水管路29の空気抽出器33と復水脱塩器37との間の部分に、水の通流方向に対して上流側から、従来の腹水ろ過器に代えて陽イオン除去器も兼ねた腹水ろ過器73、アンモニアを検出するアンモニアセンサ65が順に設けられている。
陽イオン除去器も兼ねた腹水ろ過器73は、図10に示すように、槽73a内に設置される従来の復水ろ過器の不溶解性固形分をろ過するフィルタ73bの水の通流方向に対して上流側、つまりフィルタ73bの一次側に陽イオン交換樹脂73cを充填している。本実施形態のフィルタ73bは、円周面がろ過面となっており、一方の端部が閉塞された略円筒状のフィルタカートリッジであるため、このフィルタ73b内側の空間内に陽イオン交換樹脂73cを充填している。そして、陽イオン交換樹脂73cがフィルタ73b内から出ることなく、かつ、ろ過対象の水が通流できるように、フィルタ73bの開口した端部側には、陽イオン交換樹脂73cの径よりも小さな複数の孔を有する円盤状のストレーナ73dが取り付けられている。
なお、本実施形態の腹水ろ過器73では、槽73aの底部と上部に給水管路29が接続されており、底部側にストレーナ73dが設置され、そこから上方に向けて複数の略円筒状のフィルタ73bが設置されている。したがって、腹水ろ過器73では、フィルタ73bで隔てられた槽73aの底部側の空間が一次側、上部側の空間が2次側となっている。
このような腹水ろ過器73では、底部に接続された給水管路29から系統水が槽73a内底部に入り、槽73a内底部に入った系統水は、ストレーナ73dを通って陽イオン交換樹脂73cの部分に流れ込み、さらに、フィルタ73bのろ過面を通って槽73a内上部に抜け、上部に接続された給水管路29から出る。これにより、系統水に溶解したアンモニア、つまり、アンモニウムイオンは陽イオン交換樹脂73cに捕捉され、その後、系統水に含まれる不溶解性固形分は、フィルタ73bで捕捉される。したがって、復水ろ過器73は、復水脱塩器37による下流側のアンモニア除去手段に対して、上流側のアンモニア除去手段の役割を果たす。
ところで、系統水に溶解したアンモニアは、アンモニウムイオンとして復水ろ過器73の陽イオン交換樹脂73cに捕獲される。しかし、復水ろ過器73に充填された陽イオン交換樹脂73cの吸着容量を超える量のアンモニアが復水ろ過器73に流入すると、アンモニアブレークを起こす。このため、図9に示すように、復水ろ過器73給水管路29の復水ろ過器73よりも下流側の部分に、第3に実施形態と同様のアンモニアセンサ65が設置されており、アンモニアセンサ65により系統水中のアンモニアの有無を検出すれば、復水ろ過器73でのアンモニアブレークを検知できる。アンモニアブレークにより復水ろ過器73から流出してきたアンモニアは、下流側に位置する復水脱塩器で捕獲されるため、その下流には放出されない。
アンモニアセンサ65によりアンモニアブレークが検知された場合、復水ろ過器73に充填された陽イオン交換樹脂の交換、または、イオン交換樹脂再生操作を行なうことで、復水ろ過器73で再びアンモニアを捕獲できるようになる。アンモニアブレークした時点で海水リークが起こった場合も、放出されたアンモニアは、復水脱塩器37で捕獲されるため、復水脱塩器37よりも下流側にアンモニアは放出されない。
このように、本実施形態の原子力プラントでも、復水脱塩器37よりも上流側に陽イオン除去器を兼ねた復水ろ過器73を設置することで系統水に溶解したアンモニアを効率よく除去でき、さらに、海水リークが生じてもアンモニアが原子炉圧力容器1内に持ち込まれるのを防止できる。さらに、復水ろ過器73の下流側にアンモニアセンサ65を設置しているので、復水ろ過器73でのアンモニアブレークを検知でき、復水ろ過器73の陽イオン交換樹脂の交換や、イオン交換樹脂再生操作を行なう必要があることを検知できる。
加えて、本実施形態は、第3の実施形態のように、従来の原子力プラントに対して新規に陽イオン除去器を設ける必要がなく、従来から設置されていた復水ろ過器を置き換えるか、改造するだけであるため、コストを低減でき、また、構成を簡素化できる。
(第5の実施形態)
以下、本発明を適用してなる原子力プラントの第5の実施形態について図11乃至図14を参照して説明する。図11は、本発明を適用してなる原子力プラントの概略構成を示す図である。図12乃至図14は、本発明を適用してなる原子力プラントに設けた海水漏洩検出装置の概略構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、第1乃至第4の実施形態と同一の構成などには同じ符号を付して説明を省略し、第1乃至第4の実施形態と相違する構成や特徴部などについて説明する。
本実施形態が第1乃至第4の実施形態と相違する点は、復水器や原子炉圧力容器内などで系統水、原子炉水などと接触する部材の材質の選択などによって腐食の問題が生じ難く、また、排気中のアンモニアの問題なども生じ難いが、系統水中に溶解したアンモニアによって、復水器で生じる海水リークが検出できなくなるのを防ぐため、海水リークの検出のために系統水中に溶解したアンモニア、つまり、アンモニウムイオンを除去する構成としたことにある。
すなわち、本実施形態の原子力プラントは、図11に示すように、第1乃至第4の実施形態のような主蒸気管路に設けられた酸化分解装置や給水管路に設けられた陽イオン除去器を有していないが、給水管路29の復水器19よりも水の通流方向に対して下流側の部分に間の部分に、復水器19で凝縮して、給水管路29に通流する水つまり系統水中への復水器19で冷媒として使用されている海水の漏洩、つまり海水リークを検知するための海水漏洩検出装置75を有している。海水漏洩検出装置75は、検出用管路77を介して給水管路29に連結されている。図11では、検出用管路7では、1本の流路のように図示されているが、実際には給水管路29内の系統水を海水漏洩検出装置75に導く流路と、検出後の系統水を海水漏洩検出装置75から給水管路29に戻す流路とからなる。なお、検出後の系統水を海水漏洩検出装置75から給水管路29に戻さず、適当な系統を構成する管路に排水することもできる。
海水漏洩検出装置75は、図12に示すように、給水管路29からの系統水の通流方向に対して上流側から、陽イオン除去器67、陽イオン除去器67から流出する水中の溶存物つまりアンモニアや海水成分を検出する溶存物検出器79を順に設けた構成となっている。陽イオン除去器67は、第3の実施形態で示したものと同じものであり、陽イオン交換樹脂を用いるものと、電解セルを用いるもののいずれの構成のものでも用いることができる。溶存物検出器79は、海水中の塩酸や塩化物イオンなどの存在を検出するものであるため、第3の実施形態で示したアンモニアセンサと同様のイオンメーター、pH計、導電率計などを用いている。
ここで、復水器19で海水リークが生じていない場合、海水漏洩検出装置75の陽イオン除去器67に充填した水素イオンを交換器とする陽イオン交換樹脂に、アンモニアが溶解した水を通水すると、第3の実施形態で示した式(3)の反応により、アンモニウムイオンが除去され、陽イオン除去器67からは純水のみが出る。
一方、復水器19で海水リークが生じた場合、海水漏洩検出装置75の陽イオン除去器67に充填した水素イオンを交換器とする陽イオン交換樹脂に、第3の実施形態で示した式(3)の反応とは別に、海水が混じった水が通水されることにより、次式(7)に示すような反応により、陽イオン交換樹脂の下流から塩酸が流出する。
R−−H++Na++Cl− → R−−Na++H++Cl− ・・・(7)
ただし、Cl−は塩化物イオン、H++Cl−は塩酸である。
したがって、溶存物検出器79がイオンメーターである場合、系統水中の塩酸つまり塩化物イオンを検出することによって海水の混入つまり海水リークを検知でき、溶存物検出器79がpH計である場合、系統水中の塩酸により、pHが、海水リークが起こっていないときよりも小さくなることによって海水リークを検知でき、そして、溶存物検出器79が導電率計である場合、系統水中の塩酸つまり塩化物イオンにより、導電率が、海水リークが起こっていないときよりも大きくなることによって海水リークを検知できる。このように、アンモニウムイオンを除去して海水リークを検知するため、海水漏洩検出装置での海水リークの検知感度の低下を抑制できる。
ところで、還元性窒素化合物の他に、メタノールなどのアルコールを炉水中に注入する場合があるが、メタノールなどのアルコールを炉水中に注入すると、アンモニアの他に、炭酸イオンが復水器19で凝縮した系統水中に溶解する可能性がある。この場合、炭酸イオンは、陽イオン交換樹脂では除去できないため、炭酸イオンと塩化物イオンとを区別できない。また、炭酸イオンにより導電率も上昇する。このため、アンモニアを除去しても、炭酸イオンの存在により、海水漏洩検出装置75による海水リークの検知感度が低下してしまう場合がある。
このような問題が生じる場合には、海水漏洩検出装置75は、図13に示すように、陽イオン除去器67と溶存物検出器79との間に、アルゴンまたは窒素バブリングなどにより系統水に溶解している炭酸を除去する脱気部81を設けた構成とする。これにより系統水から炭酸を除去することができ、脱気部81よりも下流側の系統水には塩酸のみが残り、オンセンサ79が導電率計やイオンメーターであっても、イオンの検出や導電率の上昇によって、海水リークを検知できる。したがって、炭酸イオンの存在による海水リークの検知感度の低下を抑制でき、海水漏洩検出装置75による海水リークの検知感度を向上できる。
また、海水漏洩検出装置75では、陽イオン除去器65が陽イオン交換樹脂を用いたものである場合、充填している陽イオン交換樹脂の吸着容量やアンモニアの負荷量、長期間使用などによって、アンモニアブレークを起こす場合がある。アンモニアブレークを起こすと、アンモニウムイオンの流出によって、海水リークが起こっていなくても、イオンの検出や、導電率の上昇により、海水リークとの誤認や、海水リークを検出できなくなってしまう。
このような問題が生じる場合には、海水漏洩検出装置75は、図14に示すように、図12や図13で示した溶存物検出器79を第1溶存物検出器79とし、第1溶存物検出器79の下流側に、さらに、溶存物検出器79側から陽イオン交換樹脂を充填した副イオン除去器83、第1溶存物検出器79と同様の第2溶存物検出器85を順に設けた構成とする。
このような海水漏洩検出装置75では、海水リークが起きていない場合、陽イオン除去器67でアンモニウムイオンが除去され、下流には純水が放出されるため第1溶存物検出器79、第2溶存物検出器85での変化、例えば導電率の上昇などはない。このとき、陽イオン除去器67でアンモニアブレークが起きると、第1溶存物検出器79での変化、例えば導電率の上昇などが起こる。さらに、陽イオン除去器67から流出したアンモニアは副イオン除去器83で除去されるため、第2溶存物検出器85での変化、例えば導電率の上昇などはない。このように、第1溶存物検出器79では変化を検出し、第2溶存物検出器85では変化を検出しないという状態から、陽イオン除去器67でのアンモニアブレークを検知できる。アンモニアブレークを検知した場合には、陽イオン除去器67のイオン交換樹脂再生操作または陽イオン交換樹脂の交換を行なう。
一方、海水リークが起きた場合、陽イオン除去器67から塩酸が流出し、副イオン除去器83では塩酸が除去されないため、第1溶存物検出器79及び第2溶存物検出器85の両方で変化、例えば導電率の上昇などが検出されることにより海水リークを検知できる。このとき、陽イオン除去器67でアンモニアブレークが起きていると、陽イオン除去器67からはアンモニアが、副イオン除去器83でからは塩酸が流出することになるため、第2溶存物検出器85での導電率も上昇するため、第1溶存物検出器79での変化と第2溶存物検出器85での変化とが異なる状態となることにより、アンモニアブレークと海水リークを検知することができる。
図14に示したような構成の海水漏洩検出装置75の場合、副イオン除去器83は、陽イオン交換樹脂の代わりに陰イオン交換樹脂を充填した構成にすることもできる。この場合、海水リークが起こっていないとき、第1溶存物検出器79では変化、例えば導電率の上昇などはなく、第2溶存物検出器85では変化、例えば導電率の上昇などが検出される。このとき、陽イオン除去器67でアンモニアブレークが起きると、第1溶存物検出器79で変化、例えば導電率の上昇などが起こることにより、アンモニアブレークを検知できる。
一方、海水リークが起こったとき、陽イオン除去器67から塩酸が流出し、流出した塩酸の塩素イオンが副イオン除去器83で除去されるため、第1溶存物検出器79では変化、例えば導電率の上昇などが検出され、第2溶存物検出器85では変化、例えば導電率の上昇などはない。このとき、陽イオン除去器67でアンモニアブレークが起きると、第1溶存物検出器79では、アンモニアブレークが起きていないときとは異なる変化、例えば導電率の異なる上昇などが検出され、第2溶存物検出器85でも第1溶存物検出器79と同様の変化、例えば導電率の上昇などが起こることによって海水リークを検知でき、また、陽イオン除去器67でのアンモニアブレークも検知できる。
また、本実施形態では、海水漏洩検出装置75は、給水管路29の復水器19よりも水の通流方向に対して下流側で、低圧復水ポンプ31と空気抽出器33との間の部分に設置している。しかし、海水漏洩検出装置75は、この位置に限らず、例えば復水器19に直接取り付けたり、給水管路29の復水器19と復水脱塩器37との間の部分の少なくとも一箇所に設置したりできる。
また、第1乃至第5の実施形態で示した構成は、必要に応じて適宜組み合わせて原子力プラントに適用することができる。
また、本発明は、第1乃至第5の実施形態の構成の原子力プラントに限らず、沸騰水型や改良型沸騰水型などの様々な構成の原子力プラントに適用できる。